説明

湯葉麺入りスープ食品

【課題】健康、高級イメージの高い湯葉を、おいしく手軽に食べられるようにスープとして提供する。
【解決手段】麺状に裁断した湯葉とスープ部と容器を有し、該容器にお湯を入れることによりスープを調製することが可能な湯葉麺入りスープ食品であって、麺状に裁断した湯葉の幅が5〜20mm、長さが30〜150mm、(長さ)/(幅)が3.5〜25の範囲内にある湯葉麺入りスープ食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺状の湯葉を含むスープ食品に関し、詳しくは湯葉の風味及び食感が良好なスープ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
スープ食品は常温タイプ、チルドタイプ、冷凍タイプと流通温度帯の違いの他、風味的には和風、洋風、中華風等、形態的には袋入り、カップ入り、缶入り、紙容器入り、使用方法で分けると、即食タイプ、調理タイプ、電子レンジ対応タイプ、熱湯注入タイプ、スープ自身の形態で分けると、粉末タイプ、FDタイプ、液体タイプ、液体濃縮タイプ等、数多くの種類の食品が存在する。これはスープ食品が食事の副食として様々な状況下で利用されていることを示している。特に昨今では、お湯で注いで簡単に出来るカップ入りスープの市場で伸びが著しく、その中でのカップ入り春雨スープが際立っている。これはカップ入り春雨スープが手軽で低カロリーであるのと、春雨が麺状であり食べやすいことが消費者に高く評価されていることによる。
【0003】
湯葉は、豆腐と同様に豆乳を原料としてつくる。原料豆乳を沸騰しない程度に加熱していくと、その表面に膜が形成されるが、この膜を竹串や針金などですくい取ったものが「生湯葉」であり、更にその湯葉を自然乾燥、熱風乾燥、フリーズドライ乾燥させたものを「乾燥湯葉」という。
【0004】
湯葉も低カロリーで大豆を原料としていることで健康イメージが高く、また、京湯葉、日光湯葉に代表されるように高級イメージが高く、消費者に極めて評価の高い食材である。百貨店の食品売り場では 「生湯葉」や「乾燥湯葉」が販売されているが、一般的なスーパーやコンビニエンスストアでは湯葉もしくは湯葉を用いた食品が殆ど販売されていないこともあり、どちらかいうと湯葉は、たまに外食時に和食専門店で食べる、一般的には普及していない食材である。
特許文献1は、カップ入りインスタント細切り湯葉の製法と、その製法により製造したカップ入りインスタント細切湯葉について記載されているが、カップ麺に用いられる細長い湯葉麺は、湯葉同士の付着が著しく、湯葉の塊を食することになり、湯葉本来の風味、食感を楽しむことができない。
【特許文献1】特開平10-295311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの背景下、健康、高級イメージの高い湯葉を、おいしく手軽に食べられるようにスープとして提供しようというものである。
【0006】
湯葉をスープとして提供しようとすると大きな課題が発生する。湯葉は薄いシート状であるのと、うどんや中華麺等が澱粉を主成分としているのに対し、湯葉の主成分はたんぱく質である為に、スープの中に入れた場合、湯葉シート同士、さらに湯葉と箸(特に割り箸)、スプーンなどが付着する。その結果、箸やスプーンで湯葉をすくって食べる際に、数枚湯葉シートが重なった塊として食べざると得なくなる。
【0007】
湯葉本来の風味、食感の良さは、薄い湯葉シートを味わうことであるのに対し、通常の方法による湯葉スープでは、湯葉本来の良さを味わう事が出来ない。
【0008】
本発明はこのような湯葉同士の付着といった課題を解決する目的として創出されたものであり、湯葉をスープとしておいしく手軽に食べられるように提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、一見湯葉シートの付着には影響が小さいと考えられる湯葉シートの「裁断寸法」に着目し、更に上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スープ部の粘度をある一定の範囲に設定することで、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の湯葉麺入りスープ食品を提供するものである。
1. 麺状に裁断した湯葉とスープ部と容器を有し、該容器にお湯を入れることによりスープを調製することが可能な湯葉麺入りスープ食品であって、麺状に裁断した湯葉の幅が5〜20mm、長さが30〜150mm、(長さ)/(幅)が3.5〜25の範囲内にある湯葉麺入りスープ食品。
2. 該容器にお湯を入れて食するときの、湯葉を除いたスープの粘度が5〜500mPa・sである、項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
3. 湯葉を除いたスープの粘度が10〜300mPa・sである、項2に記載の湯葉麺入りスープ食品。
4. 麺状に裁断した湯葉の幅が5〜15mm、長さが50〜150mm、(長さ)/(幅)が3.5〜20の範囲内にある項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
5. 麺状に裁断した湯葉の幅が6〜13mm、長さが50〜120mm、(長さ)/(幅)が4〜15の範囲内にある項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
6. 前記スープ部が、澱粉および増粘剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項1〜5のいずれかに記載の湯葉麺入りスープ食品。
7. 増粘剤がキサンタンガムである項6に記載の湯葉麺入りスープ食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、湯葉本来の風味、食感の良さを維持し、麺状で食べやすい湯葉麺入りスープ食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、湯葉同士の付着を解決する手段として、個々の湯葉シートを裁断して、麺状にする。麺状の湯葉(湯葉麺ともいう)の幅は、5〜20mm程度が好ましく、より好ましくは5〜15mm程度、特に好ましくは6〜13mm程度である。湯葉麺の長さは、30〜150mm程度が好ましく、より好ましくは50〜150mm程度、特に好ましくは50〜120mm程度である。湯葉麺の長さと湯葉麺の幅の比{(長さ)/(幅)}は、好ましくは3.5〜25程度、より好ましくは3.5〜20程度、特に好ましくは4〜15程度である。湯葉麺の幅が狭すぎると湯葉独特の食感が損なわれ、湯葉麺の幅が広すぎると湯葉同士の付着が顕著になる。湯葉麺の長さが長過ぎると湯葉麺同士が絡まるために付着が顕著になり、湯葉麺の長さが短すぎると麺としての食べやすさが損なわれる。湯葉麺の長さと湯葉麺の幅の比{(長さ)/(幅)}が小さすぎると麺としての食べやすさが損なわれ、該比が大きすぎると、湯葉麺同士が絡まるために付着が顕著になる。
【0013】
なお、本明細書における湯葉のサイズは、生湯葉あるいは乾燥湯葉を湯戻しした湯葉(食する時点での湯葉)のサイズを規定しており、乾燥湯葉では生湯葉に比べてサイズが縮小するが、乾燥湯葉のサイズは湯戻し後のサイズで比較することができる。
【0014】
湯葉麺の付着は、裁断寸法を工夫することで抑えられるが、スープ部にお湯を加えた喫食時のスープの粘度を制御することにより、さらに抑制することができる。喫食時のスープの粘度は、好ましくは5〜500mPa・s程度、より好ましくは10〜300mPa・s程度、特に好ましくは15〜200mPa・s程度、特に15〜100mPa・s程度である。湯葉麺同士ないし湯葉麺と箸、フォーク、スプーンなどへの付着は、粘度が低すぎても高すぎても生じやすくなり、適切な粘度範囲が存在する。適切な粘度の付与は、澱粉および/または増粘剤を配合することにより行うことができる。増粘剤としては、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類等が挙げられる。熱湯でとろみが付与しやすく、風味面よりキサンタンガムが好ましくい。澱粉としては、生澱粉であってもよく、エーテル化、エステル化、架橋、アルファ化等の処理をした加工澱粉であってもよい。澱粉は、熱湯を注いでとろみを付与する性質を有するものであれば、特に限定されない。増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。澱粉と増粘剤の使用量は、適度の粘度を付与できるような量であればよく、特に限定されないが、例えば200mlの容器であれば2.0g以下であるのが好ましい。
【0015】
粘度は、B型粘度計を使用して測定することができる。B型粘度計としては、通常の粘度計を広く使用でき、特に限定されないが、例えばB型粘度計BL(東機産業株式会社)を使用することができる。
【0016】
スープ部は、粉末タイプ、FDタイプ、液体タイプ、液体濃縮タイプ等の任意の形態のスープを使用でき、好ましくはさらに前記増粘剤を含み得る。スープ部は、しょうゆ、カレー、味噌、コンソメ、塩などの任意の味のスープを使用できる。
【0017】
本発明のスープ食品には、さらにねぎ、かまぼこ、野菜、油揚げ、豆腐などの任意の具、薬味を配合することができる。
【0018】
本発明で使用する湯葉は、生湯葉であってもよいが、好ましくは自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥などにより乾燥された湯葉が使用できる。好ましい乾燥湯葉は、凍結乾燥された湯葉である。凍結乾燥された湯葉は、例えばWO2004/71216に記載の方法により製造することができる。
【0019】
本発明の好ましい1つの実施形態において、特定のサイズに裁断された湯葉とスープ部、さらに必要に応じて具、薬味などをカップ容器の中に入れ、該容器を密閉蓋で覆い、スープ食品とする。湯葉、スープ、薬味、具などは必要に応じて袋に封入されて容器内に入れてある。スープを調製する際に、密閉蓋を途中まで剥がし、必要に応じて袋から取り出した、湯葉、スープ、具、薬味などを容器の中に入れ、該容器に熱湯などのお湯を注ぐ。途中まで剥がした密閉蓋を再び閉じて1分から数分間待つことにより、スープ食品を調製することができる。
【0020】
容器は、従来使用されている任意の容器が使用され、例えばカップ状の耐熱容器が好ましく使用される。容器の材質としては、合成樹脂、紙などが挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0022】
湯葉は、湯葉同士あるいは湯葉と箸、スプーン、フォークなどと付着し、極端な場合には1回箸ですくうと、全ての湯葉が箸に付着し、湯葉独特の食感や麺状の形状による食べやすさが大きく損なわれる。そこで、下記の実施例では、湯葉の付着性を以下の試験方法により評価した。
試験方法
(i)粉末スープとフリーズドライした湯葉(各種寸法に裁断されたもの、生湯葉の時点で計測)をカップに入れ、98℃のお湯を200ml注ぎ、すばやく30秒割り箸でかき混ぜる。
(ii)2分間放置する。
(iii)割り箸の先端部から60mmの部分を直角に折り曲げた割り箸1本を、60mm先端部がカップの底に付着するように10秒沈める。
(iv)割り箸の60mm先端部が斜めにならないように、割り箸の反対方向を静かに持ち上げ、スープから割り箸を引き上げる。
(v)割り箸を持ち上げたまま10秒間放置し、割り箸の先端部に付着した湯葉の重量を測定する。
(vi)同じテストを5回行い、平均値をデータとして記載。
【0023】
なお、フリーズドライした湯葉は、水分値55%の生湯葉(厚さ約0.3mm)を指定のサイズにカットし、40mm×30mm×25mm(高さ)のトレイに15g充填後フリーズドライ処理を実施して得られたものである。フリーズドライ後の重量は6.4gであった。
【0024】
割り箸は、長さ202mm、材質はアスペン材のものを使用した。
【0025】
カップは、高さ97mm、底口径77mm、上部口径93mmの円筒形紙カップを使用した。
【0026】
実施例1
下記の表2のA〜Hの8種類の寸法に裁断したフリーズドライした湯葉を用い(水戻り後の湯葉重量:約22g)、上記試験方法に従い、以下の項目について試験した。A〜Hの1つの湯葉片の表面積はほぼ一定であり、スープにとろみはつけなかった(B型粘度計による粘度はほぼゼロ)。
【0027】
なお、湯葉以外に配合した原料を表1に記載する。
・スープ中での湯葉分散性:工程(i)の30秒割り箸でかき混ぜた後の湯葉同士の付着の有無を評価。付着せず、よく分散している場合を5とし、湯葉同士の付着が多くなるに従い、点数を低くした。
・スープ中での状態:工程(i)の30秒割り箸でかき混ぜた後の状態を観察。
・湯葉の箸への付着量(g):工程(v)で測定した割り箸に付着した湯葉の重量(湿重量)を5回のテストの平均値として求めた。
・湯葉麺の風味、食感:シート状の生湯葉に近い食感のものを5とし、食感がシート状の生湯葉から離れるに従って点数を低くした。
・総合評価:付着していない1枚のシート状の湯葉の食感、風味を5とし、該非付着湯葉から離れるに従って、点数を低くした。
【0028】
表1の結果から、湯葉のサイズは即席麺のように細くなりすぎても、また正方形に近付いても湯葉同士の付着性が増大し、湯葉の食感に欠けることが明らかになり、本発明の特定のサイズの麺状の湯葉がスープ食品に適していることが明らかになった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
実施例2
湯葉の付着性に対するとろみの影響を見るために、上記の試験方法に従い、下記の表2に示される粘度の異なるスープに湯葉を分散させて、湯葉同士あるいは湯葉と箸の付着性を評価した。湯葉のカットサイズは、実施例1で湯葉の箸への付着量が最も小さかった8mm×80mmとした(水戻り後の湯葉重量:約22g)。なお、粘度は湯葉をメッシュで取り除き測定した(測定温度70℃)。また、粘度計として、B型粘度計BL((株)東京計器製造所⇒現会社名;東機産業株式会社)を使用した。
【0032】
結果を表3に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表3に示すように、湯葉入りスープの粘度には最適値が存在することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺状に裁断した湯葉とスープ部と容器を有し、該容器にお湯を入れることによりスープを調製することが可能な湯葉麺入りスープ食品であって、麺状に裁断した湯葉の幅が5〜20mm、長さが30〜150mm、(長さ)/(幅)が3.5〜25の範囲内にある湯葉麺入りスープ食品。
【請求項2】
該容器にお湯を入れて食するときの、湯葉を除いたスープの粘度が5〜500mPa・sである、請求項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
【請求項3】
湯葉を除いたスープの粘度が10〜300mPa・sである、請求項2に記載の湯葉麺入りスープ食品。
【請求項4】
麺状に裁断した湯葉の幅が5〜15mm、長さが50〜150mm、(長さ)/(幅)が3.5〜20の範囲内にある請求項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
【請求項5】
麺状に裁断した湯葉の幅が6〜13mm、長さが50〜120mm、(長さ)/(幅)が4〜15の範囲内にある請求項1に記載の湯葉麺入りスープ食品。
【請求項6】
前記スープ部が、澱粉および増粘剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の湯葉麺入りスープ食品。
【請求項7】
増粘剤がキサンタンガムである請求項6に記載の湯葉麺入りスープ食品。

【公開番号】特開2008−43222(P2008−43222A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219662(P2006−219662)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】