説明

溶接継手部の保全装置及び保全方法

【課題】圧力容器に設けられる複数のノズルの溶接継手部を短期間で保全できる溶接継手部の保全装置及び保全方法を提供する。
【解決手段】原子炉の圧力容器1に複数設けられたノズル3と配管4との間に形成される溶接継手部5の内面に肉盛溶接をする溶接継手部5の保全装置6において、圧力容器1の上方に圧力容器1の中心軸回りに回転可能な構造体7を配置し、構造体7に圧力容器1内に上下に離間して配置される一対の基部9、10を吊設し、これら基部9、10に、ノズル3内に挿入されると共に溶接継手部5の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置13、14をレール部材11、12を介して径方向に移動可能に、かつ、基部9、10間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置13が圧力容器1の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置14を圧力容器1の外周部に退避させるように他方のレール部材12が一方のノズルプラグ装置13の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の圧力容器に設けられたノズルとノズルに接続される配管との間に形成される溶接継手部を保全する溶接継手部の保全装置及び保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型軽水炉(PWR)の異材溶接継手部において、1次冷却水中の環境下における応力腐食割れ(PWSCC: Primary Water Stress Corrosion Cracking)が発生している。これにより、類似環境にある異材溶接継手部、例えば、圧力容器(RV)に設けられたノズルの溶接継手部に対しては保全処置が施工されている。
【0003】
溶接継手部の保全の方法としては、
(a)溶接継手部外面に機械的に圧縮応力をかけてPWSCCの発生を抑制する機械的応力改善プロセス(MSIP: Mechanical Stress Improvement Process)や、
(b)熱的に溶接継手部表層部に圧縮応力をかける高周波誘導加熱応力改善(IHSI: Induction Heating Stress. Improvement)や、
(c)溶接継手部を配管外面より溶接金属で肉盛りし配管の必要肉厚を担保する溶接肉盛り(SWOL: Structural Weld Overlay)が一般的に採用されている。
【0004】
ただし、ノズルと配管との溶接継手部は、コンクリート壁貫通部近傍にあり、保全工事に供することができるスペースが限られていること、また、溶接継手部へのアクセス性が悪いことより、上述の保全工法(a)、(b)及び(c)の適用困難な箇所が存在する。
【0005】
このような施工困難な箇所には、配管内面より溶接継手部にアクセスし、必要に応じて溶接継手部の内表面を削って溝を作成し、この溝を溶接金属で盛ることにより、溶接継手部の耐PWSCC性を向上する保全工法(d)が採用されている。特にこの保全工法(d)は、圧力容器内から溶接継手部にアクセスするため、原子炉を停止する定期点検期間中に上蓋を開放した状態で施工する必要があり、高線量環境下での作業となる。このため、完全遠隔施工、極力作業員を線源から隔離した施工、もしくは充分な放射線遮へい環境下での施工が求められる。また、昨今定期検査期間の短期間化が推し進められているところ、溶接欠陥の発生等、定期検査作業に起因する後戻り作業が発生しないような適用技術の選定及び施工管理をすることが求められている。
【0006】
また、この保全工法(d)においては、作業員が遮へい体を隔てて施工対象箇所近傍にアクセスする工法が採用されており、高線量下作業であることや、遮へい体等の大型装置の格納容器内への搬入及び原子炉容器上への設置などの作業が発生するなどの問題点がある。また、補修溶接においては、異材溶接継手部の母材の化学成分に起因する溶接欠陥の発生が報告されている。特に、ステンレス鋼とニッケル基合金等の組み合わせの異材溶接継手部では、直接Alloy52/152の溶接金属で異材溶接継手部を盛ると、高温割れ等の溶接割れが発生している。この溶接割れの防止方法としては、初層のみをAlloy82/182もしくはER309Lの溶接金属で盛る、残層(初層以外)とは異なる特別なプロセスであるHigh sulfur mitigation layerが採用されている。また、大口径配管においては、定期検査日数の短期間化の観点より、溶接効率の向上が求められている。
【0007】
また、上述のように施工困難な箇所を保全する保全装置としては特許文献1に記載のものが知られている。
【0008】
図12に示すように、この保全装置60は、圧力容器2内に炉水を満たした状態で使用されるものであり、ノズル3内に挿入されると共に溶接継手部5の内面に肉盛溶接するノズルプラグ装置61を備える。
【0009】
図13に示すように、ノズルプラグ装置61は、ノズル3に接続された配管4を閉塞する第一シール部材62とノズル3を閉塞する第二シール部材63とを有し、第一シール部材62と第二シール部材63とで配管4とノズル3の接続部に作業域Aを区画するようになっている。ノズルプラグ装置61を用いて溶接継手部を保全する場合、作業域A内の炉水を排出すると共に作業域A内に空気を供給して気体雰囲気を形成し、ノズルプラグ装置61に具備されている補修・保全用装置64にて、気体雰囲気内で所定の補修・保全を行っていた。また、図12に示すように、ノズルプラグ装置61は、梁構造の構造体65上に直線方向運動(直動)ガイドレール(図示せず)を介して設置されている。構造体65はクレーンなどに吊持されており、圧力容器2内に降下されるようになっている。ノズルプラグ装置61は、構造体65に搭載された状態で圧力容器2内に導入され、直動ガイドレールに沿って移動してノズル3に挿入される構造となっている。この保全装置60によれば、保全作業を遠隔操作にて安全に行うことができると共に、高品質の溶接を行うことができる。
【0010】
【特許文献1】国際公報第2007/116532号パンフレット
【特許文献2】特開平7−12978号公報
【特許文献3】特許第3918217号公報
【特許文献4】特開平1−83378号公報
【特許文献5】特開平10−258364号公報
【特許文献6】特開昭61−38780号公報
【特許文献7】特開平9−85440号公報
【特許文献8】特開2000−312969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ノズルプラグ装置は、上述した第一シール部材と第二シール部材の他に、圧力容器内からノズルを塞ぐ第三シール部材を有し、これら3つのシール部材で作業領域のシール性を担保する構造となっている。このため、ノズルプラグ装置は、圧力容器の内壁面から溶接継手部までの距離よりも長い構造になっており、その長さは、圧力容器内の半径より大きくなっていた。また、ノズルプラグ装置は、上述したように直動ガイドレールに沿って挿入される構造であり、炉内径と装置全長との相対的なスペースの観点より、ノズルプラグ装置を1基のみ圧力容器内に導入し、1ノズルずつ補修・保全するものとなっていた。これより、ノズル毎の施工時間と、ノズルプラグ装置を順次他のノズルに移設する時間とを考慮すると、全ノズルの補修・保全を完了させるためには長い期間を要するという課題があった。
【0012】
一方、ノズルの補修・保全作業含む定期点検の実施期間については、施設稼働率向上の観点より、短期間化することが求められているが、本技術を適用した場合、上述した補修・保全作業に起因して通常より定期点検期間を延長しなければならず、定期点検期間の短期間化は困難であった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、圧力容器に設けられる複数のノズルの溶接継手部を短期間で保全できる溶接継手部の保全装置及び保全方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられたものである。
【0015】
上記他方のノズルプラグ装置をレール部材を介して支持する基部は、一方のノズルプラグ装置の移動方向に対して他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材を斜めにガイドする横行レールを有するとよい。
【0016】
上記構造体が上記圧力容器の側壁の上端に圧力容器の中心軸回りに回転自在に設けられるとよい。
【0017】
上記吊り部材がジャッキからなるとよい。
【0018】
上記基部には、基部を固定すべく圧力容器の側壁に当接するストッパが径方向外方に伸長可能に、かつ、周方向に複数設けられるとよい。
【0019】
また、原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、圧力容器の中心部に位置される一方のノズルプラグ装置をノズルに挿入したのち、他方のレール部材を上記中心部に移動させて他方のノズルプラグ装置を上記中心部に移動させ、該ノズルプラグ装置を一方のノズルプラグ装置が挿入されたノズルとは別のノズルに挿入し、これらノズルプラグ装置で2つの溶接継手部の内面に同時に開先加工すると共に肉盛溶接するものである。
【0020】
また、原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、上記ノズルプラグ装置の溶接機を、溶接トーチと、該溶接トーチに溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給部と、上記溶接トーチで形成した肉盛溶接部を磁気撹拌する磁気撹拌部とを備えるものとし、上記溶接機で肉盛溶接をするとき上記溶接トーチに溶接ワイヤを供給して溶接ワイヤを溶融させながら磁気撹拌部で上記肉盛溶接部の溶湯を撹拌するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧力容器に設けられる複数のノズルの溶接継手部を短期間で保全できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0023】
図1は圧力容器に設置した保全装置の側面図であり、図2は圧力容器に設置した保全装置の平面図である。図3は図1のA−A線断面図であり、図4は図3の上側レール部材と上側レール部材に吊持される第一ノズルプラグ装置の平面図である。図5は図1のB−B線矢視断面図であり、図6は図5の下側レール部材と下側レール部材上に設けられる第二ノズルプラグ装置の平面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、加圧水型軽水炉の圧力容器1の円筒状の側壁2には、圧力容器1内から外部へ、又は外部から内部に炉水を通すためのノズル3が周方向に沿って複数設けられている。ノズル3には、圧力容器1内へ冷却水を供給する給水管や、圧力容器内で加熱された高温水を蒸気発生器(図示せず)に導入するための導入管等の配管4が溶接にて接続されている。
【0025】
圧力容器1は、低合金鋼(例えば、P−3等)からなる。圧力容器1は、その内壁面がステンレス鋼(例えば、SUS308等)からなるクラッド層により形成される。
【0026】
配管4は、ステンレス鋼(例えば、P−8等)からなる。配管4は、ニッケル基合金(例えば、インコネル(登録商標)82或いはインコネル182等)からなる溶接継手部5を介在させてノズル3に接続される。
【0027】
保全装置6は、溶接継手部5の内面に肉盛溶接をして溶接継手部5を保全するものである。保全装置6は、上蓋(図示せず)を外した圧力容器1の側壁2の上端に圧力容器1の中心軸回りに回転自在に設けられた構造体7と、構造体7に吊り部材8を介して吊設され圧力容器1内に上下に離間して配置される一対の基部9、10と、これら基部9、10にレール部材11、12を介して径方向に移動可能に、かつ基部9、10間に位置するように設けられた一対のノズルプラグ装置13、14とを備えて構成されている。
【0028】
構造体7は、直径方向に延びるフレーム枠状に形成されており、圧力容器1の上端に沿って仮設された環状レール15上に走行可能に設けられている。構造体7の両端部には、環状レール15上で走行する車輪16が複数設けられている。また、構造体7には、構造体7を環状レール15に沿って走行させるための駆動装置17が設けられている。駆動装置17は電動モータ18の駆動軸にピニオンギヤ19を設けてなるものである。ピニオンギヤ19は、環状レール15の内周に設けられた環状のラックギヤ20に噛合されており、電動モータ18が回転駆動されることでラックギヤ20から反力をとるようになっている。
【0029】
基部9、10は、ノズル3の上方に配置される上側基部9と、ノズル3の下方に配置される下側基部10とからなる。
【0030】
図1及び図3に示すように、上側基部9は、構造体7と同方向に延びる矩形枠状に形成されており、四隅を吊り部材8で吊られるようになっている。吊り部材8は、油圧ジャッキからなり、吊り部材8が伸縮することで上側基部9の高さを調整できるようになっている。また、上側基部9には、上側基部9を固定すべく圧力容器1の側壁2に当接するストッパ21が径方向外方に伸長可能に、かつ、周方向に複数設けられている。ストッパ21は、油圧ジャッキ22の一端に圧力容器1の側壁2に当接されるパッド23を設けてなる。ストッパ21は上側基部9の四隅に設けられており、それぞれのストッパ21が伸長して圧力容器1の側壁2に当接することで圧力容器1に上側基部9を固定するようになっている。また、上側基部9は、短手方向に延びる上側横行レール24を有する。上側横行レール24は、上側基部9の底部に形成されており、上側レール部材11を上側基部9の短手方向にスライド可能に吊持するようになっている。横行レール24及び29には垂直方向(上下方向)の調整が可能なジャッキ(図示せず)が具備されており、ノズルプラグ装置13及び14の機軸とノズル3の軸が合致するように微調整ができるようになっている。
【0031】
上側レール部材11は、上側基部9と同方向に延びると共に上側基部9よりも長さを短く形成された矩形枠状のフレーム部25と、フレーム部25の下面に設けられ長手方向に延びる直行レール部26とからなる。直行レール部26は、後述する第一ノズルプラグ装置13を長手方向スライド可能に吊持するようになっている。また、上側レール部材11は、構造体7の一端側に偏って配置されており、一端をノズル3に近づけられるようになっている。
【0032】
図5に示すように、下側基部10は、構造体7と同方向に延びる矩形枠状に形成されている。具体的には、下側基部10は、上側基部9と同形状の基部本体部27と、基部本体部27に一側に張り出して設けられた基部拡張部28とからなり、四隅を吊り部材8で吊られるようになっている。吊り部材8は、油圧ジャッキからなる。基部本体部27の四隅には、上述と同様のストッパ21が設けられている。基部拡張部28は、先端側を窄めるように略台形状に形成されており、圧力容器1に干渉しないようになっている。また、下側基部10は、短手方向に延びる下側横行レール29を有する。下側横行レール29は、下側基部10の上部に基部本体部27と基部拡張部28とに跨って延びるように形成されており、下側レール部材12を基部本体部27上と基部拡張部28上との間でスライド可能に支持するようになっている。これにより、第一ノズルプラグ装置13が圧力容器1の中心部にあるとき後述する第二ノズルプラグ装置14を基部拡張部28上、すなわち、圧力容器1の外周部に退避させるように下側レール部材12を移動できるようになっている。
【0033】
下側レール部材12は、下側基部10と同方向に延びる矩形枠状のフレーム部30と、フレーム部30の上面に設けられ長手方向に延びる直行レール部31とからなる。直行レール部31は、後述する第二ノズルプラグ装置14を長手方向スライド可能に支持するようになっている。また特に、下側横行レール29は、基部拡張部28側から基部本体部27側に向かうにつれて構造体7の他端側に近接するように斜めに配置されており、下側レール部材12が基部本体部27上に移動したとき、下側レール部材12を構造体7の他端側に偏らせるように案内して下側レール部材12を施工対象のノズル3に近づけると共に、下側レール部材12が基部拡張部28上に移動したとき、下側レール部材12を構造体7の長手方向の中央近傍に移動させるようになっている。これにより、下側レール部材12や第二ノズルプラグ装置14が圧力容器1に当たるのを防ぐようになっている。
【0034】
図1及び図4に示すように、第一ノズルプラグ装置13は、上側レール部材11の直行レール部26に沿って走行する走行部32と、走行部32に縦軸回り回動可能に設けられると共に水平軸回り回転自在に設けられ水平軸に沿って延びる基端側軸部33と、基端側軸部33の先端に同軸回り回転可能(回転フリー)に設けられた先端側軸部34と、基端側軸部33の外周に同軸回り回転可能(回転フリー)に設けられ基端側軸部33がノズル3内に所定長さ挿入されたとき圧力容器1の側壁2の内面に当接してノズル3を塞ぐ第三シール部材35と、第三シール部材35より挿入方向側の基端側軸部33の外周に同軸回り回転可能(回転フリー)に設けられノズル3内に挿入されたときノズル3の内周面に当接してノズル3内を塞ぐ第二シール部材36と、第二シール部材36より挿入方向側の基端側軸部33に半径方向移動可能かつ軸方向移動可能に設けられたグラインダ37と、第二シール部材36より挿入方向側の基端側軸部33に半径方向移動可能かつ軸方向移動可能に設けられた溶接機38と、先端側軸部34に径方向外方に延びて設けられ先端側軸部34がノズル3又は配管4に挿入されるときノズル3又は配管4の内周面に当接して先端側軸部34をガイドするガイド輪39と、ガイド輪39より挿入方向側の先端側軸部34に設けられ配管4内に挿入されたとき配管4の内周面に当接して配管4内を塞ぐ第一シール部材40とを備える。第一ノズルプラグ装置13を挿入する配管4(ノズル3に接続する配管4)が万一曲がっていたとしても、第一ノズルプラグ装置13の挿入が可能な様に、先端側軸部34と後述する閉塞盤45はユニバーサルジョイント(図示せず)を介して繋がれている。
【0035】
走行部32は、矩形枠状に形成された走行部本体41と、走行部本体41に上下に延びて設けられた縦軸部42とを備える。基端側軸部33は縦軸部42の軸回りに回動自在に設けられている。第三シール部材35は、圧力容器1の側壁内面に沿って湾曲する板部43と、板部43の挿入方向側の面に環状に設けられたシール材44とからなる。第一シール部材40と第二シール部材36は、円盤状に形成された閉塞板45と、閉塞盤45の外周に設けられ拡縮自在なシールチューブ46とからなる。シールチューブ46には、空気又は水などの流体を供給する配管47が接続されている。
【0036】
図7に示すように、溶接機38は、溶接トーチ48と、溶接トーチ48の先端部に耐SCC性かつ耐腐食性の溶接ワイヤ49を供給する溶接ワイヤ供給部50と、溶接トーチ48で形成した肉盛溶接部51を磁気撹拌する磁気撹拌部52とを備えて構成されている。磁気撹拌部52は、溶接トーチ48の周囲に巻回された磁気コイルからなる。
【0037】
また、第三シール部材35と第二シール部材36には、第一シール部材40と第二シール部材36の間に形成される作業域53内に空気を供給する供給管(図示せず)が挿通されると共に、作業域53内から水を排出する排水管(図示せず)が挿通される。
【0038】
第二ノズルプラグ装置14は、第一ノズルプラグ装置13と同様の構成となっている。第二ノズルプラグ装置14の各部に第一ノズルプラグ装置13と同じ符号を付し説明を省略する。
【0039】
つぎに保全装置6を用いた溶接継手部5の保全方法と作用について述べる。
【0040】
溶接継手部5の保全作業を行う場合、原子炉を停止させたのち、圧力容器1の上蓋を外す。この後、図1、図2及び図8に示すように、圧力容器1に保全装置6を設置する。保全装置6の設置作業は、まず、圧力容器1の側壁2の上端に環状レール15を仮設したのち、環状レール15上に構造体7を設置することで行う。このとき、構造体7には2基のノズルプラグ装置13、14が予め吊持された状態にしておき、圧力容器1の上方から構造体7をクレーン等で吊り下ろす。また、構造体7をクレーン等で吊り下ろすとき、保全するノズル3の位置に第一ノズルプラグ装置13を合わせるようにする。第一ノズルプラグ装置13は圧力容器1の中心軸上を降下して炉水が入った圧力容器1内に導入され、第二ノズルプラグ装置14は圧力容器1の外周部上から降下して圧力容器1内に導入される。この後、吊り部材8たる油圧ジャッキを適宜伸縮させて第一ノズルプラグ装置13と第二ノズルプラグ装置14を保全すべきノズル3の高さ位置に移動させる。第一ノズルプラグ装置13は、保全すべきノズル3と同軸上となり、第二ノズルプラグ装置14は、保全すべきノズル3に対して水平方向にずれた状態でノズル3と同じ高さとなる。上側基部9と下側基部10のストッパ21をそれぞれ伸長させて圧力容器1の側壁2に当接させ、上側基部9と下側基部10を圧力容器1に固定する。また、構造体7の両側の圧力容器1の開口から圧力容器1内にノズル3の溶接継手部5の保全前の検査及び保全後の検査を行うための検査機器54を導入する。
【0041】
しかるのち、図9に示すように、第一ノズルプラグ装置13を上側レール部材11に沿って圧力容器1の径方向外方に移動させる。これにより、第一ノズルプラグ装置13が直線的にノズル3内に挿入され、これまで第一ノズルプラグ装置13があった位置にブランクスペースが形成される。
【0042】
この後、図10に示すように、下側レール部材12を下側横行レール29に沿って圧力容器1の中心側に移動させて第二ノズルプラグ装置14を保全すべきノズル3の軸上に位置させる。圧力容器1の中心部はブランクスペースとなっているため、第一ノズルプラグ装置13や他の機器が第二ノズルプラグ装置14に干渉することはない。
【0043】
しかるのち、図11に示すように、第二ノズルプラグ装置14を下側レール部材12に沿って圧力容器1の径方向外方(第一ノズルプラグ装置13とは反対方向)に移動させる。これにより、第二ノズルプラグ装置14が直線的にノズル3内に挿入される。
【0044】
第一ノズルプラグ装置13と第二ノズルプラグ装置14がそれぞれノズル3内に挿入されたら、それぞれのノズル3の溶接継手部5に対して同時に保全作業を行う。
【0045】
保全作業は、第一シール部材40と第二シール部材36の間の作業域53内を気体雰囲気としたのち、グラインダ37で開先加工をすると共に被溶接面を研磨して被溶接面に付着したゴミやクラッド等の異物を除去し、作業域53内の溶接継手部5の内周面に全周に亘って肉盛り溶接を施し、グラインダ37により肉盛溶接部51を適宜研磨することで行う。
【0046】
作業域53内を気体雰囲気とする作業は、第一シール部材40と第二シール部材36のシールチューブ46内に流体を供給して膨らませ、これによりノズル3と配管4を液密に塞いだ後、作業域53内に空気を供給すると共に作業域53内の水を排水することで行う。
【0047】
溶接作業は、基端側軸部33を所定の速さで回転させて溶接機38を周方向に移動させながら、溶接トーチ48の電極と被溶接面との間にアーク放電させると共に、溶接トーチ48に溶接ワイヤ49を供給して溶接ワイヤ49を溶融させながら磁気撹拌部52で肉盛溶接部51の溶湯を撹拌することで行う。すなわち、磁気攪拌溶接法(MSW: Magnetic Stir Welding)にて溶接する。磁気撹拌部52たる磁気コイルに交流電流を流すことによって発生する磁束と、アーク溶接することによって発生する電流によって、溶湯にローレンツ力が発生し、このローレンツ力によって溶湯が攪拌される。磁力により溶湯が攪拌されることにより、熱伝達性を高くでき、溶接ビード端部(溶湯)の濡れ性を改善でき、溶接入熱を上げることなく、融合不良の発生を低減することができる。同様に、溶接に悪影響を及ぼす化学成分、例えば硫黄等を多く含む異材溶接継手部5の母材においても、融合不良を低減することができ、このような母材を含む異材溶接継手部5においても、適用可能な溶接施工条件範囲を拡大することができる。また、ステンレス鋼とニッケル基合金等の組合せの異材溶接継手部5に対しても、High sulfur mitigation layerを採用することなく、残層と同様、初層にも直接Alloy52/152を溶接金属として盛ることができ、高温割れ等の溶接割れを防止することができる。MSWは、溶湯の濡れ性を改善するため、溶接ワイヤ49の供給量をTIG溶接より多くしてもビード断面形状をフラットにできる。このため、母材(溶接継手部5)の溶け込みを低減でき、希釈率(肉盛り量に対する溶け込みの深さの割合)を低減でき、溶接条件が同じ場合、TIG溶接(GTAW)に比べて、MSWを適用した場合の方がワイヤ送給量が多い領域でも融合不良が発生することなく溶接することができる。すなわち、MSWは、母材からの硫黄等の不純物の吸い上げを抑えて高温割れを抑えることができる。これより、単位時間当たりの溶接金属の溶着量を増やすことができるので、大口径配管においても比較的短期間に所期の肉盛り溶接施工をすることができる。
【0048】
また、第二ノズルプラグ装置14がノズル3内に挿入されたとき、第二ノズルプラグ装置14があった位置にブランクスペースが形成されるため、このブランクスペースに検査機器54を移動させ、既に保全作業が終わったノズル3と、次に保全作業を行うノズル3との検査とを行う。これにより、保全作業と検査作業とを同時に行うことができ、保全作業の更なる短縮に寄与できる。
【0049】
このようにして2つの溶接継手部5の保全作業と検査作業が終了したら、検査機器54を元の位置に退避させると共に、第一シール部材40と第二シール部材36のシールチューブ46を縮小させて第一シール部材40と第二シール部材36をノズル3又は配管4から離間させ、第二ノズルプラグ装置14を圧力容器1内に移動させてノズル3から抜いたのち、下側レール部材12を下側横行レール29に沿って基部拡張部28上に退避させ、第一ノズルプラグ装置13を圧力容器1内に移動させてノズル3から抜き、構造体7を圧力容器1の中心軸回りに所定角度回動させて第一ノズルプラグ装置13を次に保全すべきノズル3の位置に合わせる。以降、上述と同様の作業を繰り返して全てのノズル3の保全作業を行う。
【0050】
このように、圧力容器1の上方に圧力容器1の中心軸回りに回転可能な構造体7を配置し、構造体7に圧力容器1内に上下に離間して配置される一対の基部9、10を吊り部材8を介して吊設し、これら基部9、10に、ノズル3内に挿入されると共に溶接継手部5の内面に肉盛溶接するノズルプラグ装置13、14をレール部材11、12を介して径方向に移動可能に、かつ、基部9、10間に位置するように設けると共に、第一ノズルプラグ装置13が圧力容器1の中心部にあるとき第二ノズルプラグ装置14を圧力容器1の外周部に退避させるように、下側レール部材12が下側基部10に第一ノズルプラグ装置13の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられるものとしたため、圧力容器1内に圧力容器1の半径より長いノズルプラグ装置13、14を2基同時に導入できると共に、これらノズルプラグ装置13、14をそれぞれノズル3内に挿入でき、溶接継手部5の保全作業を2箇所同時に行うことができ、複数のノズル3の溶接継手部5を短期間で保全できる。
【0051】
下側レール部材12を支持する下側基部10は、第一ノズルプラグ装置13の移動方向に対して下側レール部材12を斜めにガイドする下側横行レール29を有するものとしたため、圧力容器1内で下側レール部材12を基部本体部27上と基部拡張部28上との間で移動させるとき第二ノズルプラグ装置14が第一ノズルプラグ装置13や圧力容器1に干渉するのを防ぐことができ、保全作業を安全かつ確実に行うことができる。
【0052】
構造体7が圧力容器1の側壁2の上端に圧力容器1の中心軸回りに回転自在に設けられるものとしたため、構造体7を安定して支持できると共に、容易に所望の姿勢にでき、ノズル3の位置に第一ノズルプラグ装置13を合わせる作業を確実かつ迅速に行うことができる。
【0053】
吊り部材8がジャッキからなるものとしたため、第一ノズルプラグ装置13及び第二ノズルプラグ装置14の高さ調節を容易にできる。
【0054】
基部9、10には、基部9、10を固定すべく圧力容器1の側壁2に当接するストッパ21が径方向外方に伸長可能に、かつ、周方向に複数設けられるものとしたため、圧力容器1の側壁2に基部9、10を簡単な構造で確実に固定することができ、ノズルプラグ装置13、14を安定して移動させることができる。
【0055】
また、圧力容器1の中心部に位置される第一ノズルプラグ装置13をノズル3に挿入したのち、下側レール部材12を圧力容器1の中心部に移動させて第二ノズルプラグ装置14を圧力容器1の中心部に移動させ、第二ノズルプラグ装置14を第一ノズルプラグ装置13が挿入されたノズル3とは別のノズル3に挿入し、これらノズルプラグ装置13、14で2つの溶接継手部5の内面に同時に肉盛溶接するものとしたため、溶接継手部5の保全作業を2箇所同時に行うことができ、複数のノズル3の溶接継手部5を短期間で保全できる。
【0056】
ノズルプラグ装置13、14の溶接機38を、溶接トーチ48と、溶接トーチ48に溶接ワイヤ49を供給する溶接ワイヤ供給部50と、溶接トーチ48で形成した肉盛溶接部51を磁気撹拌する磁気撹拌部52とを備えるものとし、溶接機38で肉盛溶接をするとき溶接トーチ48に溶接ワイヤ49を供給して溶接ワイヤ49を溶融させながら磁気撹拌部52で肉盛溶接部51の溶湯を撹拌するものとしたため、溶接ビード端部の濡れ性を改善でき、融合不良の発生を低減することができ、高温割れ等の溶接割れを防止することができる。また、単位時間当たりの溶接金属の溶着量を増やすことができ、母材からの硫黄等の不純物の吸い上げを抑えて高温割れを抑えることができ、大口径配管においても比較的短期間に所期の肉盛溶接をすることができる。
【0057】
なお、構造体7は、環状レール15上に走行可能に設けられるものとしたが、これに限るものではない、例えば天井クレーン等により圧力容器1の上方に圧力容器1の中心軸回りに回転可能に支持されるものであってもよい。
【0058】
上側基部9と下側基部10は、構造体7に別々の吊り部材8で吊持されるものとしたが、共通の吊り部材(図示せず)で吊持されるものとしてもよい。
【0059】
また、下側レール部材12が第一ノズルプラグ装置13の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、第一ノズルプラグ装置13が圧力容器1の中心部にあるとき第二ノズルプラグ装置14が圧力容器1の外周部に退避されるものとしたが、逆に上側レール部材11が第二ノズルプラグ装置14の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、第二ノズルプラグ装置14が圧力容器1の中心部にあるとき第一ノズルプラグ装置13が圧力容器1の外周部に退避されるものとしてもよい。この場合、上側基部9が下側基部10と同様に基部本体部27と基部拡張部28を有し、上側横行レール24が上側基部9の基部本体部27下と基部拡張部28下との間で上側レール部材11をスライド可能に吊持するものであるとよく、上側基部9と下側基部10が共通の吊り部材8で吊持されるものであるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す保全装置の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図3のレール部材に吊持されるノズルプラグ装置の平面図である。
【図5】図1のB−B線断面図である。
【図6】図5のレール部材上に支持されるノズルプラグ装置の平面図である。
【図7】溶接機の概略説明図である。
【図8】圧力容器に設置された保全装置の平面説明図である。
【図9】一方のノズルプラグ装置がノズル内に挿入された平面説明図である。
【図10】他方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部に移動された平面説明図である。
【図11】他方のノズルプラグ装置がノズル内に挿入された平面説明図である。
【図12】従来の保全装置の側断面図である。
【図13】従来のノズルプラグ装置の側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 圧力容器
2 側壁
3 ノズル
4 配管
5 溶接継手部
6 保全装置
7 構造体
8 吊り部材
9 上側基部
10 下側基部
11 上側レール部材
12 下側レール部材
13 第一ノズルプラグ装置
14 第二ノズルプラグ装置
21 ストッパ
29 下側横行レール
38 溶接機
48 溶接トーチ
49 溶接ワイヤ
50 溶接ワイヤ供給部
51 肉盛溶接部
52 磁気撹拌部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられたことを特徴とする溶接継手部の保全装置。
【請求項2】
上記他方のノズルプラグ装置をレール部材を介して支持する基部は、一方のノズルプラグ装置の移動方向に対して他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材を斜めにガイドする横行レールを有する請求項1記載の溶接継手部の保全装置。
【請求項3】
上記構造体が上記圧力容器の側壁の上端に圧力容器の中心軸回りに回転自在に設けられた請求項1又は2記載の溶接継手部の保全装置。
【請求項4】
上記吊り部材がジャッキからなる請求項1〜3のいずれかに記載の溶接継手部の保全装置。
【請求項5】
上記基部には、基部を固定すべく圧力容器の側壁に当接するストッパが径方向外方に伸長可能に、かつ、周方向に複数設けられた請求項1〜4のいずれかに記載の溶接継手部の保全装置。
【請求項6】
原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、圧力容器の中心部に位置される一方のノズルプラグ装置をノズルに挿入したのち、他方のレール部材を上記中心部に移動させて他方のノズルプラグ装置を上記中心部に移動させ、該ノズルプラグ装置を一方のノズルプラグ装置が挿入されたノズルとは別のノズルに挿入し、これらノズルプラグ装置で2つの溶接継手部の内面に同時に開先加工すると共に肉盛溶接することを特徴とする溶接継手部の保全方法。
【請求項7】
原子炉の圧力容器の円筒状の側壁に周方向に沿って複数設けられたノズルと該ノズルに溶接にて接続された配管との間に形成される溶接継手部を保全すべく溶接継手部の内面に肉盛溶接をする溶接継手部の保全装置において、上記圧力容器の上方に圧力容器の中心軸回りに回転可能な構造体を配置し、該構造体に上記圧力容器内に上下に離間して配置される一対の基部を吊り部材を介して吊設し、これら基部に、上記ノズル内に挿入されると共に上記溶接継手部の内面に開先加工し、かつ、肉盛溶接するノズルプラグ装置をレール部材を介して径方向に移動可能に、かつ、基部間に位置するように設けると共に、一方のノズルプラグ装置が圧力容器の中心部にあるとき他方のノズルプラグ装置を圧力容器の外周部に退避させるように、他方のノズルプラグ装置を支持するレール部材が上記基部に一方のノズルプラグ装置の移動方向と交差する方向に移動可能に設けられ、上記ノズルプラグ装置の溶接機を、溶接トーチと、該溶接トーチに溶接ワイヤを供給する溶接ワイヤ供給部と、上記溶接トーチで形成した肉盛溶接部を磁気撹拌する磁気撹拌部とを備えるものとし、上記溶接機で肉盛溶接をするとき上記溶接トーチに溶接ワイヤを供給して溶接ワイヤを溶融させながら磁気撹拌部で上記肉盛溶接部の溶湯を撹拌することを特徴とする溶接継手部の保全方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−125482(P2010−125482A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302513(P2008−302513)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】