説明

火災抑制システム用の臭気剤

【課題】密閉環境内のユーザを保護する方法が提供される。
【解決手段】密閉環境65内のユーザを保護する方法は、第1の臭気を有する貨物を収容する密閉環境65を提供し、密閉環境65へとガスを流し、ガスに第2の臭気を有する臭気剤25を添加する、ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によってガスが存在するとの警告が与えられるように第2の臭気から区別可能である。調整器/制御弁70および分流弁75に故障や漏れや適切な作動が生じた場合、ディスクシール35を破裂させるのに十分な圧力が臭気剤モジュール20に掛かることが可能であり、導管10を通過するガスは、臭気剤110を導管10内に引き込み不活性ガスを臭気化するベンチュリ管として作用する。特定の臭気剤110の使用により、密閉環境65に入る人は、臭気剤に気づき、密閉環境65を通気し、密閉環境65に安全に入る前に弁95を閉にすることでシステム45を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災抑制システムに関し、特に、火災抑制システムにおける臭気剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
火災の伝搬には、燃料、熱、および酸素が必要であることは当業技術内でよく知られている。火災抑制方法のいくつかでは、火災の拡大および伝搬を抑制するよう空気中の酸素の供給を希釈するために不活性ガスが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
火災を抑制するためのさらなる火災抑制システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な実施例によれば、環境内のユーザを保護する方法は、第1の臭気を有する貨物を収容する密閉環境を提供し、密閉環境へとガスを流し、不活性ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって不活性ガスが存在するとの警告が与えられるように第2の臭気から区別可能である。
【0005】
さらなる例示的な実施例によれば、密閉環境内のユーザを保護する方法は、第1の臭気を有する貨物を収容する密閉環境を提供し、密閉環境へと不活性ガスを流し、不活性ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって不活性ガスが存在するとの警告が与えられるようにかつ選択された第2の臭気によって密閉環境の近傍にいる人が本当に心配するように第2の臭気から区別可能である。
【0006】
なおさらなる例示的な実施例によれば、密閉環境内のユーザを保護する方法は、第1の臭気を有する貨物を収容する密閉環境を提供し、貨物区画に隣接する客室を提供し、火災抑制システムを提供し、火災抑制システムから密閉環境へと不活性ガスを流し、不活性ガスが流れているときに不活性ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって不活性ガスが存在するとの警告が与えられるようにかつ第2の臭気によって密閉環境の近傍にいる人が心配することのないように第2の臭気から区別可能である。
【0007】
本発明のこれらと他の特徴は、以下の説明と図面から最もよく理解可能であり、以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】不活性ガス放出管と、臭気剤を収容するモジュールとの従来技術の図である。
【図2】図1の従来技術を利用する火災抑制システムを示す実施例の図である。
【図3】図1、図2の実施例を利用する方法を示す図である。
【図4】図2の火災抑制システム用の環境を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図1を参照すると、窒素、ヘリウム、アルゴン、その他などの不活性ガスとすることができるガスが火災(図示せず)を抑制するように内部を通って流れる従来技術の導管10が示されている。導管10は、臭気剤25を収容するモジュール20が配置されたエルボー15を有する。モジュール20は、モジュール20を所定位置に保持するエルボーブラケット30にねじ込まれる。ディスクシール35が臭気剤25をモジュール20内に密封しており、不活性ガスが導管10を通って流れるときに破壊される。一般にディスクシール35は、5気圧以上の圧力ですなわち流れる不活性ガスの圧力より下で破裂し、従って、本願では他の破裂圧力も予想されている。臭気剤25は、高圧キャニスター55(図2参照)内には配置されないが、その理由は、臭気剤25は不活性ガスキャニスター内に貯蔵される場合液体としてとどまり、従って、不活性ガス流に入り込むのが困難になるからである。
【0010】
ここで図2を参照すると、貨物室などの密閉環境65内で使用するためのシステム45が示されている。ガスは室内やピット内に蓄積することがあり、人の健康に害が及ぶことがある。貨物室(参照符号65で概略が示されている、図4参照)に入る作業員のように、密閉されることがある密閉環境で働く人は、不活性ガスの存在に気づかないことがあり、作業員の健康に影響が及ぶことがある。
【0011】
システム45は、不活性ガスを収容する複数の高圧キャニスター55を備えており、高圧キャニスター55は、火災の発生、抑制の可能性がある、航空機63内の貯蔵室または貨物室などの密閉環境65に導管10および管60によって接続される。航空機63内では、客室67は、密閉環境65の近くにあることや隣接していることがある。システム45は、火災の場合には不活性ガスを密閉環境65に送る。
【0012】
各キャニスター55は、放出圧力調整器/制御弁70を介して導管10に接続され、分流弁75を介して密閉環境65に接続される。各密閉環境65は、室圧変換器80、温度送信機85、および火災検知器90(煙検知器など)を備える。不活性ガスがキャニスター55から密閉環境65へ流れるのを防止する制御弁95が導管10と流体連通して配置される。
【0013】
一般に、例えば室圧変換器80、温度送信機85および/または火災検知器90のいずれかからの信号によって密閉環境65内で火災が検出された場合、通常室圧変換器80、温度送信機85および/または火災検知器90と信号通信している制御装置103によって、1つまたは複数のキャニスター55の放出圧力調整器/制御弁70は、不活性ガスを導管10を通し、開状態の制御弁95を通して分流弁75へ送る。分流弁75は、関連する密閉環境65内の火災を抑制するように密閉環境65内のノズル100の下流へ不活性ガスを送る。
【0014】
圧力調整器/制御弁70および分流弁75などの弁および/またはキャニスター55は、故障することや漏れることがある。故障が生じた場合、またはシステム45は火災を抑制するけれども制御装置103が例えば密閉環境65に不活性ガスが存在する可能性があるとユーザに警告するのに失敗した場合、密閉環境65に入る可能性のある人は、健康に害のある場所に入りつつある可能性がある。
【0015】
調整器/制御弁70および分流弁75に故障や漏れや適切な作動が生じた場合、ディスクシール35を破裂させるのに十分な圧力が臭気剤モジュール20に掛かることが可能であり、導管10を通過するガスは、臭気剤110を導管10内に引き込み不活性ガスを臭気化するベンチュリ管として作用する。代替の実施例では、臭気剤110は、キャニスター55内に収容されるガスと共に放出されるようにキャニスター55内に収容可能である。
【0016】
以下に説明する特定の臭気剤110を使用することで、密閉環境65内の酸素含有量が健康に害のあるレベルの可能性がある密閉環境65に入る人は、臭気剤に気づき、密閉環境65を通気し、密閉環境65に安全に入る前に弁95を閉にすることでシステム45を停止する。
【0017】
作業員の訓練を最適化するために、空気中の酸素レベルがこのような健康に害があるレベルにあることまたは適切なレベルより低いレベルにあることを作業員に警告するように、認識可能な臭気剤110が、不活性ガスを使用するシステム45内で一貫して使用可能である。
【0018】
臭気剤110の選択は、即座に認識可能であることが知られており、通常の範囲の貨物61または密閉環境65内の他の品物から生じる可能性があるいずれの臭気とも十分に異なる必要があり、しかも同時に、臭気剤110が飛行中に客室67の空気に流入した場合に不安や懸念を生じさせる恐れのある臭気となる可能性のないものである。一般に当業技術内で使用される臭気剤25は、チオールやメルカプタン、硫化物、または類似の臭気剤などの硫黄をベースにした化学物質である。これらは悪臭のする「悪臭物質」である。この実施はよく知られているので、一般公衆はこれが実際に天然ガスの臭気であると信じている。他の臭気剤としては、刺激臭があり吐き気を催しオレンジ臭でかなりはっきりそれと分かるリモネンが挙げられる。臭気剤を選択する場合、以下の既知の選択物を含むことができる。
【0019】
1. エステル
【0020】
【表1】

【0021】
2. テルペン
【0022】
【表2】

【0023】
3. 環状テルペン
【0024】
【表3】

【0025】
4. 芳香族化合物
【0026】
【表4】

【0027】
5. アミン
【0028】
【表5】

【0029】
6. アルコール
【0030】
【表6】

【0031】
7. アルデヒド
【0032】
【表7】

【0033】
8. ケトン
【0034】
【表8】

【0035】
9. ラクトン
【0036】
【表9】

【0037】
10. チオール
【0038】
【表10】

【0039】
11. 種々雑多な化合物
【0040】
【表11】

【0041】
使用する特定の臭気剤110を選択する場合、環境および/または客室内の臭気を意識する必要がある。例えば、肉を航空貨物で運んでいる場合、肉の匂い(すなわち第1の臭気)と競合する上述した腐った肉(図示せず)のような匂いのアミン群からのいずれかの臭気剤(第1の臭気)を避けることを選択可能である。同様に、花(図示せず)を輸送している場合、上述した花(すなわち第1の臭気)のような匂いのテルペン群からの臭気剤(すなわち第2の臭気)を避けることを選択可能である。果物(図示せず)を輸送している場合、果物(すなわち第1の臭気)のような匂いのエステル群からの臭気剤(すなわち第2の臭気)を避けることができる。また、通常客室内に存在することが予想され、永続的に使用され得る臭気(すなわち第1の臭気)と一致または類似する可能性の最も低い臭気剤を上述したリスト(すなわち第2の臭気)から選択可能である。第1の臭気が識別可能な臭気を有さず、周囲の臭気と見なされることがあることに注意されたい。第2の臭気は、周囲のまたは識別可能な第1の臭気と識別可能である。
【0042】
上述した区別可能な臭気剤を利用するために、密閉環境65で運搬されるかまたは密閉環境65に収容される貨物61の種類を決定し(ステップ150)、航空機63内の密閉環境65の近くの乗客に心配、不安、懸念を生じさせる可能性のない臭気剤であって、運搬すべき貨物の通常の匂いとは区別可能な臭気剤を選択し(ステップ160)、密閉環境に入る可能性のある作業員を教育し(ステップ170)、選択された臭気剤110を収容する臭気剤モジュール20を差し込み(ステップ180)、密閉環境に入る可能性のある人は誰でも、選択された臭気剤110を検出することで不活性ガスの存在を警告されるように、密閉環境65へ流れる不活性ガスに選択された臭気剤110を注入する(ステップ190)ことが可能である。
【0043】
いくつかの特徴の組み合わせを、例示の実施例において示したとはいえ、その全てを、本開示のさまざまな実施例の利点を実現するために組み合わせる必要はない。すなわち、本開示の実施例に従って設計されるシステムは必ずしも、図のいずれかに示された特徴の全てを、あるいは図に概略示された部分の全てを含むものではない。さらに、例示的な一実施例の選択された特徴が、例示的な他の実施例の選択された特徴と組み合わせ可能である。
【0044】
上述した説明は、本質的に限定ではなく例示である。本開示の本質から必ずしも逸脱しない、開示の実施例に対する変更および修正が、当業者には明らかとなり得る。本開示に与えられ法的保護範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境内のユーザを保護する方法であって、
第1の臭気を有する環境へとガスを流し、
前記ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、
ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって前記ガスが存在するとの警告が与えられるように第2の臭気から区別可能であることを特徴とする、環境内のユーザを保護する方法。
【請求項2】
第2の臭気は、エステル、テルペン、環状テルペン、芳香族化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、またはラクトンの群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の臭気は、メチルホスピン、ジメチルホスフィン、ネロリン、テトラヒドロチオフェン、2,4,6−トリクロロアニソール、または置換ピラジンの群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
選択された第2の臭気が、ガスが存在することの警告となることをユーザに教育することをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記臭気剤を火災抑制システムに差し込むことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
火災抑制システムは、航空機の客室とは区別された航空機の貨物室内にあることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
密閉環境内のユーザを保護する方法であって、
第1の臭気を有する密閉環境へと不活性ガスを流し、
不活性ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、
ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって不活性ガスが存在するとの警告が与えられるようにかつ第2の臭気によって密閉環境の近傍にいる人が心配することのないように第2の臭気から区別可能であることを特徴とする、密閉環境内のユーザを保護する方法。
【請求項9】
第2の臭気は、エステル、テルペン、環状テルペン、芳香族化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、またはラクトンの群から選択されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
第2の臭気は、メチルホスピン、ジメチルホスフィン、ネロリン、テトラヒドロチオフェン、2,4,6−トリクロロアニソール、または置換ピラジンの群から選択されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
選択された第2の臭気が、不活性ガスが存在することの警告となることをユーザに教育することをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記臭気剤を火災抑制システムに差し込むことをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項13】
火災抑制システムは、航空機の客室に隣接する航空機の貨物室内にあることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
密閉環境内のユーザを保護する方法であって、
第1の臭気を有する貨物を収容する密閉環境を提供し、
貨物区画に隣接する客室を提供し、
火災抑制システムを提供し、
火災抑制システムから密閉環境へと不活性ガスを流し、
不活性ガスに第2の臭気を有する臭気剤を添加する、
ことを含み、第1の臭気は、第2の臭気剤の存在によって不活性ガスが存在するとの警告が与えられるようにかつ第2の臭気によって密閉環境の近傍にいる人が心配することのないように第2の臭気から区別可能であることを特徴とする、密閉環境内のユーザを保護する方法。
【請求項15】
第2の臭気は、エステル、テルペン、環状テルペン、芳香族化合物、アミン、アルコール、アルデヒド、ケトン、ラクトン、またはチオールの群から選択されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
第2の臭気は、メチルホスピン、ジメチルホスフィン、ネロリン、テトラヒドロチオフェン、2,4,6−トリクロロアニソール、または置換ピラジンの群から選択されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】
選択された第2の臭気が、不活性ガスが存在することの警告となることをユーザに教育することをさらに含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記臭気剤を火災抑制システムに差し込むことをさらに含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項19】
火災抑制システムは、航空機内にあることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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