説明

無人搬送車

【課題】加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点まで正確に走行できると共に、加熱炉外のスペースを有効利用できるようにした無人搬送車を提供する。
【解決手段】荷役ステーションから加熱炉Yに向かって走行する無人搬送車1を、加熱炉Yの外部において第1および第2ガイドセンサ78a,78bと第1マークセンサ79aとを使用して走行させ、加熱炉Yの内部において第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cとを使用して走行させることで、加熱炉Yの内部に設定された停止位置(目標点)に停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関し、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点まで正確に走行できる無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等では、自律走行して製品等を搬送するものとして、無人搬送車が使用されている。この無人搬送車の走行に用いられる誘導方式には、磁気誘導方式と、レーザ誘導方式とが知られている。磁気誘導方式は、走行面にゴム製の磁気テープを貼付け、無人搬送車に搭載される磁気センサで磁気テープから発せられる磁気を検出しながら無人搬送車を走行させる誘導方式である。レーザ誘導方式は、工場内の壁に反射板を取付け、無人搬送車に搭載されるレーザセンサからレーザを照射し、反射板からの反射光を検出しながら無人搬送車を走行させる誘導方式である。
【0003】
特許文献1には、走行区間によって磁気誘導方式とレーザ誘導方式とを使い分け、レーザ誘導方式で走行している無人搬送車を、荷役ステーションに走行させる場合には、レーザ誘導方式から磁気誘導方式に切り替えて走行させるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−265438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱加工するための半製品を加熱炉内へ運搬する場合、荷役ステーションに該当する無人搬送車の走行目標点は加熱炉内となる。この場合、特許文献1の技術では、加熱炉内を磁気誘導方式で走行させるために、加熱炉内の走行面に磁気テープを貼付ける必要がある。この磁気テープは耐熱性に劣るゴム製なので、加熱炉内で高温にさらされると熱劣化する。そのため熱劣化した磁気テープでは、正確に磁気を検出できず、加熱炉内で無人搬送車が正確に走行できないという問題点があった。
【0006】
また、無人搬送車を加熱炉外をレーザ誘導方式で走行させると、レーザ誘導方式は、工場内の壁とレーザセンサとの間のスペースがレーザの光路となるため、そのスペースはレーザの光路を塞がないよう空けておく必要がある。よって、加熱炉外のスペースを有効に利用できないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであり、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点まで正確に走行できると共に、加熱炉外のスペースを有効利用できるようにした無人搬送車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1記載の無人搬送車によれば、無人搬送車は、走行手段によって、加熱炉外では、磁気ガイド検出手段により加熱炉外に敷設された磁気ガイドを検出しつつ走行し、加熱炉内では、レーザ検出手段によって加熱炉の内面を検出しつつ走行して、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点まで走行する。このように、無人搬送車は、加熱炉外では磁気誘導方式で走行し、加熱炉内ではレーザ誘導方式で走行するので、磁気ガイドの熱劣化を防止しつつ、加熱炉内の目標点まで正確に走行できるという効果がある。また、加熱炉外を磁気誘導方式で走行させることにより、加熱炉外のレーザの光路を最小限に抑えて、加熱炉外のスペースを有効利用できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の無人搬送車によれば、請求項1の効果に加え、無人搬送車が加熱炉外から加熱炉内へ進入する場合には、無人搬送車は、走行手段により、磁気ガイド検出手段とレーザ検出手段との双方の検出結果によって走行する。即ち、磁気誘導方式により加熱炉外の走行経路を走行した無人搬送車は、磁気誘導方式およびレーザ誘導方式の双方により加熱炉外から加熱炉内へ走行し、その後、加熱炉内ではレーザ誘導方式により目標点まで走行する。このように、磁気誘導方式とレーザ誘導方式との切り替えタイミングにおいて、双方の誘導方式を併用する期間を設けたので、磁気誘導方式からレーザ誘導方式へ、無人搬送車を走行経路から逸脱させることなく、正しい走行経路を走行させつつ、切り替えることができるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の無人搬送車によれば、請求項1又は2の効果に加え、加熱炉内では、レーザ検出手段の側方検出手段によって、加熱炉の内面側壁と無人搬送車との距離が検出されて、加熱炉内での無人搬送車の横方向位置を走行経路に沿わせて走行させる。また、レーザ検出手段の前方検出手段によって、加熱炉の内面奧壁と無人搬送車との距離が検出されて、無人搬送車を加熱炉内の目標点へ走行させる。よって、加熱炉内へ進入した無人搬送車を、磁気誘導方式を用いることなく、レーザ検出手段の側方検出手段と前方検出手段とによるレーザ誘導方式によって、目標点まで走行させることができるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の無人搬送車によれば、請求項3の効果に加え、磁気ガイド検出手段は、無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設されると共に、レーザ検出手段の側方検出手段は、無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設された磁気ガイド検出手段の配設箇所に対して無人搬送車の前方側の位置にそれぞれ配設されている。よって、無人搬送車が、磁気ガイドや加熱炉の内面側壁に対して、わずかに傾いて走行している場合であっても、前方部および後方部の磁気ガイド検出手段やレーザ検出手段の側方検出手段によって、そのわずかな傾きを検出することができる。よって、無人搬送車をより正確に走行させることができるという効果がある。
【0012】
また、レーザ検出手段の側方検出手段は、無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設された磁気ガイド検出手段の配設箇所に対して無人搬送車の前方側の位置にそれぞれ配設されている。よって、無人搬送車が加熱炉に進入する場合には、磁気ガイド検出手段よりも先に、その磁気ガイド検出手段より前方側に設けられたレーザ検出手段の側方検出手段が加熱炉に進入する。従って、磁気ガイド検出手段で磁気ガイドを検出した状態で、レーザ検出手段の側方検出手段によって加熱炉の内面側壁の検出を開始することができるので、無人搬送車が加熱炉に進入する場合には、磁気誘導方式とレーザ誘導方式との双方によって、無人搬送車を走行させることができるという効果がある。
【0013】
請求項5記載の無人搬送車によれば、請求項4の効果に加え、レーザ検出手段の側方検出手段は、無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設された磁気ガイド検出手段の配設箇所に対して、無人搬送車の後方側の位置にそれぞれ配設されており、その側方検出手段によるレーザの照射方向と略直行する方向であって、無人搬送車の後方へレーザを照射して、後方にある加熱炉の内面奧壁と無人搬送車との距離を検出し、無人搬送車を加熱炉内の目標点へ走行させる後方検出手段とを備えている。よって、無人搬送車を、前進又は後進のいずれの方向に進行させる場合であっても、無人搬送車を加熱炉内の目標点まで正確に走行させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態における無人搬送車の側面図であり、(b)は、(a)に示す矢印Ib方向から視た正面図である。
【図2】各種センサの配置を示した無人搬送車の平面透視図である。
【図3】無人搬送車が走行する施設を示す斜視図である。
【図4】無人搬送車の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】制御装置で実行される、加熱炉Yへ進入する際の誘導処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(c)は、無人搬送車の加熱炉Yへの進入過程を示す平面図である。
【図7】(d)〜(g)は、図6に引き続き、無人搬送車の加熱炉Yへの進入過程を示す平面図である。
【図8】本発明の変形例における無人搬送車の、各種センサの配置を示した平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、無人搬送車1の側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す矢印Ib方向から視た無人搬送車1の正面図である。図2は、各種センサの配置を示した無人搬送車1の平面透視図である。
【0016】
無人搬送車1は、複数の荷役ステーション間を繋ぐように走行面に敷設されている磁気ガイドX(図3参照)に沿って無人で走行し、各荷役ステーションに搬送物を搬送するものである。特に、本実施形態の無人搬送車1は、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点まで正確に走行するものである。
【0017】
図1(a)に示すように、無人搬送車1には、主に、搬送物が積載される荷台2と、その荷台2を支持するシャーシ3と、そのシャーシ3の下方に設置されている複数の走行装置4と、シャーシ3の一端に設置されている制御BOX5とが設けられている。
【0018】
荷台2は、搬送物を載せたパレットPが載置される部分であって、無人搬送車1のほぼ全長に渡って形成され、シャーシ3から昇降自在に構成されている。シャーシ3は、荷台2と、走行装置4と、制御BOX5とを支持する部分である。
【0019】
図2に示すように、走行装置4は、無人搬送車1を走行させるための装置であって、無人搬送車1の左右にそれぞれ1列ずつ合計で2列配列されている。各列にはそれぞれ6個の走行装置4が配置されている。走行装置4は、車軸4aと、車軸4aの両端に連結された一対の車輪4bと、車軸4aを回転可能に軸支する部材である車軸保持部材(図示せず)とを備えている。後述する回転駆動装置76(図4参照)により、車軸4aに駆動力が付与されると車輪4bが回転し、無人搬送車1が走行する。
【0020】
また、車軸保持部材には、シャーシ3の底面に回転可能に軸支された旋回軸(図示せず)が連結されている。旋回軸は、後述する操舵駆動装置77(図4参照)により動力が付与されると回転し、それに連動して、車軸保持部材を車軸4a(車輪4b)ごと旋回させる。これにより、無人搬送車1は所望する方向に操舵される。
【0021】
また、シャーシ3の下方には第1ガイドセンサ78aが配設されている。第1ガイドセンサ78aは、走行面に敷設されている磁気ガイドX(図3参照)を検出するためのセンサであり、磁気ガイドXからの磁気をそれぞれ個別に検出する28個の磁気センサ(図示せず)を備えている。28個の磁気センサは、磁気ガイドXより充分幅広な直線上に配列され、その直線は、シャーシ3の幅方向に沿って延びている。各磁気センサは、磁気ガイドXの上方に位置する場合に磁気を検出するが、磁気ガイドXの上方からズレて位置する場合には磁気を検出し得ない。よって、直線上に配設された28個の磁気センサの検出状態を確かめることによって、磁気ガイドXに対する第1ガイドセンサ78aのズレ量を確認することができる。従って、確認されたズレ量に基づいて、無人搬送車1を、磁気ガイドXに沿って走行させることができる。
【0022】
図2に示すように、第1ガイドセンサ78aは、無人搬送車1の最先頭部左右にそれぞれ1個ずつ設けられている。また、無人搬送車1の最後尾にも、第1ガイドセンサ78aと同様に構成される第2ガイドセンサ78bが、左右に各1個ずつ設けられている。このように第1および第2ガイドセンサ78a,78bは、無人搬送車1の左右それぞれに1列ずつ、合計で2列配設されている。無人搬送車1は、1列の第1および第2ガイドセンサ78a,78bで、1本の磁気ガイドXを検出するように構成されているので、磁気ガイドXが単線の区間(図3参照)を走行する場合には、1列の第1および第2ガイドセンサ78a,78bによって磁気ガイドXを検出し、残り1列の第1および第2ガイドセンサ78a,78bは非検出(未使用)となる。
【0023】
また、第1および第2ガイドセンサ78a,78bは、無人搬送車1の最先頭と最後尾とにそれぞれ設けられているので、無人搬送車1が磁気ガイドXに対してわずかに傾いて走行している場合であっても、双方の第1および第2ガイドセンサ78a,78bにより、その磁気ガイドXからのわずかなズレを検出できる。位置ズレの検出間隔距離を長く設定しているからである。よって、第1および第2ガイドセンサ78a,78bを用いた磁気誘導の正確性を高めることができる。
【0024】
図1に示す制御BOX5には、無人搬送車1を走行させる上で必要な制御装置70(図4参照)等が収納されている。図1(a)に示すように、制御BOX5の側面には第1レーザセンサ80aが設けられ、無人搬送車1を長手方向に二等分する二等分線Oに対し、第1レーザセンサ80aと略対称な位置に、第1レーザセンサ80aと同様に構成される第2レーザセンサ80bが設けられている。また、図1(b)に示すように、制御BOX5の正面には、第3レーザセンサ80cが設けられている。
【0025】
第1および第2レーザセンサ80a,80bは、無人搬送車1の側面と対面する方向にレーザ光を照射して、その反射光を検出し、対象物(レーザ光の反射物)までの距離を計測(検出)するものである。加熱炉Y(図3参照)内では、第1および第2レーザセンサ80a,80bのそれぞれで加熱炉Yの内面側壁Y1までの距離が検出されるので、それぞれの検出距離が目標値となるように車軸4a(車輪4b)を旋回する。よって、無人搬送車1を、加熱炉Yの内面側壁Y1に沿わせて走行させることができる。
【0026】
図2に示すように、第1および第2レーザセンサ80a,80bは、それぞれが第1および第2ガイドセンサ78a,78bから無人搬送車1の長手方向一端側(図2紙面右方向、即ち後述する第3レーザセンサ80cの配設方向側)に、所定の距離を隔てて配設されている。よって、詳しくは後述するが、無人搬送車1が加熱炉Yへ進入する際に、第1レーザセンサ80aが第1ガイドセンサ78aよりも先に加熱炉Yに進入し、第2レーザセンサ80bが第2ガイドセンサ78bよりも先に加熱炉Yに進入するので、いち早く磁気誘導からレーザ誘導に切り替えることができる。
【0027】
また、第1および第2レーザセンサ80a,80bは、無人搬送車1の先頭及び最後尾にそれぞれ設けられており、その各センサ80a,80bの配設間隔は、第1および第2ガイドセンサ78a,78bの配設間隔と同程度とし、無人搬送車1の全長に対し十分長い間隔を空けている。よって、加熱炉Yの内面側壁Y1に対する無人搬送車1のわずかに傾いた走行をも容易に検出して、第1および第2レーザセンサ80a,80bを用いたレーザ誘導の正確性を高めることができる。
【0028】
第3レーザセンサ80cは、無人搬送車1の正面と対面する方向にレーザ光を照射して、その反射光を検出し、対象物までの距離を検出するものである。第3レーザセンサ80cと加熱炉Yの内面奥壁Y2(図3参照)とが対向する場合、加熱炉Y内では、第3レーザセンサ80cで加熱炉Yの内面奥壁Y2との距離を検出できるので、その検出距離が目標値となるように車軸4a(車輪4b)を回転する。よって、無人搬送車1を、加熱炉Y内の所望の位置で停止させることができる。
【0029】
また、図1(a)に示すように、制御BOX5の下方には、第1マークセンサ79aが設けられている。第1マークセンサ79aは、走行面に敷設されている磁気マークD(図3参照)を検出するための磁気センサである。磁気マークDは、走行経路上の主要な位置に敷設されており、この磁気マークDからの磁気を第1マークセンサ79aで検出することで、走行経路上における無人搬送車1の位置を確かめて走行することができる。
【0030】
次に、図3を参照して、無人搬送車1が走行する施設について説明する。図3は、無人搬送車1が走行する施設を示す斜視図である。施設には、荷役ステーションZと、加熱炉Yと、磁気ガイドXと、磁気マークDとが設けられている。
【0031】
図3に示すように、荷役ステーションZは、搬送物の積みおろしをするための設備であって、2基の基台が所定の間隔を空けて設置されている。搬送物を載せたパレットPは、この2基の基台にまたがって配置されている。無人搬送車1は、荷台2を下降させた状態でパレットPの下に進入した後、荷台2を上昇させて、パレットPを荷台2全体で持ち上げることによって、パレットPを積載する。
【0032】
加熱炉Yは、搬送物(加熱対象物)を加熱するハウスであり、進入口Y3と、進入口Y3と対面する奥壁Y2と、進入口Y3と奥壁Y2とを連結する半円筒状の側壁Y1とを有している。加熱炉Yの内部には、2基の基台が設置され、無人搬送車1によって搬送される搬送物(加熱対象物)を移設する荷役ステーションが構成されている。
【0033】
磁気ガイドXは、無人搬送車1の走行経路をガイドするものであり、施設には複数本の磁気ガイドXが互いに交差して走行面に敷設されている。磁気ガイドXは、荷役ステーションZと、加熱炉Yとを結ぶ走行経路上に敷設されていることは勿論、荷役ステーションZにおいて、所定の間隔を空けて設置される2基の基台の間にも敷設されている。基台の間隔は、無人搬送車1の幅よりもわずかに幅広にすぎないが、荷役ステーションZに敷設されている磁気ガイドXを、第1および第2ガイドセンサ78a,78bで検出しつつ、磁気ガイドXに沿って走行させることにより、無人搬送車1をわずかな隙間しかない2基の基台の間に正確に走行させることができる。
【0034】
一方、加熱炉Yに設置された基台の間隔も、荷役ステーションZの基台と同様に、無人搬送車1の幅よりも僅かに幅広にすぎないが、磁気ガイドXは、加熱炉Yの内部には敷設せず、加熱炉Yの手前までの敷設に止めている。これは、磁気ガイドXは熱に弱いゴム製であるので、加熱炉Yの高温にさらされると劣化するためである。つまり、磁気ガイドXでは、無人搬送車1を加熱炉Yの内部まで正確にガイドできない。
【0035】
そこで、無人搬送車1が加熱炉Yの内部を走行する場合は、磁気ガイドXに沿って走行させず、加熱炉Yの内面側壁Y1を、第1および第2レーザセンサ80a,80bでそれぞれ検出しつつ、それらの検出距離がそれぞれ目標値となるように内面側壁Y1に沿って走行させる。これにより、加熱炉Yの内部で無人搬送車1を正確に走行させることができる。
【0036】
磁気マークDは、無人搬送車1の位置を確認させるものであり、磁気ガイドXの脇の走行面に敷設されている。磁気マークDは、磁気ガイドXの交差点付近や、加熱炉Yの進入口Y3の手前や、荷役ステーションZの手前等の走行経路上における主要な点に敷設されている。原則として、一本の磁気ガイドXの脇に敷設された複数の磁気マークDは、それぞれ磁気ガイドXに対して同じ側に敷設されている。磁気マークDを第1マークセンサ79aで検出することにより、無人搬送車1の現在位置を確認できるので、磁気マークDを検出する度に、無人搬送車1の走行誤差を解消することができる。なお、磁気マークDも、熱に弱いゴム製であり、加熱炉Yの高温にさらされると劣化するので、加熱炉内Yの内部には敷設できない。
【0037】
次に、図4を参照して、無人搬送車1(図1参照)の電気的構成について説明する。図4は、無人搬送車1の電気的構成を示したブロック図である。制御装置70は、無人搬送車1の各部を制御するための装置であって、図4に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらがバスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。また、入出力ポート75には、回転駆動装置76、操舵駆動装置77、磁気ガイド検出装置78、磁気マーク検出装置79、レーザ検出装置80、回転数検出装置81、通信装置82がそれぞれ接続されている。
【0038】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5に図示される無人搬送車の加熱炉Yへの誘導処理)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。このROM72には、走行データメモリ72a等の各種メモリが設けられている。
【0039】
走行データメモリ72aには、無人搬送車1の走行を規定する走行データが記憶されている。この走行データは、無人搬送車1が、前述の制御プログラムを実行して、図3に示す施設内を走行するために必要なデータである。この走行データとしては、走行経路上の磁気マークDから次の磁気マークDまでの各区間の距離を示すデータと、各磁気ガイドXを検出する第1および第2ガイドセンサ78a,78bの列(左右)を示すデータと、走行経路の各点において回転駆動装置76及び操舵駆動装置77へ指令される目標速度及び目標操舵角度のそれぞれを示すデータと、第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cで検出される距離のそれぞれの目標値を示すデータと、無人搬送車1の各センサ間の間隔や車輪4bの外径を示すデータとを備えている。
【0040】
RAM73は、CPU71が制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、距離カウンタ73aと、現速度メモリ73bとが設けられている。
【0041】
距離カウンタ73aは、無人搬送車1の走行距離を記憶するメモリである。距離カウンタ73aには、値がクリアされた地点から、前回の処理で走行距離が算出された地点までの累計の走行距離が記憶されている。CPU71は、後述する回転数検出装置81から、所定の回転モータ76aの回転数を取得すると、その回転数と走行データメモリ72aに記憶された車輪4bの外径とによって、前回の処理以降の走行距離を算出する。次に、その走行距離を、距離カウンタ73aに記憶された累計の走行距離に加算して、距離カウンタ73aの更新を行う。この距離カウンタ73aの値に基づいて、CPU71は、所定のポイントからの無人搬送車1の走行距離を確認して、無人搬送車1を走行させる。
【0042】
現速度メモリ73bは、走行データメモリ72aに記憶された車輪4bの径を示すデータと、後述する回転数検出装置81で検出された、所定の回転モータ76aの回転数とに基づいて算出される、所定の車輪4bの周速度を、無人搬送車1の走行速度として記憶するメモリである。CPU71は、この現速度メモリ73bの値に基づいて、無人搬送車1の走行速度を制御して、走行データメモリ72aに記憶される目標速度で、無人搬送車1を走行させる。
【0043】
回転駆動装置76は、各車軸4a(車輪4b)を回転駆動させるための装置であり、各車軸4a(車輪4b)へそれぞれ回転駆動力を付与する12個の回転モータ76aと、それら各回転モータ76aをCPU71からの命令に基づいて独立して駆動制御する駆動回路および駆動源とを備えている。CPU71が各回転モータ76aをそれぞれ独立して駆動制御することで、各車軸4a(車輪4b)は、それぞれ独立して回転する。
【0044】
操舵駆動装置77は、各車軸4a(車輪4b)を操舵駆動するための装置であり、各車軸4a(車輪4b)へそれぞれ操舵駆動力を付与する12個の操舵モータ77aと、それら各操舵モータ77aをCPU71からの命令に基づいて独立して駆動制御する駆動回路および駆動源とを備えている。CPU71が各操舵モータ77aをそれぞれ独立して駆動制御することで、各車軸4a(車輪4b)は、それぞれ独立して旋回する。
【0045】
磁気ガイド検出装置78は、前述した第1および第2ガイドセンサ78a,78bによる磁気ガイドX(図3参照)の検出結果をCPU71に出力する装置である。第1および第2ガイドセンサ78a,78bと、両センサ78a,78bの検出結果をそれぞれ処理してCPU71に出力する処理回路とを備えている。
【0046】
磁気マーク検出装置79は、前述した第1マークセンサ79aによる磁気マークD(図3参照)の検出結果をCPU71に出力する装置である。第1マークセンサ79aと、第1マークセンサ79aの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路とを備えている。
【0047】
レーザ検出装置80は、前述した第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cによって、加熱炉Yの内面側壁Y1および内面奥壁Y2までの距離を取得すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cと、各センサ80a,80b,80cの検出結果をそれぞれ処理してCPU71に出力する処理回路とを備えている。
【0048】
回転数検出装置81は、回転モータ76aの回転数を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。回転モータ76aの回転数に応じた周期でパルス信号を出力するパルス出力装置(図示せず)と、そのパルス信号を検出し、パルス信号の周波数により回転モータ76aの回転数とを検出する回転センサ81aと、その回転センサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路とを備えている。CPU71は、回転数検出装置81から入力された回転モータ76aの回転数から無人搬送車1の走行距離と走行速度とを算出して、それぞれを距離カウンタ73aと現速度メモリ73bとに記憶する。
【0049】
通信装置82は、図3に示す施設から、無人搬送車1を監視する上位プロコンとの間で、各種データを送受信するための無線装置である。上位プロコンから送信された行き先指令を受信する受信部(図示せず)と、その受信部で行き先指令を受信した場合に、上位プロコンへ確認信号を送信する送信部(図示せず)と、それら受信部及び送信部により送受信されるデータをCPU71に対して入出力するための処理回路とを備えている。
【0050】
次に図5を参照して、制御装置70(図4参照)で実行される処理について説明する。図5は、無人搬送車1を加熱炉Y(図3参照)へ進入させる際の誘導処理を示すフローチャートである。図5に示すように、誘導処理は、荷役ステーションZから加熱炉Yに向かって走行する無人搬送車1を、加熱炉Yの内部に設定された目標点である停止位置S(図7(g)参照)に停止させるための処理である。ここで、図5の説明においては、図6及び図7を適宜参照して説明する。図6(a)〜(c)は、無人搬送車1の加熱炉Yへの進入過程を示す平面図であり、図7(d)〜(g)は、図6に引き続き、無人搬送車1の加熱炉Yへの進入過程を示す平面図である。
【0051】
図5に示すように、まず、制御装置70のCPU71は、上位プロコンからの行き先指令に基づいて、無人搬送車1を、荷役ステーションZから、磁気マークD1まで走行させる(S1,図3参照)。具体的には、荷役ステーションZから加熱炉Yの手前まで敷設された磁気ガイドXを、走行データメモリ72aに記憶された左右いずれか1列の第1および第2ガイドセンサ78a,78bで検出しつつ、磁気ガイドXに沿って走行させる。また、走行経路上の主要な点では、第1マークセンサ79aで磁気マークDを検出する。磁気マークDを検出する度に、距離カウンタ73aの値をクリアして、走行データメモリ72aに記憶されている、目標速度と、目標操舵角度と、次の磁気マークDまでの距離とに従って、次の磁気マークDまで走行させる(図6(a)参照)。このようにして、CPU71は、第1マークセンサ79aで磁気マークD1を検出するまで、無人搬送車1を走行させる(S1,S2:No)。
【0052】
第1マークセンサ79aが磁気マークD1上を通過すると、磁気マークD1が検出されるので(S2:Yes)、CPU71は、距離カウンタ73aの値をクリアする(S3)。この処理以降、距離カウンタ73aには、磁気マークD1の検出位置(図6(b)において実線で示す無人搬送車1)からの走行距離を記憶させる。そして、加熱炉Yの手前まで敷設された磁気ガイドXを、第1および第2ガイドセンサ78a,78bで検出し、その検出結果に基づいた走行制御を続ける(S4)。
【0053】
次いで、CPU71は、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、走行データメモリ72aに記憶されたL1+L2の値より大きいか否かを判断する(S5)。この判断は、第1レーザセンサ80aで加熱炉Yの内面側壁Y1との距離を検出できる位置まで、無人搬送車1が進行したか否かを判断するものである。ここで、L1は、磁気マークD1から磁気ガイドXの端部までの長手方向(図6(b)紙面左右方向)の距離であり、L2は、第1マークセンサ79aから第1ガイドセンサ78aまでの無人搬送車1の長手方向(図6(b)紙面左右方向)の距離である。よって、無人搬送車1が磁気マークD1の検出位置(図6(b)において実線で示す無人搬送車1)からL1+L2だけ進行すると、第1ガイドセンサ78aが磁気ガイドXの端部の上方に配置される(図6(b)及び図6(c)において想像線で示す無人搬送車1)。このとき、第1レーザセンサ80aは、第1ガイドセンサ78aからL4だけ内面奥壁Y2側(図6(b)紙面右側、即ち第3レーザセンサ80cの配設方向側)に配置されており、そのL4は、磁気ガイドXの端部から加熱炉Yの進入口Y3までの距離であるL5より長く設定されているため、第1レーザセンサ80aは、進入口Y3を通過し、内面側壁Y1との距離を確実に検出できる位置に配置される。
【0054】
S5の処理において、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2より小さな値であると判断される場合には(S5:No)、CPU71は、第1および第2ガイドセンサ78a,78bの検出結果に基づく走行制御を継続しつつ、再度S5の処理を行う(図6(c)参照)。つまり、第1ガイドセンサ78aによって、磁気ガイドXを検出可能な区間においては、第1および第2ガイドセンサ78a,78bの検出結果に基づいて走行制御を行い、第1レーザセンサ80aによって内面側壁Y1との距離を確実に検出できる位置まで無人搬送車1を走行させる。
【0055】
そして、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2より大きな値であると判断されると(S5:Yes)、CPU71は、第1および第2ガイドセンサ78a,78bの検出結果に基づく走行制御から、第2ガイドセンサ78bと第1レーザセンサ80aとの検出結果に基づく走行制御に切り替える(S6,図7(d)参照)。このように、加熱炉Yの外部において、第1および第2ガイドセンサ78a,78bを使用して走行する状態(磁気誘導方式)から、加熱炉Yの内部において、第1および第2レーザセンサ80a,80bを使用して走行する状態(レーザ誘導方式)へと移行する間に、第2ガイドセンサ78bと第1レーザセンサ80aとの双方を併用する期間を設けることで、無人搬送車1を走行経路から逸脱させることなく、正確に走行させることができるのである。
【0056】
次いで、CPU71は、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、走行データメモリ72aに記憶されたL1+L2+L3の値より大きいか否かを判断する(S7)。この判断は、第2レーザセンサ80bによって内面側壁Y1との距離を検出可能な位置まで、無人搬送車1が走行したか否かを判断するものである。ここで、L3は、第1ガイドセンサ78aから第2ガイドセンサ78bまでの無人搬送車1の長手方向(図7(d)紙面左右方向)の距離である。よって、無人搬送車1が第1ガイドセンサ78aによる磁気ガイドXの端部の検出位置(図7(d)において実線で示す無人搬送車1)からL3だけ進行すると、第2ガイドセンサ78bが磁気ガイドXの端部の上方に配置される(図7(d)及び図7(e)において想像線で示す無人搬送車1)。このとき、第2レーザセンサ80bは、第2ガイドセンサ78bからL4だけ内面奥壁Y2側(図7(d)紙面右側、即ち第3レーザセンサ80cの配設方向側)に配置されているため、第2レーザセンサ80bは、進入口Y3を通過し、内面側壁Y1との距離を確実に検出可能な位置に配置される。
【0057】
S7の処理において、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2+L3より小さな値であると判断される場合には(S7:No)、CPU71は、第2ガイドセンサ78bおよび第1レーザセンサ80aの検出結果に基づく走行制御を継続しつつ、再度S7の処理を行う(図7(e)参照)。つまり、CPU71は、第2ガイドセンサ78bによって、磁気ガイドXを検出可能な区間においては、第2ガイドセンサ78bおよび第1レーザセンサ80aの検出結果に基づいて走行制御を行い、第2レーザセンサ80bによって内面側壁Y1との距離を確実に検出できる位置まで無人搬送車1を走行させる。
【0058】
そして、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2+L3より大きな値であると判断されると(S7:Yes)、CPU71は、第2ガイドセンサ78bおよび第1レーザセンサ80aの検出結果に基づく走行制御から、第1および第2レーザセンサ80a,80bの検出結果に基づく走行制御に切り替える(S8,図7(f)参照)。
【0059】
その後、CPU71は、第3レーザセンサ80cが減速地点Rを検出するまで(S9:No)、第1および第2レーザセンサ80a,80bの検出結果に基づいて走行制御を継続する(図7(g)参照)。そして、第3レーザセンサ80cで検出される内面奥壁Y2からの検出距離が、走行データメモリ72aに記憶されている、内面奥壁Y2から減速地点Rまでの距離L6以下の値となると、減速地点Rを検出したと判断して(S9:Yes)、減速処理を実行する(S10,図7(g)参照)。
【0060】
この減速処理は、CPU71が、停止位置S(図7(g)において想像線で示す無人搬送車1の位置、即ち内面奧壁Y2から距離L7の位置)における目標速度を、いつでも停止できる程度の「低速」として、これを回転駆動装置76に指令し、無人搬送車1が停止位置Sに到達するまでに、現速度メモリ73bによって確認される速度を目標速度の「低速」になるように減速する処理である。この処理を実行すると、停止位置Sより若干手前のポイントで、現速度メモリ73bの走行速度が「低速」となる。
【0061】
「低速」の状態で、CPU71は、第3レーザセンサ80cが停止位置Sを検出するまで(S11:No)、無人搬送車1を走行させる。第3レーザセンサ80cで停止位置Sを検出すると(S11:Yes,図7(g)参照)、即ち第3レーザセンサ80cの検出距離が、走行データメモリ72aに記憶されている、内面奥壁Y2から停止位置Sまでの距離L7以下の値となると(S11:Yes)、無人搬送車1の停止処理を実行する(S12,図7(g)参照)。CPU71は、目標速度(0m/min)を、回転駆動装置76に指令して、現速度メモリ73bの値が目標速度と一致したことを確認して、以上の誘導処理を終了する。
【0062】
以上に説明したように、荷役ステーションZから加熱炉Yに向かって走行する無人搬送車1を、加熱炉Yの外部において第1および第2ガイドセンサ78a,78bと第1マークセンサ79aとを使用して走行させ、加熱炉Yの内部において第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cを使用して走行させることで、加熱炉Yの内部に設定された停止位置S(目標点)に無人搬送車1を停止させることができる。即ち、加熱炉Yの外部では、第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cを使用していないので、加熱炉Yの外部にレーザの光路を確保するためのスペースを設ける必要がない。よって、加熱炉Yの外部のスペースを有効に利用できる。また、加熱炉Yの内部では、第1〜第3レーザセンサ80a,80b,80cを使用して加熱炉Yの内面側壁Y1および内面奧壁Y2を検出しつつ、加熱炉Y内部の停止位置Sへと走行させるので、磁気ガイドXや磁気マークDを加熱炉内に敷設する必要が無い。よって、磁気ガイドXや磁気マークDの熱劣化を防止することができる。
【0063】
また、第1および第2レーザセンサ80a,80bは、第1および第2ガイドセンサ78a,78bから、それぞれ第3レーザセンサ80cの配設方向側に、磁気ガイドXの端部から加熱炉Yの進入口Y3までの距離L5より長い、L4の距離を隔てて配設されている。よって、無人搬送車1が加熱炉Yへ進入する場合には、第1または第2ガイドセンサ78a,78bが磁気ガイドXを検出できなくなるタイミングで、第1または第2ガイドセンサ78a,78bのそれぞれの前方に配設された第1または第2レーザセンサ80a,80bによって、加熱炉Yの内壁側面Y1を検出できる。従って、磁気誘導方式からレーザ誘導方式への切り替えを安定して行って、無人搬送車1を確実に走行させることができる。
【0064】
尚、制御装置70(図4参照)では、図5に示す誘導処理の各ステップと並行して、第1〜第3異常処理(いずれも図示せず)を実行して、誘導処理の各ステップが正常に実行されているか監視している。第1〜第3異常処理は、各種センサ等の異常を検知し、無人搬送車1の緊急停止を実行するための処理である。ここで、第1〜第3異常処理について簡単に説明する。第1異常処理は、磁気マークD1を検出してから、第2ガイドセンサ78bおよび第1レーザセンサ80aを用いた走行制御に切り替えるまでの期間(S2:Yes〜S6)継続して実行される処理であり、第1および第2ガイドセンサ78a,78bのいずれか又は両方によって磁気ガイドXが検出できない場合、又は、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2+α1(α1はマージン)以上の値となり、S6の処理により誘導方式の切り替えを行っても、第1レーザセンサ80aによって内面側壁Y1との距離が検出できない場合に、CPU71が異常を検知するものである。
【0065】
また、第2異常処理は、第2ガイドセンサ78bおよび第1レーザセンサ80aを用いた走行制御へ正常に切り替えてから、第1および第2レーザセンサ80a,80bを用いた走行制御に切り替えるまでの期間(S6〜S8)継続して実行される処理であり、第2ガイドセンサ78bによって磁気ガイドXが検出できない場合、第1レーザセンサ80aによって内面側壁Y1との距離が検出できない場合、又は、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、L1+L2+L3+α2(α2はマージン)以上の値となり、S8の処理により誘導方式の切り替えを行っても、第2レーザセンサ80bによって内面側壁Y1との距離が検出できない場合に、CPU71が異常を検知するものである。
【0066】
さらに、第3異常処理は、第1および第2レーザセンサ80a,80bを用いた走行制御へ正常に切り替えてから、停止処理が行われるまでの期間(S8〜S12)継続して実行される処理であり、第1および第2レーザセンサ80a,80bのいずれか又は両方によって内面側壁Y1との距離が検出できない場合、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、磁気マークD1から減速地点Rを超えた距離を示すL1+L2+L3+α3(α3はマージン)以上の値となっても、第3レーザセンサ80cによって内面奥壁Y2との距離が検出できないため減速処理(S10)を実行できない場合、又は、距離カウンタ73aに記憶された走行距離が、磁気マークD1から停止位置Sを超えた距離を示すL1+L2+L3+α3+α4(α4はマージン)以上の値となっても、現速度メモリ73bの値が目標速度(0m/min)と一致しないため停止処理(S12)が実行できない場合に、CPU71が異常を検知するものである。そして、上記の第1〜第3異常処理によって、異常が検知された場合には、無人搬送車1を緊急停止させる。よって、図5に示す誘導処理による走行の安全性が担保されている。
【0067】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0068】
例えば、図8に示す無人搬送車10のように、無人搬送車10の最先頭(図8紙面右から一つ目)に配置される左右2個の走行装置4の各車軸4aを挟み対称に一対の第1ガイドセンサ78a1,78a2をそれぞれ配設し、無人搬送車10の最後尾(図8紙面左から一つ目)に配置される左右2個の走行装置4の各車軸4aを挟み対称に一対の第2ガイドセンサ78b1,78b2をそれぞれを配設し、各車軸4aを挟む各対の第1または第2ガイドセンサ78a1,78a2,78b1,78b2を、各車軸4aを保持する車軸保持部材(図示せず)に連結されている支持棒4cでそれぞれ支持するように構成してもよい。その構成によれば、第1および第2ガイドセンサ78a1,78a2,78b1,78b2は、それぞれ支持棒4cを介して連結されている走行装置4の操舵と連動し、車軸4a(車輪4b)ごと旋回する。
【0069】
各対の第1または第2ガイドセンサ78a1,78a2,78b1,78b2のうち、進行方向側のセンサは、走行装置4の操舵と連動して旋回することにより、所望する方向に沿って敷設されている磁気ガイドXを効率的に検出することができる。一方、進行方向と反対側のセンサは、所望する方向とは反対方向を向くので磁気ガイドXの検出は困難となる。従って、第1ガイドセンサ78a1,78a2のうち、進行方向側のいずれかのセンサと、第2ガイドセンサ78b1,78b2のうち、進行方向側のいずれかのセンサとを用いて磁気ガイドXを検出して走行することで、無人搬送車10を所望する方向へ操舵することができる。
【0070】
また、図8に示すように、第1および第2レーザセンサ80a1,80b1を、それぞれ第1および第2ガイドセンサ78a1,78b1から第3レーザセンサ80cの配設方向側にL4の間隔を空けて無人搬送車10の側面に配設し、第1および第2レーザセンサ80a2,80b2を、それぞれ第1および第2ガイドセンサ78a2,78b2から第3レーザセンサ80cの配設方向反対側にL4の間隔を空けて無人搬送車10の同じ側面に配設してもよい。さらに、無人搬送車10を長手方向に二等分する二等分線Oに対し、第1マークセンサ79a、第3レーザセンサ80cと対称な位置に、第2マークセンサ79b、第4レーザセンサ80dをそれぞれ配設しても良い。その構成によれば、無人搬送車10が前進する場合には、第1および第2ガイドセンサ78a1,78b1と第1〜第3レーザセンサ80a1,80b1,80cと第1マークセンサ79aとを使用して走行し、無人搬送車10が後進する場合には、第1および第2ガイドセンサ78a2,78b2と第1、第2および第4レーザセンサ80a2,80b2,80dと第2マークセンサ79bとを使用して走行することで、前進、後進のいずれの方向への走行であっても、前記した誘導処理(図5)によって、加熱炉Y内の停止位置Sへ無人搬送車1を停止させることができる。
【0071】
また、無人搬送車1における第1および第2レーザセンサ80a,80b、又は、無人搬送車10における第1および第2レーザセンサ80a1,80a2,80b1,80b2は、それぞれ無人搬送車1又は無人搬送車10の片側にのみ設けられたが、これらを無人搬送車1又は無人搬送車10の両側にそれぞれ設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 無人搬送車
2 荷台
78a 第1ガイドセンサ(磁気ガイド検出手段の一部)
78b 第2ガイドセンサ(磁気ガイド検出手段の一部)
80a 第1レーザセンサ(レーザ検出手段の側方検出手段一部)
80b 第2レーザセンサ(レーザ検出手段の側方検出手段一部)
80c 第3レーザセンサ(レーザ検出手段の前方検出手段一部)
P パレット(半製品)
X 磁気ガイド
Y 加熱炉
Y1 加熱炉の内面側壁
Y2 加熱炉の内面奥壁
S 停止位置(目標点)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台を有し、その荷台に加熱加工するための半製品を搭載して、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点へ進入し、前記半製品を加熱炉内の所定位置へ運搬する無人搬送車において、
その無人搬送車の走行経路を形成するために前記加熱炉外の走行面に敷設された磁気ガイドを検出する磁気ガイド検出手段と、
レーザを照射して前記加熱炉の内面を検出するレーザ検出手段と、
前記加熱炉外では前記磁気ガイド検出手段によって前記磁気ガイドを検出しつつ走行し、前記加熱炉内では前記レーザ検出手段によって前記加熱炉の内面を検出しつつ走行し、加熱炉外の出発点から加熱炉内の目標点へ走行する走行手段とを備えていることを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記走行手段は、加熱炉外から加熱炉内へ進入する場合には、前記磁気ガイド検出手段と前記レーザ検出手段との双方の検出結果によって走行するものであることを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記レーザ検出手段は、
前記無人搬送車の側方へレーザを照射して、加熱炉の内面側壁と前記無人搬送車との距離を検出し、加熱炉内での前記無人搬送車の横方向位置を走行経路に沿わせて走行させる側方検出手段と、
その側方検出手段によるレーザの照射方向と略直行する方向であって、前記無人搬送車の前方へレーザを照射して、加熱炉の内面奧壁と前記無人搬送車との距離を検出し、前記無人搬送車を加熱炉内の目標点へ走行させる前方検出手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記磁気ガイド検出手段は、前記無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設されると共に、前記レーザ検出手段の側方検出手段は、前記無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設された磁気ガイド検出手段の配設箇所に対して前記無人搬送車の前方側の位置にそれぞれ配設されており、
前記走行手段は、前記磁気ガイド検出手段で磁気ガイドを検出した状態で、前記レーザ検出手段の側方検出手段によって加熱炉の内面側壁の検出を開始するものであることを特徴とする請求項3記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記レーザ検出手段の側方検出手段は、前記無人搬送車の前方部および後方部にそれぞれ配設された磁気ガイド検出手段の配設箇所に対して前記無人搬送車の後方側の位置にそれぞれ配設されており、
その側方検出手段によるレーザの照射方向と略直行する方向であって、前記無人搬送車の後方へレーザを照射して、後方にある加熱炉の内面奧壁と前記無人搬送車との距離を検出し、前記無人搬送車を加熱炉内の目標点へ走行させる後方検出手段とを備えていることを特徴とする請求項4記載の無人搬送車。







【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−68886(P2012−68886A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212922(P2010−212922)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】