説明

点滴スタンド

【課題】脚ベースの脚及び連結部の厚さ寸法を小さくしてより小さな隙間に挿入させることができるようにしつつ、脚ベースの強度を確保する点滴スタンドを提供する。
【解決手段】移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを取付けるための取付部3を設けてなる点滴スタンドSにおいて、脚ベース1が、前下方に延びるとともに前端部すなわち先端部122aにキャスタ11を有する左右一対の前脚122と、後下方に延びるとともに後端部すなわち先端部123aにキャスタ11を有する左右一対の後脚123と、前脚122と後脚123とを一体に連続させる連結部121とを有し、連結部121、前脚122及び後脚123の上面121s、122s、123s及び下面121t、122t、123tを略同一高さで滑らかに連続させ、連結部121の中央部に鉛直方向に延びる支柱2を上方から差込むための開口121xを備える構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等に用いられるものであって、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液フックを設けてなる点滴スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院内や診療所内において、点滴を受けている間でも病院内や診療所内を移動することができるようにするための点滴スタンドに対する要望が存在する。この要望に対応すべく、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを掛けるための輸液フックを設けてなる点滴スタンドが用いられてきている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、このような点滴スタンドの脚ベースをベッドの下方の隙間に挿入させることによりベッドに接近させて使用する要望が存在する。より小さな隙間に挿入させることができるようにするためには、脚ベースの高さ寸法を小さくすればよく、そのためには脚ベースの脚及び連結部の厚さ寸法を小さくすることが望ましい。
【0004】
ところが、単に脚ベースの脚及び連結部の厚さ寸法を小さくした場合、脚、連結部又はそれらの境界に屈曲点等の応力集中箇所が存在すると、脚ベースが構造体等に衝き当たって衝撃を受けた際に、衝撃に伴う作用が応力集中箇所に働き脚ベースが破損する不具合が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−230479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に着目し、脚ベースの脚及び連結部の厚さ寸法を小さくしてより小さな隙間に挿入させることができるようにしつつ、脚ベースの強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の点滴スタンドは、移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを取付けるための取付部を設けてなる点滴スタンドであって、前記脚ベースが、前下方に延びるとともに前端部にキャスタを有する左右一対の前脚と、後下方に延びるとともに後端部にキャスタを有する左右一対の後脚と、前記前脚と後脚とを一体に連続させる連結部とを有し、前脚、後脚、連結部の上面及び下面を略同一高さで滑らかに連続させ、連結部の中央部に鉛直方向に延びる支柱を上方から差込むための開口を設けたことを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、脚ベースに応力が集中する箇所がないので、前脚、後脚及び連結部の厚さ寸法を小さくしても脚ベースの強度を確保できる。
【0009】
限られた収納スペースにより多くの点滴スタンドを収納できるようにするための構成の一つとして、前記一対の前脚は左右方向に拡開しながら下方に延び、前記一対の後脚の左脚の左端と右脚の右端間の寸法が、一対の前脚の左脚の右端と右脚の左端間の寸法よりも小さく、前記点滴スタンドの脚ベースに対してその前方から、同一構造を有する他の点滴スタンドの脚ベースの一対の後脚を、下をくぐらせるようにして近接させることが可能なものが挙げられる。このような構成であれば、一の点滴スタンドの前方から、その下をくぐらせるように他の点滴スタンドの後脚を近接させることにより、点滴スタンド間を前後方向にネスティングさせることができるからである。
【0010】
限られた収納スペースにより多くの点滴スタンドを収納できるようにするための構成として、前記前脚、後脚、連結部は略同一の厚みを持つ扁平な楕円形断面を有し、前脚はその基端部から先端部に至る略全域にわたって上方に凸形状に湾曲し、後脚はその基端部から先端部に至る略全域にわたって下方に凸形状に湾曲し、これら湾曲によって脚の上下面に生じる空間を利用して、脚ベースの一対の後脚を、前脚の下をくぐらせるようにして近接させることが可能なものも挙げられる。このような構成であれば、前脚の下方に同一構造を有する他の点滴スタンドの後脚を位置付けることにより同一構造を有する点滴スタンド同士を前後方向に近接させることができるからである。
【0011】
このような点滴スタンドに使用者が近接した状態で使用できるようにするための構成として、前記脚ベースが、左右一対の前脚間に前方に開放された前の起立空間が形成され、左の前脚と左の後脚との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間が形成され、右の前脚と右の後脚との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間が形成されるように構成されたものが挙げられる。また、このような構成によれば、使用者が前の起立空間内に起立してこの点滴スタンドを前方から後方に向けて移動させる態様と、使用者が左又は右の起立空間内に起立してこの点滴スタンドを後方から前方に向けて移動させる態様とを選択できる。
【0012】
使用者がこの点滴スタンドを静止させる際にこの点滴スタンドを安定して静止させることができるようにするための構成として、左右一対の前脚同士の間又は左右一対の後脚同士の間に、これらを接続し上面が略平面形状をなす踏み板を設けたものが挙げられる。このような構成によれば、踏み板の上面が略平面形状をなすので、前脚及び後脚がどのようなものであっても、使用者がこの点滴スタンドを静止させる際に使用者が踏み板に体重をかけることにより、この点滴スタンドを安定して静止させることができる。
【0013】
そして、前記キャスタが鉛直軸周りに回転可能であるものであって、前記キャスタが鉛直軸周りに回転可能であるものであって、前記前脚及び後脚の進行方向側先端が、キャスタよりも進行方向側に位置しているものであれば、点滴スタンドを移動させる際に、キャスタに優先して前脚及び後脚の先端部が壁体等に衝き当たるので、前脚及び後脚の先端部をバンパーとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脚ベースに応力が集中する箇所がないので、脚ベースの脚及び連結部の厚さ寸法を小さくしてより小さな隙間に挿入させることができるようにしつつ、脚ベースの強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る点滴スタンドを示す全体斜視図。
【図2】同実施形態に係る点滴スタンドを示す正面図。
【図3】同実施形態に係る点滴スタンドを示す左側面図。
【図4】同実施形態に係る点滴スタンドを示す平面図。
【図5】図2におけるA−A断面図。
【図6】図2におけるB−B断面図。
【図7】図2における要部を破断して示す図。
【図8】同実施形態に係る輸液フックの取付態様を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【図10】同実施形態に係る点滴スタンドのネスティング態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の一実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。
【0017】
この点滴スタンドSは、図1〜図4に示すように、移動可能な脚ベース1に支柱2を支持させ、その支柱2に輸液パックPを掛けるための輸液パック保持部である輸液フック3及び左右両側及び前側からそれぞれ把持可能なハンドル4を設けてなる。なお、図2及び図3においては、支柱2を一部省略して示している。
【0018】
脚ベース1は、図1〜図6に示すように、キャスタ11と、キャスタ11を支持する支持部材12とを具備してなる。この脚ベース1は、全体が樹脂材料で一体成形されている。前記支持部材12は、樹脂により一体に成形されたもので、前記支柱2を支持するための左右方向に延びる連結部121と、この連結部121の左右両端から前下方に延びるとともに前端部すなわち先端部122aに前記キャスタ11が取り付けられる左右に対をなす2本の前脚122と、前記連結部121の中間部から後下方に延びるとともに後端部すなわち先端部123aに前記キャスタ11が取り付けられる左右に対をなす2本の後脚123と、左右の後脚123間を接続し上面124aが略平面形状をなす踏み板124を備えており、平面視略H字状をなしている。前記連結部121の中央には、前記支柱2が立設されている。これら連結部121、前脚122及び後脚123の上面121s、122s、123s及び下面121t、122t、123tは、略同一高さで滑らかに連続している。この支持部材12の高さ寸法h1は、一般的な病室用ベッド下方の隙間に挿入可能な大きさに設定されている。また、この脚ベース1は、左の後脚の左端と右の後脚の右端と間の寸法w2を、左の前脚の右端と右の前脚の左端と間の寸法w1よりも小さく設定してある。さらに、この脚ベース1は、前側の左右のキャスタ11間に前方に開放された前の起立空間1s1が形成され、前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11との間、すなわち左の前脚122と左の後脚123との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間1s2が形成され、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11との間、すなわち右の前脚122と右の後脚123との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間1s3が形成されるように構成されたものである。すなわち、前脚122、後脚123の先端部122a、123a以外の部分が、少なくとも前側の左のキャスタ11と後側の左のキャスタ11とを結ぶ直線、前側の右のキャスタ11と後側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。また、前脚122の先端部122a以外の部分が、前側の左のキャスタ11と前側の右のキャスタ11とを結ぶ直線よりも内側に位置している。具体的には、前記脚ベース1は、先端にキャスタ11を有した左右1対の前脚122及び左右1対の後脚123を有し、前側のキャスタ11を支持する2本の前脚122及び後側のキャスタ11を支持する2本の後脚123がそれぞれ平面視において先端側が拡開するハの字状に配されている。また、前脚122はその基端部122bから先端部122aに至る略全域にわたって上方に凸形状に湾曲し、後脚123はその基端部123bから先端部123aに至る略全域にわたって下方に凸形状に湾曲している。その上で、これら湾曲によって脚122、123の上下面に生じる空間を利用して、脚ベース1の一対の後脚123を、前脚122の下をくぐらせるようにして近接させることを可能に構成してある。すなわち、前脚122の下に同一構造をなす他の点滴スタンドSの後脚123を通過させることが可能な空間が形成されるように構成されている。この構成によって、複数の点滴スタンドSをネスティングすることができるようにしてある。複数の点滴スタンドSをネスティングさせた際の構成については後述する。前記前の起立空間1s1は、平面視において前方に開放されたもので、この点滴スタンドSの前側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを後方に、すなわち使用者Uの進行方向に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記左の起立空間1s2は、平面視において左側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの左側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。前記右の起立空間1s3は、平面視において右側方及び後方に開放されたもので、この点滴スタンドSの右側に起立した使用者Uが当該点滴スタンドSを前方に押しながら歩行することが可能な大きさに設定されている。そして、前記支持部材12を構成する2本の前脚122の下に、前記前の起立空間1s1及び前記左右の起立空間1s2、1s3にそれぞれ連通する蹴り込み空間1s4が形成されている。この蹴り込み空間1s4は、正面視、側面視及び背面視において視認可能に開口したもので、その高さ寸法h2は、一般的な体格を有する成人のつま先が歩行中に進入可能な大きさに設定されている。一方、前記キャスタ11は、双輪タイプのもので、その幅寸法はエレベータと該エレベータの乗り口との間の隙間の幅寸法よりも大きい。具体的には、前記キャスタ11の幅寸法は30mm以上であることが望ましく、本実施形態では60mmに設定されている。また、前記キャスタ11はいずれも鉛直軸周りに回転可能であり、このキャスタ11の回転範囲は全域にわたって該キャスタ11が取り付けられる前記前脚122又は後脚123の先端部122a、123aの下方の空間内である。換言すれば、前記前脚122又は後脚123の先端部122a、123aは、キャスタ11の回転範囲よりも外方に位置している。加えて、前記連結部121の中央部には、鉛直方向に延びる支柱2を上方から差込むための開口121xを設けている。この連結部121の下方、より詳細にはこの開口121xの下方から下方に延伸させて、有底の筒状をなす支柱取付部13を脚ベース12と一体に設けている。そして、この支柱取付部13の内部に、支柱2の下端部を収納するようにしている。加えて、前記踏み板124の後部には、円弧状の切欠き124bを設けている。また、この支持部材12には、全体にわたって厚さ寸法を略均一とすることにより成形を行う際の冷却工程において形がひずむのを防ぐべく、図10に示すように、底面にリブ12rを設けている。このリブ12rの厚さ寸法と、支持部材12の外周、踏み板124の前端縁及び踏み板124の後端縁をそれぞれ形成する周壁の厚さ寸法と、前記リブ12r及び周壁を設けていない箇所の肉厚とは略同一に設定している。その上で、後述するように、特定の点滴スタンドS(1)の前方に同一構造をなす他の点滴スタンドS(2)をネスティングさせた際に、特定の点滴スタンドS(1)の一部、より具体的には支柱取付部13が他の点適スタンドS(2)の踏み板124の切欠き124bの内部に配されるようにしている。
【0019】
前記支柱2は、伸縮可能なもので、図1〜図3及び図7に示すように、前記脚ベース1に立設された下部要素21と、この下部要素21に上下スライド可能に嵌め合わされ前記輸液フック3を支持する上部要素22とを備えたものである。前記下部要素21は、脚ベース1の前記中心フレーム121に立設された金属パイプ材製のものである。前記上部要素22は、前記下部要素21の内周にスライド可能に嵌合された金属パイプ材製のものである。この上部要素22を緊締機構23により前記下部要素21に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構23は、前記輸液フック3よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構23は、図7に示すように、前記支柱2に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着された雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。換言すれば、前記緊締機構23は、前記支柱2の下部要素21の上端部に設けられた雌ねじ231aを有するフレーム231と、このフレーム231の雌ねじ231aに螺着されその先端で上部要素22の外周を押し付けることによりこの上部要素22を前記下部要素21に固定するための雄ねじ232aを有するグリップ232と、前記雄ねじ232aが外部に露出することを防止するカバー233とを具備する。前記フレーム231は、前記支柱2の下部要素21の上端部21aと、この上端部21aに外嵌させた合成樹脂製の外嵌部材231bとを備えてなるもので、前記下部要素21の上端部21a及び外嵌部材231bのいずれか一方に雌ねじ231aを有している。前記グリップ232は、前記雄ねじ232aを保持する軸部232bと、この軸部232bに回転力を付与するための把持部232cと、この把持部232cと前記軸部232bの外面とを滑らかに連続させる中間部232dとを備えたものである。すなわちこの中間部232dは、軸部232bから把持部232cに向かって漸次径が増大する曲面形状をなしている。前記カバー233は、前記フレーム231に設けられ前記グリップ232の軸部232bの外周に相対回転可能に外嵌する筒状のものである。具体的には、このカバー233は、前記フレーム231の外嵌部材231bと一体に形成された薄肉円筒体状のもので、このカバー233の外周面232aと前記グリップ232の中間部232dの外周面232d1とが大きな段差を伴うことなく略連続するように構成されている。そして、この支柱2の上端には、各輸液フック3に掛けられた輸液パックP同士が干渉しないように複数の前記輸液フック3が放射状に設けられている。この実施形態においては、4本の前記輸液フック3を着脱自在に取り付けることができるようになっているが、図面では2本の輸液フック3を装着した状態を示している。
【0020】
前記各輸液フック3は、図1及び図2に示すように、支柱2に設けたフック取付部材5から外方に延出する延出桿31と、この延出桿31の延出端部に設けられたフック本体32とを備えている。これら延出桿31と前記フック本体32とは、連続した細長い素材により作られたものであり、同一平面に沿って配置されている。前記フック本体32は、前記延出桿31の延出端に連続して設けられ上下方向に延びる上下延出部321と、この上下延出部321の延出端に連続して設けられ支柱2側に折り返す折り返し部322とを具備してなり、その折り返し部322の先端322xと前記延出桿31との間に形成される開口3sが、支柱2側から輸液パックPを挿脱し得る方向に開放されている。前記上下延出部321は、延出桿31の延出端から下方に垂下するもので、病室で一般的に用いられているカーテンの網目の寸法よりも大きな上下方向寸法h3を有している。前記折り返し部322は、上下延出部321の延出端に連続して設けられ前記輸液パックPを掛け止める略U字状をなす掛け止め部分322aと、この掛け止め部分322aから連続して上方に延びる上向き部分322bと、この上向き部分322bの上端に連続して設けられ支柱2に向かって延びる先端部分322cとを備えたものであり、この先端部分322cと前記延出桿31との間に輸液パックPを挿脱するための開口3sが形成されている。前記折り返し部322の先端322xは、支柱2に向けて延出している。すなわち、前記折り返し部322の先端部分322cは、前記延出桿31と平行である。前記延出桿31は、図8に示すように、その基端に下方に屈曲して垂下する垂下部311を備えている。前記フック取付部材5は、支柱2の上端部に装着されたもので、その上面に、中心ボルト挿通孔51と、この中心ボルト挿通孔51の近傍から放射状に形成された複数本の延出桿保持溝52と、これら各延出桿保持溝52の基端に連続させて設けられた縦穴53とが設けられている。前記延出桿31は、その垂下部311を前記縦穴53に挿入するとともに、その垂下部311に連続する基端部312を前記延出桿保持溝52に嵌め合わせることによりフック取付部材5に保持されるようになっている。なお、フック取付部材5の上面には、前記中心ボルト挿通孔51に対応する中心孔61と、前記延出桿保持溝52に対応する保持溝62とを有したキャップ6が装着されるようになっており、このキャップ6の中心孔61と前記フック取付部材5の中心ボルト挿通孔51に挿通させたボルト63を支柱2の内部に固設した図示しないナットに螺着することにより前記各延出桿31を前記フック取付部材5に固定するようにしてある。以上のような輸液フック3の下方に、手を掛けることができるハンドル4を設けている。
【0021】
前記ハンドル4は、図1〜図5に示すように、支柱2を囲う環状のハンドル本体41と、このハンドル本体41を支柱2に支持させるためのボス部42とを備えてなる。このハンドル4は、左右両側及び前側からそれぞれ把持可能であり、このハンドル本体41の内周面41a側に全周に亘って連続した環状空間を形成している。本実施形態では、前記ハンドル本体41の内周面41a、上面41b及び外周面41cが全周に亘って途切れることなく連続している。前記ハンドル本体41は、環状をなす持ち手部411と、この持ち手部411の下面411aと前記ボス部42とを連結する連結部412とを備えており、その上面41bが略水平となるように前記支柱2に取り付けられている。前記持ち手部411は、平面視において長軸を左右方向に向けて支柱2に取り付けられた楕円形状をなし、その断面形状は手を掛けやすくすべく略円形状に設定されている。前記環状空間は、この持ち手部411の内周に沿って環状をなすように連続したものである。前記連結部412は、前記持ち手部411の左右両端の下面411aからそれぞれ前記ボス部42に向かい延びる帯状のもので、持ち手部411に手を掛けた際に手と干渉しにくい位置に配している。前記ボス部42は平面視において前記持ち手部411の中心に位置されている。このボス部42は、支柱2に対して上下方向に取付位置を変更可能に取り付けられており、このハンドル4のボス部42を緊締機構43により前記支柱2に対して上下位置変更可能に固定している。この緊締機構43は、前記ハンドル4の持ち手部411よりも下方に位置する部位に設けられている。前記緊締機構43は、前記ハンドル4のボス部42により構成される雌ねじを有するフレーム431と、このフレーム431の雌ねじに螺着された雄ねじを有するグリップ432と、前記雄ねじが外部に露出することを防止するカバー433とを具備する。この緊締機構43は、前述した支柱2の上部要素22を下部要素21に固定するための緊締機構23に準じた構成をなすものであるため、図示及び詳細な説明は省略する。
【0022】
ここで、この点滴スタンドSをネスティングさせた場合の構成を図9及び図10を参照しつつ以下に示す。特定の点滴スタンドS(1)のハンドル4と、この特定の点滴スタンドS(1)と同一構造をなす他の点滴スタンドS(2)のハンドル4との上下方向相対位置は、持ち手部411の上下方向寸法以上異なる。また、特定の点滴スタンドS(1)の前脚122の下方に形成された蹴り込み空間1s4を他の点滴スタンドS(2)の後脚123が通過している。このとき、特定の点滴スタンドS(1)の支柱2に他の点滴スタンドS(2)のハンドル4の持ち手部411が接近又は当接しているとともに、特定の点滴スタンドS(1)の支柱取付部13が他の点滴スタンドS(2)の踏み板124の切欠き124bの内部に配されている。なお、図10においては、キャスタ11、支柱2、輸液フック3及びハンドル4は省略して示している。
【0023】
なお、以上の実施形態において、前後左右の概念は説明の便宜上用いたものであり、使用者Uの使用方向を規定するものではない。
【0024】
以上に述べたように、本実施形態の構成によれば、連結部121、前脚122及び後脚123の上面121s、122s、123s及び下面121t、122t、123tを略同一高さで滑らかに連続させているので、脚ベース1に応力が集中する箇所がなく、従って、前脚122、後脚123及び連結部121の厚さ寸法を小さくしつつ脚ベース1の強度を確保できる。
【0025】
また、前記一対の前脚122が左右方向に拡開しながら下方に延び、前記一対の後脚123の左脚の左端と右脚の右端間の寸法w2が、一対の前脚122の左脚の右端と右脚の左端間の寸法w1よりも小さく、特定の点滴スタンドS(1)の脚ベース1に対してその前方から、同一構造を有する他の点滴スタンドS(2)の脚ベース1の一対の後脚123を、下をくぐらせるようにして近接させることが可能であるので、点滴スタンドS同士を前後方向にネスティングさせることができる。従って、限られた収納スペースにより多くの点滴スタンドSを収納できる。
【0026】
さらに、前記前脚122、後脚123、連結部121が略同一の厚みを持つ扁平な楕円形断面を有し、前脚122はその基端部から先端部に至る略全域にわたって上方に凸形状に湾曲し、後脚123はその基端部から先端部に至る略全域にわたって下方に凸形状に湾曲し、これら湾曲によって脚122、123の上下面に生じる空間を利用して、脚ベース1の一対の後脚123を、前脚122の下をくぐらせるようにして近接させることが可能であるので、特定の点滴スタンドS(1)の前脚122の下方に同一構造を有する他の点滴スタンドS(2)の後脚123を位置付けることにより同一構造を有する点滴スタンドS同士を前後方向に近接させることができる。従って、この点からも限られた収納スペースにより多くの点滴スタンドを収納できる。
【0027】
加えて、前記脚ベース1の左右一対の前脚122間に前方に開放された前の起立空間1s1が形成され、この脚ベース1の左の前脚122と左の後脚123との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間1s2が形成され、さらにこの脚ベース1の右の前脚122と右の後脚123との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間1s3が形成されるようにしているので、このような点滴スタンドSに使用者Uが近接した状態で使用できる。また、このような構成によれば、使用者Uが前の起立空間1s1内に起立してこの点滴スタンドSを前方から後方に向けて移動させる態様と、使用者が左又は右の起立空間1s2、1s3内に起立してこの点滴スタンドSを後方から前方に向けて移動させる態様とを選択できる。
【0028】
また、左右一対の後脚123同士の間に、これらを接続し上面が略平面形状をなす踏み板124を設けているので、使用者Uがこの点滴スタンドSを静止させる際に使用者Uが略平面形状である踏み板124の上面に体重をかけることにより、この点滴スタンドSを安定して静止させることができる。加えて、前記踏み板124の上面に体重をかけた状態で前脚122を浮かせて点滴スタンドSを前方に移動させることにより、段差を乗り越えることもできる。その上、本実施形態では、この踏み板124の後部に切欠き124bを設け、特定の点滴スタンドS(1)の前方に同一構造を有する他の点滴スタンドS(2)をネスティングさせた際に、前記特定の点滴スタンドS(1)の支柱取付部13が他の点滴スタンドS(2)の切欠き124bの内部に配されるようにしているので、互いに隣接する点滴スタンドS(1)、S(2)間の位置決めを行うことができるとともに、複数台の点滴スタンドSをネスティングさせたままの状態で移動させる場合において点滴スタンド間の相対位置を安定して維持させることができる。
【0029】
そして、前記キャスタ11が鉛直軸周りに回転可能であるとともに、前記前脚122及び後脚123の進行方向先端が、キャスタ11よりも進行方向側に位置しているので、点滴スタンドSを移動させる際に、キャスタ11に優先して前脚122及び後脚123の先端が壁体等に衝き当たる。従って、前脚122及び後脚123の先端部をバンパーとして機能させることができる。
【0030】
加えて、本実施形態では、連結部121から下方に延びる有底筒状の支柱取付部13を設け、脚ベース1の全体を樹脂材料で一体成形しているので、少ない部品点数で支柱2を安定して支持させることができる脚ベース1を実現できる。
【0031】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では左右一対の後脚同士の間にこれらを接続し上面が略平面形状をなす踏み板を設けているが、左右一対の前脚同士の間にこれらを接続し上面が略平面形状をなす踏み板を設けてもよく、また、踏み板を省略してもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では前記一対の後脚の左脚の左端と右脚の右端間の寸法を一対の前脚の左脚の右端と右脚の左端間の寸法よりも小さくしているが、このような形状でなくとも、前脚の下方に同一構造を有する他の点滴スタンドの脚ベースの後脚を位置付けることが可能であれば、限られた収納スペースに多数の点滴スタンドを収納させるべく点滴スタンド間をある程度近接させることはできる。
【0034】
さらに、脚ベースの一対の後脚を、前脚の下をくぐらせるようにして近接させることが可能なものであれば、前脚及び後脚の形状は任意のものを採用してよい。
【0035】
加えて、上述した実施形態では、利用者を点滴スタンドに大きく近接させることができるようにすべく、脚ベースを、左右一対の前脚間に前方に開放された前の起立空間が形成され、左の前脚と左の後脚との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間が形成され、右の前脚と右の後脚との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間が形成されるように構成しているが、利用者を点滴スタンドに大きく近接させる必要がない場合にはこれ以外の前脚及び後脚の配置を採用してももちろんよい。
【0036】
そして、前脚及び後脚の進行方向側先端をキャスタよりも進行方向側に位置させるための構成としては、上述した実施形態に係るもの以外に、例えば前脚又は後脚の先端部がキャスタの回転可動範囲のどの位置にあってもキャスタの上方に前脚又は後脚が存在する形状を採用してもよい。その一方で、前脚又は後脚の先端側に別途バンパーを設ける態様を採用することも考えられる。
【0037】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0038】
S…点滴スタンド
1…脚ベース
11…キャスタ
121…連結部
121x…開口
122…前脚
123…後脚
124…踏み板
1s1…前の起立空間
1s2…左の起立空間
1s3…右の起立空間
2…支柱
3…輸液フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な脚ベースに支柱を支持させ、その支柱に輸液パックを取付けるための取付部を設けてなる点滴スタンドであって、
前記脚ベースが、前下方に延びるとともに前端部にキャスタを有する左右一対の前脚と、後下方に延びるとともに後端部にキャスタを有する左右一対の後脚と、前記前脚と後脚とを一体に連続させる連結部とを有し、
前脚、後脚、連結部の上面及び下面を略同一高さで滑らかに連続させ、
連結部の中央部に鉛直方向に延びる支柱を上方から差込むための開口を設けたことを特徴とする点滴スタンド。
【請求項2】
前記一対の前脚は左右方向に拡開しながら下方に延び、
前記一対の後脚の左脚の左端と右脚の右端間の寸法が、一対の前脚の左脚の右端と右脚の左端間の寸法よりも小さく、
前記点滴スタンドの脚ベースに対してその前方から、同一構造を有する他の点滴スタンドの脚ベースの一対の後脚を、下をくぐらせるようにして近接させることが可能な請求項1記載の点滴スタンド。
【請求項3】
前記前脚、後脚、連結部は略同一の厚みを持つ扁平な楕円形断面を有し、前脚はその基端部から先端部に至る略全域にわたって上方に凸形状に湾曲し、後脚はその基端部から先端部に至る略全域にわたって下方に凸形状に湾曲し、これら湾曲によって脚の上下面に生じる空間を利用して、脚ベースの一対の後脚を、前脚の下をくぐらせるようにして近接させることが可能な請求項1または2記載の点滴スタンド。
【請求項4】
前記脚ベースが、左右一対の前脚間に前方に開放された前の起立空間が形成され、左の前脚と左の後脚との間に左側方及び後方に開放された左の起立空間が形成され、右の前脚と右の後脚との間に右側方及び後方に開放された右の起立空間が形成されるように構成されたものである請求項1、2又は3記載の点滴スタンド。
【請求項5】
左右一対の前脚同士の間又は左右一対の後脚同士の間に、これらを接続し上面が略平面形状をなす踏み板を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の点滴スタンド。
【請求項6】
前記キャスタが鉛直軸周りに回転可能であるものであって、前記前脚及び後脚の進行方向側先端が、キャスタよりも進行方向側に位置している請求項1、2、3、4又は5記載の点滴スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56093(P2013−56093A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196999(P2011−196999)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】