説明

湿式集塵機

【課題】 軽量且つコンパクトであり、容易に移動及び分解清掃できる湿式集塵機を提供する。
【解決手段】 塵埃が空気中に含まれた状態の塵埃含有空気を液体と接触させることにより、除塵する湿式集塵機であって、下記の構成を有する。(A)塵埃含有空気を下部側方向に導入するための塵埃導入口(B)塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して所定の角度で且つ拡散させた状態で噴出させる液体噴出部(C)塵埃が液体中に含有された状態の塵埃含有液体、および塵埃含有空気が除塵された状態の除塵空気が通過可能な多孔性マット部(D)多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留するための塵埃含有液体貯留槽(E)多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出するための除塵空気排出口(F)塵埃含有液体貯留槽中の液体を液体噴出部に移送するための水中ポンプ(G)水中ポンプから液体噴出部に液体を移送させるための液体移送管

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式集塵機に関し、より詳細には、軽量且つコンパクトであり、しかも容易に移動させることができ、さらに容易に分解して清掃できる湿式集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
各種被加工材(プラスチック材等)を各種形状に加工する際や、リフォームする際などでは、塵埃が発生するため、該塵埃の除去が必要となっている。特に、最近は、アスベスト製品の問題が重要視されており、アスベスト製品の除去の際には、有害と指摘されているアスベストの粉塵が発生するため、アスベストの粉塵の除去は極めて重要である。塵埃の除去に際しては、集塵機、特に湿式集塵機が広く用いられている。このような湿式集塵機としては、従来、様々なものが提案され、また市販されている(例えば、特許文献1〜特許文献6参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−065676号公報
【特許文献2】特開2002−273140号公報
【特許文献3】特開2002−102635号公報
【特許文献4】特開2002−001043号公報
【特許文献5】特開平11−083321号公報
【特許文献6】特開平08−103620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、湿式集塵機を設置するための場所が狭かったり、また、湿式集塵機を利用する場所が一定でなく、種々の場所であったりする場合があり、軽量且つコンパクトであり、しかも容易に移動させることができる湿式集塵機が求められている。さらに、湿式集塵機では、水などの液体を利用するため、捕集された塵埃が汚泥となっており、この汚泥を除去しなければならない。そのため、湿式集塵機としては、容易に分解して清掃させることが可能であることも求められている。
【0005】
従って、本発明の目的は、軽量且つコンパクトであり、しかも容易に移動させることができ、さらに容易に分解して清掃できる湿式集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、塵埃含有空気を、集塵機の上面から下部側方向に導入させ、且つ下部側方向に向かって液体を噴出させて、塵埃含有空気を除塵させ、また、下部側方向に向かって進行している塵埃含有液体や除塵空気を多孔性マット部で受けて、その風速又は流速を弱めさせ、多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留させるとともに、多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出させ、さらにまた、貯留された塵埃含有液体をポンプにより移送させて、前記噴出させる液体として利用することにより、軽量且つコンパクトであり、しかも容易に移動させることができ、さらに容易に分解して清掃できる湿式集塵機を得ることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、塵埃が空気中に含まれた状態の塵埃含有空気を液体と接触させることにより、塵埃含有空気を除塵する機能を有している湿式集塵機であって、下記の(A)〜(G)の構成を有していることを特徴とする湿式集塵機である。
(A):塵埃含有空気を下部側方向に導入するための塵埃導入口を、上部に有している構成
(B):塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させる液体噴出部を、塵埃導入口の下部側に有している構成
(C):塵埃が液体中に含有された状態の塵埃含有液体、および塵埃含有空気が除塵された状態の除塵空気が通過可能な多孔性マット部を、液体噴出部の下部側に有している構成
(D):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留するための塵埃含有液体貯留槽を、多孔性マット部の下部側に有している構成
(E):多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出するための除塵空気排出口を、多孔性マット部の下部側に、且つ塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の壁面に有している構成
(F):塵埃含有液体貯留槽中の液体を液体噴出部に移送するための水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中に有している構成
(G):水中ポンプから液体噴出部に液体を移送させるための液体移送管を、多孔性マット部に設けられた孔を通過する形態で有している構成
【0008】
前記構成(B)において、液体噴出部は、液体を噴出させるノズルを複数有していてもよい。また、前記構成(C)において、多孔性マット部は、繊維材料により構成されていてもよい。
【0009】
本発明の湿式集塵機としては、さらに、下記の(H)の構成を有していることが好ましい。
(H):除塵空気が通過可能な排出口用多孔性マット部を、少なくとも除塵空気排出口における塵埃含有液体貯留槽の壁面の内面側に有している構成
【0010】
前記湿式集塵機としては、構成(F)が、下記の(F1)の構成であるとともに、さらに、下記の(I)の構成を有していることが好ましい。
(F1):水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも高さが低く且つ塵埃含有液体貯留槽中に設置されたポンプ設置槽中に有している構成
(I):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体が、直接、ポンプ設置槽中に入らないようにするための屋根部を、ポンプ設置槽上に有している構成
【0011】
なお、前記構成(B)において、液体噴出部より噴出される液体の下部側方向に対する角度は、30〜60°であってもよい。
【0012】
また、本発明の湿式集塵機としては、さらに、下記の(J)の構成を有していることが好ましい。
(J):除塵空気排出口から飛散又は流出した液体を受け止めるための液体保持部を、除塵空気排出口の外部側に有している構成
【0013】
さらにまた、本発明の湿式集塵機としては、さらに、下記の(K)の構成を有していることが好ましい。
(K):塵埃含有空気を塵埃導入口に案内させるための塵埃吸気路を、塵埃導入口と連結した形態で有している構成
【0014】
さらに、本発明の湿式集塵機としては、さらに、下記の(L)の構成を有していることが好ましい。
(L):塵埃吸気路中に塵埃含有空気を吸引させるための吸気ファンを、塵埃吸気路内に有している構成
【発明の効果】
【0015】
本発明の湿式集塵機によれば、前記構成を有しているので、軽量且つコンパクトであり、しかも容易に移動させることができ、さらに容易に分解して清掃できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材や部位などには同一の符号を付している場合がある。
【0017】
本発明の湿式集塵機は、図1〜図2などで示されるように、塵埃が空気中に含まれた状態の塵埃含有空気を液体と接触させることにより、塵埃含有空気を除塵する機能を有しており、下記の(A)〜(G)の構成を有している。
(A):塵埃含有空気を下部側方向に導入するための塵埃導入口を、上部に有している構成
(B):塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させる液体噴出部を、塵埃導入口の下部側に有している構成
(C):塵埃が液体中に含有された状態の塵埃含有液体、および塵埃含有空気が除塵された状態の除塵空気が通過可能な多孔性マット部を、液体噴出部の下部側に有している構成
(D):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留するための塵埃含有液体貯留槽を、多孔性マット部の下部側に有している構成
(E):多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出するための除塵空気排出口を、多孔性マット部の下部側に、且つ塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の壁面に有している構成
(F):塵埃含有液体貯留槽中の液体を液体噴出部に移送するための水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中に有している構成
(G):水中ポンプから液体噴出部に液体を移送させるための液体移送管を、多孔性マット部に設けられた孔を通過する形態で有している構成
【0018】
図1は、本発明の湿式集塵機の一例を示す概略断面図である。図2は、図1で示される湿式集塵機の外観を示す概略外観図である。図1〜図2において、1は湿式集塵機、2は塵埃導入口、3は液体噴出部、4は多孔性マット部、5は塵埃含有液体貯留槽、6は除塵空気排出口、7は水中ポンプ、7aは水中ポンプ7の本体、7bは水中ポンプ7の電気ケーブル、8は液体移送管、9は液体、10は排出口用多孔性マット部、11は除塵槽、12はグレーチング部、13は取付枠部、14はケーブル用穴部、15は排水部、16はキャスター部、Aは下部側方向、Bは塵埃含有空気の導入方向、Cは液体噴出部3から噴出される液体の噴出方向である。図1〜2で示される湿式集塵機1は、上部側の除塵槽11と、下部側の塵埃含有液体貯留槽5とにより形成されており、除塵槽11は、上部に設けられた塵埃導入口2と、塵埃導入口2の下部側に設けられた液体噴出部3とを有しており、塵埃含有液体貯留槽5は、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の壁面に設けられた除塵空気排出口6と、水中ポンプ7とを有しており、さらに、除塵槽11と塵埃含有液体貯留槽5との間には、多孔性マット部4を有しているともに、水中ポンプ7と液体噴出部3とを連結している液体移送管8を有している。なお、液体噴出部3は、噴出方向Cの方向に液体を噴出させることができる。また、水中ポンプ7は、電気ケーブル7bの先端の電源接続部(図示されていない)を、電源に接続させることにより、稼働させることができる。
【0019】
具体的には、除塵槽11中では、除塵部11の上部に設けられた塵埃導入口2から導入方向B(すなわち、下部側方向A)の方向で導入された塵埃含有空気を、液体噴出部3から下部側方向Aに対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出された液体と接触させることにより除塵している。すなわち、噴出方向Cは、下部側方向Aに対して0°を超え且つ90°未満の角度である。前記除塵槽11の下部には、多孔性マット部4が設けられており、塵埃を含有している液体(塵埃含有液体)や、除塵された空気(除塵空気)は、水圧や風圧により多孔性マット部4を通過して、塵埃含有液体貯留槽5内に導入される。塵埃含有液体貯留槽内5では、下部に、塵埃含有液体が貯留され、除塵空気は、排出口用多孔性マット部14を通過して、除塵空気排出口6から系外に排出される。なお、塵埃含有液体貯留槽中5の液体は、水中ポンプ7により液体移送管8を通って液体噴出部3に移送され、該液体噴出部3より噴出されており、液体は循環して用いられている。
【0020】
本発明の湿式集塵機では、上部から下部側方向に塵埃含有空気が導入されており、また、塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させているので、噴出させた液体を、空気や重力の抵抗が殆ど又は全くない状態で、塵埃含有空気と接触させることができ、効率よく除塵を行うことができる。また、前述のように、空気や重力の抵抗が殆ど又は全くない形態で、液体を噴出させることができるので、消費電力を低減させることもできる。
【0021】
また、塵埃導入口および液体噴出部の下部側には多孔性マット部が設けられているので、下部側方向に力が加わっている状態の塵埃含有液体や除塵空気は、多孔性マット部に衝突して、その流速または風速が弱められ、塵埃含有液体貯留槽内に、流速または風速が低下された状態で導入される。塵埃含有液体貯留槽内では、塵埃含有液体は、下部に貯留され、一方、除塵空気は、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の壁面に設けられた除塵空気排出口より、外部に排出される。
【0022】
このように、本発明の湿式集塵機では、塵埃含有空気を下部側方向に導入させるとともに、同様の向きの方向(下部側方向)に液体を噴出させているので、塵埃含有液体や除塵空気は下部側方向に流れており、さらに、これらの下部側には、塵埃含有液体や除塵空気の流速または風速を弱めることが可能な多孔性マット部が設けられているので、塵埃含有液体や除塵空気は多孔性マット部で速度が弱められて、多孔性マット部を通過して、多孔性マット部の下部側に設けられている塵埃含有液体貯留槽中に進入し、さらにまた、塵埃含有液体貯留槽中で塵埃含有液体を貯留させるとともに、貯留された液体を水中ポンプにより循環させて利用しており、しかも、塵埃含有液体貯留槽の壁面から除塵空気を系外に排出させているので、この湿式集塵機は、軽量且つコンパクトになっており、容易に移動させることが可能な構成とすることができる。
【0023】
(塵埃導入口)
塵埃導入口は、塵埃含有空気を下部側方向に導入するために設けられている。この塵埃導入口は、湿式集塵機の上部に、塵埃含有空気を下部側方向に導入することが可能な形態で設けられていることが重要である。なお、塵埃導入口は、湿式集塵機の上部に全面に設けられていてもよく、上部に部分的に又は一部に設けられていてもよい。また、塵埃導入口は、湿式集塵機の上部に、1つのみ設けられていてもよく、2つ以上設けられていてもよい。
【0024】
塵埃導入口の形状は、特に制限されず、利用目的や利用形態などに応じて適宜設計することができる。塵埃導入口としては、塵埃含有空気を案内させるための塵埃吸気路との接合性の観点などより、水平方向に切断した際の断面の形状が円形形状となっていることが好ましい。
【0025】
なお、図3は、図1〜図2に係る湿式集塵機を上面から見た概略上面図である。図3において、1〜4は、前記と同様に、それぞれ、湿式集塵機、塵埃導入口、液体噴出部、多孔性マット部である。
【0026】
(液体噴出部)
液体噴出部は、塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させるために設けられている。液体噴出部は、塵埃導入口の下部側に、液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させることが可能な形態で設けられていることが重要である。液体噴出部より噴出される液体の下部側方向に対する角度としては、0°を超え且つ90°未満の角度であれば特に制限されないが、好ましくは0°を超え且つ60°以下の角度であり、さらに好ましくは30〜60°である。
【0027】
ノズルから液体を拡散させた状態で噴出させる形態としては、例えば、1つのノズル孔から液体を所定の角度で放射状に噴出させる形態、線状に配置された複数のノズル孔から液体を所定の角度で線状に噴出させる形態などが挙げられる。
【0028】
このような液体噴出部としては、液体を噴出させるノズルを、1つのみ有していてもよいが、複数有していることが好ましい。複数のノズルより、液体を噴出させることにより、より一層効率よく、液体を塵埃含有空気に接触させて、塵埃含有空気を除塵させることができる。
【0029】
なお、図4は、図1〜図2に係る湿式集塵機で設けられている液体噴出部を示す概略図である。図4において、3a〜3dは、それぞれ、ノズルである。3は、前記と同様に、液体噴出部である。図4で示されている液体噴出部3は、4つのノズル(ノズル3a〜3d)を有している。ノズル3aおよびノズル3cは上段に位置し、ノズル3bおよびノズル3dは下段に位置しているとともに、ノズル3a〜ノズル3dは、ほぼ等間隔(角度)で配置されている(すなわち、ノズル3a〜ノズル3dのうち隣接しているノズル間の角度は、約90°となっている)。
【0030】
(液体)
液体噴出部より噴出させる液体としては、例えば、水(水道水、工業用水、農業用水、イオン交換水など)の他、酸性水、アルカリ性水、いわゆる「オゾン水」、電解水、薬剤を含有している水性液体(「薬剤含有水性液体」と称する場合がある)、増粘剤を含有している水性液体(「増粘型水性液体」と称する場合がある)などの水性液体を用いることができる。前記薬剤含有水性液体におけて用いられる薬剤としては、特に制限されないが、脱臭剤(消臭剤)を好適に用いることができ、該脱臭剤は、公知の水性の脱臭剤の中から適宜選択して用いることができる。脱臭剤等の薬剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、増粘型水性液体において用いられる増粘剤(粘度向上剤、粘度調整剤)としては、特に制限されず、公知の水性の増粘剤の中から適宜選択して用いることができる。増粘剤としては、例えば、天然系の水性増粘剤(植物系水性増粘剤や、動物系水性増粘剤など)や、合成系の水性増粘剤(半合成系の水性増粘剤を含む)などが挙げられる。天然系の水性増粘剤としては、例えば、マンナン(コンニャク系マンナンなど)、ゼラチン、デンプン、デンプン誘導体、ゼラチン、寒天、タピオカ、コーンスターチ、プルラン、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグルカン、デキストラン、トラガカントガム、グァーガム、カラヤガム、タラガム、ローカストビーンガム、ガティガム、アラビノガラクタンガム、アラビアガム、クイスシードガム、ペクチン、サイリュームシードガム、カラギーナン、アルギン酸、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、にわかなどが挙げられる。合成系の水性増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はそのナトリウム塩等のセルロース系水性増粘剤;カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルデンプン、シクロデキストリン等のデンプン系水性増粘剤;アルギン酸ナトリウム塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系水性増粘剤;ヒアルロン酸ナトリウム塩等のヒアルロン酸系水性増粘剤;ポリアクリル酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ポリメタクリル酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ポリマレイン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ポリフマル酸又はその塩(ナトリウム塩など)、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−アクリルアミド共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体等の不飽和カルボン酸系水性増粘剤[不飽和カルボン酸は塩の形態(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)を有していてもよい];ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド等のビニル系水性増粘剤;ポリエチレングリコールエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等のポリアルキレングリコール系水性増粘剤の他、ポリエチレンイミン、水分散型ポリウレタンや、その他のカチオン系ポリマーやアニオン系ポリマーなどが挙げられる。
【0032】
なお、増粘剤としては、前記に例示されているような有機系の水性増粘剤以外にも、無機系の水性増粘剤(例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等の粘度鉱物系水性増粘剤など)を用いることができる場合がある。増粘剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
増粘型水性液体としては、粘度が高すぎると、ポンプの負担が大きくなるので、23℃における粘度が200cps以下(好ましくは180cps以下、さらに好ましくは150cps以下)であることが好ましい。なお、増粘型水性液体の粘度は、B型粘度計を用いて、23℃の条件下で測定された値であり、用いられるローターの種類や、B型粘度計の回転数は、増粘型水性液体の粘度などに応じて適宜設定することができる。
【0034】
液体は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明では、液体としては、用途などに応じて適宜選択することが重要であるが、水や増粘型水性液体が好適である。なお、増粘型水性液体を用いることにより、塵埃の除去をより一層効果的に行うことができるので、塵埃の除去性の観点などからは、液体としては、増粘型水性液体を好適に用いることができる。一方、経済的な観点(コスト的な観点)や簡易性の観点などからは、液体としては、水を好適に用いることができる。
【0035】
なお、液体は、湿式集塵機を稼働させる前に、予め、塵埃含有液体貯留槽中に、所定の量を注入しておく必要がある。すなわち、液体噴出部より噴出させる液体としては、塵埃含有液体貯留槽中に注入された又は貯留された液体が用いられる。液体を予め塵埃含有液体貯留槽中に注入する際には、塵埃導入口より、ホースを利用して注入することができるが、湿式集塵機に液体注入口が設けられている場合は、該液体注入口より、ホースを利用して、注入することができる。前記液体注入口は、除塵槽の壁面や、塵埃含有液体貯留槽の壁面などに設けることができる。
【0036】
(多孔性マット部)
多孔性マット部は、液体噴出部の下部側(または除塵槽の下部側)に設けられている。多孔性マット部は、塵埃が液体中に含有された状態の塵埃含有液体や、塵埃含有空気が除塵された状態の除塵空気を通過させる多孔性を有していることが重要であり、塵埃含有液体や除塵空気をブロックして、塵埃含有液体の流速や、除塵空気の風速を、低下させる又は弱めさせる機能を有している。このように、多孔性マット部は、上面側の除塵槽より勢いよく進んでくる塵埃含有液体や除塵空気をブロックした後、塵埃含有液体や除塵空気を、下面側の塵埃含有液体貯留槽に落下等により通過させることができる。なお、多孔性マット部は、髪の毛やその他の大きな塵埃などは通さずに、多孔性マット部上に蓄積させるものを好適に用いることができる。
【0037】
具体的には、図1〜2で示される湿式集塵機では、多孔性マット部は、塵埃含有空気を液体により除塵している除塵槽と、除塵により得られる塵埃含有液体を貯留している塵埃含有液体貯留槽との間に、下部側方向に対して垂直な方向(水平方向)に平行又はほぼ平行となる形態で、設けられており、除塵槽中の塵埃含有液体や除塵空気は、多孔性マット部を介して、塵埃含有液体貯留槽に落下等により導入されている。
【0038】
多孔性マット部を構成する多孔性マット材としては、塵埃含有液体および除塵空気を通過可能な多孔性構造を有しているマット材(フィルター材)であれば特に制限されず、公知の多孔性マット材の中から所定の多孔性構造を有するものを適宜選択して用いることができる。多孔性マット部としては、繊維材料により構成されていることが好ましく、特に、繊維材料により不織布状に形成された形態のマット材により構成されていることが好適である。
【0039】
前記繊維材料としては、特に制限されないが、耐久性などの観点から、合成繊維材料(化学繊維材料;半合成繊維材料を含む)が好適である。合成繊維材料としては、例えば、レーヨン繊維、ポリアミド系繊維(脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維など)、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、炭素繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維など)、ポリイミド系繊維、シリコーン系繊維、フッ素系繊維などが挙げられる。繊維材料としては、綿繊維などの天然繊維も用いることが可能である。合成繊維材料などの繊維材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
なお、多孔性マット部は、1種の多孔性マット材により形成されていてもよく、2種以上の多孔性マット材により形成されていてもよい。多孔性マット部は、単層の形態を有していてもよく、多層の形態を有していてもよい。
【0041】
多孔性マット部の厚みは、特に制限されず、塵埃含有液体や除塵空気の通過性などに応じて適宜選択することができる。
【0042】
このような多孔性マット部は、液体噴出部の下部側に位置する部位に設置されていればよく、例えば、グレーチング部上に設置することができる。グレーチング部上に多孔性マット部を設置して、グレーチング部により多孔性マット部を支持させることにより、塵埃含有液体による水圧や除塵空気による風圧などの圧力に対する耐圧性を高めることができる。このように、グレーチング部は、多孔性マット部を支持するために設けられているので、金属材(特に、ステンレス材)等の硬質材により形成されていることが好ましい。グレーチング部の形状としては、多孔性マット部を支持することができるとともに、多孔性マット部を通過した塵埃含有液体や除塵空気を通過させることが可能な形状であれば特に制限されないが、例えば、格子状、網目状などの形状であってもよい。
【0043】
(塵埃含有液体貯留槽)
塵埃含有液体貯留槽は、多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留するために設けられている。この塵埃含有液体貯留槽は、多孔性マット部の下部側に、多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留することが可能な形態で設けられていることが重要である。塵埃含有液体貯留槽は、塵埃含有液体を貯留することが可能な容積を有していることが必要である。なお、前述のように、湿式集塵機を稼働させる前には、予め、塵埃含有液体貯留槽中には、所定量の液体を注入しておく必要があり、該予め注入された液体は、ポンプにより吸い上げられて液体噴出部より噴出される形態で、循環して利用される。
【0044】
(除塵空気排出口)
また、塵埃含有液体貯留槽は、壁面に、多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出するための除塵空気排出口を有している。除塵空気排出口が設けられている壁面は、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の部位となっていることが重要である。除塵空気排出口は、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の部位で、且つ多孔性マット部の下部側の部位に位置する塵埃含有液体貯留槽の壁面に、全面的に、部分的に又は一部に形成することができる。なお、除塵空気排出口は、塵埃含有液体貯留槽の周囲の壁面に、全面的に形成されていてもよく、部分的に又は一部に形成されていてもよい。
【0045】
このような除塵空気排出口は、壁面に形成された孔部により形成することができる。除塵空気排出口において、孔部の形状としては、特に制限されず、例えば、円形状、楕円形状等の円型形状、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状等の多角形状などの定形状や、各種形状による不定形状などが挙げられる。孔部は、1種の形状を有していてもよく、2種以上の形状を有していてもよい。孔部の大きさとしては、特に制限されず、除塵空気の排出性等に応じて適宜設定することができる。
【0046】
なお、本発明では、除塵空気排出口は、図1〜図2で示されているように、複数の孔部により、塵埃含有液体貯留槽の周囲の壁面に全面的に形成されていることが好ましい。
【0047】
(排出口用多孔性マット部)
本発明では、吸音又は遮音(消音)のためや、除塵空気排出口からの液体の流出を防止するために、下記の(H)の構成を有していることが好ましい。
(H):除塵空気が通過可能な排出口用多孔性マット部を、少なくとも除塵空気排出口における塵埃含有液体貯留槽の壁面の内面側に有している構成
【0048】
このような排出口用多孔性マット部を構成する多孔性マット材(排出口用多孔性マット材)としては、除塵槽と塵埃含有液体貯留槽との間に設けられた多孔性マット部を構成する多孔性マット材と同様の多孔性マット材を用いることができる。従って、排出口用多孔性マット材としては、繊維材料により構成されていることが好ましく、特に、繊維材料により不織布状に形成された形態のマット材により構成されていることが好適である。なお、排出口用多孔性マット材で用いられる繊維材料としては、前記多孔性マット部を構成する多孔性マット材において例示の繊維材料(特に合成繊維材料)の中から適宜選択して用いることができる。
【0049】
排出口用多孔性マット部は、1種の排出口用多孔性マット材により形成されていてもよく、2種以上の排出口用多孔性マット材により形成されていてもよい。排出口用多孔性マット部は、単層の形態を有していてもよく、多層の形態を有していてもよい。
【0050】
なお、図1〜図2で示されている湿式集塵機では、排出口用多孔性マット部は、塵埃含有液体貯留槽の壁面の内面側に、該内面が全面的又はほぼ全面的に覆われるような形態で(すなわち、内面の全周又はほぼ全周にわたり)設けられている。
【0051】
(水中ポンプ)
さらにまた、塵埃含有液体貯留槽は、内部に、塵埃含有液体貯留槽中の液体を液体噴出部に移送するための水中ポンプを有している。水中ポンプが設置されている部位は、塵埃含有液体貯留槽中であれば、いずれの部位であってもよいが、中央部であることが好ましい。もちろん、水中ポンプは、貯留されている液体を汲み上げることが可能な形態で設置されていることが重要である。
【0052】
水中ポンプは、市販されているものの中から、塵埃含有液体貯留槽の大きさや、汲み上げる液体の単位時間当たりの流量などに応じて適宜選択して用いることができる。なお、水中ポンプにより汲み上げる液体の単位時間当たりの流量などは、特に制限されず、適宜設定することができる。
【0053】
水中ポンプは、その電気ケーブルを、塵埃含有液体貯留槽の壁面に設けられたケーブル用穴部を介して、湿式集塵機の外部に出して、該電気ケーブルの先端の電源接続部を電源と接続させることにより、電気の供給を受け、稼働することができる。
【0054】
水中ポンプは、汲み上げた液体を排出する排出口で、液体噴出部に液体を移送させるための液体移送管と連結している。すなわち、液体移送管を介して、水中ポンプと、液体噴出部とが連結しており、水中ポンプにより汲み上げられた液体は、液体移送管を経由して液体噴出部に移送されて、液体噴出部より噴出される。特に、本発明の湿式集塵機では、図1〜図2で示されているように、ポンプと、液体移送管と、液体噴出部とを、上下方向に線状に位置する形態で設けることができ、極めてコンパクトな設計とすることが可能である。
【0055】
(屋根部およびポンプ設置槽)
本発明では、水中ポンプが、液体とともに、大きな塵埃を汲み上げることにより、故障が生じないように、湿式集塵機は、図5で示されるように、前記構成(F)に代えて(F1)の構成を有しているともに、下記の(I)の構成を有していることが好ましい。
(F1):水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも高さが低く且つ塵埃含有液体貯留槽中に設置されたポンプ設置槽中に有している構成
(I):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体が、直接、ポンプ設置槽中に入らないようにするための屋根部を、ポンプ設置槽上に有している構成
【0056】
多孔性マット部を通過した塵埃含有液体には、大きな塵埃も含まれている場合がある。このような大きな塵埃は、塵埃含有液体貯留槽中に貯留されている液体中では、底面に沈殿する。そのため、前述のように、水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中のポンプ設置槽中に設置するとともに、該ポンプ設置槽上に屋根部を設けることにより、ポンプ設置槽中には、多孔性マット部を通過した塵埃含有液体が直接入らず、塵埃含有液体貯留槽の下部に貯留されている塵埃含有液体の上部側の液が入って貯留されるので、水中ポンプは、大きな粒子の塵埃を含有していない液体を汲み上げることができ、水中ポンプの故障を効果的に抑制又は防止することができる。
【0057】
図5は、本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。図5において、1aは湿式集塵機、17はポンプ設置槽、18は屋根部、18aは屋根部18の屋根本体部、18bは屋根部18の取付部であり、他の符号は前記に同じである。図5で示される湿式集塵機1aでは、水中ポンプ7が、ポンプ設置槽17内に設置され、ポンプ設置槽17上には、屋根部18が設けられている。前記ポンプ設置槽17は、塵埃含有液体貯留槽5中に貯留されている液体の液面よりも高さが低く、塵埃含有液体貯留槽5の中央部に、底面に静置又は固定された形態で設置されている。また、前記屋根部18は、水中ポンプ7上で、屋根本体部18aを、液体移送管8の周囲に取付部18bで取り付けられることにより設置されており、多孔性マット部4を通過した塵埃含有液体が、直接、ポンプ設置槽17中に入らない構成となっている。そのため、ポンプ設置槽17には、塵埃含有液体貯留槽5中に貯留されている塵埃含有液体のうち、大きな粒子の塵埃を含んでいない上部側の液が入いるため、水中ポンプ7は、この大きな粒子の塵埃を含んでいない液を、有効に汲み上げることができる。
【0058】
(液体保持部)
また、本発明では、湿式集塵機の稼働時や、湿式集塵機の移動時などで、除塵空気排出口から液体が系外に飛散又は流出しないように、図6で示されるように、下記の(J)の構成を有していることが好ましい。
(J):除塵空気排出口から飛散又は流出した液体を受け止めるための液体保持部を、除塵空気排出口の外部側に有している構成
【0059】
このような液体保持部の形状としては、除塵空気排出口の外部側で、除塵空気排出口から飛散又は流出した液体を受け止めることが可能な形状であれば特に制限されないが、除塵空気排出口の外部側の下部から、斜め上側の方向に、直線的、曲線的又は折れ線的に伸びた形状などが挙げられるが、図6で示されるように、除塵空気排出口の外部側の下部から斜め上側の方向に直線的に伸びた形状を有していることが好ましい。
【0060】
図6は、本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。図6において、1bは湿式集塵機、19は液体保持部であり、他の符号は前記に同じである。図6で示される湿式集塵機1bでは、除塵空気排出口6の外部(外面)側の下部から斜め上側の方向に直線的に伸びた形状の液体保持部19が設けられている。そのため、除塵空気排出口6から液体が飛散又は流出しても、該液体を、液体保持部19により受け止めて、除塵空気排出口6の下部側の孔部より、塵埃含有液体貯留槽5中に戻すことができる。従って、このように、液体保持部を設けることにより、液体が除塵空気排出口から系外に飛散又は流出することを効果的に抑制又は防止することができる。
【0061】
(塵埃吸気路)
さらにまた、本発明では、湿式集塵機内に塵埃含有空気を有効に導入させるために、図7で示されるように、下記の(K)の構成を有していることが好ましい。
(K):塵埃含有空気を塵埃導入口に案内させるための塵埃吸気路を、塵埃導入口と連結した形態で有している構成
【0062】
このような塵埃吸気路としては、塵埃含有空気を塵埃導入口に案内させることができ、且つ塵埃導入口と連結させることが可能なものであれば特に制限されない。塵埃吸気路としては、プラスチック材により形成されていることが好ましいが、他の材料(金属材、繊維材など)により形成されていてもよい。塵埃吸気路を形成するプラスチック材としては、パイプ状の剛性を有するプラスチック材であってもよいが、特に、シート状の可撓性を有するプラスチック材が好適である。このようなシート状の可撓性を有するプラスチック材における素材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂材(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル系樹脂材(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリ塩化ビニル系樹脂材(ポリ塩化ビニルなど)、スチレン系樹脂材(ポリスチレンなど)、アクリル系樹脂材、アミド系樹脂材などが挙げられる。なお、これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられていてもよい。
【0063】
また、塵埃吸気路は、通常、円筒型の筒状の形状を有しているが、他の形状を有していてもよい。
【0064】
塵埃吸気路において、塵埃導入口に連結される側の口部(塵埃吸気路における塵埃含有空気の出口側の口部)は、塵埃導入口の形状より少し大きな相似形状を有していることが好ましいが、塵埃吸気路がシート状の可撓性を有するプラスチック材により形成されている場合は、適宜に折り畳むことができるので、塵埃導入口の形状より大きな形状を有していてもよく、また、塵埃吸気路が伸長性を有する材料により形成されている場合は、塵埃導入口の形状より小さな形状を有していてもよい。いずれにせよ、塵埃吸気路における塵埃導入口に連結される側の口部は、塵埃含有空気が漏れない形態で塵埃導入口に連結させることが可能な形状を有していればよい。
【0065】
なお、塵埃吸気路を塵埃導入口に連結させる部分である取付部では、取付材を用いることができ、このような取付材としては、塵埃含有空気が漏れない形態で塵埃導入口に連結させることが可能なものであれば特に制限されず、例えば、ゴム材等の伸縮型取付材、粘着テープ材や粘着シート材等の粘着型取付材などが挙げられる。また、取付部は、嵌合手段や係合手段による取付方法を利用して取り付けられた部位であってもよい。
【0066】
一方、塵埃吸気路において、塵埃導入口に連結されない側の口部(塵埃吸気路における塵埃含有空気の入口側の口部)は、該口部を接続させる部位(例えば、建物の塵埃含有空気を排出する換気口など)の形状や、塵埃吸気路を形成する材料等に応じて適宜設定することができる。
【0067】
なお、塵埃吸気路において、塵埃導入口に連結される口部の数は、塵埃導入口の数と同数であればよく、一方、塵埃導入口に連結される口部以外の口部の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0068】
図7は、本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。図7において、1cは湿式集塵機、20は塵埃吸気路、20aは塵埃吸気路20の本体部、20bは塵埃吸気路20の取付部であり、他の符号は前記に同じである。図7で示されている湿式集塵機1cでは、塵埃導入口2に塵埃吸気路20が連結されている。前記塵埃吸気路20は、塵埃含有空気を塵埃導入口2に案内させる機能を有している。なお、塵埃吸気路20において、一方の口部(塵埃吸気路における塵埃含有空気の出口側の口部)は、図7で示されているように、塵埃導入口2に連結された状態となっているが、他方の口部(塵埃吸気路における塵埃含有空気の入口側の口部)は、そのまま開放された状態となってもよく、建物、装置、タンクやマンホール内などの塵埃含有空気を含んでいる系における塵埃含有空気を排気ファンにより排出する換気口の排気側の部位に接続された状態となっていてもよい。なお、換気口が排気ファンを有していない場合や、塵埃吸気路における塵埃含有空気の入口側の口部を換気口に接続せずにそのまま開放された状態となっている場合、塵埃含有空気を塵埃吸気路内に導入させるために、塵埃含有空気を含んでいる系内に扇風機等の排気装置を設けたり、湿式集塵機に吸気ファンを設けたりすることが好ましい。
【0069】
(吸気ファン)
本発明では、塵埃吸気路を有している場合、塵埃含有空気を塵埃吸気路中に効果的に導入させるために、図8で示されるように、さらに、下記の(L)の構成を有していてもよい。
(L):塵埃吸気路中に塵埃含有空気を吸引させるための吸気ファンを、塵埃吸気路内に有している構成
【0070】
このような吸気ファンとしては、塵埃吸気路中に塵埃含有空気を吸引させることができ、且つ塵埃吸気路内に設けることが可能なものであれば特に制限されない。吸気ファンとしては、複数の羽根を有する羽根型ファンが好適である。このような羽根型ファンにおける羽根の形状は、特に制限されず、塵埃吸気路中に塵埃含有空気を吸引させることができる形状であればよい。吸気ファンは、プラスチック材により形成されていることが好ましいが、他の材料(金属材など)により形成されていてもよい。
【0071】
吸気ファンは、通常、塵埃吸気路における塵埃含有空気の入口側の口部又はその付近に設けられているが、それ以外の部位に設けられていてもよい。
【0072】
図8は、本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。図8において、1dは湿式集塵機、21は吸気ファン、22は壁面、23は換気口であり、他の符号は前記に同じである。図8で示される湿式集塵機1dでは、吸気ファン21が塵埃吸気路20内に設けられている。なお、吸気ファン21が設けられている側の塵埃吸気路20における口部(塵埃吸気路20における塵埃含有空気の入口側の口部)は、壁面22に設けられている換気口23に、公知の接続手段を利用して接続されている。図8では、粘着テープ材を用いた接続手段を利用して、吸気ファン21が設けられている側の塵埃吸気路20における口部が、壁面22に設けられている換気口23に接続されている。このような吸気ファン21は、塵埃吸気路20中に、系外に(図8では、壁面の内部側に)存在している塵埃含有空気を吸引させる機能を有している。吸気ファン21は、塵埃吸気路20における塵埃含有空気の入口側の口部付近に設けられている。従って、吸気ファン21を稼働させることにより、壁面の内部側に存在している塵埃含有空気を、壁面に設けられた換気口を介して、塵埃吸気路20における塵埃含有空気の入口側の口部から塵埃吸気路20中に吸引させ、さらに、塵埃吸気路20における塵埃含有空気の出口側の口部を経て、塵埃導入口2から湿式集塵機1d内に導入させることができる。
【0073】
(湿式集塵機の形状や構成)
図1〜2で示される湿式集塵機は、図3で示されるように、下部側方向に垂直な方向(水平方向)で切断した際の断面が円形となっている円型を有しているが、該断面が多角形(例えば、三角形、四角形、六角形、八角形など)となっている多角形型や、不定形型を有していてもよい。このような多角形型の湿式集塵機としては、例えば、図9〜11で示される湿式集塵機などが挙げられる。図9は、本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。図10は、図9で示される湿式集塵機の外観を示す概略外観図である。図11は、図9〜10に係る湿式集塵機を上面から見た概略上面図である。図9〜11において、1eは湿式集塵機、24は液体注入口であり、他の符号は前記に同じである。図9〜11で示される湿式集塵機1eは、水平方向で切断した際の断面が四角形となっている四角形型を有している。なお、湿式集塵機1eは、断面の形状が異なること以外は、基本的には、前記図1〜8などで示されている湿式集塵機と同様である。
【0074】
本発明の湿式集塵機は、前述のように、軽量且つコンパクトになっており、容易に移動させることが可能であるので、移動を容易に行うために、図1〜2などで示されているように、キャスター部を有していることが好ましい。
【0075】
また、湿式集塵機は、マンホール内に入れることが可能な大きさにまでコンパクトにすることが可能である。従って、湿式集塵機の外観の径(直径)は、マンホールの入口の径よりも小さな径(例えば、直径が480mm以下)となっていてもよい。
【0076】
さらに、湿式集塵機には、使用後に、塵埃含有液体貯留槽中に貯留されている塵埃含有液体を除去するために、排水部が設けられていることが好ましい。このような排水部は、塵埃含有液体貯留槽の底面又は下面に設けることが好ましいが、塵埃含有液体貯留槽の壁面の下部などに設けられていてもよい。
【0077】
なお、湿式集塵機において、除塵槽と、塵埃含有液体貯留槽とは、分離可能な形態で係合されている。このように、除塵槽と塵埃含有液体貯留槽とを分離可能な形態で係合させる方法としては、特に制限されず、公知の分離可能な係合方法(又は手段)の中から適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は本発明の湿式集塵機の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は図1で示される湿式集塵機の外観を示す概略外観図である。
【図3】図3は図1〜図2に係る湿式集塵機を上面から見た概略上面図である。
【図4】図4は図1〜図2に係る湿式集塵機で設けられている液体噴出部を示す概略図である。
【図5】図5は本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。
【図6】図6は本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。
【図7】図7は本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。
【図8】図8は本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。
【図9】図9は本発明の湿式集塵機の他の例を示す概略断面図である。
【図10】図10は図9で示される湿式集塵機の外観を示す概略外観図である。
【図11】図11は図9〜10に係る湿式集塵機を上面から見た概略上面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 湿式集塵機
1a〜1e それぞれ、湿式集塵機
2 塵埃導入口
3 液体噴出部
3a〜3d それぞれ、ノズル
4 多孔性マット部
5 塵埃含有液体貯留槽
6 除塵空気排出口
7 水中ポンプ
7a 水中ポンプ7の本体
7b 水中ポンプ7の電気ケーブル
8 液体移送管
9 液体
10 排出口用多孔性マット部
11 除塵槽
12 グレーチング部
13 取付枠部
14 ケーブル用穴部
15 排水部
16 キャスター部
17 ポンプ設置槽
18 屋根部
18a 屋根部18の屋根本体部
18b 屋根部18の取付部
19 液体保持部
20 塵埃吸気路
20a 塵埃吸気路20の本体部
20b 塵埃吸気路20の取付部
21 吸気ファン
22 壁面
23 換気口
24 液体注入口
A 下部側方向
B 塵埃含有空気の導入方向
C 液体噴出部3から噴出される液体の噴出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃が空気中に含まれた状態の塵埃含有空気を液体と接触させることにより、塵埃含有空気を除塵する機能を有している湿式集塵機であって、下記の(A)〜(G)の構成を有していることを特徴とする湿式集塵機。
(A):塵埃含有空気を下部側方向に導入するための塵埃導入口を、上部に有している構成
(B):塵埃含有空気を除塵させるための液体を下部側方向に対して0°を超え且つ90°未満の角度で且つ拡散させた状態で噴出させる液体噴出部を、塵埃導入口の下部側に有している構成
(C):塵埃が液体中に含有された状態の塵埃含有液体、および塵埃含有空気が除塵された状態の除塵空気が通過可能な多孔性マット部を、液体噴出部の下部側に有している構成
(D):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体を貯留するための塵埃含有液体貯留槽を、多孔性マット部の下部側に有している構成
(E):多孔性マット部を通過した除塵空気を系外に排出するための除塵空気排出口を、多孔性マット部の下部側に、且つ塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも上部側の壁面に有している構成
(F):塵埃含有液体貯留槽中の液体を液体噴出部に移送するための水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中に有している構成
(G):水中ポンプから液体噴出部に液体を移送させるための液体移送管を、多孔性マット部に設けられた孔を通過する形態で有している構成
【請求項2】
構成(B)において、液体噴出部が、液体を噴出させるノズルを複数有している請求項1記載の湿式集塵機。
【請求項3】
構成(C)において、多孔性マット部が、繊維材料により構成されている請求項1又は2記載の湿式集塵機。
【請求項4】
さらに、下記の(H)の構成を有している請求項1〜3の何れかの項に記載の湿式集塵機。
(H):除塵空気が通過可能な排出口用多孔性マット部を、少なくとも除塵空気排出口における塵埃含有液体貯留槽の壁面の内面側に有している構成
【請求項5】
構成(F)が、下記の(F1)の構成であるとともに、さらに、下記の(I)の構成を有している請求項1〜4の何れかの項に記載の湿式集塵機。
(F1):水中ポンプを、塵埃含有液体貯留槽中の液面よりも高さが低く且つ塵埃含有液体貯留槽中に設置されたポンプ設置槽中に有している構成
(I):多孔性マット部を通過した塵埃含有液体が、直接、ポンプ設置槽中に入らないようにするための屋根部を、ポンプ設置槽上に有している構成
【請求項6】
構成(B)において、液体噴出部より噴出される液体の下部側方向に対する角度が、30〜60°である請求項1〜5の何れかの項に記載の湿式集塵機。
【請求項7】
さらに、下記の(J)の構成を有している請求項1〜6の何れかの項に記載の湿式集塵機。
(J):除塵空気排出口から飛散又は流出した液体を受け止めるための液体保持部を、除塵空気排出口の外部側に有している構成
【請求項8】
さらに、下記の(K)の構成を有している請求項1〜7の何れかの項に記載の湿式集塵機。
(K):塵埃含有空気を塵埃導入口に案内させるための塵埃吸気路を、塵埃導入口と連結した形態で有している構成
【請求項9】
さらに、下記の(L)の構成を有している請求項1〜8の何れかの項に記載の湿式集塵機。
(L):塵埃吸気路中に塵埃含有空気を吸引させるための吸気ファンを、塵埃吸気路内に有している構成

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−69096(P2007−69096A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257428(P2005−257428)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(597083172)有限会社こうすい (9)
【Fターム(参考)】