説明

無線通信装置

【課題】部品コストの削減を図りつつ、自己診断を行うことの可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】送受信の周波数が異なる通信方式の無線通信装置において、送信帯域の信号成分と受信帯域の信号成分との両方を含む送信信号を生成する送信部と、前記送信信号から前記送信帯域の信号成分を除去して得られる信号を診断用受信信号として取得する受信部と、前記診断用受信信号に基づいて前記受信部の診断を行う制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムにおける基地局を診断する方法としては、擬似端末を基地局に直に接続して行う方法があるが、試験者が基地局の設置場所に出向いて擬似端末を基地局に接続するのは手間がかかる。このため、市販されている携帯電話機と同等レベルのものを擬似端末として基地局に内蔵することで、試験者が遠隔操作して基地局を診断する方法がある。例えば、下記特許文献1には、擬似端末(試験用移動局102を参照)を内蔵する基地局が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−136175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、例えばFDD(Frequency Division Duplex)のように、送受信の周波数が異なる通信方式の基地局では、受信回路を診断するために診断用受信信号を生成して受信回路に送信する送信回路が必要であるが、本来無線端末に送信すべき送信信号と上記の診断用受信信号とは異なる周波数で生成しなければならず、当初から内蔵されている送信回路を診断用受信信号の送信回路として代用することはできない。そのため、実装及び製造の容易さから、本来の送信信号とは周波数の異なる診断用受信信号を生成して受信回路に送信する擬似端末を専用に基地局に内蔵することになり、そのように内蔵する構造は、部品コストの上昇を招くことになる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、部品コストの削減を図りつつ、自己診断を行うことの可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信装置は、送受信の周波数が異なる通信方式の無線通信装置において、送信帯域の信号成分と受信帯域の信号成分との両方を含む送信信号を生成する送信部と、前記送信信号から前記送信帯域の信号成分を除去して得られる信号を診断用受信信号として取得する受信部と、前記診断用受信信号に基づいて前記受信部の診断を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記の無線通信装置において、前記送信部は、前記送信帯域に周波数設定された第1の送信ローカル信号と、前記受信帯域に周波数設定された第2の送信ローカル信号とを合成して得られる合成ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される送信ベースバンド信号から無線周波数帯の前記送信信号を生成する送信信号生成部と、前記送信信号生成部から入力される前記送信信号から前記受信帯域の信号成分を除去する送信側フィルタと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記の無線通信装置において、前記送信信号生成部は、前記送信ベースバンド信号から中間周波数帯の送信IF信号を生成する送信IF信号生成部と、前記第1の送信ローカル信号を生成する第1の送信ローカル信号生成部と、前記第2の送信ローカル信号を生成する第2の送信ローカル信号生成部と、前記第1の送信ローカル信号と前記第2の送信ローカル信号とを合成することで前記合成ローカル信号を生成する合成部と、前記送信IF信号と前記合成ローカル信号とを乗算することで前記送信信号を生成する送信側乗算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記の無線通信装置において、前記送信部は、前記送信帯域に周波数設定された第1の送信ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される第1の送信ベースバンド信号から無線周波数帯の第1の送信信号を生成する第1の送信信号生成部と、前記受信帯域に周波数設定された第2の送信ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される第2の送信ベースバンド信号から無線周波数帯の第2の送信信号を生成する第2の送信信号生成部と、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを合成することで前記送信信号を生成する合成部と、前記合成部から入力される前記送信信号から前記受信帯域の信号成分を除去する送信側フィルタと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記の無線通信装置において、前記第1の送信信号生成部は、前記第1の送信ベースバンド信号から中間周波数帯の第1の送信IF信号を生成する第1の送信IF信号生成部と、前記第1の送信ローカル信号を生成する第1の送信ローカル信号生成部と、前記第1の送信IF信号と前記第1の送信ローカル信号とを乗算することで前記第1の送信信号を生成する第1の送信側乗算部と、を備え、前記第2の送信信号生成部は、前記第2の送信ベースバンド信号から中間周波数帯の第2の送信IF信号を生成する第2の送信IF信号生成部と、前記第2の送信ローカル信号を生成する第2の送信ローカル信号生成部と、前記第2の送信IF信号と前記第2の送信ローカル信号とを乗算することで前記第2の送信信号を生成する第2の送信側乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記の無線通信装置において、前記受信部は、前記送信部から入力される前記送信信号から前記送信帯域の信号成分を除去して得られる信号を前記診断用受信信号として出力する受信側フィルタと、前記受信帯域に周波数設定された受信ローカル信号を用いて、前記受信側フィルタから入力される前記診断用受信信号からベースバンド周波数帯の受信ベースバンド信号を生成して前記制御部に出力する受信ベースバンド信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記の無線通信装置において、前記受信ベースバンド信号生成部は、前記受信ローカル信号を生成する受信ローカル信号生成部と、前記診断用受信信号と前記受信ローカル信号とを乗算することで中間周波数帯の受信IF信号を生成する受信側乗算部と、前記受信IF信号から前記受信ベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記の無線通信装置において、前記送信側フィルタの前段配線と、前記受信部の前段配線との間に前記送信信号を前記送信部から前記受信部へ伝送するための伝送部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信部の診断を行うために専用の擬似端末を内蔵する必要がなく、部品コストの削減を図りつつ、自己診断を行うことが可能な無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における基地局1(無線通信装置)のブロック構成図である。
【図2】基地局1において、アップコンバータ13hから出力される送信信号、送信側バンドパスフィルタ13iから出力される送信信号、受信側バンドパスフィルタ15aから出力される送信信号(診断用受信信号)の周波数−電力特性図である。
【図3】基地局1におけるベースバンド部16の動作フローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態における基地局2(無線通信装置)のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、本発明に係る無線通信装置として、無線通信システムにおけるFDD方式の基地局を例示して説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態における基地局1のブロック構成図である。この図1に示すように、基地局1は、アンテナ11と、デュプレクサ12と、送信部13と、結合線路(伝送部)14と、受信部15と、ベースバンド部(制御部)16とから構成されている。
【0017】
アンテナ11は、デュプレクサ12を介して送信部13から入力される送信信号を電波として不図示の無線端末に送信する一方、無線端末から受信した電波を受信信号としてデュプレクサ12を介して受信部15に出力する。デュプレクサ12は、送信部13から入力される送信信号と、アンテナ11から入力される受信信号とを電気的に分離して、1本のアンテナ11を周波数の異なる送信信号と受信信号とで共有するための分波器である。
【0018】
送信部13は、DUC(デジタルアップコンバータ)13aと、DAC(デジタルアナログコンバータ)13bと、第1の送信側PLL(Phase Lock Loop)回路13cと、第1の送信側ローカル発振器13dと、第2の送信側PLL回路13eと、第2の送信側ローカル発振器13fと、合成器(合成部)13gと、アップコンバータ(送信側乗算部)13hと、送信側バンドパスフィルタ(送信側フィルタ)13iと、送信側アンプ13jとから構成されている。
【0019】
なお、上記のDUC13a、DAC13b、第1の送信側PLL回路13c、第1の送信側ローカル発振器13d、第2の送信側PLL回路13e、第2の送信側ローカル発振器13f、合成器13g及びアップコンバータ13hは、本発明における送信信号生成部を構成しており、その内、DUC13a及びDAC13bは送信IF信号生成部を、第1の送信側PLL回路13c及び第1の送信側ローカル発振器13dは第1の送信ローカル信号生成部を、第2の送信側PLL回路13e及び第2の送信側ローカル発振器13fは第2の送信ローカル信号生成部を構成している。
【0020】
DUC13aは、ベースバンド部16から入力される送信ベースバンド信号(デジタル信号)をIF周波数帯(中間周波数帯)へ周波数変換(アップコンバート)することで送信IF信号を生成し、当該送信IF信号をDAC13bに出力する。DAC13bは、上記DUC13aから入力される送信IF信号をアナログ信号に変換してアップコンバータ13hに出力する。
【0021】
第1の送信側PLL回路13cは、ベースバンド部16による制御の下、第1の送信側ローカル発振器13dの発振周波数を送信帯域に設定する。第1の送信側ローカル発振器13dは、例えば電圧制御型発振器であり、第1の送信側PLL回路13cによって設定された送信帯域の第1の送信ローカル信号を生成して合成器13gに出力する。
【0022】
第2の送信側PLL回路13eは、ベースバンド部16による制御の下、第2の送信側ローカル発振器13fの発振周波数を受信帯域に設定する。第2の送信側ローカル発振器13fは、例えば電圧制御型発振器であり、第2の送信側PLL回路13eによって設定された受信帯域の第2の送信ローカル信号を生成して合成器13gに出力する。
【0023】
合成器13gは、第1の送信側ローカル発振器13dから入力される第1の送信ローカル信号と、第2の送信側ローカル発振器13fから入力される第2の送信ローカル信号とを合成(加算)することで合成ローカル信号を生成し、当該合成ローカル信号をアップコンバータ13hに出力する。アップコンバータ13hは、DAC13bから入力される送信IF信号(アナログ信号)と、合成器13gから入力される合成ローカル信号(アナログ信号)とを乗算することで、送信IF信号をRF周波数帯(無線周波数帯)へ周波数変換して送信信号を生成し、当該送信信号を送信側バンドパスフィルタ13iに出力する。
【0024】
図2(a)は、第1の送信側ローカル発振器13d及び第2の送信側ローカル発振器13fの両方を動作させた場合において、アップコンバータ13hから出力される送信信号の周波数−電力特性図である。この図に示すように、第1の送信側ローカル発振器13d及び第2の送信側ローカル発振器13fの両方を動作させた場合、アップコンバータ13hから出力される送信信号には、送信帯域の信号成分と受信帯域の信号成分との両方が含まれることになる。
【0025】
送信側バンドパスフィルタ13iは、アップコンバータ13hから入力される送信信号に含まれる送信帯域成分(つまり図2(a)に示す送信帯域の信号成分)を通過させ、不要帯域成分(つまり図2(a)に示す受信帯域の信号成分)を除去する(減衰させる)ように周波数特性が設定されている。図2(b)は、送信側バンドパスフィルタ13iから出力される送信信号の周波数−電力特性図である。この図に示すように、送信側バンドパスフィルタ13iから出力される送信信号は、受信帯域の信号成分が除去(減衰)され、送信帯域の信号成分が支配的となっている。
送信側アンプ13jは、送信側バンドパスフィルタ13iから入力される送信信号の電力増幅を行い、当該電力増幅後の送信信号をデュプレクサ12を介してアンテナ11に出力する。
【0026】
上記のように構成された送信部13と後述する受信部15とは、結合線路14によって電気的に接続されている。具体的には、送信部13におけるアップコンバータ13hの出力端と送信側バンドパスフィルタ13iの入力端とを結ぶ配線(送信側バンドパスフィルタ13iの前段配線)L1と、受信部15の入力端(詳細には受信側バンドパスフィルタ15aの入力端)とデュプレクサ12の受信側出力端とを結ぶ配線(受信部15の前段配線)L2とが電気的に接続されるように、結合線路14が設けられている。このような結合線路14の設置により、送信部13におけるアップコンバータ13hから出力される送信信号は、結合線路14を介して受信部15の入力端(受信側バンドパスフィルタ15aの入力端)に入力されることになる。
【0027】
受信部15は、受信側バンドパスフィルタ(受信側フィルタ)15aと、受信側アンプ15bと、受信側PLL回路15cと、受信側ローカル発振器15dと、ダウンコンバータ(受信側乗算部)15eと、ADC(アナログデジタルコンバータ)15fと、DDC(デジタルダウンコンバータ)15gとから構成されている。
【0028】
なお、上記の受信側PLL回路15c、受信側ローカル発振器15d、ADC15f及びDDC15gは、本発明における受信ベースバンド信号生成部を構成しており、その内、受信側PLL回路15c及び受信側ローカル発振器15dは受信ローカル信号生成部を構成し、ADC15f及びDDC15gはベースバンド信号生成部を構成している。
【0029】
受信側バンドパスフィルタ15aは、アンテナ11からデュプレクサ12を介して入力される受信信号(無線端末から受信した受信信号)、或いは上記送信部13から結合線路14を介して入力される送信信号に含まれる受信帯域成分を通過させ、不要帯域成分(送信帯域成分)は除去するように周波数特性が設定されている。なお、以下の説明では、送信部13から結合線路14を介して入力される送信信号に着目し、受信側バンドパスフィルタ15aによって送信信号から送信帯域の信号成分が除去されて得られた信号を診断用受信信号と称する。
【0030】
図2(c)は、受信側バンドパスフィルタ15aから出力される診断用受信信号の周波数−電力特性図である。この図に示すように、受信側バンドパスフィルタ15aから出力される診断用受信信号は、送信帯域の信号成分が除去(減衰)され、受信帯域の信号成分が支配的となっている。
なお、以下の説明では、受信側バンドパスフィルタ15aから送信帯域成分が除去された診断用受信信号が出力された場合を想定して説明するが、無線端末から受信した受信信号が受信側バンドパスフィルタ15aから出力された場合も同様である。
【0031】
受信側アンプ15bは、受信側バンドパスフィルタ15aから入力される診断用受信信号の電力増幅を行い、当該電力増幅後の診断用受信信号をダウンコンバータ15eに出力する。受信側PLL回路15cは、ベースバンド部16による制御の下、受信側ローカル発振器15dの発振周波数を受信帯域に設定する。受信側ローカル発振器15dは、例えば電圧制御型発振器であり、受信側PLL回路15cによって設定された受信帯域の受信ローカル信号を生成してダウンコンバータ15eに出力する。
【0032】
ダウンコンバータ15eは、受信側アンプ15bから入力される診断用受信信号と、受信側ローカル発振器15dから入力される受信ローカル信号とを乗算することで、診断用受信信号をIF周波数帯へ周波数変換して受信IF信号を生成し、当該受信IF信号をADC15fに出力する。ADC15fは、ダウンコンバータ15eから入力される受信IF信号をデジタル信号に変換してDDC15gに出力する。DDC15gは、ADC15fから入力される受信IF信号(デジタル信号)をベースバンド周波数帯へ周波数変換(ダウンコンバート)することで受信ベースバンド信号を生成し、当該受信ベースバンド信号をベースバンド部16に出力する。
【0033】
ベースバンド部16は、基地局1の全体動作を統括制御するものであり、具体的には、送信部13に出力すべき送信ベースバンド信号の生成、第1の送信側PLL回路13cによる送信帯域周波数設定、第2の送信側PLL回路13e及び受信側PLL回路15cによる受信帯域周波数設定、第1の送信側ローカル発振器13d、第2の送信側ローカル発振器13f及び受信側ローカル発振器15dの起動・停止、受信ベースバンド信号に基づく受信部15の診断を行う。
【0034】
詳細は後述するが、このベースバンド部16は、受信部15の診断時において、送信部13の第1の送信側ローカル発振器13d及び第2の送信側ローカル発振器13fの両方を起動すると共に、受信部15の受信側ローカル発振器15dを起動し、その時に受信部15から入力される受信ベースバンド信号を復調して得られる診断値と、予め内部メモリに記憶している出荷時の値(判定値)とを比較することにより、受信部15の診断を行う。
【0035】
以上が第1実施形態における基地局1の構成に関する説明であり、以下では上記のように構成された基地局1の動作について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。この図3に示すように、まず、基地局1のベースバンド部16は、試験者が常駐する管理センターから診断要求信号が送信されたか否かを判定する(ステップS1)。
【0036】
ベースバンド部16は、上記ステップS1において、「No」の場合には通常動作に移行し(ステップS2)、「Yes」の場合には送信部13の第1の送信側ローカル発振器13d及び第2の送信側ローカル発振器13fを起動すると共に、受信部15の受信側ローカル発振器15dを起動し、第1の送信側PLL回路13cによる送信帯域周波数設定、第2の送信側PLL回路13eによる受信帯域周波数設定、受信側PLL回路15cによる受信帯域周波数設定を制御する(ステップS3)。
この時、合成器13gから出力される合成ローカル信号は、第1の送信側ローカル発振器13dから出力される第1の送信ローカル信号と、第2の送信側ローカル発振器13fから出力される第2の送信ローカル信号との合成波である。
【0037】
そして、ベースバンド部16は、受信部15の診断に用いる送信ベースバンド信号を生成して送信部13に出力する(ステップS4)。送信部13に入力された送信ベースバンド信号は、DUC13a、DAC13b及びアップコンバータ13hを介して、図2(a)に示したような、送信帯域の信号成分及び受信帯域の信号成分を含む送信信号に変換される。
【0038】
アップコンバータ13hから出力される送信信号は、結合線路14を介して受信部15に入力され、受信側バンドパスフィルタ15aによって送信信号に含まれる送信帯域成分が除去される。つまり、受信側バンドパスフィルタ15aから出力される送信信号(診断用受信信号)は、図2(c)に示したように、受信帯域の信号成分が支配的となる。このような診断用受信信号は、ダウンコンバータ15e、ADC15f及びDDC15gを介して受信ベースバンド信号に変換され、ベースバンド部16に入力される。
【0039】
そして、ベースバンド部16は、受信部15から入力される受信ベースバンド信号を復調することで診断値を取得し(ステップS5)、その診断値と内部メモリに予め記憶されている判定値とを比較することにより、受信部15が異常か否かを判定する(ステップS6)。このステップS6において、「No」の場合、ベースバンド部16は、受信部15が正常であると判断して、送信部13の第2の送信側ローカル発振器13fの動作を停止させ(ステップS7)、さらに、受信部15が正常であるとの診断結果を管理センターに報告(送信)すると共に通常動作に移行する(ステップS8)。
【0040】
一方、上記ステップS6において、「Yes」の場合、ベースバンド部16は、受信部15が異常であるとの診断結果を管理センターに報告した後、基地局1の全体動作を終了する(ステップS9)。
なお、ベースバンド部16は、通常動作に移行すると、送信部13の第2の送信側ローカル発振器13fの動作を停止させ、携帯端末へ送信すべき送信ベースバンド信号を生成して送信部13に出力する。この場合、送信部13にて生成される送信信号には送信帯域の信号成分のみ含まれることになるため、問題なく携帯端末との通信を行うことができる。
【0041】
以上のような本実施形態の基地局1では、従来の基地局と比較して、送信部13において第2の送信側PLL回路13e及び第2の送信側ローカル発振器13fから構成される第2の送信ローカル信号生成部と、合成器13gと、結合線路14とが新たに追加された部品であり、その他の部品は全て既存の部品を流用することができる。すなわち、本実施形態の基地局1によると、受信部15の診断を行うために専用の擬似端末を内蔵する必要がなく、部品コストの削減を図りつつ、自己診断を行うことが可能となる。
また、OFDMなど、広帯域なマルチキャリアシステムを利用する基地局1である場合には、制御チャネルや空きチャネルなどを診断用に使用することができ、運用状態(つまり携帯端末との通信を行っている通常動作時)においても受信部15の診断を行うことが可能となる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態における基地局2のブロック構成図である。なお、第2実施形態における基地局2は、第1実施形態の基地局1と比較して、送信部13の内部構成とベースバンド部16の機能の一部が異なるだけであるので、その他の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。また、第1実施形態と区別するために、第2実施形態における送信部の符号を20とし、ベースバンド部の符号を21とする。
【0043】
図4に示すように、第2実施形態の基地局2における送信部20は、第1のDUC20aと、第2のDAC20bと、第1の送信側PLL回路20cと、第1の送信側ローカル発振器20dと、第1のアップコンバータ(第1の送信側乗算部)20eと、第2のDUC20fと、第2のDAC20gと、第2の送信側PLL回路20hと、第2の送信側ローカル発振器20iと、第2のアップコンバータ(第2の送信側乗算部)20jと、合成器20kと、送信側バンドパスフィルタ20mと、送信側アンプ20nとから構成されている。
【0044】
なお、上記の第1のDUC20a、第2のDAC20b、第1の送信側PLL回路20c、第1の送信側ローカル発振器20d及び第1のアップコンバータ20eは、本発明における第1の送信信号生成部を構成しており、その内、第1のDUC20a及び第2のDAC20bは第1の送信IF信号生成部を構成し、第1の送信側PLL回路20c及び第1の送信側ローカル発振器20dは第1の送信ローカル信号生成部を構成している。
【0045】
また、上記の第2のDUC20f、第2のDAC20g、第2の送信側PLL回路20h、第2の送信側ローカル発振器20i及び第2のアップコンバータ20jは、本発明における第2の送信信号生成部を構成しており、その内、第2のDUC20f及び第2のDAC20gは第2の送信IF信号生成部を構成し、第2の送信側PLL回路20h及び第2の送信側ローカル発振器20iは第2の送信ローカル信号生成部を構成している。
【0046】
第1のDUC20aは、ベースバンド部21から入力される第1の送信ベースバンド信号(デジタル信号)をIF周波数帯へ周波数変換することで第1の送信IF信号を生成し、当該第1の送信IF信号を第1のDAC20bに出力する。第1のDAC20bは、上記第1のDUC20aから入力される第1の送信IF信号をアナログ信号に変換して第1のアップコンバータ20eに出力する。
【0047】
第1の送信側PLL回路20cは、ベースバンド部21による制御の下、第1の送信側ローカル発振器20dの発振周波数を送信帯域に設定する。第1の送信側ローカル発振器20dは、例えば電圧制御型発振器であり、第1の送信側PLL回路20cによって設定された送信帯域の第1の送信ローカル信号を生成して第1のアップコンバータ20eに出力する。第1のアップコンバータ20eは、第1のDAC20bから入力される第1の送信IF信号(アナログ信号)と、第1の送信側ローカル発振器20dから入力される第1の送信ローカル信号とを乗算することで、第1の送信IF信号をRF周波数帯へ周波数変換して第1の送信RF信号を生成し、当該第1の送信RF信号を合成器20kに出力する。
【0048】
第2のDUC20fは、ベースバンド部21から入力される第2の送信ベースバンド信号(デジタル信号)をIF周波数帯へ周波数変換することで第2の送信IF信号を生成し、当該第2の送信IF信号を第2のDAC20gに出力する。第2のDAC20gは、上記第2のDUC20fから入力される第2の送信IF信号をアナログ信号に変換して第2のアップコンバータ20jに出力する。
【0049】
第1の送信側PLL回路20hは、ベースバンド部21による制御の下、第2の送信側ローカル発振器20iの発振周波数を受信帯域に設定する。第2の送信側ローカル発振器20iは、例えば電圧制御型発振器であり、第2の送信側PLL回路20hによって設定された受信帯域の第2の送信ローカル信号を生成して第2のアップコンバータ20jに出力する。第2のアップコンバータ20jは、第2のDAC20gから入力される第2の送信IF信号(アナログ信号)と、第2の送信側ローカル発振器20iから入力される第2の送信ローカル信号とを乗算することで、第2の送信IF信号をRF周波数帯へ周波数変換して第2の送信RF信号を生成し、当該第2の送信RF信号を合成器20kに出力する。
【0050】
合成器20kは、第1のアップコンバータ20eから入力される第1の送信RF信号と、第2のアップコンバータ20jから入力される第2の送信RF信号とを合成(加算)することで送信信号を生成し、当該送信信号を送信側バンドパスフィルタ20mに出力する。送信側バンドパスフィルタ20mは、第1実施形態における送信側バンドパスフィルタ13iと同様に、送信信号に含まれる送信帯域成分を通過させ、不要帯域成分を除去するように周波数特性が設定されている。送信側アンプ20nは、送信側バンドパスフィルタ20mから入力される送信信号の電力増幅を行い、当該電力増幅後の送信信号をデュプレクサ12を介してアンテナ11に出力する。
なお、合成器20kから出力される送信信号は、結合線路14を介して受信部15の入力端(受信側バンドパスフィルタ15aの入力端)に入力される。
【0051】
ベースバンド部21は、第1実施形態のベースバンド部16の機能に加えて、第1の送信ベースバンド信号を生成して第1のDUC20aに出力する機能と、第2の送信ベースバンド信号を生成して第2のDUC20fに出力する機能とを新たに有している。
なお、第2実施形態における基地局2の動作(ベースバンド部21の動作)は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0052】
このような第2実施形態における基地局2の構成によると、第1の送信側ローカル発振器20d及び第2の送信側ローカル発振器20iの両方を動作させた場合、送信部20の合成器20kから出力される送信信号は、第1実施形態における送信部13のアップコンバータ13hから出力される送信信号と同様に、送信帯域の信号成分と受信帯域の信号成分の両方を含み、第1実施形態の基地局1と同様に、部品コストの削減を図りつつ、受信部15の診断を行うことが可能となる。
【0053】
第2実施形態の基地局2は、第1実施形態の基地局1と比較して、第2のDUC20f、第2のDAC20g及び第2のアップコンバータ20jがさらに追加されているため、部品コストの削減効果は第1実施形態より小さいが、ベースバンド部21にて受信ベースバンド信号の復調を行う場合、上り側の復調(デジタル復調)のみを行えば良いため、ベースバンド部21のソフトウエア処理の負荷が軽減するという効果を得られる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、図3のフローチャートのステップS5、S6において、受信部15から入力される受信ベースバンド信号を復調することで診断値を取得し、その診断値と内部メモリに予め記憶されている判定値とを比較することで受信部15が異常か否かを判定する場合を例示したが、これに限らず、受信部15から入力される受信ベースバンド信号のレベルを検出し、当該検出したレベルと内部メモリに予め記憶されている判定用レベルとを比較することで受信部15が異常か否かを判定するようにしても良い。
このように、受信ベースバンド信号のレベルによって診断を行う場合、復調を行う場合と比較して、ベースバンド部21のソフトウエア処理の負荷が軽減するという効果を得られる。
【0055】
(2)上記実施形態では、本発明に係る無線通信装置として基地局を例示して説明したが、本発明は基地局に限らず、その他、送受信の周波数が異なる通信方式を採用する無線通信装置(例えば携帯端末など)であれば適用することが可能である。なお、上述した基地局1及び基地局2の部品構成はあくまで一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、2…基地局(無線通信装置)、11…アンテナ、12…デュプレクサ、13、20…送信部、14…結合線路(伝送部)、15…受信部、16、21…ベースバンド部(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信の周波数が異なる通信方式の無線通信装置において、
送信帯域の信号成分と受信帯域の信号成分との両方を含む送信信号を生成する送信部と、
前記送信信号から前記送信帯域の信号成分を除去して得られる信号を診断用受信信号として取得する受信部と、
前記診断用受信信号に基づいて前記受信部の診断を行う制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送信部は、
前記送信帯域に周波数設定された第1の送信ローカル信号と、前記受信帯域に周波数設定された第2の送信ローカル信号とを合成して得られる合成ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される送信ベースバンド信号から無線周波数帯の前記送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号生成部から入力される前記送信信号から前記受信帯域の信号成分を除去する送信側フィルタと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信信号生成部は、
前記送信ベースバンド信号から中間周波数帯の送信IF信号を生成する送信IF信号生成部と、
前記第1の送信ローカル信号を生成する第1の送信ローカル信号生成部と、
前記第2の送信ローカル信号を生成する第2の送信ローカル信号生成部と、
前記第1の送信ローカル信号と前記第2の送信ローカル信号とを合成することで前記合成ローカル信号を生成する合成部と、
前記送信IF信号と前記合成ローカル信号とを乗算することで前記送信信号を生成する送信側乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信部は、
前記送信帯域に周波数設定された第1の送信ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される第1の送信ベースバンド信号から無線周波数帯の第1の送信信号を生成する第1の送信信号生成部と、
前記受信帯域に周波数設定された第2の送信ローカル信号を用いて、前記制御部から出力される第2の送信ベースバンド信号から無線周波数帯の第2の送信信号を生成する第2の送信信号生成部と、
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを合成することで前記送信信号を生成する合成部と、
前記合成部から入力される前記送信信号から前記受信帯域の信号成分を除去する送信側フィルタと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1の送信信号生成部は、
前記第1の送信ベースバンド信号から中間周波数帯の第1の送信IF信号を生成する第1の送信IF信号生成部と、
前記第1の送信ローカル信号を生成する第1の送信ローカル信号生成部と、
前記第1の送信IF信号と前記第1の送信ローカル信号とを乗算することで前記第1の送信信号を生成する第1の送信側乗算部と、
を備え、
前記第2の送信信号生成部は、
前記第2の送信ベースバンド信号から中間周波数帯の第2の送信IF信号を生成する第2の送信IF信号生成部と、
前記第2の送信ローカル信号を生成する第2の送信ローカル信号生成部と、
前記第2の送信IF信号と前記第2の送信ローカル信号とを乗算することで前記第2の送信信号を生成する第2の送信側乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記受信部は、
前記送信部から入力される前記送信信号から前記送信帯域の信号成分を除去して得られる信号を前記診断用受信信号として出力する受信側フィルタと、
前記受信帯域に周波数設定された受信ローカル信号を用いて、前記受信側フィルタから入力される前記診断用受信信号からベースバンド周波数帯の受信ベースバンド信号を生成して前記制御部に出力する受信ベースバンド信号生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記受信ベースバンド信号生成部は、
前記受信ローカル信号を生成する受信ローカル信号生成部と、
前記診断用受信信号と前記受信ローカル信号とを乗算することで中間周波数帯の受信IF信号を生成する受信側乗算部と、
前記受信IF信号から前記受信ベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記送信側フィルタの前段配線と、前記受信部の前段配線との間に前記送信信号を前記送信部から前記受信部へ伝送するための伝送部を備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−49823(P2011−49823A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196564(P2009−196564)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】