説明

漏斗状浸水式冷水槽をもつ雪氷冷房装置

【課題】 従来、浸水式雪氷冷房装置では、循環水が雪氷塊を避けて迂回したりするなど、計画していない水路が形成され、熱交換効率を低下させてしまう課題があった。また、循環水が冷水槽内上流側で水温が高いため、上流側の雪氷塊のみが先行して融解し、冷水槽の平面規模の割に、高い冷熱負荷への対応ができないという課題があった。
【解決手段】 雪氷塊に対する迂回路が形成されないように、雪氷塊下部に漏斗形状(すり鉢形状)の浸水式冷水槽を設け、集水枡を雪氷塊中央下部に設置する。これにより、循環水は、必ず雪氷塊の下を、環水口から集水枡までの距離分だけ通過し、循環水と雪氷塊の熱交換を促進する。また、冷水槽形状を漏斗状とすることで、循環水の流水面速度は、冷水槽中間部で最小となるため、雪塊と水との接触時間が長くなり、雪氷塊下の広範囲において熱交換を促進する。本発明は、従来技術に対し、冷水槽の形状の工夫のみで効率向上を図ることが可能であり、低コストで実現可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪氷冷房における雪氷からの冷熱の回収方法のうち、漏斗形状(すり鉢形状)の浸水式冷水槽を利用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雪氷冷房は、季節蓄熱の一種で、冬季に自然により形成された雪氷を夏季まで保存し、夏季に冷熱利用を行う。
【0003】
雪氷冷房は、熱媒体の種類により、空気を媒体とする全空気方式と、水などの液体を媒体とする冷水循環方式がある。
【0004】
冷水循環式雪氷冷房のうち、冷熱の回収方法により、雪氷塊に直接循環水を散布する散水式、雪氷塊下に循環水を流す流水式、雪氷塊を冷水槽に浸した部分で熱交換を行う浸水式などがあり、3者のうち、浸水式が最も熱交換効率が良い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸水式雪氷冷房装置では、循環水が雪氷塊を避けて抵抗の少ない部分に迂回したりするなど、計画していない水路が形成され、熱交換効率を低下させてしまう課題があった。
【0006】
従来型の浸水式雪氷冷房装置では、循環水が冷水槽内上流側で水温が高いため、上流側の雪氷塊のみが先行して融解し、冷水槽の平面規模の割に、高い冷熱負荷への対応ができない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
雪氷塊に対する迂回路が形成されないように、雪氷塊下部に漏斗形状(すり鉢形状)の浸水式冷水槽を設け、集水枡を雪氷塊中央下部に設置する。
【発明の効果】
【0008】
循環水は、必ず雪氷塊の下を、環水口から集水枡までの距離分だけ通過し、循環水と雪氷塊の熱交換を促進する。
【0009】
漏斗状の冷水槽では、中央の集水枡に近づくにつれ、水深が増す一方、流水幅が小さくなることから、循環水の流水方向に垂直な冷水槽の断面積は、冷水槽中間部分で最大となるため、冷水槽中間部分で流水の面速度が最小となり、雪塊と水との接触時間が長くなり、雪氷塊下の広範囲において熱交換を促進する。
【0010】
本発明は、従来技術に対し、冷水槽の形状の工夫のみで効率向上を図ることが可能であり、低コストで実現可能である。
【発明の実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すように、冷水槽8に直接雪2を入れ、冷房運用時には、雪塊下部が水に浸る程度の水深を保持しながら、運用を行う。冷水槽中央下部に設けられた集水枡10から採水枡11へと送られた冷水は、水中ポンプで熱交換機12へと送られ、2次側の回路から熱を奪って、再び冷水槽8上流側の環水口9より、冷水槽8内へ放流される。環水口9から戻された水は、集水枡10に至るまで雪塊の下や隙間を流れていくが、この際に雪2に熱を奪われ冷却される。機械室3と冷熱需要先4を結ぶ2次側の回路5は、ポンプ13動力の低減のために密閉回路とする。
【0012】
環水口9は、雪氷塊下部に均等にリターン水が供給されるように、ループ配管とする。
【0013】
冷水槽8では、冷熱利用で融解した雪量と、侵入雨水、および外気による結露分の水量が、増していくが、これについては、排水調整槽6に一度受けて、水温や水質などの調整を行い排水する。
【0014】
貯雪の方法は、雪山以外でも屋内型の貯雪倉庫でも良い。
【0015】
雪は、人工降雪、天然氷、人工氷でも構わない。
【実施例1】
【0016】
屋外の除雪場所の下部に、貯水槽を設置し、夏季に雪から冷熱を回収し、建物などの冷房に利用する。
【実施例2】
【0017】
敷地内に本発明装置を擁する貯雪倉庫を建て、駐車場などの除雪雪を保存し、夏季に雪から冷熱を回収し、冷房や冷蔵の熱源に利用する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
低コストで、高出力の冷熱が安定的に確保できるため、冷熱需要の多い中大規模施設での導入が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明のシステム図である。
【符号の説明】
【0020】
1 雪山
2 雪
3 機械室
4 冷熱需要先
5 地中送水管
6 排水調整槽
7 断熱材
8 冷水槽
9 環水口
10 集水枡
11 採水枡
12 熱交換器
13 循環ポンプ
14 水温調整回路
15 汚泥フィルター
16 オーバーフロー水
17 沈砂槽
18 フィルター
19 排水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外に貯蔵する堆積雪氷下部に漏斗状(すり鉢状)の冷水槽を設置し、雪山下部の浸水部分において、雪氷と水との熱交換を促し、雪氷塊より冷熱を得て、冷熱需要先へ供給する。冷水槽周囲より冷水槽に戻された循環水が、雪氷下部の冷水槽内浸水部分を通過する際に、雪氷に熱を奪われ冷却され、冷水槽中央部の集水枡により集められた冷却水を冷房や冷蔵などの冷熱源として供給する装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−197028(P2010−197028A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66968(P2009−66968)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(301037512)伊藤組土建株式会社 (4)