説明

測定装置

【課題】各表示周期における最小値および最大値をこれら最小値および最大値が測定された時刻情報を反映した形態で表示でき、圧縮データに基づく実際の波形に近似した拡大波形の表示が行える測定装置を実現すること。
【解決手段】測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号を測定周期T1でサンプリングして測定データとしてデジタル信号に変換し、表示周期T2(>T1)でこれら測定データの最小値および最大値を線分として表示するように構成された測定装置において、
前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻とともに格納する格納手段を設け、前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値および最大値を直線で結んで表示することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関し、詳しくは、圧縮して格納される測定データに基づく測定信号の再現性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
測定装置の一種に、2次元表示器を記録紙に見立てた特許文献1に記載されているようなペーパーレスレコーダがある。
【0003】
図2は、従来のペーパーレスレコーダの一例を示すブロック図である。図2において、入力部1には、温度、圧力、電圧、電流などの測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号が入力される。
【0004】
測定部2は、入力部1に入力される測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号を、所定の測定周期T1のサンプリングクロックで駆動されるA/D変換器でデジタル信号に変換し、測定データを得る。
【0005】
測定部2でデジタル信号に変換された測定データは、サンプリングクロックの周期T1に対して十分長い表示周期T2(>T1)内から最大値と最小値の2つが選択され、圧縮データとして一時格納メモリ5に格納される。測定部2は、逐次変換される測定データを一時格納メモリ5に格納されている表示周期T2内の最小値および最大値と比較し、最小値より小さい場合には新しい最小値として更新格納し、最大値より大きい場合には新しい最大値として更新格納する。
【0006】
表示データ作成部4は、表示周期T2ごとにリアルタイムクロック3から現在時刻データをサンプリング時刻データとして取得する。そして、このサンプリング時刻データとその時点で一時格納メモリ5に圧縮データとして格納されている最小値および最大値を表示データのセットデータとしてアクイジションメモリ6に書き込むとともに、一時格納メモリ5に格納されている最小値および最大値はクリアする。
【0007】
表示部8は、アクイジションメモリ6にセットデータとして格納されている表示データをもとに、部分Aの拡大図に示すように、最小値minから最大値maxの高さと表示周期T2の幅をもつ複数の矩形が連続した集合体としてグラフ波形を描画する。
【0008】
部分Aの拡大図において、実線Bは、測定データに基づく実際の波形を示している。ここで、ペーパーレスレコーダを構成する表示部8の表示解像度と表示周期T2の関係に着目すると、時間軸を最大に拡大した場合でも表示画面の数ドットが表示周期T2とほぼ等しくなる程度であり、ここまで拡大すると拡大図のように複数の矩形が連続した集合体を確認できる。
【0009】
なお、アクイジションメモリ6にセットデータとして格納されている表示データは、必要に応じてメモリカード7にもコピーすることができ、PCなどでそれらのデータを参照することができる。この場合、使用するPCモニタによっては、表示部8よりも高い表示解像度が得られる。
【0010】
特許文献1には、ペーパーレスレコーダに関する技術が記載されている。
特許文献2には、取り込み周期間のアナログ測定信号のレベル変動を反映した形態で測定データを格納する測定データ記憶装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−149008
【特許文献2】特開平7−128084
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図2に示した従来の構成によれば、アクイジションメモリ6に各表示周期のセットデータとして最小値と最大値およびセットデータのサンプリング時刻を記録することで、すべての測定データを記録、表示するよりも少なく圧縮されたセットデータで波形を表示することができ、各表示周期内に測定された最小値および最大値を取りこぼすことなく確実に表示できる。
【0013】
しかし、これら各表示周期の矩形を形成する最小値と最大値は、それぞれの矩形の時間軸におけるどの時点で発生したものかを的確に把握することはできない。これらの発生時間をより詳しく観測するためには表示周期を速くする必要がある。そして、実際に最小値および最大値が観測された時刻を得るためには表示周期を測定周期と等しくしなければならず、現実的ではない。
【0014】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、その目的は、各表示周期における最小値および最大値をこれら最小値および最大値が測定された時刻情報を反映した形態で表示でき、圧縮データに基づく実際の波形に近似した拡大波形の表示が行える測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号を測定周期T1でサンプリングして測定データとしてデジタル信号に変換し、表示周期T2(>T1)でこれら測定データの最小値および最大値を線分として表示するように構成された測定装置において、
前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻とともに格納する格納手段を設け、
前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値および最大値を直線で結んで表示することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の測定装置において、
前記格納手段には、さらに最新値とそのサンプリング時刻が格納され、
前記測定データの最小値と最大値および最新値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値と最大値および最新値を直線で結んで表示することを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の測定装置において、
前記測定データの表示形態を、表示拡大率に応じて、最小値から最大値の高さと表示周期の幅をもつ複数の矩形が連続した集合体としてのグラフ波形表示と、少なくとも前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値および最大値を直線で結んで表示する形態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
これらにより、各表示周期における圧縮データに基づいて、実際の波形により近似した拡大表示波形が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】従来のペーパーレスレコーダの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図である。図1において、入力部11には、温度、圧力、電圧、電流などの測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号が入力される。
【0021】
測定部12は、入力部11に入力される測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号を、所定の測定周期T1のサンプリングクロックで駆動されるA/D変換器でデジタル信号に変換し、測定データを得る。
【0022】
測定部12でデジタル信号に変換された測定データは、サンプリングクロックの周期T1に対して十分長い表示周期T2(>T1)内から最大値と最小値の2つが選択され、圧縮データとしてリアルタイムクロック13からサンプリング時刻データとして取得した現在時刻データとともに一時格納メモリ15に格納される。測定部12は、逐次変換される測定データを一時格納メモリ15に格納されている表示周期T2内の最小値および最大値と比較し、最小値より小さい場合には新しい最小値としてリアルタイムクロック13からサンプリング時刻データとして取得した現在時刻データとともに更新格納し、最大値より大きい場合には新しい最大値としてリアルタイムクロック13からサンプリング時刻データとして取得した現在時刻データとともに更新格納する。
【0023】
表示データ作成部14は、表示周期T2ごとにリアルタイムクロック13から現在時刻データをサンプリング時刻データとして取得する。そして、このサンプリング時刻データと一時格納メモリ15に格納されている最小値および最大値を表示データのセットデータとしてアクイジションメモリ16に書き込むとともに、その時点における測定データの最新値もリアルタイムクロック13からサンプリング時刻データとして取得した現在時刻データとともに表示データのセットデータとしてアクイジションメモリ16に書き込む。なお、一時格納メモリ15に格納されている最小値および最大値は、アクイジションメモリ16に書き込んだ時点でクリアする。
【0024】
なお、アクイジションメモリ16にセットデータとして格納されている表示データは、必要に応じてメモリカード17にもコピーすることができ、PCなどでそれらのデータを参照することができる。
【0025】
表示部18は、表示周期T2ごとにアクイジションメモリ16にセットデータとして格納される最小値と最大値および最新値よりなる3点の表示データをもとに、部分Aの拡大図に一点鎖線Cで示すように、これら3点の表示データをそれぞれのサンプリング時刻データの時刻順に並べて隣接する測定データ相互を直線で結び描画表示する。ここで、最新値が格納されている最小値より小さい場合には新しい最小値になり、最大値より大きい場合には新しい最大値になるので、これらの場合にはセットデータは最小値と最大値の2点になる。
【0026】
一点鎖線Cで示す新方式の波形は、最小値minから最大値maxの高さと表示周期T2の幅をもつ複数の矩形が連続した集合体としての従来のグラフ波形にくらべて、実線Bで示す実際の波形にきわめて近似したものになる。
【0027】
これにより、各表示周期T2における最小値と最大値および最新値が測定された時刻の前後関係などの情報を、一点鎖線Cで示す新方式の波形から読み取ることができる。
【0028】
なお、本発明に基づく表示データは、従来の表示データの情報をすべて含んでいる。したがって、以前とまったく同じ描画方法で、本発明に基づく表示データの波形を表示することができる。
【0029】
また、これにより、波形描画方法を、表示部18の表示画面上における波形の拡大率に応じて、図2に示す従来のものと図1に示す新しい表示データのものとを使い分けることができる。
【0030】
すなわち、たとえば拡大表示波形の表示周期T2が表示部18の表示画面における画素の数ドット以下になる場合には、従来と同様に、最小値minから最大値maxの高さと表示周期T2の幅をもつ複数の矩形が連続した集合体で波形を描画表示する。
【0031】
これに対し、拡大表示波形の表示周期T2が表示部18の表示画面における画素の数ドットよりも長くなった場合には、表示方法を本発明の方法に切り替え、最小値と最大値および最新値の3点を測定時刻順に並べ替えて直線で結んで描画表示する。
【0032】
本発明の描画方法は、従来の方法に比べてデータ処理量が増大する。ところが、表示拡大率に応じて表示方法を切り替えることで、従来の方法を選択して拡大表示しなければ以前と同じパフォーマンスでの描画が可能となる。
【0033】
なお、上記実施例では、測定装置がペーパーレスレコーダの例について説明したが、これに限るものではなく、複数測定個所の多点測定データを所定の測定周期で連続的に取り込むデータロガーや、連続的に波形測定データを取り込んで記録表示する波形測定装置などにも有効である。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、各表示周期における最小値および最大値をこれら最小値および最大値が測定された時刻情報を反映した形態で表示でき、圧縮データに基づく実際の波形に近似した拡大波形の表示が行える測定装置が実現できる。
【符号の説明】
【0035】
11 入力部
12 測定部
13 リアルタイムクロック
14 表示データ作成部
15 一時格納メモリ
16 アクイジションメモリ
17 メモリカード
18 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の物理量に関連したアナログ測定信号を測定周期T1でサンプリングして測定データとしてデジタル信号に変換し、表示周期T2(>T1)でこれら測定データの最小値および最大値を線分として表示するように構成された測定装置において、
前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻とともに格納する格納手段を設け、
前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値および最大値を直線で結んで表示することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記格納手段には、さらに最新値とそのサンプリング時刻が格納され、
前記測定データの最小値と最大値および最新値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値と最大値および最新値を直線で結んで表示することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定データの表示形態を、表示拡大率に応じて、最小値から最大値の高さと表示周期の幅をもつ複数の矩形が連続した集合体としてのグラフ波形表示と、少なくとも前記測定データの最小値および最大値をそれぞれのサンプリング時刻にしたがって配列するとともに互いに隣接する前記測定データの最小値および最大値を直線で結んで表示する形態に切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−11508(P2013−11508A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144188(P2011−144188)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】