説明

温水システム

【課題】 非燃焼給湯モードの実行中に暖房のための熱源供給要求が同時に出力されたとしても、熱源供給要求に対応させて燃焼加熱を開始しつつも、ユーザに違和感や不信感を抱かせることがなく、かつ、ユーザの省エネルギー化の意図を尊重した給湯を実現させ得る温水システムを提供する。
【解決手段】 燃焼停止スイッチがONされていれば(S2でYES)、補助熱源機の燃焼を禁止して、貯湯タンクの温水が設定給湯温度よりも低くてもそのまま出湯して給湯する(S4)。その最中に暖房要求(熱源供給要求)が同時に生じたら(S5でYES)、補助熱源機を燃焼作動させて熱源として必要な温度まで加熱した温水を供給する一方、給湯側では給水路からの混水により、それまでに給湯していた温度、つまり貯湯温度又は設定給湯温度の低い方の温度に温調した上で給湯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーの太陽熱、ガスエンジンもしくは燃料電池等の冷却水排熱、あるいは、ヒートポンプの冷媒が有する熱等の外部熱源からの熱回収によって貯湯として蓄熱し、蓄熱された貯湯を給湯に利用したり外部熱負荷への熱源に利用したりするようにした温水システムに関し、特にユーザが意図的に燃焼作動を禁止して省エネルギー化を意識した給湯を実行している途中において暖房要求が同時に生じることにより強制的に燃焼作動されてしまうことに起因するユーザの違和感や省エネルギー化が阻害される事態の発生を回避するための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、温水システムとして、ソーラー温水器からの温水を優先的に給湯のために使用することをユーザの選択により設定し得るソーラー優先スイッチを設け、給湯に際し、このソーラー優先スイッチがユーザによりONされたときには、ソーラー温水器からの温水がたとえ設定給湯温度よりも若干低くても補助熱源機による燃焼加熱を行わずにそのまま給湯するようにすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。そして、ソーラー温水器からの温水が設定給湯温度よりもかなり低ければ、初めて補助熱源機を燃焼作動させて設定給湯温度まで加熱した上で給湯するようにしている。これにより、実際の給湯温度が設定給湯温度よりも若干低くても、ユーザの省エネルギー指向の意図を優先させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−14295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽熱等の外部熱源を利用して貯湯タンクに貯湯として蓄熱するように構成された温水システムにおいては、その貯湯を給湯に利用する他、例えば暖房用の熱源や風呂追い焚き用の熱源等の外部熱負荷用の熱源として利用する場合がある。このような外部熱負荷用の熱源として利用する場合には、供給する温水温度として例えば80℃程度のものが必要となるため、通常は貯湯タンク内の貯湯を取り出して補助熱源機で加熱した上で供給するようになっている。
【0005】
しかしながら、このような外部熱負荷用の熱源として貯湯タンク内の貯湯を利用する場合には、前述の如きユーザが省エネルギー化の意図を持って給湯していたとしても、その途中で暖房要求が同時に生じると、その省エネルギー化の意図に反したり、給湯温度が変動するためにユーザに違和感や温水システムに対する不信感を抱かせたりする結果を招くおそれがある。
【0006】
すなわち、図5の例において、貯湯タンク300から図外の給湯栓まで給湯するための給湯路301,302,303に補助熱源機304が介装され、この補助熱源機304の下流側位置の給湯路303から暖房回路の熱交換器に熱源用温水を循環供給するための循環路305が分岐されている場合、特に不都合が生じることになると考えられる。つまり、給湯のために貯湯タンクから出湯される温水が補助熱源機304を通った上で供給されるように構成されている場合に、不都合が発生すると考えられる。
【0007】
例えば、ユーザの省エネルギー化の意図を優先して、貯湯タンク内の温水がたとえ設定給湯温度よりも低くても、補助熱源機を非燃焼に維持したままで、貯湯タンクから取りだした温水をそのまま給湯するという非燃焼給湯モードが実行されている最中に、暖房要求が出力されると、補助熱源機が燃焼作動されてしまい、給湯のために供給される温水までもが加熱されてしまうことになる。この結果、給湯栓から出湯される給湯温度は明確に変動してユーザに違和感等を抱かせたり、給湯の分まで燃焼エネルギーを消費させてしまって省エネルギー化というユーザの意図に反したりする結果とを招くことになる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非燃焼給湯モードの実行中に例えば暖房要求等の外部熱負荷への熱源供給要求が同時に出力されたとしても、その熱源供給要求に対応させて燃焼加熱を開始しつつも、ユーザに違和感や不信感を抱かせることがなく、かつ、ユーザの省エネルギー化の意図を尊重した給湯を実現させ得る温水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明では、外部熱源からの熱回収により貯湯として蓄熱するための貯湯タンクと、前記貯湯タンクに蓄熱された貯湯を前記貯湯タンクから取り出して給湯使用させるための出湯回路と、この出湯回路に介装された補助熱源機と、この補助熱源機の下流側の出湯回路において分岐されて外部熱負荷用の熱源を循環供給する熱源供給回路と、非燃焼給湯モード及び外部熱負荷制御モードを制御モードとして有する制御手段とを備え、前記外部熱負荷制御モードでは前記補助熱源機を燃焼作動させて燃焼加熱後の温水を循環手段の作動により前記熱源供給回路に循環供給する一方、前記非燃焼給湯モードでは前記補助熱源機を非燃焼に維持しつつ貯湯タンク内の温水を前記出湯回路に出湯するように構成されている温水システムを対象にして、次の特定事項を備えることとした。
【0010】
すなわち、前記制御手段として、前記非燃焼給湯モードの実行がユーザにより選択されている状態で、給湯要求と外部熱負荷用の熱源供給要求とが同時に出力されたとき、前記補助熱源機を燃焼作動させて外部熱負荷制御モードによる設定温度まで加熱した温水を前記出湯回路に出湯するとともに、前記出湯回路の下流端部において上水を混合することにより前記貯湯タンク内の温水温度又は設定給湯温度のいずれか低い方の温度に温度調整した上で給湯する構成とした(請求項1)。
【0011】
本発明の場合、非燃焼給湯モードの実行がユーザにより選択されて非燃焼給湯モードが実行されている最中に、外部熱負荷制御モードが同時に実行されて補助熱源機の燃焼作動が開始されることにより、外部熱負荷制御モードによる設定温度まで加熱された温水が出湯回路に出湯されることになったとしても、給湯用としては、混水手段により混水されて貯湯温度又は設定給湯温度の低い方の温度に温度調整(温調)された温水が供給されることになる。このため、先に非燃焼給湯モードの実行により貯湯タンク内の温水がたとえ設定給湯温度よりも低くてもそのまま給湯されていた状態で、外部熱負荷制御モードの実行により燃焼加熱されたとしても、給湯温度は変わらずにそれまでと同じに維持されることになる。これにより、ユーザに違和感を感じさせたり、あるいは、省エネルギー化のために非燃焼給湯モードを選択したのに給湯温度が急に上昇することによる温水システムに対する不信感をユーザに感じさせたりするという不都合の発生を確実に回避することが可能となる。その上に、混水手段により混水させて給湯温度を貯湯温度か設定給湯温度かのいずれか低い側の温度まで低下させるようにしているため、給湯のための必要供給量が外部熱負荷制御モードが同時に実行されことになる前よりも少量になる結果、給湯のために消費される燃焼エネルギーも削減され、この分、省エネルギー化も図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明の温水システムによれば、非燃焼給湯モードの実行がユーザにより選択されて非燃焼給湯モードが実行されている最中に、外部熱負荷制御モードが同時に実行されて補助熱源機の燃焼作動が開始されることになったとしても、先に非燃焼給湯モードの実行により給湯されていたものと給湯温度は変わらずにそれまでと同じに維持させることができるようになる。これにより、ユーザに違和感を感じさせたり、あるいは、省エネルギー化のために非燃焼給湯モードを選択したのに給湯温度が急に上昇することによる温水システムに対する不信感をユーザに感じさせたりするという不都合の発生を確実に回避することができるようになる。その上に、混水手段により混水させて給湯温度を貯湯温度か設定給湯温度かのいずれか低い側の温度まで低下させるようにしているため、給湯のために消費される燃焼エネルギーを削減して、この分、省エネルギー化をも図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る温水システムの模式図である。
【図2】非燃焼給湯モードの実行中に暖房要求が出力された場合の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】非燃焼給湯モードによる給湯動作を説明するための図1対応図である。
【図4】非燃焼給湯モードの実行中に暖房制御モードの実行が加わった場合の動作を説明するための図3対応図である。
【図5】本発明の課題を説明するためのシステムの例を模式的に示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る温水システムの例を示す。同図中の符号1は外部熱源として太陽熱を集熱する集熱器、2は貯湯タンク3内の温水を頂部又は底部から取り出して給湯等のために供給する出湯回路、4は外部から水道水等を給水する給水回路、5は出湯回路2からの貯湯又は補助熱源機6からの補助加熱後の湯を用いて給湯栓50に給湯する給湯処理回路、7は出湯回路2からの湯を暖房熱源とする外部熱負荷としての暖房回路、9は同様に出湯回路2からの湯を追い焚き熱源とする他の外部熱負荷としての風呂追い焚き回路、10はこの温水システムの作動制御を行うコントローラ、11は集熱器1での集熱を利用する集熱利用循環回路である。
【0016】
貯湯タンク3は密閉式に構成され、適所に貯湯の温度を検出するための貯湯温度センサ(例えば底部位置及び頂部位置の貯湯温度センサ30,31)が設けられている。そして、出湯回路2は、貯湯タンク3の頂部33から温水を取り出す頂部取り出し回路部21と、循環手段としての循環ポンプ(例えば吐出流量可変型)22の作動により貯湯タンク3の底部32から温水を取り出す底部取り出し回路部23と、これら頂部取り出し回路部21及び底部取り出し回路部23の双方の下流端と補助熱源機6へ延びる出湯回路部24の上流端とを接続する三方切換弁を兼ねる混合弁25とを備えている。前記の出湯回路部24は補助熱源機6を通過した後、後述の分岐点26、分岐点27を経て流量調整弁28を介して給湯処理回路5に連通されている。
【0017】
なお、図1の符号61は補助熱源機6に入水される温水温度(入口温度)を検出する入口温度センサ、62は補助熱源機6の出口から出た直後の加熱後の温水温度(出口温度)を検出する出口温度センサである。
【0018】
給水回路4は、主給水路41の上流端が外部の水道管等に接続され、逆止弁42を介して下流端が貯湯タンク3の底部32近傍位置の底部取り出し回路部23に接続されて、貯湯タンク3の底部32に対し給水したり、出湯回路2の下流側に給水したりすることができるようになっている。又、主給水路41の上流側から逆止弁43を介して分岐した混水用給水路44が給湯処理回路5の後述の混水弁54に対し給水可能に接続されている。なお、図1の符号46は給水回路4により給水される水の温度を検出する給水温度センサである。
【0019】
給湯処理回路5は、出湯回路2の給湯側の下流端部を構成するものであり、前記の出湯回路部24の下流端に上流端が連通されて下流端側が給湯栓50まで延びるように接続された給湯回路部53と、この給湯回路部53に介装された混水弁54と、混水弁54の下流側位置に配設された給湯流量センサ57及び給湯温度センサ55とを備えている。前記の混水弁54は、給湯回路部53の上流側からの温水と、前記の混水用給水路44からの給水とを所定の混合比で混合(混水)させることにより所定の温度(設定給湯温度又は後述の貯湯温度)に温調した上で、給湯栓50に給湯するものである。そして、前記の給湯温度センサ55は、温調後に最終的に給湯させる湯の温度を検出してコントローラ10に出力するようになっており、この給湯温度センサ55からの出力に基づいて混水弁54による温調のための混水制御がコントローラ10により行われるようになっている。
【0020】
補助熱源機6は、例えば瞬間式給湯器により構成され、出湯回路2の途中に介装されたものである。コントローラ10からの指令により燃焼作動されると、出湯回路2の一方から流入する温水を燃焼熱により熱交換加熱して、加熱後の温水を出湯回路2の他方に出湯させることにより、出湯回路2を流れる温水を補助加熱するようになっている。補助熱源機6は、その出口側に設けられた出口温度センサ62からの出力に基づきコントローラ10により所定の燃焼作動制御(例えば出口温度が80度になるように燃焼作動制御)が行われるようになっている。
【0021】
暖房回路7は、循環用の暖房ポンプ70の作動により膨張タンク71から取り出された低温熱媒を分岐点72から一側に位置する熱交換器73で液−液熱交換により加熱して高温熱媒にし、これを高温暖房端末(例えば浴室乾燥機)74に循環供給する高温熱媒回路75と、前記分岐点72から他側にバイパス熱動弁76を介して低温暖房端末(例えば床暖房)77,77,…に対し低温熱媒を循環供給する低温熱媒回路78とを備えている。加えて、高温熱媒回路75の途中から分岐して逆止弁79を介してバイパス熱動弁76の下流側位置の低温熱媒回路78に合流させる高温バイパス回路80が設けられ、熱交換器73で加熱された高温熱媒を、バイパス熱動弁76を介して供給された低温熱媒に合流させて昇温させ得るようになっている。各低温暖房端末77や高温暖房端末74で放熱されて低温になった熱媒は前記膨張タンク71に戻されることになる。
【0022】
そして、前記の熱交換器73での液−液熱交換の加熱源(暖房用熱源)として、出湯回路2の出湯回路部24から補助熱源機6で加熱して所定温度にした湯が熱交換器73の熱源側に循環供給されるようになっている。すなわち、開閉弁81aを開作動させることにより出湯回路部24の分岐点26から分岐した熱源供給回路81を通して所定温度の湯が熱交換器73に対し暖房用熱源として供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が開閉弁81aを経て出湯回路2の底部取り出し回路部23に対し導出され、この出湯回路2及び補助熱源機6を経て循環されることになる。
【0023】
風呂追い焚き回路9は、追い焚きポンプ91を作動させることにより浴槽92内の浴槽水を追い焚き循環路93を通して熱交換器94との間で循環させ、この熱交換器94での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器94の熱源側には、出湯回路部24の分岐点28から分岐した熱源供給回路95を通して、補助熱源機6で加熱して所定温度にした湯が風呂追い焚き加熱用熱源として供給されるようになっている。そして、液−液熱交換により温度低下した湯が開閉弁95aを経て、暖房回路7と同様に、出湯回路2の底部取り出し回路部23に対し導出され、この出湯回路2及び補助熱源機6を経て循環されることになる。
【0024】
集熱利用循環回路11は、集熱器1での集熱を貯湯タンク3内に設置した熱交換コイル14との間で循環させることで貯湯タンク3内の温水を熱交換加熱して蓄熱する蓄熱循環回路15と、前記集熱器1での集熱で暖房回路7の戻り温水を液−液熱交換式の熱交換器16で熱交換加熱する直接循環回路17とを備え、これらの回路15,17は切換弁18により切換られて循環ポンプ12の作動によりいずれかが運転されるようになっている。そして、熱交換後に低温となった熱媒は膨張タンク13を経て集熱器1に供給されるようになっている。このような集熱器1での集熱を利用して貯湯として蓄熱するための蓄熱制御部をコントローラ10は備えている。
【0025】
以上の各回路2,5,7,9,11の運転作動は、リモコン101からの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ31,46,55,61,62等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ10により作動制御されるようになっている。コントローラ10は、そのような作動制御のために、蓄熱制御部や、給湯制御部に加え、外部熱負荷制御部としての暖房制御部や追い焚き制御部等の種々の制御部を備えている。ここで、リモコン101には燃焼停止スイッチが設けられており、ユーザがこの燃焼停止スイッチをONすることで、補助熱源機6を非燃焼にしたままで貯湯タンク3内の温水を部取り出し回路部21から取り出して設定給湯温度よりも低くてもそのまま給湯する一方、設定給湯温度よりも高ければ混水弁54にて混水して設定給湯温度に温調するという、設定給湯温度での給湯よりも貯湯を優先して給湯する非燃焼給湯モードが実行されることになる。
【0026】
次に、給湯制御部による給湯制御や、この給湯制御中に暖房要求(外部熱負荷用の熱源供給要求)や風呂追い焚き要求(外部熱負荷用の熱源供給要求)が出力されて暖房制御(外部熱負荷制御モード)や風呂追い焚き制御(外部熱負荷制御モード)が追加される場合について説明する。給湯制御としては通常給湯モードの他に、前述の非燃焼給湯モードを備えている。以下、図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0027】
給湯要求が有るか否か、つまり給湯栓50が開操作されたか否かを給湯流量センサ57による検出により判定し(ステップS1)、給湯栓50が開操作された場合(ステップS1でYES)、燃焼停止スイッチがONされているか否かを確認した上で、その結果に基づいて通常給湯モードか非燃焼給湯モードかを選択する。燃焼停止スイッチがOFFのままであれば通常給湯モード、すなわちユーザがリモコン101に設定した設定給湯温度の湯が給湯されるように制御する(ステップS2でNO,ステップS3)。
【0028】
通常給湯モードでは、貯湯タンク3内の蓄熱量が十分であれば、具体的には貯湯温度が、ユーザがリモコン101に設定した設定給湯温度との対比で所定値以上高温(例えば設定給湯温度+6度以上の高温)であれば、給水回路4からの給水圧に基づき貯湯タンク3の頂部から貯湯を頂部取り出し回路部21から取り出して出湯回路部24を経て混水弁54にて混水して設定給湯温度に温調した上で給湯されることになる。一方、貯湯タンク3内の蓄熱量が不足していれば、具体的には貯湯温度が設定給湯温度との対比で所定値以上高温でなければ、補助熱源機6により補助加熱した上で給湯されることになる。
【0029】
一方、ステップS2で燃焼停止スイッチがONされていれば(ステップS2でYES)、非燃焼給湯モードを実行する(ステップS4)。すなわち、補助熱源機6の燃焼を停止して、又は、補助熱源機6を非燃焼状態に維持しつつ、混合弁25を頂部取り出し回路部21と出湯回路部24とが連通するように切換える。これにより、給水回路4からの給水圧に基づき貯湯タンク3の頂部から貯湯が頂部取り出し回路部21及び出湯回路部24を通して給湯されることになる(図3に流れが生じる部分を太い実線で表示;併せて破線の矢印参照)。なお、この際、貯湯タンク3内の貯湯温度が設定給湯温度よりも高ければ、混水用給水路44からの水を混水弁54において混水して設定給湯温度になるように温調することになる。
【0030】
要するに、非燃焼給湯モードでは、そのときの貯湯温度か、設定給湯温度か、いずれか低い温度の湯が給湯されることになる。従って、そのときの貯湯温度が設定給湯温度よりもたとえ低くても、それはユーザによる燃焼停止スイッチのON操作に基づくものであって許容されるものであり、補助熱源機6を非燃焼にするというユーザの省エネルギー化の意図を優先するのである。ここで、リモコン101には貯湯温度が表示されるようになっており、この貯湯温度を見てユーザの意思に基づき燃焼停止スイッチをON操作することになる。例えば設定給湯温度として40℃をユーザが設定していた場合、現在の貯湯温度が38℃であっても、それを許容して省エネルギー化のために燃焼停止スイッチがユーザによりON操作される、というケースが想定される。
【0031】
そして、非燃焼給湯モードの実行中に、例えばリモコン101の暖房スイッチがONされるなどにより暖房要求が出力されると(ステップS5でYES)、暖房制御モードが実行されるものの、前述の非燃焼給湯モードでの給湯温度を維持するための制御が併せて実行される(ステップS6)。すなわち、補助熱源機6を燃焼作動させると共に、開閉弁81aを開切換して、暖房用熱源として必要な設定温度(例えば80℃)まで加熱した湯を分岐点26から熱源供給回路81に流入させて熱交換器73に循環供給する(図4に流れが生じる部分を太い実線で表示;併せて一点鎖線の矢印参照)。その一方、出湯回路部24を通して給湯処理回路5には熱交換器73に循環供給させる温度と同じ高温の湯が供給されることになるため、混水用給水路44からの水を混水弁54で混水して温調することで、それまでに給湯していた温度と同じ給湯温度に維持するようにする(図4に流れが生じる部分を太い実線で表示;併せて破線の矢印参照)。つまり、貯湯温度か設定給湯温度か、いずれか低い側の温度での給湯が継続されることになる。なお、この場合には頂部取り出し回路部21に代えて、又は、頂部取り出し回路部21と共に、底部取り出し回路部23からの温水を出湯回路部24に供給するように混合弁52を切り換えるようにしてもよい。
【0032】
このような制御を行うことで、非燃焼給湯モードの実行中に暖房制御モードが途中で追加実行されて補助熱源機6が燃焼を開始したとしても、給湯温度は変わらずにそれまでと同じに維持され、これにより、ユーザに違和感を感じさせたり、あるいは、省エネルギー化のために燃焼停止スイッチをONしたのに給湯温度が急に上昇することによる温水システムに対する不信感をユーザに感じさせたりするという不都合の発生を確実に回避することができる。その上に、混水弁54により混水させて給湯温度を貯湯温度か設定給湯温度かのいずれか低い側の温度まで低下させるようにしているため、給湯のための必要供給量が暖房制御モードが追加される前よりも少量になる結果、給湯のために消費される燃焼エネルギーも削減させることができ、この分、省エネルギー化も図ることができるようになる。
【0033】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、貯湯タンク3に貯湯して蓄熱する熱回収の対象である外部熱源として実施形態では太陽熱(太陽熱集熱)を利用した場合を示したが、ガスエンジン(エンジン冷却水排熱)、あるいは、ヒートポンプ(冷媒の排熱)を用いて、貯湯として蓄熱するようにしてもよく、このような場合においても本発明を適用することができる。
【0034】
さらに、前記実施形態では蓄熱の熱交換器14が貯湯タンク3内に設置された例を示したが、これに限らず、熱交換器が貯湯タンク3の外部に設置され、この熱交換器に対し集熱利用循環回路の熱媒を熱源側に循環供給する一方、貯湯タンク3内の温水を他の循環ポンプにより被加熱側に循環供給することで、貯湯タンク内の温水が熱媒により熱交換加熱されるように構成された温水システムも本発明に含まれる。
【0035】
前記実施形態では、非燃焼給湯モードの実行中に、暖房要求が出力されて暖房制御モードが同時に実行される場合について説明したが、これに限らず、非燃焼給湯モードの実行中に、風呂追い焚き要求(例えばリモコン101の追い焚きスイッチ又は風呂自動スイッチのON操作)が出力されて風呂追い焚き制御モードが同時に実行される場合についても同様の制御が行われる。すなわち、補助熱源機6で風呂追い焚き用の熱源温度として必要な設定温度まで加熱して出湯回路部24に流して、熱源供給回路95に分岐させて循環供給する一方、混水弁54でそれまで同じ給湯温度になるように混水して温調した上で給湯する。従って、暖房回路7や風呂追い焚き回路9が外部熱負荷を構成し、暖房制御モードや風呂追い焚き制御モードが外部熱負荷制御モードを構成する。
【符号の説明】
【0036】
1 集熱器(外部熱源)
2 出湯回路
3 貯湯タンク
6 補助熱源機
7 暖房回路(外部熱負荷)
9 追い焚き回路(外部熱負荷)
10 コントローラ(制御手段)
22 循環ポンプ(循環手段)
54 混水手段
81,95 熱源供給回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部熱源からの熱回収により貯湯として蓄熱するための貯湯タンクと、前記貯湯タンクに蓄熱された貯湯を前記貯湯タンクから取り出して給湯使用させるための出湯回路と、この出湯回路に介装された補助熱源機と、この補助熱源機の下流側の出湯回路において分岐されて外部熱負荷用の熱源を循環供給する熱源供給回路と、非燃焼給湯モード及び外部熱負荷制御モードを制御モードとして有する制御手段とを備え、前記外部熱負荷制御モードでは前記補助熱源機を燃焼作動させて燃焼加熱後の温水を循環手段の作動により前記熱源供給回路に循環供給する一方、前記非燃焼給湯モードでは前記補助熱源機を非燃焼に維持しつつ貯湯タンク内の温水を前記出湯回路に出湯するように構成されている温水システムであって、
前記制御手段は、前記非燃焼給湯モードの実行がユーザにより選択されている状態で、給湯要求と外部熱負荷用の熱源供給要求とが同時に出力されたとき、前記補助熱源機を燃焼作動させて外部熱負荷制御モードによる設定温度まで加熱した温水を前記出湯回路に出湯するとともに、前記出湯回路の下流端部に設けられた混水手段において上水を混合することにより前記貯湯タンク内の温水温度又は設定給湯温度のいずれか低い方の温度に温度調整した上で給湯するように構成されている、
ことを特徴とする温水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93062(P2012−93062A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242709(P2010−242709)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】