説明

炭酸塩および/または炭酸水素塩鉱物の同時生成による廃棄ガス流からの二酸化炭素除去方法

【課題】ガス流から二酸化炭素および他の汚染物質を除去する装置および方法を提供する。
【解決手段】水性混合物中に水酸化物を得る段階、この水酸化物をガス流と混合し、炭酸塩および/または炭酸水素塩を生成する段階を含む。本発明の装置の一部は、水酸化物を提供する電気分解チャンバ917と、水酸化物を二酸化炭素を含むガス流と混合し、炭酸塩および/または炭酸水素塩を含む混和物を形成する混合機908、909とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年9月20日に出願された米国仮出願第60/973,948号、2008年2月29日に出願された米国仮出願第61/032,802号、および2008年3月3日に出願された米国仮出願第61/033,298号に対する優先権の恩典を主張し、これら全文献の内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.発明の分野
本発明は一般に、廃棄物流から二酸化炭素および、それと並行して他の汚染物質を除去する技術分野に関する。より具体的には、本発明は、濃縮された煙道ガス様の流れから二酸化炭素および他の汚染物質を吸収したのち、吸収された任意の偶発的汚染物質を連行し、中和する炭酸塩および/または炭酸水素塩物質を同時生成することによって廃棄物流から二酸化炭素および他の汚染物質を除去することに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
過去40年間、工業から空気中への放出物に対し、個人的および商業的な両セクタにおいて相当な国内的および国際的関心がますます向けられている。特に、大気中への太陽熱の滞留に影響して「温室効果」を生じさせる性質を有する温室効果ガスが注目されている。温室効果は、太陽から入ってくる熱が地球の大気および水圏中に捕らえられて、地球の平均大気温度、海洋温度ならびに他の中間および平均温度尺度を気候変動点以上まで高めるときに生じる;この効果は一般に、地球の熱均衡における作用効果としては意見の一致を見るが、その速度、人類の物質燃焼がそれに影響する程度ならびにその効果の程度、方向および大きさに関しては議論が交わされている。議論の程度にかかわらず、点放出源からCO2(および他の化学物質)を除去するためのコストが十分に小さいならば、そうすることに利益があるということにはだれもが同意見である。
【0004】
温室効果ガスは主に二酸化炭素でできており、地域の発電所および大規模産業の工場内発電所によって生成されるが、任意の通常の炭素燃焼(例えば自動車、多雨林皆伐、単純燃焼など)によっても生成され、もっとも集中的な点放出は地球上の発電所で起こっており、そのような固定場所からの削減または除去を、除去技術を実施するのに魅力的な点にしている。エネルギー生産が温室効果ガス放出の主要な原因であるため、種々の手段によって炭素強度を減らし、効率を改善し、発電所煙道ガスからの炭素を隔離するような方法が過去30年にわたり集中的に研究され、試験されている。
【0005】
炭素強度を減らすには、非炭素エネルギー源、例えば原子力発電、水力発電、太陽光発電、地熱、および他の電力源を代替的に使用して、排他的な炭素燃焼によって生産される電力の割合を減らすことを伴う。これらの電力生産技術それぞれが全エネルギー生産を増やし続けているが、世界的電力需要の予測量は、これらの方法からのエネルギー生産よりも速い割合で増すと予想される。従って、非炭素エネルギー源の成長にもかかわらず、炭素温室効果ガス放出は増大すると予想される。
【0006】
効率の改善は一般に、予燃焼、脱炭素化、酸素点火燃焼などを介して、まず生成されるCO2の量を減らし、次いですべての潜在的汚染物質を可能な限り完全に酸化させることによって炭素の燃焼を改善する技術を重要視している。また、この技術は、二酸化炭素放出量あたり生産されるエネルギーの量を増して効率を改善する。この領域における進歩は燃焼効率を改善したが、この分野の努力から引き出すことができる改善はもうほとんどない。
【0007】
炭素(初期形態の気体CO2)の隔離の試みが、地質システム、陸上システム、または海洋システムとして一般に分類することができる多くの異なる技術を生み出した。これらの技術は主に、生成された二酸化炭素を物理的場所に輸送し、その二酸化炭素を地質、土壌、または海洋廃棄物処分場に注入することに関する。これらの隔離技術それぞれは、CO2を輸送に備えて下処理し、輸送を達成し、「炭素バンク」への注入を実施するのに多大なコストを伴う。そのようなものとして、これらの技術は一般に、経済的に実現不可能であり、多くの場合、生成された元の炭素よりも多くのエネルギーを消費する。
【0008】
隔離はまた、スクラビング、膜、低廉なO2、および水和物を含むいくつかの工業工程を含むことができる。しかし、これらの技術それぞれは、不経済なレベルにまで高められたプラント資本コストによる損失をこうむり、電力費に対するCO2捕捉の効果は非常に高くつく。
【0009】
参考に上げた欠点は、すべてを網羅するものとして意図したものではなく、むしろ、廃棄物流から二酸化炭素を除去する公知技術の有効性を損なう傾向にある多くの欠点のうちいくつかである;しかし、ここで挙げた欠点は、当技術分野で見られる方法が全く満足というわけではなく、本開示で記載し、主張される技術に対する有意な要望が存在するということを実証するのには十分である。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明の態様は、ガス流から初期量の二酸化炭素を除去する方法であって、以下の段階を含む方法:水酸化物を水性混合物中に得る段階;塩素を得る段階;前記水酸化物を前記ガス流と混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から初期量の二酸化炭素の一部を除去する段階;塩素と水を合わせて次亜塩素酸を形成する段階;該次亜塩素酸を崩壊させて塩化水素酸および酸素を形成する段階;ならびに該塩化水素酸を炭酸カルシウムと合わせて塩化カルシウムおよび低減した量の二酸化炭素を形成する段階、に関する。他の態様において、方法はさらに、水素を得る段階;および発電所で該水素を燃焼させる段階を含む。いくつかの態様において、低減した量の二酸化炭素は、初期量の二酸化炭素の半分である。別の態様において、水酸化物は水酸化ナトリウムである。
【0011】
本発明の他の態様は、ガス流から初期量の二酸化炭素を除去する方法であって、以下の段階を含む方法:水酸化物を水性混合物中に得る段階;塩化水素酸を得る段階;前記水酸化物を前記ガス流と混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から初期量の二酸化炭素の一部を除去する段階、に関する。いくつかの態様において、方法はさらに、水素を得る段階;および発電所で該水素を燃焼させる段階を含む。別の態様において、低減した量の二酸化炭素は初期量の二酸化炭素の半分である。別の態様において、水酸化物は水酸化ナトリウムである。
【0012】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、水酸化物、水素、および塩素を使用中に生成するように適合した、電気分解チャンバ;該電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、前記電気分解チャンバからの水酸化物を使用中に前記ガス流と混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;前記電気分解チャンバに機能的に連結され、使用中に前記塩素と水とを混和して次亜塩素酸を生じるように適合した、第2の組の混合機;前記次亜塩素酸を崩壊させて塩化水素酸および酸素を生じるように適合した処理機;使用中に該塩化水素酸および炭酸カルシウムを合わせて塩化カルシウムおよび二酸化炭素を生成するように適合した第3の組の混合機;ならびに該混合機と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および固相および/または液相に分離するように適合した分離チャンバを含む装置に関する。
【0013】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、水酸化物、水素および酸素を使用中に生成するように適合した、電気分解チャンバ;該電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、使用中に前記電気分解チャンバからの水酸化物と前記ガス流とを混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;セルの陽極側と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ;ならびに前記セルの陰極側に機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合したチャンバを含む装置に関する。
【0014】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、水素を抑制しつつ、使用中に酸素を消費することによって水酸化物を生成するように適合した、電気分解チャンバ;該電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、使用中に前記電気分解チャンバからの水酸化物を前記ガス流と混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;セルの陽極側と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ;ならびに前記セルの陰極側に機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合したチャンバを含む装置に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの煙道ガス凝縮物中の水から重金属を分離する方法であって、以下の段階を含む方法:塩化物塩を得る段階;塩と、水、蒸気またはその両方とを混和して溶液を作製する段階;該溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;該水酸化物の一部と煙道ガス流とを混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;前記水酸化物の一部を前記煙道ガス凝縮物に添加してそのpHを酸性から塩基性に変化させ、結果として前記重金属を沈殿させる段階;ならびに前記凝縮物をろ過媒体に通過させる段階、に関する。いくつかの態様において、ろ過媒体は活性炭を含む。他の態様において、凝縮物は重力送りによりろ過媒体に通す。さらに他の態様において、凝縮物は能動ポンピングによりろ過媒体に通す。
【0016】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの煙道ガス凝縮物中の水から重金属を分離する方法であって、以下の段階を含む方法:塩化物塩を得る段階;塩と硫酸とを混和し加熱して溶液を得る段階;得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;該水酸化物の一部と煙道ガス流とを混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;前記水酸化物の一部を前記煙道ガス凝縮物に添加してそのpHを酸性から塩基性に変化させ、結果として前記重金属を沈殿させる段階;ならびに前記凝縮物をろ過媒体に通過させる段階、に関する。いくつかの態様において、ろ過媒体は活性炭を含む。他の態様において、凝縮物は重力送りによりろ過媒体に通す。さらに他の態様において、凝縮物は能動ポンピングによりろ過媒体に通す。さらに他の態様において、酸素は電気分解セルにて消費され、水素の生成を抑制する。
【0017】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの塩素ガスをリサイクルする方法であって、以下の段階を含む方法:塩化物塩を得る段階;塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;該溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;前記塩素ガスを水および光と反応させて、塩酸および酸素を生成する段階;該酸素を前記発電所の空気入口に戻す段階、に関する。いくつかの態様において、塩酸を、混和物から分離されたI族炭酸水素塩生成物と反応させ、I族塩化物塩、水、および二酸化炭素ガスを生成することによって中和する。他の態様において、塩酸は、混和物から分離されたII族炭酸塩生成物と反応させ、II族塩化物塩および二酸化炭素ガスを生成することによって中和する。さらに他の態様において、塩酸は、混和物から分離されたI族炭酸塩生成物と反応させ、I族塩化物塩およびI族炭酸水素塩を生成することによって中和する。さらに他の態様において、反応は単純な混合によって達成される。さらに他の態様において、反応は膜を通して達成され、そうして形成された酸-塩基電池からの直流電力を抽出する。
【0018】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程から塩化水素酸を生成する方法であって、以下の段階を含む方法:塩化物塩を得る段階;塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階、に関する。いくつかの態様において、塩化水素酸を、混和物から分離されたI族炭酸水素塩生成物と反応させ、I族塩化物塩、水、および二酸化炭素ガスを生成することによって中和する。他の態様において、塩化水素酸は、混和物から分離されたII族炭酸塩生成物と反応させ、II族塩化物塩および二酸化炭素ガスを生成することによって中和する。さらに他の態様において、塩化水素酸は、混和物から分離されたI族炭酸塩生成物と反応させ、I族塩化物塩およびI族炭酸水素塩を生成することによって中和する。さらに他の態様において、反応は単純な混合によって達成される。さらに他の態様において、反応は膜を通して達成され、そうして形成された酸-塩基電池からの直流電力を抽出する。さらに他の態様において、酸素は電気分解セルにて消費されて、水素の生成を抑制する。
【0019】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:塩化物塩を得る段階;塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;該溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法であって、前記混和する段階が、炭酸塩が前記水酸化物および前記二酸化炭素から形成されるカーボネーター(carbonator)カラム、ならびに炭酸水素塩が前記炭酸塩から形成されるバイカーボネーター(bicarbonator)カラムを含む一対のバブルカラムにて生じる方法に関する。いくつかの態様において、バイカーボネーターカラムが湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有し、液体のカーボネーターカラムと対になっている。他の態様において、バイカーボネーターおよびカーボネーターカラムの両方が、湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有する。
【0020】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:塩化物塩を得る段階;塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;硫酸塩を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法であって、前記混和する段階が、炭酸塩が前記水酸化物および前記二酸化炭素から形成されるカーボネーターカラム、ならびに炭酸水素塩が前記炭酸塩から形成されるバイカーボネーターカラムを含む一対のバブルカラムにて生じる方法に関する。いくつかの態様において、バイカーボネーターカラムが湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有し、液体のカーボネーターカラムと対になっている。他の態様において、バイカーボネーターおよびカーボネーターカラムの両方が、湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有する。
【0021】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:塩化物塩を得る段階;塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;前記得られた硫酸塩を前記混和物から沈殿させ、塩化水素酸を残す段階;前記沈殿物を水溶液に添加する段階;前記溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法であって、前記混和する段階が、カラムの上方区域にて前記水酸化物を炭酸塩に転換し、次いでこれを前記カラムの下方区域にて炭酸水素塩に転換する単一のバブルカラムにて生じる方法に関する。
【0022】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:塩化物塩を得る段階;塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;該溶液を電気分解して、水酸化物および水素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法であって、前記発電所からの廃熱を使用して、前記電気分解が生じる温度を、該電気分解に必須のエネルギーが該電気分解により生成される前記水素ガスから帰還可能な理論上の最大エネルギーに等しい温度まで上昇させる方法に関する。
【0023】
本発明の他の態様は、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:塩化物塩を得る段階;塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および水素ガスを生成する段階;前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法であって、前記発電所からの廃熱を使用して、前記電気分解が生じる温度を、該電気分解に必須のエネルギーが該電気分解により生成される前記水素ガスから帰還可能な理論上の最大エネルギーに等しい温度まで上昇させる方法に関する。
【0024】
「含む」(ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの含むの任意の形)、「有する」(ならびに「有する(has)」および「有している(having)」などの有するの任意の形)、「含有する」(ならびに「含有する(contains)」および「含有している(containing)」などの含有するの任意の形)および「含む」(ならびに「含む(includes)」および「含んでいる(including)」などの含むの任意の形)という用語は、非限定的な連結動詞である。結果として、一つまたは複数の工程もしくは要素を「含む」、「有する」、「含有する」、または「含む」方法または装置は、一つまたは複数のそのような工程もしくは要素を所有するが、一つまたは複数のそのような工程もしくは要素だけを所有することに限定されない。同様に、一つまたは複数の特徴を「含む」、「有する」、「含有する」、または「含む」機器または方法の要素は、一つまたは複数のそのような特徴を所有するが、一つまたは複数のそのような特徴だけを所有することに限定されない。「使用する」という用語もまた同様に解釈されるべきである。従って、一例として、特定の情報を「使用する」ことを含む方法の工程は、少なくとも挙げられた情報は使用されるが、他の挙げられていない情報をも使用することができる可能性を排除しないことを意味する。さらには、ある特定の方法で構成されている構造は、少なくともその方法で構成されていなければならないが、指定されていない方法ででも構成されていてもよい。
【0025】
単数形(「a」および「an」)の語は、開示がそうでないことを明示的に要求しない限り、一つまたは複数あるものと定義される。「もう一つの」という用語は、少なくとも第二以降があるものと定義される。「実質的」および「約」という用語は、所与の値または状態に少なくとも近い(およびそれを含む)ものと定義される(好ましくは10%以内、より好ましくは1%以内、および最も好ましくは0.1%以内)。
【0026】
本明細書において使用する「炭酸塩」または「炭酸塩生成物」という用語は一般に、炭酸基、CO3を含有する鉱物成分と定義される。従って、この用語は、炭酸塩/炭酸水素塩混合物および炭酸イオンのみを含有する種の両方を包含する。「炭酸水素塩」および「炭酸水素塩生成物」という用語は一般に、炭酸水素基、HCO3を含有する鉱物成分と定義される。従って、この用語は、炭酸塩/炭酸水素塩混合物および炭酸水素イオンのみを含有する種の両方を包含する。
【0027】
本発明のいくつかの態様を使用する炭酸水素塩および炭酸塩の形成で、「イオン比」という用語は、生成物中のナトリウムイオンをその生成物中に存在する炭素の数で割った比をいう。従って、純粋な炭酸水素塩(NaHCO3)で形成された生成物流は、1.0の「イオン比」(Na/C)を有するということができ、純粋な炭酸塩(Na2CO3)で形成された生成物流は、2.0の「イオン比」(Na/C)を有するということができる。拡大解釈すると、無限数の、炭酸塩と炭酸水素塩との連続的混合物が、1.0〜2.0の間で変動するイオン比を有するということができる。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい態様では、塩化水素酸を塩素アルカリ電気分解セルの塩化ナトリウムブライン供給物に加えて以下の反応を起こさせる:
H2O+NaCl+aHCl+エネルギー→NaOH+(1/2+a/2)H2+(1/2+a/2)Cl2
この式では、項「a」は「プロトン化係数」と定義され、ナトリウムイオン(Naイオン)に対するプロトン(Hイオン)の比を表す。
【0029】
本明細書において使用する「隔離」という用語は、一般に、その部分的または全体的な効果が、CO2を点放出源から除去し、そのCO2を何らかの形態で貯蔵して大気中に戻るのを防ぐことである技術または実施をいうために使用される。この用語の使用は、記載される態様の任意の形態が「隔離」技術とみなされることを排除しない。
【0030】
本明細書において使用する「エコロジー効率」という用語は、「熱力学的効率」という用語と同義に使用され、消費されるエネルギーあたり本発明の特定の態様によって隔離されるCO2の量(式「∂CO2/∂E」によって表す)と定義される。CO2隔離は、プラント全体のCO2の%に換算して表される;エネルギー消費も同様に、プラント全体の電力消費に換算して表される。
【0031】
本明細書において使用する「低電圧電気分解」および「LVE」という用語は、約5ボルト未満の電圧における電気分解をいうために使用される。
【0032】
本方法および装置を不必要な詳細で不必要に不明瞭化することを避けるため、周知の処理技術、構成要素、および設備の説明は省略する。本方法および機器の説明は、付録におけるものを含め、例示的かつ非限定的である。本開示に基づくと、特許請求の範囲の範囲には入るが、本開示で明示的には挙げられていない特定の代用、改変、追加および/または再配置が当業者には明らかになり得る。
【0033】
他の特徴および関連する利点は、具体的な態様に関する以下の詳細な説明を添付図面と合わせて参照することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の図面は、例として示すものであり、限定として示すものではない。図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含められる。これらの図面の一つまたは複数を本明細書において提示する例示的な態様の説明と合わせて参照することにより、本発明をより良く理解することができる。
【図1】本発明の特定の態様を示す工程流れ図である。
【図2A】本発明の脱炭酸塩化部分の一つの態様の主要な特徴に注目するための装置を示す。
【図2B】実験的吸収/転換結果を示す。
【図2C】実験的吸収/転換結果を示す。
【図2D】CO2を90%除去するのに必要な気/液接触距離(m、流体の深さ)を示すチャートである。
【図2E】生成物イオン比vs試験リアクタ中に吸収されたCO2%を示すチャートである。
【図3】指示期間だけ反応が進行するとき反応チャンバ内の流体によって近似される熱挙動を示すチャートである。
【図4】5'カラムの張水実験を示すチャートである。
【図5】様々な陽極液pHおよび温度条件に関して典型的な電圧/電流特性操作線を示すチャートである。
【図6】本発明の態様に準ずる、水素が回収されないリアクタを含むシステムのブロック図である。
【図7】本発明の態様に準ずる、燃料セル直流帰還を介して水素が回収されるリアクタを含むシステムのブロック図である。
【図8】バブルカラム中のCO2吸収%vs流体深さvs低界面速度におけるガス界面速度を示すチャートである。
【図9A】本発明の態様に準ずる、理論的最大CO2吸収および実験結果を示すチャートである。
【図9B】本発明の特定の態様を取り入れたプラントの煙道ガスモデルの場合の仮定および計算を示す。
【図9C】本発明の特定の態様を取り入れたプラントの場合のデカーボネーター(decarbonator)工程負荷および中間苛性アルカリ要件を示す。
【図9D】本発明の特定の態様を取り入れたプラントの場合の電気分解部負荷および要件を示す。
【図9E】本発明の特定の態様を取り入れたプラントの場合の廃熱計算を示す。
【図9F】本発明の特定の態様を取り入れたプラントの場合のエネルギー収支およびエコロジー効率計算を示す。
【図10】本発明の態様を取り入れた様々なモデル化発電所のエコロジー効率を示す。
【図11】正規化LVE設計の1m2面積あたり節約された電力の割合を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的態様の説明
本発明は、廃棄物流から二酸化炭素を取り出し、炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物に転換する隔離法に関する。本発明の方法および装置の態様は、以下の一般的構成要素:(1)気体CO2を水性苛性アルカリ混合物中に吸収させたのち、水酸化物と反応させて炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物を形成する水性脱炭酸塩化;(2)炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物を液状混合物から分離する分離;(3)脱炭酸塩化で吸収性流体として使用される水酸化ナトリウムを生成するためのブラインまたは硫酸塩電気分解;ならびに(4)脱炭素化および電気分解からの、塩素ガス、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムならびに水素ガスをはじめとする副生成物の生成および使用、の一つまたは複数を含む。これら一般的構成要素それぞれを以下さらに詳細に説明する。
【0036】
本発明の様々な態様は、廃棄物流から二酸化炭素を吸収するための現行技術を上回る利点を提供する。本発明によって実現可能であるいくつかの潜在的利点は以下を含む。
【0037】
炭素を離れた場所に物理的に移す方法とは違い、塩化ナトリウムおよび二酸化炭素からの炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムの合成による工業規模での同時生成は、望ましくない二酸化炭素ガスを電力生産の点で直接的に化学物質に転換して、隔離場所への輸送コストを潜在的になくす。
【0038】
レトロフィットに適さない煙道ガス流の脱炭酸塩化における他の試みとは違い、本発明の態様は、既存の発電所にレトロフィットさせて、脱炭酸塩化処理を実現するのに必要な資本コストを大幅に下げることができる。さらには、脱炭酸塩化処理は、スケーリング可能であり、増分リアクタユニットの追加によって試験的〜中間〜フルスケールの実施によって具現化することができる。
【0039】
当技術分野における他の方法とは違い、特定の態様の脱炭酸塩化工程は、二酸化炭素を経済的に有用な化学物質へと隔離し、有用な副生成物、例えば塩素ガス、炭酸ナトリウム、および水素ガスを同時に生成する。脱炭酸塩化工程の副生成物は経済的に有用であるため、それらの価値が隔離コストを相殺し、適切に設計されたシステムでは、隔離工程そのものを収益性にする可能性がある。
【0040】
放出された煙道ガスの攻撃的なスクラビングの同時工程のおかげで、他の望ましくない酸性汚染物質、例えばSOx、NOx、HgOxなどが工程中で攻撃的にスクラビングされる。さらには、スクラビング工程は、他のガス流成分および/または汚染物質(例えば石炭からの灰分など)を炭酸ナトリウム中に閉じ込めおよび/または連行して、それにより、ガス流からそれらを除去することができる。
【0041】
本発明の特定の態様は、ガス流から二酸化炭素を除去する方法であって:水酸化物を水性混合物中に得る段階;水酸化物をガス流と混和させて、炭酸塩生成物(炭酸基、CO3を含有する生成物と定義する)、炭酸水素塩生成物(炭酸水素基、HCO3を含有する生成物と定義する)、または炭酸塩生成物と炭酸水素塩生成物との混合物を混和物として生成する段階;ならびに前記炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物を混和物から分離して、それによってガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法を含む。水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムをはじめとする、限定されない、いかなる形態の水酸化物であることもできる。当業者は、いかなる数の水酸化物または水酸化物の混合物を用いても同様な化学反応および脱炭酸塩化を得ることが可能であることを理解する。いくつかの好ましい態様では、水酸化物は水酸化ナトリウムである。
【0042】
特定の態様では、方法は、実質的に炭酸塩生成物のみ、または実質的に炭酸水素塩生成物のみを生成するように方法をプロセス制御することをさらに含む。他の態様では、方法は、炭酸塩約X%および炭酸水素塩約Y%で構成されることができる、炭酸塩生成物と炭酸水素塩生成物との混合物を生成するように方法をプロセス制御することをさらに含み、X-Yの組み合わせは、以下のいずれかである:1-99、2-98、3-97、4-96、5-95、6-94、7-93、8-92、9-91、10-90、15-85、20-80、25-75、30-70、35-65、40-60、45-55、50-50、55-45、60-40、65-35、70-30、75-25、80-20、85-15、90-10、91-9、92-8、93-7、94-6、95-5、96-4、97-3、98-2または99-1。
【0043】
特定の態様では、混和は二つの別々のチャンバで起こり、一方のチャンバは、炭酸塩生成物を生成するために使用され、他方のチャンバは、炭酸水素塩生成物を生成するために使用される。他の態様では、混和は、バブルカラムまたは一連のバブルカラムで起こる。さらに別の態様では、混和物からの炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物の分離は加熱沈殿分離工程を含む。いくつかの態様では、分離工程のための熱は、入ってくる煙道ガスとの熱交換から導出される。分離された炭酸塩は、水性スラリーの形態にあることもできるし、または分離の時点で様々な濃度にある水酸化物、炭酸塩および水の溶液としての形態にあることもでき、その場合には、多くの方法のいずれかによって乾燥させることができる。いくつかの態様では、炭酸塩を乾燥させる必要はない。例えば、炭酸ナトリウムのスラリーは硬水の処理に使用することができる。当然、当業者は、本発明の方法によって生成された炭酸塩を付すことができる多様な用途を知る。例えば、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとのスラリー混合物は、様々な形態の洗浄剤生成における使用、ガラス生成における融剤などとしての使用ならびに前述の水処理用途に備えてタンク車にスラリー化することができる。
【0044】
特定の態様では、方法は、炭酸塩生成物を離れた隔離場所に輸送する段階;炭酸塩生成物を酸と合わせて中和反応させて純粋な二酸化炭素を生成する段階;および二酸化炭素を炭素バンクに注入する段階をさらに含む。他の態様では、SOx、NOx、および水銀含有物質をはじめとするガス流の他の成分を炭酸塩形成工程で中和および/または連行/捕捉する。
【0045】
いくつかの態様では、水酸化物を得ることは、塩を得る段階;塩を水、蒸気、または両方と混和させて溶液を作製する段階;および溶液を電気分解して水酸化物を生成する段階を含む。他の態様では、水酸化物を得る段階は:塩を得る段階;塩を硫酸と混和し加熱して、硫酸塩溶液を作製する段階;塩化水素酸をさらなる熱によって蒸発させ、I族硫酸塩を残す段階;ならびに次いでその硫酸塩溶液を電気分解して水酸化物を生成する段階を含む。特定の態様では、溶液は、約5ボルトより大きいかまたは等しい電圧を使用して電気分解し、他の態様では、溶液は、約5ボルト未満の電圧を使用して電気分解する。いくつかの態様では、溶液は、1ボルト〜5ボルトの電圧、例えば約1.5ボルト、約2.0ボルト、約2.5ボルト、約3.0ボルト、約3.5ボルト、約4.0ボルトもしくは約4.5ボルトまたはこれらの点のいずれかの間で導出可能ないずれかの範囲の電圧を使用して電気分解する。
【0046】
特定の態様では、溶液を電気分解する前に酸を溶液に加える。酸は、塩化水素酸をはじめとして、溶液にプロトン化を提供することができる、限定されない、いかなる形態の酸であってもよい。当業者は、いかなる数の酸または酸の混合物を用いても同様な化学反応および電気分解を得ることが可能であることを理解する。いくつかの好ましい態様では、酸は塩化水素酸である。他の態様では、溶液に加える酸の量は、反応体を生成するための最低エネルギーおよび生成物から回収する最高エネルギーを達成する最適なプロトン化率の決定に基づく。
【0047】
さらに他の態様では、電気分解工程は、陰極液側および陽極液側を有する電気化学セル中で起こり、かつ炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物は電気化学セルの陰極液側にリサイクルされる。他の態様では、方法に必要なエネルギーは、ガス流から回収される廃熱によって補充される。
【0048】
本発明の他の態様は、ガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、水酸化ナトリウムを水性混合物中に得る段階;水酸化ナトリウムをガス流と混和させて、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、または炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの混合物を生成する段階;ならびに該炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムを混和物から分離して、それによってガス流から二酸化炭素を除去する段階を含む方法を含む。
【0049】
いくつかの態様では、方法は、実質的に炭酸ナトリウムのみ、または実質的に炭酸水素ナトリウムのみを生成するように方法をプロセス制御することをさらに含む。他の態様では、方法は、炭酸ナトリウム約X%および炭酸水素ナトリウム約Y%で構成されることができる、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの混合物を生成するように方法をプロセス制御することをさらに含み、X-Yの組み合わせは、以下のいずれかである:1-99、2-98、3-97、4-96、5-95、6-94、7-93、8-92、9-91、10-90、15-85、20-80、25-75、30-70、35-65、40-60、45-55、50-50、55-45、60-40、65-35、70-30、75-25、80-20、85-15、90-10、91-9、92-8、93-7、94-6、95-5、96-4、97-3、98-2または99-1。
【0050】
特定の態様では、混和は二つの別々のチャンバで起こり、一方のチャンバは、炭酸ナトリウムを生成するために使用され、他方のチャンバは、炭酸水素ナトリウムを生成するために使用される。他の態様では、混和は、バブルカラムまたは一連のバブルカラムで起こる。さらに他の態様では、混和物からの炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムの分離は加熱沈殿分離工程を含む。いくつかの態様では、分離工程のための熱は、入ってくる煙道ガスとの熱交換から導出される。
【0051】
特定の態様では、方法は、炭酸ナトリウムを離れた隔離場所に輸送する段階;炭酸塩生成物を酸と合わせて中和反応させて純粋な二酸化炭素を生成する段階;および二酸化炭素を炭素バンクに注入することをさらに含む。
【0052】
いくつかの態様では、水酸化ナトリウムを得ることは、塩化ナトリウムを得る段階;塩化ナトリウムを水、蒸気、または両方と混和させてブラインを生成する段階;ならびにブラインを電気分解して水酸化ナトリウムおよび塩素ガスを生成する段階を含む。他の態様では、水酸化物を得る段階は:塩を得る段階;塩を硫酸と混和し加熱して、硫酸塩溶液および気体として塩化水素を生成し、II族硫酸塩溶液を残す段階;ならびにその硫酸溶液を電気分解して水酸化物を生成する段階を含む。特定の態様では、ブラインは、約5ボルトより大きいかまたは等しい電圧を使用して電気分解し、他の態様では、約5ボルト未満の電圧を使用して電気分解する。いくつかの態様では、溶液は、1ボルト〜5ボルトの電圧、例えば約1.5ボルト、約2.0ボルト、約2.5ボルト、約3.0ボルト、約3.5ボルト、約4.0ボルト、もしくは約4.5ボルト、またはこれらの点のいずれかの間で導出可能ないずれかの範囲の電圧を使用して電気分解する。
【0053】
特定の態様では、電気分解工程は、陰極液側および陽極液側を有する電気化学セル中で起こり、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムが電気化学セルの陰極液側にリサイクルされる。他の態様では、方法に必要なエネルギーは、廃棄ガス流から回収される熱エネルギーによって補充される。さらに他の態様では、方法は、塩素ガスを収集することをさらに含み、他の態様では、水素ガスを生成する。いくつかの態様では、水素ガスおよび塩素ガスを燃焼させて塩化水素酸を形成し、ブラインを電気分解する前に塩化水素酸をブラインに加える。他の態様では、水素ガスを大気酸素または原料薬品からの酸素と燃焼させて水を生成し、他の態様では、方法は、水素ガスを使用してエネルギーを生産することを含む。いくつかの態様では、混和物からの炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素ナトリウムの分離は、分離工程のための熱を水素ガスによって生産されるエネルギーから導出する加熱沈殿分離工程を含むが、他の態様では熱は廃棄ガス流のエネルギーから供給される。他の態様では、水素ガスを石炭と同時燃焼させて石炭燃焼放出を改善するか、それを、燃料セルの直流電気回収のために燃焼工程で使用する。
【0054】
いくつかの態様では、廃棄ガス流は、プラントからの排気流であり、他の態様では、プラントは、炭素系燃料源を使用する発電所である。特定の態様では、排気流はCO2およびH2Oを含む。
【0055】
また、本発明の特定の態様は、少なくとも一つの陰極および少なくとも一つの陽極を含み、使用中に水酸化物を生成するように適合されている電気分解チャンバ;電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含むように適合されている導管に機能的に連結されており、電気分解チャンバからの水酸化物を使用中にガス流と混和させて、ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が水酸化物と反応することができる混和物を形成するように適合されている混合機;ならびに混合機に機能的に連結され、混和物を別々の気相と固相および/または液相とに分離するように適合されている分離チャンバを含む、装置を含む。
【0056】
いくつかの態様では、電気分解チャンバは膜セル、隔膜、および/または水銀を含む。特定の態様では、混合機はバッチリアクタまたは一連のバッチリアクタであり、他の態様では、混合チャンバは気/液吸収/反応機器または一連の気/液吸収/反応機器である。他の態様では、混合チャンバは結晶化塔(crystallization tower)または一連の結晶化塔であり、他の態様では、バブルカラムまたは一連のバブルカラムである。
【0057】
特定の態様では、装置は、分離チャンバに機能的に連結され、使用中に固相および/または液相から液体を取り出すように適合された、乾燥チャンバをさらに含み、他の態様では、乾燥チャンバは、使用中に固相および/または液相を加熱するように適合されている。さらに他の態様では、装置は、発電所に機能的に連結されているとしてさらに定義される。
【0058】
いくつかの態様では、電気分解チャンバは、使用中に塩化ナトリウムおよび水から塩素ガスおよび水酸化ナトリウムを生成するように適合されている。他の態様では、混合機は、使用中に電気分解チャンバからの水酸化物をガス流からの二酸化炭素と混和させて炭酸塩生成物および/または炭酸水素塩生成物を生成するように適合されている。
【0059】
さらに他の態様では、本発明は、所与のプロトン化における所与のV/I特性に関して、低電圧作動に最適な電気化学セルの作動電圧および電流を面積増に関して決定する方法を含む。他の態様では、本発明は、工程で使用される所与の電気分解セルに関して作動電圧の熱力学的下限を決定する方法を含む。特定の態様では、一般に廃棄物流からCO2を除去する作業を達成する機器に関してエコロジー効率(∂CO2/∂E)を規定する方法が提供され、他の態様は、特に本発明をその態様のいずれかで使用する機器に関してエコロジー効率(∂CO2/∂E)を規定する方法を含む。他の態様は、そのコストが回収可能なエネルギー量に等しい低い価格無差別点できわめて純粋な水素ガスを生成する方法を含む。
【0060】
I.利点の概要
目的を達成するための作業を実行する任意の他の方法または装置と同様に、本発明の多くの態様は、煙道ガス流からのCO2および他の化学物質の吸収を達成し、本明細書において記載した本発明の態様の他の目的を達成するのためにいくらかのエネルギーを消費する。しかし、本発明の特定の態様の一つの利点は、実施例5および6で詳細に説明するように、従来技術のエコロジー効率よりも優れたエコロジー効率を提供するということである。実施例5および6のデータから明白であるように、工程を駆動するための増幅された廃熱回収または非温室効果ガス生成エネルギー、さらに低電圧の電気分解の使用および水素エネルギー回収からの電力帰還の改善が、工程のエコロジー効率を、工程が廃熱回収(および水素エネルギー回収)によって完全に駆動され、発電所放出CO2の事実上100%を吸収するところの点以上までさらに改善することができる。
【0061】
さらには、本発明の特定の態様の極端な化学反応を、弱酸CO2を吸収するように使用する一つの利点は、工程が強酸、SOxおよびNOxならびに、程度は低めであるが、水銀を事実上完全に吸収するということである。充填単段デカーボネーターでSOx/ArおよびNOx/Arを使用する試験は、煙道ガスのこれらの成分の99%+の除去を実証した(「99%+」とは、14L/分の煙道ガス処理の場合で、生成物気流中にいずれの汚染物質の存在もガスクロマトグラフ技術によって検出不可能であった、すなわちそれらが効果的に除去されたことを意味する)。本発明の特定の態様では、NOx、SOx、および水銀化合物の偶発的スクラビングがより大きな経済的重要性を帯びることができる;すなわち、本発明の態様を使用することにより、これらの化合物を多量に含有する石炭を発電所で燃焼させることができ、いくつかの態様では、結果的に、本発明の特定の態様のCO2/吸収工程の利点なしで処理された高級石炭を用いる場合よりも汚染が少ない。
【0062】
さらには、本発明の特定の態様のスケーリング性は、極端な段階にまで実施することができる;すなわち、特定の態様では、工程は電気的に制御されるため、その電力消費は、事実上、任意の所与の時間に生成される吸収剤の個々の分子にまでスケーリングすることができる。また、吸収されるCO2の量を正確に測定する能力は実用的かつ容易であり;形成された炭酸塩/炭酸水素塩生成物を計量し、それらのイオン比をアッセイによって計測し、計算を実施して吸収されたCO2のモル数を決定して、吸収されたCO2を容易に確認および計測する(煙道ガス中のCO2および他の化学物質の除去のための、特定の動機的領域に利益を与えるかもしれない要因)。
【0063】
本発明の特定の態様を他のCO2除去法から区別するもう一つのさらなる利点は、いくつかの市場条件で、生成物が、必要とされる反応体または正味電力もしくはプラント減価償却費よりもかなり多くの価値を有するということである。換言するならば、特定の態様は、CO2および問題の偶発的汚染物質の相当な除去を達成しながらもクロロヒドロ炭酸塩生成物を利益を上げて製造する工業的方法である。他のすべての競合的なCO2捕捉方法では単に運転費が追加になる。
【0064】
II.工程流れ図
図1は、本開示の装置および方法の一般的な例示的態様を示す簡略化工程流れ図を示す。この図は、図示目的のためだけに提供され、従って、本発明の特定の態様を単に示すものであり、特許請求の範囲の範囲を何らかの方法で限定することを意図するものではない。図1に示すように、煙道ガス(FG)が、潜在的にはじめに廃熱/直流発電システムと廃熱を交換したのち、901で工程に入る。この例では300℃のガス混合物として入るFGは、まず、管902によってFG/炭酸水素塩熱交換器903に送られ、そこで、FG温度がこの例では120〜140℃まで下げられる。同様に、FGは、陽極液/FG熱交換器904および陰極液熱交換器905の中を流れ続けて、その温度を95℃まで下げたのち、水/FG熱交換器929の中を流れてその温度をさらに30℃まで下げる。次に、水/FG熱交換器929を出たFGは、バルブアレンジメント煙道ガス温度混合制御931に導入され、その中で30℃のFGを、高温煙道ガス工程管906によって同じく煙道ガス温度混合制御931に送られた120〜140℃の煙道ガスと混合することができる。そして、30〜140℃のFG混合物は、充填または非充填バブルカラムであることができる炭酸塩化/吸収カラム907の底に差動的に導入されることができ、そこで、ガスが注入または散布されると、ガスが気泡を形成し、それらが流体中を上昇して上ベント908に集まる。この態様では、次いで、部分的または完全に脱炭酸塩化された流体が注入され、炭酸水素塩化/転換カラム909に通され、そのカラム中の流体中を気泡になって流れ、ブロワによってさらに引き寄せられ、ベント910に放出される。
【0065】
FG/炭酸水素塩熱交換器903で使用される流体は、吸収/転換カラム(907および909)中の煙道ガスから吸収された炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムおよび種々の硫酸塩、硝酸塩、水銀ならびに粒状物およびエアロゾルである。300℃の入ってくるFGとの接触により、この液流は、タンク911に注入されると、有意な水蒸気圧を発生させるのに十分な温度まで加熱されて蒸気を発生させ、この蒸気が次いで凝縮器912中で凝縮され、結果として得られる蒸留水がH20再生タンク913にリサイクルされ、任意の必要なコンディショニングの後さらに使用されてブラインミキサ914中でブラインを形成する。陽極液/FG熱交換器904で使用された流体は、1族および2族の塩(この場合はNaCl)を主給水915から供給された水またはH20再生タンク913から部分的もしくは完全に供給された水のいずれかに加えることによって作られるブラインである。このブラインは、すべてpH閉ループ制御装置916によって制御されながら、水によって吸収されたHClガスの形態のHClの添加または原料薬品HClからHClの添加によってプロトン化(酸性化)される。この流体は、電気分解セル933の陽極液部分917の中を循環する。同様に、陰極液/FG熱交換器905で使用される流体は、電気分解セル933の陰極液部分918の中を循環するNaOH(aq)である。陰極液のpHが制御点919で最低pH(濃度の代わり)値を超えると、濃縮NaOHが水酸化物貯蔵タンク920に送られる。
【0066】
水/FG熱交換器929で使用される流体は、熱交換を達成するのに十分な冷たさの温度の十分に大きな水溜めからの流体である。いくつかの態様では、この熱交換システムは、煙道ガス/炭酸水素塩熱交換器905におけるさらなる熱交換の前の炭酸水素塩/炭酸塩溶液の「予加温」処理として使用することができる。同じくいくつかの態様では、主給水915、H2O HX貯蔵タンク937、およびH2O再生タンク913のための備蓄を部分的または完全に統合してもよい。
【0067】
電気分解セル933の陽極液部分917中を循環するプロトン化ブラインは、電気分解工程によって作用を受けて塩素ガスを形成し、その塩素ガスが収集され、塩素ガスライン921を介してこの例では次亜塩素酸ナトリウムリアクタ924に移される。ナトリウムイオンおよび水素イオン(プロトン)は、電気分解セル933の膜を透過して陰極液部分918に運ばれる。ここで、水中でナトリウムイオンが水素イオンを置換して、入ってくる純粋な水素ガス配管922の中をH2/O2燃料セル923に運ばれ、そこで大気O2と合わされて直流電気を発生させ、それがこの例では電気分解セル933にリサイクルされる、および純水、純水回収ループ935を介してH20再生タンク913にリサイクルされる、水素ガスの形成を可能にする。次亜塩素酸ナトリウムリアクタ924に送られた塩素ガスは、水酸化物貯蔵タンク920からリアクタに送られる水酸化ナトリウム中を接触(気泡になって通過)する。次亜塩素酸ナトリウムが得られ、市販用または原料薬品としてのさらなる使用に備えて備蓄される。ここで、生成された塩素およびHClガスの一部(超化学量論的量aを使用して、補充損失を除くHClの連続リサイクルを生成する)がHCl燃料セル925中で燃焼し、それがHCl酸ガス還流ライン926を介してブラインミキサ914にリサイクルされる。
【0068】
生成され、貯蔵される、または原料薬品から生成され、水酸化物貯蔵タンク920中に備蓄される水酸化物は、炭酸塩化/吸収カラム907に導入された吸収性流体である。それは、その後、炭酸水素塩化/転換カラム909に通され、次いで、FG/炭酸水素塩熱交換器903に送られる(水中の炭酸水素塩/炭酸塩混合物として)。蒸発によって水を除去したのち、濃縮炭酸水素塩/炭酸塩の生成物スラリーが生成物炭酸水素塩タンク927に送られ、そこで、さらなる処理または精製のために抜き取ることもできるし、廃棄処分または市販用に送ることもできる。
【0069】
上記で説明し、図1に示す本開示の装置および方法の一般的構成要素それぞれを以下さらに詳細に説明する。
【0070】
III.廃棄物流からのCO2の水性脱炭酸塩化(吸収)ならびに炭酸塩および炭酸水素塩へのその転換
上記のように、特定の態様では、本開示の装置および方法は、気体CO2を水性苛性アルカリ混合物中に吸収し、次いで水酸化物と反応させて炭酸塩および炭酸水素塩生成物を形成する水性脱炭酸塩化工程を使用する。本発明の多くの態様では、他の捕捉/隔離スキームとは違って、水酸化ナトリウムを主吸収性流体として使用する。様々な濃度の水酸化ナトリウムはCO2の容易な吸収剤として公知である。二酸化炭素を水性水酸化ナトリウムと接触させると、純粋な炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)から純粋な炭酸ナトリウム(Na2CO3)までの範囲の生成物の連続体を形成することができ、平衡を、いずれかの方向に、完了(またはその近く)および十分な濃度で(工程化学反応によってまたは種々の手段による水の除去によって)、炭酸水素塩、炭酸塩、または両化合物を含有する混合沈殿物の沈殿まで駆動する様々な条件を作り出すことができる。
【0071】
二酸化炭素を水性水酸化ナトリウムと接触させると、指示された時間だけ反応が進行するとき、反応チャンバ内の流体は、図3に示す挙動を近似する。二つの温度偏倚段階が二つの別個の反応領域に対応し、それらを識別する:
(1)CO2が容易に吸収される初期吸収段階。OH濃度が低下するにつれ流体の吸収能は低下し、OHイオン濃度が消費されたところで吸収は終了し、場合によって逆転する。この部分では反応は発熱性であり、ほぼ排他的に炭酸塩を形成する。
(2)CO2が容易には吸収されない二次転換段階。混合物中の煙道ガスの通過は流体によるいかなる正味CO2吸収も生じさせないが、流体は、水の任意の蒸発による蒸発熱の損失によって、蒸気状態へのCO2の任意の損失によって、および起こる任意の吸熱反応によって有意に冷却される。この段階では、以下のように求められる正味化学量論性により、溶液中ですでに形成されている炭酸ナトリウムが炭酸水素ナトリウムに転換される:
Na2CO3(aq)+H2O(l)+CO2(aq)→2NaHCO3(aq)
【0072】
この、炭酸塩化(1番目)および次の炭酸水素塩化(2番目)の順序は、異なる濃度の吸収剤を用いながら図2Aの装置を流体の吸収限界の前後で繰り返し作動させる(実施例3で詳細に説明)ことによって再現可能に実証することができる。
【0073】
二つの段階は、以下の表1に示す特性によって区別される。
【0074】
【表1】

【0075】
本発明の態様は、同じチャンバを使用してこれらの二つの工程をインサイチューで達成することができるが、反応の異なる性質は、反応を二つのチャンバに分け、それらを別々に最適化することが好ましい態様への正しい道筋であることを示唆する。移動装置の「内部配置」(すなわち、バッチvs連続の程度、チャンバ、容器、段の少なさなど)にもかかわらず、根本的な二つの方法は、良好な吸収を提供するのに十分なモル濃度でこの順序で起こる。
【0076】
従って、本方法および装置のいくつかの態様は、純粋または純粋に近い炭酸水素ナトリウムを生成するようにプロセス制御されることができるため、従って、本発明のいくつかの態様は、電気分解によって生成されるナトリウムあたり1/2ではなく1個の炭素を捕捉する(達成されるエコロジー効率において炭酸塩生成の公称2×の改善)。従って、1モルの水酸化物を生成するために消費される電気分解エネルギーおよび処理の量は、炭酸水素塩を形成するために使用される場合、炭酸塩形成の吸収/エネルギー効率と比較して2倍の「正規」吸収能を有する。
【0077】
本発明の様々な態様では、炭酸水素塩/炭酸塩濃度スペクトルのすべての形態を生成することができる。好ましい態様では、流体の濃度、温度、圧力、流量などを操作して、吸収される「利用可能な」CO2の割合を最適化して炭酸水素塩の形成を最適化することができる。
【0078】
本発明のいくつかの態様は、CO2および他のガスの吸収率を制御する手段として吸収流体のpH(OHイオン濃度)を制御することができる。いくつかの好ましい態様では、塩/炭酸塩の濃度増を使用して反応を炭酸水素塩形成の方にさらに押しやることができる。製品の市場価格設定および経済的要因が、一定期間に炭酸塩に富む生成物を生成したのち、別の期間には炭酸水素塩に富む生成物を生成するなどの運用を許すことができ、その場合、Na/Cのプラント平均値が、吸収/転換のために作製されたイオン種の効率的な使用の尺度を形成する。
【0079】
二つの工程を二つの別個のチャンバに分け、OH消耗、温度均衡/低下、および吸収減衰の点でチャンバ間で移行させることにより、脱炭酸塩化装置を構築し、最適化できる様式が変更される。当業者は、この簡単な2段階工程脱炭酸塩化工程のバッチ、擬似連続、連続などのバージョンを巧妙に処理することができることを理解する。
【0080】
さらに、可能な最小のエネルギーで吸収を達成することを意図して、本発明の多くの好ましい態様は、性質によって物質移動を支援するための大きな液/気接触面積を創出するバブルカラムリアクタ(充填または非充填、水平方向流あり/なし、水平方向流ありまたはなし)を用いることができ、それにより、設計全体が、短い段高さ(3m以下)を有し、それでいて流体のポンピングにおいて打ち勝つべき抵抗または正面圧をほとんど受けることなく90%+吸収を達成し、従って、工業的スケーリングを達成するための広い水平方向面積(広くて浅い貯留部または容器における等価物)で設計されて、連続運転に適応させるための水平方向移動を有する可能性のある段を使用する自由によって利益を受ける。本発明のいくつかの態様は、求められる気液接触を達成するものである限り、多くの他の構造の気液接触装置を使用することができる。
【0081】
図4は、抵抗値が約0.01psig+流体深さ5'に打ち勝つためのヘッドの1.52psigである、5'カラムの張水実験を示す。これらの損失および他の圧縮コストは、発電所ベースで1%未満しか費やさないものと予想され、そのようなものとして、僅少とみなし、実施例では計算しない。図4は、流路中のきわめて低い抵抗が結果としてきわめて低いエネルギー圧縮を生じさせて、機器のエコロジー効率が圧縮またはガスの取り扱いに消費される過剰なエネルギーによって損なわれないという効果をもたらすことを確かめる。
【0082】
本方法および装置の態様のエコロジー効率は、CO2を吸収するための可能な最小限の作業を実施することによって高められ、その効率を損なう一つの要因は、この工程を達成するために必要な圧縮、流体および空気のポンピングの量である。そのためには、二つの高効率吸収剤(N2中60%CO2である、入ってくる煙道ガス流からCO2を99%除去することができる)が、高いCO2吸収率を達成する「短い段」で作動するように設計される。
【0083】
本発明の好ましい態様は、広い面積の液気移行面(バブルカラム、充填もしくは中空、または固定もしくは移動流体容器におけるその等価物)を使用して、短い高さの流体吸収剤で高い吸収率を達成し、それにより、流体同士を接触させるために必要な抵抗を減らし、従って、この「短段設計」は、広く短い「貯留部」または配管、溝、容器などにおけるその等価物を用いて多量のCO2を効率的に吸収することを要する。
【0084】
本開示の脱炭酸塩化反応は一般に、主流産業およびすべてのその参考文献によって物質移動制限的であると考えられている。実際には、広い面積の気液接触吸収を有する充填または非充填カラムを流体中気泡上昇法で使用すると、反応は、物質移動制限をほとんど受けないと思われる。言い方を変えるならば、液気接触のためのバブルカラム設計の本方法の使用は、物質移動制限を楽に解消すると思われる:ゼロ充填でわずか30cmの気/液接触距離のスパージャに通すバブリングが、98%+の瞬間的なCO2吸収率を生じさせることが実証され(実施例3で論じるように図2Bおよび2Cを参照)、工業的に有意な15〜25分のタイムフレームでは、流体は平均80%+もの吸収能力を保持する。これは、深刻な物質移動制限を受けているとは言い難く、実際の実験は、消失までの簡単な充填負荷運転の場合でさえ、この化学吸着の容易な物質移動を実証する。
【0085】
高吸収CO2/NaOH吸収リアクタの設計の三つの例が実施例1〜3で詳細に説明される。実施例1〜3から導かれる結論は、短いNaOH段の高い吸収率が、生成可能な寸法の容器の中で低い抵抗で入ってくるCO2を高い割合で工業的に除去することができると証明され、実証されるということである。
【0086】
要約すると、本発明の特定の態様は、方法および装置の脱炭酸塩化部分に関して、以下の属性の一つまたは複数を含む:
(1)反応の炭酸塩化段階におけるCO2の高い吸収率を達成するための短い段の使用;
(2)炭酸水素塩化工程における、CO2含有工程ガス(またはCO2濃度が吸収性流体からのCO2再生の分圧よりも大きい他のCO2含有ガス)との連続的な接触による炭酸塩化流体の分離および処理;
(3)純粋な炭酸水素塩、純粋な炭酸塩、およびそれらの間のすべての様々な混合物を生成するための、状態変量および濃度のプロセス制御によって使用することができる工程シーケンスの所有;ならびに
(4)本発明の態様は、1:1ナトリウム/炭素吸収比と同じくらい効率的であることができる;これは、反応体を生成する際に使用されるkw-hrあたり吸収されるCO2(エコロジー効率(∂CO2/∂E)の変形)を最適化する。
【0087】
IV.生成物の分離
上記のように、特定の態様では、本開示の装置および方法は、液体溶液から炭酸塩および炭酸水素塩生成物を分離する分離工程を使用する。液体溶液生成物の分離はそれに伴う工程を要する。水酸化ナトリウム(NaOHまたは苛性ソーダ)で平衡した液体中の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3または重炭酸ナトリウム)および炭酸ナトリウム(Na2CO3またはソーダ灰)の形成は、広い範囲の温度および圧力で起こり、異なるCO2分圧を与えられると異なる平衡の終点を提供する。基本的な濃度、温度、圧力、リアクタサイズ、流体深さおよび炭酸塩化度を操作することにより、炭酸塩および炭酸水素塩の沈殿物を生じさせることができる。または、いくつかの好ましい態様では、炭酸塩/炭酸水素塩生成物は、入ってくる煙道ガスとの熱エネルギー交換により、水から分離することができる。さらには、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの間の溶解度生成物定数差により、特定の非直感的処理点に達することができる;例えば、特定の苛性アルカリ溶液中の炭酸ナトリウムの平衡の特異性の一つは、熱の付加が固体の沈殿を促進するということである;また、特定の条件で、炭酸塩は、水溶液から高い(93%+)純度で自己沈殿するということが実証された。
【0088】
あるいは、特定の態様では、分離工程のための熱は、最初の電気分解で発生した水素から導出することもできるし、入ってくる煙道ガス流に含有される廃熱の創作的な使用から導出することもできる。結晶化工程は、本来、結晶化による周知の精製工程によって結晶性鉱物を精製する。
【0089】
出口の液流は、リアクタ設計に依存して、水、NaOH、NaHCO3、Na2CO3、および他の溶解ガスを種々の平衡状態で含むことができる。溶解した極微量放出成分、例えばH2SO4、HNO3、およびHgをも見いだすことができる。一つの態様では、出る液流を分離/除去する、例えば炭酸塩から水を除去/分離するためには(この語の意味において、「炭酸塩」は、潜在的に存在する水酸化物をも含む、炭酸塩と炭酸水素塩との混合物を意味する;任意のこのような混合物に適用される任意の分離技術は、熱エネルギーを加えて混合物から水を蒸発させることを含む場合が多い)、図6に示すリボイラ106を使用して水を沸騰させて水を蒸発させることができる。または、部分的な基本溶液(例えばおおよそ1モルのNaOH)を保持し、続いて、その溶液を分離チャンバで加熱することにより、相対的に純粋なNa2CO3を保持タンク中に沈殿させることができ、残るNaOHが再循環してリアクタ200に戻る。他の態様では、その後、平衡濃度および/またはスラリーもしくは濃縮形態にある純粋な炭酸塩、純粋な炭酸水素塩およびそれら二つの混合物を定期的にトラック/タンク車に輸送することもできる。他の態様では、液流を蒸発タンク/フィールドに移動させて、そこで、水のような液体を蒸発によって留去してもよい。
【0090】
図6を参照すると、図示するリアクタ設計は、電気分解された水素中に貯蔵されたエネルギーを燃焼燃料、ボイラガスとして、またはH2/O2燃料セルのいずれかにおいて回収することができる。リアクタ200は、NaOHおよびNaHCO3をおおよそ50:50の割合で生成することができる定常状態作動を生じさせるために使用することができる。最初の電気分解で生成した水素ガスを使用して熱を提供し、NaHCO3を分離チャンバ108中で沈殿させて残りのNaOHをリアクタ200に還流させることもできる。分離チャンバ108からのスラリーは、分離チャンバ108に結合していることができる水処理チャンバ110に提供することができる。または、スラリーは、貯蔵しておき、後で必要に応じて水処理チャンバ110に提供することもできる。
【0091】
図7は、本発明の態様によるもう一つのリアクタ設計を示す。特に、図7は、水素副生成物を生成するために使用されるある余剰エネルギーの再捕捉を示す。タンデムオンサイト高効率燃料セルの使用は、電気分解電流を補充し、部分的に供給するために使用することができる直流回収を可能にすることができる。混合チャンバ300が、NaOH、NaHCO3、およびNOx、SOx、およびHgの割合をはじめとし、非限定的に混和物を分離チャンバ308に提供する。分離チャンバ308は、混和物に熱を提供することによって混和物を固相および/または液相に分離することができる。分離チャンバ308の乾燥チャンバ(図示せず)が工程中に熱を加えることによって固相および/または液相から液体を除去することができる。得られる希釈形態のNaOHがボイラ306に提供され、このボイラが希釈NaOHを濃縮形態に沸騰させ、還流ループを介して濃縮物を混合チャンバ300に提供する。ボイラ306からの水は、電気分解チャンバ302、特にブラインミキサ302Aに提供することができる。分離チャンバ308から得られるNa2CO3/NaHCO3(スラリー)は、市販用に提供することができる。一つの態様では、炭酸塩スラリーは、直接的または間接的(例えばNaHCO3を後で硬水処理のような工程で使用するために貯蔵する)に水処理プラント310に提供することができる。または、NaHCO3は、さらに精製し、乾燥させ、出荷し、他の工業用に提供することもできる。
【0092】
気体生成物の放出は、NaOHまたは同種の成分を安全に放出することができるかどうか、すなわち、発電所からの「塩基性雨」の放出が「酸性雨」の放出と同等に避けられるかどうかの懸念を含む。しかし、水酸化ナトリウムは通常、発電所生産におけるスクラビング要素として使用され、EPAによって使用を認められている。発電所における水酸化ナトリウムの取り扱いならびに塩基性放出物を回避する手法は当技術分野において周知である。例えば、簡単で廉価な凝縮器/還流ユニットが排気物中のNaOHの任意の有意な放出を防ぐことができる。
【0093】
本発明の特定の態様の炭酸塩分離沈殿法では、炭酸塩平衡が二酸化炭素を立体的に束縛し、接触によってガスを吸収し、実質的に瞬時に炭酸イオンへと転換する。反応連鎖は、ひとたび二酸化炭素が塩基によって吸収されると、その後のイオン反応が急速なペースで起こるように物質移動制限されるかもしれない。
【0094】
炭酸ナトリウム平衡は、温度は上昇するが、Na2CO3が自然に沈殿し、集まり、それによってスラリーとして回収し易くし、いくらかの分画NaOHがスラリー中に抜き取られるという特性を有する。一つの態様では、塩素サイクルで生成された湿塩素のいくらかを用いるこのスラリーの表面にじみ処理を使用して、地下の「トロナ」または埋蔵物を採掘することによって生産された炭酸ナトリウムを近似する、またはそれ未満のレベルでNaOHをNaHCO3中の極微量NaClに還元することもできる。そのようなものとして、炭酸ナトリウム/苛性アルカリ平衡により、炭素を、気体から液体、固体へ完全に輸送する。他の態様では、灰、水酸化ナトリウム、および他の種々の炭酸塩ならびに不純物のスラリーを収集するための収集媒体として炭酸塩ループを使用し、スラリーを陸路でトラック輸送することが有益な場合がある。
【0095】
V.吸収性流体の低エネルギー生成のための電気分解
上記のように、特定の態様では、本開示の装置および方法は、脱炭酸塩化工程における吸収性流体として使用される水酸化ナトリウムの生成のためにブライン電気分解を使用する。ブライン電気分解は、濃縮水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)および塩素ガスの生成で主に使用される電気化学的工程であり、典型的に、関連の文献を通じて以下の式によって記載されている。
2NaCl+2H2O+e-→2NaOH+H2(g)+Cl2(g)
【0096】
ブライン電気分解は、三つの一般的なタイプの標準電気分解セル、すなわち隔膜、水銀、および膜セルよって達成することができる。これらのタイプのセルそれぞれが同じ投入反応体から同じ産出生成物を生成する。これらは、主に反応体および生成物が互いから分離される方法において互いに異なる。
【0097】
一つの態様では、膜セルは、いくつかの要因により使用することができる。第一に、水銀に関する環境的懸念が水銀セルの需要を減らした。第二に、隔膜セルは、有意な濃度の塩および塩化物イオンを含有する相対的に弱い苛性アルカリ生成物を生成する場合があり、その苛性アルカリから有意な塩含量を除去するために相当な後続の再処理/分離を要する。第三に、フッ素化ポリマー技術における改良が膜セル技術の寿命および電気的効率を延ばし、5年を超える寿命が工業市場で通常に保証されている。さらには、苛性アルカリ1トンあたりの電力効率は、好ましい具現化では、隔膜セルおよび水銀セルの両方の効率を超える。
【0098】
膜セル処理ユニットは、以下の一般化された投入および産出によって典型的に示されるが、これに限定されない。

ナトリウムイオンは、膜または隔膜を通過し、陽極側から陰極側に移行する。水は、水素を遊離し、水酸化物を形成するために陰極側で消費される。
【0099】
所要電力(例えば2275kwh/塩素1トン)は、個々の電気分解セル設計に依存することができることが注目される。そのようなものとして、所要電力は様々となり得る。
【0100】
多くの好ましい態様は、膜セルをこの機能に使用することができる。膜セルには他のブライン電気分解工程を上回る利点がいくつかある。まず、膜セルは、任意の環境的に敏感な放出物(例えば水銀)を含有もせずまたは生成もせず、隔膜セルおよび水銀セルと比較した場合、電気的に効率的である。また、連続的な「塩ループ」処理ユニットとしての使用に好適であり得るよう、濃縮/希釈/補充NaClループを使用する。次に、膜セルで生成されたNaOHは、さらなる蒸発/濃縮なしでも、脱炭酸塩化工程における使用にとって自然に適切な濃度レベル(例えばNaOH30〜33重量%)であることができる。さらには、膜セルによって生成された水素は、おおむね「電子用」の「クリーンさ」であり、NaClまたは他の汚染を比較的含まない。そのようなものとして、水素を圧縮し、電子用H2ガスとしてタンクから出し、現場での発電、例えば低級石炭との燃焼配合剤または燃焼技術利得のために使用することができる。または、水素は、脱炭酸塩化ののち起こることができる分離工程のためのボイラ燃料として使用することもできる。膜セル技術はまた、小さな増分ユニットの追加によって実験室生産からプラント規模生産まで容易にスケーリングすることができる。さらには、膜工程によって生成された塩素ガスは、他の標準電気分解工程によって生成されたものよりも「湿潤」していない。そのようなものとして、水処理用塩素の生成には一段階圧縮サイクルが十分であるかもしれない。
【0101】
上記は、市販用塩素ガスおよび苛性ソーダを生成する目的に向けて通常に達成されるような、公表され、実施されている技術水準を表す。しかし、本発明の特定の態様のねらいはいくつかの点で異なり、それが、本発明の特定の態様の異なる目的を達成するために使用される種々の化学的技術につながる。
【0102】
さらなる態様は、硫酸塩の電気分解に基づく。硫酸塩の電気分解において、塩は、濃硫酸と混和され、加熱されて硫酸ナトリウムおよび気体の塩化水素を生成する。塩化水素は、蒸発によって溶液の水の一部と共にガスとして溶液に関して放出される。続いて、この塩化水素は、販売可能な濃塩化水素酸生成物に直接濃縮される。次いで硫酸ナトリウム水溶液は、電気化学セルにて電気分解され、次の式によって説明される:
2NaCl+H2SO4+熱→Na2SO4(aq)+2HCl(g)
Na2SO4+2H2O+e-→2NaOH+H2SO4+2H2+O2
上記の最初の式は、塩化物塩のI族硫酸塩への転換について明記している。上記の二番目の式は、硫酸が電気分解工程中に再構築されることを明記している。これにより、硫酸は二工程の化学ループにて機能する。全体として、硫酸は、塩および水を塩化水素酸および有用な副生成物ガスに変換できる触媒である。
【0103】
ブラインの電気分解と同様に、膜セルおよび隔膜セルがより一般的である電気化学セルにはいくつかの配置がある。両種の化学セルは、次の化学式対に基づいて機能する。

【0104】
故に、金属イオンを塩から取り込む硫酸はループで機能し、そこで硫酸は、ブラインの電気分解よりも低いエネルギーにて電気分解でき、次いでこの電気分解工程中に硫酸が再形成される。さらに、気体の塩素(Cl2)を生成する代わりに、最終生成物の塩化水素酸(HCl)を生成する。気体の水素および気体の酸素は、有益な最終生成物であり、またはこれらは、含有されるエネルギーを回収し、この工程の電力消費と相殺するためにプラントにて消費できる。さらには、膜セルによって生成された水素および酸素の両方は、おおむね「電子用」の「クリーンさ」であり、ほぼ全体としてNaCl、硫酸、または他の汚染を含まない。そのようなものとして、水素および酸素を圧縮し、電子用H2ガスおよびO2ガスとしてタンクから出し、現場での発電、例えば低級石炭との燃焼配合剤または燃焼技術利得のために使用することができる。または、水素は、脱炭酸塩化ののち起こることができる分離工程のためのボイラ燃料として使用することもできる。膜セル技術はまた、小さな増分ユニットの追加によって実験室生産からプラント規模生産まで容易にスケーリングすることができる。
【0105】
さらなる態様において、硫酸塩電気分解工程にて遊離される酸素は、水素生成(ガスとして)を抑えるために陰極にてガス拡散電極に再循環でき、それによって水素ガスの生成をなくす。これにより、水素を生成するために必要なエネルギーを消費することを回避し、同時に遊離の水素をエネルギーに変換し直すことを回避する。
【0106】
A.低電圧電気分解技術の使用
本発明のいくつかの態様では、ブライン電気分解は、低電圧電気分解(LVE)技術を取り入れて、それにより、工程の熱力学的エネルギー効率を改善する。本発明の特定の態様は、最終生成物として苛性ソーダを排他的に生成するわけではなく、代わりに、NaOHを主に中間体吸収剤として使用して、煙道ガスを環境に出す前に煙道ガスからCO2を吸収する。塩素アルカリ産業は一般に、苛性ソーダを生成プラントからその使用地点まで出荷することを伴うため、苛性ソーダ中の多量の水を輸送することは不経済であり、従って、苛性アルカリは一般に、液体として出荷されるため、蒸発による水のエネルギー集中的除去により、おおよそ55重量%まで濃縮され、場合によっては、一般的なペレット化形態の無水固体まで濃縮される。この濃縮は、非常に一般的には、電気分解セルを5Vを超える電圧(専門用語では「有意な過電圧」)で作動させることによって達成され、それが、上述の30〜35%NaOHを達成し、その後、蒸発サイクルを実施して55%を達成する(または生成物を無水パレット化状態まで完全に乾燥させるなど)。
【0107】
本発明の大部分の態様は、NaOHを生成物としては輸送せず、NaOHは、塩素アルカリプラント運転で使用される5V+標準よりも有意に低い電圧で、使用可能な濃度で(水性吸収性流体として)生成可能である。消費電力は簡単な直流式に正確に準ずるため、本発明の熱力学的効率に対するLVE使用の影響が過大評価されることはない。
P=V(電圧)・I(電流)・(電流効率)
【0108】
電流(I)は電気化学的工程(分子ごとに1対の電子など)によって固定されるため、電力は、電気分解するのに必要な電圧(V)によってほぼ完全に規制される(さらなる強力な要因は電流効率であり、これもまた、印加電圧の関数である)。本発明の態様は、標準的電気化学的膜セルに対する工程および幾何学的改変による2.15Vの低さの作動条件の変更により、ブライン電気分解セルで容易に実証される電圧でLVEを使用するため、本発明の態様は、形成されるNaOHの各量に対し、従来の高電圧塩素アルカリ電気分解よりも極めて少ない電力(kw-hr)しか消費しない。これらの理由のため、本発明の好ましい態様は、微小ギャップ作動、高めの圧力、高めの温度、大面積膜、陽極液および陰極液の濃度変化ならびにプロトン化イオン比をはじめとし、非限定的な、低電圧作動を達成するために利用可能なすべての技術を使用するように設計されている電気分解ユニットを含む。LVEのさらなる局面は実施例4で詳細に説明される。
【0109】
塩化物塩のI族イオンをI族水酸化物へ転換するためのエネルギー要件は相当なものであり、従ってこのことが、電気分解における熱力学的な最小エネルギーよりも多量のエネルギーを消費するのを回避するための手段だけでなく、副生成物を電気エネルギー自体に転換する手段との両方を見出すことを必要としていた。硫酸塩電気分解の態様は、大量の反応エネルギーについて煙道ガスからの熱を使用する。故に、発電所からのエネルギー自体の消費は、有益なエネルギー源:電気を消費するのではなく;発電所で廃棄物と考えられるエネルギー源:排気熱を消費するように変化した。故に、硫酸塩態様は、好ましいものである。
【0110】
B.「無差別点」水素使用
典型的な塩素アルカリ処理は、蒸発のためのボイラ燃料として現場で燃やされるか(上記を参照)、または多くの場合、空気電極;例えば酸素含有空気を陰極に吹き込んで速やかな還元反応
H2(g)+1/2O2(g)→H2O(1/g)
を起こさせる機器の使用によって全体的に抑制されるかいずれかの水素ガスを生成し、それが、エネルギーの電気化学的合計を変化させ、水素を生成しない犠牲で苛性アルカリおよび塩素を生成するために必要な電圧(場合によっては、様々な工業文献では2.8Vの低さ)を下げる。本発明のいくつかの好ましい態様の利点は、蒸発ボイラ燃料として水素が必要ないということである。
【0111】
本発明のいくつかの態様は、水素生成を抑制する(かつ、その水素からエネルギーを回収する能力をゼロにする)「空気電極」法を含むことができるが、多くの好ましい態様は、水素の生成をエネルギー帰還のためにまたは他の工程の原料薬品としての使用のために利用する。
【0112】
従って、本発明の特定の態様を使用するプラントは、そのようにして生成された水素の使用に関して「無差別点」を有する;すなわち、プラントは、そのエネルギー帰還(例えば、例示的な場合、そのエネルギー量の60%)のために水素を生成し、そのエネルギーの量は特定の経済的価値を有し、エネルギー帰還のために水素を使用する代わりに、その水素を、電気エネルギー単独でのその経済的価値を越えるかもしくは等しい量に関して取引または販売することができる。このようにして、このタイプのプラントは、ある種の「水素の井戸」に相当する。水素は、その電気的価値のために生成され、消費され、他の目的に水素を所望する者は、その電気的価値またはその経済的等価物を取引して工程の経済性を維持するだけでよい。この態様は、将来的な「水素経済」計画にとって利益の暗示を有する。生得のエネルギー量よりも低い価格無差別コスト点で利用可能な水素の安易な供給源を有することは、この技術の有用かつ有利な特徴を証明するかもしれない。
【0113】
C.プロトン化ブライン最適化技術の使用
本発明の特定の態様は、水素の生成を抑制するのではなく、以下のプロトン化ブライン最適化手段によってそれを意図的に最適化する。一般的な塩素アルカリ産業は、場合により、塩化水素酸の形態のHClを陽極液チャンバ中のブライン(NaCl)に添加することを用いてきた。このブラインの「プロトン化」は、本発明の特定の態様の反応体/吸収剤を生成するのに必要な電力を減らすという点で、指定量の苛性アルカリを生成するために必要な電圧を下げる効果を有する。塩素アルカリプラントの通常の作業体系では、この電圧低下効果の原因は、膜選択性などに対して研究されてきた工程である「膜を透過して帰還するNaOHの中和」に帰され、十分に理解されている。概して、この「中和」は、塩水のみを生成するものとみなされ[NaOH(帰還)+HCl(陽極液)→NaCl+H2O]、生成物の化学量論比を変化させるとは示されていない。しかし、当技術分野において十分に理解または活用されていない一つの点は、HClの添加が実際に式の化学量論比を以下のように根本的に変化させるということである。
NaCl+aHCl+H2O→NaOH+(1/2+a/2)H2+(1/2+a/2)Cl2
【0114】
本発明のいくつかの態様は水素からのエネルギー回収(より多くの水素が生成される場合に増大し、生成される吸収性NaOH 1モルあたりより多くの塩素ガスが生成される場合により経済的になる)に依存するため、生成される水素および塩素のこのさらなる量が本発明にとって特に興味深い。全体的な電圧(ひいては、電力およびコスト)が減る一方でエネルギー回収のための水素および販売用塩素のさらなる賞与が得られるということが、本発明の特定の態様が、反応体を生成するための最低エネルギーおよび生成物から回収する最高エネルギーのための値「a」を最適化することにつながる。最適値は一般に、NaCl(aq)溶液中0.5〜1.0M HClの範囲である。しかし、最適化は、各セルの設計、形状大きさ、濃度、温度、および圧力領域ごとに特異的である。しかし、各電気化学セルごとに、最低エネルギー作動を達成する最適なプロトン化率「a」がある。実際には、きわめて高い「a」値(例えば90℃で>0.15M)は、おそらくは、大部分の市販の膜を短時間で膨れさせる。当然、HClが本発明におけるブラインのプロトン化に好ましい酸であるが、当業者に公知であるような多くの他の酸を使用してブラインをプロトン化することもできる。
【0115】
D.プロトン化に使用されるHClの自己生成
本発明の特定の態様は、投入されたHClを使用し、H2およびCl2ガスを生成する両方のため、ブラインのプロトン化は、自己往復性にすることができる;すなわち、H2およびCl2生成物ガスを燃焼させて(効率的な燃料セルまたは通常のバーナで)HClガスを生成したのち、そのHClガスを陽極液にリサイクルしてブラインのプロトン化を実施することができる。H2/Cl2燃焼から回収されるエネルギーは、H2/O2燃焼から回収されるエネルギーよりも大きい。これが本発明の熱力学的効率を増す。
【0116】
本発明のいくつかの好ましい態様は、吸収/転換/再生経路を「フロントエンド濃縮/吸収工程」として使用し、この工程を使用して、以下の手段または類似の手段によって地質、海洋、または陸上隔離技術(例えばCO2を炭素バンクに注入する技術)で使用するためにCO2を吸収し、濃縮する:
(1)すべての水素を燃焼させてHClガスを生成する。
(2)すべてのHClガスを、そのようにして生成された炭酸水素ナトリウムと反応させる。
(3)関連する中和反応を経て、ほぼ100%純粋なCO2が放出され、塩水が再生されると、その塩水をさらなる吸収サイクルのためにリサイクルすることができる。
(4)この工程により、本発明は、CO2を吸収、転換、および放出するために使用され、その正味の効果として、ガスが煙道流から除去され、その後に処理するためのさらなる隔離技術のために濃縮される。
【0117】
E.炭酸塩および炭酸水素塩の陰極分解流体への逆混入
塩素/水素セルの塩素アルカリ産業的使用とは違って、本発明のいくつかの態様はまた、炭酸塩および炭酸水素塩混合物を電気化学セルの陰極液(苛性アルカリ)側にリサイクルする。このような技術は広く様々であるが、工程全体の各運転点は、一部の濃度および条件ではセル電圧、ひいてはセル電力を下げることができるため、炭酸水素塩/炭酸塩混合物の陰極液への最適なリサイクルを有する。
【0118】
F.流体の加熱のための廃熱回収の使用
本発明の特定の態様は、発電所または煙道ガスもしくは燃焼からの他の高温ガスの形態の多量のCO2放出の存在で使用されるため、標準的塩素アルカリ工程とは違い、電気化学セルの最適化にこの「廃」熱を利用する機会が十分にある。例えば、入ってくる煙道ガスの典型的な温度(例えば静電沈殿処理ののち)はゆうに300℃になるかもしれない。陽極液流体および陰極液流体を加温しながら(LVEの場合、一般に>90℃に保持すべきである)その煙道ガスを熱交換により300℃未満の点まで冷却すると、本発明のいくつかの態様は、陽極液および陰極液ヒータに伴う電力損失なしに機能することができる。
【0119】
廃熱は、塩化物塩の添加中、硫酸溶液を加熱することによって、硫酸塩電気分解の態様に直接利用される。これは、固体の塩を硫酸で溶液にして、次いで炭酸水素ナトリウムを硫酸ナトリウムにする。この化学反応を駆動するのに必要な熱は、蒸発により形成された塩化水素酸を遊離するのに十分である。煙道ガスからのこの熱の消費は、水酸化物を発生させる後続の電気分解段階での電気エネルギーを消費せずに済む。発電所における廃棄源からのこうした熱エネルギーの消費により、甚大な量の電気エネルギーが電気分解で消費されないので、これらの態様のエネルギー性能は最適化される。
【0120】
G.工程設備を駆動するための廃熱回収の使用
一般に、発電所で利用可能な煙道ガスは100℃(スクラビング済み、一般的)、300℃(沈殿処理後)、および900℃(沈殿進入)またはそのような他の数値の間の温度で出るため、入ってくる煙道ガスを電力回収サイクル、例えばアンモニア-水サイクル(例えば「Kalina」特許の方法)、蒸気サイクルまたは同じ熱力学的手段を達成するそのようなサイクルとの熱交換に通して冷却することにより、相当な廃熱処理を抽出することができる。本発明のいくつかの態様は直流電力に依存して本発明の試薬/吸収剤の生成を達成するため、工程は、他の使用のために直流電力を交流電力に転換することに伴う通常の変成器損失なしで達成される廃熱回収によって部分的または完全に直接駆動されることができる。さらには、廃熱作動式エンジンの使用により、発電工程を全く用いることなく有意な効率を達成することができる。条件によっては、これらの廃熱回収エネルギー量が本発明の態様を完全に駆動するということが判明しうる。
【0121】
VI.脱炭素化工程および電気分解工程からの副生成物の生成および使用
上記のように、本開示の装置および方法のいくつかの態様は、塩素ガス、炭酸水素ナトリウム、および水素ガスをはじめとする、脱炭素化工程および電気分解工程から多数の有用な副生成物を生成する。いくつかの態様では、本発明の態様によって生成される水素ガスは水素ガス再捕捉ループに組み込まれる。いくつかの態様では、本発明は、脱炭素化工程のために塩素イオン移動を減らすため、現在のフッ素化ポリマー膜技術を含むことができる。従って、工程は、塩素イオンを分離するための多量のエネルギーおよび経費なしで機能することができる;脱炭酸塩化および分離ループは比較的塩化物を含まない。そのようなものとして、本発明の脱炭酸塩化リアクタの態様は、一般的な塩、水、および二酸化炭素排出物を電気と組み合わせて使用して、以下のような、塩素ガス、炭酸水素ナトリウム、および水素燃焼を介する電力回収を形成することができる。
2NaCl+H2O+2CO2+e-→2NaHCO3+Cl2+[1/2H2+原子O2→e-]
【0122】
A.水素エネルギー再捕捉ループ
本発明の態様によって捕捉された水素エネルギーを使用することができる四つの技術が開発された。第一の技術は、水素と石炭とを同時燃焼させて石炭燃焼放出を改善する技術であり、第二の技術は、直流電気の水素/酸素燃料セル回収を含み、第三の技術は、発電器に接続されたタービンにおける水素の燃焼を含み、第四の技術は、水素と天然ガスとを混合すること、および天然ガス発電機用に設計され、発電器に接続されたタービンにて、この混合物を燃焼させることを含む。または、H2およびCl2は、直接または燃料セルもしくは直流回収を介してCl2およびHClに燃焼させることもできる。おおよそ135℃の苛性ソーダを備蓄用に生成する電気分解反応から、または種々の溶解熱、気化熱、および発熱反応で放出される熱を吸収する脱炭酸塩化工程そのものからのいずれかの廃熱除去からの熱の供給源は、周知の技術(すなわち、リボイラなど)により、発電所の場所で燃焼ガスの予熱または他の用途のために利用することができる。
【0123】
一つの態様で、直流電気の商業的燃料セル生成は、減圧での扱い易く安全な操作のおかげで有利な場合がある。また、生成される水素の速やかな消費がブライン電気分解のための電気負荷コストを直接減らすことができる。さらには、水素エネルギー回収サイクルをH2、Cl2、およびNaOHのオフピーク発電とともに生じさせたのち、そのH2を使用してピーク負荷時に電気を提供することができるため、本開示は、反応体を廉価に生成したのち、補助的な高価なピーク時電力を発生させると同時に脱炭酸塩化工程を実行する。燃料として、または燃料セルにおけるいずれかのH2燃焼能力によって電流生産を増強することによってプラントのピーク発電を増すためのH2エネルギー回収サイクルの経済的有用性が、自己消費ベースの有用性を提供できる。
【0124】
あるいは、電子用水素ガスのクリーンな炭素製造源が得られるならば、地域公益事業、製造業、および発電施設は、地域のバス車両、列車、および水素燃料の他の公的または民間使用で発生する水素を使用することから利を得ることができる。
【0125】
エネルギーの再捕捉ループの最適な解決策は、おそらく硫酸塩態様における水素生成の抑制である。硫酸塩電気分解の態様は、陽極で酸素を遊離させる。この酸素は、電気化学セルの陰極にてガス拡散電極にポンピングされることができ、それにより、陰極にて直ちに水素(H)イオンを水(H2O)に戻す転換を行なうことによって気体の水素の形成を防止する。これにより、気体の水素を生成するために使用された相当量の電気エネルギーを節約する。硫酸塩態様は、酸素の直接生成および既に低い電気エネルギー要件によりこの水素抑制を行なうのに特に適している。最終的な結果は、水酸化物により二酸化炭素を捕捉するシステムであり、塩化物塩だけを消費しつつ塩化水素酸だけを生成する。
【0126】
B.脱炭素化工程からの副生成物の他の用途
いくつかの態様では、塩素ガスは、世界中の水処理プラントでバクテリアを殺すために使用される主要な酸化試薬であるといえる。塩素、および塩素から誘導される約100+種の誘導体原料薬品が、米国内総生産の30%+の量で配合されているとしばしば引用される。これはまた、最大の工業薬品、すなわち塩化水素酸の生成で使用することもできる。また、塩素は、プラスチック工業において、その最も一般的な非炭素反応体として広く使用されている。
【0127】
炭酸ナトリウムは、世界中で石けん、洗剤、およびシャンプーの製造ならびにガラスの製造における融剤として一般に使用される、本発明に記載された工程の副生成物である。さらには、電力公益事業、および一般家庭が、以下の一般的反応によって硬水を軟化するために炭酸水素ナトリウムを利用する。
CaCl2(aq)+NaHCO3(aq)→CaCO3(沈殿物)+NaCl(aq)+HCl(aq)
【0128】
この工程からの炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを使用して同様の工程を用いて、多数の1族および2族塩とのイオン交換を実施して、種々の炭酸塩を沈殿させることもできる。
【0129】
脱炭酸塩化工程から生成される副生成物のもう一つの例は水素ガスである。電子用の水素ガスはエネルギーキャリヤの高い形態である。逆に、生成された水素燃料は、「より汚い」レベルの石炭と燃焼させてその燃料の放出を減らすこともでき、分離工程でボイラ供給物として燃焼させることもでき、または水素自動車で利用することもできる。多くの態様において、水素は、吸収剤を生成する化学処理工程に関連するエネルギー損失を顕著に低減するために、発電所の現場で燃焼される。現在の文献は、水素燃焼のために最適化されたタービンの完成にはさらに数年かかり、最終的には、気体の水素内に含有される熱力学的エネルギーの70%程度を電力に転換できると予想されることを示している。同時生成形態で作動する現在最良の天然ガスタービンは、天然ガスエネルギーの61%を電気エネルギーに転換することを達成できる。
【0130】
さらなる態様で、以下の方法、またはその等価物により、二酸化炭素を離れた隔離場所に輸送する効果を達成することも可能である。
(1)発電所の場所で、CO2および他の汚染物質を工程または任意のその変形態様によって吸収すると同時に水素、塩素、および炭酸塩を生成する。
(2)離れた隔離場所で、塩化水素酸および炭酸塩を再び中和反応させて事実上純粋なCO2を生成する。そして、この手段によって生成されたCO2を炭素バンクに注入することができる。
【0131】
この手段により、液化およびパイプライン、トラック輸送などによってCO2を物理的に輸送することなく、発電場所と隔離場所との間でCO2を輸送する同じ正味効果が達成される。
【0132】
VII.水銀/重金属除去
入ってくる煙道ガス流からの二酸化炭素の吸収、および強酸ガスの中和は、一般に、煙道ガス流の温度を低下させ、吸収流体中で低温を維持することによって向上される。これは、直感的に明らかであり、実験室および現場作業において真実であることがわかっている。
【0133】
入ってくる煙道ガスのこうした冷却が達成される場合、それは、そのように転換される熱が工程全体に利益をもたらす種々の手段によって使用できるような方法で行なうことができる、すなわち:
(1)陽極液および陰極液の加熱、その利益は、電気ヒータまたは他の手段を用いるヒータのエネルギー消費がなく操作されることであり、高温では電気分解反応が低電圧で生じる;
(2)生成物の炭酸塩/炭酸水素塩混合物からの水の蒸発、その利益は、分離を達成するため、およびさらなる工程用途に水を再利用するために電気ヒータのエネルギーを消費することなく、それが達成されることである;
(3)ブライン流体の加熱、この利益は、電気ヒータのエネルギーを消費することなくそれが達成されることである;
(4)他の工程加熱用途。
【0134】
入ってくる煙道ガスの冷却が、煙道ガスの温度が煙道ガス混合物の露点未満にあるような方法で達成される場合に、水および種々の成分は、入ってくる煙道ガスから水凝縮物の形態で抽出され、通常それは酸特性であり(煙道ガス中に存在するSOxおよびNOxから形成される少量の酸、一部の炭酸などを含有する)、種々の重金属のスペクトルを含有し、そのうち水銀が主要な種であるが、セレン、クロム、ヒ素、鉛、ゲルマニウム、バナジウム、および多くの他の重金属も含有する。
【0135】
水からの重金属除去、または重金属からの水の除去のいずれかは、エコロジーまたは経済的な理由のために有益な場合がある。いくつかの分離方法は、次のように作用することが証明されている:
(1)自然の熱または強制的な熱/対流手段のいずれかによる水の蒸発が、濃縮された金属酸化物として重金属を残す;
(2)酸条件から塩基性条件までの水濃縮物のpH変化により、金属成分の溶解度を変化させ、部分的またはほぼ全体の沈殿を生じさせる。こうした手段によって、自然な重力沈殿を使用して、沈降工程によって金属酸化物を除去できる;あるいは、以下の(4)にて言及されるろ過技術を使用してもよい;
(3)重金属が樹脂によって吸収されるように、流体を吸収性樹脂で処理する;
(4)受動(重力送り)または能動ポンピングのいずれかを使用して、流体を活性炭のようなろ過媒体に通して処理する。
【0136】
水酸化ナトリウム(本明細書において記載される基本的な塩素アルカリ工程から容易に利用可能)のわずかな添加を使用して、pHをわずかに酸からわずかに塩基性にゆらすことで、金属物質の沈殿を進めることができ、この後、強制的に活性炭フィルタを通すろ過により、連行された重金属の90%超過を良好に除去できることを実証した。例えば、ある実験室および現場での実証において、35〜50ppmの水銀を含有する凝縮物は、0.2ppb未満(適用されるアッセイ技術の下限)の水銀まで回収されることがわかった。
【0137】
VIII.代替の塩素ガス抑制経路
本明細書において記載される特定の二酸化炭素の隔離工程の大規模適用は、最終的には、元々の塩素アルカリ生成を、その現在の位置から発電所での製造へ移すことが予想される。この移行中にいくつかの市場問題が生じる。
【0138】
第一に、その名前が示す通り、現在の塩素アルカリ市場は、塩素およびアルカリ(苛性ソーダ)の両方を供給し、大量の作業を行ない、1ユニットの塩素が市販される場合に、1ユニットの苛性ソーダが同時に市販されることを確実にしている;上記の意味で、塩素と苛性アルカリの二つの市場は長期的に結び付き、化学量論比で販売/消費されるように共同管理されている。
【0139】
本明細書において記載される二酸化炭素の特定の隔離工程の場合、塩素だけが生成され、苛性ソーダは二酸化炭素隔離目的のために消費される。そのため苛性ソーダの需要はこの工程では満たされないため、苛性ソーダ市場のための代替生成手段の出現が期待されており、それは次の示唆される手段に限定されないが、これらを含む:
(1)ソーダ灰、または炭酸ナトリウム(Na2CO3)は、米国にて多量に見出される天然鉱物である;それは、水酸化ナトリウム、または苛性アルカリの直接的な代替物として多くの用途に使用される;
(2)水酸化ナトリウムは、炭酸塩を水和し(水の添加)、それを加熱することによって炭酸ナトリウムから直接生成できる;すなわちNa2CO3+H2O+熱→NaOH+CO2。こうした工程からのCO2が捕捉され、隔離されるなら、NaOHは、他の工業塩基に移行できないような(比較的小さい)苛性アルカリ市場のために生成される;
(3)他の炭酸塩は、同様の手段によって水酸化物に転換できる;および
(4)他の工業塩基は、具体的な用途に応じて、水酸化ナトリウムと置換できる。
【0140】
ある時点で、塩素市場は、本明細書において記載される二酸化炭素の特定の隔離工程により生成される塩素で完全に飽和することになる。この市場サイズは、現在の「静的な」塩素市場程度であることができる。苛性アルカリ市場と塩素市場とは関係なく、潜在的には低電力手段により生成される大量の塩素を提供することは、市場に弾力性を生じさせ得る。故に市場は、より大きく、安価で、「無関係な」生成物を受け入れるように広がり得る。しかし、ある時点で、本明細書において記載される二酸化炭素の特定の隔離工程により生じる塩素イオン/ガスは、塩素市場に比べて過生成され得ると推測できる。
【0141】
市場が塩素に関して飽和した後、塩素を安全な用途に向けるいくつかの手段が提案されている;いくつかの態様において、塩素を向かわせるこれらの手段はまず、塩素を次の一般反応により気体から液体に転換するように進行する:
Cl2(g)+2H2O(1)+hv363nm→2HCl(1)+1/2 02(g)
式中、hv363nmは、おおよそ363nmの波長の光のことを指す。
【0142】
いくつかの態様において、そうして生成された酸素は、発電所自体の空気入口に戻すことができ、そこで酸素に富む入口プラントが、(a)より高いカルノー効率、(b)より濃縮されたCO2出口流、(c)入口空気を加温するための低い熱交換、および(d)酸素が豊富でないプラントに勝る他の利点を有することが、電力工業調査の過程を通して、実証された。
【0143】
水素および塩素の生成物はまた、直接燃焼して、HCl(g)を生成できることに留意すべきであり、それは、次いで気体として中和されてもよく、または水と混合されてもよく、ここで塩化水素酸、または塩酸が生成する;H2およびCl2は、直流電気エネルギーの直接帰還を伴って燃料セルにて燃焼できることが示されている;同様に、H2およびCl2の燃焼の高い熱が使用されて、より典型的なバーナ/タービン/発電器配置にて電気を発生させることができる。
【0144】
塩素が塩酸(水和されたHCl)としてその液体形態に一旦転換されたら、次いでその酸を中和する種々の手段を達成でき、そのうち次の例示工程を示すが、これは包括的なものではない。
【0145】
中和形態の一つは、そうして形成された塩化水素酸と、希釈煙道ガス流(おおよそ12%CO2)からのCO2を初めに吸収して形成された炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムと再び合わせ、次の反応により濃縮されたCO2流(おおよそ100%分子CO2)を再生成させる。
HCl+NaHCO3→NaCl+H2O+CO2(g)
【0146】
この反応は、単純な混合によって、または適切な膜を通す反応を達成させることによって達成でき、そうして形成された酸-塩基電池から直流電力が抽出できる;さらに、膨張/生成ガスは、発電器を作動させるために捕捉してもよい(アミン吸収および再生工程にて達成される技術と同様)。
【0147】
CO2ガスのこうした再生成全体は、一見対極にあるように見えるが、工程はCO2捕捉および隔離のためのいくつかの解答をもたらす:
(1)CO2は、希釈流(12%)から捕捉され、次いで濃縮流(約100%)に形成されている;
(2)直流電力形態、またはガスの膨張による生成から誘導された電力の形態の追加エネルギー;および
(3)電気分解に必要な反応体(NaCl)が再生成しており、適切なコンディショニングにより、電気分解されるように調製され、別のサイクルのCO2を吸収するので化学ループを形成する。
【0148】
炭酸水素ナトリウムを用いて塩素を中和することは、中和を達成する一つの方法である;他の炭酸水素塩は同様に使用されてもよく、結果として異なる生成物塩が生成され、それは特定の状況において経済的に有利となり得る。
【0149】
I族炭酸水素塩の使用の他、II族炭酸塩(例えばCaCO3、石灰石)が利用されて、次の一般化反応の下で中和を達成できる。
G2CO3+2HCl(l/g)→G2Cl2(塩)+CO2(g)
【0150】
上記反応により遊離したCO2は、中和のために1族炭酸水素塩を用いて先行例にて生成したCO2の50%であることに留意する。また、エネルギー再結合の先行手段(膜を通す酸/塩基反応、ガスの生成からの電力の生産など)がなおも適用されることに留意する。
【0151】
塩化物イオンの中和はまた、炭酸ナトリウムを用いる次の例における、1族炭酸塩の使用により達成できる。
Na2CO3(l)+HCl(l)→NaCl(l)+NaHCO3(l)
【0152】
記載されたこの反応は、気体のCO2を全く再生成しないことに留意する;特定の操作領域において、CO2が再生成し、NaOH(l)が残る;しかし、条件が適切に制御されれば、非生成反応を達成できる。酸-塩基エネルギー回収機会(ガスの再生成からのエネルギーではない)が、この場合に利用可能であることに留意する。
【0153】
これらの反応のすべてのうち、種々の炭酸塩および炭酸水素塩混合物において、I族金属は、I族金属と置換でき、同様にII族金属は、II族金属と置換できる。
【0154】
IX.液体カーボネーターと対になった湿潤/充填バイカーボネーター
気体のCO2を炭酸水素塩に転換するための高効率ユニットの初期開発は、バブルカラムの使用に集中していた;そうした機器は、最も体積効率の良い(体積/化学-転換)生成設計として知られている。シミュレートされた煙道ガス流の実験室での吸収中、および実際の煙道ガス流の現場での吸収中、吸収流体は、主要な水酸化物形態から主要な炭酸塩形態、最終的には炭酸水素塩形態に移行することが実証された。工程の熱力学的なエネルギー消費の観点から、工程の態様の一つは、ナトリウムと炭素との比が最小(例えば炭酸水素塩の場合は1:1)であった場合に、最小の全体投入エネルギーにて作動する(すなわち、最低の電気分解エネルギー消費)ことは明らかである。いくつかの態様は、バイカーボネーターユニットおよびカーボネーターユニットの両方を含有するシステムを用いることによって、試験の目的および個々の工程の最適化目的の両方において、二つの主要な工程を分離すること(すなわち、水酸化物からの炭酸塩の形成、および炭酸塩からの炭酸水素塩の形成)を含む。こうしたユニットは、ナトリウムと炭素との比をほぼ1:1にすること、またはある制御可能な条件下にて95%超過の炭酸水素塩を生成することがわかった。炭酸水素塩への高い転換率にて最小のリアクタ体積を最適化する場合、対のバブルカラムが両方を達成する。
【0155】
しかし、異なる形態の最適化もある。例えば、吸収/転換工程において最低エネルギー消費、または最低エネルギー損失が、強く考慮され、その条件に関しての最適化は、異なる好ましい工程態様を有する;すなわち、ガスの流れに対して非常に低い圧力降下(抵抗)を有するバイカーボネーターカラムを用いることにより、機器を通した煙道ガスの(ブロワまたは他の寄生エネルギー機器を介する)圧縮に必要なエネルギーを劇的に低下させる。いくつかの態様は、湿潤および充填されたバイカーボネーターカラムを使用するが、本質的に0の液体レベルを含有する。こうした態様は、液体のバイカーボネーターカラムと対にすることができ、同様に湿潤/充填されたカーボネーターカラムと対にすることができ、または単一の「ユニカラム」設計に合わせることができ、ここで水酸化物は、部分的にカラム中でその降下を通して、炭酸塩に転換され、次いでカラムからそれが出るときまでに炭酸水素塩に「仕上げられる」。これらの異なるカラム設計のそれぞれは、異なるパラメータを最適化する傾向がある:
(1)ダブルバブルカラム:体積/転換率基準での最大効率は、後続の分離/リサイクル処理なしで炭酸水素塩への95%+転換率を達成できる;
(2)液体カーボネーターを用いる湿潤/充填された炭酸水素塩カラム:エネルギー/CO2トン吸収基準でのより高い効率。
(3)湿潤/充填ダブルカラム:低抵抗率、低エネルギー最適化;および
(4)ユニカラム設計:最小数の容器。
【0156】
対象とするCO2%除去および特定のプラント設計(CO2あたりの%SOX+NOx、空間、コストなど)に対するその他の設計パラメータキーに依存して、これらの設計それぞれ、または種々の順序および配列での上記の組み合わせが好ましい態様であってもよい。
【0157】
X.硫酸塩電気分解
吸収剤を生成する工程は、ブライン電気分解によっておよび硫酸塩電気分解によって行なうことができる。硫酸塩電気分解の態様は、多数の化学的および電気化学的反応を含有する。また、苛性アルカリの生成はこれらの工程が行なわれる基本的な理由となり続けるが、副生成物は、水素(H2)、酸素(O2)、および塩化水素酸(HCl)からなる。硫酸塩電気分解は、大量の必須エネルギーが、電気分解工程における電気エネルギーの消費ではなく、煙道ガスの廃熱から得ることができるという理由だけで、基本的にブラインの電気分解よりも電気エネルギー効率が高い。ブラインの電気分解において、苛性アルカリを生成するために電圧要件に対する基本的な下限が存在し、この限度はほぼ2.15Vである。水素ガスが抑制されない硫酸塩電気分解において、基本的な下限は1.6Vに近く、生成物水素ガス内に含有される有効な熱力学的エネルギーにほぼ等しい。第2に、純粋な酸素の遊離は、その水素のエネルギー含量をより直接的に利用し易くする。水素ガスを抑制する硫酸塩電気分解において、基本的な下限は0.7Vに近いことがある。これは、これらの反応を行ない、二酸化炭素の捕捉を可能にするために必要なエネルギーの、大きな節約である。
【0158】
この工程は、ブラインの電気分解におけるように先に記載されたような間接的ではなく、次の反応式により直接的に塩化水素酸を生成する:
2NaCl+H2SO4+熱→Na2SO4+2HCl
HClは、塩素ガスより輸送するのが容易であり、薬品原料反応体として大いに価値があり、それを市場にもたらすための圧縮エネルギーを必要としない。
【0159】
塩化水素酸は、煙道ガス熱が反応を前進させるので、一部の水と共に蒸発され、電気分解の前に硫酸ナトリウムおよび硫酸の混和物を残す。電気化学工程におけるこの電気分解工程中に生じる化学移行は、次の式に示される:
Na2SO4+2H2O+e-→2NaOH+H2SO4+2H2+O2
硫酸塩イオンは、陽極からの初期(塩変形)工程にリサイクルされ、苛性アルカリが生成されて、ブラインの電気分解と同様に取り扱う煙道ガスにもたらされ、水素および酸素が化学量論比で遊離する。
【0160】
当業者の読者は、HCl、H2、およびO2の副生成物が本明細書において既に論じられていることを直ぐに理解する。硫酸塩電気分解を用いる本発明の態様は、上記で記載されたように同じ後続工程を利用し、この工程をコスト、エネルギー消費またはエネルギー効率に関して最適化する際に本明細書において記載の同じ計算方法を利用できる。
【0161】
硫酸塩電気分解の発明のさらなる態様は、陽極にて遊離した酸素を連れ、この酸素を陰極のガス拡散電極に供給することで、水素の生成を抑え、この抑制により大量の電気分解エネルギーを節約する。この工程の得られた生成物は、販売可能な副生成物としては塩化水素酸だけであり、苛性アルカリは煙道ガス流からの二酸化炭素を吸収するために使用される。
【実施例】
【0162】
実施例
本発明の好ましい態様を例示するため、以下の実施例を含める。これらの態様は、得られる反応体を商業工程もしくは工業工程に提供し、使用することにより、ならびに/またはエネルギーをリサイクルすることにより、発電所からの二酸化炭素および他の汚染物質を減らす、もしくは実質的になくすための実現可能な経済的解決手段を提供する。
【0163】
以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって見いだされた技術を表し、従って、その実施のための好ましい形態を構成するものとみなすことができることが当業者によって理解される。しかし、当業者は、本開示を鑑みて、開示される特定の態様に多くの変更を加えることができ、そのような変更が、本発明の本質および範囲を逸することなく、依然として同様または類似した結果をもたらすということを理解すべきである。
【0164】
実施例1
グラフ法によるCO2/NaOHバブルカラムリアクタ設計
この実施例のために設計されたバブルカラムリアクタでは、四つの主要な流れがある、すなわち
(1)所与の体積流量でバブルカラムの流体中に流れ込む液体(V1=時間あたりの流体の立方体積);選択したケースでは、入ってくる体積流量は、出てゆく体積流量に等しい。従って、いずれもV1である)。この実施例では、V1=0.001m3/sec。
(2)Vg0=吸収性流体によって部分的または完全に吸収される、入ってくるガスの体積流量。この実施例では、Vg0=0.05m3/sec。
(3)Vg=出てゆくガスの体積流量。この実施例では、Vg=0.02m3/sec。
【0165】
バブルカラムリアクタは、上記条件によって束縛されるように設計した。濃縮水酸化ナトリウム中に気泡にして通すことにより、煙道ガス中の入ってくるCO2の60%を除去するものであった。反応は物質移動制限される。この実施例の目的は、二酸化炭素を99.9%除去するために必要なリアクタサイズ(高さおよび直径)を計算することであった。P=2気圧、T=298K。図8で利用可能なグラフデータを使用して、この実施例は、高いリアクタ(2.36m)および低いリアクタ(0.41m)の設計を記載する。図8は、バブルカラム中のCO2のCO2吸収率vs流体深さvs低界面速度におけるガス界面速度を示すチャートである(Schumpe et al., 1979)。
【0166】
高さ2.36mカラムの解
転換はおおよそ0.04m/sの界面速度(Ug0)で100%に接近する。この速度はバブル流範囲にある(水のような溶液中では、これはおおよそ0.05m/sである)。体積ガス流要件(Vg0)がわかったところで、カラムの直径を計算した。

【0167】
従って、入ってくる60%CO2の99%の転換には、高さ2.36m、面積1.25m2、直径1.26m、および全容積2.95m3のカラムを要する。
【0168】
高さ0.41mカラムの解
高さ0.41mカラムにおける転換には、約0.02m/sの界面ガス速度を要する。上記と同様である。

【0169】
従って、入ってくる60%CO2の99%の転換には、高さ0.41m、面積2.50m2、直径1.78m、および全容積1.03m3のカラムを要する。
【0170】
要約すると、この実施例を通じて、煙道ガスから二酸化炭素を取り除くのには、短めのカラムが容積ベースでより効率的であり;この実施例では3倍の効率であることが実証される。従って、本発明の好ましい態様の場合、設計は、短い段および/または短い段で構成された多段リアクタを目標とする。
【0171】
実施例2
物質移動係数解によるCO2/NaOHバブルカラム設計
この実施例の目的は、理論的増大から物質移動係数kla(モル/秒/体積)を決定することであった。この実施例から、この相関法が非決定的な結果を招くおそれがあることがわかった;すなわち、この実施例は、重要なパラメータのいくつかの計測の不確定さに起因する、実際の結果の、理論からの予想における難しさを強調する。従って、実験的スケーリングだけが大きな脱炭酸塩化ユニットの結果を結論的に決定することができる。
【0172】
ガスホールドアップ(εg)およびモル移動(kLa)の以下の式は、AkitaおよびYoshida(1973)からの相関からであり、比較的大きなカラム高さおよび直径(すなわち>0.1m)での二酸化炭素および水系に関して有効である。
ガスホールドアップ

および、
物質移動係数


式中、εg=ガスホールドアップ係数
Cco2=煙道ガス中のCO2濃度
Dc=カラムの直径
vL=0.0001m2/sec
σ=1cP=0.1Pasec
ρL=998kg/m3
であり、Dco2-h20P=1.661m2Pa/secであるため、
よって、Dco2-HO=1.661/5.06710(5)=3.27810(-6)m2/sec
である。
【0173】
駆動力は、二酸化炭素の平衡濃度(Cco2)と二酸化炭素の実際の液相濃度(Cco2)との差であり、この実施例では、ゼロと仮定する;すなわち、存在する水酸化ナトリウムが瞬時に水性二酸化炭素「酸」を中和する。従って、リアクタ容積あたりのモル移動の率は以下のように書くことができる。

煙道ガス中の二酸化炭素を99.99%除去するのに必要なモル移動率。CO2は、カラムの条件下で理想的なガスであると仮定される。
【0174】
立体体積/sec:

モル/sec:

Nco2(モル/sec)=0.999(モルCO2除去/モルCO2in)6.14モル/sec=6.13モル/sec
【0175】
モデル相関に必要な他の流体性質
初期界面速度をバブルフロー限界にセットして(Vg0=0.05m/s)、カラムの面積および直径を計算した。

【0176】
気相ホールドアップ反応の場合、この実施例は、C=0.2に設定し、界面速度(Ug)が進入速度および退出速度の平均であると仮定し;Ug=0.035m/s=平均(0.05m/s、0.02m/s)、この方程式ソルバー(equation solver)を使用して、εg=0.055であることがわかった。
【0177】
次に、モル移動率定数を求めた。

駆動力の式に戻り、リアクタ容積(V)を求めた。

【0178】
従って、バブルカラムの寸法は、Dc=1.13mおよびHc=0.15mであり、実際のバブルカラムにおける実際の結果とは有意な差が出る。
【0179】
いくつかの仮定が相関モデル(この挙動の最良モデルと考えられる)および実際の結果における差を説明することができる:
(1)水酸化ナトリウムは、水の性質(密度、表面張力など)を有すると仮定した;および
(2)溶液中のCO2の濃度は、ゼロと特徴づけるには十分でなかった可能性がある;これは、より尤度の高いオペランドである;例えば、CO2有効濃度がゼロではないならば、駆動力はより小さく、より高いカラムが必要である。
【0180】
また、この理論的相関は、その強みでもあるある条件下で欠点があるということが留意されるべきである:(vL=0.0001m2/sec)のような項は、多くの場合、分母で二乗されるため、これらの数値の小さな変動が大きな効果を生じさせる。このタイプの理論的増大は、遡及的な曲線の当てはめには良好であるが、設計目的で物質移動を良好に予想するものではない。さらには、異なる漸進的スケールにおける設計が指示されるようなCO2の吸収/転換速度に対する顕著な流体流動効果がある。
【0181】
実施例3
実験データからのCO2/NaOHバブルカラム設計(深さ)
本明細書において記載する「短段効率理論」(>90%吸収を達成するための、3mまたはそれ以下の気液接触距離、または流体段高さ)への、本発明の特定の態様の依存が、実施される化学エンジニアリング設計と合致する二つの異なる計算技術によって確認されることに留意されたい。しかし、特定の場合(上記のような場合)、特定の簡素化仮定がこれらの設計計算で実施されており、そのような実験的立証が図2Bおよび2Cで示される結果とともに示され、実施された(以下さらに詳細に説明する)。
【0182】
これらの処理実験それぞれは、特定の気液接触距離(すなわち、非充填開放バブルカラムケースの流体の高さ)で特定のCO2吸収率;例えば流体30cmで20%の吸収率を得た。
【0183】
その後、ガスを同じ設計および条件の第二のカラムに通すならば、再び同じ吸収が起こる;すなわち、最初のCO2の残り80%のうち20%が再び吸収される。この関係は最後には減衰する;しかし、吸収性流体の高い吸収特性、および煙道ガス中の希釈CO2の強力な吸収に固執する化学吸着の傾向を与えられると、この実施例に関してこの効果は無視され、90%除去の設計が実現される。
【0184】
所望の吸収レベル(この場合、90%)を達成するために十分なパスが達成されるまで吸収流体を通過する流体のさらなるパスが残りのCO2を再び20%等だけ減らすということがわかる。
【0185】
これは、90%を達成するために必要である流体の深さ(高さ30cmの段の多数の深さ)を決定する「ベース段の数」設計を生じさせる。各段がその前の段と同じ%CO2/距離を吸収すると仮定すると、図2Bおよび2Cの結果が得られており、図2Dおよび2Eにグラフで表される。
【0186】
図2Aは、本発明の脱炭酸塩化部分の一つの態様の主要な特徴を観察するための装置を示す。図2Aの装置(または同様な効果を有する装置)は、以下に記す手順に従って作動させることができる:
(1)炭酸塩化ユニット801に試験負荷のNaOH(例えば25℃の水中1M NaOH)を30cmの深さまで充填する、充填または非充填。
(2)この場合は典型的な石炭燃焼煙道ガス排気(16%CO2、84%N2、SOx/NOx<1%または自然なppmレート)の場合の煙道ガス(シミュレーションまたは実物)を炭酸塩化ユニット801に導入し、非充填カラム中に効果的に散布し、充填カラム中に効果的に散布または分散させ、流体中を通過させ、排気する。ガスは25℃であり、CO2は2L/分であり、他のガスは比例的に混合し、直径4インチの円形カラムに通して上に流す;システム圧は1atm psig以下である場合がある。
(3)入ってくるCO2濃度を計測することにより(例えばガスクロマトグラフサンプリングより、またはCO2濃度のインライン計測を用いて)、CO2が流体によって吸収されており、温度が上昇しており(発熱反応)、液体アッセイサンプリングが炭酸塩/炭酸水素塩/水酸化物平衡の存在を示し、CO2の吸収が起こっているだけでなく、炭酸塩または炭酸水素塩形態へのその転換が進行していることを示す。実際の作業経験は、これらの主要「移行点」がpH平衡中に存在することを示す:
a.pH<=8.3では、炭酸水素塩の形成が優勢である。
b.pH>=10では、炭酸塩の形成が優勢である。
(4)炭酸塩反応への吸収/転換が強力かつ発熱的に進行したのち、ガスの流動動力学を与えられて、CO2が吸収され/転換されていた速度で、反応の発熱段階が終了し、温度がはじめに横ばいであり、次いで低下し、OHイオン濃度が低下するとともに低下する流体の吸収能力がこの点で事実上ゼロになる。吸収レベルが低下しはじめると、pHは一般に8.3に近くなるか、その付近になる;pH>8.3で、吸収は比較的強力になる。
(5)流体は炭酸水素塩化カラム803に移され、煙道ガスが再び流体に導入される。CO2の吸収は停止し、場合によっては、負であることが示される(流体は、一部のCO2をその中を通過するガス流に与える)。流体の温度は、一部には移動するガス流への偶発的な蒸発のせいで、また、先に作製された炭酸ナトリウムと、流体中に溶解している残りの「オーファン」CO2との間で起こる炭酸水素塩化反応に起因して、低下し続ける。
(6)平衡は、炭酸水素塩の方向にシフトし続け、純粋な炭酸水素塩(99%+)を生成する点まで出発水酸化物濃度、流体およびガス温度、圧力、流量および速度、くねりなどの最適化を達成することができる。
【0187】
図2Bおよび2Cは、充填負荷で実施したいくつかの試験シリーズの結果を示す(指定の濃度のNaOHを、図2Aに示すような脱炭酸塩化システム中に配置した)。いくつかの要点が図2Bおよび2Cのデータによって実証される:
(1)条件は、純粋な炭酸塩(実験4および14)、または純粋な炭酸水素塩(実験28および32)を再現可能に形成するのに十分なように変更することができ、様々な結果(または1.0〜2.0の両極間の「イオン比」)を達成するように変調することもできる。
(2)この実験から得られるリアクタ寸法は、有意な吸収のすべてのケースに関し、一般に3m未満の気液接触距離が、入ってくるガスの90%吸収を達成するのに十分であるということがわかる。従って、熱力学的効率の限界と合致した高い吸収率を達成するためには短い低抵抗段が設計可能であることが示される。換言するならば、CO2を除去する物理的工程は、システムの熱力学的効率に明らかに見合うまたはそれを超えることができる吸収レベルで機能する。このような高い吸収率(ガス入、ガス出)は、エネルギー、ひいてはCO2生成の原因ではない。従って、混乱を回避するために、CO2吸収率(流体からの)およびプラントの熱力学的効率を二つの明らかに異なる尺度として維持することが重要である。
【0188】
図2Bおよび2Cからの結果(流体によるCO2吸収)および生成物イオン比(1.0=炭酸水素塩、2.0=炭酸塩)が図2Dおよび2Eに示されている。図2Bおよび2Cからいくつか重要な結論を導くことができる:
(1)入ってくるCO2の単一吸収段での98%の高さの瞬間的な吸収率が留意される。
a.純粋な炭酸水素塩(NaHCO3)を、溶液中、0.30m流体深さ/気液接触距離の単段バブルカラム気液接触器において入ってくるCO2の25%を吸収する条件で生成した。90%吸収まで補外すると、3メートルの接触距離が、入ってくるCO2の90%を吸収するのに十分である。
b.純粋な炭酸水素塩(Na2CO3)を、溶液中、0.30m流体深さ/気液接触距離の単段バブルカラム気液接触器で入ってくるCO2の70%を吸収する条件で生成した。90%吸収まで補外すると、<2メートルの接触距離が、入ってくるCO2の90%を吸収するのに十分である。
c.生成物における様々な吸収vs炭酸イオン比は、これらの両極間に溶液の連続体が存在することを示す。
(2)吸収性流体は、工業的に価値ある期間(例えば、これらの実施例では15〜240分)にわたってその吸収特性を保持する。
(3)リアクタ投入変量(濃度、温度、圧力、ガス流量、接触時間など)は、純粋な炭酸水素塩、純粋な炭酸塩、またはその間の任意の混合物を生成するように変調することができる。
(4)これらの実験結果を使用して90%CO2リアクタを設計すると、3mの気液接触距離(例えばおおよそ流体深さ、カラム高さ)下で、および多くの工業的に価値あるプロセスコーナにおける1mの下で、溶液が得られる。
【0189】
実施例4
種々の化学的条件でのLVEの解析
図5は、様々な化学的条件の場合の低電圧ブライン電気分解操作線を示すチャートである。このチャートは、膜塩素アルカリセルを非標準条件下で機能させるいくつかの典型的な実験結果を示す、すなわち:
(1)1.0、2.5、および5.0のpHのHCl(水中塩化水素酸)の閉ループpH調整添加によって陽極流体(プロトン化ブライン)のpHを調節する;
(2)電気ヒータによって加熱される閉ループ流体回路によって陽極流体の温度を設定点に維持する;ならびに
(3)流体/プロトン化/温度条件ごとに電圧を変調し、0.01m2塩素アルカリセルによって達成された電流を記録する。
【0190】
図5では、温度および陽極ブライン流体のプロトン化の程度(この実験シリーズでは、ブラインループへのHCl(l)添加の閉ループph調節によって制御した)の種々の組み合わせで作動する0.01m2電気分解セル、13mmギャップの場合の実際の実験電圧vs電流(チャートに示すような電流密度kA/m2に変換可能)をプロットする典型的な実験データのセットが記されている。
【0191】
図5のこれら典型的な結果に関して以下に留意されたい:
(1)このようなセルの塩素アルカリ用途で通常に使用されるような高い電圧(5V)で最大電流(従って、所与のセルの場合、最大電流密度)が達成される。
(2)同じpHでより高温のブラインは、所与の電圧で優れた電流密度を有する。
(3)より低いpHのブラインは、所与の電圧で、より高いpHのブラインに比べ、優れた電流密度を有する。
(4)これらの一般的な傾向(高めの温度、高めの酸濃度)を個々の電気化学セル幾何学/構成要素設計に関して標準的実験設計技術によって最適化して、そのセルに最適な値(kA/m2V)を出すことができる。増大した作動圧を用いる任意の塩素アルカリセルに対する同様な実験は、作動圧の増大が(kA/m2V)を高めるという結論を出す。
(5)ラインの傾き(ΔV/ΔA)は、はじめは大きく、比較的大きな電圧降下が電流/電流密度の比較的小さな低下とともに起こるが;変曲点に達したのち(おおよそ(2.5V、10A/.01m2にて)さらなる電圧低下が、電流、ひいては電流密度のより極端な低下を生じさせる。
(6)作動条件のこの変曲点およびその近くは、経済的な効率の意味で最適な電圧vs電流密度のトレードオフを表す。標準的実験設計最適化は、本発明の任意の物理的セル態様に関して最適な低電圧条件を達成することができる。
(7)この実施例の状況だけでも、1.0pH、90℃の陽極液条件は、優れた電流/電圧特性を有し、従って、これら様々な実証された操作線の中で表される最適な操作線である。
(8)低電圧電気分解の主な欠点は、それに伴う電流密度の低下である;kA/m2は電圧の低下とともに低下する。システムは、同じ量の二酸化炭素を吸収するために同じ数のNa+イオンを生成しなければならないため、膜表面のm2面積は比例して増大しなければならない;例えば、電流密度が50%低下するならば、十分な吸収性流体を生成するために2倍の膜面積が必要になる。塩素アルカリプラントは膜面積にほぼ比例するコストを有するため、これはプラントコストに対して深刻な影響を及ぼす。低電圧電気分解は、本発明のいくつかの態様で、大面積要件の欠点を有意または完全に補正する低電圧線に沿った最適化を可能にすることができるいくつかの利点を提供する。すなわち、セルおよび/または膜寿命を延ばすことができる、より穏和/非活動的な作動条件で機能する膜およびブライン電気分解セル構成要素の寿命を経験することができる。特に低めの電圧条件の場合の設計は、低い電圧を使用する態様で本質的ではない特定の材料および性能基準を緩和する能力を伴うかもしれない。これらの設計自由度のいくつかは、低電圧/低電流密度運転によって元々被るセル膜コスト増を部分的または完全に吸収する低廉なセルを生じさせるかもしれない。これらおよび多くの他の方法で、LVEシステムは、同じ量のNaOHの生成のために標準的塩素アルカリセルよりも大きな膜面積を要しながらも、その追加コストおよび運用費用の一部を完全または部分的に軽減することができる。
(9)実施例7に記載された技術により、利点(低めの電圧、および低めの電力)と欠点(大きめの面積および低下する電流密度)とのトレードオフを最適化することができる。図5に示す1.0/90℃操作線(この小さな実施例セットの場合、LVE動作にとって優れたV/I特性である)の場合、Voptlveを計算することができ、上記関係から、Ioptlveを得ることができる。従って、所与の電気分解セル幾何学設計の場合、温度、圧力、ブライン濃度、プロトン化度、膜選択などの条件をすべて実施して優れたV/I曲線または操作線を作成したのち、その曲線上の最適点を実施例7の方法によって計算することができる。この場合、Voptlveは2.88Vであり、電流密度Ioptlveは1.04kA/m2である。
(10)実施例7では、軽度にプロトン化および/または低温のケースで、Vopt=2.88Vにおける電流はおおよそ5Aである。この実施例でだけ、その電流(ひいては電流密度)は2倍を超える10.4Aに達した。
(11)ブラインのさらなるプロトン化、温度、圧力、濃度、セルの構成要素の幾何学的配置、電場、および条件を同様に最適化して、優れた(kA/m2V)計量を得ることができるが、プロトン化そのものは、生成される化学量論的水素の量を増し、それにより、システムのエネルギー回収を増す。特定の設計の所与の物理的電気化学セルに関し、システムの(kA/m2V)を最適化して吸収性流体を生成するために要するエネルギーを下げることによって最低エネルギーCO2吸収/転換の最適化を達成することができるが、エネルギー回収に利用可能な水素を同時に最適化する(次いで、効率を最適化し、それによって利用可能な水素エネルギーを回収する)と、工程のための全エネルギーをその最低電位に最適化することができることに留意することが重要である。
(12)本発明の態様が、塩素アルカリ生成で通常に生成される濃縮水酸化物(一般には33〜35重量%、その後、蒸発によってさらに濃縮)に比較してきわめて希薄な水酸化物(0.2Mおよびそれより以下が実証されている)中にCO2を効率的に吸収することができるとすると、低濃度運転(および低電圧運転)のための塩素アルカリセルの設計は、これらの非標準的条件における設計最適化のための新たな自由度を提供することができる。
【0192】
本発明の態様は、水素を作るために消費されたよりも多くの水素エネルギーを作ることはできない。できるとしたら、熱力学第二法則に違反することになる。これは、電気化学セルに印加することができる最低電圧に制限を課す。水素帰還における効率を100%と仮定し、39000kw-hr/トンのH2エネルギー量(EIA基準値)を使用するならば、結果として、ブラインの電気分解に関して1.55Vの最低電圧が得られる。当業者は、所与の水素/電力帰還効率およびシステムのエネルギー量の選択値を有する任意のシステムに関し、そのシステムに関して達成可能な最低電圧を計算することができる。
【0193】
実際に、熱力学的非効率性(I2R損失、セルにおける電流非効率性、廃熱損失などを含むが、それに限定されるわけではない)および作動するためのわずかな過電圧の必要性が、所与のセルに関して達成可能な最低電圧を高める。上記数値は、エネルギー回収に利用可能な水素の量を変化させるプロトン化比の値「a」に依存してわずかに異なる。
【0194】
ということは、低電圧における電流密度が、一定量の苛性アルカリを生成するために必要な電気分解面積の量(資本経費の良好なスカラ)を決定し、最低電圧では、所要面積はきわめて大きい。従って、最低電圧を超えるいくらかの電圧が作動のために必要であり、その量は、設計で選択される資本経費/エコロジー効率のトレードオフに依存する。
【0195】
実施例5
大規模プラント設計の熱力学
この実施例では、フルスケール運用プラント挙動を示すモデルプラント(本発明の特定の態様を取り入れたもの)を説明し、以下を含む様々な手段および方法によって所与の量のCO2を抽出するために必要なエネルギーを定量し、統計的限界内に画定する:
(1)熱力学的効率(∂CO2/∂E)は、十分に短い範囲のE(エネルギー)の間隔でΔCO2/ΔEとして近似することができる。
(2)図9Aに表すようなプラント設計に関して特定の簡素化仮定を行なうことができる、中でも:
a.消費される一次エネルギーは電気分解工程にある;ポンピング、圧縮、制御などは、反応体生成(電気分解)および水素エネルギー回収に消費されるエネルギーに比べて僅少であると考慮される。これらの値は、ゼロまたは電気分解処理で消費される電力の<0.1%と推定される。
b.消費される電気分解エネルギーは、以下の式によっておおよそ表すことができる:
Eout=V・I・EFF電流
式中、
V=作動電気分解セルの電圧
I=ブラインのプロトン化によって生じる1:1を超える化学量論比を含む、電気化学的半反応によって薬品を製造するために必要な電流。この実施例では、電気分解で消費されるプロトン化イオンの0.05HCl/NaCl比を使用する。
EFF電流=化学種の実際の生成で使用される電流の量を定義する電流効率、残りはI2R損失などでの損失。97%が実施例で使用した値である;各電気分解セルは、セルの寿命にわたって低下し、変化するそれ固有の電流効率を有する。
c.以下のように示される、水素燃焼から回収されるエネルギー(何らかの手段によって、ボイラガスとしての燃焼、燃料セル中の燃焼など):
Ein=39000kw-hr/ton圧縮H2・Ton H2・EFFdc
式中、
Ton H2=ブラインのプロトン化によって生じる1:1を超える化学量論比によって生成される水素を含む、工程によって生成される水素のトン数。
EFFdc=水素ガスの初期エネルギーを直流エネルギーに転換する際の水素回収工程の効率。生産される水素エネルギーの60%が直流エネルギーに転換され、電気分解工程の大半を駆動するために使用される。この種の効率を達成できるいくつかの手段があり、それらの手段としては:燃料セル、水素燃焼タービン、水素と代替燃料、例えば天然ガスとの混合、およびそうした燃料源について最適化された機構での燃焼があるが、それに限定されるわけではない。(発電所規模の)水素タービンの熱効率は70%までで現在の文献に見出され得る。
d.入ってくる煙道ガス流の熱から回収した、廃熱回収から帰還されるエネルギー。入ってくる加熱ガスは、ひとたび工程に入ると冷却される。本発明のいくつかの態様では、この冷却は、廃熱の吸収およびその熱の電気直流エネルギーへの転換によって達成され、それを使用して、本発明を構成する工程を補充/完全に駆動/過度に駆動することができる。この実施例では、補充的な廃熱回収は含まれない。
【0196】
この実施例のプラントモデルは、図9Bに示すような通常作動条件下で発電所から出る煙道ガスのモデル化を含む。これは、燃料の組成、燃焼工程そのものの効率、燃焼工程における元素の相対的割合などに関する有意な仮定を含む。この実施例に関する仮定は、図9Bに示され、10,000BTU/kw-hr熱消費率の典型的な亜歴青石燃焼発電所の煙道ガス産出と合致している。
【0197】
所与の煙道ガス産出量の場合、計算することができる水酸化物所要量がある。ここではいくつかの仮定が必要である。イオン比(「イオン比」とは、吸収/転換反応におけるNa/C比である)は、形成される固体生成物中のそれらの元素の比と同じである。純粋な炭酸水素塩の場合、その数値は1.0であり、純粋な炭酸塩の場合、その数値は2.0であり、炭酸水素塩と炭酸塩との混合物の場合、その数値は1.0〜2.0である。この実施例の苛性アルカリ要件の計算が図9Cに示されている。図9Cに示す実施例の場合、イオン比は1.0である。
【0198】
所与の水酸化物要件の場合、水の量、塩の量、膜表面の平方メートル(この種の電気化学セルのスカラ)、および電流密度(それ自体がセル設計、化学反応、および作動条件の関数である;ここでは、3kA/m2の数値を使用)に基づく対応する電気分解要件がある。この実施例の電気分解要件のこれらの計算は図9Dに示されている。
【0199】
プロトン化条件下の所与の電気分解量に関して、回収に利用可能な一定量のエネルギーを表す生成される所与の量の水素ガスが存在するか、または水素はさらなる処理で化学的に使用される。
【0200】
処理される煙道ガスの所与の量に関して、直流エネルギーへの一定の転換効率でそれから抽出することができる一定の廃熱エネルギー量があり、その回収された電気を使用して、電気分解における工程によって消費される直流エネルギーを補充することができる。この実施例の場合の廃熱が図9Eに示され、この場合に選択された効率は25%、すなわち、この分野に存在する種々の廃熱/直流生成技術によって超えられる数値である。
【0201】
エネルギー投入量および産出量のこれら個々の成分が与えられると、図9Fにおけるように、これらのエネルギー移動の正味効果を合計することができる。ここで、エネルギーは、kw-hrs単位で、プラント電力ベースの%値として提示され、この実施例の場合のエコロジー効率の計算が示されている。
【0202】
本発明のいくつかの態様では、ブラインのプロトン化に使用されるHClをリサイクルするために、追加的なH2/C12燃料セルを使用して水素および塩素ガスを燃焼させることもできる。特に、「超化学量論的」HClの量をリサイクルすることができ、理論上、原料薬品HClをシステムに加える必要性を除くことができる。実践では、一定量の補充HClを定期的にシステムに加えなければならない。Cl2中のH2の燃焼は、H2/O2燃焼が含むよりも多くのエネルギーを放出する。しかし、電気分解におけるさらなるプロトンの存在の効果は、低い電圧およびそのような低い電圧における高い(kA/m2V)でのNaOHの生成を劇的に触媒することである。従って、任意の所与の装置の場合、所与の量のH2/C12をHClにリサイクルし、入ってくるブラインをそのHClの量でプロトン化するための最適化を実施することができる。何らかの最適値(通常はa=0.05〜a=1.0Mの間、またはpH=1の近くで9O℃で見いだされる)で、水素/塩素燃料セル損失(塩素によって提示される酸素酸化に対するわずかな利得を超える)および水酸化物エネルギー利益(より良いkA/m2V)がシステム全体で同時に最適になる。この実施例では、H2/O2燃焼だけが計算されていることが留意されるべきである;H2/Cl2燃焼は、塩素酸化の余分な強さからのわずかな熱力学的利得を有するが、熱非効率さの相殺効果が、わずかに負の、ただし僅少と考えられる効果を生じさせる。
【0203】
A.エコロジー効率の計算
この実施例の場合のエコロジー効率(∂CO2/∂E)およびΔCO2/ΔEの計算は、以下のようにして達成した。
(1)三つのプラントがあると仮定した:
a.基本発電所(図9Bの煙道ガスモデルで例示)
b.CO2吸収/転換プラント(基本発電所からの煙道ガスを処理するために補充的な電力を要し、水素燃焼からその電力の一部を帰還するか、または水素が最終生成物であり、燃焼されない場合には水素に固有の計算上の電力を帰還する)。
c.CO2吸収/転換プラントによって必要とされる電力を提供する第三の補充発電所。この実施例では、この発電所の特性は、基本プラントと同一であると仮定した。
(2)次いで、CO2および基本プラントの100%を処理するのに消費されるエネルギーに関する以下の局面を計算した。
a.基本プラントからのCO2(煙道ガスモデル)
b.基本プラントによって生産されるエネルギー
c.CO2吸収/転換工程によって必要とされる正味エネルギー
d.補充発電所によって必要とされる正味エネルギーは、CO2吸収/転換工程によって必要とされる正味エネルギーと同一であると仮定する。
e.補充発電所によって生成されるCO2は、補充発電所によって生産されるエネルギーに比例し、基本プラントの同じΔCO2/ΔEを有すると仮定する。
(3)上記計算に関して以下の結果を得た:
a.基本プラント-1年ベースで1Gwを連続生産する10,000熱消費率プラントは、年8.76Bkw-hrsを生産し、毎年CO27,446,068トンのベースを生産し、平均1176kw-hr/トンのCO2を生産する。
b.CO2吸収/転換プラント-この実施例の計算(a=0.10、2.1V運転、純粋な炭酸水素塩を生産、水素エネルギーの15%が圧縮で消費、ポンピング/圧縮コストおよび廃熱回収利益は除外)の場合、基本プラントの100%を吸収/転換するのに3.648BKw-hrが必要である。
c.補充発電所-この実施例のプラントは、CO2吸収/転換プラントによって必要とされる電力3.648Bkw-hrを生産し、そのものが(上記からのCO21176Kw-hr/トンの数字により)大気中に放出されると仮定される合計3,101,209トンのCO2を生産する。
d.従って、生産される合計電力は12.48Gw-hrsである。従って、供給される合計電力は8.76Gw-hrsである。従って、生成される合計CO2は10.55Mtonである。従って、放出される合計CO2は3.101Mtonである。合計電力の29.1%がCO2吸収/転換工程で消費される。全CO2の71.9%が消費される。
【0204】
上記計算によっていくつかの要点が例示される。
(1)算術的に、以下の式があてはまるということが実証される。
%消費電力=1-%消費CO2
%消費CO2=1-%消費電力
これは、図9Aに示す、一単位操作線と呼ばれる線を形成する。
(2)この実施例の場合、(∂CO2/∂E)およびΔCO2/ΔEとは代数的に同一である。すなわち:
ΔCO2/ΔE=(∂CO2/∂E)=0.291/0.719=0.41
【0205】
さらに補外されたケースをさらにモデル化することができ、その場合、補充発電所によって放出されるCO2そのものが、相応に小さめの容量の別のCO2吸収/転換処理ユニット#2によって処理され、その吸収/転換ユニット#2は、補充発電所#2などによって相応に駆動され、その結果、最初に連続5回繰り返した場合の表2の結果のような結果が得られる。
【0206】
【表2】

【0207】
表2に関していくつかの点がモデルに有意である:
(1)工程の効率が、基本ケースであろうと、連続的な反復ケースのいずれかであろうと、システムに関して同じ(∂CO2/∂E)値を一貫して生産することに留意されたい;この項は、このモデルの制約を近似するシステムに関しては一定と考えられ、その目的で、工程のエコロジー効率と呼ばれる。
(2)値(∂CO2/∂E)がすべての解で一定であることは明らかであり、従って、反復回数が無限であると仮定される;すなわち、プラントが、そのプラントによって生成されるCO2を100%消費するために運転されると仮定されるならば、以下の式を使用する簡単な手段によって解を導くことができる:
1/(∂CO2/∂E)=生成するCO2を100%吸収/捕捉するために必要なプラント電力の%
実施例の場合、これは41.6%と計算される。
(3)または、所与の工程条件に関して吸収/転換で消費される正味電力がゼロであるとき(廃熱回収を無視する)、吸収および転換されるCO2が同じくゼロであることは明白である。従って、このタイプのプラントのすべての操作線は理論的には(0%電力、0%CO2)で交差する。
(4)線形システムで任意の二つの点を与えられると、以下の手段により、CO2吸収/転換工程の作動特性を定義する、操作線のための直線解を構成することができる:
a.作動条件ごとに、基本ケース解を達成し、得られる点一単位ケース解(%電力、%CO2)を%CO2(y軸)vs%正味消費電力(x軸)のグラフにプロットする;
b.その場合、(∂CO2/∂E)を計算し、x座標に関してy=100%のケースを解く;および
c.すべての線が原点を通過して移動すると仮定する。実際のシステムでは、ゼロ吸収でさえいくらかの電力消費はあり(制御、環境など)、従って、これは理想化されたケースである。実際には、これらの線はわずかにカーブし、原点で終端しない。
(5)このようにして、このタイプのCO2吸収/転換工程に関して一連の操作線を作成することができる。
(6)この同じタイプのプロットで、競合する技術を同じくプロットし、グラフ的に比較することができる、例えば:
a.競合するMEA(メチルエチルアミン)吸収技術は、プラント電力の30%を消費して、吸収が導入される前に放出されたCO2の58%の吸収を達成する。
b.さらには、プラント電力の推定15%が、極端な圧力および冷却サイクリングを介してこのCO2を液化するのに費やされる(45%電力/58%CO2)。
c.その場合、これは、1.24の(∂CO2/∂E)値を実証する;しかし、CO2を隔離場所に輸送/注入/維持するために必要な考慮されていないエネルギーがさらにある。
d.グラフ的に、この競合技術は、本発明の一つの態様である工程を運用する実施例のCO2吸収/転換プラントよりも効率が低いことが示される;すなわち、このモデルは、競合技術が、そのCO2生成量の100%を除去するために発電所の70%+を要することを示す。図9Aにグラフで表されている、競合する技術に関するこれらの点に留意されたい(チャート上の凡例を参照):
i.2005EIAの推定によると、MEA技術によるCO2の吸収は、生成される煙道ガスCO2の58%を吸収するのにプラント電力の30%を要する。(吸収-処理のみのための図9Aのチャート上の位置(30%、58%)に留意されたい)
ii.同じ推定により、CO2の圧縮/液化がプラント電力のさらに15%を消費して、そのようなプラントの運転点を(45%、58%)に移動させる。
iii.液状CO2をパイプラインまたは他の輸送装置によって輸送するのに必要なエネルギー、それに関して、そのCO2を種々の性質の炭素貯蔵所にポンピングもしくは注入するために必要なエネルギーの量、またはCO2を前記貯蔵所中に永久的に維持するために必要であるかもしれないエネルギーの量の確実な推定はない。しかし、これらの追加的なエネルギーは推定可能ではないが、それらが非ゼロであると推定することが妥当であると思われる。従って、そのような装置のエコロジー効率は、理論的には、特定のC02削減利益を確保するために消費される電力における(45%/58%)トレードオフよりも悪い。これを100%軽減ケースまで補外すると、MEA/液化/隔離技術はプラント電力の70%超を消費する。典型的な競合吸収技術は100%吸収に近づくことができない;すなわち58%CO2吸収の数値は、出てゆく煙道ガスの100%を処理したプラントのための数値であったことに留意すべきである。
【0208】
B.エコロジー効率の限界[(∂CO2/∂E)max]の計算
実際には、CO2を吸収することにより、生成されたすべてのNaOHを効果的にNaHCO3に転換する所与のシステムの場合、主なエネルギー成分はkw-hr/moleNaOHである。モルNaOHあたりの電力は、電圧および電流の両方に比例し、電流は、化学反応の化学量論的比によって固定される。従って、モルCO2あたり費やされる電力は、主として、水酸化物を効率的に生成する最低電圧条件を達成することによって最適化される。
【0209】
本発明の態様の電気分解システムが作動する最低電圧(変化する濃度、幾何学的寸法、流量などで設定)は、システムの電流密度(kA/m2)vsV特性を観察し、生成物を生成するのに十分な非ゼロ電流密度が得られる最低電圧を決定することによって決定することができる。物理的寸法、電場発生装置、セル寸法大きさ、材料の組成、および処理条件を変化させてこの特性計量(kA2/m2V)を最適化することが、これらのシステムを最適化するための第一の手段であり、所与の物理的プラントの工業工程を最適化するためには典型的な実験設計技術が有用である。
【0210】
実施上の制限は別として、すべてのシステムに所与のH/Na比(プロトン化比)を適用する一つの根本的な制限がある、すなわち:
(1)電気分解中のシステムに投入されるよりも多くのエネルギーを水素エネルギー回収を介して生産する装置は作動することができない。熱力学原理の当業者は、これが「第二法則違反」になることに気付く。
(2)この事実の結果として、陽極液消費で使用されるH/Na比の選択を与えられると、根本的な熱力学的限界を画定することができる。
a.この実施例の場合、H/Naは0.10と仮定した。
b.水素エネルギー帰還効率は100%に設定した。
c.システムによって消費される正味エネルギーがゼロであるところ(すなわち、電気分解コストが推定100%の水素帰還効率に等しい点)の、動作が起こることができる最低電圧(「Vmintheo」)を計算した。
d.この実施例では、その低い電圧は1.5526Vである。この数値は、Na/C比、H/C比および水素エネルギー帰還効率の強い関数である。この最適なケースでは、Na/Cは1.0であり、H/Cは1.0である。
e.この計算をそのエコロジー効率までたどると、単一単位解は、93%CO2吸収/転換の場合でおおよそ7%電力である。
f.この理論的最小値よりも効率的な運転点で処理することは、以下によって可能である:
i.電力消費を廃熱回収によって補充し;および
ii.生産の際にCO2放出を生じさせない電力(水力、太陽光、風力、原子力など)で吸収/転換工程を部分的または完全に駆動する。
【0211】
同様に、上記のような理想的な水素帰還効率などを仮定して、運転が「エコロジー的」になり得るところの最大電圧(「Vmaxeco」)(すなわち、CO2吸収/転換工程が、それが生成するよりも多くのCO2を除去するところ)を計算した。
a.H/Na、Na/C、および水素帰還エネルギー効率は、上記のように、それぞれ1.0、1.0、および100%に設定した。
b.CO2除去率が50%になる電圧を計算した。
c.この実施例では、そのVmaxecoは4.457Vである。この電圧および条件では、工程は、エコロジー的に利益のある運転とエコロジー的に有害な運転との間の境界線である∂CO2=∂E線上で作動する。
【0212】
従って、エコロジー的に有益な運転は、電気分解システムをVmintheo(1.5526V)とVmaxeco(4.457V)との間で作動させたときに起こる。これらの2点の間での運転は、多くの典型的な電気分解システムで再現することができる。2.1Vまたは未満での実験室結果は、このようにして設計された電気化学セルの形状大きさ、濃度、温度、圧力、流量などを操作することにより、容易に再現することができる。
【0213】
C.エコロジー効率に対する非温室効果生成性電力の影響
補充電力(工程を駆動する電力)が非温室効果ガス(GHG)放出電力(例えば風力、水力、太陽光、原子力など)によって生産される場合、補充的CO2放出はゼロであり、本発明のエコロジー効率は大きく改善する。この実施例の場合、表2のCO2の項3101209トンは、すべての後続する反復などとともに除かれて、この簡素化された結果を残す:すべてのCO2が吸収/転換され(7,446,069トン)、所要総電力は単に基本8,760,000,000+その基本量のCO2を吸収/転換するために必要な仕事を達成するために必要とされる3,648,448,267kw-hrsであり、GHG駆動工程でCO2放出の100%を確保するために要する総電力の41%に比べ、非GHG駆動工程でCO2放出の100%を確保するのに総電力の29%しか要しない。これは、工程が非GHG放出によって駆動される場合、本発明の態様が有意な「てこ入れ」係数を提供することを意味する。非GHG電力を使用してGHG生成電力を1%:1%のベースで置換する代わりに、非GHG電力を使用して、本発明のいくつかの態様である工程を駆動するならば、本明細書において記載するGHG生成電力の例を超える場合でさえ、非GHG生成電力の1%がGHG生成を多重倍だけ置換する。所与の国、州または事業体に関し、非GHG生成電力の一定の割合が、このように倍増的に使用される場合、任意のCO2削減目標をより効率的に達成することができる;すなわち、「クリーン」な電力を高度にてこ入れされた様式で使用して他の「汚い電力」の放出を浄化することができるケースを容易に想定することができる。
【0214】
いくつかの用途で非GHG生成発電がときには散在形態(例えば太陽熱、風力「ファーム」など)で利用可能であるとすると、オフピーク期間にその電力を利用して多量の吸収剤を作る能力はきわめて有意である。
【0215】
実施例6
種々のモデル化発電所のエコロジー効率
図10は、本発明の態様を取り入れた様々なモデル化発電所のエコロジー効率を示し、エコロジー効率(∂CO2/∂E)を決定する際の主要因である種々の条件を示す。
【0216】
これらの計算から一般に以下のことを結論づけることができる。
(1)炭酸ナトリウムを形成し、標準的塩素アルカリ条件を使用すると、工程は>1のエコロジー効率を有し、そのような運転は経済的に存立可能であるかもしれないが、それが吸収するよりも多くのCO2を生成する。
(2)炭酸水素ナトリウムの生産を優先するように生成物平衡を変化させることが工程のエコロジー効率を改善する。事実上純粋な炭酸水素ナトリウムを生産するように条件を変更する場合、この利点は最大限に最適化される。
(3)低電圧電気分解実施の採用は、1.0未満のエコロジー効率を特徴とする作動領域に工程を着実に移動させる(すなわち、エコロジー的に有益なCO2吸収および転換工程)。最適な(kA/m2V)および最大限の水素エネルギー生産のために電気分解システムの各物理的エミュレーションを最適化することがエコロジー効率のさらなる改善につながる。
(4)本発明の態様の吸収/転換工程を、廃熱を直流電気に転換する任意の数の利用可能な機械または専用機械と組み合わせると、直流電気分解および交流ポンピングなどにおける初期エネルギー投資を廃熱回収によって補充または完全にまかなうことができる。
【0217】
非温室効果ガス放出性発電装置からの電力を本発明に供給すると、工程は100%のCO2吸収のすぐ近くまで達することができることが留意されるべきである(実施例5の説明を参照)。
【0218】
実施例7
最適化LVE塩素アルカリセルのためのV/I特性操作線が与えられた場合のVoptlve(セル容量または面積に対する最適な低電圧作動電圧)およびIoptlve(その作動電圧における電流)の決定
本明細書においては、低電圧運転が、吸収性流体として使用される水酸化ナトリウムを生成するために必要とされる電力を減らすことを実証した。表3は、図5における1.0/90℃陽極液の場合のVI操作線から導いた計算を示す(先に実施例4で論じた)。
【0219】
表3の内容に関していくつかの点に留意すべきである。
(1)電流効率(無次元)としての三列目は、生成薬品を生成するために使用される、生成された電流の割合を表す;損失、例えばI2R損失および電気分解流体の無駄な加熱が非効率さの主要な原因である。電流効率は電圧の低下とともに低下する。
(2)セル面積は3.975Vケース(電流密度、ひいては工程の面積要件が、3.0kA/m2特性で作動する標準5V電気分解と同一である場合)に関して正規化されている。A2/A1(無次元)を計算する。
【0220】
無次元面積あたり節約される電力の%として最後の項目が図11にプロットされている。このような関数の場合、最大傾き(電圧の変化あたり電力使用の変化)が最適値を表す;すなわち、低い電圧(例えば2.1〜2.5V)では、傾き(Δpower/Δm2)は比較的低く、次いで、より高い電圧(例えば2.5〜おおよそ3)で、傾き(Δpower/Δm2)はより大きな値まで増大し、次いで、電圧が増大し続けるにつれ、より低い傾きまで低下する。これは、両側が低い傾きの領域によって画定された高い傾きの領域がある;すなわち、そのVoptlve点のいずれの側でも、電圧Δあたりの電力使用の変化がさほど効果的ではないことを示す。
【0221】
はじめに、実際の挙動を近似する関数を達成した(最小二乗当てはめによって作成された多項式傾向線の式に留意されたい)。この例では、y=-10.164x3+88.256x2-235.06x+198.37が概数である。次いで、多項式の典型的処理によってこの関数の第一導関数を計算した:dy/dx=(3)(-10.164)x2+(2)(88.256)x-235.06=max。x(ボルト)の値を反復して、その第一導関数の最大値を見いだすことができ、それは、種々の技術によって達成されて、2.894Vを解として出すことができる。
【0222】
2.894V未満の電圧を使用することもでき、さらなる省力が得られることに留意されたい。いくつかの好ましい態様は、この「自然な最適点」未満の低電圧運転を最適化する。そのような場合、膜で使用されるさらなる面積が「最適未満」の電気分解システムを生じさせるが、脱炭酸塩化工程全体の低電力運転は、所与の電気分解サブシステムに関してこの自然な最適値未満で運転することによってさらに利を得ることができる。しかし、その際、電圧/電力の利点はその後、減衰し、その一方で、面積係数が比例的に運転を面積あたりより非効率的にし続ける。
【0223】
電流およびこのVoptlveに対応する電流密度は、VおよびIに関して同様な最小二乗関係を形成することによって決定することもできるし、または作動曲線をグラフで使用してIoptlveを決定することによって決定することもできる。この実施例では、計算値は10.419A(または、このケースにおけるように0.01m2セル面積の場合)、1.042kA/m2である。
【0224】
【表3】

【0225】
実施例8
炭酸カルシウムを利用するCO2低減
次の態様は、上記で記載された一般的な概念を有益な特定用途、特定の最終生成物の有利な生成に調整でき、工程により生成されるCO2の量を低減し、および/またはプラントのエネルギー効率を増大させるさらなる実施例の一つである。本明細書にて提供される技術に基づいて、当業者は、本発明の投入量、産出量およびエネルギー効率を調節する他の複数の様式があることを理解する。
【0226】
この実施例において記載される態様は、アルカリ析出物中の多量の塩素を中和する必要なく、CO2排出を50%まで低減するという利点があり、有用であり得る。こうした態様は、厳密には燃焼後工程でない工程に関してプラントバーナの作動を変更するという代償に落ち着き得る。
【0227】
上記で説明したように、本開示の特定の例示的な態様において、塩化水素酸は、低電力塩素-アルカリ電気分解セルの塩化ナトリウムブライン供給物に添加され、次の反応を生じさせる:
H2O+NaCl+aHCl+エネルギー→NaOH+(l/2+a/2)H2+(l/2+a/2)Cl2
【0228】
他の態様において、塩化水素酸を添加しなくても、次の反応が提供される。
2NaCl+2H2O+エネルギー→2NaOH+H2+Cl2
【0229】
これらの態様において、水素、および水酸化ナトリウムを生成する。上記で説明したように、水酸化ナトリウムを使用して、廃棄物流からの二酸化炭素を吸収して、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを生じさせることができる。炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムは、多くの用途にて有益に使用できる。例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのスラリー混合物を種々の形態の洗剤生成、ガラス生成にて融剤などとして、ならびに前述した水処理用途に備えてタンク車にスラリー化することができる。
【0230】
この技術を利用する発電所用途を組み込む特定の態様において、水素は、発電所のバーナに戻され、加圧されずに燃焼できる。「高熱値」(HHV)の水素が遊離する場合があり、比較的高い効率で蒸気に変更できる。特定の用途において、88%の効率を達成できる。水素の大規模燃焼は、一般に発電所の操作パラメータに顕著な影響を及ぼすことがある。例えば、特定の態様において、発電所は、石炭発電工程(水素:炭素比0.0)から「ハイブリッド炭化水素」(水素:炭素比1.0)に転換できる。こうした発電所は、水素燃焼の結果として煙道ガス中により多くの水を生成する。さらに、バーナの温度は、水素/炭素混合物の燃焼により、増大し、炭素単独より高い温度にて燃焼する。
【0231】
ハイブリッド炭化水素プラント(H:C比が1.0)は、石炭発電所(H:C比が0.0)と天然ガス発電所(H:C比が3.73)との間のいずれかの割合にてCO2トンあたりの電力を生産する。典型的な石炭発電所は、1051kwh/CO2トンの平均割合にて電力を生産するが、典型的な天然ガス発電所は、1667kwh/CO2トンの平均割合にて電力を生産する。CO2トンあたりに生産される電力の増大がH:C比に直線的に関連すると想定すると、ハイブリッド炭化水素プラントの電力生産は、154kwh/CO2トンで1205kwh/CO2の割合まで増大する。実際のハイブリッド炭化水素プラントの増分は、CO2トンあたりに生産される電力の増大が直接的に線形でない場合があるので、より大きくなる。水素の燃焼に関連して、ハイブリッド炭化水素プラントは、HHVの水素から利益を得るだけでなく(903kwh/CO2)、より高いバーナ温度のために効率も増大する(推定154kwh/CO2)。
【0232】
生成した水素を利用することに加えて、塩素も特定の態様において有益に使用できる。具体的には、塩素は、自然の圧力下、水を通して移動させることができ、そこで水が完全に解離し、次の式に従って塩化水素酸および次亜塩素酸を形成する。
Cl2+H2O→HOCl+HCl
【0233】
(日光により提供される、または紫外線により刺激される)プロトンの添加により、不安定な次亜塩素酸(HOCl)は減り、次の式に従って酸素を与える。
HOCl+HCl+hV363nm→2HCl+1/2O2
【0234】
特定の態様において、酸素は、発電所バーナの入口に戻すことができる(自然の圧力にて加圧されない)。酸素の存在はさらに、発電所のバーナにおける燃焼強度を増大させ、作動温度(ならびに効率)を上昇させる。特定の態様において、効率に関して見積もられた増大はkwh/CO2トン単位で5〜10%である。この大きさの増大は、通常の発電所に関して60〜120kwh/CO2トンの増大を生じ、33%基準値から34.5%〜35.5%まで発電所全体の効率を改善できる。
【0235】
特定の態様において、塩化水素酸の廃棄は、次の式に従って、(容易に入手可能であり、石灰石のような供給源にて見出される)炭酸カルシウムと酸とを組み合わせることによって達成できる。
2HCl+CaCO3→CaCl2+CO2(g)
【0236】
最終目標が流れからCO2を除去することであると想定すると、塩化水素酸と炭酸カルシウムとの組み合わせは、CO2が生成されるので、直感に反したものに見えるかもしれない。しかし、使用される化学反応のより緻密な実験では、塩化水素酸が炭酸ナトリウムと組み合わせられる場合に、水酸化ナトリウム(NaOH)により元々吸収されたCO2の50%だけが放出されることを示している。具体的には、それぞれのNaイオンは、一つのCO2分子を(炭酸水素塩に)吸収し、それぞれのNaイオンは一つのClイオンを生成する。さらに、各CaCO3分子の崩壊それぞれが、二つのClイオンを吸収する(CaCl2を形成する)。故に、放出されたCO2の量は、吸収されたCO2の量の半分である。生成したCO2は、ある程度の自然の圧力を含有し、それがタービンを通して操作されて、そこからある程度の電力を回収できる。
【0237】
特定の態様において、上記で記載された工程にて消費されるエネルギーは、特に他のCO2除去工程に比べて、相対的に低い。例えば、必要とされる総電力は次のように定義できる。
電力=(-電気分解+HHV-H2)+[H:C比効率+O2効率+CO2効率]
【0238】
次の値は、CO2除去の電力要件を見積もるために使用できる:
(-電気分解+HHV-H2)=-347kwh/CO2トン(Southwest Research Instituteにより間もなく公開される研究に従う;この値はすべての廃熱効果およびプロトン化効果を排除する)。
H:C比効率=+154kwh/CO2トン(石炭と天然ガスとの間の線形関係を想定するが、それは可能性として控えめな見積である)
O2効率=+60kwh/CO2トン(控えめな低い値)
CO2効率=+O(タービンを通るCO2の作動により回収される電力はないと想定)
【0239】
そのため特定の態様において、CO2除去に必要な総電力は、133kwh/CO2トンである。1260kwh/CO2トンを生産するプラントに使用される場合、プラントが生産する電力の10.5%は、CO2放出を50%まで低減するために使用できる。こうしたシステムは、アミンを用いる既存のCO2除去システムと比較して有利であり、プラントが生産する電力の47%を使用してCO2放出を90%まで低減できる。
【0240】
実施例9
種々のモデル発電所のエコロジー効率
電気分解反応に対する操作温度の効果を試験する際に、工程の(総)熱力学的損失は次の通りであることを記憶しておくことが重要である。
E損失=E電気分解+E水素
【0241】
標準温度(25℃)および圧力(1atm)にて、ギブスエネルギーは、電気分解を達成するための最小エネルギーが-1230.6kwh/CO2トンであること、および水素から帰還可能な理論上の最大エネルギーが903.6kwh/CO2トンであることを必要とし、25℃でエネルギー損失(-1230.6-903.6)=-327kwh/CO2トンを与えることを見出した。
【0242】
高温にて、電気分解を達成するために必要なエネルギーは、ギブス自由エネルギー(電気分解が生じる電圧を支配する)計算値が変化するので低下する;しかし、重要なことに、水素から回収可能なエネルギーは一定のままである。故に、高温での操作が達成される場合に、操作全体のエネルギー損失が低減する。実際、ある程度の高温にて、電気分解に必要なエネルギーは、水素エネルギー回収と同等と見なされ、工程は見掛け上ゼロのエネルギー損失である。
【0243】
この方法によって生成された水素がメタン再形成により生成される水素と置換される場合に、現在の技術で消費される場合に、メタン887kwh/CO2トンを回収すると計算できる。(903.6kwh/CO2トンの理論値とは対照的に)その値をエネルギー帰還に関する数値として設定し、電気分解反応の温度をおおよそ301℃へ上昇させると、約887kwh/CO2トンを消費する電気分解反応に到達する;すなわち、これは一次「ゼロエネルギー損失」解である。
【0244】
緻密な観察により、この操作点において、熱エネルギー(この実施例では300℃+熱の供給源)が、低電気エネルギーに変換され得ることが見出される。これは、あるエネルギー源(熱)の別のエネルギー源、または燃料(水素)への変換である;そのようなものとして、二酸化炭素の隔離工程は、その範囲全体にわたって操作し、そうでなければ「廃熱」となるものを燃料または電気エネルギーに変換する。
【0245】
高温で電気分解工程を操作することは既知の工程である;水の電気分解(水素および酸素を生成する)は、数十年の間により高い操作温度に向けられており、そうすることによってエネルギー損失の大きな低下をもたらした。本明細書において記載される二酸化炭素の隔離工程は、(発電所の廃熱源からの)高温を利用して、同様に達成できる。同じく、気相電気分解は、塩素-アルカリ電気分解にてエネルギー損失を低下させるために使用できる。
【0246】
高温操作は、塩素アルカリセルに使用される材料が、多量の熱エネルギーをもたらす場合に生じる高温(および結果として生じる高圧)に耐えることができることを必要とする。標準的な塩素アルカリセルに使用される材料の多くは、選択される設計および操作点に好適な材料を用いてアップグレードし、または交換することが必要である。
【0247】
本明細書において開示し、特許請求するすべての方法および機器は、本開示を鑑みると、過度な実験を行なうことなく成し、実行することができる。好ましい態様に関して本発明の方法および装置を説明したが、当業者には、本発明の概念、本質、および範囲を逸することなく、本明細書において記載する方法および機器ならびに方法の工程または工程の順序に変更を加えることができることが明らかである。より具体的には、化学的に関連する特定の組成物を本明細書において記載する組成物に代えて用いても、同じまたは類似した結果が達成されるということが明らかである。当業者には明らかであるそのような同様な代用および変形はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の本質、範囲、および概念に入るものとみなされる。
【0248】
参考文献
以下の参考文献が、本明細書において述べるものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する程度に、具体的には参照により本明細書において組み入れられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流から初期量の二酸化炭素を除去する方法であって、以下の段階を含む方法:
水酸化物を水性混合物中に得る段階;
塩素を得る段階;
前記水酸化物を前記ガス流と混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から初期量の二酸化炭素の一部を除去する段階;
塩素と水を合わせて次亜塩素酸を形成する段階;
前記次亜塩素酸を崩壊させて塩化水素酸および酸素を形成する段階;ならびに
前記塩化水素酸を炭酸カルシウムと合わせて塩化カルシウムおよび低減した量の二酸化炭素を形成する段階。
【請求項2】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
水素を得る段階;および
発電所で前記水素を燃焼させる段階。
【請求項3】
低減した量の二酸化炭素が、初期量の二酸化炭素の半分である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ガス流から初期量の二酸化炭素を除去する方法であって、以下の段階を含む方法:
水酸化物を水性混合物中に得る段階;
塩化水素酸を得る段階;
前記水酸化物を前記ガス流と混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から初期量の二酸化炭素の一部を除去する段階。
【請求項6】
以下の段階をさらに含む、請求項5記載の方法:
水素を得る段階;および
発電所で前記水素を燃焼させる段階。
【請求項7】
低減した量の二酸化炭素が、初期量の二酸化炭素の半分である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、水酸化物、水素、および塩素を使用中に生成するように適合した、電気分解チャンバ;
前記電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、前記電気分解チャンバからの水酸化物を使用中に前記ガス流と混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;
前記電気分解チャンバに機能的に連結され、使用中に前記塩素と水とを混和して次亜塩素酸を生じるように適合した、第2の組の混合機;
前記次亜塩素酸を崩壊させて塩化水素酸および酸素を生じるように適合した処理機;
使用中に前記塩化水素酸および炭酸カルシウムを合わせて塩化カルシウムおよび二酸化炭素を生じるように適合した第3の組の混合機;ならびに
前記混合機と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および固相および/または液相に分離するように適合した、分離チャンバ
を含む装置。
【請求項10】
少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、水酸化物、水素および酸素を使用中に生成するように適合した、電気分解チャンバ;
前記電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、使用中に前記電気分解チャンバからの水酸化物と前記ガス流とを混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;
セルの陽極側と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ;ならびに
前記セルの陰極側に機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ
を含む装置。
【請求項11】
少なくとも1つの陰極および少なくとも1つの陽極を含み、使用中に酸素を消費することによって水素を抑制しつつ、水酸化物を生成するように適合した、電気分解チャンバ;
前記電気分解チャンバに、および使用中にガス流を含有するように適合した導管に、機能的に連結され、使用中に前記電気分解チャンバからの水酸化物を前記ガス流と混和して該ガス流中の炭素、硫黄、および/または窒素化合物が前記水酸化物と反応できる混和物を生じるように適合した、第1の組の混合機;
セルの陽極側と機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ;ならびに
前記セルの陰極側に機能的に連結し、前記混和物を別々の気相および液相に分離するように適合した、チャンバ
を含む装置。
【請求項12】
発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの煙道ガス凝縮物中の水から重金属を分離する方法であって、以下の段階を含む方法:
塩化物塩を得る段階;
塩と、水、蒸気またはその両方とを混和して溶液を作製する段階;
前記溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;
前記水酸化物の一部と煙道ガス流とを混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;
前記水酸化物の一部を前記煙道ガス凝縮物に添加してそのpHを酸性から塩基性に変化させ、結果として前記重金属を沈殿させる段階;ならびに
前記凝縮物をろ過媒体に通過させる段階。
【請求項13】
ろ過媒体が活性炭を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
凝縮物を重力送りによりろ過媒体に通す、請求項12記載の方法。
【請求項15】
凝縮物を能動ポンピングによりろ過媒体に通す、請求項12記載の方法。
【請求項16】
発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの煙道ガス凝縮物中の水から重金属を分離する方法であって、以下の段階を含む方法:
塩化物塩を得る段階;
塩と硫酸とを混和し加熱して溶液を得る段階;
得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;
硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;
前記水酸化物の一部と煙道ガス流とを混和して、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;
前記水酸化物の一部を前記煙道ガス凝縮物に添加してそのpHを酸性から塩基性に変化させ、結果として前記重金属を沈殿させる段階;ならびに
前記凝縮物をろ過媒体に通過させる段階。
【請求項17】
ろ過媒体が活性炭を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
凝縮物を重力送りによりろ過媒体に通す、請求項16記載の方法。
【請求項19】
凝縮物を能動ポンピングによりろ過媒体に通す、請求項16記載の方法。
【請求項20】
酸素を電気分解セルで消費して水素生成を抑制する、請求項16記載の方法。
【請求項21】
発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程からの塩素ガスをリサイクルする方法であって、以下の段階を含む方法:
塩化物塩を得る段階;
塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;
前記溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階;
前記塩素ガスを水および光と反応させて、塩酸および酸素を生成する段階;ならびに
前記酸素を前記発電所の空気入口に戻す段階。
【請求項22】
塩酸を、混和物から分離されたI族炭酸水素塩生成物と反応させることによって中和して、I族塩化物塩、水、および二酸化炭素ガスを生成する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
塩酸を、混和物から分離されたII族炭酸塩生成物と反応させることによって中和して、II族塩化物塩および二酸化炭素ガスを生成する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
塩酸を、混和物から分離されたI族炭酸塩生成物と反応させることによって中和して、I族塩化物塩およびI族炭酸水素塩を生成する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
反応が単純な混合によって達成される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
反応が膜を通して達成され、そうして形成された酸-塩基電池からの直流電力を抽出する、請求項21記載の方法。
【請求項27】
発電所のガス流から二酸化炭素が除去される工程から塩化水素酸を生成する方法であって、以下の段階を含む方法:
塩化物塩を得る段階;
塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;
得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;
硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階。
【請求項28】
塩化水素酸を、混和物から分離されたI族炭酸水素塩生成物と反応させることによって中和して、I族塩化物塩、水、および二酸化炭素ガスを生成する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
塩化水素酸を、混和物から分離されたII族炭酸塩生成物と反応させることによって中和して、II族塩化物塩および二酸化炭素ガスを生成する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
塩化水素酸を、混和物から分離されたI族炭酸塩生成物と反応させることによって中和して、I族塩化物塩およびI族炭酸水素塩を生成する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
反応が単純な混合によって達成される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
反応が、膜を通して達成され、そうして形成された酸-塩基電池からの直流電力を抽出する、請求項27記載の方法。
【請求項33】
酸素が電気分解セルにて消費され、水素の生成を抑制する、請求項27記載の方法。
【請求項34】
塩化物塩を得る段階;
塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;
前記溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階
を含む、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、
前記混和する段階が、炭酸塩が前記水酸化物および前記二酸化炭素から形成されるカーボネーター(carbonator)カラム、ならびに炭酸水素塩が前記炭酸塩から形成されるバイカーボネーター(bicarbonator)カラムを含む一対のバブルカラムにて生じる方法。
【請求項35】
バイカーボネーターカラムが湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有し、液体のカーボネーターカラムと対になっている、請求項34記載の方法。
【請求項36】
バイカーボネーターおよびカーボネーターカラムの両方が、湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
塩化物塩を得る段階;
塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;
得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;
硫酸塩を電気分解して、水酸化物および酸素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階
を含む、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、
前記混和する段階が、炭酸塩が前記水酸化物および前記二酸化炭素から形成されるカーボネーターカラム、ならびに炭酸水素塩が前記炭酸塩から形成されるバイカーボネーターカラムを含む一対のバブルカラムにて生じる方法。
【請求項38】
バイカーボネーターカラムが湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有し、液体のカーボネーターカラムと対になっている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
バイカーボネーターおよびカーボネーターカラムの両方が、湿潤され、充填されるが、本質的にゼロの液体レベルを含有する、請求項37記載の方法。
【請求項40】
塩化物塩を得る段階;
塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;
前記得られた硫酸塩を前記混和物から沈殿させ、塩化水素酸を残す段階;
前記沈殿物を水溶液に添加する段階;
前記溶液を電気分解して、水酸化物および塩素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階
を含む、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、
前記混和する段階が、カラムの上方区域にて前記水酸化物を炭酸塩に転換し、次いでこれを前記カラムの下方区域にて炭酸水素塩に転換する単一のバブルカラムにて生じる方法。
【請求項41】
塩化物塩を得る段階;
塩を水、蒸気、またはその両方と混和して溶液を作製する段階;
前記溶液を電気分解して、水酸化物および水素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階
を含む、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、
前記発電所からの廃熱を使用して、前記電気分解が生じる温度を、該電気分解に必須のエネルギーが該電気分解により生成される前記水素ガスから帰還可能な理論上の最大エネルギーに等しい温度まで上昇させる方法。
【請求項42】
塩化物塩を得る段階;
塩を硫酸と混和して溶液を作製する段階;
得られた塩化水素酸を前記混和物から蒸発させる段階;
硫酸塩溶液を電気分解して、水酸化物および水素ガスを生成する段階;
前記水酸化物を煙道ガス流と混和し、炭酸塩生成物、炭酸水素塩生成物、または炭酸塩および炭酸水素塩生成物の混合物を混和物として生成する段階;ならびに
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩生成物を前記混和物から分離することによって、前記ガス流から二酸化炭素を除去する段階
を含む、発電所のガス流から二酸化炭素を除去する方法であって、
前記発電所からの廃熱を使用して、前記電気分解が生じる温度を、該電気分解に必須のエネルギーが該電気分解により生成される前記水素ガスから帰還可能な理論上の最大エネルギーに等しい温度まで上昇させる方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−66887(P2013−66887A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236265(P2012−236265)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2010−526027(P2010−526027)の分割
【原出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(510077794)スカイオニック コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】