説明

無安定マルチバイブレータ

【課題】本発明は、広範囲な出力周波数制御においても周波数が安定な電圧制御発振器を具えた無安定マルチバイブレータを提供することを目的とする。
【解決手段】無安定マルチバイブレータを構成する負荷抵抗R1、R2に制御回路Q10を介して並列に接続された振幅クリッピング素子Q3、Q4を有する無安定マルチバイブレータにおいて、該制御回路Q10によって該クリッピング素子Q3、Q4の通電電流を制御し、以て出力周波数を制御することを特徴とする無安定マルチバイブレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無安定マルチバイブレータの周波数制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無安定マルチバイブレータを用いた電圧制御発振器(VCO)として図2に示すような回路が知られている。
【0003】
本回路は、トランジスタQ5、Q6からなるカレントミラー回路の電流をトランジスタQ9によって制御し、トランジスタQ7、Q8を介して第1、第2のトランジスタQ1、Q2の電流制御を行うことで、電圧制御発振器としての機能を達成したものである。図中のそれぞれコレクタ・ベース同士を接続したダイオード接続の第3、第4のトランジスタQ3、Q4は同素子のコレクタ・エミッタ電圧Vceを利用して振幅にクリッピングをかけ、無安定マルチバイブレータの動作を見かけ上スピードアップさせるためのものである。以上が無安定マルチバイブレータの構成である。
【0004】
この回路の発振周波数FoはFo=I/(4*Vbe*C)で表される。ただし、Vbeは第1、第2のトランジスタQ1、Q2のコレクタ・エミッタの飽和電圧Vceであり、第3、第4のトランジスタQ3、Q4のベース・エミッタ間電圧Vbeと等しいとする。
この従来の無安定マルチバイブレータでは、第1、第2のトランジスタQ1、Q2および第3、第4のトランジスタQ3、Q4のベース・エミッタ電圧Vbeは周知のように一般に負の温度係数を持つために、周囲温度の変化や素子の自己発熱によって発振周波数Foが変動してしまう。
【0005】
【特許文献1】特開平4−117019号公報
【特許文献2】特開平11−340797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その対策として図示の温度補償回路が用いられ、一定の効果をもたらすが、カレントミラー回路の電流補償だけでは必ずしも充分な効果が得られるとは限らず、特に出力周波数を広範囲に渡って制御したい場合は、その効果には限界があった。
【0007】
上記に鑑み、本発明は、広範囲な出力周波数制御においても周波数が安定な電圧制御発振器を具えた無安定マルチバイブレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による無安定マルチバイブレータは、無安定マルチバイブレータを構成する負荷抵抗に制御回路を介して並列に接続された振幅クリッピング素子を有する無安定マルチバイブレータにおいて、制御回路によってクリッピング素子の通電電流を制御し、以て出力周波数を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御回路によってクリッピング素子の通電電流を制御することにより、さらには電界効果トランジスタ(FET)を制御回路に用いることにより、ドレイン-ソース間の抵抗値の正の温度特性を利用することにより、第1〜第4のトランジスタQ1〜Q4のベース・エミッタ間電圧Vbeの負の温度特性と相殺させることによって周波数ドリフトを改善した広範囲の周波数制御が可能な電圧制御発振器を具えた無安定マルチバイブレータを実現できる。
【実施例】
【0010】
以下に、図1を参照して、本発明の一実施例を説明する。
図1は本発明の一実施例である無安定マルチバイブレータを示す。図1において図2と対応する部分には同一符号を付して説明する。
【0011】
Q1、Q2は交互にオンオフするNPN形の第1、第2のトランジスタで、その各エミッタ間にコンデンサCが接続される。第1、第2のトランジスタQ1、Q2の各エミッタはそれぞれ互いに等しい定電流の定電流源を構成するNPN形の第7、第8のトランジスタQ7、Q8を介して接地される。第7、第8のトランジスタQ7、Q8の各ベースには発振周波数の温度補償を行うためのトランジスタQ5、Q6からなるカレントミラー回路により第1、第2のトランジスタQ1、Q2の電流を制御することで電圧制御発振器(VCO)としての機能を達成したものである。
【0012】
そして、ベース及びコレクタを共通接続したダイオード接続の第3、第4のトランジスタQ3、Q4のコレクタ(およびベース)同士を接続するとともに制御回路である正の温度係数を有する電界効果トランジスタ(FET)Q10のソースに接続されている。そして、電界効果トランジスタ(FET)Q10のドレインは電源Vccに接続されている。また、そのゲートは制御信号の入力となる。第3、第4のトランジスタQ3、Q4のそれぞれのエミッタは第1、第2のトランジスタQ1、Q2のそれぞれのコレクタと接続されているとともにそれぞれの抵抗R1、R2を介して電源Vccに接続されている。
【0013】
このように、制御回路に正の温度係数を有する電界効果トランジスタ(FET)Q10を用いることにより、周囲温度や第1〜第4のトランジスタQ1〜Q4の自己発熱等の温度変化を電界効果トランジスタ(FET)Q10のソース・ゲート間電圧により、各トランジスタQ1〜Q4のベース・エミッタ電圧Vbeと相殺する動きを生じさせるため、温度変化による発振周波数の変動は抑制できる。かつ、制御信号として可変信号を入力することにより電圧制御発振器(VCO)の機能を有した無安定マルチバイブレータを実現できる。
なお、第3、第4のトランジスタQ3、Q4は第1、第2のトランジスタQ1、Q2を飽和させないようにして、無安定マルチバイブレータの動作を早くするためのスピードアップ用クリッピング素子であることは従来例と同じである。クリッピング素子はNPN形またはPNPバイポーラ形トランジスタを用いてもよく、ダイオードを用いてもよい。
【0014】
以上、本発明の無安定マルチバイブレータの好適な実施例を図1を参照して説明した。しかし、これらは単なる例示にすぎず、例えば、図1はエミッタ結合形であるがベース結合形でもよいし、制御信号を特定の値に固定すればプリセット形発振器として用いることもできる。さらに、電界効果トランジスタ(FET)Q10はP型、N型を問わず、Q10に直列に抵抗を挿入し、Q10の電流制限をもうけてもよい。このように、本発明の精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である無安定マルチバイブレータの回路図である。
【図2】従来の無安定マルチバイブレータの回路図である。
【符号の説明】
【0016】
Q1、Q2 第1、第2のトランジスタ
Q3〜Q8 トランジスタ
Q10 電界効果トランジスタ(FET)
C コンデンサ
R1、R2、R7、R8 抵抗
Vcc 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無安定マルチバイブレータを構成する負荷抵抗に制御回路を介して並列に接続された振幅クリッピング素子を有する無安定マルチバイブレータにおいて、
該制御回路によって該クリッピング素子の通電電流を制御し、以て出力周波数を制御することを特徴とする無安定マルチバイブレータ。
【請求項2】
前記制御回路に電界効果トランジスタ(FET)を用いたことを特徴とする請求項1記載の無安定マルチバイブレータ。
【請求項3】
前記クリッピング素子はNPN形またはPNPバイポーラ形トランジスタまたはダイオードを用いたことを特徴とする請求項1記載の無安定マルチバイブレータ。

【図1】
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【図2】
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