説明

炉用遮断器の投入不良検出装置

【課題】炉用遮断器において、遮断器を投入するための投入コイルの焼損を確実に防止することができる炉用遮断器の投入不良検出装置を提供する。
【解決手段】投入不良検出装置は、製鋼用アーク炉1の主回路を開閉するための遮断器8と、遮断器8を投入するための投入コイル17と、投入コイル17に流れる電流を検出する電流検出回路18と、遮断器8の投入不良を検出する判定回路13とを備える。判定回路13は、開放状態の遮断器8を投入する際に、電流検出回路18によって検出された電流値が所定の基準値よりも大きい場合に、遮断器8の投入不良を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉用遮断器の投入不良を検出するための投入不良検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、製鋼用アーク炉において、主回路を保護するための装置が開示されている。特許文献1に記載のものでは、製鋼用アーク炉の主回路において過剰な電流が流れると、炉用遮断器を開放させて主回路を保護している。
【0003】
図4は従来の炉用遮断器の操作回路システムを示す図である。特許文献1に記載のものにおいても、炉用遮断器の操作回路は図4に示すようなシステム構成を採用している。
【0004】
図4において、1は製鋼用アーク炉、2は炉用変圧器である。炉用変圧器2は、一次側に交流電源(図示せず)が接続され、二次側に製鋼用アーク炉1の電極3が接続されている。4は製鋼用アーク炉1の炉体、5は炉体4内に入れられたスクラップである。
【0005】
21は炉用変圧器2の一次側に接続された炉用遮断器、22は製鋼用アーク炉1用の監視盤である。
炉用遮断器21には、主回路を開閉するための遮断器23と、遮断器23の開閉制御を行う操作回路24とが備えられている。炉用遮断器21(操作回路24)は、監視盤22からの指令に基づいて、遮断器23を開閉する。監視盤22には、遮断器操作手段25、指令回路26が備えられている。
【0006】
指令回路26は、遮断器操作手段25に対して所定の操作が行われた場合や、図示しない検出手段によって主回路の過電流が検出された場合等に、炉用遮断器21に対して、主回路を開閉するための指令を出力する。例えば、指令回路26から炉用遮断器21に対して投入指令が出力されると、操作回路24は、投入コイル(図示せず)を励磁して、遮断器23を投入して(閉じさせて)いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−70152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来では、炉用遮断器21の操作回路24において、投入コイルに流れる電流の検出を行っていなかった。このため、遮断器23の投入時に投入コイルに流れる電流に異常があっても、投入コイルが焼損するまでその異常を知ることができなかった。
なお、操作回路24内の投入コイルは、単体で交換することが難しい。このため、投入コイルが焼損すると、調査や交換のために長時間を要し、製鋼用アーク炉1の復旧が遅れるといった問題があった。即ち、投入コイルが焼損すると、操業効率が大幅に低下してしまう。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、炉用遮断器において、遮断器を投入するための投入コイルの焼損を確実に防止することができる炉用遮断器の投入不良検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る炉用遮断器の投入不良検出装置は、製鋼用アーク炉の主回路を開閉するための遮断器と、遮断器を投入するための投入コイルと、投入コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、開放状態の遮断器を投入する際に、電流検出手段によって検出された電流値が所定の基準値よりも大きい場合に、遮断器の投入不良を検出する判定手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る投入不良検出装置であれば、炉用遮断器において、遮断器を投入するための投入コイルの焼損を確実に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1における炉用遮断器の投入不良検出装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における炉用遮断器の投入不良検出装置の要部の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における炉用遮断器の投入不良検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の炉用遮断器の操作回路システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図において、同一又は相当する部分には、同一の符号を付している。重複する説明については、適宜簡略化或いは省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における炉用遮断器の投入不良検出装置の構成を示す図、図2はその要部の構成を示す図である。
図1及び図2において、1は製鋼用アーク炉、2は炉用変圧器である。炉用変圧器2は、一次側に交流電源(図示せず)が接続され、二次側に製鋼用アーク炉1の電極3が接続されている。4は製鋼用アーク炉1の炉体、5は炉体4内に入れられたスクラップである。電極3には、炉用変圧器2の電極タップによって変圧された電圧が供給される。これにより、電極3は、スクラップ5との間にアークを発生させ、スクラップ5を溶解させる。
【0015】
炉用変圧器2の一次側には、炉用遮断器6と上位遮断器7とが接続されている。
上位遮断器7は、炉用遮断器6に対する電圧供給を停止させるためのものである。即ち、上位遮断器7は、炉用遮断器6よりも上位に配置されている。通常時、上位遮断器7は閉じられており、交流電源からの電圧は炉用遮断器6に供給される。一方、所定の条件が成立して上位遮断器7が開放すると、交流電源からの電圧が炉用遮断器6に供給されなくなる。
【0016】
炉用遮断器6は、上位遮断器7と炉用変圧器2との間に設けられている。炉用遮断器6は、例えば、炉体4にスクラップ5を装入する時等、製鋼用アーク炉1の主回路を開閉するために使用される。主回路とは、交流電源から電極3に至る、炉用遮断器6や炉用変圧器2を含む回路のことをいう。炉用遮断器6は、主回路に流れる負荷電流や故障電流(短絡電流)を遮断するためにも使用される。
【0017】
炉用遮断器6には、主回路を開閉するための遮断器8と、遮断器8の開閉制御を行う操作回路9とが備えられている。
【0018】
10は製鋼用アーク炉1用の監視盤である。炉用遮断器6(操作回路9)は、監視盤10からの指令に基づいて、主回路(即ち、遮断器8)を開閉する。監視盤10には、遮断器操作手段11、指令回路12、判定回路13が備えられている。
【0019】
遮断器操作手段11は、監視員が手動で遮断器8を操作するためのものである。監視員は、炉体4にスクラップ5を装入する時等に、遮断器操作手段11を操作する。例えば、遮断器操作手段11に対して所定の操作を行うことにより、遮断器8を開放することができる。また、遮断器操作手段11に対して他の所定の操作を行うことにより、遮断器8を投入(閉じる)ことができる。
【0020】
指令回路12は、炉用遮断器6に対して、主回路を開閉するための指令、即ち、遮断器8を開放・投入するための指令を出力する。指令回路12は、遮断器操作手段11に対して主回路を遮断するための操作が行われると、炉用遮断器6に対して開放指令を出力し、遮断器8を開放させる。指令回路12は、遮断器操作手段11に対して主回路を投入するための操作が行われると、炉用遮断器6に対して投入指令を出力し、遮断器8を閉じさせる。また、指令回路12は、図示しない検出手段によって主回路の過電流が検出されると、炉用遮断器6に対して開放指令を出力し、遮断器8を開放させる。
【0021】
判定回路13は、遮断器8が投入された時の不良(投入不良)を検出するための手段を構成する。判定回路13には、電流値入力部14、状態信号入力部15、指令出力部16が備えられている。
判定回路13の具体的な機能については後述する。
【0022】
炉用遮断器6の操作回路9には、投入コイル17、電流検出回路18、状態検出回路19、開閉器20が備えられている。
投入コイル17は、遮断器8を投入する(閉じる)ためのコイルである。図2に示すP−N間は、所定の電源(投入用電源)に接続されている。この電源によって投入コイル17が励磁されると、遮断器8が投入される。即ち、交流電源からの電圧を炉用変圧器2に供給することができる。投入コイル17が励磁されていなければ、遮断器8は開放している。
【0023】
電流検出回路18は、投入コイル17に流れる電流を検出し、その検出結果を監視盤10の判定回路13に出力する。電流検出回路18によって検出された電流(実測)値は、判定回路13において電流値入力部14によって検出される。
【0024】
状態検出回路19は、遮断器8の状態(投入状態)を検出し、その状態信号を監視盤10の判定回路13に出力する。状態検出回路19は、遮断器8が開放している場合は、開放している旨の状態信号を判定回路13に出力する。また、状態検出回路19は、遮断器8が投入されて(閉じて)いる場合は、投入されている旨の状態信号を判定回路13に出力する。状態検出回路19からの状態信号は、判定回路13において状態信号入力部15によって検出される。
【0025】
判定回路13は、電流検出回路18によって検出された電流(実測)値と、状態検出回路19によって検出された遮断器8の状態とに基づいて、投入コイル17が焼損する恐れがあるか否かを判定する。判定回路13は、投入コイル17が焼損する恐れがある所定の条件が成立する場合に、遮断器8の投入不良を検出する。判定回路13によって遮断器8の投入不良が検出されると、指令出力部16から操作回路9と上位遮断器7とに対して、開放指令が出力される。
【0026】
開閉器20は、投入コイル17に直列に接続されている。開閉器20は、投入コイル17への電圧供給を制御するためのものである。即ち、開閉器20が開放している場合は、上記投入用電源からの電圧は、投入コイル17に供給されない。開閉器20が投入される(閉じる)と、投入用電源からの電圧が投入コイル17に供給される。指令回路12からの投入指令が操作回路9に入力されることにより、開閉器20は閉じられる。また、指令回路12からの開放指令或いは指令出力部16からの開放指令が操作回路9に入力されることにより、開閉器20は開放される。
【0027】
次に、図3も参照し、上記構成を有する投入不良検出装置の動作について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における炉用遮断器の投入不良検出装置の動作を示すフローチャートである。
【0028】
遮断器8を投入するための投入指令が発せられると(S101)、監視盤10の判定回路13では、投入コイル17の電流値(I)が基準値(Is)以下であるか否かを判定する(S102)。S102において、判定回路13は、投入コイル17の電流値(I)として、電流検出回路18によって検出された電流値を使用する。また、上記判定のための基準値(Is)は、投入コイル17の焼損を防止するための設定値であり、監視盤10に予め登録されている。
【0029】
電流検出回路18によって検出された電流値(I)が基準値(Is)以下であれば(S102のYes)、投入コイル17が焼損する恐れはない。かかる場合、判定回路13は、電流検出回路18による電流検出を継続させる(S103)。
【0030】
また、判定回路13には、状態検出回路19から遮断器8の状態信号が逐一入力されている(S104)。判定回路13は、電流検出回路18によって検出された電流値(I)が基準値(Is)以下であれば、状態検出回路19からの状態信号に基づいて、遮断器8の投入が完了したか否かを判定する(S105)。
【0031】
遮断器8の投入が開始された後、S102において投入不良が検出されることなく、状態検出回路19によって遮断器8の投入完了が検出されると(S105のYes)、判定回路13は、遮断器8の投入不良を判定するための処理を終了する。なお、その後に遮断器8が開放され、再び投入指令が発せられると、判定回路13は、S101以下の処理を再開させる。
【0032】
一方、S105において、遮断器8が開放している旨の状態信号が状態検出回路19から入力されると、判定回路13は、遮断器8の投入が未だ完了していないと判断する。かかる場合、判定回路13は、S102の処理に戻って、投入コイル17の電流値(I)と基準値(Is)との比較を行う。
【0033】
電流検出回路18によって検出された電流値(I)が基準値(Is)よりも大きい場合は、投入コイル17が焼損する恐れがある。判定回路13は、S102において、投入コイル17の電流値(I)が基準値(Is)よりも大きいことを検出し、その状態が所定の時間継続した場合は(S106)、遮断器8の投入不良を検出して、投入コイル17の焼損を防止するための処理を行う。
【0034】
具体的に、判定回路13は、遮断器8の投入不良を検出すると、指令出力部16から操作回路9に開放指令を出力し、開閉器20を開放させる(S107)。開閉器20が開放することにより、投入コイル17への電圧供給が停止され、投入コイル17に流れる電流が0になる。これにより、投入コイル17の焼損を確実に防止できる。なお、投入コイル17が消磁するため、遮断器8も開放する。
【0035】
また、判定回路13は、遮断器8の投入不良を検出すると、監視盤10に備えられた警報装置等から、アラームを発報させる(S108)。これにより、遮断器8の投入不良が発生したことを、監視員に知らせることができる。
【0036】
更に、判定回路13は、遮断器8の投入不良を検出すると、指令出力手段16から上位遮断器7に遮断指令を出力し、上位遮断器7を開放させる(S109)。上位遮断器7が開放することにより、炉用遮断器6への電圧供給が停止される。かかる構成であれば、例えば、上記アラームを聞いた監視員が炉用遮断器6の点検を行う際に、炉用遮断器6の電源を落とすといった操作をわざわざ行う必要がない。
【0037】
上記構成を有する投入不良検出装置であれば、炉用遮断器6の投入時に、投入コイル17の焼損を確実に防止することができる。従来のように、投入コイルの焼損によって操業効率が低下してしまう恐れもない。
また、タイマー(図3のS106に相当)を使用して、電流値(I)が基準値(Is)よりも大きい状態が所定時間継続する場合のみ、遮断器8の投入不良を検出することにより、投入不良の判定処理を精度良く行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0038】
1 製鋼用アーク炉
2 炉用変圧器
3 電極
4 炉体
5 スクラップ
6、21 炉用遮断器
7 上位遮断器
8、23 遮断器
9、24 操作回路
10、22 監視盤
11、25 遮断器操作手段
12、26 指令回路
13 判定回路
14 電流値入力部
15 状態信号入力部
16 指令出力部
17 投入コイル
18 電流検出回路
19 状態検出回路
20 開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼用アーク炉の主回路を開閉するための遮断器と、
前記遮断器を投入するための投入コイルと、
前記投入コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、
開放状態の前記遮断器を投入する際に、前記電流検出手段によって検出された電流値が所定の基準値よりも大きい場合に、前記遮断器の投入不良を検出する判定手段と、
を備えた炉用遮断器の投入不良検出装置。
【請求項2】
前記投入コイルに接続された開閉器と、
を備え、
前記判定手段は、前記遮断器の投入不良を検出すると、前記開閉器を開放させて前記投入コイルへの電圧供給を停止させる請求項1に記載の炉用遮断器の投入不良検出装置。
【請求項3】
前記遮断器よりも上位に配置された上位遮断器と、
を備え、
前記判定手段は、前記遮断器の投入不良を検出すると、前記上位遮断器を開放させて前記遮断器への電圧供給を停止させる請求項2に記載の炉用遮断器の投入不良検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記遮断器の投入不良を検出すると、所定の警報装置からアラームを発報させる請求項3に記載の炉用遮断器の投入不良検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、開放状態の前記遮断器を投入する際に、前記電流検出手段によって検出された電流値が所定の基準値よりも大きい状態が所定時間継続した場合に、前記遮断器の投入不良を検出する請求項1から請求項4の何れかに記載の炉用遮断器の投入不良判定装置。
【請求項6】
前記遮断器の状態を検出する状態検出手段と、
を備え、
前記判定手段は、開放状態の前記遮断器を投入する際に、前記遮断器の投入不良を検出することなく、前記状態検出手段によって前記遮断器の投入完了が検出されると、前記遮断器の投入不良を判定するための処理を終了する請求項1から請求項5の何れかに記載の炉用遮断器の投入不良検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114907(P2013−114907A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260132(P2011−260132)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】