説明

温度調整システム

【課題】何台もの精密機械を扱う場合でも、抵コストでそれらの精密機械の周辺温度を所定温度に調整することが可能な温度調整システムを提供することを目的とする。
【解決手段】天井部2と、天井部2の周囲に沿って設けられるカーテン3と、天井部2とカーテン3の隙間を覆うカバー部4と、天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間の温度を所定温度に調整する換気ユニット5及びコントロールパネル6と、エアーコンディショナ7とを備えて温度調整システム1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に影響を受け易い機械の周囲温度を所定温度に調整するための温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度変化に影響を受け易い機械として、例えば、マイクロ単位で対象物を所定形状に加工するマシニングセンタやマイクロ単位で対象物の寸法を測定する3次元測定器などの精密機械がある。このような精密機械は、温度変化により対象物が少しでも膨張または収縮すると、正確に加工や測定を行うことができなくなってしまう。
【0003】
そこで、このような精密機械で対象物を加工したり測定したりする場合は、精密機械を設置することが可能な大きさの部屋をつくり、その部屋の温度を所定温度に保つ必要がある。特に、温度変化により大きさが変化し易い対象物を精密機械で加工したり測定したりする場合は、部屋の温度を厳重に管理する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−291989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、精密機械を設置可能な部屋をつくり、その部屋の中の温度を所定温度に保つ場合では、加工や測定の効率を上げるためにその部屋に精密機械を何台も設置させようとすると、当然ながらその部屋を大きくする必要があり、部屋を大きくさせればさせるほど天井や壁などを構成する部材が多く必要となる。そのため、何台もの精密機械を部屋の中に設置させようと部屋全体を大きくさせる場合、部屋全体を支える柱や梁の強度を上げる必要があり、その分コストが多くかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、何台もの精密機械を扱う場合でも、抵コストでそれらの精密機械の周辺温度を所定温度に調整することが可能な温度調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明では、以下のような構成を採用した。
すなわち、本発明の温度調整システムは、天井部と、前記天井部の周囲に沿って設けられるカーテンと、前記天井部と前記カーテンとにより囲まれる空間の温度を所定温度に調整する温度調整手段とを備える。
【0007】
このように、天井部とカーテンとによりある空間を囲み、その空間の温度を所定温度に調整する構成としているため、その空間に精密機械を設置することによりその精密機械の周囲温度を所定温度に調整することができる。
【0008】
また、カーテンは、天井部を支える必要がないため、軽量な材質で構成することができ、天井部やカーテンを支えるための柱や梁の強度をあまり上げる必要がない。これにより、何台もの精密機械を扱う場合でも、天井や壁などで囲まれる部屋に精密機械を設置しその部屋の温度を所定温度に保つ場合に比べて、柱や梁が支える部分を少なくすることができるため、その分コストがかからず低コストで精密機械の周囲温度を所定温度に調整することができる。
【0009】
また、上記温度調整システムは、前記天井部と前記カーテンの隙間を覆うカバー部を備えるように構成してもよい。
これにより、天井部とカーテンの隙間において空気の出入りが抑えられるので、天井部とカーテンとにより囲まれる空間の温度をさらに精度よく所定温度に調整することができる。
【0010】
また、上記カーテンは、前記天井部の周囲方向に折り畳まれるようにして伸縮されるように構成してもよい。
これにより、作業者は天井部とカーテンとにより囲まれる空間に容易に出入りすることができる。
【0011】
また、上記カーテンは、透明な部材で構成されていてもよい。
これにより、作業者は天井部とカーテンにより囲まれる空間の外からでも精密機械の様子をみることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、何台もの精密機械を扱う場合でも、抵コストでそれらの精密機械の周辺温度を所定温度に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態の温度調整システムの斜視図であり、図2は、本発明の実施形態の温度調整システムの平面図であり、図3は、本発明の実施形態の温度調整システムの側面図である。
【0014】
図1〜図3に示す温度調整システム1は、天井部2と、天井部2の周囲に沿って設けられるカーテン3と、天井部2とカーテン3の隙間を覆うカバー部4と、天井部2に設けられる換気ユニット5と、換気ユニット5の駆動を制御するためのコントロールパネル6と、エアーコンディショナ7と、天井部2に設けられる照明8と、照明8のオン、オフを行うスイッチ9とを備えて構成されている。なお、特許請求の範囲に記載される温度調整手段は、例えば、換気ユニット5、コントロールパネル6、及びエアーコンディショナ7により構成されるものとする。また、上記温度調整手段は、換気ユニット5及びコントロールパネル6のみ、または、エアーコンディショナ7のみにより構成されてもよい。また、図2及び図3は、カーテン3及びカバー部4を省略している。
【0015】
上記温度調整システム1は、例えば、工場内に設けられるものであって、天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間に精密機械(例えば、マイクロ単位で対象物を所定形状に加工するマシニングセンタやマイクロ単位で対象物の寸法を測定する3次元測定器など)が設置される。そして、換気ユニット5やエアーコンディショナ7によりその空間の温度を所定温度に調整することにより、精密機械の周囲温度を所定温度に調整する。
【0016】
上記天井部2は、図3に示すように、天井部2の端部が工場の壁に固定されると共に、支持部材10により工場の天井から吊り下げられるようにして工場の天井に固定され、かつ、支柱11により工場の床と固定されている。なお、支持部材10や支柱11の本数は特に限定されない。
【0017】
上記カーテン3は、図4(a)に示すように、上部に滑車12を備え、天井部2の周囲に沿って設けられるカーテンレール13上を滑車12が転がることにより天井部2の周囲に沿って可動する。また、カーテン3は、滑車12を中心にして回転する回動部材14に取り付けられている。また、カーテン3は、図4(b)に示すように、適当な大きさの複数枚の蛇腹状に形成されたポリ塩化ビニルが互いに止め具15により繋ぎ合わされて構成され、工場の壁に固定される部分以外の天井部2の周囲全体を覆っている。このように構成されるカーテン3は、天井部2の周囲方向に折り畳まれるようにして伸縮する。また、このように構成されるカーテン3は、天井部2の周囲全体を覆う程の大きさの1枚のポリ塩化ビニルを蛇腹状に形成してカーテン3を構成する場合に比べて、安価に構成することができ温度調整システム1の製造コストを抑えることができる。また、カーテン3は、図1に示すように、適当な位置において止め具15ではなくマグネット16により繋ぎ合わせるように構成し、各マグネット16を互いに離したり着けたりすることによりできる開閉部分を作業者の出入り口としている。このようにカーテン3を構成することにより、作業者は天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間に容易に出入りすることができる。また、精密機械を可動させていないときや精密機械を天井部2下方に運び入れたり外に運び出したりするときは、カーテン3を折り畳んで1つにまとめ邪魔にならない位置に移動させておくことができる。また、カーテン3をポリ塩化ビニルにより構成しているので、カーテン3を軽量にすることができる。なお、カーテン3の材質は、安価で軽量なものであれば、ポリ塩化ビニルに限定されない。また、カーテン3を透明な部材で形成することにより、作業者は天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間の外から精密機械の様子をみることができる。
【0018】
上記カバー部4は、図4(c)に示すように、天井部2の外部側面に取り付けられ、材質はポリ塩化ビニルなど特に限定されない。このように、カバー部4を備えることにより、カバー部4に沿って回り込まない限り天井部2とカーテン3の隙間から空気が出入りできなくなるので、天井部2とカーテン3の隙間での空気の出入りが抑えられ、天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間の温度をさらに精度よく所定温度に調整することができる。
【0019】
図2または図3に示すように、上記換気ユニット5は、電源17により駆動し、天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間の空気を吸入する吸引口18と、吸引口18から吸引された空気を工場の外部へ排気する排気口19と、工場の外部の空気を吸引する吸引口20と、吸引口20から吸引された空気を所定温度(例えば、18〜22℃)にする熱交換部21と、熱交換部21により所定温度になった空気を天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間内に給気する給気口22とを備えて構成されている。
【0020】
上記コントロールパネル6は、例えば、換気ユニット5の駆動状況や熱交換部21の設定温度を表示するディスプレイや作業者が操作を行う操作ボタンなどを備えて構成されている。
【0021】
上記エアーコンディショナ7は、電源17により駆動し、天井部2とカーテン3とにより囲まれる空間の空気を暖めたり冷やしたりするものである。
上記照明8も、電源17により駆動し、天井部2に6つ設けられている。なお、照明8の個数は特に限定されない。
【0022】
このように、本実施形態の温度調整システム1は、天井部2とカーテン3とによりある空間を囲み、その空間の温度を所定温度に調整する構成であるため、その空間に精密機械を設置することによりその精密機械の周囲温度を所定温度に調整することができる。
【0023】
また、カーテン3は、天井部2を支える必要がないため、軽量な材質で構成することができ、天井部2やカーテン3を支えるための柱や梁の強度をあまり上げる必要がない。これにより、何台もの精密機械を扱う場合でも、天井や壁などで囲まれる部屋に精密機械を設置しその部屋の温度を所定温度に保つ場合に比べて、柱や梁が支える部分を少なくすることができるため、その分コストがかからず低コストで精密機械の周囲の温度を所定温度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の温度調整システムの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の温度調整システムの平面図である。
【図3】本発明の実施形態の温度調整システムの側面図である。
【図4】(a)は、滑車及びカーテンレールを示す図である。(b)は、カーテンの構成を示す図である。(c)は、天井部とカーテンの隙間を覆うカバー部を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 温度調整システム
2 天井部
3 カーテン
4 カバー部
5 換気ユニット
6 コントロールパネル
7 エアーコンディショナ
8 照明
9 スイッチ
10 支持部材
11 支柱
12 滑車
13 カーテンレール
14 回動部材
15 止め具
16 マグネット
17 電源
18 吸引口
19 排気口
20 吸引口
21 熱交換部
22 給気口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と、
前記天井部の周囲に沿って設けられるカーテンと、
前記天井部と前記カーテンとにより囲まれる空間の温度を所定温度に調整する温度調整手段と、
を備えることを特徴とする温度調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度調整システムであって、
前記天井部と前記カーテンの隙間を覆うカバー部を備える、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項3】
請求項1に記載の温度調整システムであって、
前記カーテンは、前記天井部の周囲方向に折り畳まれるようにして伸縮する、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の温度調整システムであって、
前記カーテンは、透明な部材により形成されている、
ことを特徴とする温度調整システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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