説明

無線通信機

【課題】不要な電波を送信することなくVOX感度を調整する。
【解決手段】マイクロフォン2から出力される音声信号をしきい値と比較して、音声信号がしきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない送信制御手段3,4と、しきい値を調整するしきい値調整手段5と、送信開始信号が入力されると送信を開始し、送信開始信号が入力されないと送信を停止もしくは送信出力を抑制する送信部6とを備え、送信制御手段3,4を、音声信号としきい値との比較結果の如何に関わらず送信開始信号を出力しない調整モードと、音声信号が前記しきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない通常モードの何れかのモードに切り換えるモード切り換え手段7と、送信制御手段3,4における音声信号としきい値との比較結果を報知する報知手段8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォンから所定のレベル以上の音声信号が入力されたときに自動的に送信状態に切り換えて送信を開始するVOX機能を備えた無線通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のVOX機能は、マイクロフォンから入力された音声信号を、予め設定されたしきい値と比較して、前記しきい値を越えた場合には、当該無線通信機を受信状態から送信状態に自動的に切り換えて送信を開始するものである。
前記無線通信機には、VOX機能における前記しきい値を設定するVOX感度調整機能を備えているものがある。
【0003】
前記VOX感度調整機能を備えることにより、周囲の騒音などが大きい場合にオペレータの意図に反してVOX機能が作動してしまい、送信が開始されることを防止するために、前記しきい値を上げることが可能になり、逆に、静かな環境などで小さな声でも確実にVOX機能が作動するように前記しきい値を下げることも可能になり、VOX機能を便利に利用できるのである。
しかし、前記VOX感度調整機能を使うためには、実際にVOX機能を作動させる必要がある。すなわち、所望のしきい値に設定するためには、実際にマイクロフォンに向かって音声を発しながら、所望の音声の大きさで送信開始されるようにVOX感度調整を行うことが必要となる。そのため、調整する間は不要な電波が実際に出力されてしまうという問題がある。
【0004】
なお、VOX機能を備えた無線通信機において、音声信号以外の雑音信号のレベルに基づいてしきい値を調整する機能を備えたものが、特許文献1において提案されている。
これは、VOX機能を備えた無線通信機を車載している場合、車両の走行状態の変化などにより、マイクロフォンに入力される周囲の騒音の大きさが変動した場合に、前記しきい値を自動的に変更するものである。そのために、音声信号以外の周波数帯域の信号を雑音信号として選択するための周波数選択回路を備えている。
しかし、前記特許文献1の技術は、音声と騒音とを周波数帯域で区別しているものであるので、音声の大きさに基づいて前記しきい値を調整できるものではない。
前記特許文献1の技術においても、音声の大きさに基づいて前記しきい値を調整する場合には、VOX機能が作動してしまい、送信する間は不要な電波が実際に出力されてしまうという問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3056614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、実際にマイクロフォンに向かって音声を発してVOX感度を調整する場合に、VOX機能が作動する音声レベルであるか否かを実際に確認することができるものでありながら、実際には送信はなされないように制御する機能を備えた無線通信機を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る無線送信機は、
マイクロフォンと、
マイクロフォンから出力される音声信号をしきい値と比較して、前記音声信号が前記しきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない送信制御手段と、
前記しきい値を調整するしきい値調整手段と、
前記送信開始信号が入力されると送信を開始し、前記送信開始信号が入力されないと送信を停止もしくは送信出力を抑制する送信部と
を備えた無線通信機において、
前記送信制御手段を、音声信号としきい値との比較結果の如何に関わらず送信開始信号を出力しない調整モードと、前記音声信号が前記しきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない通常モードの何れかのモードに切り換えるモード切り換え手段と、
前記送信制御手段における音声信号としきい値との比較結果を報知する報知手段と、
を備えている。
【0008】
請求項2では、
前記送信制御手段は、
マイクロフォンから出力される音声信号を、しきい値と比較して比較結果信号を出力する比較手段と、
前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号を出力し、越えていない比較結果の場合には送信開始信号を出力しない送信信号出力手段と、
を備えている。
【0009】
請求項3では、
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた表示パターンを表示する表示部を含んでいる。
請求項4では、
前記表示部は、前記しきい値のレベルと前記音声信号のレベルの大小関係を把握可能な表示パターンで表示する。
請求項5では、
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた音声信号を発する音声出力部を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る無線通信機は、
モード切り換え手段によって送信制御手段が調整モードに切り換えられている場合には、
しきい値を調整するために、しきい値を越えるような大きな音声を発しても、送信開始信号を出力しないので、不要な電波は送信されない。
しかも、現在の音声レベルが、実際にしきい値を越えているか否かの比較結果は報知されるので、電波を出さずに適切なしきい値の調整が可能となる。
【0011】
請求項2では、
前記送信制御手段は、
マイクロフォンから出力される音声信号を、しきい値と比較して比較結果信号を出力する比較手段と、
前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号を出力し、越えていない比較結果の場合には送信開始信号を出力しない送信信号出力手段と、
を備えているので、
音声信号としきい値との比較結果に応じて適切な送信部の制御が可能となる。
【0012】
請求項3では、
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた表示パターンを表示するので、現在の音声レベルがしきい値を越えているか否かを視覚を使って把握することができる。
請求項4では、
前記表示部は、前記しきい値のレベルと前記音声信号のレベルの大小関係を把握可能な表示パターンで表示するので、現在の音声レベルとしきい値とがどの程度差があるかを視覚的に把握することができる。
請求項5では、
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた音声信号を発するので、現在の音声レベルがしきい値を越えているか否かを聴覚を使って把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る無線通信機の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1に係る無線通信機のブロック図である。
【図3】実施例1に係る無線通信機の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例1に係る無線通信機の表示部における表示例の説明図である。
【図5】実施例1に係る無線通信機の表示部における表示例の説明図である。
【図6】実施例1に係る無線通信機の表示部における表示例の説明図である。
【図7】実施例2に係る無線通信機の表示部における表示例の説明図である。
【図8】実施例3に係る無線通信機の表示部における表示例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る無線通信機を実施するための形態を、図1を参照して説明する。
図1に示したように、
本発明に係る無線通信機1は、
マイクロフォン2と、
マイクロフォン2から出力される音声信号を、しきい値と比較して比較結果信号を出力する比較手段3と、
前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号を出力し、越えていない比較結果の場合には送信開始信号を出力しない送信信号出力手段4と、
前記しきい値を調整するしきい値調整手段5と
前記送信開始信号が入力されると送信を開始し、前記送信開始信号が入力されないと送信を停止もしくは送信出力を抑制する送信部6と
を備えている。
さらに、
当該無線通信機1を、前記比較結果信号の如何に関わらず送信開始信号を出力しない調整モードと、前記比較結果信号に応じて送信開始信号を出力する通常モードの何れかのモードに切り換えるモード切り換え手段7と、
前記モード切り換え手段によって前記調整モードに切り換えられた状態では、前記比較結果信号の如何に関わらず送信開始信号を出力せず、前記比較結果信号をオペレータに報知する報知手段8と、
を備えている。
前記比較手段3と前記送信信号出力手段4とで、特許請求の範囲に記載された送信制御手段を構成している。
【0015】
前記モード切り換え手段7によって無線通信機1が通常モードに切り換えられている状態では、
オペレータがマイクロフォン2に向かって音声を発すると、その音声はマイクロフォン1によって音声信号に変換され、その音声信号は送信部6と比較手段3とに入力される。
前記比較手段3においては、前記音声信号はしきい値調整手段5によって調整されたしきい値と比較され、しきい値を越えているか否かが比較され、その比較結果は比較結果信号として、送信信号出力手段4に出力される。
【0016】
送信信号出力手段4からは、前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号が出力され、越えていない比較結果の場合には送信開始信号は出力されない。
送信部6に前記送信開始信号が入力されると、送信部6はマイクロフォン1から入力されている音声信号を増幅するとともに所定の電波形式に変調して、アンテナから送信する。
送信部6に前記送信開始信号が入力されない状態では、送信部6はマイクロフォン1から音声信号が入力されていても、前記しきい値を越えていない信号レベルの音声信号は周囲の騒音等であるとして送信しない。
このようにして、通常のVOX機能が実現されている。
【0017】
前記モード切り換え手段7によって無線通信機1が調整モードに切り換えられている状態では、
前記通常モードと同様に、オペレータがマイクロフォン2に向かって音声を発すると、その音声はマイクロフォン1によって音声信号に変換され、その音声信号は送信部6と比較手段3とに入力される。
また同様に、前記比較手段3においては、前記音声信号はしきい値調整手段5によって調整されたしきい値と比較され、しきい値を越えているか否かが比較され、その比較結果は比較結果信号として、送信信号出力手段4に出力される。
また同様に、送信信号制御手段4からは、前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号が出力され、越えていない比較結果の場合には送信開始信号は出力されない。
【0018】
以上の動作は通常モードと同様であるが、以下の動作が、本発明に係る無線通信機における調整モードの特徴とする動作である。
調整モードでは、前記送信信号出力手段4は、前記比較結果信号の如何に関わらず送信開始信号を出力しない。
したがって、送信部6は、マイクロフォン2から音声信号が入力されていても、そして、その音声信号のレベルが前記しきい値を越えていても送信しない。
調整モードでは、前記送信信号出力手段4は、前記比較結果信号を報知手段8に出力する。
そして、前記報知手段8では、前記比較結果信号を、画面表示や音声出力等によってオペレータに報知する。
【0019】
したがって、このような調整モードでは、オペレータは、前記報知手段8から報知される比較結果信号を確認しながら、前記しきい値調整手段5を操作して、音声が所望の大きさ以上になったときに送信開始されるように調整することができる。しかも、このような調整過程においては、いくら大きい音声を発しても送信部6からは送信されないので、不要な電波を放出することなく、オペレータは納得いくまでしきい値の調整が行える。
このような調整モードで納得のいく調整を終えた後に、前記モード切り換え手段を操作して、通常モードに復帰させ、前記調整したしきい値に基づいて通常のVOX機能を作動させて、当該無線通信機1を運用することができる。
なお、前記送信部6は、送信制御信号が入力されない場合には、送信出力を完全に停止することが望ましいが、完全に停止せずに、微小出力を送信できるようにしてもよい。この場合は、VOX機能によって送信部6が実際に送信開始されることを確認しながら調整することができる。
【実施例1】
【0020】
次に、本発明に係る無線通信機の実施例1を、図2、3を参照して説明する。
図2において、
10は実施例1の無線通信機であり、
マイクロフォン21から出力される音声信号を増幅するアンプ22と、所望の周波数帯域の音声信号のみを通過させる低周波フィルタ23とを備えている。前記低周波フィルタ23から出力される音声信号は送信部61に入力されるとともに、検波増幅回路24を介して、VOX機能を実現している制御部9に入力される。
【0021】
制御部9は、
VOX機能および種々の制御機能を実現するためのCPUとメモリとを備え、機能ブロックで表現すると、比較手段としてのしきい値比較部31と、しきい値が記憶されているしきい値メモリ32を含んだVOXゲイン設定部33と、設定されるレベル値にそれぞれ対応させたしきい値が書き込まれたVOXゲインテーブル34と、
前記しきい値比較部31における比較結果に基づいて送信開始信号に対応する送信制御信号を出力する送信信号出力部41と、前記しきい値比較部31における比較結果に基づいたメッセージを表示するための表示制御信号を表示部81に出力する表示制御部42と、
を備えている。
前記送信信号出力部41から出力される送信制御信号によって送信部61の電源供給が制御されて、送信部61は送信状態もしくは電源が供給されていない状態(受信時)に切り換え制御される。
なお、前記制御部9における送信信号出力部41としきい値比較部31とは特許請求の範囲に記載された送信制御手段に対応する構成であり、表示部81は特許請求の範囲に記載された報知手段に対応する構成である。
【0022】
なお、受信部11、アンテナスイッチ12、アンテナ13は公知の構成と同様であり、前記送信部61からの出力があるときは、前記アンテナスイッチ12は、アンテナ13を送信部6側に切り替わり、それ以外では受信部11側に切り替わる。
【0023】
図示された操作部14は、当該無線通信機1に対する各種操作を行うための各種のキーやツマミ等の操作手段を備えているとともに、当該無線通信機1を通常モードと調整モードに切り換えるためのセットモード起動キー71と、前記しきい値を増減調整するためのVOXゲイン設定キー51とを備えている。
前記セットモード起動キー71を押すことによって、セットモード起動信号が出力されて、このセットモード起動信号によって、当該無線通信機1の制御部9は、通常モードから調整モードに移行する。
調整モードにおいては、VOXゲイン設定キー51のアップキー52もしくはダウンキー53を操作することで、前記VOXゲイン設定部33に対するレベル調整信号を出力して、前記しきい値メモリ32に設定されるしきい値を調整することができる。
【0024】
次に、各部の動作を、図3のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
当該無線通信機10の制御部9は、電源投入直後は、まず、ステップS1において、前記検波増幅回路24から出力される音声信号の音声レベルの検出を開始する。
ステップS2では、セットモード起動信号の入力の有無をチェックし、入力が有ればステップS3以降の調整モードに移行し、入力が無ければステップS14以降の通常モードに移行する。
【0025】
ステップS3では、図4に示すように、表示部81において設定画面を起動し、現在のモードが「調整モード」であることを示す表示D1を表示する。このとき、現在のしきい値が「5」であることを示す表示D2と、現在の送信モードが「FMモード」であることを示す表示D3も表示する。
ステップS4では、ステップS1で検出された音声レベルを、しきい値メモリ32に記憶されているしきい値と比較して、その比較結果が、しきい値より大きい場合にはステップS6へ進み、しきい値以下の場合にはステップS5へ進む。
ステップS5では、音声レベルがしきい値より大きい場合には、図4に示したように、しきい値を越えてVOX機能が動作するレベルであるという比較結果を示す表示D4を表示し、音声レベルがしきい値以下の場合には、前記表示D4は表示しない。
【0026】
ステップS6では、アップキー52の操作の有無を検出し、アップキー52が操作されるとステップS7に進んで、VOXゲインテーブル34に出力するレベル値を1段階アップさせ、そのレベル値に対応するしきい値を読み出して、ステップS8において、前記しきい値メモリ32に設定する。なお、前記レベル値は表示制御部42へも出力する。
【0027】
ステップS6においてアップキー52の操作が検出されなかった場合にはステップS11に進む。
ステップS11ではダウンキー53の操作の有無を検出し、ダウンキー53が操作されるとステップS12に進んで、VOXゲインテーブルに出力するレベル値を1段階ダウンさせ、そのレベル値に対応するしきい値を読み出して、ステップS13において、前記しきい値メモリ32に設定する。
なお、VOXゲイン設定キー51が、アップダウンキーではなく、ロータリーエンコーダ等のように回転操作するものである場合には、その回転角度に応じてレベル値を設定するように構成する。
【0028】
ステップS9では、セットモード起動キー71が再度押されたか否かを検出し、押されていなければ、ステップS4以降の前記動作を繰り返し、押されていれば調整モードを終了して、通常モードに復帰する。
通常モードでは、ステップS10において、電源スイッチの操作の有無を検出し、電源スイッチが操作されると電源をオフにして終了する。
【0029】
ステップS14以降の通常モードにおいては、
まず、ステップS14において、
ステップS1で検出された音声レベルを、しきい値メモリ32に記憶されているしきい値と比較して、その比較結果が、しきい値より大きい場合にはステップS15へ進み、しきい値以下の場合にはステップS2へ戻る。
ステップS15では、送信開始信号としての送信制御信号を出力して、送信部6からの送信を開始させる。
ステップS16では、ステップS1で検出された音声レベルを、しきい値メモリ32に記憶されているしきい値と比較して、その比較結果が、音声レベルがしきい値より小さい場合にはステップS17へ進んで、送信を終了してステップS10へ進み、しきい値以上の場合には送信を継続する。
【0030】
なお、図4に示した表示D4だけでは、表示が小さく見にくい場合には、図5に示したように、VOX機能が動作するレベルであることを示す「ON」に相当する表示D5を大きく表示してもよい。
【0031】
なお、セットモード起動キー71を単独に設けず、VOXゲイン設定キー51のアップキー52および/またはダウンキー53がセットモード起動キーを兼ねるようにしてもよい。
また、図6に示したように、音声レベルが、VOX機能のしきい値を越えていることを示すレベル表示D6をしてもよい。
【0032】
以上において説明したように、調整モードにおいては、実際にマイクロフォン21に向かって音声を発しながら、アンテナから送信出力をすることなく、表示部81を見ながらVOX機能が動作するレベルを調整することができる。
【実施例2】
【0033】
前記実施例1においては、調整モードにおける表示部81の表示は、図4、5、6に示したように、VOX機能が動作するレベルであるか否かの状態を表示するだけであるが、現在のしきい値のレベルと、現在の音声レベルとがどの程度の差があるかを量的に把握することはできなかった。
そこで、実施例2においては、図7に示す表示部82のように、現在のしきい値のレベルを表示する機能と、前記しきい値に対する現在の音声レベルの大小関係を量的に表示するレベルメータ表示機能を備えてもよい。
図7の(A)は、現在のしきい値のレベルを表示する数値表示D7と、現在VOX機能が動作するレベルであることを表示する表示D8に加えて、現在の音声レベルをドット数で表示するメータ表示D9を備えた表示例を示したものである。
【0034】
たとえば、しきい値比較部31においてVOXゲインテーブル34に書き込まれている各レベルのしきい値に基づいて、現在の音声レベルでVOX動作が作動する最大のしきい値に対応するレベル値を、現在の音声レベルに対応するレベル値として検出し、比較結果に加えて現在の音声レベルに対応するレベル値を表示制御部42に出力し、表示制御部42では、比較結果に応じた表示D8と、現在の音声レベルに対応するレベル値をドット数で表示するメータ表示D9を表示させる表示制御信号を出力するように構成すればよい。
【実施例3】
【0035】
図8の(A)は、実施例3の表示部83を示したものであり、現在のしきい値のレベルを表示する数値表示D7と、現在VOX機能が動作するレベルであって送信オンになっていることを表示する表示D8に加えて、ドット表示領域の中央等の所定位置のドットを点灯させた表示D10と、現在のしきい値のレベルと音声レベルとの相対的な大小関係を示す表示D11とを備えた表示例を示したものである。
図8の(A)は、音声レベルが現在設定されているしきい値を越えている状態であり、表示D11は現在のしきい値のレベル値と、現在の音声レベルとの差に応じたドット数分だけ表示D10の点灯位置から右側に離れた位置のドットを点滅させて表示させている。
【0036】
この場合、たとえば、しきい値比較部31において、現在の音声レベルでVOX機能が動作するレベルの最大のしきい値に対応するレベル値を、現在の音声レベルに対応するレベル値として検出し、そのレベル値と現在VOX感度として設定されているレベル値の差分を比較結果として出力し、表示制御部42では比較結果に応じてVOX機能が動作するレベルであることを示す表示D8を点灯させ、上記差分に応じたドット数分、表示D10の点灯位置より離れた位置のドットを表示D11として点滅させるような表示制御信号を出力するように構成すればよい。
このように構成することで、ドット表示領域に表示できるドット数よりもVOX感度として選択できるレベル数が多い場合でも、現在設定されているしきい値のレベルと現在の音声レベルとの大小関係を把握できるようになる。
【0037】
図8の(B)は、図8の(A)に示したVOX機能が動作するレベルである状態から、VOX機能が動作しないレベルになった状態を示しており、現在のしきい値のレベルを表示する表示D10の位置は変化しないが、現在VOX機能が動作しないレベルであることを表示するために前記表示D8は消灯し(消灯していること示すために、便宜上、白抜き文字で表示する。)、現在の音声レベルに対応する表示D11としては、前記表示10の位置よりレベルが小さい位置に対応するドットが点滅する。
【0038】
以上の実施例3によれば、現在の音声レベルが、しきい値のレベルに対してどの程度大きいか、もしくは、小さいかを量的に把握することができるので、VOXゲイン設定キー51をどの程度操作すべきか、もしくは、マイクロフォン2に向かって発する音声の大きさをどの程度調整すべきかの程度を把握することが可能となり、VOX機能の調整がより便利になる。
【実施例4】
【0039】
なお、以上の実施例1、2、3における表示部に代えて、報知手段としての音声出力手段や、振動出力手段を備えることによって、前記比較結果信号を音声や振動等によってオペレータに報知するように構成することも可能である。これらの表示部や音声出力手段や振動出力手段は併用することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 無線通信機
2 マイクロフォン
3 比較手段
4 送信信号出力手段
5 しきい値調整手段
6 送信部
7 モード切り換え手段
8 報知手段

10 実施例1の無線通信機
21 マイクロフォン
61 送信部
9 制御部
31 比較手段、しきい値比較部
41 送信信号出力部、送信制御手段
42 表示制御部、送信制御手段
71 セットモード起動キー、モード切り換えスイッチ
51 VOXゲイン設定キー、しきい値調整手段
52 アップキー、しきい値調整手段
53 ダウンキー、しきい値調整手段
81 表示部(実施例1)
82 表示部(実施例2)
83 表示部(実施例3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォンと、
マイクロフォンから出力される音声信号をしきい値と比較して、前記音声信号が前記しきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない送信制御手段と、
前記しきい値を調整するしきい値調整手段と、
前記送信開始信号が入力されると送信を開始し、前記送信開始信号が入力されないと送信を停止もしくは送信出力を抑制する送信部と
を備えた無線通信機において、
前記送信制御手段を、音声信号としきい値との比較結果の如何に関わらず送信開始信号を出力しない調整モードと、前記音声信号が前記しきい値を越えている場合には送信開始信号を出力し、越えていない場合には送信開始信号を出力しない通常モードの何れかのモードに切り換えるモード切り換え手段と、
前記送信制御手段における音声信号としきい値との比較結果を報知する報知手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
前記送信制御手段は、
マイクロフォンから出力される音声信号を、しきい値と比較して比較結果信号を出力する比較手段と、
前記比較結果信号が、前記音声信号が前記しきい値を越えている比較結果の場合には送信開始信号を出力し、越えていない比較結果の場合には送信開始信号を出力しない送信信号出力手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の無線送信機。
【請求項3】
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた表示パターンを表示する表示部を含んでいることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の無線送信機。
【請求項4】
前記表示部は、前記しきい値のレベルと前記音声信号のレベルの大小関係を把握可能な表示パターンで表示することを特徴とする請求項3に記載の無線送信機。
【請求項5】
前記報知手段は、前記送信制御手段から出力される比較結果に応じた音声信号を発する音声出力部を含んでいることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の無線送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−77848(P2011−77848A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227612(P2009−227612)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】