説明

漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュール

【課題】漏れ光量の調節が可能であり且つ光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程を必要としない漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールを提供する。
【解決手段】接合点(1)で、コア部を一部ずらせて2本の光ファイバ(11,12)を接合し、その接合点(1)からの漏れ光を光センサ(6)で測定する。
【効果】2本の光ファイバ(11,12)を接合するときのコア部のずらせ方を小さくすれば漏れ光量を少なくでき、大きくすれば漏れ光量を多くできる。光ファイバ(11,12)の端面を凸球面形状に研磨する工程は必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールに関し、さらに詳しくは、漏れ光量の調節が可能であり且つ光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程を必要としない漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本の光ファイバの端面を接合し、その接合点からの漏れ光を測定する光信号授受装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
他方、2本の光ファイバの凸球面形状の端面を突き合わせて、その突合せ点からの漏れ光を測定する光モニタ方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−224304号公報
【特許文献2】特開2006−258554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の光信号授受装置では、接合する2本の光ファイバの特性により漏れ光量が決まってしまい、調整できない問題点があった。
他方、上記従来の光モニタ方法では、2本の光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程が必要になる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、漏れ光量の調節が可能であり且つ光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程を必要としない漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、コア部を一部ずらせて2本の光ファイバを接合し、その接合点からの漏れ光を測定することを特徴とする漏れ光測定方法を提供する。
上記第1の観点による漏れ光測定方法では、2本の光ファイバを接合するときのコア部のずらせ方を変えることにより漏れ光量の調節が可能になる。すなわち、小さくずらせて接合すれば漏れ光量を少なくでき、大きくずらせて接合すれば漏れ光量を多くできる。また、光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程も必要としない。
【0006】
第2の観点では、本発明は、コア部を一部ずらせて2本の光ファイバを接合した接合光ファイバと、前記接合光ファイバの接合点を含む領域を収容すると共に前記接合点からの漏れ光を開口から導出する光ファイバ収容溝を有するホルダとを具備したことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第2の観点による漏れ光測定用モジュールでは、2本の光ファイバを接合するときのコア部のずらせ方を変えることにより漏れ光量の調節が可能になる。すなわち、小さくずらせて接合すれば漏れ光量を少なくでき、大きくずらせて接合すれば漏れ光量を多くできる。また、光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程も必要としない。さらに、ホルダにより外力から光ファイバを保護することが出来る。また、ホルダを位置基準とすることにより、光センサを位置決めしやすくなる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、前記光ファイバ収容溝の表面色が白色であることを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第3の観点による漏れ光測定用モジュールでは、光ファイバからの漏れ光が光ファイバ収容溝の表面で反射しやすくなり、光センサでの受光量を増やすことが出来る。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第2または第3の観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、前記ホルダが、10×10-6以下の膨張係数を持つセラミックまたは−10×10-6以上−5×10-6以下の膨張係数を持つセラミックであり、接合点を含む接合点の近傍部分を挟む両側部分では光ファイバが皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも接合点を挟む2カ所を前記光ファイバ収容溝にシリコンゴムで固定したことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第4の観点による漏れ光測定用モジュールでは、接合点を挟む少なくとも2カ所で光ファイバをホルダに固定するので、光ファイバを安定に保持できる。そして、ホルダに低膨張またはマイナス膨張のセラミックを用いると共に弾性のある光ファイバの皮膜を弾性のあるシリコンゴムで固定するから、光ファイバの膨張量とホルダの膨張量の差が光ファイバにストレスを与えることを抑制できる。
【0009】
第5の観点では、本発明は、前記第2から第4のいずれかの観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、接合点を含む接合点の近傍部分では光ファイバのクラッド部が露出し、前記露出したクラッド部の少なくとも接合点を挟む2カ所を前記光ファイバ収容溝に50×10-6以下の膨張係数を持つ接着剤で固定したことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第5の観点による漏れ光測定用モジュールでは、接合点を含む接合点の近傍部分の少なくとも接合点を挟む2カ所をホルダに固定するので、接合点近傍部分を安定に保持できる。そして、低膨張の接着剤で固定するから、光ファイバの膨張量と接着剤の膨張量の差が光ファイバにストレスを与えることを抑制できる。
【0010】
第6の観点では、本発明は、前記第5の観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、前記接着剤が、n=1.5以上の屈折率を持つことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第6の観点による漏れ光測定用モジュールでは、クラッド部の屈折率よりも接着剤の屈折率の方が大きいから、漏れ光がクラッド部から接着剤へと出易くなり、接着剤の付近で漏れ光を測定可能になる。
【0011】
第7の観点では、本発明は、前記第2から第6のいずれかの観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、接合点を含む接合点の近傍部分を収容する光ファイバ収容溝に、10×10-6以下の膨張係数を持ち且つヤング率0.04GPa以下のシリコーン樹脂を充填したことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第7の観点による漏れ光測定用モジュールでは、光ファイバ収容溝に10×10-6以下の膨張係数を持ち且つヤング率0.04GPa以下のシリコーン樹脂を充填したので、光ファイバの膨張量とシリコーン樹脂の膨張量の差が光ファイバにストレスを与えることを抑制した上で、光ファイバとホルダの温度差を小さく出来る。光ファイバとホルダの温度差が小さければ、温度差が大きい場合よりも、レーザ発光強度制御が容易になる。
【0012】
第8の観点では、本発明は、前記第7の観点による漏れ光測定用モジュールにおいて、前記シリコーン樹脂が、n=1.5以上の屈折率を持つことを特徴とする漏れ光測定用モジュールを提供する。
上記第8の観点による漏れ光測定用モジュールでは、クラッド部の屈折率よりもシリコーン樹脂の屈折率の方が大きいから、漏れ光がクラッド部からシリコーン樹脂へと出易くなり、漏れ光を測定し易くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールによれば、漏れ光量の調節が可能であり且つ光ファイバの端面を凸球面形状に研磨する工程を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る漏れ光測定用モジュールを示す正面図である。
【図2】実施例1に係る漏れ光測定用モジュールを示す左側面図である。
【図3】実施例1に係る漏れ光測定用モジュールの接合点を示す断面図である。
【図4】実施例2に係る漏れ光測定装置を示す断面図である。
【図5】図4のA−A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る漏れ光測定用モジュール100を示す正面図である。図2は、同左側面図である。
【0017】
この漏れ光測定用モジュール100は、コア部11c,12cを一部ずらせて2本の光ファイバ11,12を接合した接合光ファイバ10と、接合光ファイバ10の接合点1を含む領域2,31,32を収容すると共に接合点1からの漏れ光を開口から導出する光ファイバ収容溝4を有するホルダ5とを具備してなる。
【0018】
接合点1の近傍部分2を挟む両側部分31,32では、光ファイバ11,12が皮膜11e,12eを残している。そして、皮膜11e,12eは、シリコンゴム41,42で、接合点1を挟む2カ所で光ファイバ収容溝4に固定されている。
【0019】
また、接合点1の近傍部分2では、光ファイバ11,12のクラッド部11d,12dが露出している。そして、露出したクラッド部11d,12dの少なくとも接合点1を挟む2カ所は、50×10-6以下の膨張係数を持つと共にn=1.5以上の屈折率を持つUV硬化型接着剤51,52で、光ファイバ収容溝4に固定されている。
【0020】
接合点1の近傍部分2を収容する光ファイバ収容溝4には、10×10-6以下の膨張係数を持つと共にn=1.5以上の屈折率を持ち且つヤング率0.04GPa以下のシリコーン樹脂3が充填されている。
【0021】
ホルダ5は、10×10-6以下の膨張係数を持つセラミックまたは−10×10-6以上−5×10-6以下の膨張係数を持つセラミック製であり、白色である。
【0022】
図3は、接合光ファイバ10の接合点1を示す要部断面図である。
光ファイバ11のコア部11cと光ファイバ11のコア部12cとが、一部をずらせて、接合されている。
【0023】
実施例1の漏れ光測定用モジュール100によれば次の効果が得られる。
(1)2本の光ファイバ11,12を接合するときのコア部11c,12cのずらせ方を小さくすれば漏れ光量を少なくでき、大きくすれば漏れ光量を多くできる。
(2)ホルダ5により外力から接合光ファイバ10を保護することが出来る。また、ホルダ5を位置基準とすることにより、光センサを位置決めしやすくなる。
(3)接合光ファイバ10からの漏れ光が光ファイバ収容溝4の色色の表面で反射しやすくなり、光センサでの受光量を増やすことが出来る。
(4)ホルダ5として低膨張またはマイナス膨張のセラミックを用いると共に弾性のある皮膜11e,12eを弾性のあるシリコンゴム41,42で固定するから、安定に接合光ファイバ10を保持できると共に、接合光ファイバ10の膨張量とホルダ5の膨張量の差が接合光ファイバ10にストレスを与えることを抑制できる。
【0024】
(5)露出したクラッド部11d,12dの2カ所を低膨張のUV硬化型接着剤51,52で固定するから、安定に接合光ファイバ10を保持できると共に、接合光ファイバ10の膨張量とUV硬化型接着剤51,52の膨張量の差が接合光ファイバ10にストレスを与えることを抑制できる。また、クラッド部11d,12dよりもUV硬化型接着剤51,52の屈折率が大きいから、漏れ光がクラッド部11d,12dからUV硬化型接着剤51,52へと出易くなり、UV硬化型接着剤51,52の付近で漏れ光を測定可能になる。
なお、接合光ファイバ10を数十グラムで引っ張った状態でUV硬化型接着剤51,52を硬化させると、接合点1の近傍部分2の弛みがなくなり、漏れ光の安定性を向上することが出来る。
【0025】
(6)接合点1の近傍部分2を収容する光ファイバ収容溝4に低膨張かつ柔軟性があり更に屈折率が大きいシリコーン樹脂3を充填したから、安定に接合点1の近傍部分2を保持できる。また、接合光ファイバ10の膨張量とシリコーン樹脂3の膨張量の差が接合光ファイバ10にストレスを与えることを抑制できる。また、接合光ファイバ10とホルダ5の温度差を小さく出来るので、温度差が大きい場合よりも、レーザ発光強度制御が容易になる。さらに、漏れ光がクラッド部11d,12dからシリコーン樹脂3へと出易くなり、シリコーン樹脂3を介して漏れ光を測定可能になる。
【0026】
−実施例2−
図4は、実施例2に係る漏れ光測定装置200を示す断面図である。図5は、図4のA−A’断面図である。
【0027】
この漏れ光測定装置200は、実施例1の漏れ光測定用モジュール100と、ホルダ5の光ファイバ収容溝4が在る面に装着されるベース7と、ベース7に埋設された光センサ6とを具備してなる。
【0028】
光ファイバ11側から光ファイバ12側へ青色レーザ光Lを通すと、接合点1から漏れ光が生じ、接続点1より光ファイバ12側へ数mmの付近でシリコーン樹脂3が光る。また、UV硬化型接着剤52も光る。それを光センサ6で検出し、青色レーザ光Lの発光強度を制御する。
【0029】
実施例2の漏れ光測定装置200によれば、適正な漏れ光量に基づいてフィードバック制御できるため、信頼性を向上できる。また、接合光ファイバ10とホルダ5の温度差を小さく出来るので、制御が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の漏れ光測定方法および漏れ光測定用モジュールは、レーザ光源の制御に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 接合点
2 接合点の近傍部分
3 シリコーン樹脂
4 光ファイバ収容溝
5 ホルダ
10 接合光ファイバ
11,12 光ファイバ
11c,12c コア部
11d,12d クラッド部
11e,12e 皮膜
31,32 接合点の近傍部分を挟む両側部分
41,42 シリコンゴム
51,52 UV硬化型接着剤
100 漏れ光測定用モジュール
200 漏れ光測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部を一部ずらせて2本の光ファイバを接合し、その接合点からの漏れ光を測定することを特徴とする漏れ光測定方法。
【請求項2】
コア部を一部ずらせて2本の光ファイバを接合した接合光ファイバと、前記接合光ファイバの接合点を含む領域を収容すると共に前記接合点からの漏れ光を開口から導出する光ファイバ収容溝を有するホルダとを具備したことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、前記光ファイバ収容溝の表面色が白色であることを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、前記ホルダが、10×10-6以下の膨張係数を持つセラミックまたは−10×10-6以上−5×10-6以下の膨張係数を持つセラミックであり、接合点を含む接合点の近傍部分を挟む両側部分では光ファイバが皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも接合点を挟む2カ所を前記光ファイバ収容溝にシリコンゴムで固定したことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、接合点を含む接合点の近傍部分では光ファイバのクラッド部が露出し、前記露出したクラッド部の少なくとも接合点を挟む2カ所を前記光ファイバ収容溝に50×10-6以下の膨張係数を持つ接着剤で固定したことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、前記接着剤が、n=1.5以上の屈折率を持つことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれかに記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、接合点を含む接合点の近傍部分を収容する光ファイバ収容溝に、10×10-6以下の膨張係数を持ち且つヤング率0.04GPa以下のシリコーン樹脂を充填したことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の漏れ光測定用モジュールにおいて、前記シリコーン樹脂が、n=1.5以上の屈折率を持つことを特徴とする漏れ光測定用モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159971(P2010−159971A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−493(P2009−493)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】