説明

無人搬送車

【課題】無人搬送車において、位置決め部材を用いることなく保持アームを荷物を支持すべき位置に位置決めできるようにし、無人搬送車自体は通常の停止精度でありながら、固定側ステーションに対してロール状の荷物を確実に受け渡しできるようにする。
【解決手段】無人搬送車1は、ロール状の荷物3の両側を支持する一対の保持アーム51と、各保持アーム51を前後及び左右方向に移動させる駆動機構53と、固定側ステーション2を基準に該ステーション2と本車1との相対位置を検出する位置検出センサ6と、駆動機構53を制御する制御ユニット8とを備える。制御ユニット8は、本車1が固定側ステーション2の荷物受け渡し位置まで移動したとき、位置検出センサ6による位置情報に基づき保持アーム51における荷物を支持すべき位置に対する前後及び左右方向のずれ量を算出し、このずれ量に応じ駆動機構53を動作させ各保持アーム51の位置ずれを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側ステーションに対しロール状の荷物を搬出入する無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の無人搬送車として、固定側ステーションの荷物受け渡し位置まで走行を行ったときに、車体に搭載された荷物保持部を昇降動作させることで、固定側ステーションと荷物の受け渡しを行うものが知られている。ここに、荷物保持部は、ロール状の荷物の両側をその下方から支持する一対の保持アームにより構成されるものである。
【0003】
ところで、固定側ステーションに対して荷物の受け渡しを行う際には、保持アームを荷物を支持すべき位置に対して前後方向及び左右方向にずれないように正確に位置決めすることが要求される。そこで、無人搬送車の走行面に固定側ステーションを基準としてコーン状の位置決め部材を配置し、無人搬送車に備えられるアウトリガ機構の接地部をこの位置決め部材に嵌合させることで、無人搬送車の停止精度の向上を図る構成がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344478号公報
【特許文献2】特開2003−201050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の構成においては、固定側ステーションの設置位置が初期状態からずれた場合、固定側ステーションと位置決め部材との相対的な位置関係が変わるため、無人搬送車が位置決め部材によって位置決めされたとしても、保持アームが荷物を保持すべき位置に位置しなくなり、荷物の受け渡しを行えないことがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、位置決め部材を用いることなく保持アームを荷物を支持すべき位置に位置決めできるようにして、無人搬送車自体は通常の停止精度でありながら、固定側ステーションに対してロール状の荷物を確実に受け渡しすることができる無人搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、固定側ステーションに対しロール状の荷物を搬出入する無人搬送車であって、走行するための走行手段を有した車体と、前記車体に対して昇降自在で、ロール状の荷物の両側をその下方から支持する一対の保持アームと、前記保持アームの各々を前後方向及び左右方向に移動させる駆動機構と、固定側ステーションを基準として該ステーションと本無人搬送車との相対位置を検出する位置検出手段と、前記走行手段及び駆動機構を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、固定側ステーションを目的地として走行するように前記走行手段を制御し、本無人搬送車が固定側ステーションの荷物受け渡し位置まで移動したときに、前記位置検出手段により検出される位置情報に基づき前記保持アームにおける荷物を支持すべき位置に対する前後方向及び左右方向のずれ量を算出し、このずれ量に応じて前記駆動機構を動作させて各保持アームの位置ずれを補正するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、本無人搬送車が荷物受け渡し位置にあるときの固定側ステーションとの相対的な位置関係を基に、各保持アームを荷物を支持すべき位置に移動させてずれ補正するので、無人搬送車の停止位置を矯正するための位置決め部材を用いることなく、また、無人搬送車の停止精度は通常のまま、保持アームを固定側ステーションに対して正確に位置決めでき、ロール状の荷物を固定側ステーションと確実に受け渡しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る無人搬送車の平面図。
【図2】上記無人搬送車の正面図。
【図3】上記無人搬送車の側面図。
【図4】(a)は上記無人搬送車が誘導ラインに沿って走行する前の初期位置にあるときの平面図、(b)は(a)に対応する同状態の側面図。
【図5】上記無人搬送車が誘導ライン上の折れ曲がり地点に到達して横行走行を停止したときの平面図。
【図6】(a)は上記無人搬送車が印刷機の荷物受け渡し位置に到達したときの平面図、(b)は(a)に対応する同状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る無人搬送車について図面を参照して説明する。図1乃至図3は本実施形態に係る無人搬送車1の構成を示す。本無人搬送車1は、固定側ステーション2に対しロール状の荷物3を搬出入するものであって、走行面に敷設される誘導ラインLに沿って走行する構成とされている。ここに、ロール状の荷物3は、円筒形状のコア3aに紙やビニール等から成るシート材3bを巻回したものであり、巻回されたシート材3bの両端からコア3aの一部が突出した状態となっている。本無人搬送車1は、走行用の車体4と、車体4の荷台として搭載され固定側ステーション2とロール状の荷物3の受け渡しを行うための荷物移載装置5と、本車1と固定側ステーション2との相対位置を検出する位置検出センサ6(位置検出手段)と、本車1の各部を制御する制御ユニット7とを備える。
【0011】
車体4は、その前部に左右一対の駆動換向輪41(走行手段)を、後部に左右一対の従動輪42を有している。駆動換向輪41は、車体4に搭載される走行用モータによって回転駆動されると共に、車体4に搭載される換向用モータによって前後進方向と横行方向とに換向動される。従動輪42は、自由回転機能を持ち、その向きが進行方向に対して変更自在なキャスタで構成される。ここで、車体4の下部には、誘導ラインLを検知するための検知部8が設けられている。
【0012】
荷物移載装置5は、車体4に対して昇降自在でロール状の荷物3の両側をその下方から支持する左右一対の保持アーム51と、各保持アーム51を昇降動させる昇降機構52と、各保持アーム51を前後方向及び左右方向に移動させる駆動機構53とを有している。各保持アーム51は、車体4の前後方向に延在するように設けられ、その前端側にロール状の荷物3のコア3aが係入される半円状の溝部51aを有している。
【0013】
昇降機構52は、保持アーム51の中途部分を回動自在に軸支する支持部材52aと、保持アーム51の後端側と連結されたシリンダ52bとで構成され、シリンダ52bの収縮動又は伸張動により保持アーム51を支持部材52aの軸52cを中心に回転させ、保持アーム51の先端側を上昇又は下降させる。支持部材52a及びシリンダ52bは、各保持アーム51毎に配され、駆動機構53に備えられる左右一対のブラケット53aに取付けられる。支持部材52a及びシリンダ52bのブラケット53aに対する取付け位置は、保持アーム51で種々のサイズのロール状の荷物3を保持できるように左右方向に変更可能となっている。
【0014】
駆動機構53は、車体4上部に設けられた左右一対のベース53bと、各ベース53b上において前後に延設されたレール53cに沿って移動する一対のテーブル53dと、各テーブル53d上において左右に延設されたレール53eに沿って移動する上述した一対のブラケット53aとで構成される。各テーブル53dには、ベース53bに対し前後動するための構成として、制御ユニット7によって回転制御されるサーボモータと、サーボモータの回転運動を直線運動に変換するラックピニオン機構等が設けられる。各ブラケット53aについても、各テーブル53dに対し左右動するための構成として、上記と同様の構成が備えられる。
【0015】
位置検出センサ6は、車体4の前部に設けられ、固定側ステーション2と荷物の受け渡しを行う際に、固定側ステーション2を基準として該ステーション2に対する本車1の相対位置を検出する。位置検出センサ6としては、例えば、非接触式のリニアイメージセンサが挙げられ、この場合、センサと対向する固定側ステーション2側のエッジや端面等を走査することで、固定側ステーション2との前後方向及び左右方向距離を計測する。
【0016】
制御ユニット7は、本無人搬送車1が姿勢を変えることなく固定側ステーション2を目的地として走行するように、検知部8で誘導ラインLの検知を行って駆動換向輪41の回転及び換向動を制御する。制御ユニット7は、ユニット内蔵のメモリに、本無人搬送車1における各保持アーム51の位置関係や、駆動機構53にある各サーボモータの停止位置等を保持アーム51制御用データとして記憶する。制御ユニット7は、本無人搬送車1が固定側ステーション2の荷物受け渡し位置まで移動したときに、メモリに記憶した上記データと、位置検出センサ6により検出される位置情報に基づき保持アーム51における荷物を支持すべき位置に対する前後方向及び左右方向のずれ量を算出する。制御ユニット7は、算出したずれ量に応じて駆動機構53を動作させて各保持アーム51の位置ずれを補正する。
【0017】
図4乃至図6を用いて上記のように構成された無人搬送車1において固定側ステーション2から荷物を搬出する際の制御ユニット7が行う制御の流れについて説明する。ここでは、固定側ステーション2は、ロール状の荷物3を保持しその巻回されたシート材を印刷する印刷機であり、以下においては印刷機2とする。図4は無人搬送車1が誘導ラインLに沿って走行する前の初期位置にあるときを示す。ここに、印刷機2は、その筐体21から略水平に延出する左右一対のアーム22を備え、各アーム22に出没自在に設けられたチャッキング部23によりロール状の荷物3のコア3a両側を保持している。チャッキング部23は、ロール状の荷物3を保持した状態では、アーム22の内方面から突出し、ロール状の荷物3の保持を解除した状態では、アーム22内に収納される構成となっている。誘導ラインLは、走行面上の所定位置から印刷機2の各アーム22のチャッキング部中心を通る軸23aに平行な方向(図中X方向)に延在し、さらにこの軸23aに直交する方向(図中Y方向)に折れ曲がって印刷機2の荷物受け渡し位置に達している。まず、制御ユニット7は、無人搬送車1が印刷機2に向かって誘導ラインL上を横行走行するよう、駆動換向輪41をX方向に換向して回転動作させる。このとき、制御ユニット7は、シリンダ52bを伸張動させ各保持アーム51を下降した状態にする。
【0018】
図5は無人搬送車1が誘導ラインL上の折れ曲がり地点に到達して横行走行を停止したときを示す。このとき、制御ユニット7は、荷物の受け取り時に保持アーム51が印刷機2のアーム22と干渉しないよう、各ブラケット53aを左右外向きに動作させ、保持アーム51を外側に開いた状態にする。その後、制御ユニット7は、無人搬送車1が印刷機2に向かって誘導ラインL上を前進走行するよう、駆動換向輪41をY方向に換向して回転動作させる。
【0019】
図6は無人搬送車1が印刷機2の荷物受け渡し位置に到達して前進走行を停止したときを示す。このとき、位置検出センサ6が印刷機2と本無人搬送車1との相対位置の検出を行い、制御ユニット7は、位置検出センサ6による位置情報に基づき、保持アーム51における荷物を支持すべき位置に対する前後方向及び左右方向のずれ量を算出する。ここで、前後方向のずれ量は、各保持アーム51の溝部51a中心を通る軸51bと印刷機2の各アーム22のチャッキング部中心を通る軸23aとの成す角θとして算出され、左右方向のずれ量は、各保持アーム51配列方向中心と印刷機2のアーム配列方向中心とのX方向距離Eとして算出される。制御ユニット7は、各テーブル53dを算出した角θに応じて移動させ、各保持アーム51のY方向における位置合わせを行う。さらに、各ブラケット53aを算出した距離Eに応じて移動させ、各保持アーム51のX方向における位置合わせを行う。各保持アーム51のX方向における位置合わせにおいては、保持アーム51がロール状の荷物3のロール端3cから所定の寸法となるように設定される。
【0020】
次に、制御ユニット7は、シリンダ52bを収縮動するように制御して各保持アーム51を上昇させ、これにより、保持アーム51の溝部51aにロール状の荷物3のコア3a両端が係入される。このとき、チャッキング部23の保持状態が解除され、ロール状の荷物3が無人搬送車1の保持アーム51に移載される。ここで、印刷機2にロール状の荷物3を搬入する際は、保持アーム51に荷物を保持させた状態で、上記の流れと同様の手順で行えばよい。
【0021】
このように本実施形態に係る無人搬送車1によれば、本無人搬送車1が荷物受け渡し位置にあるときの固定側ステーション2との相対的な位置関係を基に、各保持アーム51を荷物を支持すべき位置に移動させてずれ補正するので、無人搬送車1の停止位置を矯正するための位置決め部材を用いることなく、また、無人搬送車1の停止精度が通常のものであっても、保持アーム51を固定側ステーション2に対して正確に位置決めでき、ロール状の荷物3を固定側ステーション2と確実に受け渡しすることができる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、無人搬送車1は、誘導ラインLに沿って走行するものに限られず、制御ユニット7等において予め設定された走行経路を所定の走行プログラムに基づいて走行するものであってもよい。また、位置検出センサ6は、固定側ステーション2を基準として本車1の相対位置を検出するものに限られず、固定側ステーション2の位置に関連付けられて地面に固定された目標物を基準としても構わない。
【符号の説明】
【0023】
1 無人搬送車
2 固定側ステーション(印刷機)
3 ロール状の荷物
4 車体
41 駆動換向輪(走行手段)
51 保持アーム
53 駆動機構
6 位置検出センサ(位置検出手段)
7 制御ユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側ステーションに対しロール状の荷物を搬出入する無人搬送車であって、
走行するための走行手段を有した車体と、
前記車体に対して昇降自在で、ロール状の荷物の両側をその下方から支持する一対の保持アームと、
前記保持アームの各々を前後方向及び左右方向に移動させる駆動機構と、
固定側ステーションを基準として該ステーションと本無人搬送車との相対位置を検出する位置検出手段と、
前記走行手段及び駆動機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
固定側ステーションを目的地として走行するように前記走行手段を制御し、本無人搬送車が固定側ステーションの荷物受け渡し位置まで移動したときに、前記位置検出手段により検出される位置情報に基づき前記保持アームにおける荷物を支持すべき位置に対する前後方向及び左右方向のずれ量を算出し、このずれ量に応じて前記駆動機構を動作させて各保持アームの位置ずれを補正することを特徴とする無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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