説明

濾過装置

【課題】懸濁物質を含んだ原水を濾過する場合の耐用時間が長い濾過装置を提供する。
【解決手段】原水は流入口7から原水室9内に導入され、フィルタ6を透過する。フィルタ6の略上半側にあっては、透過水は、透過水流路6a内を上向きに流れ、開口2a、透過水取出室4、取出口10を介して取り出される。フィルタ6の略下半側にあっては、透過水は下向きに流れ、開口3a、透過水取出室5、取出口11を介して取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を濾過するための濾過装置に係り、特にハウジング内にフィルタが配置され、原水がフィルタの外側に供給され、透過水がフィルタ内部の透過水流路を経て取り出されるよう構成された濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジング内にフィルタが配置され、原水がフィルタの外側に供給され、透過水がフィルタ内部の透過水流路を経て取り出されるよう構成された濾過装置にあっては、一般に、フィルタ内の透過水流路はフィルタの一端側のみから取り出されるよう構成されている(例えば特開2002−166108号)。
【0003】
この特開2002−166108号にあっては、ハウジング(同号公報ではシェルと称している。)内の上部にアッパプレートが水平に設けられ、このアッパプレートから複数の円筒状フィルタカートリッジが垂設されている。この円筒状フィルタカートリッジの内孔(透過水流路)は、下端が封じられ、上部がアッパプレートの上側に向って解放している。シェル内に導入された原水はフィルタを外周側からフィルタカートリッジを透過し、フィルタカートリッジ内の透過水流路の上端からアッパプレートの上方側へ流出する。
【特許文献1】特開2002−166108号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、フィルタの一端側のみから透過水を流出させるようにした従来例にあっては、フィルタの透過水流出口側(該一端側)ほど膜間差圧が高く、膜透過流速は、例えば図3の如く、膜間差圧の高い出口側において著しく高くなる。なお、図3は後述の比較例における膜透過流速の測定結果を示すグラフである。
【0005】
このように一端側のみから透過水を流出させるようにカートリッジをハウジング内に設置した濾過装置にあっては、懸濁物質を含んだ被処理水がハウジング内に流入すると、フィルタの透過水流出口近傍膜面は流速分布が高いため、粗大粒子が表面に堆積し、急速に閉塞し、フィルタの有効膜面積が減少する。その後は、残存膜面により濾過は継続されるが、有効膜面積が小さいため、こちらも粗大粒子により短時間のうちに膜面が閉塞してしまう。そのため、フィルタ内部はまだ閉塞状態に至ってないにも拘らず、濾材としての耐用時間が短くなる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決し、懸濁物質を含んだ原水を濾過する場合の耐用時間が長い濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の濾過装置は、ハウジング内にフィルタが配置されており、該フィルタの内部に透過水流路が延設されており、原水が該フィルタの外側に供給され、フィルタを透過した透過水が該透過水流路を経て取り出される濾過装置において、該フィルタは、該透過水流路の両端側から透過水を流出させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の濾過装置は、請求項1において、前記ハウジングの両端側に透過水取出室が設けられ、該透過水取出室の間が原水室となっており、前記フィルタは該原水室に配置され、前記透過水流路の一端が一方の該透過水取出室に接続され、他端が他方の該透過水取出室に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、フィルタの両端側から透過水を取り出すようにしているので、フィルタ内部の透過水流路における差圧勾配が均一化され、膜面透過流速の分布が小さい。このため、粗大粒子によるフィルタの急速な閉塞が抑制され、フィルタ内部まで濾過に有効利用されるようになる。これにより、フィルタの耐用時間が長いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1(a)は実施の形態に係る濾過装置の縦断面図である。
【0011】
略円筒形のハウジング1が円筒の軸心方向を上下方向にして設置されている。ハウジング1内の上部と下部にそれぞれ隔板2,3が設置され、隔板2の上側に透過水取出室4が形成され、下側に透過水取出室5が形成されている。これらの透過水取出室4,5の間が原水室9となっている。
【0012】
この原水室9内に細長い円筒形のフィルタ6が上下方向に延設されている。このフィルタ6の上端は隔板2に当接し、下端は隔板3に当接している。フィルタ6内の透過水流路6aの上部は、隔板2に設けられた開口2aを介して透過水取出室4に接続され、下部は隔板3に設けられた開口3aを介して透過水取出室5に接続されている。ハウジング1の頂部と下端部にそれぞれ透過水の取出口10,11が設けられている。
【0013】
ハウジング1の側面に原水の流入口7が設けられている。なお、ハウジング1内には該流入口7に対峙してバッフル8が設けられている。
【0014】
なお、フィルタ6としては、デプスフィルタ、活性炭フィルタ、ステンレスフィルタなど、ハウジング内に収納できるフィルタであるならばいずれも用いることができる。
【0015】
フィルタ6の形状は、プリーツ型、シート型などのいずれでもよい。フィルタ6の上端及び下端と隔板2,3又は開口2a,3aとの間のシールとしては、平パッキン方式、Oリング方式などのいずれでもよい。
【0016】
このように構成された濾過装置において、原水は流入口7から原水室9内に導入され、フィルタ6を透過する。フィルタ6の略上半側にあっては、透過水は、透過水流路6a内を上向きに流れ、開口2a、透過水取出室4、取出口10を介して取り出される。フィルタ6の略下半側にあっては、透過水は下向きに流れ、開口3a、透過水取出室5、取出口11を介して取り出される。
【0017】
このようにフィルタ6の上下両端側から透過水が取り出されるところから、フィルタ6の膜間差圧がフィルタ6の長手方向(上下方向)の全体において略々均等化される。この結果、粗大粒子によるフィルタの急速な閉塞が抑制され、フィルタの内部まで十分に濾過に寄与するようになり、濾材としての耐用時間が長いものとなる。
【0018】
なお、原水としては、工水、井水、市水、排水の回収水などが例示されるが、これらに限定されない。
【0019】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様をもとりうる。例えば、ハウジング1内に複数本のフィルタ6を設置してもよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0021】
実施例1
図1(a)の濾過装置において、フィルタ6として、キュノ(株)製の公称孔径1μmの糸巻き型デプスフィルタを用い、次の条件にて設備を組み立て、通水を行った。
ハウジング1の直径 16cm
原水室9の高さ 108cm
フィルタ6の外径 12cm
フィルタ6の内径 2.7cm
原水として、市販のカオリン(和光純薬(株))を市水に濃度3mg/Lに分散させたものを1.0m/minにて通水した。
【0022】
このときのフィルタ6の長手方向における差圧分布の測定結果を図2に示す。また、差圧の経時変化を図4に示す。
【0023】
図2の通り、この実施例1ではフィルタ6の長手方向における差圧分布が小さい。また、図4の通り、この実施例1では、通水開始から150時間までは差圧上昇は観測されなかった。
【0024】
比較例1
図1(b)のように、隔板2の代わりに開口2aの無い隔板13を用い、フィルタ6の透過水を下側の透過水取出室5にのみ流し出すようにした。
【0025】
その他は実施例1と同一条件として通水を行ったところ、図3の通り、フィルタ6の差圧分布が大きいことが認められた。また、図4の通り、通水開始から70時間でフィルタの差圧上昇が観測された。
【0026】
これらの実施例及び比較例より、本発明例によるとフィルタの耐用時間が大幅に延長されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)図は実施の形態に係る濾過装置の縦断面図であり、(b)図は比較例に係る濾過装置の縦断面図である。
【図2】実施例の流速分布を示すグラフである。
【図3】比較例の流速分布を示すグラフである。
【図4】実施例及び比較例の濾過差圧分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2,3 隔板
4,5 透過水取出室
6 フィルタ
6a 透過水流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にフィルタが配置されており、
該フィルタの内部に透過水流路が延設されており、
原水が該フィルタの外側に供給され、フィルタを透過した透過水が該透過水流路を経て取り出される濾過装置において、
該フィルタは、該透過水流路の両端側から透過水を流出させるように構成されていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ハウジングの両端側に透過水取出室が設けられ、該透過水取出室の間が原水室となっており、前記フィルタは該原水室に配置され、前記透過水流路の一端が一方の該透過水取出室に接続され、他端が他方の該透過水取出室に接続されていることを特徴とする濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−325994(P2007−325994A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157554(P2006−157554)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】