説明

潜像計測装置、及び該潜像計測装置を有する画像形成装置

【課題】短時間で、感光体の劣化を正確に把握でき、かつ潜像の形状を予測できをる潜像計測装置の提供すること。
【解決手段】潜像書込装置により形成した像担持体の潜像に、露光とは別の光源からの検知光を照射し、像担持体の光減衰による表面電荷量の変化を誘導電流として検出する潜像測定方法を用いた潜像計測装置であって、前記検知光の照射が一箇所のみであることを特徴とする潜像計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した感光体の微少領域の電位を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザプリンタで用いられる電子写真方式は、感光体の表面を均一に帯電する工程と、帯電した感光体表面を露光して感光体表面に静電潜像を形成する工程と、形成された静電潜像を現像剤中のトナーで現像する工程と、トナー像を紙、あるいは中間転写ベルトに転写する工程と、転写されたトナー像を定着する工程と、転写後の感光体上の残トナーを除去するクリーニンング工程と、感光体上の静電潜像を除去する除電工程とを有する。
最終画像のアウトプット品質には各工程が作用しているため、最終画像から露光工程での潜像品質を知ることは従来容易ではなく、一定の帯電条件に対する帯電電位と一定の露光条件に対する露光後電位を測定し、これら特性値が温度、湿度の環境下でどのように変わるか、あるいは帯電、露光の繰り返しサイクルの後、どのように変わるかをみて、形成される潜像の品質を推測するしかなかった。
【0003】
しかしながら、この方法では潜像の劣化である、いわゆる地汚れと言われる背景の汚れ、画像ボケ(あるいは画像流れ)という異常画像の評価は、表面電位計が感光体上の広い領域(感光体表面と表面電位計プローブの距離2mmに対し10〜15mmφの領域)の帯電電位を平均的に測定するため微少領域の潜像の異常を知ることはできなかった。高画質化の流れのなかで、微小な領域の静電潜像を直接測定し、潜像の状態を評価する方法が求められている。
【0004】
光減衰による変位電流方式(誘導電流方式):帯電した感光体表面に極小の光スポットを照射し、光減衰による表面電荷の消失によって、感光体表面に近接して設置された電極に誘導される電荷量(誘導電流)を測定し、表面電位を知る方法が知られている。
【0005】
非特許文献1のJapan Hardcopy 2001論文集, B−32, 第281頁(竹嶋、会沢他)には、透明ガラスに透明導電膜が成膜されたガラス電極の背面より10μmサイズのビームスポットを照射し、10μm径の領域で生じる光減衰電位変化による誘導電流(変位電流)を検出し、その検出信号の大きさからレーザ照射前の電位を測定し、順次測定位置を変えて潜像プロファイル(副走査方向の1次元プロファイル)を得ることが開示されている。
【0006】
ここで行われる像担持体上の潜像形成は、帯電させた感光体に光を露光して、像担持体内部にキャリアが生成されることにより帯電電荷が減衰し、潜像を形成するという特性を利用している。図1に、露光エネルギーに対する帯電電位の減衰量を示す光減衰曲線(PIDC : Photo Induced Decay Carve)の一例を示す。
【0007】
光減衰曲線は感光体毎に決まっているが、同じ光エネルギー量を露光しても、露光時間が短かったり長かったりすると減衰量が異なる場合がある。この現象は相反則不軌として一般に知られている現象である。
【0008】
また、感光体は電界強度、露光エネルギー量に従いキャリアを生成するが、露光エネルギー量が同じであっても露光の走査回数によってキャリア生成量が異なることがある。
例えば、2ドットラインを形成する際に、2ドット同時に書き込む場合(以下「同時書込」とする)と、先に1ドット目を書き込んでから2ドット目を書き込む場合(以下「順次書込」とする)があり、前記同時書込では、感光体にかかっている電界強度に従いキャリアが生成するが、他方、順次書き込みの場合は1ドット目の生成キャリアの影響を受けて感光体内部の電界強度が弱まり、2ドット目のキャリア生成量が減少する。
図2に1ドット目のキャリア発生状態の模式図、図3に2ドット目のキャリア発生状態の模式図を示す。
【0009】
このように、近接した領域で露光を行う際には周囲の書込状態によってキャリア生成量が変わることがあり、誘導電流方式では、副走査方向に順次検知光を書込ながら誘導電流を測定するため、前の検知光の影響を受けて誘導電流量が減る、すなわち潜像が実際よりも浅くなって潜像がボケてしまうことがある。
【0010】
特許文献1の特開2006−038666号公報には、副走査方向に回転駆動する感光体の表面を帯電器で帯電させ、その感光体を画像書込器からの書込光で主走査方向に1回露光走査してその表面に副走査方向のサイズがAである1ライン潜像を書き込み、検出照射器によりその1ライン潜像の副走査方向の両端及び中央を含むN(N≧3)個の検出位置に対してそれぞれ検出光を、その検出光による露光領域の副走査方向のサイズをa(a≦A/(N‐1))とし、その主走査方向のサイズをb(b>a)とし、その面積を所定値以上になるように照射し、副走査方向の空間分解能を確保しながら主走査方向のサイズを大きくすることにより検出信号のS/N比を向上させた電位変化測定装置が開示されている。
【0011】
特許文献2の特開2007−178322号公報には、感光体ドラムを保持し、回転させる機構を持ち、感光体の周囲には帯電器、表面電位計プローブ、画像書き込み器、電位変化検出用透明電極(平板)+レーザ露光器、除電器が、ドラム回転方向にこの順で配置され、該透明電極の枠の両サイドに表面が絶縁性のコロをつけ、該コロが感光体表面に接触し、透明電極は非接触とするようにする感光体と電極ギャップの維持が計られ、安定してデータを得ることのできる感光体の光減衰を利用した微少領域電位測定装置が開示されている。
【0012】
特許文献3の特許4065541号公報には、感光体の主走査方向の相対的な電位プロファイルを測定する電位変化量検知手段と、前記感光体の周方向の第2の所定位置に配置され且つ前記感光体上の絶対的な表面電位を測定する表面電位検知手段とを有し、前記電位変化量検知手段の出力と前記表面電位検知手段の出力に基いて感光体の表面電位プロファイルを測定することにより、高解像度化及び高速化することが開示されている。
【0013】
特許文献4の特開2006−011032号公報には、主走査方向に個々に分離した複数個の透明電極を等間隔に形成し、この1次元に配列した透明電極の背面から検知光が前記各透明電極を通って感光体に照射することにより、主走査方向に光スポットを高速に走査しても、各測定点の信号が重ならず、高速に静電潜像の情報を読み出すことができることが開示されている。
【0014】
上記の潜像計測装置は、感光体上に形成した潜像の形状を測定し、照射した書き込み光の露光分布と計測潜像とを比較することにより、感光体の特性を知ることができ、それにより感光体の劣化状態を知ることもできる。
しかし、検知光を複数回照射して、感光体上に形成した潜像の形状を測定するものであるため、検知光の照射により潜像がボケてしまい、実際に形成された潜像の形状とは異なる形状が測定され、潜像の形状を正しく計測できず、感光体が劣化していると間違った判断をしてしまうことがある。
このような、間違った判断を防止するため、先に照射した検知光から離れた位置に後の検知光を照射することが行われているが、検知光の照射は複数回必要であるのに加えて、検知光の照射位置を移動させる必要があるため、感光体の劣化状態を知るために多くの時間を要し、暗減衰の影響を受けるため、感光体の劣化状態を正確に把握することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、短時間で、感光体の劣化を正確に把握でき、かつ潜像の形状を予測できをる潜像計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、書き込み光に対する特定位置一箇所に検知光を照射することで、検知光及び暗減衰の影響を受けず、感光体の劣化を正確に短時間で把握できることを見いだした。
上記課題は、本発明の、下記第(1)項〜第(10)項によって解決される。
(1)「潜像書込装置により形成した像担持体の潜像に、露光とは別の光源からの検知光を照射し、像担持体の光減衰による表面電荷量の変化を誘導電流として検出する潜像測定方法を用いた潜像計測装置であって、前記検知光の照射が一箇所のみであることを特徴とする潜像計測装置」、
(2)「前記検知光の照射位置が、潜像近傍の非画像部領域であることを特徴とする前記第(1)項に記載の潜像計測装置」、
(3)「前記検知光の照射位置が、照射した書き込み光の副走査方向(幅方向)の端部から、非画像部方向に、潜像を形成したビームスポット径の1/2以上かつビームスポット径以下離れた非画像部領域であることを特徴とする前記第(2)項に記載の潜像計測装置。
(4)「前記検知光の照射位置が、書き込み光を照射した画像部領域であることを特徴とする前記第(1)項に記載の潜像計測装置」、
(5)「前記検知光の照射位置が、照射した書き込み光の副走査方向(幅方向)の中央であることを特徴とする前記第(4)項に記載の潜像計測装置」、
(6)「前記潜像の書込みエネルギーは、像担持体の帯電電位を最も減衰させる露光エネルギー以下であることを特徴とする前記第(4)項または第(5)項に記載の潜像計測装置」、
(7)「潜像の画像部電位が感光体の飽和電位以下であることを特徴とする前記第(4)項または第(5)項に記載の潜像計測装置」、
(8)「静電潜像を担持する感光体と、該感光体を帯電する帯電手段と、前記感光体上に画像情報に基づいて静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段と、該トナー像を被転写体上に転写するための転写手段と、転写された被転写体上のトナー像を定着するための定着手段、及び、潜像測定装置を有する画像形成装置であって、
前記潜像測定装置が、前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の潜像測定装置であることを特徴とする画像形成装置」、
(9)「プロセスコントロール実施時に潜像測定することを特徴とする前記第(8)項に記載の画像形成装置」、
(10)「所定枚数の画像を形成した後に潜像測定することを特徴とする前記第(8)項または第(9)項に記載の画像形成装置」。
【発明の効果】
【0017】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、潜像の形状を正確に予測することができ、感光体の劣化を正確に把握できる潜像計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】露光エネルギーに対する帯電電位の減衰量を示す光減衰曲線(PIDC : Photo Induced Decay Carve)の一例である。
【図2】1ドット目のキャリア発生状態を示す模式図である。
【図3】2ドット目のキャリア発生状態を示す模式図である。
【図4】誘導電流を用いた潜像計測装置の一例を示す図である。
【図5】潜像計測装置を搭載した画像形成装置の一例を示す図である。
【図6】潜像計測装置を搭載した多色対応画像形成装置の一例を示す図である。
【図7】プロセスコントロール実施時に潜像測定するときのフローチャートである。
【図8】所定枚数の画像を形成した後に潜像測定するときのフローチャートである。
【図9】潜像計測装置により測定した潜像プロファイルである。
【図10】潜像計測装置により測定した潜像プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の潜像計測装置について詳細に説明する。
本発明の潜像計測装置は、潜像書込装置により形成した像担持体の潜像に、露光とは別の光源からの検知光を照射し、像担持体の光減衰による表面電荷量の変化を誘導電流として検出する潜像測定方法を用いた潜像計測装置であって、前記検知光の照射が一箇所のみである。
【0020】
本発明では、劣化していない感光体では潜像の非画像部となり、且つ劣化した感光体では、潜像の画像領域内となる位置、または、画像部領域の中央に検知光を照射して潜像をする。
前記劣化していない感光体では潜像の非画像部となり、且つ劣化した感光体では、潜像の画像領域内となる位置としては、書き込み光の副走査方向(幅方向)の端部から非画像部方向に、潜像を形成したビームスポット径の1/2以上かつビームスポット径以下離れた非画像部領域であることが好ましい。
前記位置の感光体電荷は、感光体の劣化に伴い、帯電量の変化量のもっとも大きい領域であり、この位置に検知光を照射して計測することにより精度のよい計測が可能となる。
また、検知光照射位置が潜像から離れすぎると、潜像の劣化(広がり)が発生してもそれを検知することができない。よって、書き込み光の副走査方向(幅方向)の端部から潜像を形成したビームスポット径の1/2以上、かつ潜像を形成したビームスポット径以下離れた位置に検知光を照射すると精度のよい計測が可能となる。
前記、ビームスポット径とは、1/e径をいう。
【0021】
本発明の誘導電流を用いた潜像計測装置を、図4を用いて説明する。
潜像計測装置は、ドラム状に形成された感光体(51)を有し、この感光体(51)は、図4に示すように、時計方向に回転駆動される。このとき、感光体(51)の周面が帯電装置(52)によって帯電され、潜像書込装置(53)によって露光されて、感光体(51)に静電潜像が形成される。
この静電潜像を潜像計測部(54)で潜像計測し、その後LED(55)で光照射して除電し、初期化される。
【0022】
潜像計測部は透明電極(54.1)と検知光を照射するレーザービーム光学系(54.2)、誘導電流を計測する計測部(54.3)を有する。透明電極(54.1)は、透明ガラスに透明導電性薄膜を成膜したもので、電極背面から感光体(51)に向けてレーザー光の照射が可能である。透明ガラスとしては石英ガラス等の透過波長域が広いものが望ましく、透明導電薄膜としてはITO膜が好ましく用いられるが、これ以外でも問題はない。
【0023】
透明導電膜の成膜は、ガラスの片側全面に成膜するものであっても、パターンマスクを用い、細線(≦1mm)でメッシュ状に成膜したものでもよい。
メッシュ状に成膜する場合は[ITO成膜部分の面積/ITO成膜なし部分の面積]の面積比が0.2前後であるようにすると、透明電極を通過させる光が800nm以上の波長を含むとき、この波長の光を大きく損なうことなく通過させることができる。
また、通過させる光がレーザである場合、レーザ入射側のガラス表面で反射したレーザが発光部に戻り、複合共振器を形成して、レーザ光に揺らぎが生じる、いわゆる戻り光ノイズを防ぐため、レーザ入射側の透明ガラスに反射防止膜をつけるのが好ましい。
【0024】
透明電極は感光体軸方向に配置されている。軸方向に長い一つの電極であってもよく、複数個の電極が軸方向に一定間隔で並んでいてもよい。これらの透明電極を感光体(51)に対して0.1mm程度のギャップになるよう配置する。この際に特許文献2(特開2007−178322号公報)に示されるギャップ調整用コロを設けるとドラム表面にキズをつけずに安定してデータを得ることができる。
【0025】
次に、検知光を照射するレーザービーム光学系(54.2)の説明を行う。使用する光源は感光体(51)が感度を有する波長のレーザー光源を用いることが望ましく、該レーザー光源が感光体(51)に与える露光エネルギーは、所定の帯電電位(例えば−800V)を最も減衰する飽和電位(例えば−100V)にするのに必要な露光エネルギー程度になるようLDパワーと点灯時間とを調整する。
光パワーはレーザ駆動電流を調節して決め、レーザ点灯時間は感光体のキャリアトランジットタイムを基準(−800Vにおけるトランジットタイムはおよそ300μs)にこれ以下に設定するのが好ましい。 これは測定される信号強度は電極に誘起される電荷密度の流れであり、時間が短い程、信号が大きくなるためである。
【0026】
また、LDのビームスポット径(レーザビームは通常ガウシアン分布をしたビームを想定し、最大強度の1/e(約13.5%)の強度になる範囲位置(直径))は、検知光の信号強度(誘導電流)が計測できる程度に大きいことが望ましい。また、特許文献1(特開2006−038666号公報)にあるように、検知光を主走査方向にポリゴンミラーで走査することで副走査方向のサイズに比べて主走査方向のサイズを大きくすることにより検出信号のS/N比を向上させることが可能なラインLD等を用いることが望ましい。
【0027】
本発明は、これらのレーザービーム光学系を用いて、主走査方向、副走査方向に所望の位置に移動してから検知光を点灯させ、誘導電流を計測する。
誘導電流を計測する計測部(54.3)は、電流を増幅する増幅器と信号を出力するオシロスコープからなる。
また、検知光を照射するレーザービーム光学系(54.2)、誘導電流を計測する計測部(54.3)、感光体を駆動する駆動回転コントローラは、PCコントローラで制御されている。
【0028】
本発明の潜像計測装置は、画像形成装置に搭載することができる。
本発明の潜像計測装置を画像形成装置に搭載することにより、経時変動や環境変動等による感光体特性変化に対応した制御が可能で安定した画像を形成できる画像形成装置の提供可能となる。
【0029】
図5に画像形成装置例を示す。
画像形成装置はドラム状に形成された感光体(7.1)を有し、この感光体(7.1)は、図5に示す矢印C方向のように時計方向に回転駆動される。このとき、感光体(7.1)の周面が帯電装置(7.2)によって帯電される。その帯電後の感光体表面は書込ユニット(7.9)の露光装置(7.3)によって画像露光され、前記感光体(7.1)に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置(7.4)によってトナー像として可視像化され、該トナー像は図示していない給紙装置から矢印A方向に給送された転写材Pに転写装置(7.5)の作用により転写される。
トナー像を転写された転写材Pは定着装置(7.6)を通り、このときそのトナー像に熱及び/または圧力が与えられ、当該トナー像が転写材P上に定着される。トナー像転写後に感光体表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置(7.7)によって除去され、クリーニングされた感光体表面には除電ランプ(7.8)からの除電光が照射されて感光体の表面電位が初期化される。
図5に示した例では、感光体上に形成されたトナー像を直に最終的な転写材Pに転写するように構成されているが、感光体上のトナー像を中間転写体より成る転写材に転写し、その中間転写体上のトナー像を最終転写材に転写するように構成することもできる。
【0030】
潜像計測装置(7.10)は、露光装置(7.3)と現像装置(7.4)の間に配置される。潜像計測装置(7.10)は先に説明したが、感光体と所定の距離の位置に配置される透明電極、レーザービーム光学系、誘導電流を計測する計測部から構成される。レーザービームの代わりに発光ダイオード(LED)を使用してもよい。潜像電位計測は通常の画像形成時ではなく、起動時や一定枚数画像形成後、一定時間経過後等、画像形成装置を制御する時にあわせて行うとよい。潜像電位計測時は所定のテスト潜像パターン(ラインorドット)を露光装置(7.3)により露光し、1ラインの潜像またはドット潜像にあたる感光体上の部位が信号検出部直前に来たところで帯電・回転を停止、検知光を照射し、発生した誘導電流の計測を行う。
次に、感光体ドラムを副走査方向の検知間隔になるまで感光体を回転・移動(例えば10μm)して感光体を停止し、先の検知光照射位置から検知光の主走査方向のスポット径+所定の間隔だけ主走査方向へ移動した位置に検知光を照射するようレーザービーム光学系を制御する。これらの検知光照射、誘導電流の測定を繰り返す。計測潜像のプロファイルに応じて、潜像がボケている場合には、感光体が劣化していると判断して本体の制御部へ通知することにより、感光体劣化に応じた制御が可能となる。
このように、画像形成装置内に潜像計測装置を併設することにより、経時や環境で変動した感光体特性による潜像のボケを精度よく検出し、それに応じた制御を行うことが可能となる。
【0031】
また、現像装置や、感光体およびその周辺機器を、複数配置したカラー画像形成装置にも使用できる。
図6に多色対応画像形成装置を示す。
なお図中の Yはイエロー、Mはマゼンダ、Cはシアン、Kはブラックの各色を示す。
図6において、感光体(8.1Y,8.1M, 8.1C, 8.1K)は矢印の方向に回転し、回転順に帯電器(8.2Y,8.2M, 8.2C, 8.2K)、現像器(8.4Y,8.4M, 8.4C, 8.4K)、転写用帯電手段(8.6Y,8.6M, 8.6C, 8.6K)、クリーニング手段(8.5Y,8.5M,8.5C,8.5K)が配備されている。
帯電器(8.2Y,8.2M, 8.2C, 8.2K)は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電器と現像器(8.4Y,8.4M, 8.4C, 8.4K)の間の感光体表面に書き込みユニットによりビームが照射され、感光体に静電潜像が形成されるようになっている。そして、静電潜像に基づき、現像器により感光体面上にトナー像が形成される。さらに、転写用帯電手段(8.6Y,8.6M, 8.6C, 8.6K)により、図示しない記録紙に各色順次転写トナー像が転写され、最終的に定着手段(8.30)により記録試に画像が定着する。
潜像書込位置と各現像器(8.4Y,8.4M, 8.4C, 8.4K)の間には潜像計測装置(8.10Y,8.10M, 8.10C, 8.10K)が配置され、各感光体の状態を計測することが可能となる。
【0032】
潜像測定を実施するタイミングについて説明する。
画像形成装置では経時や環境による変動に応じてプロセスを制御し(プロセスコントロール)、安定で高品質な画像形成を行っている。感光体の経時劣化や環境変動なども画像に非常に影響する。よって、プロセスコントロール実施時に潜像計測も同時に行い、潜像計測結果を本体の制御部へフィードバックしプロセスコントロールすることにより、感光体の経時や環境における変動を制御することが可能となる。
感光体の経時劣化や環境変動に基いて本体の制御部へフィードバック場合のフローチャートを図7に示す。
【0033】
前記感光体の変動としては環境的な変動より、経時的な変動(劣化)が主に問題になり、感光体の劣化は画像形成枚数に依存しているため、潜像測定を実施するタイミングを、一定枚数以上画像形成後とすることができる。
感光体の劣化としては、例えば、クリーニング部材による感光体磨耗や、感光体への放電時の放電生成物の付着による画像劣化が挙げられる。これらは使用条件や使用環境等により、発生時期は特定できないものの、画像形成枚数に応じて発生する現象であり、これらの劣化を予測したタイミング(形成枚数)時に計測することにより、感光体劣化に応じた制御が可能となる。
感光体の経時劣化や環境変動に基いて本体の制御部へフィードバック場合のフローチャートを図8に示す。
【実施例】
【0034】
次に本発明の潜像測定の測定方法を実施例により、詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
下記の条件で潜像を書き込み誘導電流を測定した。
まず、感光体ドラムを回転させ、帯電装置(52)による帯電し、潜像書き込み装置(53)により潜像の書き込みを行う。
潜像は主走査方向のライン潜像を形成し、その幅(副走査方向幅)は2ドットラインを形成し、そのライン幅は約100μmである。

次に、ライン潜像を形成した感光体上の下記の位置が、信号検出部直前にきたところで帯電・回転を停止、検知光を照射する。検知光の照射は任意波形発生装置を使用し、One shot Pulseを発生させトリガーとして行った。
このとき発生した電位減衰(=電荷変化)による誘導電流(変位電流)を測定する。また、検知光による生成キャリアが移動するまでのトランジットタイムを考慮し計測を行った。
なお、−800Vにおけるトランジットタイムはおよそ300μsである。主走査方向の位置の制御はポリゴンミラー等を使用したスキャンをもちいて、点灯開始時間だけを制御する。また、感光体回転時は除電ランプをONし、表面の電荷を除電する。

<測定潜像形成条件>
感光体ドラム:積層OPC(有機光半導体)ドラム 60mmφ×334mm長
帯電電位:800(‐V)
書込みレーザビーム径(1/e径):主走査方向50μm×副走査方向60μm

<検知光条件>
レーザビーム径(1/e径):主走査方向24μm×副走査方向24μm
レーザビーム波長:655nm
露光エネルギー:0.3μJ/cm(感光体帯電電位-800Vを-100Vにするための必要露光エネルギー)
レーザのトリガー:任意波形発生装置(アジレント・テクノロジーHP33120A)を使用
点灯パルス幅 2μs
検知光照射位置:書き込み光を照射した副走査方向の上端部から、約50μm上の非画像部(図9中(1)の位置)

従来は、一回の検知光照射ではなく、感光体ドラムを副走査方向の検知間隔になるまでOPCを回転・移動して回転を停止、検知光照射、誘導電流の測定を繰り返す潜像計測方法であった。誘導電流は感光体上が帯電している場合、その帯電電荷量に応じた誘導電流が計測され、誘導電流は感光体上にたくさん電荷が乗っている非画像部に比べ、画像部では感光体上の電荷量が減少するため少なくなる。また誘導電流は電流が計測された時間を乗じて誘導電荷量に換算することができる。この従来の計測方向と一度の検知光照射のみ得られた計測潜像プロファイルの比較を行った結果、従来の方式では誘導電荷量が-600μC/m^2であるのに比べて-700μC/m^2(図9×印)と10%程度計測電流量が多くなっており、非画像部の電荷量と同等の誘導電荷量を計測できていることが確認できた。
【0036】
本発明の潜像測定方法を、劣化していない感光体に形成される潜像の非画像部に照射する場合を例に、図9により説明する。
【0037】
従来方法で測定した結果を点線、本発明の潜像測定方法で測定した結果を×で示す。
検知光を複数回照射する従来の方法では、計測に数秒から十数秒かかるため、劣化していない感光体を測定しても、検知光及び暗減衰の影響を受けて潜像のボケが生じ、誘導電荷量が非画像部の電荷量よりも−600μC/mと少なく測定されているのに対し、検知光の照射が一箇所である本発明の方法では、非画像部の電荷量と同等の−700μC/m(図9の×印)の誘導電荷量が測定され、検知光を複数回照射して測定する従来の測定方法よりも非画像部の電荷量に近い値が測定され、感光体の劣化を正確かつ迅速に把握できていることが分かる。
また、劣化していない感光体と、劣化した感光体に照射する場合を例に、図10により説明する。
劣化した感光体の潜像は図10の太線のようにブロードになっていると予測される。劣化前後の感光体において同位置で計測した場合、劣化前の感光体潜像計測結果(図中×印)に比べて劣化感光体における潜像計測結果は(図10○印)であり、劣化した感光体から得られる誘導電荷量が、劣化していない感光体から得られる誘導電荷量より少なくなっており、潜像の形状が広く浅く形成され、感光体が劣化していることを把握できる。
【0038】
なお、上記実施例では、書き込み光を照射した副走査方向の上端部から約50μm上の非画像部に検知光を照射した場合について示したが、書き込み光を照射した副走査方向の下端部から約50μm下の非画像部に検知光を照射した場合でも同様の効果が得られる。
検知光の径が主副同等なものについて説明を行ったが、ラインLDのような主走査方向に幅の広いLDを使用し、検知光照射時の誘導電流量が増加させ、計測制度を向上することも可能である。
また、上記実施例では、検知光にLDを用いたが、LEDを使用することも可能である。
潜像は検知光照射時の誘導電流が計測しやすい主走査方向のライン潜像が望ましいが、ドット潜像等でも計測が可能である。
【0039】
(実施例2)
検知光照射位置:副走査方向上端部照射位置から30μm上方の非画像部(上記実施例1の測定位置を示す図1の(1)よりも潜像側の位置)に代える他は実施例1と同様にして潜像を測定した。

上記照射位置は、感光体の劣化に対して潜像の変化量が最も大きい位置であり、形状変化を計測しやすい位置である。
劣化していない通常の感光体では、書き込み光を照射した端部から、潜像を形成したビームスポット半径以上離れた位置では露光時の光エネルギーが小さいため、感光体の電荷はあまり減衰しない。
本実施例で測定された劣化していない感光体の誘導電荷量は−700μC/mであった。
これに対し、劣化した感光体を測定した結果、潜像の劣化(広がり)に伴い約−500μC/m程度まで低下していた。
この位置の感光体電荷は、感光体の劣化に伴い、帯電量の変化量のもっとも大きい領域であり、この位置に検知光を照射して計測することにより精度のよい計測が可能であることが分かる。
【0040】
(実施例3)
潜像形状を主走査方向の3ドットライン(ライン幅は約150μm)とし、検知光照射位置を、書き込み光を照射した画像部の副走査方向中央部とする他は実施例1と同様にして潜像を測定した。
劣化した感光体では、劣化してない感光体に比し、形成される潜像が広く浅くなる。
本実施例で測定された劣化していない感光体の誘導電荷量は、−100μC/mであるのに対し、劣化した感光体の誘導電荷量は、−150μC/mであった。
上記結果は、劣化した感光体から得られる誘導電荷量が、劣化していない感光体から得られる誘導電荷量よりも小さくなっており、感光体の劣化により形成される潜像が広く浅くなっていることを捉えており、書き込み光を照射した画像部の副走査方向中央部を計測することにより、感光体の劣化を計測することが可能であることが分かる。
【0041】
(実施例4)
書込露光エネルギーを0.15μJ/cm(感光体帯電電位-800Vを-100Vにするための必要露光エネルギーの1/2)にする他は実施例3と同様にして潜像を測定した。
劣化していない通常の感光体を使用した場合の書き込み光を照射した潜像副走査方向中央部の潜像電荷量は約−350μC/mであった。これに対し、劣化感光体の潜像は約−450μC/mと増加した。
必要露光エネルギー以下(本実施例では1/2)にしたことにより、劣化感光体に書き込み光を照射しても、書き込み光に対して鈍感になり、画像部の電位があまり変化しないのに対し、劣化していない感光体では電位が感度の高い領域になり、画像部の電位が大きく変化するため、劣化感光体からの電荷量と劣化していない感光体からの電荷量との比が大きくなり、より精度の高い計測をすることが可能となることが分かる。
【0042】
(実施例5)
潜像形状を2ドット主走査方向ライン(副走査方向のライン幅は約100μm)にする他は実施例3と同様にして潜像を測定した。

劣化していない通常の感光体を使用した場合の書き込み光を照射した潜像副走査方向中央部の潜像電荷量は約−400μC/mであった。これに対し、劣化感光体の潜像は約−550μC/mと増加した。
潜像を小さくすることにより画像部の電位は感光体の飽和電位より非画像部電位に近い電位となり、実施例4と同様に、画像部の電位が感度の高い領域になり、感光体の劣化時の変化量が大きくなって、精度の高い計測をすることが可能となる。

本実施例では2ドットット主走査方向ライン(副走査方向のライン幅は約100μm)について説明を実施しているが、画像部の電位が飽和電位より非画像部電位に近くなれば同様の効果となり、ドットもしくはラインの大きさはこれに限るものではない。
【0043】
(図4について)
51 感光体
52 帯電装置
53 潜像書込装置
54 潜像計測部
54.1 透明電極
54.2 レーザービーム光学系
54.3 誘導電流を計測する計測部
55 LED

(図5について)
7.1 感光体
7.2 帯電装置
7.3 露光装置
7.4 現像装置
7.5 転写装置
7.6 定着装置
7.7 クリーニング装置
7.8 除電ランプ
7.9 書込ユニット
7.10 潜像計測装置

(図6について)
8.1Y,8.1M, 8.1C, 8.1K 感光体
8.2Y,8.2M, 8.2C, 8.2K 帯電器
8.4Y,8.4M, 8.4C, 8.4K 現像器
8.5Y,8.5M, 8.5C,8.5K クリーニング手段
8.6Y,8.6M, 8.6C, 8.6K 転写用帯電手段
8.8 転写ベルト
8.10Y,8.10M, 8.10C, 8.10K 潜像計測装置
8.20 書込ユニット
8.30 定着手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2006−038666号公報
【特許文献2】特開2007−178322号公報
【特許文献3】特許4065541号
【特許文献4】特開2006−011032号公報
【非特許文献】
【0045】
【非特許文献1】Japan Hardcopy 2001論文集, B-32, 第281頁(竹嶋、会沢他)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像書込装置により形成した像担持体の潜像に、露光とは別の光源からの検知光を照射し、像担持体の光減衰による表面電荷量の変化を誘導電流として検出する潜像測定方法を用いた潜像計測装置であって、前記検知光の照射が一箇所のみであることを特徴とする潜像計測装置。
【請求項2】
前記検知光の照射位置が、潜像近傍の非画像部領域であることを特徴とする請求項1に記載の潜像計測装置。
【請求項3】
前記検知光の照射位置が、照射した書き込み光の副走査方向(幅方向)の端部から、非画像部方向に、潜像を形成したビームスポット径の1/2以上かつビームスポット径以下離れた非画像部領域であることを特徴とする請求項2に記載の潜像計測装置。
【請求項4】
前記検知光の照射位置が、書き込み光を照射した画像部領域であることを特徴とする請求項1に記載の潜像計測装置。
【請求項5】
前記検知光の照射位置が、照射した書き込み光の副走査方向(幅方向)の中央であることを特徴とする請求項4に記載の潜像計測装置。
【請求項6】
前記潜像の書込みエネルギーは、像担持体の帯電電位を最も減衰させる露光エネルギー以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の潜像計測装置。
【請求項7】
潜像の画像部電位が感光体の飽和電位以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の潜像計測装置。
【請求項8】
静電潜像を担持する感光体と、該感光体を帯電する帯電手段と、前記感光体上に画像情報に基づいて静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段と、該トナー像を被転写体上に転写するための転写手段と、転写された被転写体上のトナー像を定着するための定着手段、及び、潜像測定装置を有する画像形成装置であって、
前記潜像測定装置が、請求項1乃至7のいずれかに記載の潜像測定装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
プロセスコントロール実施時に潜像測定することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
所定枚数の画像を形成した後に潜像測定することを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61542(P2013−61542A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200680(P2011−200680)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】