説明

測定機、及びフィルタ装置

【課題】測定条件に応じて測定機の共振特性が変化する場合であっても適切に測定誤差を低減させることができる測定機の提供。
【解決手段】三次元測定機1は、三次元測定機本体2と、ホストコンピュータ3とを備える。ホストコンピュータ3は、測定値にデジタルフィルタを適用して三次元測定機本体2の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するフィルタ装置4を備える。フィルタ装置4は、三次元測定機本体2の共振特性を変化させるパラメータを取得するパラメータ取得部41と、パラメータ取得部41にて取得されるパラメータに基づいて、三次元測定機本体2の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計するフィルタ設計部42と、フィルタ設計部42にて設計されたデジタルフィルタを測定値に適用するフィルタ処理部43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定機、及びフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物を測定するためのプローブを備え、このプローブを移動させるとともに、プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得する測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の測定機は、被測定物を測定するためのプローブを備え、このプローブを被測定物に当接して移動させるとともに、位置検出手段にて検出されるプローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得している。
ところで、このような測定機では、プローブの移動に伴う測定機の機械共振の影響で振動的な測定誤差が生じるという問題がある。このため、例えば、ハイカットフィルタや、ノッチフィルタ等のフィルタを適用することで測定誤差を低減させている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−16985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定機の共振周波数(共振特性)は、プローブの種類、測定位置、測定機の姿勢、及び被測定物に対して付加する測定力などの測定条件に応じて変化する場合がある。
このため、例えば、ハイカットフィルタを適用することで測定誤差を低減させる場合には、全ての測定条件における測定機の共振周波数のなかで最も低い共振周波数に合わせてハイカットフィルタを設計しなければならず、適切に測定誤差を低減させることができないという問題がある。また、測定条件に応じて共振周波数が変化するような場合には、ノッチフィルタを適用することができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、測定条件に応じて測定機の共振特性が変化する場合であっても適切に測定誤差を低減させることができる測定機、及びフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定機は、被測定物を測定するためのプローブを備え、前記プローブを移動させるとともに、前記プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得する測定機であって、前記測定値にデジタルフィルタを適用して前記測定機の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するフィルタ装置を備え、前記フィルタ装置は、前記測定機の共振特性を変化させるパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、前記測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計するフィルタ設計部と、前記フィルタ設計部にて設計されたデジタルフィルタを前記測定値に適用するフィルタ処理部とを備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、測定機の共振特性を変化させるパラメータとしては、前述したプローブの種類、測定位置、測定機の姿勢、及び被測定物に対して付加する測定力などの測定条件を例示することができる。
本発明によれば、測定機は、フィルタ装置を備え、フィルタ装置は、パラメータ取得部と、フィルタ設計部とを備えているので、測定条件に応じて変化する測定機の共振特性を推定し、推定した測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計することができる。そして、フィルタ装置は、フィルタ処理部を備えるので、測定条件に応じて測定機の共振特性が変化する場合であっても適切に測定誤差を低減させることができる。
【0008】
本発明では、前記フィルタ設計部は、前記共振特性の逆特性となるフィルタ特性を有するデジタルフィルタを設計することが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、フィルタ設計部にて設計されるデジタルフィルタは、測定機の共振特性の逆特性となるフィルタ特性(例えば、ハイカットフィルタや、ノッチフィルタ等のフィルタの形状、遮断周波数、及び次数など)を有しているので、逆特性となるフィルタ特性を有しないハイカットフィルタや、ノッチフィルタ等のデジタルフィルタを適用する場合と比較して、より適切に測定機の機械共振により生じる振動の影響を低減させることができる。
【0010】
本発明では、前記フィルタ設計部は、前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータと、前記デジタルフィルタのフィルタ係数とを関連付ける関数を用いることでデジタルフィルタを設計することが好ましい。
【0011】
ここで、フィルタ設計部は、パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計する場合には、以下の手順で設計することが考えられる。まず、フィルタ設計部は、パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて測定機の共振特性を推定する。次に、フィルタ設計部は、推定された測定機の共振特性の変化に追従するフィルタ特性を設計する。そして、フィルタ設計部は、設計したフィルタ特性に基づいて、デジタルフィルタのフィルタ係数を算出することで測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計する。
【0012】
しかしながら、このような手順でデジタルフィルタを設計すると、演算処理が複雑化するため、パラメータ取得部にて取得されるパラメータの変化に対するデジタルフィルタの設計の即応性が損なわれるという問題がある。
本発明によれば、フィルタ設計部は、パラメータ取得部にて取得されるパラメータと、デジタルフィルタのフィルタ係数とを直接関連付ける関数を用いることでデジタルフィルタを設計するので、前述した手順でデジタルフィルタを設計する場合と比較してデジタルフィルタの設計の即応性を向上させることができる。
【0013】
本発明では、前記関数には、前記フィルタ係数の算出にかかる演算量を低減させる近似関数を用いることが好ましい。
ここで、関数の近似は、例えば、近似多項式や、スプライン関数による近似式などで行うことができる。
本発明によれば、パラメータ取得部にて取得されるパラメータと、デジタルフィルタのフィルタ係数とを直接関連付ける関数には、フィルタ係数の算出にかかる演算量を低減させる近似関数を用いているので、近似関数を用いていない場合と比較して更に即応性を向上させることができる。
【0014】
本発明では、前記パラメータは、前記プローブの種類、測定位置、測定機の姿勢、及び前記被測定物に対して付加する測定力のうち、少なくともいずれか1つであることが好ましい。
このような構成によれば、前述した測定機と同様の作用効果を奏することができる。なお、パラメータは、プローブの種類、測定位置、測定機の姿勢、及び被測定物に対して付加する測定力のうち、いずれか1つであってもよく、いずれか複数であってもよい。
【0015】
本発明のフィルタ装置は、被測定物を測定するためのプローブを備え、前記プローブを移動させるとともに、前記プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得する測定機に用いられ、前記測定値にデジタルフィルタを適用して前記測定機の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するフィルタ装置であって、前記測定機の共振特性を変化させるパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、前記測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計するフィルタ設計部と、前記フィルタ設計部にて設計されたデジタルフィルタを前記測定値に適用するフィルタ処理部とを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、前述した測定機と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る三次元測定機1の概略構成を示すブロック図である。
測定機としての三次元測定機1は、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2を制御するホストコンピュータ3とを備える。
【0017】
図2は、三次元測定機本体2の要部を示す断面模式図である。また、図2(A)は、測定開始位置における三次元測定機本体2の状態を示す図であり、図2(B)は、測定終了位置における三次元測定機本体2の状態を示す図である。なお、図2では、右方向を+X軸方向とし、上方向を+Z軸方向とし、X軸、及びZ軸に直交する軸をY軸として説明する。
三次元測定機本体2は、図2に示すように、被測定物(図示略)の表面に当接される測定子21Aを先端側(−Z軸方向側)に有し、被測定物を測定するためのプローブ21と、プローブ21の基端側(+Z軸方向側)を保持する保持部22と、+X軸方向側の一端に保持部22を有する角柱状のスライダ23と、エアガイドを介してスライダ23をX軸方向に沿って移動可能に支持する支持部24とを備える。なお、図2では、スライダ23の重心位置を丸印で示している。
【0018】
保持部22は、プローブ21をZ軸方向に付勢することで所定位置に位置決めするように保持するとともに、外力が加わった場合、すなわち被測定物に当接した場合には、プローブ21を一定の範囲内でZ軸方向に移動可能としている。この保持部22は、図1に示すように、プローブ21のZ軸方向の位置を検出するためのプローブセンサ221を備える。なお、プローブセンサ221は、プローブ21のZ軸方向の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。本実施形態では、プローブセンサ221にて検出されるプローブ21のZ軸方向の移動量を測定値zとする。
【0019】
また、三次元測定機本体2は、図1に示すように、スライダ23を駆動することでプローブ21を移動させる駆動機構25を備える。
駆動機構25は、スライダ23をX軸方向に沿って移動させるスライダ駆動部251と、スライダ23のX軸方向の位置を検出するためのスケールセンサ252とを備える。なお、スケールセンサ252は、プローブセンサ221と同様にスライダ23の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。本実施形態では、測定開始位置におけるスライダ23のX軸方向の位置を原点とし、スケールセンサ252にて検出される原点から−X軸方向へのスライダ23の移動量を測定位置Lとする(図2(A))。
【0020】
ホストコンピュータ3は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備えて構成され、三次元測定機本体2を制御するものであり、駆動制御部31と、測定値取得部32と、フィルタ装置4とを備える。
駆動制御部31は、スライダ駆動部251に制御信号を出力し、プローブ21を移動させる。具体的に、本実施形態では、駆動制御部31は、プローブ21を測定開始位置(図2(A))から測定終了位置(図2(B))まで速度一定で移動させる。
測定値取得部32は、プローブセンサ221にて検出されるプローブ21の位置に基づく測定値zと、スケールセンサ252にて検出される測定位置Lとをサンプリングして取得する。
【0021】
フィルタ装置4は、測定値取得部32にて取得される測定値zにデジタルフィルタを適用して三次元測定機本体2の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するものであり、パラメータ取得部41と、フィルタ設計部42と、フィルタ処理部43とを備える。
パラメータ取得部41は、三次元測定機本体2の共振特性を変化させるパラメータを取得する。
【0022】
ここで、三次元測定機本体2の共振周波数Fは、以下の式(1)に示すように、スライダ23のY軸回りの剛性Kと、慣性モーメントMとの関係で表される。また、剛性Kは、スライダ23が移動した場合であっても同じであるが、慣性モーメントMは、以下の式(2)に示すように、測定位置Lに応じて変化する。
このため、本実施形態では、パラメータ取得部41は、測定値取得部32にて取得される測定位置Lをパラメータとして取得する。
【0023】
【数1】

【0024】
フィルタ設計部42は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lに基づいて、三次元測定機本体2の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計する。
具体的に、例えば、フィルタ設計部42は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lと、前述した式(1),(2)とに基づいて、三次元測定機本体2の共振特性G1を推定し、推定した三次元測定機本体2の共振特性G1の逆特性となるフィルタ特性G2(G2=1/G1)を設計する。さらに、フィルタ設計部42は、設計したフィルタ特性G2に基づいて、デジタルフィルタのフィルタ係数を算出することで三次元測定機本体2の共振特性G1に応じたデジタルフィルタを設計することができる。
【0025】
また、例えば、フィルタ設計部42は、測定位置Lを変化させながら三次元測定機本体2の共振特性G1を予め測定し、式(3)に示すように、測定した共振特性G1の逆特性となるフィルタ特性G2を測定位置Lの関数としておく。そして、フィルタ設計部42は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lに基づいて、フィルタ特性G2を設計する。さらに、フィルタ設計部42は、設計したフィルタ特性G2に基づいて、デジタルフィルタのフィルタ係数を算出することで三次元測定機本体2の共振特性G1に応じたデジタルフィルタを設計することができる。
【0026】
【数2】

【0027】
フィルタ処理部43は、フィルタ設計部42にて設計されたデジタルフィルタを測定値zに適用する。
【0028】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)三次元測定機1は、フィルタ装置4を備え、フィルタ装置4は、パラメータ取得部41と、フィルタ設計部42とを備えているので、測定位置Lに応じて変化する三次元測定機本体2の共振特性G1を推定、または測定し、推定、または測定した三次元測定機本体2の共振特性G1に応じたデジタルフィルタを設計することができる。そして、フィルタ装置4は、フィルタ処理部43を備えるので、測定位置Lに応じて三次元測定機本体2の共振特性G1が変化する場合であっても適切に測定誤差を低減させることができる。
(2)フィルタ設計部42は、共振特性G1の逆特性となるフィルタ特性G2を有するデジタルフィルタを設計するので、逆特性となるフィルタ特性を有しないハイカットフィルタや、ノッチフィルタ等のデジタルフィルタを適用する場合と比較して、より適切に三次元測定機本体2の機械共振により生じる振動の影響を低減させることができる。
【0029】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る三次元測定機1Aの概略構成を示すブロック図である。
前記第1実施形態では、三次元測定機1は、フィルタ設計部42を備え、フィルタ設計部42は、設計したフィルタ特性G2に基づいて、デジタルフィルタのフィルタ係数を算出していた。
これに対して、本実施形態では、三次元測定機1Aは、図3に示すように、フィルタ設計部42Aを備え、フィルタ設計部42Aは、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lと、デジタルフィルタのフィルタ係数とを直接関連付ける関数を用いることでデジタルフィルタのフィルタ係数を算出している点で異なる。
【0030】
図4は、フィルタ設計部42Aにて設計される2次のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ51を示すブロック図である。
フィルタ設計部42Aは、図4に示すように、デジタルフィルタとして2次のIIRフィルタ51を設計する。
IIRフィルタ51は、2つの単位遅延Z1,Z2と、5つのフィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2とを備える。また、各フィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lの関数a0(L),a1(L),a2(L),b1(L),b2(L)を用いることで算出される。
なお、各関数a0(L),a1(L),a2(L),b1(L),b2(L)は、前記第1実施形態と同様に、三次元測定機本体2の共振特性を推定、または測定し、推定、または測定した三次元測定機本体2の共振特性の逆特性となるフィルタ特性を設計することで予め生成しておく。
【0031】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における作用、効果と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(3)フィルタ設計部42Aは、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lと、IIRフィルタ51のフィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2とを直接関連付ける関数a0(L),a1(L),a2(L),b1(L),b2(L)を用いることでIIRフィルタ51を設計するので、デジタルフィルタの設計の即応性を向上させることができる。
【0032】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係るフィルタ設計部42Aにて設計される2次のIIRフィルタ52を示すブロック図である。
前記第2実施形態では、各フィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lの関数a0(L),a1(L),a2(L),b1(L),b2(L)を用いることで算出されていた。
これに対して、本実施形態では、各フィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2は、パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lの関数fa0(L),fa1(L),fa2(L),fb1(L),fb2(L)を用いることで算出されている点で異なる。
【0033】
図6は、本発明の第2実施形態に係る関数a0(L)と、本発明の第3実施形態に係る関数fa0(L)との関係を示す図である。なお、図6では、横軸を測定位置Lとし、縦軸を各関数a0(L),fa0(L)にて算出されるフィルタ係数a0としている。
関数fa0(L)は、図6に示すように、関数a0(L)を近似したものである。ここで、関数の近似は、例えば、近似多項式や、スプライン関数による近似式などで行うことができる。
なお、図6では、関数a0(L)を近似した関数fa0(L)についてのみ図示しているが、他の関数a1(L),a2(L),b1(L),b2(L)を近似した関数fa1(L),fa2(L),fb1(L),fb2(L)についても同様である。
【0034】
このような本実施形態においても、前記第2実施形態における作用、効果と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(4)パラメータ取得部41にて取得される測定位置Lと、IIRフィルタ52のフィルタ係数a0,a1,a2,b1,b2とを直接関連付ける関数fa0(L),fa1(L),fa2(L),fb1(L),fb2(L)には、フィルタ係数の算出にかかる演算量を低減させる近似関数を用いているので、近似関数を用いていない場合と比較して更に即応性を向上させることができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、パラメータ取得部41は、測定値取得部32にて取得される測定位置Lをパラメータとして取得していた。これに対して、例えば、パラメータ取得部は、プローブの種類、測定機の姿勢、及び被測定物に対して付加する測定力などの他の測定条件や、他の測定機に関する情報などをパラメータとして取得してもよい。要するに、パラメータ取得部は、測定機の共振特性を変化させるパラメータを取得すればよい。なお、パラメータ取得部は、複数のパラメータを取得するように構成されていてもよい。
【0036】
前記各実施形態では、フィルタ設計部42は、三次元測定機本体2の共振特性G1の逆特性となるフィルタ特性G2を設計し、設計したフィルタ特性G2に基づいて、デジタルフィルタのフィルタ係数を算出することで三次元測定機本体2の共振特性G1に応じたデジタルフィルタを設計していた。これに対して、フィルタ設計部は、例えば、測定機の共振周波数を遮断するハイカットフィルタや、ノッチフィルタ等であって、共振特性の逆特性となるフィルタ特性を有しないデジタルフィルタを設計してもよい。要するに、フィルタ設計部は、パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計することができればよい。
【0037】
前記各実施形態では、プローブ21をX軸方向に沿って移動させるとともに、プローブ21の位置に基づく測定値zをサンプリングして取得する三次元測定機1、言い換えると、1つの測定軸を有する測定機を例示していた。これに対して、例えば、複数の測定軸(自由度)を有する測定機に本発明を適用してもよい。なお、この場合には、フィルタ設計部は、各測定軸の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計すればよい。
前記各実施形態では、測定機として三次元測定機1を例示したが、例えば、形状測定機や、真円度測定機などの測定機に本発明を適用してもよい。要するに、測定機は、プローブを備え、プローブを移動させるとともに、プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機の概略構成を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における三次元測定機本体の要部を示す断面模式図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る三次元測定機の概略構成を示すブロック図。
【図4】前記実施形態におけるフィルタ設計部にて設計される2次のIIRフィルタを示すブロック図。
【図5】本発明の第3実施形態に係るフィルタ設計部にて設計される2次のIIRフィルタを示すブロック図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る関数と、本発明の第3実施形態に係る関数との関係を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1,1A…三次元測定機(測定機)
4…フィルタ装置
21…プローブ
41…パラメータ取得部
42,42A…フィルタ設計部
43…フィルタ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を測定するためのプローブを備え、前記プローブを移動させるとともに、前記プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得する測定機であって、
前記測定値にデジタルフィルタを適用して前記測定機の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するフィルタ装置を備え、
前記フィルタ装置は、
前記測定機の共振特性を変化させるパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、前記測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計するフィルタ設計部と、
前記フィルタ設計部にて設計されたデジタルフィルタを前記測定値に適用するフィルタ処理部とを備えることを特徴とする測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の測定機において、
前記フィルタ設計部は、前記共振特性の逆特性となるフィルタ特性を有するデジタルフィルタを設計することを特徴とする測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定機において、
前記フィルタ設計部は、前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータと、前記デジタルフィルタのフィルタ係数とを関連付ける関数を用いることでデジタルフィルタを設計することを特徴とする測定機。
【請求項4】
請求項3に記載の測定機において、
前記関数には、前記フィルタ係数の算出にかかる演算量を低減させる近似関数を用いることを特徴とする測定機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定機において、
前記パラメータは、前記プローブの種類、測定位置、測定機の姿勢、及び前記被測定物に対して付加する測定力のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする測定機。
【請求項6】
被測定物を測定するためのプローブを備え、前記プローブを移動させるとともに、前記プローブの位置に基づく測定値をサンプリングして取得する測定機に用いられ、前記測定値にデジタルフィルタを適用して前記測定機の共振特性に基づく測定誤差の影響を低減するフィルタ装置であって、
前記測定機の共振特性を変化させるパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部にて取得されるパラメータに基づいて、前記測定機の共振特性の変化に追従するデジタルフィルタを設計するフィルタ設計部と、
前記フィルタ設計部にて設計されたデジタルフィルタを前記測定値に適用するフィルタ処理部とを備えることを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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