説明

溶湯定量供給用保持炉

【課題】溶湯の円滑な流れの確保、清浄な適温の溶湯の確保を可能とする他、小型化及び保守点検の容易化を可能とした溶湯定量供給用保持炉を提供する。
【解決手段】溶湯補給口22を有する溶湯保持室11と出湯口35を有する出湯室13とが、溶湯保持室11に連通する開閉可能な給湯口25及び出湯室13に連通する開閉可能な排湯口26を底部に有する溶湯供給室12を間にして並設され、溶湯保持室11、出湯室13のそれぞれに浸漬チューブヒータ24,34を配するとともに、溶湯供給室12に室内を加減圧する加減圧用流路32を接続するとともに、室内の溶湯の高位湯面及び低位湯面を検出するレベルセンサ29を設け、出湯口35を上向きに開口させた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム或いはアルミニウム合金等の溶湯をダイカスト鋳造機等に定量供給する溶湯定量供給用保持炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造機に定量溶湯を供給するための配湯装置は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開第3192623号公報
【0003】
特許文献1には、底面に昇降する第1遮断弁により開閉される溶湯流出入口を有する貯湯炉体と、この貯湯炉体の側方に並設され、底面に溶湯流出入口を有し、加減圧可能に形成された供給室と、この供給室の側方に並設され、底面に昇降する第2遮断弁により開閉される溶湯流出入口を有するとともに、側部に鋳造機に定量の溶湯を供給する配湯口を有する定湯炉体と、前記貯湯炉体、供給室及び定湯炉体、それぞれの前記溶湯流出入口を互いに連通させる連通パイプとを備えた配湯装置が開示されている。
【0004】
そして、溶湯を前記貯湯炉体から前記定湯炉体を供給する場合、まず前記貯湯炉体の溶湯流出入口を開、前記定湯炉体の溶湯流出入口を閉として、貯湯炉体から前記連通パイプを介して前記供給室に溶湯が供給される。続いて、前記貯湯炉体の溶湯流出入口を閉、前記定湯炉体の溶湯流出入口を開として、前記供給室内を加圧することにより前記供給室から前記連通パイプを介して前記定湯炉体に溶湯が供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の配湯装置の場合、前記貯湯炉体、供給室及び定湯炉体、それぞれの底部を互いに連通させる前記連通パイプが配設され、この連通パイプ内に溶湯中の酸化物等の不純物が堆積し易い構造になっている。このため、長期操業の間に、前記連通パイプが堆積した不純物により閉塞状態になり、溶湯の円滑な流れが阻害される可能性がある他、この不純物が溶湯に随伴して、前記定湯炉体に流入し、前記鋳造機に供給するための清浄な溶湯の確保ができないという問題がある。また、この配湯装置の場合、前記連通パイプ及び前記供給室での溶湯温度の低下は不可避であり、前記鋳造機に一定温度の溶湯を供給しようとするのであれば、前記定湯炉体での溶湯温度管理が難しくなるという問題がある。さらに、前記定湯炉体内の湯面上方には、空間が形成される必要があり、この空間が溶湯の酸化を招来するという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる従来の問題をなくすことを課題としてなされたもので、溶湯の円滑な流れの確保、清浄な適温の溶湯の確保を可能とする他、小型化及び保守点検の容易化を可能とした溶湯定量供給用保持炉を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1発明は、溶湯補給口を有する溶湯保持室と出湯口を有する出湯室とが、前記溶湯保持室に連通する開閉可能な給湯口及び前記出湯室に連通する開閉可能な排湯口を底部に有する溶湯供給室を間にして並設され、前記溶湯保持室、出湯室のそれぞれに浸漬チューブヒータを配するとともに、前記溶湯供給室に室内を加減圧する加減圧用流路を接続するとともに、室内の溶湯の高位湯面及び低位湯面を検出するレベルセンサを設け、前記出湯口を上向きに開口させた構成とした。
【0008】
第2発明は、第1発明の構成に加えて、前記溶湯供給室に浸漬チューブヒータを配した構成とした。
【発明の効果】
【0009】
第1発明に係る溶湯定量供給用保持炉によれば、溶湯の円滑な流れの確保、清浄な溶湯の確保を可能とする他、小型化及び保守点検の容易化が可能になる等の効果を奏する。
【0010】
また、第2発明に係る溶湯定量供給用保持炉によれば、第1発明による効果に加えて、溶湯供給室での溶湯温度の低下が回避されるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉1を示し、この溶湯定量供給用保持炉1は、互いに並列配置された溶湯保持室11と溶湯供給室12と出湯室13とを備えている。
【0012】
溶湯保持室11には、上部に開閉蓋21により開閉される溶湯補給口22が設けられ、ここから供給される溶湯Mの湯面レベルがレベルセンサ23により検出され、溶湯温度は浸漬チューブヒータ24により所望温度に保持可能となっている。
【0013】
溶湯供給室12は、溶湯保持室11の底部に連通する給湯口25と出湯室13の底部に連通する排湯口26とを底部に有し、給湯口25は溶湯保持室11の底面よりも上方に、排湯口26は出湯室13の底面よりも上方に位置している。そして、給湯口25は昇降可能な第1遮断弁27により開閉され、排湯口26は昇降可能な第2遮断弁28により開閉される。また、溶湯保持室11から溶湯供給室12に供給される溶湯Mの湯面レベルがレベルセンサ29により検出され、溶湯温度は浸漬チューブヒータ31により所望温度に保持可能となっている。さらに、図示しない加減圧装置に接続された加減圧用流路32が溶湯供給室12の上部に連通させて設けられており、溶湯供給室12内の加圧或いは減圧が可能となっている。
【0014】
出湯室13は、溶湯保持室11とは隔壁33により隔てられており、溶湯供給室12を介してのみ連通可能となっている。また、出湯室13は排湯口26の下方の底面から離れるにつれて高くなるように傾斜し、傾斜部内には、溶湯を所望温度に保つための浸漬チューブヒータ34が設けられ、最高位置にある端部には上向きに開口した出湯口35が形成されている。さらに、出湯口35の上部には金型36が固定され、金型36内のキャビティ37は出湯口35に連通している。
【0015】
次に、前記構成からなる溶湯定量供給用保持炉1の操業方法について説明する。
まず始めに、開閉蓋21が回転させられて溶湯補給口22が開かれ、この溶湯補給口22から溶湯Mが供給され、給湯口25、排湯口26の開閉、溶湯供給室12内の加減圧等が行われ、溶湯保持室11内において溶湯Mが上限レベルUに、溶湯供給室12において溶湯Mが高位湯面レベルである吸引終了レベルSに、そして出湯室13において溶湯Mが定湯面レベルCのそれぞれに保持された初期状態にされ、給湯口25、排湯口26及び溶湯補給口22が閉じられる。
【0016】
出湯口35の上方に図示するように金型36が固定された状態下で、第2遮断弁28の上昇により排湯口26が開状態にされるとともに、加減圧用流路32からの加圧気体により溶湯供給室12内が加圧される。この結果、溶湯供給室12内の溶湯Mが排湯口26から出湯室13内に流入し、浸漬チューブヒータ34の周囲の湯道を経て出湯口35からキャビティ37内に充填が開始される。
【0017】
溶湯供給室12内の湯面レベルが下降して、湯面が下位湯面レベルである加圧終了レベルPに達したのをレベルセンサ29により検知され、キャビティ37内への溶湯の充填が完了する。さらに、溶湯の充填状態が所定時間維持された後、加減圧用流路32からの加圧気体の供給が停止され、溶湯供給室12内の圧力が大気圧まで下げられると第2遮断弁28の下降により排湯口26が閉じられる。そして、金型36が開かれて鋳造品が取り出された後、再度金型36が閉じられ、一体化される。
【0018】
また、排湯口26が閉じられると、第1遮断弁27が上昇させられて給湯口25が開かれ、溶湯供給室12と溶湯保持室11とが連通状態になるとともに、加減圧用流路32からの真空排気が開始され、溶湯供給室12内が減圧される。この結果、溶湯保持室11から給湯口25を介して溶湯供給室12への溶湯の流入が始まる。
【0019】
溶湯供給室12内の湯面レベルが上昇して、湯面が吸引終了レベルSに達したのをレベルセンサ29により検知されると、第1遮断弁27が下降させられて給湯口25が閉じられるとともに、加減圧用流路32からの真空排気も停止させられる。
【0020】
これにより1ショットが完了し、以後、前記操作が繰り返される。一方、溶湯保持室11内の湯面が下降して下限レベルLに達したのをレベルセンサ23により検知されると、図示しない手段により作業者に知らされ、湯面が上限レベルUに達したのをレベルセンサ23により検知されるまで溶湯補給口22から溶湯が補給される。
【0021】
このように、この溶湯定量供給用保持炉1では、溶湯供給室12の給湯口25が溶湯保持室11の底面より高く形成され、溶湯保持室11と出湯室13とは隔壁33により隔てられ、溶湯供給室12の給湯口25と排湯口26とを介してのみ連通するようになっており、溶湯保持室11の底部に堆積する不純物の出湯室13内への流入が阻止され、不純物による流路閉塞もなく円滑な溶湯の流れが確保されるようになっている。
【0022】
さらに、この溶湯定量供給用保持炉1では、出湯室13を排湯口26から出湯口35に向けて上向きに傾斜させることにより、前記不純物のキャビティ37内への流入阻止に万全を期し、キャビティ37内の溶湯を常時清浄状態に維持して、その酸化を防止するようにしてある。また、溶湯保持室11、溶湯供給室12、出湯室13のそれぞれは、壁1つ隔てて並設され、中間介在物なしで互いに連通可能に形成されているため、溶湯定量供給用保持炉1の小型化、保守点検の容易化が可能となっている。さらに、溶湯供給室12内に浸漬チューブヒータ24を配置することにより、溶湯供給室12内での溶湯温度の精度の向上が可能となっている。
【0023】
図2は、本発明の第2実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉2を示し、この溶湯定量供給用保持炉2において図1に示す溶湯定量供給用保持炉1と互いに共通する部分については同一番号を付して説明を省略する。
【0024】
溶湯定量供給用保持炉2では、出湯口35の上方に金型36に代えて上部給湯タイプの定量供給手段41が設けられている。この定量供給手段41内には出湯口35に連通するくの字形に屈曲した溶湯流路42を形成するノズルユニット43を有し、このノズルユニット43の先端部に図示しない鋳造機が接続される。また、定量供給手段41にはレベルセンサ44が設けられ、溶湯流路42内において溶湯Mの定湯面レベルCの検出が可能となっている。さらに、この溶湯定量供給用保持炉2については、溶湯供給室12内の溶湯レベルが下降して湯面が加圧終了レベルPに達したのをレベルセンサ29により検知されると、第2遮断弁28が下降させられて、排湯口26が閉じられるとともに、加圧用流路32からの加圧気体の供給も停止する点を除き、前述した操業方法が適用される。
【0025】
図3は、本発明の第3実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉3を示し、この溶湯定量供給用保持炉3において図1に示す溶湯定量供給用保持炉1と互いに共通する部分については同一番号を付して説明を省略する。
【0026】
溶湯定量供給用保持炉3では、出湯口35の上方に金型36に代えて下部給湯タイプの定量供給手段51が設けられている。この定量供給手段51は図3に表れている円筒形のスリーブ52の紙面奥方向において図示しない鋳造機に接続され、紙面手前方向においてスリーブ52内を進退する図示しない射出プランジャを有する射出シリンダに接続されている。そして、出湯口35からスリーブ52内に溶湯が供給されると、前記射出シリンダが作動し、前記射出プランジャが前進し、スリーブ52内の溶湯を前記鋳造機に向けて押し出すことにより鋳造のキャビティ内に溶湯の充填がなされ、その後、前記射出プランジャは元の位置まで後退する。また、この溶湯定量供給用保持炉2についても、溶湯供給室12内の溶湯レベルが下降して湯面が加圧終了レベルPに達したのをレベルセンサ29により検知されると、第2遮断弁28が下降させられて、排湯口26が閉じられるとともに、加圧用流路32からの加圧気体の供給も停止する点を除き、前述した操業方法が適用される。
【0027】
前記溶湯定量供給用保持炉2及び3においても、溶湯定量供給用保持炉1の場合と同様に、溶湯保持室11の底部に堆積する不純物の出湯室13内への流入の阻止、円滑な溶湯の流れの確保、さらに前記不純物のキャビティ37内への流入阻止によるキャビティ37内の溶湯の清浄状態の維持、その酸化防止等が可能となっている。また、前記同様、炉全体の小型化、保守点検の容易化が可能となり、溶湯供給室12内に浸漬チューブヒータ24を配置することにより、溶湯供給室12内での溶湯温度の精度の向上が可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る溶湯定量供給用保持炉は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金鋳物の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る溶湯定量供給用保持炉の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1〜3 溶湯定量供給用保持炉
11 溶湯保持室
12 溶湯供給室
13 出湯室
21 開閉蓋
22 溶湯補給口
23 レベルセンサ
24 浸漬チューブヒータ
25 給湯口
26 排湯口
27 第1遮断弁
28 第2遮断弁
29 レベルセンサ
31 浸漬チューブヒータ
32 加減圧用流路
33 隔壁
34 浸漬チューブヒータ
35 出湯口
36 金型
37 キャビティ
41 定量供給手段
42 溶湯流路
43 ノズルユニット
44 レベルセンサ
51 定量供給手段
52 スリーブ
M 溶湯
U 上限レベル
L 下限レベル
S 吸引終了レベル
P 加圧終了レベル
C 定湯面レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯補給口を有する溶湯保持室と出湯口を有する出湯室とが、前記溶湯保持室に連通する開閉可能な給湯口及び前記出湯室に連通する開閉可能な排湯口を底部に有する溶湯供給室を間にして並設され、前記溶湯保持室、出湯室のそれぞれに浸漬チューブヒータを配するとともに、前記溶湯供給室に室内を加減圧する加減圧用流路を接続するとともに、室内の溶湯の高位湯面及び低位湯面を検出するレベルセンサを設け、前記出湯口を上向きに開口させたことを特徴とする溶湯定量供給用保持炉。
【請求項2】
前記溶湯供給室に浸漬チューブヒータを配したことを特徴とする請求項1に記載の溶湯定量供給用保持炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−297422(P2006−297422A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119883(P2005−119883)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(391003727)株式会社トウネツ (12)