説明

湿式現像剤

【課題】トナー粒子と、キャリヤ液と、分散剤とを含む湿式現像剤において、湿式現像剤
としての保管安定性を維持しながら、かつ定着性を阻害することのない特性を持った湿式
現像剤を提供する。
【解決手段】トナーとして、フタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を酸成分とするポリエ
ステル樹脂を主体とし、分散剤として、塩基性の高分子分散剤を用いる湿式現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性の溶媒に、分散剤を用いて、トナーを分散した湿式現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体(感光ドラム)に静電潜像を形成し、それにトナーを付着させて、紙などに転写
して定着する電子写真方式の画像形成装置が、広く使用されている。特に、大量プリント
用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求さ
れる画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れもおきにくい湿式現像
剤を用いる湿式現像方式が用いられるようになってきている。
【0003】
近年では、流動パラフィンやシリコンオイルなどの絶縁性の溶媒(キャリヤ液)中に樹
脂及び顔料からなる固形分としてのトナーを高濃度に分散させることで構成される、高粘
度で高濃度の湿式現像剤を用いる画像形成装置が提案されるようになってきた。
【0004】
この湿式現像剤を用いて現像する際には、現像ローラ等の現像剤担持体上に現像剤のミ
クロン単位の薄層を形成し、この薄層化された現像剤を感光体に接触させて現像するのが
一般的である。
【0005】
感光体表面の潜像は、湿式現像剤の薄層で現像され、感光体表面にトナー画像が形成さ
れる。このトナー画像は、記録材に転写される。あるいは、一旦中間転写体などに一次転
写された後、記録材に二次転写される。
【0006】
記録材に転写されたトナー画像は、定着装置により加圧、加熱されるなどして、通常は
紙である記録材に定着される。しかしトナー画像は、元々はキャリヤ液にトナーを分散し
た湿式現像剤を用いて現像したものであり、トナーのみならず、トナー間、トナー紙間に
はキャリヤ液が含まれている。しかもかなり高粘度である。不揮発性のキャリヤ液を使用
している場合は、特にこれが問題となる。
【0007】
高粘度のキャリヤ液の存在は、トナー画像定着時の定着性を阻害することが知られてい
る。例えば、トナー画像と記録材がキャリヤ液によって濡れた状態になっているため、ト
ナー画像の定着性を低下させたり、また加圧定着時には画像のつぶれや乱れを生じさせた
りすることもある。
【0008】
これに対して、定着前に未定着のトナー画像から溶媒(キャリヤ液)を除去しようとす
る技術が開発されてきた。
【0009】
例えば、定着装置前に発熱源を用意し、記録材上の溶媒を揮発させることで除去する。
あるいは、トナー画像中の溶媒を加熱により表面に析出させ、スクイズなどの除去手段で
除去する。また、電界をかけてトナーと記録材の付着力を高める。等々の技術が提案され
てきた。
【0010】
しかしながら、揮発した溶媒の安全性や気化熱を供給するためのエネルギー増大、スク
イズ工程で記録材を傷つけたり、画像乱れや荒れを発生させる危険、等の問題があり、溶
媒を効果的に取り除くことは困難であった。
【0011】
高粘度の溶媒が定着性を阻害する要因は、湿式現像剤としての保管安定性の観点から、
高い分散性が求められていることが関係している。湿式現像剤自体が高分散性を維持して
いると、定着時にトナー粒子同士の接触、合一が進行せず、トナー層はトナー粒子の密集
し、凝縮した状態を形成できず、定着性が弱くなる。
【0012】
一方、分散性を落とすと、湿式現像剤の保管時にトナーの凝集が発生したりして、保管
安定性が維持できなくなる危険性がある。すなわち、保管安定性と定着性とは、両立しが
たい特性となっている。
【0013】
従って、定着時にトナー層から溶媒を除去できれば望ましいのだが、上記のような困難
があることを考慮して、溶媒を含めた湿式現像剤として、保管安定性を維持し、かつ定着
性を阻害しないような分散性をもたらすべく、トナーのバインダー樹脂等についても検討
が行われてきた(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0014】
特許文献1では、酸価が40〜80mgKOH/gのポリエステル樹脂をバインダー樹
脂として用いている。しかしながら、分子量の小さいイオン性の分散剤を使用しており、
そのため分散性が不十分で、十分な保管安定性が得られにくい。
【0015】
また特許文献2や3では、塩基性の分散剤を用いているが、トナー粒子のバインダー樹
脂としてのポリエステル樹脂については記載がない。いずれも定着性と分散性の両立を本
来の課題としたものではなく、十分な定着性と保管安定性を得られるものではない。
【0016】
また特許文献4には、チキソトロピックな性質を有する湿式現像剤を用いる方法が記載されているが、ポリエステル樹脂については記載がない。また、定着性と分散性の両立を本来の課題としたものではなく、十分な定着性と保管安定性を得られるものではない。
【0017】
他にも様々な公知文献に、様々なバインダー樹脂と分散剤を用いる技術が提案されてい
る。しかしながら、保管安定性と定着性との何れかがよければ何れかに問題があり、両者
を十分に両立させる課題は依然として残っている。
【特許文献1】特開平10−268581号公報
【特許文献2】特開平8−220812号公報
【特許文献3】特開2003−195573号公報
【特許文献4】特開2001−100533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のように、湿式現像においては、記録材に転写された定着前のトナー画像は、トナ
ーのみならず、トナー間、トナー記録材間に、かなり高粘度のキャリヤ液(溶媒)が含ま
れており、トナー画像定着時の定着性を阻害する。かといって、キャリヤ液を除去するに
も多々問題がある。
【0019】
トナー間、トナー記録材間にキャリヤ液が存在しても、トナー粒子の接触、合一を進行
させ、定着性を向上するためには、湿式現像剤としての分散性を低下させることが効果的
である。しかしながら一方では、分散性の低下によって湿式現像剤の保管安定性が損なわ
れるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、これらの課題を解決し、湿式現像剤としての保管安定性を維持しなが
ら、かつ定着性を阻害することのない特性を持った湿式現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するため、本発明の湿式現像剤は、トナー粒子と、キャリヤ液と、分散剤とを含む湿式現像剤であって、前記トナー粒子は、ポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、酸成分としてフタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を含み、前記分散剤は、塩基性の高分子分散剤を含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明では、定常ずり速度が1s−1における湿式現像剤の粘度ηと1000s−1における湿式現像剤の粘度η1000との粘度比(η/η1000)が,10〜10,000であることが好ましい。
【0023】
また、前記3官能以上の芳香族系の酸の割合が、全酸成分に対して質量比で10%以上、60%以下であることが好ましい。
【0024】
また、前記3官能以上の芳香族系の酸はトリメリット酸であることが好ましい。
【0025】
また、前記ポリエステル樹脂は、酸価が20mgKOH/g以上で、100mgKOH
/g以下であることが好ましい。
【0026】
また、前記塩基性の高分子分散剤は、分子内にアミン、アミド、ピロリドン、もしくは
イミンを有することが好ましい。
【0027】
また、前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが60℃以上で、85℃以下であ
ることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
トナー粒子と、絶縁性の溶媒と、分散剤とを含む湿式現像剤において、トナーとして、
フタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を酸成分とするポリエステル樹脂を主体とし、分散
剤として、塩基性の高分子分散剤を用いることにより、湿式現像剤としての保管安定性を
維持しながら、かつ定着性を阻害することのない特性を持った湿式現像剤を提供すること
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
湿式現像剤を用いる湿式現像は、複写機、簡易印刷機、プリンタなどの画像形成装置に
利用される。これらには、一般的に電子写真方式の画像形成プロセスが、共通して用いら
れている。まずその電子写真方式による湿式の画像形成部を、図1を参照して説明し、さ
らに湿式現像剤を用いて現像され、記録材に転写されたトナー画像の定着性と湿式現像剤
の保管安定性に関係する湿式現像剤の構成、特にトナーのバインダー樹脂について説明す
る。
【0030】
(画像形成装置の構成と機能動作)
本実施の形態に係る画像形成装置の全体構成例を図1に示す。図1を用いて画像形成装
置の全体構成を説明する。但し、画像形成プロセスに関わる構成要素のみを図示した。記
録材の給紙、搬送、排紙に関わる構成要素は簡略的に示した。
【0031】
図1の画像形成装置10においては、像担持体としての感光体ドラム1、帯電装置2、
露光装置3、湿式現像装置4、クリーニング装置6を備える。また画像形成装置10は、
中間転写体としての中間転写ローラ5と、二次転写ローラ7を備える。
【0032】
図1においては、湿式現像装置4が一台のみ配置されているが、カラー画像形成のため
に複数台配置されていてもよい。カラー現像の方式、中間転写の有無などは任意に設定す
ればよく、それに合わせた任意の配置構成をとることができる。本画像形成装置例では中
間転写ローラ5を用いているが、中間転写ベルトの形態であってもよい。
【0033】
感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状であって、図1に
おける矢印A方向に回転する。感光体ドラム1の外周には、クリーニング装置6、帯電装
置2、露光装置3、湿式現像装置4、及び中間転写ローラ5が、前記感光体ドラム1の回
転方向に沿って順次配置されている。
【0034】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。
【0035】
露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させ
て静電潜像を形成する。
【0036】
湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された潜像を現像する。すなわち、感光体
ドラム1の現像領域へ湿式現像剤を搬送し、その湿式現像剤に含まれるトナーを感光体ド
ラム1の表面の静電潜像に供給してトナー画像を形成する。
【0037】
湿式現像装置4は、一般的には、表面に湿式現像剤の薄層を担持し、像担持体である感
光体ドラム1上の潜像を現像する現像ローラ41、現像ローラ41に当接して、その表面
に液量調整された湿式現像剤を転移させる搬送ローラ42、そしてその搬送ローラ42に
当接して、その表面に現像剤槽44内の湿式現像剤8を供給する供給ローラ43を備える

【0038】
現像のプロセスにおいては、湿式現像装置4の現像ローラ41に電源(不図示)からト
ナーと同極性の現像バイアス電圧が印加される。同じくトナーと同極性の感光体ドラム1
上の潜像の電位とのバランスで電界の大小差が形成され、潜像に従って現像剤中のトナー
が感光体ドラム1に静電吸着され、感光体ドラム1上の潜像が現像される。
【0039】
中間転写ローラ5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、前記感光体ド
ラム1と接触しながら矢印B方向に回転する。これら中間転写ローラ5と感光体ドラム1
とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写ローラ5への一次転写が行われる。
【0040】
一次転写プロセスにおいては、中間転写ローラ5に、電源(不図示)からトナーと逆極
性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における前記中間転写ロ
ーラ5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間
転写ローラ5に静電吸着され、前記中間転写ローラ5上に転写される。
【0041】
トナー画像が中間転写ローラ5に転写されると、クリーニング装置6が感光体1上の残
存トナーを除去し、次の画像形成が行われる。
【0042】
中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とは、記録材9を挟んで対向するように配置され
ており、記録材9を介して接触回転する。これら中間転写ローラ5と二次転写ローラ7と
のニップ部で、中間転写ローラ5から記録材9への二次転写が行われる。
【0043】
記録材9は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ矢印C方向に搬送される

【0044】
二次転写プロセスにおいては、二次転写ローラ7に、電源(不図示)からトナーと逆極
性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7
との間に電界が形成され、前記中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間を通過させた
記録材9上へ前記中間転写ローラ5上のトナー画像が静電吸着され、前記記録材9上に転
写される。
【0045】
定着部は、対向配置され接触回転する一対の定着ローラ9a、9bを備える。定着ロー
ラ9a、9bには、それぞれ熱源が設けられており、前記定着ローラ9a、9b間を記録
材9が通過すると、その記録材9が高温下で加圧される。これにより、記録材9上でトナ
ー画像を形成するトナーが前記記録材9に融着し定着する。
【0046】
(湿式現像剤の保管安定性と定着性)
湿式現像剤には高粘度のキャリヤ液が含まれており、このキャリヤ液中でのトナー粒子
の分散性が、トナー粒子同士の凝集の発生に影響し、保管安定性と定着性のトレードオフ
の関係に繋がっていることを説明する。
【0047】
上記の画像形成装置において、湿式現像剤8により現像され、記録材9に転写されたト
ナー画像は、定着装置により加圧、加熱されるなどして、通常は紙である記録材9に定着
される(以降、記録材は紙とする)。
【0048】
しかしトナー画像は、元々はキャリヤ液にトナーを分散した湿式現像剤を用いて現像し
たものであり、そこにはトナー粒子だけでなく、トナー間、トナー紙間にはキャリヤ液が
含まれている。しかもかなり高粘度のキャリヤ液である。
【0049】
高粘度のキャリヤ液の存在は、トナー画像定着時の定着性を阻害する。例えば、トナー
画像と記録材がキャリヤ液によって濡れた状態になっているため、トナー画像の定着性を
低下させる、また加圧定着時には画像のつぶれや乱れを生じさせたりすることもある。
【0050】
高粘度のキャリヤ液が定着性を阻害する要因は、湿式現像剤としての保管安定性の観点
から、高い分散性が求められていることが関係している。トナー粒子表面には分散剤が吸
着し、トナー粒子同士の接触、凝集を妨げ、高分散性を維持しようとする。これにより、
保管時にトナー凝集や沈降が起こりにくく、良好な保管安定性が得られる。
【0051】
しかしこのように湿式現像剤自体が高分散性を維持していると、定着時にトナー粒子同
士の接触、合一が進行せず、トナー層はトナー粒子の密集し、凝縮した状態を形成できず
、定着性が弱くなる。しかし定着性を確保するために、分散性を落とすようにすると、湿
式現像剤の保管時にトナーの凝集が発生したりして、保管安定性が維持できなくなる危険
性がある。すなわち、分散性の観点からいうと、保管安定性と定着性とは両立しがたい特
性となっている。
【0052】
(トナーの樹脂、分散剤と定着性、保管安定性)
上記のような保管安定性と定着性の両立に関する問題を、湿式現像剤として解決するの
が本実施形態に係る湿式現像剤である。本実施形態に係る湿式現像剤の詳細については後
述するが、保管安定性と定着性とを両立させる構成の概要を説明する。
【0053】
本実施形態に係る湿式現像剤では、トナーのバインダー樹脂として特定の酸成分を有す
るポリエステル樹脂を用い、かつ塩基性高分子の分散剤と組み合わせて構成することによ
り、保管安定性と定着性の両立を図っている。
【0054】
トナーのバインダー樹脂として熱可塑性のポリエステル樹脂を用いる。ポリエステル樹
脂はシャープメルト性を有し、上記定着性と保管安定性の問題に適している。
【0055】
ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価塩基酸(多価カルボン酸)との重縮合によ
り得られる。その酸成分としては、フタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を用いる。その
理由は末端に多くの未反応のカルボキシル基を有することである。
【0056】
分散剤として塩基性高分子分散剤を用いるのは、上記のようなカルボキシル基を持つ樹
脂に安定して吸着するからである。
【0057】
トナー粒子を形成するポリエステル樹脂が、末端に多くの未反応のカルボキシル基を有
するということは、以下のような意味を有する。
・トナー粒子表面の未反応基が溶媒(キャリヤ液)を捕捉する、あるいは上記の分散剤を
吸着することで、分散性が上がり、保管安定性が向上する。
・トナー粒子表面の未反応のカルボキシル基が極性を持ち、定着時に紙媒体との接着性が
向上することで、定着性を向上することができる。
・トナー粒子表面の樹脂が3次元構造になりやすく、キャリヤ液の樹脂内への浸入を阻止
することで定着時のキャリヤ液による影響を抑制し、定着性を向上する。
・ポリエステル樹脂が3次元構造化するとガラス転移温度Tgが上がり、トナー粒子表面
を硬質にすることで保管安定性を向上する。
【0058】
このようにして、本実施形態に係る湿式現像剤では、保管安定性と定着性の両立を図っ
ている。
【0059】
(湿式現像剤の構成)
本発明の実施形態に係る湿式現像剤の構成について説明する。
【0060】
既に述べておいたように、本実施形態に係る湿式現像剤では、トナーのバインダー樹脂
として特定の酸成分を有するポリエステル樹脂を用い、かつ塩基性高分子の分散剤と組み
合わせて構成することにより、保管安定性と定着性の両立を図っている。
【0061】
まず一般的な湿式現像剤の構成について述べ、その後、本実施形態に係る湿式現像剤の
構成について説明する。
【0062】
<一般的な湿式現像剤の構成>
一般的な湿式現像剤について説明する。湿式現像剤は、溶媒であるキャリヤ液体中に着
色されたトナー粒子を高濃度で分散している。また湿式現像剤には、分散剤、荷電制御剤
などの添加剤を適宜、選んで添加することもある。
【0063】
キャリヤ液としては、絶縁性の、常温で不揮発性の溶媒が用いられる。不揮発性の溶媒
としては絶縁性オイル、例えばモレスコホワイト、アイソパーなどの一般的な流動パラフ
ィンやシリコンオイル等が使用される。
【0064】
トナー粒子は、主として樹脂と着色のための顔料や染料を含む。樹脂には、顔料や染料
をその樹脂中に均一に分散させる機能と、記録材に定着される際のバインダとしての機能
がある。
【0065】
樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、
ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂
等の熱可塑性樹脂が用いられる。また、これらの樹脂を複数、混合して用いることもある

【0066】
トナーの着色に用いる顔料及び染料も一般市販のものが用いられる。例えば、顔料とし
て、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロ
シアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いること
ができる。染料としては、ソルベントレッド27やアシッドブルー9等が用いられる。
【0067】
分散剤は、一般的な油溶性分散剤が使用される。
【0068】
湿式現像剤の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製される。例えば
、樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ロールミルなどを用いて溶融混練し、均
一に分散させ、得られた分散体を、例えばジェットミルによって微粉砕する。さらに得ら
れた微粉末を、例えば風力分級機などにより分級することで、所定の粒径の着色トナーを
得る。
【0069】
続いて、得られたトナーをキャリヤ液としての絶縁性オイルと所定の配合比で混合する
。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、湿式現像剤が得られる。
【0070】
トナーの体積平均粒子径は、0.1μm以上、5μm以下の範囲が適当である。トナー
の平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μ
mを超えると画像の品質が低下する。
【0071】
湿式現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10〜50%程度が適当である
。10%未満の場合、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問
題がある。また必要な画像濃度を得るため、多量の現像剤を供給する必要があり、紙上に
付着するキャリヤ液が増加し、定着時に乾燥せねばならず、蒸気が発生し環境上の問題が
生じる。50%を超える場合には、湿式現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も、また取
り扱いも困難になる。
【0072】
湿式現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上、10000mPa・s以
下が好ましい。10000mPa・s以上になると、キャリヤ液とトナーの撹拌が困難と
なり、均一な湿式現像剤を得るための装置面での負担が大きい。
【0073】
<本実施形態に係る湿式現像剤の構成>
本実施形態に係る湿式現像剤は、上記の従来の湿式現像剤の構成と比べて、さらに次の
ような構成を採るものである。トナー粒子は、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂で
構成されている。またポリエステル樹脂の酸成分は、フタル酸と3官能以上の芳香族系の
酸とからなる。これらの酸成分とアルコール分とが縮重合されてポリエステル樹脂が形成
されている。またトナー粒子の表面には分散剤として、塩基性高分子分散剤が吸着してい
る。その状態で、トナー粒子は絶縁性の溶媒中に分散している。
【0074】
このバインダー樹脂としてのポリエステル樹脂の構造(フタル酸と3官能以上の芳香族
系の酸からなる酸成分により末端に多くのカルボキシル基を有する)と、上記塩基性高分
子分散剤の組み合わせにより、上述した定着特性と保管安定性に優れた湿式現像剤を提供
するものである。これらの構成の詳細について以下に述べる。
【0075】
(トナーのバインダー樹脂)
トナーのバインダー樹脂は、熱可塑性のポリエステル樹脂で構成されている。ポリエス
テル樹脂はシャープメルト性を有し、既述したように定着性と保管安定性の両立に適して
いる。ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価塩基酸(多価カルボン酸)との重縮合
により得られる。
【0076】
多価塩基酸としては、必須成分としてフタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を有する。
フタル酸は、イソフタル酸、もしくはテレフタル酸である。両者とも芳香族系の多塩基酸
で、脂肪族系の多塩基酸と比べて、所望の熱特性を得やすい。3官能以上の芳香族系の酸
を含有させることにより、樹脂のカルボキシル基の数が増え、媒体との接着性が向上する
。また、架橋しやすくなるため、ガラス転移温度Tgを上げやすくなる。
【0077】
ポリエステル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以上で、100mgKOH/g以下が
望ましい。酸価が20mgKOH/gより低くなると、定着性の点からシステム速度を向
上させることが難しくなる。酸価が100mgKOH/gより高くなってくると所定の分
子量を維持した状態でポリエステル樹脂を製造することが困難になり、湿式現像剤の諸特
性が不安定になりがちである。
【0078】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、60℃以上で、85℃以下が望ましい。T
gが60℃より低くなると保管安定性がやや悪化する。Tgが85℃より上昇すると定着
に必要な熱量が増加しすぎて好ましくない。
【0079】
3官能以上の芳香族系の酸として、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等
がある。この中では、最も一般的であり、入手しやすく使いやすいトリメリット酸を用い
るのが好ましい。トリメリット酸は全酸成分に対して質量比で5%以上、70%以下、好
ましくは10%以上、50%以下含まれることが望ましい。5%以下では所望の効果(定
着性の向上)が得られにくく、70%以上では架橋が進み、所望の熱特性(Tg)が得ら
れにくい。フタル酸は、イソフタル酸、もしくはテレフタル酸であり、テレフタル酸の方
が結晶性が高く、剛直な樹脂を得やすいのでより好ましい。
【0080】
さらに、粘着質の沈殿の生成を抑制して再分散性を向上させるためには、3官能以上の芳香族系の酸の割合が、全酸成分に対して質量比で10%以上、70%以下、好ましくは20%以上、60%以下である。
【0081】
酸成分として、上記のトリメリット酸とフタル酸以外の成分を含んでもよい。例えば、
マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、
イタコン酸、及びこれらの酸無水物が挙げられる。
【0082】
多価アルコールとしては、これに限るものではないが、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール等のプロピレン
グリコール、ジプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネ
オペンチルグリコール、1、6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グ
リコール)及びこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビス
フェノール等のビスフェノール類及びこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール
系グリコール類、単環或いは多環ジオール等の脂環式及び芳香族ジオール、グリセリン、
トリメチロールプロパン等のトリオール等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上混
合して用いることができる。
【0083】
以上の多塩基酸と多価アルコールを重縮合することにより所望のポリエステル樹脂を重
合する。重縮合の方法としては、通常公知の重縮合の方法を用いることができる。原料モ
ノマーの種類によっても異なるが、一般的には150℃〜300℃程度の温度下で行う。
また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を使用したり、反応容器内圧
力を常圧または減圧にする等、任意の条件で行うことができる。反応促進のためにエステ
ル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、テトラブチルジルコネート、ジルコ
ニウムナフテネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、3/1蓚酸
第1スズ/酢酸ナトリウムのような金属有機化合物等を使用できるが、生成物であるエス
テルを着色しないものが好ましい。また、アルキルホスフェイト、アリルホスフェイト等
を触媒または色相調整剤として使用してもよい。
【0084】
生成物であるポリエステル樹脂の分子量を制御するためには、重合温度、反応系圧力、
反応時間等を調整すればよい。また、反応させるカルボン酸とアルコールとのモル比、重
合体の分子量等により酸価を制御できる。また、バインダー樹脂にはポリエステル樹脂の
他、必要に応じてスチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステ
ル樹脂、ポリオレフィン共重合体(特にエチレン系共重合体)、エポキシ樹脂、ロジン変
性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、パラフィンワックス等の樹脂を全質量の
30質量%以下の範囲において適量混合して用いてもかまわない。
【0085】
(分散剤)
分散剤としては、塩基性高分子分散剤を用いる。特に分子内にアミン、アミド、ピロリ
ドン、もしくはイミンを有するものが、上記ポリエステル樹脂への吸着性の点から好まし
い。
【0086】
塩基性の高分子分散剤として、ポリアルキレンポリアミン、変性ポリウレタン、ポリエ
ステルポリアミン等を用いることができる。
【0087】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−109(
アルキロールアミノアマイド)」、「Disperbyk−130(不飽和ポリカルボン
酸ポリアミノアマイド)」が挙げられる。
【0088】
また、アビシア社製「S13940(ポリエステルアミン系)、S17000、S18000、S19000(脂肪酸アミン系)、S11200」等が挙げられる。
【0089】
さらには、ISP社のV−216、V−220、W−660(長鎖アルキル基を持った
ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。
【0090】
以上の高分子分散剤をトナー粒子に対して1%〜100%添加することが好ましい。1
%以下では分散性が低下し、100%以上では液の導電性が上がり、帯電性に問題が生ず
る。
【0091】
(キャリヤ液)
キャリヤ液は、特に限定はない。静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω
・cm程度)の溶媒であれば良い。さらに、臭気、毒性が無く、比較的引火点が高い溶媒
が好ましい。一般的に、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化
炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。特に、臭気、無害性、コストの点から、ノル
マルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。具体的には、モレスコホワイ
ト[P40(引火点 140℃)、P60(引火点 170℃)、P120(引火点 200℃)、松村石油研究所社製]、アイソパー(エクソン化学社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620(IP1620と略す。)、IPソルベント2028(IP2028と略す。引火点 84℃)(いずれも、出光石油化学社製)等が挙げられる。
【0092】
(着色剤)
着色剤は、特には限定されないが、以下の顔料等を用いることができる。
【0093】
ブラック用着色剤としては、カーボンブラックが代表的なものである。ブラック以外の
カラー用着色剤としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料を挙げることができ
る。カラー画像形成は、これら顔料色を基本とする減法混色で行われる。
【0094】
シアン顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.)Pigment Blu
e15:1、15:3等の銅フタロシアニンブルー系シアン顔料等を例示できる。
【0095】
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red48、57(カーミン6B)
、5、23、60、114、146、186等のアゾレーキ系マゼンタ顔料や不溶性アゾ
系マゼンタ顔料、チオインジゴ系マゼンタ顔料、C.I.Pigment Red122
、209等のキナクリドン系マゼンタ顔料等を例示できる。
【0096】
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow12、13、14、1
7、55、81、83等に代表されるジスアゾ系イエロー顔料等を例示できる。
【0097】
バインダー樹脂に対する着色剤の添加量は、樹脂に対して5〜30質量%程度とするこ
とが好ましい。
【0098】
さらに、本発明の湿式現像剤は、チキソ性を有し、耐沈降性を有するものである。湿式現像剤は、保管時に沈降すると、粘着質の沈殿が生成し、きわめて再分散しにくくなることがある。この粘着質の沈殿は少量では強い攪拌で再分散性が可能で問題はないが、多量の現像剤を保管する際に生成した粘着質沈殿は量が多く、極めて硬く、硬質ゴムのような状態になるため極めて再分散しにくくなり、取り扱いが難しいという問題がある。これに対し、本発明では、定常ずり速度が1s−1における湿式現像剤の粘度ηと1000s−1における湿式現像剤の粘度η1000との粘度比(η/η1000)が,10〜10,000とすることにより、耐沈降性を向上させることができる。ここで、粘度比が10より小さいと沈降が生じやすくなり、粘度比が10,000より大きいと現像剤の送液が困難であるからである。さらに好ましくは粘度比は、20〜1000である。
なお、チキソ性とはチキソトロピー性の略であり、非ニュートン性の物質で、時間に依存した流動特性を有し、一定のずり速度で見掛け粘度が時間とともに減少し、ずり変形の力を除くと徐々に復元する性質である。本発明で用いる粘度とは見掛け粘度のことであり、円錐円板粘度計や回転円錐式粘度計等の回転粘度計を用いて測定することができる。
【0099】
本発明に用いる湿式現像剤の粘度は特に限定されないが、使用時及び保管時の取扱性をより向上させるためには、定常ずり速度が1s−1における粘度が10〜100,000mPa・s、定常ずり速度1000s−1における粘度が1〜1,000mPa・sであることが好ましい。
【0100】
なお、3官能以上の芳香族系の酸の割合が、全酸成分に対して質量比で10%以上、60%以下であるポリエステル樹脂を用いることにより、粘着質の沈殿の生成を抑制して再分散性を向上させることができる。
【実施例】
【0101】
上述してきた湿式現像剤を作成し、実際に画像形成プロセスにより定着性、保管安定性
の評価を行った例を以下に示す。
【0102】
後述する実施例及び比較例(表2−1参照)に使用した各湿式現像剤は、次のようにして作製した。
【0103】
・トナーのバインダー樹脂として10種類のポリエステル樹脂A〜Jを合成する、
・10種類のポリエステル樹脂A〜Jを用いて、10種類の粗粉砕トナーを得る(顔料の添加量は樹脂を100部とした質量部で示す)、
・10種類の粗粉砕トナー(10種類のポリエステル樹脂)の何れかに対して、分散剤とキャリヤ液とを混合し、後述する実施例及び比較例に使用する現像剤を作製した(各組成の添加量は溶媒を100部とした質量部で示す)。
【0104】
(ポリエステル樹脂の合成)
10種類のポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A〜J)の合成を行った製造例1〜10については、表1に詳細を示す。
【0105】
【表1】

【0106】
各製造例の詳細を述べるが、ポリエステル樹脂の合成については、「Mw」は「質量平
均分子量」を表し、「Mn」は「数平均分子量」を表す。またTgはガラス転移温度であ
る。
【0107】
<分子量の測定>
以下においては、Mw及びMnは、それぞれゲルパーミエイションクロマトグラフィー
の結果から算出した。ゲルパーミエイションクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグ
ラフポンプ TRI ROTAR−V型(日本分光社製)、紫外分光検出器 UVDEC
−100−V型(日本分光社製)、50cm長さのカラム Shodex GPC A−
803(昭和電工社製)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、被検試料の
分子量をポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算Mw及び
Mnとして求めた。
【0108】
なお、被検試料はバインダー樹脂0.05gを20mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。
【0109】
<Tgの測定>
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計DSC−6200(セイコーインスツルメンツ
(株)製)を用い、試料量20mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0110】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K5400法の条件で測定した。
【0111】
<製造例1>
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた
丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1600質量部(多
価アルコール)、テレフタル酸を550質量部(多価塩基酸)、そしてトリメリット酸を
340質量部入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮
合または脱アルコール重縮合を行った。
【0112】
生成したポリエステル樹脂の酸価または反応溶液の粘度が所定の値になったところで反
応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエ
ステル樹脂(ポリエステル樹脂A)を得た。
【0113】
得られたポリエステル樹脂Aは、Mw=7500、Mn=2700、Tg=62.3℃
、酸価=64.0mgKOH/gであった。
【0114】
<製造例2>
テレフタル酸を640部、トリメリット酸を160部とした以外は、製造例1と同様で
ある。
【0115】
得られたポリエステル樹脂Bは、Mw=8800、Mn=3600、Tg=66.3℃
、酸価=26.0mgKOH/gであった。
【0116】
<製造例3>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物をビスフェノールAのエチレンオキサ
イド付加物に変え、テレフタル酸を720部、トリメリット酸を100部とした以外は、製造例1と同様である。
【0117】
得られたポリエステル樹脂Cは、Mw=6800、Mn=2500、Tg=61.1℃
、酸価=22mgKOH/gであった。
【0118】
<製造例4>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物をビスフェノールAのエチレンオキサ
イド付加物に変えた以外は、製造例1と同様である。
【0119】
得られたポリエステル樹脂Dは、Mw=7400、Mn=2600、Tg=70.3℃
、酸価=71.0mgKOH/gであった。
【0120】
<製造例5>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物をビスフェノールAのエチレンオキサ
イド付加物に変え、テレフタル酸を450部、トリメリット酸を590部とした以外は、製造例1と同様である。
【0121】
得られたポリエステル樹脂Eは、Mw=14000、Mn=4700、Tg=84.5℃、酸価=87mgKOH/gであった。
【0122】
<製造例6>
テレフタル酸に代えてイソフタル酸を用いた以外は、製造例4と同様である。
【0123】
得られたポリエステル樹脂Fは、Mw=12000、Mn=4200、Tg=80.3
℃、酸価=55.0mgKOH/gであった。
【0124】
<製造例7>
トリメリット酸なしで、イソフタル酸800部とした以外は、製造例1と同様である。
【0125】
得られたポリエステル樹脂Gは、Mw=8000、Mn=3200、Tg=64.3℃
、酸価=8.0mgKOH/gであった。
【0126】
<製造例8>
テレフタル酸に代えてフマル酸を用いた以外は、製造例1と同様である。
【0127】
得られたポリエステル樹脂Hは、Mw=4600、Mn=2200、Tg=54.8℃
、酸価=33.0mgKOH/gであった。
【0128】
<製造例9>
テレフタル酸を760部、トリメリット酸を60部とした以外は、製造例1と同様である。
【0129】
得られたポリエステル樹脂Iは、Mw=9100、Mn=3800、Tg=72.2℃
、酸価=17mgKOH/gであった。
【0130】
<製造例10>
テレフタル酸に代えてイソフタル酸を580部、トリメリット酸に代えてヘミメリト酸180部を用いた以外は、製造例1と同様である。
【0131】
得られたポリエステル樹脂Jは、Mw=8900、Mn=3600、Tg=68.4℃
、酸価=33mgKOH/gであった。
【0132】
(湿式現像剤の作製)
表2−1に示した組成で、各実施例及び各比較例毎に、ポリエステル樹脂A〜Jから粗粉砕トナーを得て湿式現像剤を作製し、さらに定着性、保管安定性、耐沈降性、再分散性の試験に供した。
【0133】
【表2−1】

【0134】
<実施例1>
ポリエステル樹脂Aを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却し、その後粗粉砕し、ジ
ェット粉砕機にて平均粒径6μmに微粉砕した。
【0135】
二軸ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行い、得ら
れた混合物を冷却、粗粉砕して粗粉砕トナーを得た。
【0136】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.3μmであった。
【0137】
<実施例2>
ポリエステル樹脂Bを100質量部、カーボンブラック(MA−100、三菱化成社製
)10質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナ
ーを得た。
【0138】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてソルスパースS13940を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点84℃、IP−2028(出光興産社製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.0μmであった。
【0139】
<実施例3>
ポリエステル樹脂Cを100質量部、キナクリドン20質量部をヘンシェルミキサーで
十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0140】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−216を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.7μmであった。
【0141】
<実施例4>
ポリエステル樹脂Eを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0142】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点84℃、IP2028)、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.8μmであった。
【0143】
<実施例5>
ポリエステル樹脂Fを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0144】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてS13940を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.8μmであった。
【0145】
<実施例6>
ポリエステル樹脂Aを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0146】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を0.5質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.3μmであった。
【0147】
<実施例7>
ポリエステル樹脂Bを100質量部、カーボンブラック10質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0148】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてS11200を1質量部、流動パラフィン100質量部(引火点84℃、IP2028)、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.0μmであった。
【0149】
<実施例8>
ポリエステル樹脂Cを100質量部、キナクリドン20質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0150】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を1.5質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.7μmであった。
【0151】
<実施例9>
ポリエステル樹脂Eを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0152】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を2質量部、流動パラフィン100質量部(引火点84℃、IP2028)、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.8μmであった。
【0153】
<実施例10>
ポリエステル樹脂Iを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0154】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を0.2質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.6μmであった。
【0155】
<実施例11>
ポリエステル樹脂Jを100質量部、銅フタロシアニンブルー17質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0156】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−216を0.25質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.2μmであった。
【0157】
<実施例12>
ポリエステル樹脂1を100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェル
ミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0158】
このトナー粒子を25質量部、塩基性高分子分散剤としてソルスパースS11200を
2質量部、流動パラフィン100質量部(引火点200℃、モレスコホワイトP−120(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は1.6μmであった。
【0159】
<実施例13>
ポリエステル樹脂Bを100質量部、カーボンブラック(MA−100、三菱化成社製
)10質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナ
ーを得た。
【0160】
このトナー粒子を25質量部、塩基性高分子分散剤としてソルスパースS13940を
2質量部、流動パラフィン100質量部(引火点200℃、モレスコホワイトP−120(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.7μmであった。
【0161】
<実施例14>
ポリエステル樹脂Dを100質量部、キナクリドン20質量部をヘンシェルミキサーで
十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0162】
このトナー粒子を25質量部、塩基性高分子分散剤としてDisperbyk−109
を2質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.1μmであった。
【0163】
<実施例15>
ポリエステル樹脂Fを100質量部、塩基性処理した銅フタロシアニンブルー17質量
部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0164】
このトナー粒子を25質量部、塩基性高分子分散剤としてV−216を1.5質量部、流動パラフィン100質量部(引火点170℃、モレスコホワイトP−60(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、実施湿式現像剤を得た。体積平均粒径は2.4μmであった。
【0165】
<実施例16>
ポリエステル樹脂Aを100質量部、塩基性処理した銅フタロシアニンブルー15質量
部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0166】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてV−220を2.5質量部、流動パラフィン100質量部(引火点140℃、モレスコホワイトP−40(松村石油製))、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.3μmであった。
【0167】
<実施例17>
ポリエステル樹脂Bを100質量部、カーボンブラック10質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、実施例1と同様にして粗粉砕トナーを得た。
【0168】
このトナー粒子を34質量部、塩基性高分子分散剤としてS13940を3質量部、流動パラフィン100質量部(引火点84℃、IP2028)、ジルコニアビーズ100
質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、湿式現像剤を得た。体積平均粒径は3.0μmであった。
【0169】
<実施例18>
トナー粒子を11質量部用いた以外は、実施例2と同様である。得られた湿式現像剤の体積平均粒径は3.0μmであった。
【0170】
<実施例19>
トナー粒子を54質量部用いた以外は、実施例2と同様である。得られた湿式現像剤の体積平均粒径は3.0μmであった。
【0171】
<実施例20>
トナー粒子を100質量部用いた以外は、実施例2と同様である。得られた湿式現像剤の体積平均粒径は3.0μmであった。
【0172】
<比較例1>
ポリエステル樹脂Gを用いる以外は、実施例12と同様である。
【0173】
<比較例2>
ポリエステル樹脂Hを用いる以外は、実施例13と同様である。
【0174】
<比較例3>
分散剤をソルスパースS3000(酸性分散剤、アビシア社製)とした以外は、実施例13と同様である。
【0175】
<比較例4>
ポリエステル樹脂Hを用い、分散剤を3.75質量部用いた以外は、実施例13と同様である。
【0176】
<比較例5>
ポリエステル樹脂Gを用いた以外は、実施例3と同様である。
【0177】
<比較例6>
ポリエステル樹脂Hを用いた以外は、実施例4と同様である。
【0178】
(定着性、保管安定性、耐沈降性、そして再分散性の評価)
上記のように作製した実施例1〜20、比較例1〜6の各湿式現像剤について、定着性、保管安定性、耐沈降性、そして再分散性の評価を行った。
【0179】
<画像形成プロセス条件>
図1に示した構成の画像形成装置を用いて各湿式現像剤毎のトナー画像を形成し、定着
を行った。画像形成のプロセス条件は次の通りである。
【0180】
システム速度は180mm/sで、感光体は負帯電のOPCを用いた。感光体の帯電電
位は−700v、現像電圧は−450v、転写電圧は、+600vとした。
【0181】
<定着性の評価方法>
上記プロセスでトナー画像形成し、定着させた定着済みサンプルの定着性試験を行った

【0182】
サンプルは、各実施例、比較例毎に、メディア上のトナー付着量が3g/m2になる
ように、ソリッド画像の現像、転写条件を調整した。システム速度は180mm/sで、
ヒートローラ定着(180℃×ニップ時間40ms)し、画像サンプルを出した。
【0183】
各サンプルの定着性は、テープ剥離試験にて評価した。テープ(3Mメンディングテー
プ)を用いて剥離した前後の反射濃度を測定し、前後の濃度比で判定評価した。以下の○×評価を行った。◎、○が良好、×が不可である。
【0184】
◎:画像濃度の比が95%以上、
○:画像濃度の比が90%以上95%未満、
×:画像濃度の比が90%未満。
【0185】
<保管安定性評価方法>
各実施例、比較例毎の湿式現像剤について、保管安定性の試験を行った。
【0186】
評価する湿式現像剤をガラス瓶に入れて、50℃に設定した恒温槽で24時間保管する
。保管の前後に体積平均粒径を測定する(島津製作所、SALD−2200にて測定)。
【0187】
保管後の平均粒径/保管前の平均粒径の値でもって、判定表化した。以下の○×評価で
あり、○が良好、×が不可である。
【0188】
○:保管後の平均粒径/保管前の平均粒径が1.2以下、
×:保管後の平均粒径/保管前の平均粒径が1.2を超える。
【0189】
(耐沈降性評価方法)
前記の実施例及び比較例で得られた湿式現像剤を、25〜30℃の環境下に1週間静置した。その後、湿式現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー粒子の沈降がまったく認められない(概ね上澄みが5%未満)。
○:トナー粒子の沈降がほとんど認められない(概ね上澄みが5〜10%)。
△:トナー粒子の沈降がわずかに認められる(概ね上澄みが10%超)。
×:トナー粒子の沈降がはっきりと認められる(概ね上澄みが40%超)。
【0190】
(再分散性評価方法)
前記の実施例及び比較例で得られた湿式現像剤を、25〜30℃の環境下に1週間静置した。その後、湿式現像剤のトナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:傾けた程度で再分散する(そもそも沈降等発生しない)。
○:振り混ぜると再分散する。
△:スパチュラ等で強く攪拌すれば再分散する。
×:再分散しない(固化、粗粒の発生を含む)。
【0191】
(粘度測定)
TAインスツルメンツ社製の回転型レオメータAERES−RFSを用い、50mmコーンプレートで、定常ずり速度1s-1及び1000s-1で測定した。測定温度は25℃である。
【0192】
各実施例及び比較例についての評価結果を表2−2に示した。また、トナー濃度(Tc)の影響を調べるために、表3−1の組成を有するトナー粒子を作製した。その評価結果を表3−2に示す。
【0193】
【表2−2】

【0194】
【表3−1】

【0195】
【表3−2】

【0196】
<評価結果>
実施例1〜17は、いずれも定着性、保管安定性ともに良好な結果が得られた。
【0197】
比較例1は、実施例12に対して、ポリエステル樹脂Gを用いた点が異なっている。ポリエステル樹脂Gは、酸成分としてイソフタル酸を含むものの、トリメリット酸を含んでいない。すなわち、3官能以上の芳香族系の酸を含んでいない。このことによりポリエステル樹脂5は、末端の未反応のカルボキシル基が十分多いと言えない状態となり、そのためメディアとの接着性が十分向上せず、定着性が悪化したものと考えられる。実際、末端の未反応基の少なさが、8.0mgKOH/gと実施例1〜17と比べて極端に低い酸価からも推測できる。また、比較例5は、実施例3において、ポリエステル樹脂Gを用いたものである。3官能以上の芳香族系の酸を含んでいないため、定着性が悪化した。
【0198】
比較例2は、実施例13に対して、ポリエステル樹脂Hを用いた点が異なっている。ポリエステル樹脂Hは、酸成分としてイソフタル酸の代わりにフマル酸を含んでいる。しかしながら、フマル酸は脂肪族系の酸であり、熱的に強度が弱い。このことによりポリエステル樹脂Hは、添加したフマル酸がフタル酸の代用成分とはなり得ず、保管安定性が低下したものと考えられる。実際、ガラス転移温度Tgが54.8℃と、実施例1〜17と比べて低いことからも推測できる。また、比較例4は、比較例2において分散剤量を増加させたものである。しかし、粘度比が小さく沈降し易く、また再分散性も低下した。
【0199】
比較例3は、実施例14に対して、酸性の分散剤を用いた点が異なっている。塩基性の高分子分散剤、特に分子内にアミン、イミン、アミド、ピロリドンなどを有する分散剤は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に安定して吸着する。酸性の分散剤は、そういったカルボキシル基に安定吸着する基を含んでいないことになる。このことにより酸性の分散剤は、樹脂に安定吸着することができず、トナーが均一に分散できないため、トナー粒径が5.1μmとトナーの凝集が生じた。
【0200】
比較例6は、実施例3に対して、ポリエステル樹脂Hを用いた点が異なっている。酸成分としてイソフタル酸の代わりにフマル酸を含んでいる。定着性、保管安定性、再分散性のいずれも低下した。
【0201】
また、表3−2に示すように、トナー濃度を10〜50%に変化させても、定着性、保管安定性、耐沈降性、そして再分散性のいずれも優れた特性を有していた。
【0202】
このように、本実施形態によれば、トナー粒子と、絶縁性の溶媒と、分散剤とを含む湿
式現像剤において、トナーとして、フタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を酸成分とする
ポリエステル樹脂を主体とし、分散剤として、塩基性の高分子分散剤を用いることにより
、湿式現像剤としての保管安定性を維持しながら、かつ定着性を阻害することのない特性
を持った湿式現像剤を提供することができる。
【0203】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の
範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意
味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】湿式画像形成装置における画像形成部の概略構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0205】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 湿式現像装置
5 中間転写体(中間転写ローラ)
6 クリーニング装置(クリーナブレード)
7 二次転写ローラ
8 湿式現像剤
9 記録材
9a、9b 定着装置(定着ローラ)
10 画像形成装置
41 現像ローラ(現像剤担持体)
42 搬送ローラ
43 供給ローラ
44 現像剤槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、キャリヤ液と、分散剤とを含む湿式現像剤であって、前記トナー粒子は、ポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、酸成分としてフタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を含み、前記分散剤は、塩基性の高分子分散剤を含むことを特徴とする湿式現像剤。
【請求項2】
定常ずり速度が1s−1における湿式現像剤の粘度ηと1000s−1における湿式現像剤の粘度η1000との粘度比(η/η1000)が,10〜10,000であることを特徴とする請求項1記載の湿式現像剤。
【請求項3】
前記3官能以上の芳香族系の酸の割合が、全酸成分に対して質量比で10%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の湿式現像剤。
【請求項4】
前記3官能以上の芳香族系の酸はトリメリット酸であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の湿式現像剤。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂は、酸価が20mgKOH/g以上で、100mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の湿式現像剤。
【請求項6】
前記塩基性の高分子分散剤は、分子内にアミン、アミド、ピロリドン、もしくはイミンを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の湿式現像剤。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが60℃以上で、85℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の湿式現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−175670(P2009−175670A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235112(P2008−235112)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】