説明

溶接継手およびその製造方法

【課題】引張強度が440MPa以上の複数の高張力鋼板を重ね合わせてスポット溶接を行った場合のスポット溶接部の剥離方向強度の低下を防止する。
【解決手段】引張強度が440MPa以上の複数の高張力鋼板を重ね合わせて形成される重ね合わせ部材にスポット溶接を行って溶接継手を製造する際、スポット溶接部に、400≦T・(log10(t)+1)≦750(ただし、Tは熱処理温度(100℃≦T≦400℃)、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分))を充足する熱処理を施す。これによりスポット溶接部の剥離方向強度が上昇し、引張試験を行うと母材破断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接継手およびその製造方法に関し、具体的には、主に自動車の組立てで使用される抵抗溶接により製造される、剥離方向強度に優れる溶接継手およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車産業分野では、車体の軽量化および衝突安全性の向上を図るため、引張強度が例えば440MPa以上である高張力鋼板の使用が拡大している。
【0003】
車体の組立てで主に使用されるスポット溶接では、板厚に応じたナゲット径の確保が求められ、発生基準ナゲット径が得られる電流値からチリ(溶融金属の飛散現象)が発生する電流値までの範囲により表される適正電流範囲が重要な指標とされる。また、スポット溶接継手には、高いせん断強度および剥離方向強度がともに要求される。
【0004】
また、スポット溶接部に求められる品質は、引張試験における破断経路がナゲット内(溶融した部分)を通過するナゲット内破断や、この破断経路がナゲットと母材との界面を通過する界面破断よりも、破断経路がナゲットの外部を通過する母材破断であることが望ましい。
【0005】
しかし、上述した引張強度が440MPa以上の高張力鋼板のスポット溶接継手の剥離方向強度は、せん断強度よりも弱く、また界面破断した場合の強度低下が著しい。そこで、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板を自動車の車体へ適用拡大するために、スポット溶接継手の剥離方向強度の向上が求められている。
【0006】
一般的に、スポット溶接継手の剥離方向強度の向上を図るには、ナゲット径を拡大することが有効であるとされる。また、特許文献1〜5には、溶接通電終了後の通電(後通電)による改善方法も提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−103048号公報
【特許文献2】特開2002−103054号公報
【特許文献3】平塚一富ら、「耐候性鋼の点溶接におけるテンパ条件選定に関する研究」、溶接学会誌 第39巻(1970) 第3号、39〜49頁
【特許文献4】山内信幸ら、‘高張力鋼板のスポット溶接性’、住友金属、Vol.33(1981) No.4、109〜120頁
【特許文献5】別所清ら、‘高張力薄鋼板の点溶接’、住友金属、Vol.26(1974) No.2、38〜48頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前者のナゲット径を拡大する手段は、高張力鋼板の場合にはチリが発生しやすいため、限界がある。また、後者の後通電を行う手段は施工時間が増大するため、実用的なものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許文献4、5により開示されるように、高張力鋼板のスポット溶接継手の剥離方向強度の低下原因として、C含有量の増加に伴う溶接金属の硬さ上昇による靭性低下が知られる。また、高張力鋼板におけるPやSの偏析も原因であることが知られる。このP、Sの偏析はC含有量が増加するほど影響を受け易くなる。すなわち、スポット溶接継手の剥離方向の強度の向上のためにはC含有量およびP含有量を低減することが求められるが、Cは、鋼の高強度化には必須の元素であり、欠かすことはできない。
【0010】
そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、引張強度が440MPa以上の複数の高張力鋼板を重ね合わせて形成される重ね合わせ部材にスポット溶接を行って製造されるスポット溶接継手の剥離方向強度を向上するには、このスポット溶接部に特定の条件で熱処理を施せばよいことを知見し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、引張強度が440MPa以上の複数の鋼板を重ね合わせて形成される重ね合わせ部材に抵抗溶接を行って溶接継手を製造する方法であって、重ね合わせ部材における抵抗溶接を行われた溶接部を昇温することによりこの溶接部に下記式(1)を充足する熱処理温度および熱処理時間で熱処理を施すことを特徴とする溶接継手の製造方法である。
【0012】
300≦T・(log10(t)+1)≦1000 ・・・・・・・・・・(1)
ただし、式(1)におけるTは熱処理温度(100℃≦T≦400℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。
【0013】
この本発明に係る溶接継手の製造方法では、熱処理が、下記式(2)を充足することが望ましい。
【0014】
400≦T・(log10(t)+1)≦750 ・・・・・・・・・・(2)
ただし、式(2)におけるTは熱処理温度(150℃≦T≦400℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。この場合に、熱処理温度Tは200℃以上400℃未満であることが望ましい。
【0015】
さらに、熱処理が、下記式(3)を満足することが望ましい。
450≦T・(log10(t)+1)≦700 ・・・・・・・・・・(3)
ただし、式(3)におけるTは熱処理温度(200℃≦T≦300℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。
【0016】
これらの本発明に係る溶接継手の製造方法では、重ね合わせ部材の板厚中央部とは異なる位置に複数の鋼板の重ね合わせ面が存在することが望ましい。
これらの本発明に係る溶接継手の製造方法では、複数の鋼板が3枚の鋼板であることが望ましい。
【0017】
別の観点からは、本発明は、上述した本発明に係る製造方法により製造されることを特徴とする溶接継手である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、引張強度が440MPa以上の鋼板からなる重ね合わせ部材に抵抗溶接を行って得られる溶接継手の剥離方向強度を向上できる。
【0019】
このため、本発明によれば、より小さなナゲット径で溶接継手の剥離方向の強度を向上させること、すなわち、剥離方向強度に優れる引張強度が440MPa以上の高張力鋼板の溶接継手と、その製造方法とを提供することができる。
【0020】
これにより、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板を、自動車の車体へ適用拡大することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る溶接継手およびその製造方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、本発明は、スポット溶接、片側スポット溶接、シリーズスポット溶接さらにはダイレクトスポット溶接等の抵抗溶接で製造される点溶接継手であれば広く適用される。以降の説明では、自動車の分野で広く用いられるスポット溶接を例にとる。
【0022】
本実施の形態では、引張強度が440MPa以上の複数の高張力鋼板を重ね合わせて形成される重ね合わせ部材にスポット溶接を行ってスポット溶接継手を製造する。この際、この重ね合わせ部材におけるスポット溶接を行われたスポット溶接部を昇温することによりこの溶接部に、下記式(1)を充足する熱処理温度および熱処理時間で熱処理を施すことにより、スポット溶接継手を製造する。
300≦T・(log10(t)+1)≦1000 ・・・・・・・・・・(1)
【0023】
ただし、式(1)におけるTは熱処理温度(100℃以上400℃以下)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度での保持時間;分)を示す。通常のスポット溶接終了後の溶接部は室温まで空冷されるため、スポット溶接部を昇温する必要がある。溶接後の冷却過程で温度を保持する熱処理では、スポット溶接の冷却速度が非常に速いため所定の温度を狙うことが困難である。また、このような熱処理はスポット溶接電極による通電加熱で行わざるを得ないが、施工時間の増大や、連続打点性の劣化が生じるため好ましくない。
【0024】
本発明者らは、スポット溶接部に熱処理を行った場合に熱処理温度および熱処理時間がスポット溶接部の強度に及ぼす影響を調べるため、表1に示す組成(数値は質量%であり、表に示す以外はFeおよび不純物)を有する、引張強度780MPaおよび板厚1.8mmの高張力鋼板0a、0bを二枚重ね合わせて、図1に示す形状のL字型引張試験片0を組み立て、このL字型引張試験片0に対して表2に示す溶接条件(電極、加圧力、通電時間、溶接電流およびホールド時間)でスポット溶接を行い、このスポット溶接部0cを常温まで冷却した後に所定の熱処理温度(常温〜400℃)に所定の熱処理時間(0〜300分間)に加熱保持してから、L字型引張試験片0に引張試験を行うことにより剥離方向強度を調査した。
【0025】
結果を表3にまとめて示すとともに、図2および図3にグラフで示す。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
図2は熱処理温度とL字継手強度との関係を示すグラフであり、図3は熱処理時間および熱処理温度と、破断形態との関係を示すグラフである。なお、図2におけるL字継手強度は各熱処理温度で得られた最高強度を示す。また、図3は各熱処理条件でのL字継手強度を示しており、黒四角印が母材破断であることを示し、白四角印が界面破断であることを示し、さらに灰四角印がナゲット内破断であることを示す。図中のプロットの大きさは強度の大きさを示し、プロットが大きいほど高強度であることを示す。
【0030】
表3に示すように、本実施の形態の熱処理を行うことにより、剥離方向強度を向上でき、さらに、図2にグラフで示すように、熱処理の影響は、100℃程度の熱処理温度から現われ、熱処理温度が高いほど熱処理時間が短くてもスポット溶接部の剥離方向強度が向上するが、熱処理温度が200℃よりも高い温度域では、熱処理時間が長過ぎる場合にはスポット溶接部の剥離方向強度の上昇は小さくなることがわかる。つまり、スポット溶接部の強度を確実に高めるためには、熱処理温度に対して適正な熱処理時間が存在することがわかる。さらに、熱処理温度が400℃を超えると、適正な処理時間が狭く実用的でない。
【0031】
さらに、表3、図2および図3に示す結果から、以下に列記する事項がわかる。
(a)100℃以上400℃以下の熱処理温度で熱処理を適正時間行うことにより、接合部の剥離方向強度は大幅に向上すること。
【0032】
(b)300≦T・(log10(t)+1)≦1000の熱処理を行うことにより、剥離方向強度が向上すること。
(c)T・(log10(t)+1)が300未満であると剥離方向強度が小さくなり、また、1000を超えても熱処理に投入するエネルギーに比較して剥離方向強度の向上効果が小さくなること。
【0033】
(d)特に400≦T・(log10(t)+1)≦750の熱処理を行うことにより、母材破断となり、剥離方向強度が大幅に向上すること。
【0034】
表3に示すように、上述した式(1):300≦T・(log10(t)+1)≦1000を充足する熱処理温度および熱処理時間で熱処理を施すことにより剥離方向強度が向上する。
【0035】
さらに、上述した式(2):400≦T・(log10(t)+1)≦750を充足する熱処理温度および熱処理時間で熱処理を施すことにより母材破断となり剥離方向強度が大幅に向上する。ただし、式(2)におけるTは熱処理温度(150℃≦T≦400℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。この場合に、熱処理温度Tは200℃以上400℃以下であることが望ましい。
【0036】
さらに、熱処理が、下記式(3)を満足することが望ましい。
450≦T・(log10(t)+1)≦700 ・・・・・・・・・・(3)
ただし、式(3)におけるTは熱処理温度(200℃≦T≦300℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。
【0037】
剥離方向強度は、主に溶接金属の靭性に影響される。引張強度が440MPa以上の高張力鋼板では、母材の高強度化のためC含有量が多く、さらにスポット溶接部は冷却速度が非常に速いため、溶接金属の組織は、Cが過飽和に固溶した靭性の低いマルテンサイト組織になり易い。上記熱処理により、スポット溶接部が焼戻され、溶接金属の靭性が向上するため、剥離方向強度が向上すると推察される。
【0038】
本実施の形態における熱処理の手段は、特定の手段には限定されず、この種の熱処理に用いられるあらゆる手段を用いることができる。但し、スポット溶接電極による通電加熱による熱処理は、施工時間が増大するといった問題や、連続打点性が劣化するといった問題があり好ましくない。
【0039】
本発明が対象とする、引張強度が440MPa以上の高張力鋼板は、主に自動車用であるが、自動車用に限定する必要はなく、引張強度が440MPa以上の高強度が要求される他の用途にも当然適用可能である。この高張力鋼板の化学成分は、440MPa以上の引張強度を維持できるものであればよく、特定の化学成分には限定されない。
【0040】
高張力鋼板の板厚も特に規定する必要はない。一般に、自動車用部品や車体で使用される鋼板の板厚は、0.4mm以上4.0mm以下であり、本発明はこの範囲において十分な効果を有する。
【0041】
高張力鋼板の種類に関しても特に規定する必要はない。例えば、析出強化鋼やDP鋼、TRIP(加工誘起変態)鋼、さらには熱間プレス鋼板等の、各種の公知の引張強度が440MPa以上の高張力鋼板に適用できる。また、高張力鋼板は、冷延鋼板でもよく、または熱延鋼板でもよい。さらに、高張力鋼板は、めっきを施されない裸鋼板であってもよいし、めっき鋼板であってもよい。
【0042】
さらに、スポット溶接は、通常、重ね合わされた2枚の高張力鋼板に対して行われるが、本発明は、重ね合わされた3枚以上の高張力鋼板に対しても有効である。
本実施形態では、特に、重ね合わせ材の板厚方向の中央部とは異なる位置に鋼板の重ね合わせ面が存在するような板組が望ましい。
【0043】
図4は、スポット溶接継手1、2の剥離方向強度に及ぼす板組みの影響を示す説明図であり、図4(a)は、3枚の高張力鋼板1a〜1cによる3枚重ねスポット溶接部3を有するスポット溶接継手1を示し、図4(b)は2枚の高張力鋼板2a、2bによる2枚重ねスポット溶接部4を有するスポット溶接継手2を示す。なお、図4(a)および図4(b)では、スポット溶接部3、4の内部に示す実線はP、Sの凝固偏析部を示す。
【0044】
特に、図4(a)に示す3枚の高張力鋼板1a〜1cによる3枚重ねスポット溶接部3を有するスポット溶接継手1、すなわち3枚の高張力鋼板1a〜1cの重ね合わせ部材が、その板厚方向の中央部とは異なる位置に各高張力鋼板1a〜1cの重ね合わせ面が存在する場合には、同図に示すように、白抜き矢印で示す重ね合わせ面に沿うき裂進展ラインと、板厚中央部に実線で示すP、Sの凝固偏析ラインとが一致しないので、本実施の形態の熱処理(焼戻し)による溶接組織の靭性の向上効果により、剥離方向強度が大幅に向上する。
【0045】
これに対し、図4(b)に示す2枚の高張力鋼板2a、2bによる2枚重ねスポット溶接部4を有するスポット溶接継手2、すなわち2枚の高張力鋼板2a、2bの重ね合わせ部材が、その板厚方向の中央部に高張力鋼板2a、2bの重ね合わせ面が存在する場合には、白抜き矢印で示すき裂進展ラインと、スポット溶接により生じ、板厚中央部に実線で示すP、Sの凝固偏析ラインとが一致するのでP、Sの凝固偏析の影響により剥離方向強度の向上が小さくなる場合がある。このような場合には、スポット溶接により生じるP、Sの凝固偏析を抑制するために、溶接金属のP、Sの含有量を小さくするのが望ましい。
【0046】
このようにして、本実施の形態によれば、より小さなナゲット径で溶接継手の剥離方向の強度を向上させること、すなわち、剥離方向強度に優れる引張強度が440MPa以上の高張力鋼板の溶接継手と、その製造方法とが提供される。
【実施例1】
【0047】
実施例を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明する。
本実施例では、上述した図1に示すL字型引張試験片0と、図5に示す高張力鋼板5a〜5cを三枚重ね合わせたL字型引張試験片5とを用いて、スポット溶接部0c、5dの剥離継手強度に及ぼす熱処理の効果について検討した。
【0048】
高張力鋼板0a、0b、5a〜5cには、板厚1.8mmの2種類の高張力鋼板Type−A(引張強度:780MPa)、Type−B(引張強度:1500MPa)を用いた。高張力鋼板Type−Aは表1に示す化学成分である。Type−Bの化学成分を表4に示す。表4に示す組成は質量%であり、また表4に示す以外の化学成分はFeおよび不純物である。
【0049】
【表4】

【0050】
スポット溶接は、同じ鋼種の高張力鋼板同士の組み合わせについて、2枚重ね合わせ溶接、および3枚重ね合わせ溶接で表5に示す溶接条件(電極、加圧力、通電時間、溶接電流およびホールド時間)で行った。スポット溶接部を常温まで冷却した後、炉に装入し、所定の熱処理温度(300℃)と所定の熱処理時間(5分、10分)の熱処理を実施した。なお、比較のために、熱処理を行わないスポット溶接継手のL字型引張試験片も製作した。
【0051】
【表5】

【0052】
そして、得られたスポット溶接継手のL字型引張試験片0、5について剥離方向強度を求めた。なお、三枚重ね合わせのL字型引張試験片5については、最外部の鋼板間の剥離方向強度を求めた。結果を表6にまとめて示す。
【0053】
【表6】

【0054】
Type−A、Bのいずれの高張力鋼板においても、本発明で規定する熱処理を行うことにより、二枚重ね合わせおよび三枚重ね合わせのいずれの場合において剥離継手強度が上昇することがわかる。特に、3枚重ね合わせの場合、2枚重ね合わせの場合に比べ、小さなナゲット径でも母材破断が得られることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】二枚重ね合わせのL字型引張試験片の形状を示す説明図である。
【図2】熱処理温度とL字継手強度との関係を示すグラフである。
【図3】熱処理時間および熱処理温度と、破断形態との関係を示すグラフである。
【図4】スポット溶接継手の剥離方向強度に及ぼす板組みの影響を示す説明図であり、図4(a)は、3枚の高張力鋼板による3枚重ねスポット溶接部を有するスポット溶接継手を示し、図4(b)は2枚の高張力鋼板による2枚重ねスポット溶接部を有するスポット溶接継手を示す。
【図5】三枚重ね合わせのL字型引張試験片の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
0 L字型引張試験片
0a、0b 高張力鋼板
0c スポット溶接部
1、2 スポット溶接継手
1a〜1c、2a、2b 高張力鋼板
3 3枚重ねスポット溶接部
4 2枚重ねスポット溶接部
5 L字型引張試験片
5a〜5c 高張力鋼板
5d スポット溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張強度が440MPa以上の複数の鋼板を重ね合わせて形成される重ね合わせ部材に抵抗溶接を行って溶接継手を製造する方法であって、前記重ね合わせ部材における前記抵抗溶接を行われた溶接部を昇温することにより該溶接部に下記式(1)を充足する熱処理温度および熱処理時間で熱処理を施すことを特徴とする溶接継手の製造方法。
300≦T・(log10(t)+1)≦1000 ・・・・・・・・・・(1)
ただし、式(1)におけるTは熱処理温度(100℃≦T≦400℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。
【請求項2】
前記熱処理は、下記式(2)を充足する請求項1に記載された溶接継手の製造方法。
400≦T・(log10(t)+1)≦750 ・・・・・・・・・・(2)
ただし、式(2)におけるTは熱処理温度(150℃≦T≦400℃)を示し、tは熱処理時間(熱処理温度の保持時間;分)を示す。
【請求項3】
前記重ね合わせ材は、その板厚方向の中央部とは異なる位置に前記複数の鋼板の重ね合わせ面が存在する請求項1または請求項2に記載された溶接継手の製造方法。
【請求項4】
前記複数の鋼板は3枚の鋼板である請求項3に記載された溶接継手の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の製造方法により製造されることを特徴とする溶接継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291797(P2009−291797A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145651(P2008−145651)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】