説明

温度補償回路及び電力増幅器

【課題】高精度な温度補償を実現できる温度補償回路を提案する。
【解決手段】バイアス回路20は、絶対温度に関して正の線形温度特性を有するトランジスタTr1,Tr2,Tr3の電流又は電圧の温度変化を相殺するように、絶対温度に関して負の線形温度特性を有する基準電流をベースバイアス電流としてそれぞれのトランジスタTr1,Tr2,Tr3に供給するCTAT回路30と、CTAT回路30の温度特性とトランジスタTr1,Tr2,Tr3の温度特性とのずれを補償するための温度特性補償回路40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源回路の温度特性と回路素子の温度特性とのずれを補償するための温度補償回路及び電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM方式(直交周波数分割多重方式)は、地上波デジタル放送、無線LAN、電力線モデム等で用いられるデジタル変調方式の1つであり、フェージングやマルチパスの影響を受け難い高品質な通信を可能とする利点を有している。この種のデジタル変調方式に用いられる電力増幅器には、高出力化や高効率化とともに低歪み化が要求されている。一般に、トランジスタは、入力信号の増加に対して出力信号が線形的に増加する線形領域と、入力信号の増加に対して出力信号の利得圧縮が生じる飽和領域とを有する入出力特性を有しており、飽和領域での信号増幅は出力信号の歪みをもたらすことが知られている。OFDM方式では、多数のシンボルが多重されるため、送信信号波形はガウス分布となり、PAR(ピーク対平均電力比)が大きくなる傾向がある。このため、OFDM方式に使用される電力増幅器では、トランジスタの動作出力点をそのトランジスタの飽和出力点から数dBバックオフした点に設定し、トランジスタをなるべく線形領域に近い領域で動作させて、低歪み化を実現させている。
【0003】
ところで、複数のトランジスタを多段接続してなる電力増幅器では、トランジスタの電流及び電圧が温度に応じて変化する温度特性を有しているため、温度変化に対して電力増幅器の利得を一定に保つためには、トランジスタの温度補償が重要な課題になる。例えば、正温度特性を有するトランジスタでは、温度上昇に伴って電流及び電圧が上昇するので、負温度特性を有するバイアス電源を用いることにより、トランジスタに流れる電流の温度変化をバイアス電流の温度変化で相殺し、一定のバイアス電流がトランジスタに供給されるように回路設計するのが好ましい。この種の温度補償技術に関連する文献として、例えば、特開2004−159213号公報が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−159123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際の回路設計においては、トランジスタに流れる電流の温度変化をバイアス電流の温度変化で完全に相殺する温度特性を有するバイアス電源を設計するのは困難であり、温度補償のずれが生じるため、電力増幅器の利得やP1dB(1dB利得圧縮点)を温度変化に対して一定に保つことが難しい。
【0006】
そこで、本発明は高精度な温度補償を実現できる温度補償回路を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係わる温度補償回路は、回路素子の電流又は電圧の温度変化を相殺するように回路素子に電流又は電圧を供給する温度補償機能を有する電源回路と、電源回路の温度特性と回路素子の温度特性とのずれを補償する温度特性補償回路を備える。斯かる構成によれば、電源回路から回路素子に供給される電流又は電圧の温度変化を高精度に補償することができる。
【0008】
温度特性補償回路は、一つ又は複数の温度補償抵抗と、温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子と、一つ又は複数の温度補償抵抗と温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子の中から温度に応じて選択された何れか一つを電源から電源回路に至る電流経路に接続するスイッチとを備えてもよい。単一の温度補償抵抗のみでは、広範囲な温度範囲における高精度な温度補償は困難であるが、一つ又は複数の温度補償抵抗と温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子の中から温度に応じて選択された最適な抵抗を用いて温度補償を行うことにより、精度の高い温度補償を実現できる。
【0009】
複数の温度補償抵抗は、正温度特性を有する第一の温度補償抵抗と、負温度特性を有する第二の温度補償抵抗とを含んでもよい。これにより、電源回路の温度特性を柔軟に補償できる。
【0010】
回路素子が温度上昇に伴って電流又は電圧が上昇する正温度特性を有する回路素子(例えばトランジスタ)である場合には、電源回路は、温度上昇に伴って電流又は電圧が低下する負温度特性を有する電源回路(例えば、CTAT(Complementary To Absolute Temperature)回路)が好ましい。一方、回路素子が温度上昇に伴って電流又は電圧が低下する負温度特性を有する回路素子(例えばダイオード)である場合には、電源回路は、温度上昇に伴って電流又は電圧が上昇する正温度特性を有する電源回路(例えば、PTAT(Proportional To Absolute Temperature)回路)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源回路の温度特性と回路素子の温度特性とのずれを高精度に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係わる電力増幅器の回路構成図である。
【図2】従来のバイアス回路の回路構成図である。
【図3】従来のバイアス回路の温度特性を示すグラフである。
【図4】実施例1に係わるバイアス回路の温度特性を示すグラフである。
【図5】実施例2に係わるバイアス回路の温度特性を示すグラフである。
【図6】実施例3に係わるバイアス回路の温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図を参照しながら本発明に関わる実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係わる電力増幅器10の回路構成を示す。電力増幅器10は、例えば、OFDM方式の無線信号を線形増幅するためのものであり、温度変化に対して利得及びP1dBを一定に保つように回路設計されている。電力増幅器10は、多段接続される複数のトランジスタTr1,Tr2,Tr3と、入力端子31とトランジスタTr1の入力とをインピーダンス整合するための入力整合回路32と、トランジスタTr1の出力とトランジスタTr2の入力とをインピーダンス整合するための段間整合回路33と、トランジスタTr2の出力とトランジスタTr3の入力とをインピーダンス整合するための段間整合回路34と、トランジスタTr3の出力と出力端子36とをインピーダンス整合するための出力整合回路35と、それぞれのトランジスタTr1,Tr2,Tr3にベースバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給することにより、バイアス点を制御するバイアス回路20を備える。
【0014】
トランジスタTr1,Tr2,Tr3は、無線信号を線形増幅するための増幅器であり、本実施形態では、ベース端子を入力端子とし、コレクタ端子を出力端子とするエミッタ接地バイポーラトランジスタを用いている。最前段のトランジスタTr1のベース端子B1は、入力整合回路32を介して入力端子31から信号を受け取り、そのエミッタ端子E1は接地されており、そのコレクタ端子C1は、コレクタバイアス電源Vcc1に接続されている。2段目のトランジスタTr2のベース端子B2は、段間整合回路33を介してコレクタ端子C1に接続されており、そのエミッタ端子E2は接地されており、そのコレクタ端子C2は、コレクタバイアス電源Vcc2に接続されている。最終段のトランジスタTr3のベース端子B3は、段間整合回路34を介してコレクタ端子C2に接続されており、そのエミッタ端子E3は接地されており、そのコレクタ端子C3は、コレクタバイアス電源Vcc3に接続されるとともに、出力整合回路35を介して出力端子36に信号を出力する。
【0015】
バイアス回路20は、絶対温度に関して正の線形温度特性を有するトランジスタTr1,Tr2,Tr3の電流又は電圧の温度変化を相殺するように、絶対温度に関して負の線形温度特性を有する基準電流をベースバイアス電流としてそれぞれのトランジスタTr1,Tr2,Tr3に供給するCTAT回路30と、CTAT回路30の温度特性とトランジスタTr1,Tr2,Tr3の温度特性とのずれを補償するための温度特性補償回路40を備える。温度特性補償回路40は、CTAT回路30の温度特性の負の傾きと、トランジスタTr1,Tr2,Tr3の温度特性の正の傾きとが相殺し、温度変化に依存しない一定のベースバイアス電流がトランジスタTr1,Tr2,Tr3に供給されるように、CTAT回路30の温度特性を補償する。温度特性補償回路40の詳細については後述する。
【0016】
ここで、バイアス回路20の動作について説明する。バイアス回路20の電源をオン/オフに切り替えることで、トランジスタTr1,Tr2,Tr3の動作を瞬時にオン/オフに切り替えることができる。コレクタバイアス電源Vcc1,Vcc2,Vcc3がオンした状態でバイアス回路20の電源をオフにすることで、トランジスタTr1,Tr2,Tr3に流れるバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3をオフにすることができる。バイアス電流Ib1,Ib2,Ib3が流れなければ、トランジスタTr1,Tr2,Tr3のコレクタ電流も殆ど流れないため、トランジスタTr1,Tr2,Tr3は、ほぼオフ状態となる。但し、コレクタバイアス電源Vcc1,Vcc2,Vcc3までもオフしてしまうと、トランジスタTr1,Tr2,Tr3の立ち上がりに時間を要するため、コレクタバイアス電源Vcc1,Vcc2,Vcc3をオンにしたまま、バイアス回路20の電源のオン/オフのみを制御する。つまり、コレクタバイアス電源Vcc1,Vcc2,Vcc3をオンさせることで、トランジスタTr1,Tr2,Tr3を準備状態にしておき、バイアス回路20の電源をオン/オフさせることで、トランジスタTr1,Tr2,Tr3の動作を制御する。
【0017】
なお、説明の便宜上、単一のCTAT回路30から全てのトランジスタTr1,Tr2,Tr3にバイアス電流を供給する回路構成を図示しているが、単一のCTAT回路から単一のトランジスタにバイアス電流を供給するように回路設計してもよい。高周波バイアス電流Ib1がバイアス回路20に逆流するのを阻止するためのチョークコイルLb1をバイアス回路20とベース端子B1との間のバイアス電流経路に介挿してもよく、高周波コレクタバイアス電流がコレクタバイアス電源Vcc1に逆流するのを阻止するためのチョークコイルLc1をコレクタバイアス電源Vcc1とコレクタ端子C1との間のバイアス電流経路に介挿してもよい。同様に、それぞれのトランジスタTr2,Tr3のバイアス電流経路にチョークコイルLb2,Lc2,Lb3,Lc3を介挿してもよい。
【0018】
温度特性補償回路40は、複数の温度補償抵抗41,42と、複数の温度補償抵抗41,42の中から温度に応じて選択された何れか一つの温度補償抵抗を電源VccからCTAT回路30に至る電流経路に接続するスイッチ43を備える。複数の温度補償抵抗41,42の中から温度に応じて何れか一つの温度補償抵抗を選択するための手段として、本実施形態では、温度に対応する電圧を出力する温度センサ46の出力電圧と所定温度に対応する基準電圧43とを比較して、その比較結果に基づいてスイッチ切り替え信号を出力する比較器44を例示する。例えば、比較器44は、温度センサ46の出力電圧が基準電圧34より小さい場合には、温度補償抵抗41を選択すべきことを指示するスイッチ切り替え信号をスイッチ43に出力し、温度センサ46の出力電圧が基準電圧34より大きい場合には、温度補償抵抗42を選択すべきことを指示するスイッチ切り替え信号をスイッチ43に出力する。スイッチ43は、比較器44から出力されるスイッチ切り替え信号に基づいて複数の温度補償抵抗41,42の中から何れか一つの温度補償抵抗を選択し、選択された温度補償抵抗を電源VccからCTAT回路30に至る電流経路に接続する。
【0019】
例えば、所定温度未満におけるトランジスタTr1,Tr2,Tr3の温度特性の正の傾きが急勾配であり、且つ所定温度以上におけるトランジスタTr1,Tr2,Tr3の温度特性の正の傾きが緩やかである場合には、所定温度未満におけるCTAT回路30の温度特性の負の傾きを急勾配に補正し、所定温度以上におけるCTAT回路30の温度特性の負の傾きを緩やかに補正する必要がある。そのためには、温度補償抵抗41として、温度上昇に伴って抵抗値が上昇する正温度特性を有するもの(例えば、サーミスタPTC又は白金測温抵抗体など)を使用し、温度補償抵抗42として、温度上昇に伴って抵抗値が低下する負温度特性を有するもの(例えば、サーミスタNTCなど)を使用するのが好ましい。
【0020】
ここで、図2乃至図3を参照しながら従来のバイアス回路の構成について説明する。従来のバイアス回路31は、ベース・エミッタ間が接続されてなるトランジスタから成るCTAT回路30と、電源VccとCTAT回路30との間に接続するバイアス抵抗32とを備える。CTAT回路30は、温度に関して適度に安定的なDC基準電圧を発生するバンドギャップ基準電圧回路である。このようなバンドギャップ基準電圧回路は、実質的に一定のベース・エミッタ電圧を発生させるバイポーラトランジスタの特性を利用しており、シリコントランジスタでは、ベース・エミッタ電圧は、0.5V〜0.8Vの範囲にある。トランジスタのベース・エミッタに生じる電圧は、負の温度係数を有しているため、CTAT回路30は、トランジスタのベース・エミッタに発生する電圧を利用した電源回路であり、バイアス抵抗32及びトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下により出力電圧Voutが決定する。バイアス抵抗32を調整することで、出力電圧Voutを調整できる。また、ベース・エミッタ間電圧は、負の温度係数を有しているため、出力電圧Voutも負の温度係数を有する。図3に示すように、出力電圧Voutの温度特性100は、バイアス抵抗32の温度特性によって定まり、どの温度においてもその温度変化はほぼ一定となる。従って、バイアス回路31からバイアス電流の供給を受ける増幅器の温度特性が温度に依存して変化してしまうと、増幅器に供給されるバイアス電流の温度変化をバイアス回路31の出力電圧Voutの温度特性100によって完全に補償することが困難になり、温度に依存してバイアス電流が変動する。これに対し、本実施形態に係わるバイアス回路20によれば、複数の温度補償抵抗41,42の中から温度に応じて選択された何れか一つの温度補償抵抗を電源VccからCTAT回路30に至る電流経路に切り替え接続することにより、トランジスタTr1,Tr2,Tr3の電流又は電圧の温度変化を相殺し、温度に依存しない一定のバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3をトランジスタTr1,Tr2,Tr3に供給することができる。
【0021】
なお、本実施形態において、複数の温度補償抵抗は必須ではなく、何れか一つ以上の温度補償抵抗を抵抗素子(温度補償機能を有しない抵抗素子)に置き換えてもよい。言い換えれば、温度特性補償回路40は、一つ又は複数の温度補償抵抗と、温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子とを含み、一つ又は複数の温度補償抵抗と温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子の中から温度に応じて選択された何れか一つを電源VccからCTAT回路30に至る電流経路に接続してもよい。
【実施例1】
【0022】
実施例1に係わる温度特性補償回路40は、温度補償抵抗41としてサーミスタPTCを使用し、温度補償抵抗42としてサーミスタNTCを使用する。サーミスタPTCは、温度上昇に伴い抵抗値が上昇する温度特性を有し、サーミスタNTCは、温度上昇に伴い抵抗値が減少する温度特性を有している。基準電圧45は、例えば、絶対温度T0に対応する電圧であり、比較器44は、基準電圧45と温度センサ36の出力電圧とを比較して、絶対温度がT0未満である場合には、温度補償抵抗41に切り替え接続することを指示するスイッチ切り替え信号をスイッチ43に出力し、絶対温度がT0以上である場合には、温度補償抵抗42に切り替え接続することを指示するスイッチ切り替え信号をスイッチ43に出力する。サーミスタPTCは、温度上昇に伴い抵抗値が上昇するため、絶対温度T0未満においてスイッチ43が温度補償抵抗41に切り替え接続すると、負温度特性を有するCTAT回路30を流れるバイアス電流が制限され、CTAT回路30の温度特性の負の傾きが急峻になる。図4に示すように、絶対温度T0未満では、温度特性補償回路40に接続するCTAT回路30の温度特性210は、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100よりも電圧及び電流の減少が急峻になる。一方、サーミスタNTCは、温度上昇に伴い抵抗値が減少するため、絶対温度T0以上においてスイッチ43が温度補償抵抗42に切り替え接続すると、負温度特性を有するCTAT回路30を流れるバイアス電流の減少が緩和され、CTAT回路30の温度特性の負の傾きが緩やかになる。図4に示すように、絶対温度T0以上では、温度特性補償回路40に接続するCTAT回路30の温度特性220は、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100よりも電圧及び電流の減少が緩やかになる。実施例1に関わる温度特性補償回路40によれば、絶対温度T0未満における温度特性の正の傾きが急勾配であり、且つ絶対温度T0以上における温度特性の正の傾きが緩やかであるトランジスタTr1,Tr2,Tr3に対して、温度依存性のない一定のバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給できる。なお、白金測温抵抗体は、温度上昇に伴い抵抗値が上昇する温度特性を有しているため、温度補償抵抗41として白金測温抵抗体を使用し、温度補償抵抗42としてサーミスタNTCを使用しても同様の作用効果を得ることができる。
【実施例2】
【0023】
実施例2に係わる温度特性補償回路40は、温度補償抵抗41として白金測温抵抗体を使用し、温度補償抵抗42に替えて温度補償機能を有しない抵抗素子(例えば、チップ抵抗素子、金属皮膜抵抗素子)を使用する。絶対温度T0未満におけるCTAT回路30の温度特性210が、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100よりも電圧及び電流の減少が急峻になる点は実施例1と同様である。一方、抵抗器の温度特性は、従来のバイアス抵抗32の温度特性と同様であるため、図5に示すように、絶対温度T0以上におけるCTAT回路30の温度特性230は、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100と同様である。実施例2に関わる温度特性補償回路40によれば、絶対温度T0未満における温度特性の正の傾きが急勾配であり、且つ絶対温度T0以上における温度特性の正の傾きが通常であるトランジスタTr1,Tr2,Tr3に対して、温度依存性のない一定のバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給できる。なお、温度補償抵抗41としてサーミスタPTCを使用し、温度補償抵抗42に替えて温度補償機能を有しない抵抗素子を使用しても同様の作用効果を得ることができる。
【実施例3】
【0024】
実施例3に係わる温度特性補償回路40は、温度補償抵抗41に替えて温度補償機能を有しない抵抗素子(例えば、チップ抵抗素子、金属皮膜抵抗素子)を使用し、温度補償抵抗42としてサーミスタNTCを使用する。絶対温度T0以上におけるCTAT回路30の温度特性220が、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100と同様になる点は実施例1と同様である。一方、抵抗器の温度特性は、従来のバイアス抵抗32の温度特性と同様であるため、図6に示すように、絶対温度T0未満におけるCTAT回路30の温度特性240は、温度特性補償回路40に接続しないCTAT回路の温度特性100と同様である。実施例3に関わる温度特性補償回路40によれば、絶対温度T0未満における温度特性の正の傾きが通常配であり、且つ絶対温度T0以上における温度特性の正の傾きが緩やかであるトランジスタTr1,Tr2,Tr3に対して、温度依存性のない一定のバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給できる。
【実施例4】
【0025】
実施例1乃至3では、正温度特性を有するトランジスタTr1,Tr2,Tr3にバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給するバイアス電源としてCTAT回路30を例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、負温度特性を有するトランジスタTr1,Tr2,Tr3にバイアス電流Ib1,Ib2,Ib3を供給するバイアス電源としてPTAT回路を用いてもよい。また、実施例1乃至3では、温度特性補償回路40の応用例として、電力増幅器10のバイアス回路20を例示したが、リファレンス電圧の温度補償回路や温度センサ等に応用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電力増幅器のバイアス回路、リファレンス電圧の温度補償回路、又は温度センサ等に応用できる。
【符号の説明】
【0027】
10…電力増幅器
20…バイアス回路
30…CTAT回路
40…温度特性補償回路
41,42…温度補償抵抗
43…スイッチ
44…比較器
45…基準電圧
46…温度センサ
Tr1,Tr2,Tr3…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子の電流又は電圧の温度変化を相殺するように前記回路素子に電流又は電圧を供給する温度補償機能を有する電源回路と、
前記電源回路の温度特性と前記回路素子の温度特性とのずれを補償する温度特性補償回路と、
を備える温度補償回路。
【請求項2】
請求項1に記載の温度補償回路であって、
前記温度特性補償回路は、一つ又は複数の温度補償抵抗と、温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子と、前記一つ又は複数の温度補償抵抗と前記温度補償機能を有しない一つ又は複数の抵抗素子の中から温度に応じて選択された何れか一つを電源から前記電源回路に至る電流経路に接続するスイッチとを備える温度補償回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の温度補償回路を備える電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176592(P2011−176592A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38853(P2010−38853)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】