説明

点滴セット

【課題】誤穿刺の防止、接続部の汚染の防止、ゴム栓のコアリングの防止、接続部の液漏れの防止、点滴ボトルと点滴連結管の分離(点滴セットの脱落)の防止、排液速度の向上および廃棄性の向上を達成しうる点滴セットを提供することである。
【解決手段】内面がルアーテーパー状に形成され、端部外周に突条部が設けられた円筒形状のロックアダプターからなる開口部を有するプラスチックボトルと、外面が前記ロックアダプターの内面に嵌合されるように形成された連通パイプの外側の内壁に雌ネジが形成された回動自在のキャップが被着された接続部がチューブの一端に設けられた点滴用連結管とからなる点滴セットであって、前記プラスチックボトル開口部の突条部と前記点滴用連結管接続部の雌ネジとが螺合されてなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点滴セットに関する。さらに詳しくは、プラスチックボトル開口部の突条部と、点滴用連結管接続部の雌ネジとが螺合されてなる点滴セットに関する。
【背景技術】
【0002】
生理的食塩水、ぶどう糖などの医薬液が充填された点滴用ボトルと点滴用連結管との連通方法として、たとえば図5に示されるように、ガラス製バイアル瓶40の吐出口41に嵌入されたゴム栓42に点滴セットの点滴連結管44の先端に接続部を介して取り付けられた瓶針43を刺通することによって、点滴ボトルたるガラス瓶40と点滴連結管44とを達成しているものが従来より使用されている(従来技術1)。
【0003】
また特開平7−241344号公報には、図6に示されるように、医薬液が充填され、ゴム栓53によって密閉された袋50の吐出口51に、一端が点滴連結管52の先端に挿入され、他端に連通針56が同軸状に取り付けられ医薬液の通路54aを有する押し込み操作部材54と、一端が該押し込み操作部材54と係合し、他端が前記吐出口51と係合するガイド筒55とからなる接続装置が開示されている(従来技術2)。
【0004】
従来技術1のばあい、瓶針43をゴム栓42に刺通しているだけの単純な構造を有しているため、取扱いは単純であるが、接続部からの液漏れの虞があるばかりでなく、輸液治療中に患者が動いたり、手で引っ掛けたりしたときに、瓶針43がゴム栓42から脱落したり、瓶針43によって誤穿刺が発生する虞があるという欠点があり、医療事故に結び付く危険性がある。
【0005】
また、瓶針43の一部が外気に露出しているため、空気中から汚染される危険性がある。また瓶針を備えているために、使用後も穿刺の虞があるため、廃棄性にも問題がある。
【0006】
そのうえ、従来技術1および2ともに点滴ボトルの密閉をゴム栓に依存しているため、ゴムのくずが、当該点滴ボトル内に充填された医薬液に異物として混入する(コアリング)虞がある。
【0007】
さらに、従来技術1および2ともに、点滴ボトル内の医薬液は瓶針の内部の細い流路を経て吐出されるため、排液速度(流速)を高くすることは困難であり、脳血管発作や心筋梗塞などの診断のための血管造影に使用される造影剤のように短時間に血管内に注入する必要があるばあいには適用できない。
【0008】
そのうえさらに、従来技術1および2ともに、瓶針がゴム栓を貫いて点滴ボトル内に延びているため、排液につれ点滴ボトル内の液面が下がり、該瓶針の先端に達すると、それ以上は排液されないという問題もある。
【0009】
叙上の従来技術1の問題点のうち、瓶針のゴム栓からの脱落については、従来技術2のばあい、ガイド筒55の他端が吐出口51と係合している構造により解決されてはいるが、接続構造が複雑であるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、叙上の従来技術の問題点を解消し、誤穿刺の防止、接続部の汚染の防止、ゴム栓のコアリングの防止、接続部の液漏れの防止、点滴ボトルと点滴連結管の分離(点滴セットの脱落)の防止、排液速度の向上および廃棄性の向上を達成しうる点滴セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の点滴セットは、医薬液が収容された容器本体と、容器開口部と、容器首部とからなり、前記容器開口部が、脆弱部と、該脆弱部より厚肉のタブとを備え、該脆弱部が細幅薄肉の円状に形成され、前記容器開口部が、円筒形状を呈しかつ内面がルアーテーパー条のロックアダプターをさらに備え、該ロックアダプターの端部外周に点状の突条部が設けられた、ツイストオフ式の閉塞構造を有するプラスチックボトルと、
一端の先端部において前記ロックアダプター内に挿入される、外面がルアーテーパー状の連通パイプを備えた点滴用連結管と
からなる点滴セットであって、
前記点滴用連結管が、長手方向に移動自在かつ当該点滴用連結管に形成された前記突出部に係止されるカプラをさらに備え、当該カプラの内面に雌ネジが刻設され、前記プラスチックボトルの容器開口部の点状の突条部と当該カプラの雌ネジとが螺合されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、点滴用ボトルと点滴セットとの接続に瓶針を用いていないので、誤穿刺の防止、接続部の汚染防止および接続部の液漏れ防止が達成され、ボトル内部の薬液の排液速度を速くすることができ、点滴用ボトル内の残液を防止でき、かつ廃棄性にも優れている。
【0013】
また、点滴用ボトルと点滴用連結管との接続が、点滴用ボトルの突条部と、点滴用連結管の接続部の螺合および嵌合によっているので、点滴ボトルと点滴用連結管の分離(点滴セットの脱落)を確実に防止できる。
【0014】
さらに、点滴用ボトルの密閉にゴム栓が用いられていないので、コアリングを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の点滴セットについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る点滴セットの一例を示す一部破断斜視図である。図2はプラスチックボトルの吐出口の構造の一例を示す説明図である。図3は本発明の点滴セットの一例の説明図である。図4は本発明の点滴セットの一例として使用されるツイストオフ式の閉塞構造を有するプラスチックボトルの説明図である。
【0017】
図1〜2を参照すると、本発明の一実施の形態にかかわる点滴セットは、プラスチックボトル1と、プラスチックボトル1に接続される点滴用連結管10とから構成される。
【0018】
プラスチックボトル1は開口部2を有しており、該開口部2は円筒形状のロックアダプター2aからなり、該ロックアダプター2aの端部外周には突条部20が設けられている。また、ロックアダプター2aの内面はルアーテーパー状に形成されている。
【0019】
点滴用連結管10は、前記ロックアダプター2a内に挿入される連通パイプ4を先端に備えている。
【0020】
本実施の形態のばあい点滴用連結管10の一端は、先端の外面がテーパー状の形状を呈した前述の連通パイプ4と、後端がジョイント手段12を介してチューブ15に連結される管状体11とからなっている。
【0021】
管状体11およびジョイント手段の材質については、点滴用の薬液に対して耐性を有する合成樹脂が好ましく、ポリカーボネートが最適であるが、ポリエチレンやポリピプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体なども好適に使用しうる。
【0022】
本実施の形態にかかわる点滴セットのばあい、長手方向に移動自在かつ前記点滴用連結管10の一端において係止され、突条部20と螺合する雌ネジが内面に刻設されたロック用カプラ(以下、「カプラ」という)30を備えている。
【0023】
また、本実施の形態のばあい、突条部20は、開口部2の先端に環状に連続して形成されている(図2参照)。しかしながら、かかる形状に限られることはなく、環状の突条部の代わりに雄ネジを形成したもの、点状の突条部ももちろん本実施の形態に含まれる。
【0024】
カプラ30は点滴用連結管10を挿通している。カプラ30の一端は、点滴用連結管10の外周面に形成された突出部10aに係止されるので、点滴用連結管10から脱落することはない。
【0025】
カプラ30の材質については、とくに限定されることはなく、前述の管状体11およびジョイント手段の材質としてあげたものの他にポリメチルメタクリレートなども好適に使用しうる。
【0026】
図3および4を参照しつつ、本発明の構造を有している点滴用連結管Aと、点滴用プラスチックボトル1との接続方法について説明する。
【0027】
図4はいわゆるツイストオフ式の閉塞構造を有する点滴前の点滴用プラスチックボトル1を示している。
【0028】
点滴用プラスチックボトル1は容器本体23と容器開口部2と容器首部24とからなっている。容器本体23には、医薬液が収容されている。点滴前の容器用開口部2は脆弱部22と該脆弱部22より厚肉のタブ21とからなり、タブ21が回転されることによって脆弱部22が捩切られ、タブ21が容器から離れ、容器開口部2が図2のように開口するようになっている。脆弱部22は細頚、あるいは細幅薄肉の線状に形成されたり、あるいは開口の周囲に沿って配置された薄肉の円状等が挙げられる。
【0029】
つぎに、図3に示される点滴用セットAの連通パイプ4に回転自在に装着されているキャップCを取り除き、連通パイプ4を点滴用プラスチックボトル1の開口部2に挿入することによって連通パイプ4の外面とプラスチックボトル1の開口部2が嵌合する。さらにカプラ30(図1参照)を回転すると、カプラ30の雌ねじ30a(図1参照)と突条部20(図1参照)とが螺合すると共に、連通パイプ4はプラスチックボトル1の開口内面に嵌合する。これによって、点滴用連結管Aと、点滴用プラスチックボトル1との接続が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る点滴セットの一例を示す一部破断斜視図である。
【図2】プラスチックボトルの吐出口の構造の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の点滴用連結管の一例の説明図である。
【図4】本発明の点滴セットに使用されるツイストオフ式の閉塞構造を有する点滴用プラスチックボトルの説明図である。
【図5】従来の点滴セットの一例を示す斜視図である。
【図6】従来の点滴セットの他の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 プラスチックボトル
2 開口部
4 連通パイプ
10 点滴用連結管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬液が収容された容器本体と、容器開口部と、容器首部とからなり、前記容器開口部が、脆弱部と、該脆弱部より厚肉のタブとを備え、該脆弱部が細幅薄肉の円状に形成され、前記容器開口部が、円筒形状を呈しかつ内面がルアーテーパー状のロックアダプターをさらに備え、該ロックアダプターの端部外周に連続した突条部が設けられた、ツイストオフ式の閉塞構造を有するプラスチックボトルと、
一端の先端部において前記ロックアダプター内に挿入される、外面がルアーテーパー状の連通パイプを備えた点滴用連結管と
からなる点滴セットであって、
前記点滴用連結管が、長手方向に移動自在かつ当該点滴用連結管に形成された突出部に係止されるカプラをさらに備え、当該カプラの内面に雌ネジが刻設され、前記プラスチックボトルの容器開口部の点状の突条部と当該カプラの雌ネジとが螺合されてなる点滴セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−136245(P2007−136245A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57318(P2007−57318)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【分割の表示】特願2005−203472(P2005−203472)の分割
【原出願日】平成9年3月10日(1997.3.10)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】