説明

温度試験ブースおよび温度試験ブース内の環境生成方法

【課題】電子機器等の温度試験に用いられる温度試験ブース内の環境温度を水平面に対し平行かつ層状であって、各々の層内において所望の一定温度に保つ環境生成方法およびこれに供する温度試験ブースを提供する。
【解決手段】放熱用ファン、加熱用ヒータを備えた送風用ファン、温度センサ、および温度センサにより検知される温度試験ブース内の温度情報に基づき温度試験ブース内の温度制御を行うコントローラとを備え、コントローラは、送風用ファン、放熱用ファンの風向、風量を調整することにより、温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に複数生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に対して温度試験を行うための温度試験ブースおよび温度試験ブース内の環境生成方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に、電子機器等の製品試験として、ビニール等で覆われた簡易型の温度試験ブースあるいは部屋タイプの専用の温度試験ブース(以下、特に断りのない場合は両方を含め温度試験ブースと呼ぶ)内に被試験体を置き、被試験体の環境温度に対する試験が必要に応じて行われている。
【0003】
しかし、例えば、図3に示した従来の温度試験ブース例では、温度試験ブース30はアルミニウムのパイプで作られた図示されていない骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートを天井と周囲に設けたタイプのもので、天井に放熱用ファン31が設けられている。
【0004】
被試験装置32は制御部32−1およびドライブ部32−2を有し、被試験装置32が内臓する図示されていない内臓ファンにより、温度試験ブース30内の空気を図の吸気の方向から取り入れ、排気の方向に排出するようになっている。温度の高い空気が温度試験ブース内上部のA部付近に留まってしまい、温度試験ブース内のA部と下部にあるB部とで温度差が生じやすい。
【0005】
そこで、これまでは、温度試験ブース内の温度差を少なくし、かつ、一定の温度を保つように、加熱用ヒータ、拡散用ファンとを組み合わせて調整されていた。
【0006】
公知例として、特許文献1には、恒温槽内に調温された空気を循環させ、恒温槽内を所望の温度に保つ記述がある。
【0007】
また、特許文献2には、送風機、ヒータ、冷却機を備えた恒温槽にフィルタ、整流板を通して空気を循環させ、送風機の回転数を変えることにより風量をコントロールする記述がある。
【0008】
さらに、特許文献3には、バーイン試験用の恒温槽において、試験対象基板を置くラックの上下を断熱材で仕切って複数の部屋に分離し、各部屋毎にガスの流入部、流出部を設けて部屋毎の環境温度を設定するバーイン装置が記述されている。
【0009】
電子機器等のうち、大型製品の高温試験においては、例えば、電子機器の下部に制御部が配置され、制御部だけに適切な温度ストレスを加えたい場合がある。制御部だけを所望の環境温度にして、上部に配置されている他のユニットがそれほどの環境温度にならないようにしたい場合や、さらには、電子機器の高さ方向にいくつかの温度の異なる層状の温度環境設定が必要となる場合もある。
【0010】
このような要求に対して、上述の特許文献に記述された特許文献1および特許文献2に記述された方法では対応が難しく、特許文献3記述された方法では、大型電子機器などの試験作業には適切でないといった問題が生じていた。
【特許文献1】実開平05−44233号公報
【特許文献2】特開平11−231943号公報
【特許文献3】特開2005−257564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような問題を解決するため、温度試験ブース内の環境温度を水平面に対し平行かつ層状であって、各々の層内において所望の一定温度に保つ環境生成方法およびこれに供する温度試験ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、電子機器等の温度試験に用いられる温度試験ブース内において、放熱用ファン、加熱用ヒータを備えた送風用ファン、温度センサ、および前記温度センサにより検知される前記温度試験ブース内の温度情報に基づき前記温度試験ブース内の温度制御を行うコントローラとを備え、前記コントローラは、前記送風用ファン、前記放熱用ファンの風量を調整することにより、前記温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に複数生成することを特徴とする試験環境生成方法である。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、温度試験ブースは、例えば、直方体あるいは立方体の各稜線部をアルミニウムのパイプで作られた骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートで天井および周囲が覆われている。温度試験ブースの天井には好ましくは開閉自在な放熱用ファン、温度試験ブースの側壁部あるいは床部には加熱用ヒータを備えた複数の送風用ファン、被試験体としての被試験装置や温度試験ブース内部の適所に温度センサ、また、温度センサにより検知された前記温度試験ブース内の温度情報に基づき温度試験ブース内の温度制御を行うCPUを内臓するコントローラとを備えている。
【0014】
前記コントローラは、温度試験ブース内に取り付けられた送風用ファン、放熱用ファンの風量を調整することにより、温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に好ましくは2層あるいは3層の各層内が定温に保たれた複数の層を生成することができるようになっている。
【0015】
このため、例えば、直方体で縦長の被試験装置について、制御部が下部に配置され、制御部の環境温度を室温より高い所望の温度に保ち、被試験装置の上部に配置された他の部分をこれより低い環境温度に保つよう、制御部の高さ方向の幅領域に相当する4つの外面近傍の温度試験ブース内温度を等しく所望の環境温度にし、かつ、制御部が内蔵するファンにより内部へ取り込む空気の温度も同様の温度にすべく高さ方向に水平面とほぼ平行な各層内の温度がそれぞれ所望の温度を有する環境を温度試験ブース内に生成することができる。
【0016】
本発明は、従来の温度試験ブースでは、温度の高い空気が上部に留まり、時間と共に、温度試験ブースの上部と下部でより大きな温度差が生じてしまっていたが、温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に好ましくは2層あるいは3層といった各層内が定温に保たれた複数の層を生成することにより温度試験環境を生成しようとするものである。
【0017】
コントローラは、温度センサからの温度試験ブース各部の温度情報を受け、各所に設けられている加熱用ヒータを備えた送風用ファンを、加熱用ヒータの温度と送風用ファンの風量を必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース内部の温度が高くなり過ぎないように放熱用ファンを作動させるようになっている。
【0018】
水平面にほぼ平行な所望の温度を有する空気層を温度試験ブース内に生成するには、例えば、各層に対応した温度試験ブースの側壁部の上限の位置に風向が水平面と同じか、あるいはやや下向きに向けて取り付けられた、加熱用ヒータを備えた送風用ファンを作動させ、各層内において加熱用ヒータを備えた送風用ファンを加熱兼拡散用ファンとして作動させ、各層内の温度の均一さを得る。
【0019】
ここで、室温より低い温度の層を温度試験ブース内に生成する場合には、温度試験ブースに、さらに公知の冷却機を備えた送風用ファンを備えていてもよいのはもちろんである。
【0020】
本発明においては、ブース内に固体の仕切りを設けずとも、水平面に対して垂直な方向に生成される各層が所望の温度で保持される温度環境を温度試験ブース内に生成するため、作業性の良い温度試験環境を生成することができる。
【0021】
ここで、温度試験ブースは、アルミニウムのパイプで作られた骨組みの柱に相当する温度試験ブースの下部にキャスタが取り付けたれた可動型であっても、あるいは、固定型であっても構わない。
【0022】
また、温度試験ブースの床部には必要に応じ天井や側壁部と同様な合成樹脂製のシートが敷かれていてもよい。
【0023】
また、温度試験ブースには、温度試験ブース内部の温度を下げるため、公知の例えば冷凍機付きの冷却風送風用ファンを備えていても構わない。
【0024】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記コントローラは、さらに、前記送風用ファンの風向を調整することを特徴とする請求項1記載の試験環境生成方法である。
【0025】
請求項2記載発明によれば、加熱用ヒータを備えた送風用ファンの風量と共に風向をコントローラが調整するようになっているため、より、きめ細かな各層の温度調整をすることができる。
【0026】
加熱用ヒータを備えた送風用ファンの風向の調整は、例えば、送風用ファンの向きをコントローラから自在に操作可能な機構を備えた公知の技術により行われる。
【0027】
コントローラは、温度センサからの温度試験ブース各部の温度情報を収集し、各所に設けられている加熱用ヒータを備えた送風用ファンを、加熱用ヒータの温度と送風用ファンの風量と風向を必要に応じて調節しながら、かつ、温度試験ブース内部の温度が高くなり過ぎないように、放熱用ファンを作動させるようになっている。
【0028】
本発明の請求項3に記載の発明は、電子機器等の温度試験に用いられる温度試験ブースであって、前記温度試験ブースは、加熱用ヒータを備えた送風用ファンと、放熱用ファンと、温度センサと、前記温度センサにより検知される前記温度試験ブース内の温度情報に基づき前記温度試験ブース内の温度制御を行うコントローラとを備え、水平面に垂直な方向に対して多層にかつ各層毎にほぼ一定の所望温度の温度試験環境を生成することを特徴とする温度試験ブースである。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、温度試験ブースは、例えば、直方体あるいは立方体の各稜線部をアルミニウムのパイプで作られた骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートで天井および周囲が覆われている。温度試験ブースの天井には好ましくは開閉自在な放熱用ファン、温度試験ブースの側壁部あるいは床部には加熱用ヒータを備えた複数の送風用ファン、被試験装置や温度試験ブース内部の適所に温度センサ、また、温度センサにより検知された前記温度試験ブース内の温度情報に基づき温度試験ブース内の温度制御を行うCPUを内臓するコントローラとを備えている。
【0030】
前記コントローラは、温度試験ブース内に取り付けられた送風用ファン、放熱用ファンの風量を調整することにより、温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に好ましくは2層あるいは3層の各層内が定温に保たれた複数の層を生成することができるようになっている。
【0031】
このため、例えば、直方体で縦長の被試験装置について、制御部が下部に配置され、制御部の環境温度を室温より高い所望の温度に保ち、被試験装置の上部に配置された他の部分をこれより低い環境温度に保つよう、制御部の高さ方向の幅領域に相当する4つの外面近傍の温度試験ブース内温度を等しく所望の環境温度にし、かつ、制御部が内蔵するファンにより内部へ取り込む空気の温度も同様の温度にすべく高さ方向に水平面とほぼ平行な各層内の温度がそれぞれ所望の温度を有する環境を温度試験ブース内に生成することができる。
【0032】
本発明は、従来の温度試験ブースでは、温度の高い空気が上部に留まり、時間と共に、温度試験ブースの上部と下部でより大きな温度差が生じてしまっていたが、温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に好ましくは2層あるいは3層といった各層内が定温に保たれた複数の層を生成することにより温度試験環境を生成する温度試験ブースするものである。
【0033】
コントローラは、温度センサからの温度試験ブース各部の温度情報を収集し、各所に設けられている加熱用ヒータを備えた送風用ファンを、加熱用ヒータの温度と送風用ファンの風量を必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース内部の温度が高くなり過ぎないように放熱用ファンを作動させるようになっている。
【0034】
水平面にほぼ平行な所望の温度を有する空気層を温度試験ブース内に生成するには、例えば、各層に対応した温度試験ブースの側壁部の上限の位置に風向が水平面と同じか、あるいはやや下向きに向けて取り付けられた、加熱用ヒータを備えた送風用ファンを作動させ、各層内において加熱用ヒータを備えた送風用ファンを加熱兼拡散用ファンとして作動させ、各層内の温度の均一さを得る。
【0035】
ここで、室温より低い温度の層を温度試験ブース内に生成する場合には、温度試験ブースに、さらに公知の冷却機を備えた送風用ファンを備えていてもよいのはもちろんである。
【0036】
本発明においては、ブース内に仕切りを設けずに、水平面に対して垂直な方向に生成される各層が所望の温度で保持される温度環境を温度試験ブース内に生成するため、作業性の良い温度試験環境を生成する構造となっている。
【0037】
ここで、温度試験ブースは、アルミニウムのパイプで作られた骨組みの柱に相当する温度試験ブースの下部にキャスタが取り付けたれた可動型であっても、あるいは、固定型であっても構わない。
【0038】
また、温度試験ブースの床部には必要に応じ天井や側壁部と同様な合成樹脂製のシートが敷かれていてもよい。
【0039】
さらに、室温より低い温度の層を温度試験ブース内に生成する場合には、温度試験ブースに、さらに公知の冷却機を備えた送風用ファンを備えていても構わない。
【0040】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記温度試験ブース内に水平面に略平行な仕切り板を有し、前記仕切り板は被試験体の一部を取り囲み、前記仕切り板は前記仕切り板の表裏面を貫通する開閉自在な通気孔を有することを特徴とする請求項3記載の温度試験ブースである。
【0041】
請求項4記載の発明によれば、例えば、発泡スチロールを基材とした軽量かつ断熱性に富む厚さが数cmの仕切り板であって、全体の大きさが水平面に対して平行に温度試験ブース内にちょうど収まり、かつ、温度試験ブース内のほぼ中央に置かれる外形が縦に長い直方体の被試験装置を挟むように分割され、被試験装置に対応する位置には矩形の切り欠きが設けられている。さらに、矩形の切り欠きとは別に、仕切り板には仕切り板の表裏面を貫通する開閉自在な通気孔が1つ以上設けられている。
【0042】
また、分割された仕切り板は、各々、水平面と垂直方向の高さが調整でき、かつ、水平面とほぼ平行に支持されるようになっているため、例えば、所望の高さに調整された2分割されている仕切り板の一方をまず温度試験ブース内の奥へセットし、被試験装置を仕切り板の切り欠きに突き当てるように設置し、被試験装置の適所に温度センサ、被試験装置の温度試験に必要な器具、測定器、センサを取り付けた後、仕切り板の他方を、仕切り板の一方に合わせるようにしてセットする。
【0043】
ここで、仕切り板の分割は、2分割以外の多数分割でもよく、仕切り板の枚数も1枚以上、多数でも構わない。上記の例では、下部にある制御部の上限高さと同じ位置に仕切り板が位置するように1枚の仕切り板を被試験装置を挟むようにしてセットする。
【0044】
本発明においては、仕切り板を境に多層化された温度試験ブース内の空気の層を、より有効かつ確実に所望の温度に保てるようになっている。仕切り板を設けない構造に比べ、取り扱い、作業性において留意すべき点はあるが、被試験装置に対する温度試験ブース内の空気を所望の温度、層の幅に保つにはより効果的である。
【0045】
本発明の請求項5に記載の発明は、前記仕切り板の一部は前記被試験体の周囲の少なくとも一面に対して着脱可能であることを特徴とする請求項4記載の温度試験ブースである。
【0046】
請求項5記載の発明によれば、仕切り板の一部が被試験体の周囲の少なくとも一面において着脱可能であることにより、温度試験中に、やむなく被試験体に対して作業が必要な場合でも行える。
【発明の効果】
【0047】
従来の温度試験ブースにおいては温度の高い空気が上部に留まり、時間と共に、温度試験ブースの上部と下部でより大きな温度差が生じてしまいやすいため、温度試験ブース内の空気を拡散することにより温度試験ブース内全体の温度を一定に保つようにしていたが、本発明においては、温度試験ブース内の環境温度を水平面に対し平行かつ層状であって、各々の層内において所望の一定温度に保つ環境を生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1は、本発明による第一の実施例を示す。温度試験ブース100の外形形状は直方体あるいは立方体であって、各稜線部を図示されていないアルミニウムのパイプで作られた骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートで天井および周囲が覆われている。温度試験ブース100の側壁部あるいは床部には加熱用ヒータを備えた送風用ファン101(以下、単に送風用ファン101と呼ぶ)を複数個配し、天井には好ましくは開閉自在な放熱用ファン102、被試験装置107や温度試験ブース100内部の適所に公知の温度センサ103、また、温度センサ103により検知された温度試験ブース100内各部の温度情報に基づき温度試験ブース100内の温度制御を行うCPUを内臓するコントローラ104とを備えている。
【0049】
前記コントローラ104は、温度試験ブース内に取り付けられた送風用ファン101の風量と風向、放熱用ファン102の風量を調整することにより、温度試験ブース100内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に2層のA部とB部の各層内がそれぞれ所望の定温に保たれる温度環境を生成することができるようになっている。
【0050】
例えば外形が直方体で縦長の被試験装置107を温度試験ブース100内において高温試験を行う場合を説明する。制御部107−1が下部に配置され、制御部107−1の環境温度を室温より高い所望の温度に保ち、被試験装置の上部に配置されたドライブ部107−2をこれより低い環境温度に保つよう、制御部107−1の高さ方向の幅領域に相当する4つの外面近傍の温度試験ブース内温度を等しく所望の環境温度にし、かつ、制御部107−1が内蔵する図示していないファンにより制御部107−1内部へ取り込む空気の温度も同様の温度にするように、高さ方向に水平面とほぼ平行な2つの異なる空気層のA部とB部を生成し、各空気層内の温度がそれぞれ所望の温度を保つ環境を温度試験ブース100内に生成する。
【0051】
従来の温度試験ブースでは、温度の高い空気が上部に留まり、時間と共に、温度試験ブースの上部と下部でより大きな温度差が生じてしまっていたが、本発明においては温度試験ブース100内に一定温度に保持された2つの異なる空気層のA部とB部を生成し、水平面に垂直な方向に層状に2層を形成している。このように、2層以上の各層内がそれぞれ定温に保たれた複数の空気層が生成された温度試験環境を生成しようとするものである。
【0052】
コントローラ104は、温度センサ103から送られる温度試験ブース100各部の温度情報を受け、各所に設けられている送風用ファン101の加熱用ヒータの温度と送風量を必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース100内部の温度が高くなり過ぎないように開閉口付きの放熱用ファン102を作動させるようになっている。
【0053】
空気層のA部105とB部106は、各々の空気層の上部または下部の位置に配置された送風用ファン101の風向と風量とがコントローラ104によって制御され、A部とB部の境界110を境としてそれぞれ空気循環A108と空気循環B109が形成される。
【0054】
このように、水平面にほぼ平行な所望の温度を有する空気層を温度試験ブース100内に生成するには、例えば、各層に対応した温度試験ブース100の側壁部の上限の位置に風向が水平面と同じか、あるいはやや下向きに向けて取り付けられた、送風用ファン101を作動させ、各空気の層内において送風用ファン101を加熱兼拡散用ファンとして作動させ、各層内の温度の均一さを図っている。A部とB部の境界110を通しては、矢印のように図の上方に向かって若干の空気移動を伴う。
【0055】
ここで、室温より低い温度の層を温度試験ブース100内に生成する場合には、温度試験100ブースに、さらに、図示されていない公知の冷却機を備えた送風用ファンを備えていてもよいのはもちろんである。
【0056】
また、必要に応じて、被試験装置107の外側面には各々送風用ファン101をさらに設置し、より良い温度を保つようにしても構わない。
【0057】
本発明により、ブース内に固体の仕切りを設けずとも、水平面に対して垂直な方向に生成される各層が所望の温度で保持される温度環境が温度試験ブース100内に生成されるため、作業性の良い温度試験環境を生成することができる。
【0058】
このようにして、温度試験ブース100内には一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に好ましくは2層以上であって各層内が定温に保たれた複数の層を生成することができるようになっている。
【0059】
ここで、温度試験ブース100は、アルミニウムのパイプで作られた骨組みの柱の下部にキャスタが取り付けたれた可動型であっても、あるいは、固定型であっても構わない。
【0060】
また、温度試験ブース100の床111には必要に応じ天井や側壁部と同様な合成樹脂製のシートが敷かれていてもよい。
【0061】
また、温度試験ブース100には、内部温度を下げるため、公知の例えば冷凍機付きの冷却風送風用ファンを備えていても構わない。
【0062】
図2は、本発明による第二の実施例を示す。a)正面図およびb)斜視概観図を示す。温度試験ブース200の外形形状は直方体あるいは立方体であって、各稜線部を図示されていないアルミニウムのパイプで作られた骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートで天井および周囲が覆われている。温度試験ブース200の側壁部あるいは床部には加熱用ヒータを備えた送風用ファン201(以下、単に送風用ファン201と呼ぶ)を複数を配し、天井には好ましくは開閉自在な放熱用ファン202、被試験装置207や温度試験ブース200内部の適所に公知の温度センサ203、また、温度センサ203により検知された温度試験ブース100内各部の温度情報に基づき温度試験ブース200内の温度制御を行うCPUを内臓するコントローラ204とを備えている。
【0063】
温度試験ブース200内のほぼ中央には外形が縦に長い直方体の被試験装置210が設置されている。
【0064】
そして、例えば、発泡スチロールを基材とした軽量かつ断熱性に富む厚さが数cmの分割可能な仕切り板207が、水平面に対して平行に温度試験ブース200内に収まり、被試験装置210の制御部210−1とドライブ部210−2の境界が位置する高さに図示されていない金具により固定され、設置されている。
【0065】
仕切り板207は被試験装置210を挟むように分割され、被試験装置210を挟む位置には矩形の切り欠きが設けられている。さらに、矩形の切り欠きとは別に、仕切り板207には表裏面を貫通する開閉自在な通気孔207−1が1つ以上設けられている。
【0066】
仕切り板207は仕切り板207−2と仕切り板207−3とに分割可能となっており、各々、水平方向と垂直方向の高さが調整でき、水平面とほぼ平行に支持されるようになっているため、例えば、所望の高さに調整され2分割されている仕切り板の一方、A207−2をまず温度試験ブース200内の奥へセットし、被試験装置210を仕切り板Aの切り欠きに突き当てるように設置し、被試験装置200に温度センサ、そして、温度試験に必要な器具、測定器、センサ等を取り付けた後、他方の仕切り板B207−3を、仕切り板A207−2に合わせるようにして設置する。
【0067】
ここで、仕切り板207の分割は、2分割以外の多数分割でもよく、仕切り板207の枚数も必要に応じ多数でも構わない。
【0068】
本発明においては、仕切り板207を境に2層化された温度試験ブース200内の空気の層を、より有効かつ確実に各々を所望の温度に保てるようになっている。仕切り板207を設けない構造に比べ、取り扱い、作業性において留意する必要があるが、被試験装置210に対する温度試験ブース200内の空気を所望の温度、層の幅に正確に保つにはより効果的である。
【0069】
前記コントローラ204は、温度試験200ブース内に取り付けられた送風用ファン201の風量と風向、放熱用ファン202の風量を調整することにより、温度試験ブース200内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に2層のA部205とB部206の各層内がそれぞれ所望の定温に保たれる温度環境を生成することができるようになっている。
【0070】
例えば外形が直方体で縦長の被試験装置210を温度試験ブース200内において高温試験を行う場合を説明する。制御部210−1が下部に配置され、制御部210−1の環境温度を室温より高い所望の温度に保ち、被試験装置210の上部に配置されたドライブ部210−2をこれより低い環境温度に保つよう、制御部210−1の高さ方向の幅領域に相当する4つの外面近傍の温度試験ブース200内の温度を等しく所望の設定温度にし、かつ、制御部210−1が内蔵する図示していないファンにより制御部200−1内部へ取り込む空気の温度も同様の温度にするように、高さ方向に水平面とほぼ平行な2つの異なる空気層のA部205とB部206を生成し、それぞれ空気循環Aと空気循環Bとを発生させ、各空気層内の温度がそれぞれ所望の温度を保つ環境を温度試験ブース200内に生成する。
【0071】
コントローラ204は、温度センサ203から送られる温度試験ブース200各部の温度情報を受け、各所に設けられている送風用ファン201の加熱用ヒータの温度と送風量とを必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース200内部の温度が高くなり過ぎないように開閉口付きの放熱用ファン202を作動させるようになっている。
【0072】
空気層のA部205とB部206は、各々の空気層の上部または下部の位置に配置された送風用ファン201の風向と風量とがコントローラ204によって制御され、A部205とB部206部との境界に位置する仕切り板207を境としてそれぞれ空気循環A208と空気循環B209が形成される。
【0073】
また、仕切り板207には、通気孔207−1が1つ以上設けられていて、B部206の温度が高くなり過ぎないようになっている。同様に、A部205の温度が高くなり過ぎないよう放熱用ファン202がコントローラ204により制御されている。
【0074】
このように、水平面にほぼ平行な所望の温度を有する空気層を温度試験ブース200内に生成するには、例えば、各層に対応した温度試験ブース200の側壁部の上限の位置に風向が水平面と同じか、あるいはやや下向きに向けて取り付けられた、送風用ファン201を作動させ、各空気の層内において送風用ファン201を加熱兼拡散用ファンとして作動させ、各層内の温度の均一さを図っている。
【0075】
ここで、室温より低い温度の層を温度試験ブース200内に生成する場合には、温度試験200ブースに、さらに、図示されていない公知の冷却機を備えた送風用ファンを備えていても構わない。
【0076】
図4は、本発明による他の実施例として、a)には温度試験ブース40内に2層の温度領域を、そして、b)には温度試験ブース40内に3層の温度領域を生成する場合を比較して示す。どちらにおいても、温度試験ブース40はアルミニウムのパイプで作られた図示されていない骨組みに、帯電防止処理の施された透明な合成樹脂製のシートを天井と周囲に設けた外観が直方体の形状を有するタイプのものである。
【0077】
a)において、温度試験ブース40は、送風用ファン41、放熱用ファン42を備え、
所望の高さにおける境界領域Cを境として、それぞれ温度の異なる領域A42と領域B43をつくるため、複数の温度センサ45を温度試験ブース40内に配し、領域A42には温度T1の空気の循環を、また、領域B43には温度T2の空気の循環を生成する。ここで温度センサ45によって検出された各部における温度をもとに、図示されていない、CPUを内臓したコントローラにより、送風用ファン41の加熱用ヒータの温度と送風量を必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース40内部の温度が高くなり過ぎないように開閉口付きの放熱用ファン42を作動させるようになっている。
【0078】
空気層の領域A42と領域B43は、各々の空気層の上部または下部の位置に配置された送風用ファン41の風向と風量とがコントローラによって制御され、領域Aと領域Bとの境界領域Cを境としてそれぞれ温度T1および温度T2の空気循環が形成される。
【0079】
b)において、温度試験ブース40は、送風用ファン41、放熱用ファン42を備え、
所望の高さにおける境界領域D46、境界領域D47を境として、それぞれ温度の異なる3つの領域をつくるため、複数の温度センサ45を温度試験ブース40内に配し、第1の領域には温度T3の空気の循環を、第2の領域には温度T4の空気の循環を、また、第3の領域には温度T5の空気の循環を生成する。ここで温度センサ45によって検出された各部における温度をもとに、図示されていない、CPUを内臓したコントローラにより、送風用ファン41の加熱用ヒータの温度と送風量を必要に応じて調節し、かつ、温度試験ブース40内部の温度が高くなり過ぎないように開閉口付きの放熱用ファン42を作動させるようになっている。3つの領域は、各々の領域の上部の位置する送風用ファン41の風向と風量とがコントローラによって制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による第一の実施例
【図2】本発明による第二の実施例
【図3】従来例
【図4】本発明による他の実施例
【符号の説明】
【0081】
30、40、100、200 温度試験ブース
31、102、202 放熱用ファン
32、107、210 被試験装置
41、101、201 送風用ファン
42 領域A
43 領域B
44 境界領域
45、103、203 温度センサ
46 境界領域D
47 境界領域E
104、204 コントローラ
105、205 A部
106、206 B部
108、208 空気循環A
109、209 空気循環B
110 A部とB部との境界
207 仕切り板
211 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器等の温度試験に用いられる温度試験ブース内において、
放熱用ファン、加熱用ヒータを備えた送風用ファン、温度センサ、および前記温度センサにより検知される前記温度試験ブース内の温度情報に基づき前記温度試験ブース内の温度制御を行うコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記送風用ファン、前記放熱用ファンの風量を調整することにより、
前記温度試験ブース内に一定温度に保持された領域を水平面に垂直な方向に層状に複数生成することを特徴とする試験環境生成方法。
【請求項2】
前記コントローラは、さらに、前記送風用ファンの風向を調整することを特徴とする請求項1記載の試験環境生成方法。
【請求項3】
電子機器等の温度試験に用いられる温度試験ブースであって、
前記温度試験ブースは、
加熱用ヒータを備えた送風用ファンと、
放熱用ファンと、
温度センサと、
前記温度センサにより検知される前記温度試験ブース内の温度情報に基づき前記温度試験ブース内の温度制御を行うコントローラとを備え、
水平面に垂直な方向に対して多層にかつ各層毎にほぼ一定の所望温度の温度試験環境を生成することを特徴とする温度試験ブース。
【請求項4】
前記温度試験ブース内に水平面に略平行な仕切り板を有し、
前記仕切り板は被試験体の一部を取り囲み、
前記仕切り板は前記仕切り板の表裏面を貫通する開閉自在な通気孔を有することを特徴とする請求項3記載の温度試験ブース。
【請求項5】
前記仕切り板の一部は前記被試験体の周囲の少なくとも一面に対して着脱可能であることを特徴とする請求項4記載の温度試験ブース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−2858(P2009−2858A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165386(P2007−165386)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】