説明

炎症を抑制するための医薬組成物、及び方法

【課題】炎症を抑制するための医薬組成物、特に関節炎に有用な医薬組成物の提供。
【解決手段】(a)ヒアルロン酸、(b)ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるビタミン、および(c)薬学上許容し得るキャリアを含有する医薬組成物は、より低用量のヒアルロン酸の使用で改善された抗炎症作用がもたらし、またヒアルロン酸がヒトの身体に入った後に引き起こす一時的な炎症反応を軽減又は回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症を抑制するための医薬組成物、特に関節炎に有用な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、関節軟骨の変性又は結合組織の炎症に起因して関節痛を引き起こし、その結果、関節の通常の動作に影響を与える、一般的な慢性疾患である。発生場所及び発生原因により、関節炎は、100種以上に分類され得る。最も一般的なタイプは、変形性関節炎(退行性関節炎)、関節リウマチ、痛風性関節炎、細菌性関節炎、強直性関節炎、及びエリテマトーデスを含む。
【0003】
関節炎の治療に関しては、初期治療は一般的に、薬物治療及び注射治療といった保守的及び非侵襲的な方法を採用する。初期治療が有効でない場合、外科手術療法が採用されるだろう。薬物治療は、ステロイド性抗炎症薬及び非ステロイド性抗炎症薬の使用を含むことが知られてきた。ステロイド性抗炎症薬は迅速かつ効果的な鎮痛作用をもたらすが、該薬物は、骨粗しょう症、治癒しない創傷(uncicatrized wounds)、上部消化管出血といった多くの副作用を引き起こし、又は高血圧若しくは糖尿病の症状をさらに悪化させ得る。したがって、これらの薬物は、薬物療法において徐々に排除される。非ステロイド性抗炎症薬については、それらは良好な鎮痛作用をもたらすが、長期で用いられると、消化性潰瘍、下肢浮腫、腎機能障害等の副作用を引き起こし得る。したがって、非ステロイド性抗炎症薬は、臨床適用において制限される。
【0004】
ヒアルロン酸(ヒアルロナン、又はアルズロン酸としても知られる)は、変形性関節炎の抑制のための注射製剤において広く用いられてきたことが知られている。この場合において、ヒアルロン酸を含有する注射溶液は患者の関節に直接的に注射され、炎症を中程度に軽減し、及び痛みの感覚を軽減する。ヒアルロン酸のメカニズムは、現在までいまだ不明であるが、ヒアルロン酸はまた、潤滑油として機能して関節の動きを助け、その間は関節機能を改善させ得ることが知られてきた。しかしながら、ヒアルロン酸は効果的に痛みを軽減させることができるが、ヒトの身体に入った場合に、数日以内に一時的な炎症反応を引き起こし得、さらには慢性的な炎症を引き起こし得ることが発見された(非特許文献1〜3、これらは参照により本明細書に全体において取り込まれる)。したがって、所望の抗炎症作用が低用量のヒアルロン酸によりもたらされ得ると、ヒアルロン酸がヒトの身体に入った後に引き起こされる後続の炎症反応が軽減され得、又はさらには回避され得る。
【0005】
ヒアルロン酸製剤を改善するための方法が報告されてきた。この方法において、化学的合成方法を用いることで、ヒアルロン酸は、コンジュゲートを形成するようにポリペプチドを介して、抗炎症作用を有するメトトレキサート(MTX)に結合され、得られた生成物は、改善された抗炎症作用を有する(非特許文献4、これは参照により本明細書に全体において取り込まれる)。しかしながら、該文献の教示によると、単にヒアルロン酸とメトトレキサートとを混合することで得られた混合物では、改善された効果を達成することはできない。言い換えれば、コンジュゲートの合成が必要である。しかしながら、コンジュゲートの調製は、ポリペプチドマテリアルを必要とし、及び複雑な合成工程を含む。それは、ヒアルロン酸製剤の製造コストを増大させざるを得ない。このように、この方法は、製造スケールの調製プロセスにおいて難点を有するばかりでなく、ユーザーの経済的な負荷をも増大させ、それゆえ、臨床適用において多くの制限を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Leopold et al.,Increased frequency of acute local reaction to intra−articular hylan GF−20(Synvisc)in patients receiving more than one course of treatment.J Bone Joint Surg,2002;84:1619−23
【非特許文献2】Bernardeau et al.,Acute arthritis after intra−articular hyaluronate injection: onset of effusions without crystal.Ann Rheum Dis,2001;60:518−20
【非特許文献3】Kroesen et al.,Induction of an acute attack of calcium pyrophosphate dihydrate arthritis by intra−articular injection of hylan G−F 20(Synvisc).Clin Rheumatol,2000;19:147−9
【非特許文献4】Homma et al.,Novel hyaluronic acid−methotrexate conjugates for osteoarthritis treatment, Bioorganic and Medicinal Chemistry,17(2009),4647−4656
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らは、ビタミンとヒアルロン酸との組み合わせが改善された抗炎症作用をもたらし得、それゆえ所望の抗炎症作用がより低用量のヒアルロン酸によりもたらされ得、ひいてはヒアルロン酸がヒトの身体に入った後に引き起こされる一時的な炎症反応を軽減又は回避することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の目的は、(a)ヒアルロン酸、(b)ビタミン、及び(c)薬学上許容し得るキャリアを含有する、炎症を抑制するための医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、ヒアルロン酸及びビタミンを含有する有効量の組成物を対象に投与することを含む、対象における炎症を抑制するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる他の目的は、有効量のヒアルロン酸を含有する第一部と、有効量のビタミンを含有する第二部と、を含む、炎症を抑制するためのキットを提供することである。
【0011】
詳細な技術及び本発明のために実施された好ましい実施態様は、この技術分野における当業者が特許請求の範囲に記載された発明の特徴をよく理解できるように、添付された図面とともに後述の段落において記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ビタミンCにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、炎症性メディエーターである腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の発現レベルを示す、統計カラム図である。
【図2】ビタミンCにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、炎症性メディエーターであるインターロイキン−1β(IL−1β)の発現レベルを示す、統計カラム図である。
【図3】ビタミンDにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、TNF−αの発現レベルを示す、統計カラム図である。
【図4】ビタミンDにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、IL−1βの発現レベルを示す、統計カラム図である。
【図5】ビタミンEにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、TNF−αの発現レベルを示す、統計カラム図である。
【図6】ビタミンEにより処理された線維芽細胞様滑膜細胞における、IL−1βの発現レベルを示す、統計カラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特にことわらない限り、本文中で(特に後述の特許請求の範囲において)用いられる“一”、“該”又は同様の用語は、単数形式及び複数形式の両方を包含するように理解されるべきである。
【0014】
前述の通り、ヒアルロン酸がヒトの身体に入った後、それはしばしば、数日内に一時的な炎症反応を引き起こし得、又はさらには慢性炎症を引き起こし得、ひいてはその抗炎症作用に悪影響を及ぼす。他の観点において、ヒアルロン酸とメトトレキサートとのコンジュゲートの調製に対する文献において提唱される改善された方法は、多くの制限を有する。ヒアルロン酸とビタミンとの組み合わせにより、本発明は、簡単なアプローチを用いて、従来のヒアルロン酸製剤のデメリットを改善する。
【0015】
したがって、本発明は、(a)ヒアルロン酸、(b)ビタミン、及び(c)薬学上許容し得るキャリアを含有する、炎症を抑制するための医薬組成物を提供する。
【0016】
ヒアルロン酸は、細胞外マトリックスの主要成分のひとつであり、上皮組織、結合組織、表皮組織、及び神経組織において広く分布する。ヒアルロン酸はまた、増殖、遊走等といった、細胞の生理学的活動に必要不可欠である。加えて、ヒアルロン酸は、皮膚の真皮における重要な保湿成分であり、優れた粘性及び弾力性を有するため、理想的なフィラーであり、通常、化粧製品及び形成手術において用いられる。
【0017】
ヒアルロン酸は、硫黄を含まないグリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸の基本構造は、2つのジサッカライドユニット、D−グルクロン酸、及びN−アセチルグルコサミンからなる大きなポリサッカライドであり、下記の化学式(I)の化学構造を有する。
【化1】

【0018】
ヒアルロン酸は、天然マテリアルから調製され得る。例えば、ニワトリのトサカ、臍帯、軟骨、皮膚等から抽出され得る。それはまた、化学合成により、又は酵母等のような微生物を用いた培養若しくは遺伝子操作により作られ得る。商業的なヒアルロン酸製剤もまた、本発明の医薬組成物におけるヒアルロン酸のソースとして用いられ得、例えば、ARTZ Dispo(登録商標)、SYNVISC(登録商標)、HYALGAN(登録商標)、ORTHOVISC(登録商標)等といった、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を含有する製剤;又はSYNVISC(登録商標)及びDUROLANE(登録商標)といった、架橋ヒアルロン酸誘導体の水溶液を含有する製剤である。
【0019】
本発明の医薬組成物においてヒアルロン酸(成分(a))に特に制限はないが、ヒアルロン酸の平均分子量は、好ましくは30kDaから10,000kDa、より好ましくは500kDaから6,000kDaである。加えて、ヒアルロン酸は、イオンの形態(すなわち、塩を形成していない)、又は薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩は、ヒアルロン酸の無機塩基との組み合わせにより形成される塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩といったアルカリ金属イオン塩;マグネシウム塩又はカルシウム塩といったアルカリ土類金属イオン塩;アンモニウム塩等);又はヒアルロン酸の有機塩基との組み合わせにより形成される塩(例えば、ジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アミノ酸等)を含む。
【0020】
ビタミンは、生物に必須の微量栄養素である。ビタミンは、生物それ自体が生成することはできず、食事といった外部のソースから得られなければならない。ビタミンは、炭水化物、タンパク質、及び脂質のように生体内においてエネルギーを作り出すということはできないが、それらは、有機体の代謝において重要な調節機能を有する。下記の実施例に示されるように、本発明の発明者らは、ビタミン又はヒアルロン酸の個別の投与に比して、ヒアルロン酸及びビタミンの組み合わせは、驚くべきことに、改善された抗炎症作用をもたらし得ることを見出した。したがって、ヒアルロン酸及びビタミンの組み合わせは、低用量のヒアルロン酸による所望の抗炎症作用をもたらし得、ひいては、ヒアルロン酸がヒトの身体に入った後に引き起こされる後続の炎症反応を軽減し又は回避する。
【0021】
本発明の医薬組成物における成分(b)は、好ましくは、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるビタミンである。より好ましくは、成分(b)は、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0022】
本発明の医薬組成物において、成分(a)の成分(b)に対する含量比において特に制限はない。成分(b)がビタミンC又はビタミンEのうち少なくとも1つである場合、成分(a)及び成分(b)は通常、成分(a)/成分(b)=1/1から1,000/1の重量比で存在し、好ましくは、成分(a)/成分(b)=1/1から10/1の重量比で存在する。成分(b)がビタミンDである場合、成分(a)及び成分(b)は通常、成分(a)/成分(b)=1,000/1から100,000/1の重量比で存在し、好ましくは、成分(a)/成分(b)=8,000/1から15,000/1の重量比で存在する。
【0023】
本発明の医薬組成物は、獣医学の及びヒトの薬剤の両方において用いられ得、それはいかなる適切な形態にもなり得、特定の制限無しにいかなる適切な手段でも適用され得る。例えば、限定されることなく、医薬組成物は、経口投与、皮下注射、静脈内注射、又は関節内注射等により適用され得る。本発明の医薬組成物の形態及び目的に依存して、医薬組成物は、成分(c)として薬学的に許容可能なキャリアを含有し得る。
【0024】
経口投与に適する薬剤の製造の観点から、本発明の医薬組成物は、溶媒、油性溶媒、溶剤、安定化剤、吸収遅延剤、崩壊剤、乳化剤、抗酸化剤、バインダー、潤滑剤、吸湿剤等といった、ヒアルロン酸及びビタミンの活性に悪影響を及ぼさない、薬学的に許容可能なキャリアを含有し得る。医薬組成物は、錠剤、顆粒、粉末、液体抽出物、溶液、シロップ、懸濁液、エマルション、チンキ剤等といった、いかなる適切なアプローチによっても、経口投与に適する形態において調製され得る。
【0025】
皮下注射、静脈内注射、又は関節内注射に適する薬剤に関しては、本発明の医薬組成物は、静脈内注射剤、エマルション静脈内注射剤、粉末注射剤、懸濁注射剤、粉末−懸濁注射剤等を作るために、pH調整剤、等張化剤、安定化剤(例えば、重硫酸ナトリウム、二水素硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、又は塩化ナトリウム等)、等張溶液、注射用水、緩衝生理食塩溶液、又は塩緩衝剤(例えば、リン酸緩衝溶液又はクエン酸緩衝溶液)等といった、1又は2以上の添加剤を含有し得る。
【0026】
任意に、香味剤、トナー、着色剤等といった他の添加剤は、組成物の味及び視覚的訴求を向上させるために、本発明の医薬組成物に添加され得る。適切な量の保存剤、保持剤、防腐剤、防カビ剤等もまた、得られた薬剤の保存性を向上させるために添加され得る。
【0027】
医薬組成物は任意に、薬剤の効果を促進させ又は製剤のフレキシビリティを増大させるために、1又は2以上の他の活性成分を含有し得る。例えば、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、グルコサミン、及び他の活性成分等といった、1又は2以上の活性成分は、他の活性成分がヒアルロン酸及びビタミンに悪影響を及ぼさない限り、本発明の医薬組成物に取り込まれ得る。
【0028】
本発明の医薬組成物は改善された抗炎症作用をもたらし得るため、それは炎症の抑制、特に、変形性関節炎(退行性関節炎)、関節リウマチ、痛風性関節炎、細菌性関節炎、強直性関節炎、エリテマトーデス等といった関節炎の抑制のために用いられ得、好ましくは、変形性関節炎及び関節リウマチの抑制のために用いられ得る。本発明の一実施態様において、本発明の医薬組成物は、関節内注射剤を用いる治療法のための注射製剤形態において調製される。
【0029】
関節リウマチに顕著な治癒効果をもたらすことのできない従来のヒアルロン酸製剤と比べると、本発明の医薬組成物の利点の一つは、それが膝関節の滑膜細胞からの腫瘍壊死因子(TNF、関節リウマチの重要な病原因子である)の分泌を抑制することにより関節リウマチに優れた抑制効果をもたらし得、それゆえ関節リウマチの治療に対して用いられ得るということである。加えて、本発明の医薬組成物はまた、インターロイキン−1(IL−1)抑制による抗炎症作用をもたらし得る。近年、退行性関節炎は、非古典的な炎症性疾患として認識され、退行性関節炎の進行はまた、インターロイキン−1の抑制により妨げられ得、それゆえ、退行性関節炎の自然既往歴を変化させる目的が達成される。
【0030】
加えて、本発明の医薬組成物は、効果的に関節痛を軽減させ患者の関節動作を改善させ得るばかりでなく、関節炎の進行を抑制し得る。さらに、所望の抗炎症作用をもたらすようにポリペプチドを用いて複雑なアプローチによりコンジュゲートを形成する、ヒアルロン酸とメトトレキサートとの従来の組み合わせとは異なり、本発明の医薬組成物は、ヒアルロン酸とビタミンとを単に混合することで生成される。このように、本発明は、簡単な調製プロセス及びラージスケールでの製造への適合性の利点を有する。
【0031】
本発明の医薬組成物は、従来のヒアルロン酸製剤の欠点を改善することができるため、それは、抗関節炎に限定されず、ヒアルロン酸のいかなる公知の適用にも用いられ得る。例えば、本発明の医薬組成物は、化粧製品及び形成手術において適用され得る。例えば、それは、スキンケア製品又はヒアルロン酸の顔面注射製剤に添加され得る。
【0032】
本発明はまた、有効量の(a)ヒアルロン酸及び(b)ビタミンを対象に投与することを含む、炎症を抑制するための方法を提供する。本発明の方法は特に、変形性関節炎、関節リウマチ、又は痛風性関節炎を抑制するために用いられ得る。ヒアルロン酸及びビタミンの種類、特性、ソース、比率、剤形、及び投与方法は、前述される。本発明の一実施態様において、本発明の医薬組成物は、関節炎の治療効果を達成するために、患者の関節への注射製剤形態において注入される。
【0033】
本発明はまた、有効量のヒアルロン酸を含有する第一部と、有効量のビタミンを含有する第二部と、を含む、炎症を抑制するためのキットを提供する。ヒアルロン酸及びビタミンの種類、特性、ソース、及び比率は、前述される。
【0034】
本発明のキットにおいて、第一部及び第二部の形態において特に制限はない。例えば、関節内注射のためキットにおいて、第一部及び第二部は、溶液の形態であり得、及び独立した殺菌パック(例えば、アンプルのようなプラスチックボトル又はガラスボトル)に分離して配置され得る。各パックは、第一部及び第二部の複数の剤型、しかし好ましくは単一の剤型を含み得る。この点で、第一部及び第二部は好ましくは、注射に適した溶液の形態であり、本発明のキットは、注射シリンジ(例えば、ディスポーサブル注射シリンジ)をさらに含み得、又は任意に使用説明書をさらに含み得る。関節内注射が行われる場合、製剤を適用するために、使用説明書(キットの操作方法、溶液の混合比等といった情報を含む)における情報により2つの部が注射シリンジに挿入され得る。
【0035】
他の側面では、経口投与のためのキットにおいて、第一部及び第二部は、錠剤又はカプセルの形態にて独立していることができ、2つの部は、単一又は複数の剤型で異なるパッケージに分離して配置され得る。この点で、本発明のキットは任意に、使用説明書を含み得る。経口投与が行われる場合、使用説明書(投与レジメン、推奨用量等といった情報を含む)における情報により2つの部が組み合わされ及び投与され得る。
【0036】
技術の詳細及び本発明のために実施された好ましい態様が、後述の段落において記載される。しかしながら、本発明の範囲はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0037】
(調製実施例)ヒアルロン酸関節内注射剤の調製
あらかじめ充填されたヒアルロン酸注射シリンジにおいて、1mLのヒアルロン酸の等張溶液(0.5−2mg/mLの濃度、600−800kDaの平均分子量)、及び0.01mgから1mgのビタミンC若しくはビタミンE、又は10−4−10−5mgのビタミンDが加えられた。塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、及びジハイドロサルファイトナトリウムの総量20mgのうち5mgをシリンジに加えた。最後に、添加剤として2mLの注射用水を加え、ヒアルロン酸関節内注射溶液を得た。該溶液を4℃で暗所に保管した。
【0038】
(実施例1)
ヒアルロン酸関節内注射剤溶液の細胞分析
(実施例A.細胞培養)
退行性関節炎の5名の患者より線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)を収集し、培養した。はじめに、患者の関節滑膜を小片にカットし、DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)培地に懸濁し、3日間、37℃及び5%COの環境下でインキュベートした。培地は、1.5g/L重炭酸ナトリウム(S6297,Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−ネオマイシン(P408,Sigma−Aldrich)、及び10%ウシ胎児血清(04−001−1A, Biological Industries,Grand Island,NY,USA)を含む。
【0039】
非接着細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で除去し、培地をリフレッシュし、接着細胞を2週間培養した。上述の工程を3−6回繰り返した後、残った細胞は線維芽細胞様滑膜細胞であった。得られた細胞をその後、下記の試験に用いた。
【0040】
(実施例B.細胞処理)
実施例Aから得られた線維芽細胞様滑膜細胞を、24時間、血清を含まない培地で培養した。その後、線維芽細胞様滑膜細胞を、24時間、下記の4つの培地にて別々に培養した:(1)10%ウシ胎児血清のみを含有するDMEM培地(コントロール群として);(2)10%ウシ胎児血清及びヒアルロン酸(600kDaから800kDaの平均分子量を有する)を含有するDMEM培地;(3)10%ウシ胎児血清及びビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEを含有するDMEM培地;(4)10%ウシ胎児血清、ヒアルロン酸(600kDaから800kDaの平均分子量を有する)、及びビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEを含有するDMEM培地。前述の4つの培地のヒアルロン酸及びビタミンの濃度は、前述の調製実施例と同様であった。
【0041】
その後、前述の4群の細胞を収集し遠心分離し、上清を下記の分析のために収集した。
【0042】
(実施例C.関節炎に関連するタンパク質の定量)
炎症反応は、複雑な仕組みであり、フリーラジカル分子(例えば、一酸化窒素及び過酸化水素等)、及びサイトカイン(プロスタグランジンE2(PGE2)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターフェロン−γ(TNF−γ)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−1β(IL−1β)等)の生成を含む。したがって、関節炎に関連するフリーラジカル分子又はサイトカインを定量することにより、炎症レベルを測定することができる。
【0043】
この実施例において、実施例Bより収集された上清中の退行性関節炎に関連する2つのサイトカインの濃度を、サンドイッチ結合タンパク質アッセイキット(又はサンドイッチELISAキット、eBioscience社より購入)を用いて、使用説明書に従って標準曲線を基礎として測定し、これらのサイトカインの発現レベルを分析し、細胞の炎症レベルを測定した。2つのサイトカインは、腫瘍壊死因子−α(標準、88−7340、eBioscience社より購入)及びインターロイキン−1β(標準、88−7010、eBioscience社より購入)であった。各サンプルを2回分析し、酵素免疫測定法(ELISA)リーダー(Sunrise Remote、TECAN)を用いて測定を行った。結果を表1−3及び図1−6に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
(分析結果)
表1−3及び図1−6の結果は、退行性関節炎の患者からの関節細胞は、炎症性メディエーターであるTNF−α及びIL−1βを大量に分泌したことを示し、それは重度の炎症が起こっていたことを示唆する。しかしながら、ヒアルロン酸及びビタミンの組み合わせは、炎症性メディエーターの発現を効果的に抑制し得る。図1、3及び5に示されるように、本発明のヒアルロン酸及びビタミンの組み合わせは、TNF−α(関節リウマチの重要な病原因子)の発現を効果的に抑制し得、したがって、それは、関節炎、特に関節リウマチに優れた抑制効果をもたらし得る。さらに、図2、4及び6で示されるように、IL−1βの発現を抑制することにより、本発明のヒアルロン酸及びビタミンの組み合わせは、炎症、特に退行性関節炎に優れた抑制効果をもたらし得る。前述の分析データはまた、本発明の医薬組成物が改善された抗炎症作用をもたらし得ることを示唆する。
【0048】
前述の開示は、詳述された技術内容及び本発明の特徴に関する。本技術分野における当業者であれば、本発明の特徴から逸脱することなく、本明細書に記載された発明の開示及び示唆に基づき種々の変更及び置換を行い得る。それにもかかわらず、このような変更及び置換は前述の説明には完全には開示されていないものの、それらは下記に添えられた特許請求の範囲に実質的に含まれる。
【0049】
(関連する出願)
本出願は、台湾特許出願100133355(出願日2011年9月16日)に基づく優先権を主張しており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒアルロン酸と、
(b)ビタミンと、
(c)薬学上許容し得るキャリアと、
を含有する、炎症の抑制における使用のための医薬組成物。
【請求項2】
成分(a)は、30,000ダルトンから10,000,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
成分(a)は、500,000ダルトンから6,000,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
成分(b)は、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
成分(b)は、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
成分(b)は、ビタミンC及びビタミンEのうち少なくとも1つであり、成分(a)及び成分(b)は、成分(a)/成分(b)=1/1から1,000/1の重量比で存在する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
成分(a)/成分(b)の重量比は、1/1から10/1である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
成分(b)は、ビタミンDであり、成分(a)及び成分(b)は、成分(a)/成分(b)=1,000/1から100,000/1の重量比で存在する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
関節炎の抑制における使用のための、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
変形性関節炎、関節リウマチ、又は痛風性関節炎の抑制における使用のための、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63943(P2013−63943A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23099(P2012−23099)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(509075457)中國醫藥大學 (11)
【Fターム(参考)】