炭入りクッション材
【目的】 本発明は、結合剤により付着した炭粒子を有しながらも、良好な体圧分散性を発現する炭入りクッション材を提供する。
【構成】 炭入りクッション材10は、炭粒子が表面部に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする。その際、炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされていることが好ましい。
【構成】 炭入りクッション材10は、炭粒子が表面部に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする。その際、炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス、枕などに使用される、消臭機能を有する体圧分散性に優れたクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性炭、備長炭、竹炭、松果炭などの炭を含有したクッション材をカバー材で被覆してなるマットレスなどの寝具は知られている。このような炭入りクッション材は、例えば、裁断された軟質ポリウレタンフォームの表面に水性結合剤に混ぜ込んだ炭粒子を塗布し、やや内側へ含浸させたのち水を蒸発させることで作製される。
【特許文献1】特開2001−164032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の方法によれば、炭粒子はポリウレタンフォームの表面部に付着するが、同時に水性結合剤中に含まれる固形成分も付着してしまうために、ポリウレタンフォームの表面部が硬くなるとともに小さな力では伸びづらくなる。そのため、本来軟質ポリウレタンフォームが有する身体の形状への追従性、いわゆる体圧分散性が低下して図11に示すように身体の最も低い部分に体圧が集中するという問題がある。
本発明は、結合剤により付着した炭粒子を有しながらも、良好な体圧分散性を発現する炭入りクッション材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の炭入りクッション材は、炭粒子が表面部に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする。
その際、炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされていることが好ましい。
また、凹部と凸部の高低差が、最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくしてあることが好ましい。
さらに、凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状とされたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明のクッション材は、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着しているので、炭粒子の付着部の表面積が増大しており、身体による荷重がかかったときに、その身体の形状に追従してフォームの表面部を表面方向に伸ばそうとする力自体が比較的発生しない。したがって、フォームの表面部の伸び性の低下により身体の形状への追従性が低下するといった問題が改善されるという効果がある。また、フォームの表面積の増大により、炭粒子がフォームの表面部に多く配置されうるので、炭粒子使用量あたりの消臭効率が高い。
【0006】
炭粒子の付着部位が、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされた場合には、フォームの表面部を伸ばそうとする力は、炭粒子の付着してない部分が伸びることで吸収されるので、身体形状への追従性の低下の問題は大きく改善される。そして、炭粒子の付着した部分が凸部を除いた部分とされた場合には、凸部への体圧の集中を緩和させることができる。
【0007】
炭粒子の付着した部分が凸部のみとされた場合には、凹部と凸部の高低差が最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくすることで、身体荷重がかかったときに、凸部は比較的沈み込みやすくなるし、また横向き倒れやすくなるので、凸部への体圧の集中を緩和させることができる。
【0008】
凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状とされた場合には、それぞれの凸部は、海に浮かぶ島のように孤立していることになるので、身体による荷重がかかったときに、その身体の形状に追従してフォームの表面部を表面方向に伸ばそうとする力自体がほとんど発生しない。したがって、フォームの表面部の伸び性の低下により身体の形状への追従性が低下するといった問題が大きく改善されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の炭入りクッション材の実施形態を以下図面に基づいて具体的に説明する。本発明の炭入りクッション材は、図1、図2に示すように、表面が凹部凸部の繰り返し面とされている軟質ポリウレタンフォームを用いる。図1のフォーム2は、表面が平面視千鳥格子状の凹部凸部の繰り返し面とされたもので、図2のフォーム3は、表面が縞状の凹部凸部の繰り返し面とされたものである。
【0010】
図1、図2に示すようなフォームは、図3に示すようなプロファイル加工装置5を使用して作製することができる。プロファイル加工とは、機械的にフォームを変形させて、変形状態のフォームを裁断することで凹部凸部の繰り返し面を形成する加工のことを言う。図2に示すようなフォームは2次元裁断機でも作製することができる。
【0011】
炭粒子は、結合剤に分散されたのち塗布によりフォームの表面部に付着される。結合剤としては、水分と反応して固化するウレタンプレポリマー、水分の蒸発により固化する水性接着剤などが挙げられるが、固形成分の使用量の割に多くの炭粒子をフォームに付着できる点で水性接着剤が好ましい。水性接着剤は、乾燥性、含浸性などを考慮して固形成分30〜60重量%のものを炭粒子1重量部に対し3〜30重量部の割合で用いることが好ましい。フォームへの前記固形成分の付着量は、炭粒子の付着部において表面積1m2あたり60〜600gとすることが好ましい。固形成分があまり少ないと炭粒子をフォームへ付着させ難く、多いと炭粒子の付着部が硬くなりクッション材の体圧分散性が悪化する傾向にある。また、炭粒子の付着部において、表面を基準として1〜2mm深さにおける空間の割合が70%以上であることが好ましい。この部位におけるフォームの気泡が前記固形成分で埋まって空間が70%未満になるようであるとクッション材の体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0012】
炭粒子の塗布手段としては、吹付け、ロールコーティングなどが利用できる。このような炭粒子の付着方法によれば、フォームの表面及びある程度の深さまでの表面部に炭粒子を付着させることができる。炭粒子を付着させる深さは、1〜5mmとすることが好ましい。炭粒子の付着深さをあまり深くすると、炭付着によって硬化したフォームの表面部が、身体荷重によって変形したのち復元しない傾向にあるばかりでなく、クッション材の体圧分散性も悪化する傾向にある。炭粒子の付着量は、炭粒子の付着部において表面積1m2あたり10〜100gとすれば消臭効果が得られる。
【0013】
炭粒子は、活性炭、備長炭、竹炭、松果炭などが利用される。炭粒子の大きさは特に限定されないが、フォームのやや内側にも付着させるためにフォームの平均セル径よりも小さくする必要があり、100μm以下とすることが好ましい。
【0014】
軟質ポリウレタンフォームは、一般にはポリオキシアルキレンポリオールなどのポリオールおよびジイソシアネートに、発泡剤、製法剤および触媒等の副原料を混合することによって製造される。
【0015】
ポリオールとしてポリオキシアルキレンポリオール中でアクリロニトリル、スチレンなどのエチレン性不飽和単量体を重合させて得たポリマーポリオールをポリオキシアルキレンポリオールに含んだものを使用することで、軟質ポリウレタンフォームは高弾性となり本発明の炭入りクッション材としては好ましい。つまり、結合剤中に含まれる固形成分によって硬化したフォームの表面部分は、身体荷重によって変形したまま復元しない傾向にあるのだが、高弾性フォームを使用することで復元性を保つことができる。
【0016】
クッション材は、単一のポリウレタンフォームでも良いし、凹部凸部の繰り返し面の反対側に別のポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームあるいは固綿などを積層した積層構造としても良い。
【0017】
炭粒子を付着するポリウレタンフォームは、密度30〜40kg/m3のものが好ましい。これより密度が小さいと良好な弾性が発現せず、これより密度を大きくしても重くなるばかりである。このような密度範囲のもとでポリウレタンフォームは、硬さ130〜190N(JIS−K6400−2:D法)のものが好ましい。これより硬さが小さいと、炭の付着によって硬化したフォームの表面部分が、身体荷重によって変形したのち復元しない傾向にあり、これより硬さが大きいと凸部に体圧が集中して体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0018】
図1に示すように、凹部凸部の繰り返し面が、平面視千鳥格子状に形成されたものにあっては、図4、図5及び図6に示すように凹部と凸部の高低差hが最短距離に隣接する凸部間の距離pよりも1〜20%大きいことが好ましい、図2に示すように、凹部凸部の繰り返し面が、縞状に形成されたものにあっては、図7、図8及び図9に示すように凹部と凸部の高低差hが隣接する凸部間の距離pよりも1〜60%大きいことが好ましい。この割合があまり大きいと身体荷重を受けたときにすべての凸部が倒れやすくなるので体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0019】
前記高低差h及び前記凸部間の距離pの数値範囲は、図4〜図9で説明すると、hが30〜50mmであり、pが20〜40mmであることが好ましい。高低差hがあまり小さいと体圧分散性が不足する傾向にあり、あまり大きくしても体圧分散性の向上はみられない。凸部間の距離pが20mmより小さいと凸部の容積が小さくなって破損しやすくなり、40mmより大きいと体圧分散性が悪化する傾向にある。
【実施例】
【0020】
(炭入り水性結合剤の作製)松果炭粒子と水とを1:3.5の割合で混ぜた後、このものに対して水性1液ゴム系接着剤(SIMALFA−309固形分濃度54重量%;ALFA Klebstoffe AG社製)を1:4の割合で混ぜて炭入り水系結合剤を作製した。この炭入り水性結合剤は、100gあたり炭粒子4.4g、固形成分43.2g、水分52.4gである。松果炭粒子は250メッシュの篩を通過したものを使用した。
【0021】
(実施例1)密度32kg/m3のポリウレタンフォームをプロファイル加工して、図1に示すような表面が平面視千鳥格子状の凹部凸部の繰り返し面を有するポリウレタンフォーム2を作製した。このフォームの形状は、総厚tが90mm、高低差hが37mm、凸部間の距離pが35mmである。フォームの硬さは170Nである。
このフォームの凹部凸部の繰り返し面の全域に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図4に示すような炭入りクッション材10を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。なお、各図の符号1に示した黒塗り部分が炭の付着部分である。
【0022】
(実施例2)実施例1で作製したものと同様なポリウレタンフォーム2を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凸部のみに、ロールコーティング法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図5に示すような炭入りクッション材11を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0023】
(実施例3)実施例1で作製したものと同様なポリウレタンフォーム2を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凹部に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図6に示すような炭入りクッション材12を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0024】
(実施例4)密度40kg/m3のポリウレタンフォームを2次元裁断して、図2に示すような表面が縞状の凹部凸部の繰り返し面を有するポリウレタンフォーム3を作製した。このフォームの形状は、総厚tが90mm、高低差hが37mm、凸部間の距離pが35mmである。フォームの硬さは140Nである。
このフォームの凹部凸部の繰り返し面の全域に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図7に示すような炭入りクッション材13を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0025】
(実施例5)実施例4で作製したものと同様なポリウレタンフォーム3を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凸部のみに、ロールコーティング法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図8に示すような炭入りクッション材14を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0026】
(実施例6)実施例4で作製したものと同様なポリウレタンフォーム3を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凹部に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図9に示すような炭入りクッション材15を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0027】
本発明の実施例1〜6で得られた炭入りクッション材10〜15は、図10に示すように身体の形状に追従するもので、いわゆる体圧分散性が優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】炭入りクッション材に用いるポリウレタンフォームの斜視説明図。
【図2】炭入りクッション材に用いる別形状のポリウレタンフォームの斜視説明図。
【図3】ポリウレタンフォームのプロファイル加工の説明図。
【図4】炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図5】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図6】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図7】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図8】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図9】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図10】本発明の炭入りクッション材に身体荷重がかかったとき、クッション材の変形状態を表す図。
【図11】従来の炭入りクッション材に身体荷重がかかったとき、クッション材の変形状態を表す図。
【符号の説明】
【0029】
1 炭付着部分
2 ポリウレタンフォーム
3 ポリウレタンフォーム
4 身体
10 本発明の炭入りクッション材
11 本発明の炭入りクッション材
12 本発明の炭入りクッション材
13 本発明の炭入りクッション材
14 本発明の炭入りクッション材
15 本発明の炭入りクッション材
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス、枕などに使用される、消臭機能を有する体圧分散性に優れたクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性炭、備長炭、竹炭、松果炭などの炭を含有したクッション材をカバー材で被覆してなるマットレスなどの寝具は知られている。このような炭入りクッション材は、例えば、裁断された軟質ポリウレタンフォームの表面に水性結合剤に混ぜ込んだ炭粒子を塗布し、やや内側へ含浸させたのち水を蒸発させることで作製される。
【特許文献1】特開2001−164032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の方法によれば、炭粒子はポリウレタンフォームの表面部に付着するが、同時に水性結合剤中に含まれる固形成分も付着してしまうために、ポリウレタンフォームの表面部が硬くなるとともに小さな力では伸びづらくなる。そのため、本来軟質ポリウレタンフォームが有する身体の形状への追従性、いわゆる体圧分散性が低下して図11に示すように身体の最も低い部分に体圧が集中するという問題がある。
本発明は、結合剤により付着した炭粒子を有しながらも、良好な体圧分散性を発現する炭入りクッション材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の炭入りクッション材は、炭粒子が表面部に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする。
その際、炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされていることが好ましい。
また、凹部と凸部の高低差が、最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくしてあることが好ましい。
さらに、凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状とされたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明のクッション材は、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着しているので、炭粒子の付着部の表面積が増大しており、身体による荷重がかかったときに、その身体の形状に追従してフォームの表面部を表面方向に伸ばそうとする力自体が比較的発生しない。したがって、フォームの表面部の伸び性の低下により身体の形状への追従性が低下するといった問題が改善されるという効果がある。また、フォームの表面積の増大により、炭粒子がフォームの表面部に多く配置されうるので、炭粒子使用量あたりの消臭効率が高い。
【0006】
炭粒子の付着部位が、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみあるいは凹部のみとされた場合には、フォームの表面部を伸ばそうとする力は、炭粒子の付着してない部分が伸びることで吸収されるので、身体形状への追従性の低下の問題は大きく改善される。そして、炭粒子の付着した部分が凸部を除いた部分とされた場合には、凸部への体圧の集中を緩和させることができる。
【0007】
炭粒子の付着した部分が凸部のみとされた場合には、凹部と凸部の高低差が最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくすることで、身体荷重がかかったときに、凸部は比較的沈み込みやすくなるし、また横向き倒れやすくなるので、凸部への体圧の集中を緩和させることができる。
【0008】
凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状とされた場合には、それぞれの凸部は、海に浮かぶ島のように孤立していることになるので、身体による荷重がかかったときに、その身体の形状に追従してフォームの表面部を表面方向に伸ばそうとする力自体がほとんど発生しない。したがって、フォームの表面部の伸び性の低下により身体の形状への追従性が低下するといった問題が大きく改善されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の炭入りクッション材の実施形態を以下図面に基づいて具体的に説明する。本発明の炭入りクッション材は、図1、図2に示すように、表面が凹部凸部の繰り返し面とされている軟質ポリウレタンフォームを用いる。図1のフォーム2は、表面が平面視千鳥格子状の凹部凸部の繰り返し面とされたもので、図2のフォーム3は、表面が縞状の凹部凸部の繰り返し面とされたものである。
【0010】
図1、図2に示すようなフォームは、図3に示すようなプロファイル加工装置5を使用して作製することができる。プロファイル加工とは、機械的にフォームを変形させて、変形状態のフォームを裁断することで凹部凸部の繰り返し面を形成する加工のことを言う。図2に示すようなフォームは2次元裁断機でも作製することができる。
【0011】
炭粒子は、結合剤に分散されたのち塗布によりフォームの表面部に付着される。結合剤としては、水分と反応して固化するウレタンプレポリマー、水分の蒸発により固化する水性接着剤などが挙げられるが、固形成分の使用量の割に多くの炭粒子をフォームに付着できる点で水性接着剤が好ましい。水性接着剤は、乾燥性、含浸性などを考慮して固形成分30〜60重量%のものを炭粒子1重量部に対し3〜30重量部の割合で用いることが好ましい。フォームへの前記固形成分の付着量は、炭粒子の付着部において表面積1m2あたり60〜600gとすることが好ましい。固形成分があまり少ないと炭粒子をフォームへ付着させ難く、多いと炭粒子の付着部が硬くなりクッション材の体圧分散性が悪化する傾向にある。また、炭粒子の付着部において、表面を基準として1〜2mm深さにおける空間の割合が70%以上であることが好ましい。この部位におけるフォームの気泡が前記固形成分で埋まって空間が70%未満になるようであるとクッション材の体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0012】
炭粒子の塗布手段としては、吹付け、ロールコーティングなどが利用できる。このような炭粒子の付着方法によれば、フォームの表面及びある程度の深さまでの表面部に炭粒子を付着させることができる。炭粒子を付着させる深さは、1〜5mmとすることが好ましい。炭粒子の付着深さをあまり深くすると、炭付着によって硬化したフォームの表面部が、身体荷重によって変形したのち復元しない傾向にあるばかりでなく、クッション材の体圧分散性も悪化する傾向にある。炭粒子の付着量は、炭粒子の付着部において表面積1m2あたり10〜100gとすれば消臭効果が得られる。
【0013】
炭粒子は、活性炭、備長炭、竹炭、松果炭などが利用される。炭粒子の大きさは特に限定されないが、フォームのやや内側にも付着させるためにフォームの平均セル径よりも小さくする必要があり、100μm以下とすることが好ましい。
【0014】
軟質ポリウレタンフォームは、一般にはポリオキシアルキレンポリオールなどのポリオールおよびジイソシアネートに、発泡剤、製法剤および触媒等の副原料を混合することによって製造される。
【0015】
ポリオールとしてポリオキシアルキレンポリオール中でアクリロニトリル、スチレンなどのエチレン性不飽和単量体を重合させて得たポリマーポリオールをポリオキシアルキレンポリオールに含んだものを使用することで、軟質ポリウレタンフォームは高弾性となり本発明の炭入りクッション材としては好ましい。つまり、結合剤中に含まれる固形成分によって硬化したフォームの表面部分は、身体荷重によって変形したまま復元しない傾向にあるのだが、高弾性フォームを使用することで復元性を保つことができる。
【0016】
クッション材は、単一のポリウレタンフォームでも良いし、凹部凸部の繰り返し面の反対側に別のポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームあるいは固綿などを積層した積層構造としても良い。
【0017】
炭粒子を付着するポリウレタンフォームは、密度30〜40kg/m3のものが好ましい。これより密度が小さいと良好な弾性が発現せず、これより密度を大きくしても重くなるばかりである。このような密度範囲のもとでポリウレタンフォームは、硬さ130〜190N(JIS−K6400−2:D法)のものが好ましい。これより硬さが小さいと、炭の付着によって硬化したフォームの表面部分が、身体荷重によって変形したのち復元しない傾向にあり、これより硬さが大きいと凸部に体圧が集中して体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0018】
図1に示すように、凹部凸部の繰り返し面が、平面視千鳥格子状に形成されたものにあっては、図4、図5及び図6に示すように凹部と凸部の高低差hが最短距離に隣接する凸部間の距離pよりも1〜20%大きいことが好ましい、図2に示すように、凹部凸部の繰り返し面が、縞状に形成されたものにあっては、図7、図8及び図9に示すように凹部と凸部の高低差hが隣接する凸部間の距離pよりも1〜60%大きいことが好ましい。この割合があまり大きいと身体荷重を受けたときにすべての凸部が倒れやすくなるので体圧分散性が悪化する傾向にある。
【0019】
前記高低差h及び前記凸部間の距離pの数値範囲は、図4〜図9で説明すると、hが30〜50mmであり、pが20〜40mmであることが好ましい。高低差hがあまり小さいと体圧分散性が不足する傾向にあり、あまり大きくしても体圧分散性の向上はみられない。凸部間の距離pが20mmより小さいと凸部の容積が小さくなって破損しやすくなり、40mmより大きいと体圧分散性が悪化する傾向にある。
【実施例】
【0020】
(炭入り水性結合剤の作製)松果炭粒子と水とを1:3.5の割合で混ぜた後、このものに対して水性1液ゴム系接着剤(SIMALFA−309固形分濃度54重量%;ALFA Klebstoffe AG社製)を1:4の割合で混ぜて炭入り水系結合剤を作製した。この炭入り水性結合剤は、100gあたり炭粒子4.4g、固形成分43.2g、水分52.4gである。松果炭粒子は250メッシュの篩を通過したものを使用した。
【0021】
(実施例1)密度32kg/m3のポリウレタンフォームをプロファイル加工して、図1に示すような表面が平面視千鳥格子状の凹部凸部の繰り返し面を有するポリウレタンフォーム2を作製した。このフォームの形状は、総厚tが90mm、高低差hが37mm、凸部間の距離pが35mmである。フォームの硬さは170Nである。
このフォームの凹部凸部の繰り返し面の全域に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図4に示すような炭入りクッション材10を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。なお、各図の符号1に示した黒塗り部分が炭の付着部分である。
【0022】
(実施例2)実施例1で作製したものと同様なポリウレタンフォーム2を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凸部のみに、ロールコーティング法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図5に示すような炭入りクッション材11を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0023】
(実施例3)実施例1で作製したものと同様なポリウレタンフォーム2を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凹部に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図6に示すような炭入りクッション材12を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0024】
(実施例4)密度40kg/m3のポリウレタンフォームを2次元裁断して、図2に示すような表面が縞状の凹部凸部の繰り返し面を有するポリウレタンフォーム3を作製した。このフォームの形状は、総厚tが90mm、高低差hが37mm、凸部間の距離pが35mmである。フォームの硬さは140Nである。
このフォームの凹部凸部の繰り返し面の全域に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図7に示すような炭入りクッション材13を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0025】
(実施例5)実施例4で作製したものと同様なポリウレタンフォーム3を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凸部のみに、ロールコーティング法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図8に示すような炭入りクッション材14を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0026】
(実施例6)実施例4で作製したものと同様なポリウレタンフォーム3を用い、このフォームの凹部凸部の繰り返し面の凹部に、吹きつけ法により炭入り水性結合剤を塗布したのち乾燥させて、端面が図9に示すような炭入りクッション材15を得た。炭入り水性結合剤の塗布量は、塗布した部分において表面積1m2あたり平均1000g(wet)とした。
【0027】
本発明の実施例1〜6で得られた炭入りクッション材10〜15は、図10に示すように身体の形状に追従するもので、いわゆる体圧分散性が優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】炭入りクッション材に用いるポリウレタンフォームの斜視説明図。
【図2】炭入りクッション材に用いる別形状のポリウレタンフォームの斜視説明図。
【図3】ポリウレタンフォームのプロファイル加工の説明図。
【図4】炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図5】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図6】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、(A)はABCDで切断したときの説明図、(B)はEFGHで切断したときの説明図。
【図7】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図8】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図9】別の態様の炭入りクッション材の端面図で、IJKLで切断したときの説明図。
【図10】本発明の炭入りクッション材に身体荷重がかかったとき、クッション材の変形状態を表す図。
【図11】従来の炭入りクッション材に身体荷重がかかったとき、クッション材の変形状態を表す図。
【符号の説明】
【0029】
1 炭付着部分
2 ポリウレタンフォーム
3 ポリウレタンフォーム
4 身体
10 本発明の炭入りクッション材
11 本発明の炭入りクッション材
12 本発明の炭入りクッション材
13 本発明の炭入りクッション材
14 本発明の炭入りクッション材
15 本発明の炭入りクッション材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭粒子が表面に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする炭入りクッション材。
【請求項2】
炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみとされていることを特徴とする請求項1記載の炭入りクッション材。
【請求項3】
炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凹部のみとされていることを特徴とする請求項1記載の炭入りクッション材。
【請求項4】
凹部と凸部の高低差が、最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくしてあることを特徴とする請求項2記載の炭入りクッション材。
【請求項5】
凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状にされたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭入りクッション材。
【請求項1】
炭粒子が表面に付着したポリウレタンフォームを含むクッション材において、凹部凸部の繰り返し面に炭粒子が付着していることを特徴とする炭入りクッション材。
【請求項2】
炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凸部のみとされていることを特徴とする請求項1記載の炭入りクッション材。
【請求項3】
炭粒子の付着部位は、凹部凸部の繰返し面全域に連続しないように、凹部のみとされていることを特徴とする請求項1記載の炭入りクッション材。
【請求項4】
凹部と凸部の高低差が、最短距離に隣接する凸部間の距離よりも大きくしてあることを特徴とする請求項2記載の炭入りクッション材。
【請求項5】
凹部凸部の繰り返し面が、プロファイル加工により平面視千鳥格子状にされたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭入りクッション材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−257201(P2006−257201A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74941(P2005−74941)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
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