説明

無線式火災報知システム

【課題】簡易な構成でありながら他の無線式火災感知システムとの混信を容易に防ぐ。
【解決手段】フレーム同期が完了した後、制御部1は受信した無線信号のシステムコードSysIDが不揮発性メモリに記憶(登録)されたシステムコードSysIDと一致するか否かを判断する。もしもシステムコードSysIDが一致しなければ、直ちに無線送信部2を停止して無線信号の受信を中止するとともに間欠受信間隔のカウントを再開する。すなわち、同じ周波数の無線信号を使用する他のシステムが近くに存在しており、当該他システムの無線信号を受信してしまったとしても、システムコードSysIDが一致しないことから当該無線信号が他システムのものであると判別できて混信を防ぐことができる。しかも、システムコードSysIDと親局である無線機TR1の識別符号をどういつしているから簡易な構成にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検知して報知する複数の無線機(火災感知器)の間で無線信号を伝送する無線式火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国で使用する無線機については、占有周波数帯幅や隣接チャンネル漏洩電力などの使用電波の特性(RF特性)が電波法の規定を満たしていなくてはならない。また、電波法では使用目的ごとに異なる規格(通信規格)が規定されている。例えば、電波法施行規則第6条に規定される「特定小電力無線局」には、電波を利用して遠隔地点における測定機の測定結果を自動的に表示し、又は記録するためのテレメータ用、電波を利用して遠隔地点における装置の機能を始動、変更又は終止させることを目的とする信号の伝送を行うテレコントロール用、及び主として機械によって処理される情報の伝送又は処理された情報の伝送を行うデータ伝送用無線設備について規定された「特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備 標準規格(社団法人電波産業会 標準規格ARIB STD−T67)」、あるいは、主として火災、盗難その他異常の通報又はこれに付随する制御を行う小電力セキュリティシステムの無線設備について規定された「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備 標準規格(社団法人電波産業会 標準規格RCR STD−30)」などがある。
【0003】
一方、上記特定小電力無線局を備えた無線伝送システムとしては、例えば、特許文献1に記載されているような火災報知システムがある。かかる火災報知システムは、多箇所に設置された複数台の火災感知器(無線機)がそれぞれに火災を感知する機能と警報音を鳴動する機能を有しており、何れかの火災感知器が火災を感知すると、当該火災感知器が警報音を鳴動するとともに火災感知を知らせる情報(火災感知情報)を無線信号で他の火災感知器に伝送することにより、火元の火災感知器だけでなく複数台の火災感知器が連動して一斉に警報音を鳴動することにより、火災の発生を迅速且つ確実に知らせることができる。
【0004】
このような火災感知器(無線機)は、火災感知情報を無線信号で伝送するという特性を活かすために電池を電源として駆動され、しかも、通常は室内の天井のようにメンテナンス(電池交換)のし難い場所に設置されることから、例えば数年といった長期間にわたってメンテナンス無しに使用できることが望ましい。そのため、各火災感知器においては間欠的に受信回路を起動して所望の電波(他の火災感知器が送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちに受信回路を停止して待機状態に移行することで平均消費電力を大幅に低減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特定小電力無線局の通信可能な範囲は、通常、数百メートルであるから、一般の戸建て住宅を十分にカバーすることができる。しかしながら、隣接する住戸に各々無線式火災報知システムが設置されていた場合、隣の住戸の無線機(火災感知器)から送信される無線信号を誤って受信(混信)してしまうことがある。このような混信を避けるため、隣接する住戸に設置されたシステムの間で使用する周波数チャネルを異ならせるという方法が採られることがあるが、隣接する住戸に設置された他システムが使用する周波数チャネルを知ることは必ずしも容易ではない。また、同じ周波数チャネルを使用していたとしても、各システム毎に割り当てられている識別符号(システムコード)が異なれば、他システムとの混信は回避できるはずである。しかしながら、周波数チャネルと同様に隣接する住戸に設置されたシステムで使用されているシステムコードを知ることは実際上非常に困難な場合が多い。ここで、火災発生による連動時のように複数台の無線機に同一のメッセージを送信する際、各無線機に個別に送信していたのでは時間がかかりすぎるため、通常、同報(ブロードキャスト)メッセージとしてシステム内の全ての無線機(火災感知器)に向けて一斉に送信される。したがって、隣接する住戸に設置されたシステム同士でシステムコードが重複してしまった場合、他システムの同報メッセージを誤って受信する可能性が非常に高い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、簡易な構成でありながら他の無線式火災報知システムとの混信を容易に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線式火災報知システムは、それぞれに固有の識別符号が割り当てられた複数の無線機を備え、各無線機は火災を感知して報知する火災感知器であり、これら複数の無線機の間で無線信号を伝送する無線式火災報知システムであって、各無線機は、無線信号を送信する送信手段若しくは無線信号を受信する受信手段の少なくとも何れか一方と、何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号に基づいて決定されたシステム固有の情報ビット列を記憶する記憶手段とを共通に具備し、送信手段を具備する無線機は、所定のイベントが発生したときにイベント発生の通知メッセージと情報ビット列を含む無線信号を送信手段に送信させる送信制御手段を具備し、受信手段を具備する無線機は、受信手段で受信する無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致する場合は当該無線信号に含まれる通知メッセージを取得するとともに一致しない場合は当該通知メッセージを破棄する受信制御手段を具備することを特徴とする。
【0009】
この無線式火災報知システムにおいて、受信手段を具備する無線機は、電源となる電池と、一定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするタイマ手段とを具備し、受信制御手段は、タイマ手段による間欠受信間隔のカウント中は受信手段を停止させ、タイマ手段による間欠受信間隔のカウントが完了する度に受信手段を起動するとともに、受信手段で受信した無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致しなければ直ちに受信手段を停止させることが好ましい。
【0010】
この無線式火災報知システムにおいて、無線信号のデータフォーマットは、同期ビットと、フレーム同期パターンと、宛先アドレスと、送信元アドレスと、メッセージとを少なくとも含み、フレーム同期パターンと宛先アドレスとの間に情報ビット列が挿入されていることが好ましい。
【0011】
この無線式火災報知システムにおいて、記憶手段に記憶する情報ビット列が何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号と同一であることが好ましい。
【0012】
この無線式火災報知システムにおいて、複数の無線機に対して無線信号を同報するか否かを指定する同報フラグを無線信号のデータフォーマットに含み、送信制御手段は、無線信号を同報する場合に同報フラグで同報を指定するとともに宛先アドレスに情報ビット列を設定し、受信制御手段は、受信手段で受信する無線信号に含まれる同報フラグで同報が指定されている場合、当該無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致すれば通知メッセージを取得するとともに一致しなければ通知メッセージを破棄し、同報フラグで同報が指定されていない場合、当該無線信号に含まれる宛先アドレスが自己の識別符号と一致すればメッセージを取得するとともに一致しなければメッセージを破棄することが好ましい。
【0013】
この無線式火災報知システムにおいて、識別符号の一部を情報ビット列としたことが好ましい。
【0014】
この無線式火災報知システムにおいて、無線信号のデータフォーマットは、同期ビットと、フレーム同期パターンと、宛先アドレスと、送信元アドレスと、メッセージとを少なくとも含み、各無線機の記憶手段は、無線機の総数よりも少なくない種類のビットパターンを記憶するとともに、これら複数種類のビットパターンのうちから何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号より決定される1のビットパターンを情報ビット列として記憶してなり、送信制御部は、フレーム同期パターンとして情報ビット列を用いることが好ましい。
【0015】
この無線式火災報知システムにおいて、記憶手段に記憶される複数種類のビットパターンは擬似雑音系列からなることが好ましい。
【0016】
この無線式火災報知システムにおいて、各無線機が送信手段と受信手段を双方とも具備し、何れか1つの無線機を親局とし、親局を除く他の全ての無線機を子局とし、親局に割り当てられている識別符号に基づいて情報ビット列を決定し、親局の送信制御部は、最初に各子局から送信される無線信号に含まれる送信元アドレスを当該子局の識別符号として記憶手段に記憶するとともに、当該子局に対して情報ビット列を含む無線信号を送信手段より送信させ、各子局の受信制御手段は、親局から送信された無線信号に含まれる情報ビット列を記憶手段に記憶することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無線式火災報知システムは、システム固有の識別符号を容易に決定することができ、簡易な構成でありながら他の無線式火災報知システムとの混信を容易に防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上におけるデータフォーマットの一例を説明する説明図である。
【図3】同上の動作用のフローチャートである。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ同上におけるデータフォーマットの他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示は2台のみ)の無線機(火災感知器)TRで無線式火災報知システムが構成されている。なお、本実施形態では複数台の無線機TRのうちの1台(例えば、TR1)を親局、その他の無線機TRn(n=2,3,…)を子局と規定しており、親局(無線機TR1)から全ての子局(無線機TRn)に対して定期的(例えば、1時間毎)に無線信号を送信し、子局からの応答の有無によって各子局が正常に動作しているか否かの確認(生死確認)を行うようになっている。また、以下の説明では、無線機TRを個別に示す場合は無線機TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は無線機TRと表記する。
【0021】
無線機TRは、アンテナ3から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに他の無線機TRが送信した無線信号をアンテナ3で受信する無線送受信部2と、マイコンを主構成要素としイベント発生部4からイベントの発生が通知されたときに他の無線機TRに対してイベント発生を通知するための無線信号を無線送受信部2より送信させる制御部1と、イベントが発生したときにイベントの発生を制御部1に通知するイベント発生部4と、イベント発生部4から制御部1に対してイベントの発生が通知されたことを報知する報知部5と、乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する電池電源部6とを具備している。なお、各無線機TR1,TR2,…には固有の識別符号が割り当てられており、当該識別符号によって無線信号の宛先並びに送信元の無線機TR1,TR2,…が特定できる。
【0022】
無線送受信部2は、後述するデータフォーマットで規定周波数の搬送波を変復調することにより電波を媒体とする無線信号を送受信するものであり、例えば、電波法施行規則第6条に規定される「特定小電力無線局」や「微弱無線局」に準拠している。またイベント発生部4は、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知する火災感知手段を有している。但し、火災感知手段については、従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0023】
制御部1は、メモリに格納されたプログラムをマイコンで実行することによって後述する各種の機能を実現している。例えば、イベント発生部4から火災発生を感知したことが通知されると、制御部1は報知部5が備えるブザーを駆動して報知音(警報音)を鳴動させることで火災発生を報知するとともに、他の無線機(火災感知器)TRにおいても火災発生の報知音を鳴動させるために火災発生を通知するための通知メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、他の無線機TRから送信された通知メッセージを含む無線信号を無線送受信部2で受信したときも、制御部1は報知部5が備えるブザーを駆動して報知音(警報音)を鳴動させる。つまり、制御部1ではイベント発生部4から火災感知が通知されたときに報知部5から報知音を鳴動させて報知するとともに火災発生を通知するための無線信号を無線送受信部2より送信させる機能を有している。
【0024】
また電池電源部6の電池寿命をできるだけ長くするため、制御部1では無線送受信部2を所定の時間間隔(間欠受信間隔)毎に間欠的に起動して電波が受信できるか否かをチェックし、電波が捉えられなければ直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部1が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
【0025】
さらに親局(無線機TR1)の制御部1は、定期的に無線送受信部2を起動して各子局(無線機TRn)の生死確認を行うために確認メッセージを含む無線信号を送信させるとともに、無線送受信部2を受信状態に切り替えて各子局から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信し、確認メッセージを含む無線信号を送信してから所定時間内に応答メッセージを含む無線信号を送信してこない子局があれば、報知部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させるなどして子局に異常(電池切れなど)が発生したことを知らせる機能も有している。すなわち、本実施形態では制御部1が送信制御手段並びに受信制御手段に相当し、制御部1が有する書換可能な不揮発性メモリ(図示せず)が記憶手段に相当する。
【0026】
図2は無線機TRが送受信する無線信号のデータフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、システムコードSysID、宛先アドレスDA、送信元アドレスSA、メッセージM、CRC符号で1フレームが構成されている。ここで、宛先アドレスDAとして各子局の識別符号を設定すれば当該識別符号の子局のみがメッセージを取得することになるが、宛先アドレスDAとして何れの子局にも割り当てられていない特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定することで全ての子局に同報(ブロードキャスト)することができる。なお、システムコードSysIDとは本実施形態の無線式火災報知システムに固有の情報ビット列であって、本実施形態では親局(無線機TR1)に割り当てられている識別符号と同一としている。
【0027】
ところで、本実施形態のように1台の親局と複数台の子局からなる無線式火災報知システムにおいては、システムの運用開始前に、各子局の識別符号を親局の不揮発性メモリに記憶(登録)するとともに各子局の不揮発性メモリに親局の識別符号を記憶(登録)する作業(登録作業)が行われるのが一般的である。すなわち、子局から登録要求メッセージを含む無線信号を送信し、当該無線信号を受信した親局が登録要求メッセージに従って送信元アドレスの識別符号を不揮発性メモリに記憶することで子局の識別符号が登録される。また、登録完了メッセージを含み且つ登録要求メッセージを送信した子局の識別符号を宛先アドレスに設定した無線信号を親局から送信すれば、当該無線信号を受信した子局においては送信元アドレスの識別符号を不揮発性メモリに記憶することで親局の識別符号が登録される。ここで、本実施形態では親局の識別符号とシステムコードSysIDを同一としているから、一般的に行われる上述のような登録作業によって各子局にシステムコードSysIDを登録することができる。なお、システムコードSysIDが親局の識別符号と同一でない場合であっても、親局から子局へ送信する登録完了メッセージにシステムコードSysIDを含めれば同様に簡単に登録できる。また、システムコードSysIDの各無線機TRへの登録については、上述のような一般的な親局への子局の登録と別の手順(作業)で行ってもよいし、親局と子局の区別がないシステム構成においては、例えば、各無線機TR同士でシステムコードSysIDを順送りで伝送して登録するようにしても構わない。
【0028】
次に、図3のフローチャートを参照しながら本実施形態の送受信動作について説明する。
【0029】
制御部1はタイマ(図示せず)によって間欠受信間隔を繰り返しカウントしており、間欠受信間隔が経過する毎に無線送受信部2を起動してRSSI信号による電波チェックを実行する。また制御部1は、電波チェックによって電波が捉えられれば無線送受信部2による受信動作を開始し、反対に電波チェックによって電波が捉えられなければ無線送受信部2を停止させる。無線送受信部2では、0と1を交互に繰り返す複数バイトの同期ビットPAによって無線信号で伝送されるデータの同期を取るとともに、フレーム同期パターンによってフレーム同期を取っており、同期ビットPA及びフレーム同期による同期が取れた(完了した)時点で正常な受信動作が可能になる。
【0030】
フレーム同期が完了した後、制御部1は受信した無線信号のシステムコードSysIDが不揮発性メモリに記憶(登録)されたシステムコードSysIDと一致するか否かを判断し、もしもシステムコードSysIDが一致しなければ、直ちに無線送信部2を停止して無線信号の受信を中止するとともに間欠受信間隔のカウントを再開する。すなわち、同じ周波数の無線信号を使用する他のシステムが近くに存在しており、当該他システムの無線信号を受信してしまったとしても、システムコードSysIDが一致しないことから当該無線信号が他システムのものであると判別できて混信を防ぐことができる。また、システムコードSysIDが一致しないと判断した時点で制御部1が直ちに無線送受信部2を停止することで無駄な電力消費を抑えることができ、特に消費電力低減の観点からは、フレーム同期完了後のできるだけ早い時点でシステムコードSysIDによる判別を行うことが望ましく、そのためにフレーム同期パターンと宛先アドレスDAの間にシステムコードSysIDを配置している。なお、本実施形態におけるデータフォーマットではデータ長DLの後にシステムコードSysIDを配置しているが、データ長DLの前にシステムコードSysIDを配置しても構わない。
【0031】
一方、受信した無線信号のシステムコードSysIDが不揮発性メモリに記憶(登録)されたシステムコードSysIDと一致すれば、制御部1は宛先アドレスDAが同報用の特殊なビット列(例えば、全てのビットが1であるもの)であるか否かを判断する。ここで、火災発生等のイベント発生を通知するための通知メッセージや生死確認のための確認メッセージについては宛先アドレスDAに前記特殊なビット列を設定することで全ての無線機TRに同報されるが、通知メッセージや確認メッセージに対する応答メッセージのように特定の無線機TRにのみ送信する無線信号については当該無線機TRの識別符号が宛先アドレスDAに設定される。従って、制御部1では宛先アドレスDAにより同報と判断した場合には無条件でメッセージMの内容(通知メッセージや応答メッセージ)に応じた処理を実行し、宛先アドレスDAにより同報でないと判断した場合には宛先アドレスDAが自己の識別符号と一致するか否かを判断して一致すればメッセージMの内容に応じた処理を行うが、一致しなければ受信したメッセージを破棄して無線送信部2を停止するとともに間欠受信間隔のカウントを再開する。
【0032】
ところで、無線信号を同報する手順として、システム固有の情報ビット列(本実施形態では親局の識別符号)をシステムコードSysIDとしてフレーム同期パターンと宛先アドレスDAの間に配置し且つ宛先アドレスDAに特殊なビット列を設定する手順の他に、以下のような手順を採用することもできる。
【0033】
例えば、図4(a)に示すにように同報か否かを指定する1ビットのデータ(同報フラグBF)をシステムコードSysIDの代わりにデータ長DLと宛先アドレスDAの間に配置し、同報する無線信号においては同報フラグBFに1を設定するとともに宛先アドレスDAにシステム固有の情報ビット列(親局の識別符号)を設定し、受信側の無線機TRにおいて同報フラグBFに1が設定されている場合に宛先アドレスDAが親局の識別符号と一致すればメッセージMの内容を取得し、宛先アドレスDAが親局の識別符号と一致しなければメッセージMの内容を破棄することで他システムとの混信を防ぐことができる。このように情報ビット列を宛先アドレスDAに設定すれば、情報ビット列用のシステムコードSysIDをデータフォーマットに設ける場合と比較して1フレーム当たりの情報量が削減でき、ひいては無線信号の受信時間が短くなって消費電力が低減できる。なお、無線信号を特定の無線機TRにのみ伝送する場合は、同報フラグBFに0を設定するとともに宛先アドレスDAに当該無線機TRの識別符号を設定すればよい。
【0034】
また、親局となる無線機TR1の識別符号の先頭ビットが必ず0となるように規定し、親局の識別符号のうちで先頭1ビットを除く残りのビット列をシステム固有の情報ビット列としてもよい(図4(b)参照)。すなわち、同報する無線信号においては宛先アドレスDAに対して先頭1ビット(同報フラグBF)に1を設定するとともに先頭1ビットを除くビット列に情報ビット列を設定し、受信側の無線機TRにおいて宛先アドレスDAの先頭1ビット(同報フラグBF)に1が設定され且つ宛先アドレスDAの先頭1ビットを除くビット列が情報ビット列と一致すればメッセージMの内容を取得し、一致しなければメッセージMの内容を破棄することで他システムとの混信を防ぐことができる。しかも、宛先アドレスDAの一部(先頭1ビット)を同報フラグBFに兼用しているので、1フレーム当たりの情報量がさらに削減できる。なお、宛先アドレスDAに親局の識別符号を設定すれば自動的に同報フラグBFに0が設定され、当該無線信号を親局にのみ伝送することができる。
【0035】
ところで、システム固有の情報ビット列をフレーム同期パターンUWとして用いてもよい。例えば、無線機TRの総数nよりも少なくない種類(例えば、100種類)のビットパターンに各々1〜100の番号を付与したデータテーブルを各無線機TRの制御部1が具備する不揮発性メモリに予め記憶しておく。但し、フレーム同期パターンとして用いるためには0又は1が多数連続するものは望ましくないので、このようなパターンは避ける必要がある。各子局の制御部1では、登録された親局の識別符号を100で除算した余りに1を加えた値と一致する番号と同じ番号が付与されたビットパターンをデータテーブルから選択し、選択したビットパターンを情報ビット列として不揮発性メモリに記憶する。すなわち、フレーム同期を取る際にフレーム同期パターンUWが不揮発性メモリに記憶している情報ビット列と一致するか否かを判断することで他システムとの混信を防ぐことができる。しかも、情報ビット列をフレーム同期パターンUWとして用いれば、1フレーム当たりの情報量がさらに削減できるとともに、より早い時点で混信か否かを判断することができて無駄な電力消費を減らすことができる。なお、無線信号を同報する際は宛先アドレスDAに特殊なビット列(例えば、全てのビットが1であるもの)を設定すればよい。ここで、必ずしも全ての無線機TRがデータテーブルを不揮発性メモリに記憶しておく必要はなく、親局の無線機TR1のみが不揮発性メモリにデータテーブルを記憶しておき、各子局には識別符号の登録時に選択済みのビットパターンを伝送するようにしても構わない。また、ビットパターンとして擬似雑音系列からなるビット列を用いれば、擬似雑音系列が直接スペクトラム拡散変調方式において2次変調用の拡散符号として利用されているように相互の相関が非常に低いという性質を有していることから、他システムで使用するビットパターンとの相関が低くなり、仮に他システムとの混信が発生し且つビット誤りが発生しても当該無線信号を誤って受信するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 制御部1(送信制御手段、受信制御手段)
2 無線送受信部(送信手段、受信手段)
4 イベント発生部
5 報知部
6 電池電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに固有の識別符号が割り当てられた複数の無線機を備え、各無線機は火災を感知して報知する火災感知器であり、これら複数の無線機の間で無線信号を伝送する無線式火災報知システムであって、
各無線機は、無線信号を送信する送信手段若しくは無線信号を受信する受信手段の少なくとも何れか一方と、何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号に基づいて決定されたシステム固有の情報ビット列を記憶する記憶手段とを共通に具備し、
送信手段を具備する無線機は、所定のイベントが発生したときにイベント発生の通知メッセージと情報ビット列を含む無線信号を送信手段に送信させる送信制御手段を具備し、
受信手段を具備する無線機は、受信手段で受信する無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致する場合は当該無線信号に含まれる通知メッセージを取得するとともに一致しない場合は当該通知メッセージを破棄する受信制御手段を具備することを特徴とする無線式火災報知システム。
【請求項2】
受信手段を具備する無線機は、電源となる電池と、一定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするタイマ手段とを具備し、
受信制御手段は、タイマ手段による間欠受信間隔のカウント中は受信手段を停止させ、タイマ手段による間欠受信間隔のカウントが完了する度に受信手段を起動するとともに、受信手段で受信した無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致しなければ直ちに受信手段を停止させることを特徴とする請求項1記載の無線式火災報知システム。
【請求項3】
無線信号のデータフォーマットは、同期ビットと、フレーム同期パターンと、宛先アドレスと、送信元アドレスと、メッセージとを少なくとも含み、フレーム同期パターンと宛先アドレスとの間に情報ビット列が挿入されていることを特徴とする請求項2記載の無線式火災報知システム。
【請求項4】
記憶手段に記憶する情報ビット列が何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号と同一であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無線式火災報知システム。
【請求項5】
複数の無線機に対して無線信号を同報するか否かを指定する同報フラグを無線信号のデータフォーマットに含み、
送信制御手段は、無線信号を同報する場合に同報フラグで同報を指定するとともに宛先アドレスに情報ビット列を設定し、
受信制御手段は、受信手段で受信する無線信号に含まれる同報フラグで同報が指定されている場合、当該無線信号に含まれる情報ビット列が記憶手段に記憶している情報ビット列と一致すれば通知メッセージを取得するとともに一致しなければ通知メッセージを破棄し、同報フラグで同報が指定されていない場合、当該無線信号に含まれる宛先アドレスが自己の識別符号と一致すればメッセージを取得するとともに一致しなければメッセージを破棄することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の無線式火災報知システム。
【請求項6】
識別符号の一部を情報ビット列としたことを特徴とする請求項1〜3又は5の何れか1項に記載の無線式火災報知システム。
【請求項7】
無線信号のデータフォーマットは、同期ビットと、フレーム同期パターンと、宛先アドレスと、送信元アドレスと、メッセージとを少なくとも含み、
各無線機の記憶手段は、無線機の総数よりも少なくない種類のビットパターンを記憶するとともに、これら複数種類のビットパターンのうちから何れか1つの無線機に割り当てられている識別符号より決定される1のビットパターンを情報ビット列として記憶してなり、
送信制御部は、フレーム同期パターンとして情報ビット列を用いることを特徴とする請求項1〜3又は5の何れか1項に記載の無線式火災報知システム。
【請求項8】
記憶手段に記憶される複数種類のビットパターンは擬似雑音系列からなることを特徴とする請求項7記載の無線式火災報知システム。
【請求項9】
各無線機が送信手段と受信手段を双方とも具備し、何れか1つの無線機を親局とし、親局を除く他の全ての無線機を子局とし、親局に割り当てられている識別符号に基づいて情報ビット列を決定し、
親局の送信制御部は、最初に各子局から送信される無線信号に含まれる送信元アドレスを当該子局の識別符号として記憶手段に記憶するとともに、当該子局に対して情報ビット列を含む無線信号を送信手段より送信させ、
各子局の受信制御手段は、親局から送信された無線信号に含まれる情報ビット列を記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の無線式火災報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−53914(P2012−53914A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250232(P2011−250232)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−8542(P2007−8542)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】