説明

照射装置

【課題】ランプと、ランプの予熱電源回路と、を繋ぐ電線長の長短に因らず、フィラメントの予熱電流を最適に維持することができる照射装置を提供する。
【解決手段】ランプ10と、当該ランプ10のフィラメント12に電線6を介して接続され、ランプ10の点灯前に、一定の電流を電線6に流してフィラメント12を所定の適正温度に到達させる予熱電源回路24と、を備えた照射装置1において、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さによって変わる電線6の電気抵抗を一定の値に維持するための可変抵抗器25を電線6の経路内に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプのフィラメントを予熱する予熱電源回路を備えた照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランプのフィラメントに接続された電線に定電圧トランスを介して予熱電源回路を接続し、ランプの点灯前にフィラメントに電流を流して予熱することで、フィラメントからの電子放電を容易にし、ランプの始動時や点灯時のフィラメントの消耗を抑え、ランプの長寿命化を図る照射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−60743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予熱電源回路は、電源装置に備えられ、この電源装置と、ランプとは、それぞれ離れた位置、例えば、別室に設けられる場合がある。フィラメントを予熱するためにフィラメントに流す予熱電流の値は、ランプと予熱電源回路とを繋ぐ電線長が変わると、電線の持つ電気抵抗値に起因して値が変わってしまう。そのため、フィラメントを適正の温度に予熱するためには、フィラメントに流す予熱電流の値を一定にする必要があり、設計時には、予熱電源回路と、ランプとを繋ぐ電線の必要となる長さに応じて定電圧トランスの出力電圧が設定される。しかしながら、実際に配線した際の電線長は、設計時の想定よりも短く、或いは、長くなってしまう場合がある。予熱電源回路と、ランプとは、設計時の想定よりも短い電線、或いは、長い電線で配線してしまうと、電線の電気抵抗値が設計時の想定と変わってしまい、フィラメントを所定の適正温度に維持するための一定の電流をフィラメントに流すことができなくなる。
【0005】
そのために、設計時には、想定し得る限り長い電線長を前提にトランスの電圧を設定することが考えられるが、実際に配線した際に必要な電線長が、設計時の想定よりも短くなる場合には、余分な長さの電線がランプ、或いは、電源装置の周辺でとぐろを巻いて邪魔になる上、無駄な電線費用が掛かる等の問題があった。また、実際に配線した際の電線長が、設計時の想定よりも短くなってしまう場合に、断面積の細い電線を使用することで意図的に電線の電気抵抗値を大きくして、電線の電気抵抗値を設計時に想定した値に維持する方法も考えられる。しかしながら、規格品の電線の断面積は1.5倍刻みと幅が大きい上、電線の種類によっては必要な耐電圧性能を有しながら小さい断面積の電線が手に入らない場合がある等の問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、ランプと、ランプの予熱電源回路と、を繋ぐ電線長の長短に因らず、フィラメントの予熱電流を最適に維持することができる照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ランプと、当該ランプのフィラメントに電線を介して接続され、前記ランプの点灯前に、一定の電流を前記電線に流して前記フィラメントを所定の適正温度に到達させる予熱電源回路と、を備えた照射装置において、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さによって変わる当該電線の電気抵抗を一定の値に維持するための可変抵抗器を前記電線の経路内に設けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記照射装置において、前記可変抵抗器は、複数の固定抵抗器と、前記固定抵抗器のうち前記電線に接続する固定抵抗器を切り替える切替手段と、を備え、前記切替手段で、前記電線に接続する前記固定抵抗器を切り替て、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さによって変わる当該電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記照射装置において、前記可変抵抗器は、前記切替手段としての複数の接続端子を備え、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さに応じて所定の接続端子に前記電線を繋いで前記電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記照射装置において、前記接続端子は、前記可変抵抗器の電流の入口側と出口側とにそれぞれ複数設けられ、前記可変抵抗器は、前記固定抵抗器を前記入口側接続端子と出口側接続端子の各々の間にネットワーク状に接続して備え、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さに応じて、前記電線を所定の入口側接続端子および出口側接続端子に繋いで前記電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ランプと予熱電源回路とを繋ぐ電線の長さによって変わる当該電線の電気抵抗を一定の値に維持するための可変抵抗器を電線の経路内に設けたため、施工場所で実際に配線した際の電線長の長短に因らず、電線の電気抵抗を一定の値に維持して、フィラメントを適正の温度に予熱するためにフィラメントに流す予熱電流を最適に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る照射装置の構成を示す回路図である。
【図2】可変抵抗器の構成を模式的に示した図である。
【図3】別の実施例の可変抵抗器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本構成に係る照射装置1は、図1に示すように、光源となるランプ10と、このランプ10を点灯する電源装置20と、を備え、電源7から供給される電気エネルギーでランプ10を点灯させる。本実施形態では、ランプ10は、紫外線を放射する低圧水銀ランプであり、照射装置1は、ランプ10から殺菌作用の強い紫外線を放射して、放射した紫外線が照射される対象物(殺菌対象)5の殺菌を行う。殺菌対象5としては、例えば、水や食品用のフィルム・容器などがある。
【0014】
ランプ10は、石英ガラス等から形成されたガラス管11の両端にフィラメント12を備える。ランプ10のフィラメント12には、電線6が接続される。ランプ10は、電線6によって電源装置20に接続される。電源装置20には、電線6が接続される端子台21と、電源7からの入力電圧を一定の電圧で出力し、電線6に流す定電圧トランス22と、ランプ10の点灯を制御する放電制御回路23と、を備える。定電圧トランス22の1次側巻線22Aと、電源7とは連続して接続され、予熱電源回路24を構成している。照射装置1は、ランプ10の一端側のフィラメント12Aに予熱電流を流す予熱電源回路24Aと、ランプ10の他端側のフィラメント12Bに予熱電流を流す予熱電源回路24Bと、を備える。
【0015】
電源装置20は、端子台21を備え、電線6は、この端子台21を介して、定電圧トランス22の2次側巻線22Bに接続される。予熱電源回路24には、電源7からの電流が流れ、予熱電源回路24を流れる電流によって、電線6には、常に定電圧トランス22を介して一定の電圧が印加される。つまり、ランプ10と電源装置20との間には、電線6によってフィラメント12を予熱する予熱電流が環流する。これにより、ランプ10のフィラメント12は、予熱電源回路24から定電圧トランス22を介して電線6に流される電流によって点灯前に予熱される。このように、ランプ10のフィラメント12は、点灯開始時には予熱されて、所定の適正温度に到達している。
【0016】
端子台21は、電線6のアノード側電線6Aが接続されるアノード側端子21Aと、電線6のカソード側電線6Bが接続されるカソード側端子21Bを備える。アノード側端子21Aには、放電制御回路23の出力端子が接続される。照射装置1は、放電制御回路23の制御の下、ランプ10を点灯させるためのランプ電流を電源7から放電制御回路23を介して、電線6のアノード側電線6Aに流す。ランプ点灯時には、フィラメント12は、ランプ10の点灯前に予熱されて、適正温度に到達しているため、フィラメント12からの電子放出が容易に行われ、ランプ10の点灯時のフィラメントの消耗を抑え、ランプ10の長寿命化を図ることができる。
【0017】
ところで、照射装置1の殺菌対象5は、水などの流体、或いは、食品用のフィルム・容器などであり、この場合、ランプ10によって殺菌処理される殺菌対象5が配置される処理室2は、湿度が高い状態となる。電源装置20は、電子部品を備え、これらの電子部品は、比較的湿度の低い環境下での使用が好条件である。照射装置1は、ランプ10を殺菌対象5が殺菌処理される処理室2に配置し、電源装置20を処理室2とは別室の制御室3に配置して、ランプ10と、電源装置20とを電線6で繋げて構成されている。
【0018】
電線6の長さは、照射装置1が施工される場所に応じて適宜に調整される。電線6の経路内には、電気抵抗値可変の可変抵抗器25が備えられる。可変抵抗器25は、カソード側端子21Bと定電圧トランス22との間で、電線6のカソード側電線6Bに接続されて備えられる。可変抵抗器25の電気抵抗値は、電線6の持つ電気抵抗値をランプ10と予熱電源回路24との距離、つまり電線6の実配線長に応じて変えることができる。この構成によれば、可変抵抗器25は電線6のカソード側電線6Bに接続されて、電線6の経路内にもうけられるため、可変抵抗器25には、実質的にランプ電流は殆ど流れない。そのため、可変抵抗器25によって電線6のアノード側電線6Aを流れるランプ電流を損失させることが無く、可変抵抗器25によってランプ10の出力低下が生じることがない。
【0019】
以下、設計上の電線6の最大長を片道30mとし、断面積1.25mmの電線6を用いて、ランプ10と予熱電源回路24とを繋いだ照射装置1を例にして、可変抵抗器25の構成について説明する。なお、定電圧トランス22は、出力電圧が、電線6の実配線長が片道30mである場合に、フィラメント12を所定の適正温度に到達させ得る一定の電流が電線6に流れるように設定されている。
【0020】
図2は、可変抵抗器25の一実施例を示す図である。可変抵抗器25は、図2に示すように、プリント基板26に複数の固定抵抗器Rをネットワーク状に配置し、固定抵抗器R間をプリント基板26の裏面から配線して接続した抵抗回路28を備える。可変抵抗器25は、1灯のランプ10に対して、フィラメント12A側に接続された抵抗回路28Aと、フィラメント12B側に接続された抵抗回路28Bと、の二つの抵抗回路28を備える。各抵抗回路28は、複数の入口側接続端子31と、複数の出口側接続端子32と、を備える。
【0021】
各固定抵抗器Rには、電気抵抗値が、電線6の所定の長さの電気抵抗値に相当する固定抵抗器が用いられ、この電気抵抗値に対応する電線長と、電線6の設計上の長さとに応じた数の固定抵抗器Rが使用される。本実施例では、設計上の電線6の最大長を片道30mとして、固定抵抗器Rには、10mの電線6に相当する電気抵抗値(例えば0.16Ω)の固定抵抗器Rを5個使用している。電線6は、定電圧トランス22を介して予熱電源回路24からの電流を一対のアノード側電線6Aとカソード側電線6B間で環流させるため、10mの長さの電線6に相当する電気抵抗値は、片道配線長で5mの配線を置換することに相当する。
【0022】
図2に示すように、5個の固定抵抗器Rをプリント基板26状にネットワーク状に配置してなる抵抗回路28には、複数の入口側接続端子31と、複数の出口側接続端子32とが接続されている。可変抵抗器25は、カソード側電線6Bの入力側電線16Aと、出力側電線16Bと、をどの入口側接続端子31/出口側接続端子32に接続するかによって、所望の長さの電線6に相当する電気抵抗値を作り出すことができる。
【0023】
次に、可変抵抗器25によって作り出される電気抵抗値を、各固定抵抗器Rの電気抵抗値が0.16Ωである場合を例に、フィラメント12A側に接続された抵抗回路28Aで作り出される電気抵抗値を用いて具体的に説明する。
入口側接続端子31Aと、出口側接続端子32Aと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続した場合、入口側接続端子31Aと出口側接続端子32Aの間には、固定抵抗器Rを介さずに各々を繋げる配線41がある。そのため、カソード側電線6Bを流れる電流は、固定抵抗器Rを通らずに出力され、抵抗回路28Aは、0Ωの電気抵抗値を作り出す。
【0024】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の片道配線長が30mである場合には、電線6の持つ電気抵抗値が設計上で想定される電気抵抗値と等しくなるため、可変抵抗器25で電線6の電気抵抗値を補償する必要はない。そのため、可変抵抗器25の入口側接続端子31Aと、出口側接続端子32Aと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続することで、フィラメント12Aに、所定の適正温度に到達させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0025】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24と、を繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が略25mである場合には、片道配線長で5mの電線6の電気抵抗値に相当する0.16Ωの電気抵抗値を補償する必要がある。この場合には、入口側接続端子31Aと、出口側接続端子32Bと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続する。カソード側電線6Bを流れる電流は、抵抗回路28Aの固定抵抗器R10だけを通って流れ、出力される。これによって、抵抗回路28Aは、0.16Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。よって、フィラメント12Aに、フィラメント12Aを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Aの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0026】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24と、を繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が略20mである場合には、片道配線長で10mの電線6の電気抵抗値に相当する0.32Ωの電気抵抗値を補償する必要がある。この場合には、入口側接続端子31Bと、出口側接続端子32Aと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続する。カソード側電線6Bを流れる電流は、抵抗回路28Aの固定抵抗器R12、及び、固定抵抗器R11を順に通って流れ、出力される。これによって、抵抗回路28Aは、0.32Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。よって、フィラメント12Aに、フィラメント12Aを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Aの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0027】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24と、を繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が略15mである場合には、片道配線長で15mの電線6の電気抵抗値に相当する0.48Ωの電気抵抗値を補償する必要がある。この場合には、入口側接続端子31Bと、出口側接続端子32Bと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続する。カソード側電線6Bを流れる電流は、抵抗回路28Aの固定抵抗器R12、固定抵抗器R11、及び、固定抵抗器R10を順に通って流れ、出力される。これによって、抵抗回路28Aは、0.48Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。よって、フィラメント12Aに、フィラメント12Aを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Aの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0028】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24と、を繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が略10mである場合には、片道配線長で20mの電線6の電気抵抗値に相当する0.64Ωの電気抵抗値を補償する必要がある。この場合には、入口側接続端子31Cと、出口側接続端子32Aと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続する。カソード側電線6Bを流れる電流は、抵抗回路28Aの固定抵抗器R14、固定抵抗器R13、固定抵抗器R12、及び、固定電気抵抗値11を順に通って流れ、出力される。これによって、抵抗回路28Aは、0.64Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。よって、フィラメント12Aに、フィラメント12Aを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Aの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0029】
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24と、を繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が略5mである場合には、片道配線長で25mの電線6の電気抵抗値に相当する0.80Ωの電気抵抗値を補償する必要がある。この場合には、入口側接続端子31Cと、出口側接続端子32Bと、にそれぞれ入力側電線16Aと、出力側電線16Bとを接続する。カソード側電線6Bを流れる電流は、抵抗回路28Aの固定抵抗器R14、固定抵抗器R13、固定抵抗器R12、固定抵抗器R11、及び、固定抵抗器R10を順に通って流れ、出力される。これによって、抵抗回路28Aは、0.80Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。よって、フィラメント12Aに、フィラメント12Aを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Aの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0030】
このように、入口側接続端子31、及び、出口側接続端子32の各々は、可変抵抗器25が作り出す電気抵抗値を切り替える切替手段30として構成されている。
ランプ10のフィラメント12B側に接続されたカソード側電線6Bは、同様に可変抵抗器25の抵抗回路28Bに接続され、抵抗回路28Bは、ランプ10と予熱電源回路24Bとを繋ぐ電線6の電線長に応じた電気抵抗値を作り出し、電線6の片道配線長が30mである場合に相当する電気抵抗値が補償される。これによって、フィラメント12Bには、上述したフィラメント12Aと同様に、フィラメント12Bを所定の適正温度に到達させて、その適正温度付近に常にフィラメント12Bの温度を維持させ得る一定の予熱電流を流すことができる。
【0031】
図3は、上述した可変抵抗器25の別の実施形態である可変抵抗器125を示す図である。
この別の実施形態の可変抵抗器125は、ランプ10の各フィラメント12に対して、カソード側電線6B接続される入口側接続端子31、及び、出口側接続端子32をそれぞれ1つずつ備えている。図2では、説明の便宜上、一方のフィラメント12Aに接続される抵抗回路128Aのみを図示しているが、可変抵抗器125には、他方のフィラメント12Bに接続される抵抗回路128Bも備えられる。可変抵抗器125は、入口側接続端子31と、出口側接続端子32との間に、複数の固定抵抗器Rを直列に接続して備えている。各固定抵抗器Rには切替手段30としてのスイッチング手段Sが備えられている。
可変抵抗器125は、入口側接続端子31と出口側接続端子32にそれぞれ、カソード側電線6Bの入力側電線16Aと出力側電線16Bを接続し、電線6の施工場所での実際の片道配線長に応じて各スイッチング手段Sを開閉することで所望の長さの電線6に相当する電気抵抗値を作り出す。
【0032】
設計上の電線6の最大長を片道30mとして、固定抵抗器Rには、10mの電線6に相当する電気抵抗値(例えば0.16Ω)の固定抵抗器Rを5個使用した場合を例に、可変抵抗器125によって作り出される電気抵抗値を、具体的に説明する。
照射装置1のランプ10と、予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の施工場所での実際の片道配線長が30mである場合には、電線6の持つ電気抵抗値は、設計上で想定される電気抵抗値と等しく、可変抵抗器125の固定抵抗器Rのいずれも電線6に接続する必要はないため、スイッチング手段S10〜S14は全て閉じられる。これにより、カソード側電線6Bを流れる電流は、固定抵抗器R側ではなく、スイッチング手段S10〜S14側を通って流れ、可変抵抗器125は0Ωの電気抵抗値を作り出す。
【0033】
電線6の施工場所での実際の片道配線長が25mである場合には、スイッチング手段S10〜14のいずれか1つを開き、残りの4つを閉じることで、カソード側電線6Bを流れる電流は、スイッチング手段Sが開かれている固定抵抗器Rだけを通って流れ、可変抵抗器125は0.16Ωの電気抵抗値を作り出し、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値が補償される。
電線6の施工場所での実際の片道配線長が20mである場合には、スイッチング手段S10〜14のうち2つを開き、残りの3つを閉じることで、可変抵抗器125は0.32Ωの電気抵抗値を作り出す。このようにして、電線6の施工場所での実際の片道配線長が15mの場合には、スイッチング手段S10〜14のうち3つを開き、残りの2つを閉じ、10mの場合には、スイッチング手段S10〜14のうち4つを開き、残りの1つを閉じ、5mの場合には、全てのスイッチング手段S10〜14を開くことで、片道配線長が30mである場合の電線6の電気抵抗値に相当する電気抵抗値を補償して、電線6の実配線長の長短によらず、フィラメント12に流す予熱電流を最適に維持することができ、フィラメント12の温度を常に所定の適正温度付近に維持することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、ランプ10と、当該ランプ10のフィラメント12に電線6を介して接続され、ランプ10の点灯前に、一定の電流を電線6に流してフィラメント12を所定の適正温度に到達させる予熱電源回路24と、を備えた照射装置1において、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さによって変わる電線6の電気抵抗を一定の値に維持するための可変抵抗器25を電線6の経路内に設けたため、施工場所で実際に配線した際の電線6の長さの長短に因らず、可変抵抗器25で電線6の電気抵抗値を設計時の電線6の長さに応じた電気抵抗値に補償することができ、電線6の電気抵抗を一定の値に維持することができる。これにより、フィラメント12に流す予熱電流を最適に維持することができ、フィラメント12を適正の温度に予熱して、フィラメント12の温度を常に適正温度付近に維持することができる。
照射装置1は、フィラメント12を適正の温度に予熱して、フィラメント12の温度を常に適正温度付近に維持することができることで、フィラメント12の長寿命化を図ることができ、ランプ10の点滅使用に対する耐久性が向上する。そのため、ランプ10をこまめに消灯することができ、殺菌処理が必要がないときには、ランプ10を消灯して、照射装置1の全体としてのエネルギーの消費を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本発明を適用した実施形態によれば、可変抵抗器25は、複数の固定抵抗器Rと、固定抵抗器Rのうち電線6に接続する固定抵抗器Rを切り替える切替手段30と、を備え、切替手段30で、電線6に接続する固定抵抗器Rを切り替て、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さによって変わる電線6の電気抵抗を一定の値に維持するため、例えば抵抗値をボリューム等によって可変に調整できる高価な抵抗器を可変抵抗器25に使用することなく、安価な固定抵抗器Rを用いて電線6の電気抵抗を一定の値に維持することができる。さらに、ボリューム等によって電気抵抗値を可変に調整可能な可変抵抗器では、設定されている抵抗値を的確に把握することが困難であるが、本実施形態では、複数の固定抵抗器を組み合わせた合成抵抗値で可変抵抗器25の電気抵抗値を的確な値に設定することができる。
【0036】
また、本発明を適用した実施形態によれば、可変抵抗器25は、切替手段30としての複数の接続端子31,32を備え、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さに応じて所定の接続端子31,32に電線を繋いで電線6の電気抵抗を一定の値に維持するため、施工現場において、配線作業が終了した後に、容易に必要な電気抵抗値を設定することができる。また、電線6を接続する接続端子を切り替えるだけで、容易に目的とする電気抵抗値を作り出すことができ、施工現場における作業性を向上することができる。
【0037】
また、本発明を適用した実施形態によれば、接続端子31,32は、可変抵抗器25の電流の入口側と出口側とにそれぞれ複数設けられ、可変抵抗器25は、固定抵抗器Rを入口側接続端子31と出口側接続端子32の各々の間にネットワーク状に接続して備え、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さに応じて、電線6を所定の入口側接続端子31および出口側接続端子32に繋いで電線6の電気抵抗を一定の値に維持するため、電線6の入力側電線16Aと出力側電線16Bとを接続する可変抵抗器25の入口側接続端子31と出口側接続端子32を切り替えるだけで、ネットワーク状に接続された複数の固定抵抗器Rのうち電線6に接続される固定抵抗器Rの組み合わせを切り替えることができ、容易に目的とする電気抵抗値を作り出すことができる。また、複数の固定抵抗器Rをネットワーク状に接続することで、必要最低限の数の固定抵抗器Rを用いて、ランプ10と予熱電源回路24とを繋ぐ電線6の長さに応じた数の固定抵抗器Rを直列に接続し、目的とする電気抵抗値を作り出すことができるため、可変抵抗器25の小型化を図ることができる。
【0038】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、可変抵抗器25は、複数の固定抵抗器Rを備え、こられの固定抵抗器Rを直列に接続し、接続する固定抵抗器Rの組み合わせで所定の合成抵抗値を作り出す構成としたが、これに限らず、可変抵抗器25は、複数の固定抵抗器Rを並列に接続可能に備える構成であっても良い。また、本実施形態では、可変抵抗器25が備える各固定抵抗器Rは、電気抵抗値が等しい抵抗器を用いる構成としたが、可変抵抗器25は、電気抵抗値がそれぞれ異なる複数の固定抵抗器備え、これらの固定抵抗器を組み合わせて所定の値の電気抵抗を作り出す構成であっても良い。また、本実施形態では、切替手段30としてスイッチング手段Sを用いる構成としたが、これに限らず、ジャンパを切替手段30として用いて、個々の固定抵抗器Rを接続するジャンパを切り離し可能に備える構成であっても良い。また、実施形態では、可変抵抗器25は、一灯のランプ10の各フィラメント12A,12Bに接続される抵抗回路28A,28Bを備える構成としたが、これに限らず、可変抵抗器25は1枚のプリント基板27上に抵抗回路を複数備え、可変抵抗器25に複数灯のランプ10の各フィラメント12が接続される構成であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 照射装置
6 電線
10 ランプ
12 フィラメント
22 定電圧トランス
24 予熱電源回路
25,125 可変抵抗器
30 切替手段
31,32 接続端子
R 固定抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプと、当該ランプのフィラメントに電線を介して接続され、前記ランプの点灯前に、一定の電流を前記電線に流して前記フィラメントを所定の適正温度に到達させる予熱電源回路と、を備えた照射装置において、
前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さによって変わる当該電線の電気抵抗を一定の値に維持するための可変抵抗器を前記電線の経路内に設けた
ことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記可変抵抗器は、複数の抵抗器と、前記抵抗器のうち前記電線に接続する抵抗器を切り替える切替手段と、を備え、前記切替手段で、前記電線に接続する前記抵抗器を切り替て、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さによって変わる当該電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記可変抵抗器は、前記切替手段としての複数の接続端子を備え、前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さに応じて所定の接続端子に前記電線を繋いで前記電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする請求項2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記接続端子は、前記可変抵抗器の電流の入口側と出口側とにそれぞれ複数設けられ、
前記可変抵抗器は、前記抵抗器を前記入口側接続端子と出口側接続端子の各々の間にネットワーク状に接続して備え、
前記ランプと前記予熱電源回路とを繋ぐ前記電線の長さに応じて、前記電線を所定の入口側接続端子および出口側接続端子に繋いで前記電線の電気抵抗を一定の値に維持することを特徴とする請求項3に記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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