説明

温度センサの異常判定方法および当該方法を用いて異常を判定する車載充電器

【課題】温度センサの異常を早期に判定することができる異常判定方法を提供する。
【解決手段】複数の温度検出対象それぞれに設けられ、温度検出対象ごとに温度を検出する複数の温度センサの異常を判定する異常判定方法であって、複数の温度センサの各々によって検出される温度データを取得する温度データ取得ステップ(S1、S7、S13)と、複数の温度センサ間における温度データの高低関係を算出する高低関係算出ステップ(S3、S9、S15)と、高低関係算出ステップで算出された温度データの高低関係と、複数の温度センサによって検出されるべき温度に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、複数の温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定ステップ(S4、S10、S16)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出対象に設けられた温度センサの異常を判定する異常判定方法、および当該方法を用いて異常を判定する車載充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車等の電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器は、バッテリーに供給される出力電圧を生成する複数のモジュールと、温度検出対象(例えば、モジュールを構成する素子)の温度を検出する複数の温度センサとを備え、該温度センサによって温度検出対象の温度が正常かどうかを監視している。
【0003】
上記車載充電器では、温度センサ自体に異常が発生すると、温度検出対象の温度が過度に上昇しても、この温度上昇を検出することができず、温度検出対象が熱により劣化してしまうおそれがある。このため、上記車載充電器では、温度センサ自体に異常が発生しているかどうかを早期に判定し、異常と判定された温度センサを修理・交換等する必要がある。
【0004】
温度センサの異常を判定する異常判定方法としては、従来から、温度センサによって検出された温度が予め設定された温度変化範囲(上限温度プロファイルと下限温度プロファイルによって挟まれた温度領域)から外れ、さらに、温度センサによって検出された温度の時間変化率が予め設定された閾値を超えた場合に、該温度センサを異常と判定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
なお、車載充電器における温度検出対象の温度は、外部環境や充電状態によって大きく変化するため、上記温度変化範囲は比較的大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−325110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、温度センサの異常は、「断線モード」、「短絡モード」、および「不変モード」の3つのモードに大別される。これらのモードのうち、「断線モード」では、温度センサによって検出された温度が不安定になり極端に高い値や低い値を示し、「短絡モード」では、温度センサによって検出された温度が急激に上昇または低下する。一方、「不変モード」では、温度センサによって検出された温度が一定の値のまま変化しなくなる。
【0007】
このため、上記従来の異常判定方法では、「断線モード」および「短絡モード」の異常が発生した温度センサは、該温度センサによって検出された温度が予め設定された温度変化範囲からすぐに外れるので早期に異常と判定されるものの、「不変モード」の異常が発生した温度センサは、異常と判定されるまでに時間がかかってしまう。
【0008】
図9は、上記従来の異常判定方法において、充電中に「不変モード」の異常が発生した温度センサTH1’が異常と判定されるまでにかかる時間を示す図である。同図において、時刻t1は、温度センサTH1’に「不変モード」の異常が発生した時刻であり、時刻t2は、温度センサTH1’によって検出された温度が予め設定された温度変化範囲から外れた時刻である。
【0009】
同図に示すように、上記従来の異常判定方法では、時刻t1において温度センサTH1’に「不変モード」の異常が発生しても、時刻t1〜t2間は温度センサTH1’によって検出された温度が予め設定された温度変化範囲内に収まっているので、時刻t2を過ぎるまで温度センサTH1’を異常と判定することができない。
その結果、上記従来の異常判定方法では、時刻t1〜t2間に何らかの要因で温度検出対象の温度が過度に上昇しても、この過度の温度上昇を検出することができず、温度検出対象が熱により劣化してしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、温度センサの異常を早期に判定することができる異常判定方法および当該方法を用いて異常を判定する車載充電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る温度センサの異常判定方法は、複数の温度検出対象それぞれに設けられ、温度検出対象ごとに温度を検出する複数の温度センサの異常を判定する異常判定方法であって、
複数の温度センサの各々によって検出される温度データを取得する温度データ取得ステップと、
複数の温度センサ間における温度データの高低関係を算出する高低関係算出ステップと、
高低関係算出ステップで算出された温度データの高低関係と、複数の温度センサによって検出されるべき温度に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、複数の温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定ステップと、を備え、
温度データ取得ステップ、高低関係算出ステップ、および異常判定ステップの一連のステップを繰り返し実行することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、高低関係算出ステップで算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係とを比較して、複数の温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定ステップを備えているので、
「不変モード」の異常が発生した温度センサから取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れていなくても、高低関係算出ステップで算出された温度データの高低関係が、予め設定された温度データの高低関係と異なっていれば、「不変モード」の異常が発生した温度センサを異常と判定することができる。
【0013】
また、上記異常判定ステップは、上記比較において、算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係とが所定回数連続して異なっていた場合に、該温度データを取得した温度センサを異常と判定してもよい。
【0014】
この構成によれば、一時的に発生したノイズ等の影響を受けた温度データに基づいて算出された高低関係が予め設定された温度データの高低関係と異なった場合に、該温度データを取得した温度センサを異常と判定してしまうのを回避することができる。
【0015】
また、上記複数の温度センサは、他の温度センサとの間で予め設定された温度データの高低関係が明白な温度センサと、不明な温度センサとからなり、
異常判定ステップは、予め設定された温度データの高低関係が不明な温度センサ間についての比較をスキップし、予め設定された温度データの高低関係が明白な温度センサ間についての比較を実行することにより、複数の温度センサが異常であるか否かを判定してもよい。
【0016】
この構成によれば、異常判定ステップは、予め設定された温度データの高低関係が不明な温度センサ間についての比較をスキップするので、検出されるべき温度の高低関係を定めることができないような場所に設けられた温度センサであっても異常の有無を判定することができる。
【0017】
また、上記比較に基づく複数の温度センサの異常判定ステップを第1異常判定ステップとしたとき、
温度データと、該温度データの時間変化を想定した温度プロファイルに基づいて設定された温度変化範囲とを比較して、温度データが温度変化範囲から外れた場合に、温度データを取得した温度センサを異常と判定する第2異常判定ステップを、さらに備えていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、取得した温度データが該温度データの時間変化を想定した温度変化範囲から外れた場合、第1異常判定ステップで異常と判定していなくても、第2異常判定ステップで該温度データを取得した温度センサを異常と判定することができるので、温度センサの異常をより早期に判定することができる。
【0019】
さらに、上記異常判定方法では、上記複数の温度検出対象に、モジュールを構成する複数の素子のうち最も高温となる素子と、モジュールを少なくとも1つ収納する筺体内の雰囲気温度とが含まれていてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る車載充電器は、交流の入力電圧に基づいて直流の出力電圧を生成し、該出力電圧を用いて電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器であって、
入力電圧の力率を改善して直流電圧を生成するPFCモジュールと、直流電圧を昇圧または降圧してバッテリーに供給される出力電圧を生成するインバータモジュールと、PFCモジュールおよびインバータモジュールを制御する制御モジュールと、PFCモジュール、インバータモジュール、および制御モジュールを内部に収納する筺体と、PFCモジュールを構成する素子、インバータモジュールを構成する素子、および筺体のうち、2以上に各々配された2以上の温度センサを備え、
制御モジュールは、温度センサの各々によって検出される温度データを取得する温度データ取得部と、温度センサ間における温度データの高低関係を算出する高低関係算出部と、高低関係算出部で算出された温度データの高低関係と、温度センサによって検出されるべき温度の高低関係に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、温度センサを異常と判定した場合に、PFCモジュールおよびインバータモジュールを制御して出力電圧の供給を停止させる出力停止部と、を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、高低関係算出部で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定部を有しているので、
「不変モード」の異常が発生した温度センサから取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れていなくても、高低関係算出部で算出された温度データの高低関係が、予め設定された温度データの高低関係と異なっていれば、「不変モード」の異常が発生した温度センサを異常と判定することができる。
【0022】
上記車載充電器における制御モジュールは、上記比較に基づく温度センサの異常を判定する異常判定部を第1異常判定部としたとき、
温度データと、該温度データの時間変化を想定した温度プロファイルに基づいて設定された温度変化範囲とを比較して、温度データが温度変化範囲から外れた場合に、温度データを取得した温度センサを異常と判定する第2異常判定部を、さらに有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れた場合、第1異常判定部で異常と判定していなくても、第2異常判定部で該温度データを取得した温度センサを異常と判定することができるので、温度センサの異常をより早期に判定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、温度センサの「不変モード」の異常を早期に判定することができる異常判定方法を提供すること、および温度センサの「不変モード」の異常を早期に判定する異常判定部を有する車載充電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車載充電器のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態における温度センサの温度プロファイルを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態において、温度センサが異常と判定されるまでにかかる時間を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る異常判定方法のフローチャートである。
【図5】本発明における第2異常判定ステップのフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る異常判定方法のフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車載充電器のブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る異常判定方法のフローチャートである。
【図9】従来の異常判定方法において、温度センサが異常と判定されるまでにかかる時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0027】
[第1実施形態]
まず始めに、本発明の第1実施形態に係る車載充電器1の構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、車載充電器1は、100V/200V系の商用交流電源(不図示)から供給された交流の入力電圧に基づいて直流の出力電圧を生成し、その出力電圧を用いて電気自動車に搭載されたバッテリー2を充電するものであり、PFCモジュール3と、インバータモジュール4と、制御モジュール5と、PFCモジュール3、インバータモジュール4、および制御モジュール5を内部に収納する筺体6とを備えている。
【0029】
商用交流電源から供給された交流の入力電圧は、PFCモジュール3で力率が改善され、かつ直流電圧に整流されてインバータモジュール4に供給される。インバータモジュール4に供給された直流電圧は、昇圧または降圧された後に、直流の出力電圧としてバッテリー2に供給される。
【0030】
PFCモジュール3は、商用交流電源から供給された交流の入力電圧を直流電圧に整流するダイオードブリッジ回路と、入力電圧の力率を改善する力率改善回路と、ダイオードブリッジ回路により整流された直流電圧を昇圧する昇圧回路とを有している。昇圧回路に含まれているスイッチ素子の近傍には、該スイッチ素子の温度を検出するサーミスタ(第1の温度センサ)TH1が設けられている。
【0031】
インバータモジュール4は、PFCモジュール3から供給された直流電圧を交流電圧に変換するフルブリッジ回路と、フルブリッジ回路で変換された交流電圧を昇圧または降圧するトランスと、トランスで昇圧または降圧された交流電圧を整流するダイオードブリッジ回路とを有している。
フルブリッジ回路に含まれているスイッチ素子の近傍には、該スイッチ素子の温度を検出するサーミスタ(第2の温度センサ)TH2が設けられている。
【0032】
PFCモジュール3およびインバータモジュール4を収納する筺体6内における、PFCモジュール3およびインバータモジュール4から離れた場所(例えば、図1の筺体6内の左隅)には、筺体6の内部温度(雰囲気温度)を検出するサーミスタ(第3の温度センサ)TH3が設けられている。
【0033】
制御モジュール5は、PFCモジュール3およびインバータモジュール4を制御して、バッテリー2に対する出力電圧の供給を開始/停止させるものであり、温度データ取得部51と、高低関係算出部52と、記憶部53と、第1異常判定部54と、第2異常判定部55と、出力停止部56とを有している。
【0034】
温度データ取得部51は、サーミスタTH1〜TH3によって検出される温度データT(TH1)、T(TH2)、T(TH3)を所定周期でサンプリングすることにより、繰り返し取得する。取得したサーミスタTH1〜TH3の温度データは、RAMやEEPROM等からなる記憶部53に格納される。
【0035】
高低関係算出部52は、温度データ取得部51で取得したサーミスタTH1〜TH3の温度データの高低関係を算出する。
なお、サーミスタTH1〜TH3間の温度データの高低関係は、各1つの温度データの高低関係に基づいて算出してもよいし、複数の温度データ平均値の高低関係に基づいて算出してもよい。
【0036】
第1異常判定部54は、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、サーミスタTH1〜TH3によって検出されるべき温度の高低関係に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、サーミスタTH1〜TH3が異常であるか否かを判定する。
【0037】
サーミスタTH1〜TH3によって検出されるべき温度の時間変化(温度プロファイル)は、車載充電器1の仕様、PFCモジュール3およびインバータモジュール4の仕様、スイッチ素子(温度検出対象)の特性等により予測することができる。
本実施形態では、サーミスタTH1〜TH3によって検出されるべき温度の高低関係が、図2に示すとおりになるので、この高低関係に基づいて定められる温度データの高低関係は、T(TH1)<T(TH2)<T(TH3)となる。
サーミスタTH1〜TH3によって検出されるべき温度の高低関係に基づいて予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)<T(TH3))に関するデータは、記憶部53に予め格納されている。
【0038】
第1異常判定部54は、記憶部53に予め格納された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)<T(TH3))と高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係とを比較して、算出された温度データの高低関係がT(TH1)<T(TH2)<T(TH3)となっていれば、全サーミスタTH1〜TH3を正常と判定し、算出された温度データの高低関係がT(TH1)<T(TH2)<T(TH3)となっていなければ、異常と判定する。
例えば、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係がT(TH2)<T(TH1)<T(TH3)となっていれば、サーミスタTH1とサーミスタTH3の関係は一致しているが、サーミスタTH1とサーミスタTH2の関係は異なっているので、第1異常判定部54はサーミスタTH1およびサーミスタTH2を異常と判定する。
【0039】
なお、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係がT(TH2)<T(TH1)<T(TH3)となっていた場合は、サーミスタTH1またはサーミスタTH2のいずれか一方に異常が発生していると考えられるので、第1異常判定部54は、実際に検出した温度と検出されるべき温度(図2の温度プロファイル)との差が大きい方のサーミスタを異常と判定することが好ましい。
【0040】
また、第1異常判定部54は、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)<T(TH3))とが所定回数連続して異なっていた場合に、異なる結果を示したサーミスタを異常と判定する。
このため、第1異常判定部54は、温度データ取得部51が一時的に発生したノイズ等の影響を受けた温度データを取得したことにより、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係が、予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)<T(TH3))と異なった場合であっても、該温度データの取得元であるサーミスタを正常と判定することができる。
【0041】
第2異常判定部55は、温度データ取得部51で取得したサーミスタTH1〜TH3の温度データと、該温度データの時間変化を想定したサーミスタTH1〜TH3の温度プロファイル(図2参照)に所定温度幅を持たせたサーミスタTH1〜TH3の温度変化範囲(図3参照)とを比較することにより、サーミスタTH1〜TH3が異常であるか否かを判定する。
【0042】
具体的には、第2異常判定部55は、温度データ取得部51で取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れている場合に、該温度データの取得元であるサーミスタを異常と判定し、温度データ取得部51で取得した温度データが予め設定された温度変化範囲内に収まっている場合に、該温度データの取得元であるサーミスタを正常と判定する。
【0043】
出力停止部56は、第1異常判定部54または第2異常判定部55において、サーミスタTH1〜TH3の少なくとも1つが異常と判定されると、PFCモジュール3およびインバータモジュール4を制御して、バッテリー2に対する出力電圧の供給を停止させる。
【0044】
図3は、充電中に、サーミスタTH2に「不変モード」の異常が発生してから、サーミスタTH2が異常と判定されるまでにかかる時間を示す図である。
同図において、時刻t1は、サーミスタTH2に「不変モード」の異常が発生した時刻であり、時刻t2は、サーミスタTH2の温度データがサーミスタTH1の温度データに等しくなった時刻であり、時刻t3は、第1異常判定部54がサーミスタTH2を異常と判定した時刻であり、時刻t4は、第2異常判定部55がサーミスタTH2を異常と判定した時刻である。
【0045】
図3に示すように、時刻t1においてサーミスタTH2に「不変モード」の異常が発生すると、サーミスタTH2によって検出された温度は、一定の値のまま変化しなくなる。一方、サーミスタTH1によって検出された温度は、時間の経過とともに温度プロファイル通りに上昇していく。
【0046】
時刻t1<t<t2間は、高低関係算出部52で算出される温度データの高低関係がT(TH1)<T(TH2)となる。そして、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2))と予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2))との比較では、両者が一致する結果となるので、第1異常判定部54はサーミスタTH2を正常と判定する。
また、時刻t1<t<t2間は、サーミスタTH2の温度データが予め設定されたサーミスタTH2の温度変化範囲内に収まっているので、第2異常判定部55もサーミスタTH2を正常と判定する。
【0047】
時刻t2≦t<t間は、サーミスタTH2の温度データがサーミスタTH1の温度データ以下になるので、高低関係算出部52で算出される温度データの高低関係もT(TH1)≧T(TH2)となる。
そして、高低関係算出部52で算出される温度データの高低関係(T(TH1)≧T(TH2))と予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2))との比較では、両者が異なる結果になるので、第1異常判定部54はサーミスタTH2を異常と判定しようとする。しかしながら、時刻t2≦t<t間は、上記異なる結果が所定回数(例えば、10回)に達していないため、第1異常判定部54はサーミスタTH2を正常と判定する。すなわち、時刻t2≦t<t間は、温度データ取得ステップ、高低関係算出ステップ、および異常判定ステップの一連のステップを繰り返し実行する実行回数が予め設定された設定回数に満たないため、T(TH1)≧T(TH2)となっていても、第1異常判定部54は異常と判定しない。
【0048】
時刻t3において、上記異なる結果が所定回数に達すると、第1異常判定部54はサーミスタTH2を異常と判定する。
なお、時刻t3においては、サーミスタTH2の温度データがサーミスタTH2の温度変化範囲内に収まっているので、第2異常判定部55はサーミスタTH2を正常と判定する。
【0049】
時刻t4において、サーミスタTH2の温度データがサーミスタTH2の温度変化範囲から外れると、第2異常判定部55もサーミスタTH2を異常と判定する。
【0050】
このように、本実施形態に係る車載充電器1では、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、サーミスタTH1〜TH3が異常であるか否かを判定する第1異常判定部54を有しているので、「不変モード」の異常が発生したサーミスタから取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れていなくても(第2異常判定部55がサーミスタを正常と判定していても)、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係が、予め設定された温度データの高低関係と異なっていれば、第1異常判定部54が「不変モード」の異常が発生した温度センサを異常と判定する。
このため、本実施形態に係る車載充電器1によれば、サーミスタTH1〜TH3の「不変モード」の異常を早期に判定することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る車載充電器1では、「断線モード」または「短絡モード」の異常が発生したサーミスタから取得した温度データが予め設定された温度変化範囲から外れた場合、第1異常判定部54が該温度データの取得元であるサーミスタを異常と判定していなくても、第2異常判定部55が異常と判定するので、「不変モード」の異常だけでなく、「断線モード」および「短絡モード」の異常も早期に判定することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る車載充電器1では、サーミスタTH1〜TH3の異常を判定するための異常判定用回路等のハードウェアを新たに搭載することなく、制御モジュール5内のソフトウェア(第1異常判定部54、第2異常判定部55等)によってサーミスタTH1〜TH3の異常を判定することができる。すなわち、本実施形態に係る車載充電器1では、低コストでサーミスタTH1〜TH3の異常を早期に判定することができる。
【0053】
次に、図4および図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る異常判定方法について説明する。
【0054】
本実施形態に係る異常判定方法では、充電が開始されると制御モジュール5において異常検知プログラムが実行される。なお、本実施形態に係る異常判定方法では、温度データ取得部51が、サーミスタTH1〜TH3の温度データをそれぞれ2ms周期で取得している。
異常検知プログラムが実行されると、図4に示すように、まず、温度データ取得部51が、サーミスタTH1〜TH3の温度データを取得する(S0)。
続いて、温度データ取得部51が、サーミスタTH1の温度データを取得し(温度データ取得ステップ)(S1)、第2異常判定部55が、サーミスタTH1の温度データとサーミスタTH1の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH1が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S2)。
【0055】
第2異常判定ステップは、図5に示すステップからなる。同図に示すように、第2異常判定部55が、記憶部53に予め格納されているサーミスタTH1の温度変化範囲を読み出し(S2−1)、読み出したサーミスタTH1の温度変化範囲と温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1の温度データとを比較する(S2−2)。
【0056】
比較の結果、サーミスタTH1の温度データがサーミスタTH1の温度変化範囲から外れていた場合は(S2−2でNo)、第2異常判定部55がサーミスタTH1を異常と判定する(S2−3)。
【0057】
第2異常判定部55によりサーミスタTH1が異常と判定されると、出力停止部56が、PFCモジュール3およびインバータモジュール4を制御して出力電圧の供給を停止させる等の異常対応処理を実行する(S2−4)。出力停止部56による異常対応処理が実行されると、異常検知プログラムは終了する。
【0058】
一方、比較の結果、サーミスタTH1の温度データがサーミスタTH1の温度変化範囲内に収まっていた場合は(S2−2でYes)、第2異常判定部55がサーミスタTH1を正常と判定する。
【0059】
第2異常判定部55によりサーミスタTH1が正常と判定されると、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1の温度データと、温度データ取得部51により取得されていたサーミスタTH2、TH3の温度データとの高低関係を算出する(高低関係算出ステップ)(S3)。
【0060】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH3間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、サーミスタTH1〜TH3によって検出されるべき温度(図2の温度プロファイル)の高低関係に基づいて予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)かつT(TH1)<T(TH3))とを比較して、サーミスタTH1が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S4)。
【0061】
比較の結果、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)かつT(TH1)<T(TH3))とが異なっていた場合は(S4でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH1を異常と判定する(S5)。第1異常判定部54において異常判定がなされると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S6)、異常検知プログラムが終了する。
【0062】
一方、比較の結果、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)かつT(TH1)<T(TH3))とが一致していた場合は(S4でYes)、第1異常判定部54が、サーミスタTH1を正常と判定する。
【0063】
第1異常判定部54によりサーミスタTH1が正常と判定されると、温度データ取得部51が、サーミスタTH2の温度データを取得し(S7)、第2異常判定部55が、図5に示すステップの通り、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH2の温度データと、記憶部53に予め格納されているサーミスタTH2の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH2が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S8)。
【0064】
第2異常判定部55によりサーミスタTH2が正常と判定されると、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1、TH2の温度データと、温度データ取得部51により取得されていたサーミスタTH3の温度データとの高低関係を算出する(S9)。
【0065】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH3間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH2)>T(TH1)かつT(TH2)<T(TH3))とを比較して、サーミスタTH2が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S10)。
【0066】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S10でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH2を異常と判定する(S11)。その後、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S12)、異常検知プログラムが終了する。
【0067】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S10でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH2を正常と判定する。
【0068】
第1異常判定部54によりサーミスタTH2が正常と判定されると、温度データ取得部51が、サーミスタTH3の温度データを取得し(S13)、第2異常判定部55が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH3の温度データと、記憶部53に予め格納されているサーミスタTH3の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH3が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S14)。
【0069】
第2異常判定部55によりサーミスタTH3が正常と判定されると、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1〜TH3の温度データの高低関係を算出する(S15)。
【0070】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH3間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH3)>T(TH1)かつT(TH3)>T(TH2))とを比較して、サーミスタTH3が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S16)。
【0071】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S16でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH3を異常と判定する(S17)。その後、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S18)、異常検知プログラムが終了する。
【0072】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S16でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH3を正常と判定する。
【0073】
第1異常判定部54によりサーミスタTH3が正常と判定されると、温度データ取得部51が、再びサーミスタTH1の温度データを取得する(S1)。本実施形態に係る異常判定方法では、異常検知プログラムは、出力停止部56による異常対応処理が実行されるまで、または充電が終了するまで継続される。
【0074】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る異常判定方法について説明する。
【0075】
第1実施形態に係る異常判定方法では、まず、サーミスタTH1〜TH3の温度データが取得された(S0)後、サーミスタTH1に対して第1異常判定ステップおよび第2異常判定ステップを実行してから、サーミスタTH2、TH3に対して順次第1異常判定ステップおよび第2異常判定ステップを実行していたが、本実施形態に係る異常判定方法では、全サーミスタTH1〜TH3に対して第2異常判定ステップを実行してから、全サーミスタTH1〜TH3に対して第1異常判定ステップを実行する。
【0076】
具体的には、図6に示すように、異常検知プログラムが実行されると、温度データ取得部51がサーミスタTH1の温度データを取得し(温度データ取得ステップ)(S19)、第2異常判定部55が、サーミスタTH1の温度データと、記憶部53に予め格納されているサーミスタTH1の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH1が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S20)。
【0077】
第2異常判定部55によりサーミスタTH1が正常と判定されると、温度データ取得部51がサーミスタTH2の温度データを取得し(S21)、第2異常判定部55が、サーミスタTH2の温度データと、サーミスタTH2の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH2が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S22)。
【0078】
同様に、第2異常判定部55によりサーミスタTH2が正常と判定されると、温度データ取得部51がサーミスタTH3の温度データを取得し(S23)、第2異常判定部55が、サーミスタTH3の温度データと、サーミスタTH3の温度変化範囲とを比較して、サーミスタTH3が異常であるか否かを判定する(第2異常判定ステップ)(S24)。
【0079】
第2異常判定部55によりサーミスタTH3が正常と判定されると、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1〜TH3の温度データの高低関係を算出する(高低関係算出ステップ)(S25)。
【0080】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH3間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54は、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)かつT(TH2)<T(TH3))とを比較して、サーミスタTH1〜TH3が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S26)。
【0081】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S26でNo)、第1異常判定部54が、異なる結果を示したサーミスタのうち、検出されるべき温度(図2の温度プロファイル)との差が大きい方のサーミスタを異常と判定する(S27)。すなわち、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係がT(TH1)>T(TH2)かつT(TH2)<T(TH3)となった場合、第1異常判定部54は、サーミスタTH1、TH2のうち検出されるべき温度との差が大きい方のサーミスタを異常と判定する。
【0082】
第1異常判定部54によりサーミスタが異常と判定されると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S28)、異常検知プログラムが終了する。
【0083】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S26でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH1〜TH3を正常と判定する。
【0084】
第1異常判定部54によりサーミスタTH1〜TH3が正常と判定されると、温度データ取得部51は、再びサーミスタTH1の温度データを取得する(S19)。本実施形態に係る異常判定方法では、異常検知プログラム(温度データ取得ステップ、高低関係算出ステップ、および異常判定ステップの一連のステップ)は、出力停止部56による異常対応処理が実行されるまで、または充電が終了するまで繰り返し継続される。
【0085】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る異常判定方法について説明する。
【0086】
本実施形態に係る異常判定方法は、図7に示すような車載充電器10内に設けられたサーミスタTH1〜TH4の異常を判定する方法である。車載充電器10は、インバータモジュール4内にサーミスタTH4が設けられていること、および制御モジュール50が第2異常判定部55を有していないこと以外の点において、第1実施形態に係る車載充電器1と共通している。なお、本実施形態に係る異常判定方法では、温度データ取得部51が、サーミスタTH4の温度データを2ms周期で取得している。
【0087】
また、本実施形態では、サーミスタTH2によって検出されるべき温度とサーミスタTH4によって検出されるべき温度との高低関係が、外部環境や充電状況変化に応じて変わるので、両者の高低関係を定めることができない。すなわち、サーミスタTH1〜TH4の温度データの高低関係は、T(TH1)<((T(TH2)<T(TH4)) or (T(TH2)>T(TH4)))<T(TH3)となる。
【0088】
このため、上記温度の高低関係に基づいて予め定められるサーミスタTH1〜TH4の温度データの高低関係のうち、サーミスタTH2、TH4間の温度データの高低関係は、「不明」として記憶部53に格納されている。
【0089】
図8は、本実施形態に係る異常判定方法のフローチャートである。同図に示すように、異常検知プログラムが実行されると、図4に示すように、まず、温度データ取得部51がサーミスタTH1〜TH4の温度データを取得する(S0)。
続いて、温度データ取得部51がサーミスタTH1の温度データを取得し(温度データ取得ステップ)(S29)、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1の温度データと、温度データ取得部51により取得されていたサーミスタTH2〜TH4の温度データとの高低関係を算出する(高低関係算出ステップ)(S30)。
【0090】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH4間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH1)<T(TH2)、T(TH1)<T(TH3)かつT(TH1)<T(TH4))とを比較して、サーミスタTH1が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S31)。
【0091】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S31でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH1を異常と判定する(S32)。第1異常判定部54によりサーミスタTH1が異常と判定されると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S33)、異常検知プログラムが終了する。
【0092】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S31でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH1を正常と判定する。
【0093】
第1異常判定部54によりサーミスタTH1が正常と判定されると、温度データ取得部51がサーミスタTH2の温度データを取得し(S34)、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1、TH2の温度データと、温度データ取得部51により取得されていたサーミスタTH3、TH4の温度データとの高低関係を算出する(S35)。
【0094】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH4間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、温度データの高低関係が「不明」とされたサーミスタTH2、TH4間の温度データの高低関係についての比較をスキップし、温度データの高低関係が明白なサーミスタTH2、TH1間およびサーミスタTH2、TH3間の温度データの高低関係(T(TH2)>T(TH1)かつT(TH2)<T(TH3))についての比較をして、サーミスタTH2が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S36)。
【0095】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S36でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH2を異常と判定する(S37)。第1異常判定部54によりサーミスタTH2が異常と判定されると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S38)、異常検知プログラムが終了する。
【0096】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S36でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH2を正常と判定する。
【0097】
第1異常判定部54によりサーミスタTH2が正常と判定されると、温度データ取得部51がサーミスタTH3の温度データを取得し(S39)、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1〜TH3の温度データと、温度データ取得部51により取得されていたサーミスタTH4の温度データとの高低関係を算出する(S40)。
【0098】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH4間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、高低関係算出部52で算出された温度データの高低関係と、予め設定された温度データの高低関係(T(TH3)>T(TH1)、T(TH3)>T(TH2)かつT(TH3)>T(TH4))とを比較することにより、サーミスタTH3が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S41)。
【0099】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S41でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH3を異常と判定する(S42)。第1異常判定部54によりサーミスタTH3が異常と判定されると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S43)、異常検知プログラムが終了する。
【0100】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S41でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH3を正常と判定する。
【0101】
第1異常判定部54によりサーミスタTH3が正常と判定されると、温度データ取得部51がサーミスタTH4の温度データを取得し(S44)、高低関係算出部52が、温度データ取得部51により取得されたサーミスタTH1〜TH4の温度データの高低関係を算出する(S45)。
【0102】
高低関係算出部52によりサーミスタTH1〜TH4間の温度データの高低関係が算出されると、第1異常判定部54が、温度データの高低関係が「不明」とされたサーミスタTH4、TH2間の温度データの高低関係についての比較をスキップし、温度データの高低関係が明白なサーミスタTH4、TH1間およびサーミスタTH4、TH3間の温度データの高低関係(T(TH4)>T(TH1)かつT(TH4)<T(TH3))についての比較をして、サーミスタTH4が異常であるか否かを判定する(第1異常判定ステップ)(S46)。
【0103】
比較の結果、温度データの高低関係が異なっていた場合は(S46でNo)、第1異常判定部54がサーミスタTH4を異常と判定する(S47)。第1異常判定部54によりサーミスタTH4が異常と判定されると、出力停止部56による異常対応処理が実行され(S48)、異常検知プログラムが終了する。
【0104】
一方、比較の結果、温度データの高低関係が一致していた場合は(S46でYes)、第1異常判定部54がサーミスタTH4を正常と判定する。
【0105】
第1異常判定部54によりサーミスタTH4が正常と判定されると、温度データ取得部51は、再びサーミスタTH1の温度データを取得する(S29)。本実施形態に係る異常判定方法では、異常検知プログラム(温度データ取得ステップ、高低関係算出ステップ、および異常判定ステップの一連のステップ)は、出力停止部56による異常対応処理が実行されるまで、または充電が終了するまで繰り返し継続される。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0107】
例えば、上記第1実施形態および上記第2実施態では、第1異常判定ステップと第2異常判定ステップの両方を実行しているが、サーミスタTH1〜TH3の「不変モード」の異常を早期に判定することに特化するのであれば、第1異常判定ステップだけを実行してもよい。
【0108】
また、上記第3実施形態では、温度データ取得ステップを実行した後すぐに高低関係算出ステップを実行しているが、制御モジュール50に第2異常判定部55を設け、高低関係算出ステップを実行する前に第2異常判定ステップを実行してもよい。
【0109】
上記第1および上記第2実施形態では、サーミスタTH1、TH2、TH3の順に温度データを取得し、他のサーミスタとの間で高低関係を算出しているが、サーミスタの温度データの取得および高低関係の算出の順序は任意である。また、サーミスタTH1、TH2、TH3の温度データの取得を同時に行ってもよいし、第1実施形態においては、対象とする一のサーミスタと他のサーミスタとの高低関係の算出についても、サーミスタTH1、TH2、TH3の温度データを取得した後であれば、同時に行ってもよい。
同様にして、上記第3実施形態では、サーミスタTH1、TH2、TH3、TH4の順に温度データを取得し、他のサーミスタとの間で高低関係を算出しているが、サーミスタの温度データの取得および高低関係の算出の順序は任意である。また、サーミスタTH1、TH2、TH3、TH4の温度データの取得を同時に行ってもよいし、対象とする一のサーミスタと他のサーミスタとの高低関係の算出についても、サーミスタTH1、TH2、TH3、TH4の温度データを取得した後であれば、同時に行ってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、温度データ取得部51が、サーミスタTH1〜TH4の温度データをそれぞれ同じ周期(2ms)で取得しているが、この周期は、サーミスタTH1〜TH4ごとに任意に設定することができる。
【0111】
さらに、上記実施形態では、PFCモジュール3の中で最も高温になるスイッチ素子の近傍にサーミスタTH1が設けられ、インバータモジュール4の中で最も高温になるスイッチ素子の近傍にサーミスタTH2が設けられ、車載充電器1、10内で最も高温になる筺体6内部の隅近傍にサーミスタTH3が設けられているが、サーミスタTH1〜TH3の位置は、目的に応じて任意に変更することができる。
【0112】
さらに、上記実施形態では、温度センサとしてサーミスタを用いているが、温度検出対象の温度を検出できるものであればサーミスタ以外の温度センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1、10 車載充電器
2 バッテリー
3 PFCモジュール
4 インバータモジュール
5、50 制御モジュール
6 筺体
51 温度データ取得部
52 高低関係算出部
53 記憶部
54 第1異常判定部
55 第2異常判定部
56 出力停止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度検出対象それぞれに設けられ、前記温度検出対象ごとに温度を検出する複数の温度センサの異常を判定する異常判定方法であって、
前記複数の温度センサの各々によって検出される温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記複数の温度センサ間における前記温度データの高低関係を算出する高低関係算出ステップと、
前記高低関係算出ステップで算出された前記温度データの高低関係と、前記複数の温度センサによって検出されるべき温度に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、前記複数の温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定ステップと、
を備え、
前記温度データ取得ステップ、前記高低関係算出ステップ、および前記異常判定ステップの一連のステップを繰り返し実行することを特徴とする温度センサの異常判定方法。
【請求項2】
前記異常判定ステップは、前記比較において、前記算出された前記温度データの高低関係と、前記予め設定された温度データの高低関係とが所定回数連続して異なっていた場合に、前記温度データを取得した温度センサを異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の温度センサの異常判定方法。
【請求項3】
前記複数の温度センサは、他の温度センサとの間で予め設定された温度データの高低関係が明白な温度センサと、不明な温度センサとからなり、
前記異常判定ステップは、前記予め設定された温度データの高低関係が不明な温度センサ間についての前記比較をスキップし、前記予め設定された温度データの高低関係が明白な温度センサ間についての前記比較を実行することにより、前記複数の温度センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の温度センサの異常判定方法。
【請求項4】
前記比較に基づく前記複数の温度センサの異常判定ステップを第1異常判定ステップとしたとき、
前記温度データと、該温度データの時間変化を想定した温度プロファイルに基づいて設定された温度変化範囲とを比較して、前記温度データが前記温度変化範囲から外れた場合に、前記温度データを取得した温度センサを異常と判定する第2異常判定ステップを、さらに備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の温度センサの異常判定方法。
【請求項5】
前記複数の温度検出対象に、モジュールを構成する複数の素子のうち最も高温となる素子と、前記モジュールを少なくとも1つ収納する筺体内の雰囲気温度とが含まれることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の温度センサの異常判定方法。
【請求項6】
交流の入力電圧に基づいて直流の出力電圧を生成し、該出力電圧を用いて電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器であって、
前記入力電圧の力率を改善して直流電圧を生成するPFCモジュールと、
前記直流電圧を昇圧または降圧して前記バッテリーに供給される前記出力電圧を生成するインバータモジュールと、
前記PFCモジュールおよび前記インバータモジュールを制御する制御モジュールと、
前記PFCモジュール、前記インバータモジュール、および前記制御モジュールを内部に収納する筺体と、
前記PFCモジュールを構成する素子、前記インバータモジュールを構成する素子、および前記筺体のうち、2以上に各々配された2以上の温度センサを備え、
前記制御モジュールは、
前記温度センサの各々によって検出される温度データを取得する温度データ取得部と、
前記温度センサ間における前記温度データの高低関係を算出する高低関係算出部と、
前記高低関係算出部で算出された前記温度データの高低関係と、前記温度センサによって検出されるべき温度の高低関係に基づいて予め設定された温度データの高低関係とを比較することにより、前記温度センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記温度センサを異常と判定した場合に、前記PFCモジュールおよび前記インバータモジュールを制御して前記出力電圧の供給を停止させる出力停止部と、
を有することを特徴とする車載充電器。
【請求項7】
前記制御モジュールは、
前記比較に基づく前記温度センサの異常を判定する異常判定部を第1異常判定部としたとき、
前記温度データと、該温度データの時間変化を想定した温度プロファイルに基づいて設定された温度変化範囲とを比較して、前記温度データが前記温度変化範囲から外れた場合に、前記温度データを取得した温度センサを異常と判定する第2異常判定部を、さらに有することを特徴とする請求項6に記載の車載充電器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−122930(P2012−122930A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275569(P2010−275569)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】