説明

熱間鍛造による鍛造方法

【課題】従来よりも設計形状自由度が高く、また、機械的強度低下や応力腐食割れ等の問題の生じにくい鍛造製品を安価に製造することが可能な熱間鍛造による鍛造方法を提供する。
【解決手段】2つ以上の工程ユニット13を同一鍛造機械内に着脱可能に組み込んだ鍛造装置と、各工程ユニット13の金型を加熱する複数のヒーターと、各工程ユニット13の金型の温度を検出する複数のサーモカップルと、鍛造製品の温度を検出する非接触式温度計と、この非接触式温度計および複数のサーモカップルの出力に基づいて複数のヒーターを制御する金型温度制御装置とを備える熱間鍛造装置11により熱間鍛造による鍛造を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造、熱間穴あけ鍛造、熱間複動鍛造から同種を含んで選ばれた2つ以上を同一鍛造装置(鍛造手段)内で実施して鍛造製品を鍛造する熱間鍛造による鍛造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非鉄金属における鍛造機械(クランクプレス、ナックルプレス、油圧プレス、サーボプレス等)を使用した熱間鍛造では、素材(鍛造用材料)が、例えば、アルミニウム(Al)合金であれば、アルミニウム合金を350℃〜550℃に加熱して鍛造することにより、鍛造製品を製造している。
【0003】
前述した熱間鍛造の場合、熱間鍛造後に鍛造製品の周囲に鍛造製品形状以外の余分なバリが鍛造製品形状外周に一緒に排出される熱間バリ出し鍛造と、素材が全て鍛造製品となる熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造、熱間複動鍛造とに分けられる。
【0004】
そして、従来の熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造、熱間穴あけ鍛造、熱間複動鍛造においては、1台の鍛造機械内(例えば、加圧能力1000tf以下)で単独(一対の上下金型)の工程ユニットにより、鍛造製品を製造している(例えば、特許文献1参照)。
また、素材を複雑な形状に成形する場合、熱間複動鍛造成形が行われるが、この熱間複動鍛造成形の場合、単動式プレス機にスライダー機構やリンク機構等の補助機構を設けることにより、1工程で2つ以上の動作を実施することができるようにしているが、1台の鍛造機械内に1つの工程ユニットを配置している(例えば、特許文献2参照)。
また、上下金型を加熱する場合、各金型にヒーターと熱電対とを設置し、各熱電対の出力に基づいて各々の制御部が各々の金型を独立して温度調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2518658号公報
【特許文献2】特開2005−103629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、車両部品開発は、環境問題や燃費規制により、軽量化を目的として従来の鉄材料に代えて、例えば、アルミニウム合金ダイキャストで生産された部品、例えば、ハウジングやカバー等が増加してきている。
しかし、自動車部品として使用されるハウジングやカバー等は、従来の鍛造技術に不向きな複雑な製品形状であるため、熱間鍛造によって安価に製造することができなかった。
【0007】
なお、自動車部品としてのハウジングやカバー等の複雑な製品を鍛造によって製造する熱間バリ出し鍛造の場合、特許文献1に記載されているように、同一鍛造装置内に1組(一対の上下金型)以上の金型を配置して鍛造を実施するが、熱間バリ出し鍛造後に鍛造製品の周囲の余分なバリをトリムする工程が必要になるため、作業工程が増え、また、材料歩留まりが悪くなるため、鍛造製品の製造コストが高くなるという問題があった。
また、鍛造製品にトリム痕(せん断面、破断面)が残るため、材料組成により、応力腐食割れ等の品質不良が発生する場合があった。
さらに、鍛造製品においてバリを排出するためのパーティングライン付近では、鍛造時に材料の塑性流動量が大きく、結晶粒粗大化が発生し、機械的強度が低下する場合があった。
【0008】
一方、従来の熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造では、図13(b)のフローチャート図に示すように、1台の鍛造機械内(例えば、加圧能力1000tf以下)に単独(上下1組の成形金型を配置する)の工程ユニットを配置した後に素材または粗材を加熱して熱間鍛造することを複数回繰り返して鍛造製品を得るため、加熱回数が多くなり、また、金型を複数回交換しなければならないため、生産コストが高くなるという問題を生じていた。
【0009】
また、各金型にヒーターと熱電対とを設置し、各熱電対の出力に基づいて各々の制御部が各々の金型を独立して温度調節しているので、鍛造開始から鍛造安定時までの途中や、鍛造トラブルによる停止からの復帰時に各金型の温度のばらつきが大きく、また、鍛造製品の仕上がり温度ばらつきも大きくなるため、寸法精度が安定しなかったり、鍛造潤滑性能が安定せず、製品にかじりや焼きつき等の鍛造欠陥が発生する場合があった。
【0010】
また、自動車部品としてのハウジングやカバー等の複雑な形状の製品を製造するために各工程専用の鍛造機械を備えて多量生産する手法がある。
しかし、近年の自動車のモデルチェンジは従来と比較してライフサイクルが短くなる傾向にあるため、製品も多量生産から多品種少量生産に変わってきており、工程専用の鍛造機械を個別に揃えると、設備費の回収が難しくなる。
また、専用の鍛造機械間で粗材を運搬する場合、粗材の温度低下が著しく、また、粗材温度もばらつくため、鍛造の途中で粗材を加熱炉によって再加熱しなければならないという問題があった。
【0011】
また、従来の、1台の鍛造機械内(例えば、加圧能力1000tf以下)に1つの工程ユニットを配置した複動鍛造では、素材に1度の複動鍛造を施すことによって所定の鍛造製品を得なければならず、素材に上下左右方向から同時に成形を実施するため、成形途中のメタルフローが複雑となり、ひけやしわやかぶり等の鍛造欠陥が発生したり、鍛造製品外周にバリ等が発生するという問題があった。
また、鍛造製品が複雑になればなる程、スライダー機構やリンク機構に大きな偏荷重がかかる場合があり、補助機構の耐久性の面でも問題が発生していた。
【0012】
この発明は、上述した状況に鑑みてなされたもので、図13(a)のフローチャート図に示すように、素材を一度加熱した後、熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造、熱間穴あけ鍛造、熱間複動鍛造から同種を含んで選ばれた2つ以上を同一鍛造機械内で実施することにより、従来よりも設計形状自由度が高く、また、機械的強度低下や応力腐食割れ等の問題の生じにくい鍛造製品を安価に製造することが可能な熱間鍛造による鍛造方法を提供するものである。
【0013】
この明細書中で「熱間密閉鍛造」とは、工程ユニット内で素材または粗材を加圧する工具による製品空間が成形途中で変化しない(上下金型部品は固定されたまま動作しない)鍛造方法を意味する。
そして、「熱間閉塞鍛造」とは、工程ユニット内で素材または粗材を加圧する途中で一度金型空間に素材または粗材が充満した後、金型内の製品空間が鍛造途中に変化する(上下金型部品がエアや油圧やバネによって鍛造加圧方向と同じ方向へ動作したり、素材または粗材の加圧力を受けた金型が鍛造加圧方向と同じ方向へ移動する)鍛造方法を意味する。
また、「熱間穴あけ鍛造」とは、素材または粗材に貫通した孔をあける鍛造方法を意味する。
さらに、「熱間複動鍛造」とは、素材または粗材を複雑な形状に成形する場合、単動式プレス機(例えば、加圧能力1000tf以下)にスライダー機構やリンク機構等の補助機構を設けることにより、1工程(鍛造機械の1サイクル稼動)で2つ以上の動作(鍛造機械加圧方向と異なる方向)を実施することができる鍛造方法を意味する。
また、「待機」とは、素材または粗材または鍛造製品を鍛造せず、待機させることを意味する。
次に、「素材」とは、鍛造加工が施されていない鍛造用素材を意味する。
そして、「粗材」とは、素材に1回以上の鍛造加工を施してはいるが、成形予定の鍛造製品になっていない中間製品を意味する。
また、「鍛造製品」とは、成形予定の形状が鍛造加工によって得られた最終製品を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、以下のような発明である。
(1)熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニットを、または、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニット、および、1つの待機工程ユニットを同一鍛造機械内に着脱可能に組み込んだ鍛造手段と、各工程ユニットの金型を加熱する複数の金型加熱手段と、各工程ユニットの金型の温度を検出する複数の金型温度検出手段と、鍛造製品の温度を検出する鍛造製品温度検出手段と、この鍛造製品温度検出手段および複数の金型温度検出手段の出力に基づいて複数の金型加熱手段を制御する金型温度制御手段と、を用い、金型温度制御手段に、成形予定の鍛造製品の温度を所定の範囲とし、この所定の範囲を満たすように各工程ユニットの各成形において温度管理がなされるようにした温度パターンを予め設定し、鍛造製品温度検出手段により鍛造製品温度を検出し、所定の温度範囲から外れたと判定したとき、その結果を金型温度制御手段へフィードバックし、金型温度制御手段に予め設定した温度パターンに基づいて、各金型の金型加熱手段への制御を切り替え、鍛造製品温度を所定の範囲内に制御する、ことを特徴とする熱間鍛造による鍛造方法。
(2)なお、上流の工程ユニットから下流の工程ユニットへ粗材または鍛造製品を搬送して鍛造するサイクルが10秒以内である、ことが好ましい。
(3)上流の工程ユニットから粗材または鍛造製品を取り出して下流の工程ユニットにセットする移送手段を設ける、ことが好ましい。
(4)工程ユニットの金型表面に設定量の潤滑剤を噴霧する潤滑剤噴霧手段を設ける、ことが好ましい。
(5)素材がアルミニウムまたはアルミニウム合金である、ことが好ましい。
(6)熱間穴あけ鍛造工程ユニットから発生する金属片を鍛造手段外へ排出する排出手段を設ける、ことが好ましい。
(7)成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニット、この各工程ユニットの金型温度制御手段にセットする温度制御条件を鍛造製品に対応した組み合わせ情報の一部として予め記憶する記憶手段と、各工程ユニットを予め備えて置く工程ユニットストック手段と、この工程ユニットストック手段から工程ユニットを取り出し、各工程ユニットの取付位置へ移動して工程ユニットをセットする工程ユニット移載手段と、記憶手段が記憶した組み合わせ情報に基づいて工程ユニット移載手段を制御する工程ユニット移載制御手段と、を設ける、ことが好ましい。
(8)成形予定の鍛造製品形状に合わせて工程ユニットを選択し、組み合わせて鍛造製品を製造する、ことが好ましい。
(9)(8)に記載の鍛造製品製造方法で製造する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
(1)の発明によれば、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニットを、または、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニット、および、1つの待機工程ユニットを同一鍛造機械内に着脱可能に組み込んだ鍛造手段と、各工程ユニットの金型を加熱する複数の金型加熱手段と、各工程ユニットの金型の温度を検出する複数の金型温度検出手段と、鍛造製品の温度を検出する鍛造製品温度検出手段と、この鍛造製品温度検出手段および複数の金型温度検出手段の出力に基づいて複数の金型加熱手段を制御する金型温度制御手段とを備えているので、同一鍛造手段内に2つ以上の工程ユニットを組み合わせて取り付けることにより、1回加熱した素材から複雑な形状の鍛造製品を安価に得ることが可能となるとともに、トリム工程を経ずに鍛造製品が得られるため、材料歩留まりが高く、複雑な形状の鍛造製品を安価に得ることができる。
また、金型温度制御手段に、成形予定の鍛造製品の温度を所定の範囲とし、この所定の範囲を満たすように各工程ユニットの各成形において温度管理がなされるようにした温度パターンを予め設定し、鍛造製品温度検出手段により鍛造製品温度を検出し、所定の温度範囲から外れたと判定したとき、その結果を金型温度制御手段へフィードバックし、金型温度制御手段に予め設定した温度パターンに基づいて、各金型の金型加熱手段への制御を切り替え、鍛造製品温度を所定の範囲内に制御するので、鍛造製品は応力腐食割れや粗大結晶粒が発生しないため、応力腐食割れや機械的強度の低下が発生せず、内部品質が良好で複雑な鍛造製品を得ることができる。
また、少量多品種の生産時に専用機を必要とせず、複雑な形状の鍛造製品に合わせて工程ユニットを交換できるため、効率よく安価な鍛造製品を得ることができる。
また、複雑な形状の鍛造製品に合わせて工程ユニットを交換でき、メタルフローを制御しながら逐次鍛造成形が実施できるため、ひけやかぶり等が発生しない複雑な形状の鍛造製品を得ることができる。
また、従来では実施できなかった製造工程中の鍛造製品の温度を監視できるため、鍛造製品の温度異常による品質不具合を早期に発見することができる。
また、鍛造製品の温度を測定しながら各工程ユニットの金型温度を、連携するようにパターン制御しながら調節することができるため、鍛造製品の寸法精度が安定し、鍛造製品のかじり、焼きつき等の外観不良や、内部品質不良発生を早期に防ぐことができる。
また、素材から1回の鍛造で鍛造製品を成形する場合、鍛造製品形状によって金型寿命が著しく短くなる場合があるが、鍛造工程を複数回に分けて鍛造製品を成形しているので、金型寿命を長くすることができる。
(2)上流の工程ユニットから下流の工程ユニットへ粗材または鍛造製品を搬送して鍛造するサイクルを10秒以内にしたので、最終工程の鍛造時の鍛造製品温度低下や温度ばらつきを小さくすることができるため、鍛造製品の寸法精度や孔(穴)あけ寸法精度が向上するとともに、金型加熱手段による温度制御をより確実に実現することができる。
(3)上流の工程ユニットから粗材または鍛造製品を取り出して下流の工程ユニットにセットする移送手段を設けたので、安全性を向上させて省力化をはかることができるため、安価な鍛造製品を得ることができる。
また、鍛造機械が1サイクル稼動する時、一度に工程ユニット数の鍛造成形が実施できるため、安価な鍛造製品を得ることができる。
(4)工程ユニットの金型の表面に設定量の潤滑剤を噴霧する潤滑剤噴霧手段を設けたので、省力化をはかることができるため、安価な鍛造製品を得ることができる。
また、素材の表面積と鍛造製品の表面積との比があまりに大きすぎる場合、素材を大変形させる鍛造によって現れる新生面と金型との間で焼きつきが発生するため、各工程ユニットに潤滑剤を噴霧しながら鍛造することにより、鍛造製品表面にかじり等が発生しにくくなる。
(5)素材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるので、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鍛造製品を得ることができる。
(6)熱間穴あけ鍛造工程ユニットから発生する金属片(廃材)を鍛造手段(鍛造装置、鍛造機械)外へ排出する排出手段を設けたので、排出手段から排出される金属片を一個所に集めることにより、金属片(廃材)の再利用がはかれることにより、安価な鍛造製品を得ることができる。
(7)成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニット、この各工程ユニットの金型温度制御手段にセットする温度制御条件を鍛造製品に対応した組み合わせ情報の一部として予め記憶する記憶手段と、各工程ユニットを予め備えて置く工程ユニットストック手段と、この工程ユニットストック手段から工程ユニットを取り出し、各工程ユニットの取付位置へ移動して工程ユニットをセットする工程ユニット移載手段と、記憶手段が記憶した組み合わせ情報に基づいて工程ユニット移載手段を制御する工程ユニット移載制御手段とを設けたので、生産する鍛造製品の変更時における工程ユニット(金型)交換にかかる時間を減らすことができ、少量多品種生産によって工程ユニット(金型)交換頻度が増えた場合、工程ユニット(金型)交換頻度に迅速に対応することができる。
また、工程ユニット(金型)交換にかかる時間を減らすことができることにより、単位時間あたりの製造数量に及ぼす影響を少なくすることができ、生産する品種と製造数量とが増大し、製造コストを安価にすることができる。
(8)成形予定の鍛造製品形状に合わせて工程ユニットを選択し、組み合わせて鍛造製品を製造するので、複雑な形状の鍛造製品を安価に得ることができる。
(9)(8)に記載の鍛造製品製造方法で鍛造製品を製造したので、複雑な形状の鍛造製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例である熱間鍛造装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】ヒーターの概略構成を示す説明図である。
【図3】(a)は素材または粗材または鍛造製品をトランスファーのホルダーでクランプした状態を示す説明図、(b)はホルダーでクランプした素材または粗材または鍛造製品を工程ユニット間へ移動させて停止した状態を示す説明図である。
【図4】上金型の側面に潤滑剤を噴霧することが可能な潤滑剤噴霧装置の一例を示す説明図である。
【図5】熱間密閉鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
【図6】(a),(b)は熱間閉塞鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
【図7】熱間穴あけ鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
【図8】熱間複動鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
【図9】(a),(b),(c)は熱間複動鍛造を実施する他の工程ユニットの概略構成図である。
【図10】待機を実施する工程ユニットの概略構成図である。
【図11】(a)〜(c)は金型温度制御装置(金型温度制御手段)の概略構成、各金型の温度調整パターンを示す説明図である。
【図12】この発明の他の実施例である熱間鍛造装置の概略構成を示す説明図である。
【図13】(a),(b)はこの発明の熱間鍛造装置と、従来の熱間鍛造装置との工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に用いる素材(鍛造用素材)は、公知の鋳造法によって鋳造された鋳造塊素材、鋳造ビレット素材、昭和プロセス(SHOWA PROCESS)法によって製造された素材(鍛造用連続鋳造丸棒用素材)、または、前記素材(鋳造塊素材、鋳造ビレット素材、鍛造用連続鋳造丸棒用素材)を押し出すことによって得られた素材(鍛造用押出素材)等を、鍛造製品の体積、または、鍛造製品と、穴あけ工程によって除かれる金属片との合計体積と同一の体積に切断した切断品を一例として使用する。
【0018】
この発明における熱間密閉鍛造、熱間閉塞鍛造、熱間穴あけ鍛造、熱間複動鍛造の工程に用いる金属材料としては、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)およびこれらを主成分とする合金を挙げることができる。
そして、アルミニウム合金であれば、Al−Mg−Si系合金、Al−Cu系合金、Al−Si系合金、Al−Zn−Mg系合金等を挙げることができる。
【0019】
この発明で用いるアルミニウム合金は、気体加圧式ホットトップ鋳造法で連続鋳造された丸棒素材(例えば、ショウティック(SHOTIC)材)を切断した切断品で、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ、塑性加工による結晶粒の異方性がないため、より好ましい。
また、素材としてアルミニウム合金を鋳造した鋳造ビレットの押出素材や、引抜材の切断品、鋳造塊からの切削材等も用いることができる。
【0020】
この発明では、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニットを、または、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニット、および、1つの待機工程ユニットを同一鍛造機械内に着脱可能に組み込んだ鍛造手段と、各工程ユニットの金型を加熱する複数の金型加熱手段と、各工程ユニットの金型の温度を検出する複数の金型温度検出手段と、鍛造製品の温度を検出する鍛造製品温度検出手段と、この鍛造製品温度検出手段および複数の金型温度検出手段の出力に基づいて複数の金型加熱手段を制御する金型温度制御手段とを備えた熱間鍛造装置で、上記した素材を少なくとも2回鍛造することにより、成形予定の鍛造製品を得ることができる。
【0021】
この発明における熱間密閉鍛造または熱間閉塞鍛造での鍛造加圧方向は、材料切断面と直角である。
鍛造加圧方向が材料切断面と平行である場合、熱間密閉鍛造または熱間閉塞鍛造中に素材または粗材の塑性流動速度や塑性流動方向が原因となってかぶり等の鍛造欠陥が生じるため、好ましくない。
この発明における熱間穴あけ鍛造では、鍛造加圧方向と平行の孔をあけた後の金属片を鍛造手段(鍛造装置)外へ排出経路(排出手段)で排出する。
この発明における熱間複動鍛造では、鍛造加圧方向と垂直となる加圧方向は1工程ユニット内に1機構とする。
そして、鍛造加圧方向と垂直となる加工がn箇所以上の場合、n工程ユニットで加圧することとする。
また、鍛造加圧と同時に鍛造加圧方向と垂直な方向に加圧せず、鍛造加圧方向と垂直な方向のみ加圧してもよい。
なお、鍛造加圧方向と垂直となる加圧方向の金型は、リンク機構やスライダー機構、油圧機構等により、制御することとする。
ただし、リンク機構やスライダー機構を用いた熱間複動鍛造を実施する場合、必ず工程ユニットを2個以上用い、リンク機構やスライダー機構、油圧機構に過負荷のかからない鍛造工程設計を実施する。
この発明における待機工程は、素材または粗材または鍛造製品の温度が低下しにくいこととする。
【実施例】
【0022】
図1はこの発明の一実施例である熱間鍛造装置の概略構成を示す説明図である。
図1において、熱間鍛造装置(鍛造手段)11を構成する、図示を省略した1台の鍛造機械内にクランプされるロアプレート12aとアッパプレート12bとの間には、少なくとも2本以上のガイドポスト12cを設ける。
このロアプレート12aとアッパプレー12bとには、前述した5種類の工程ユニット13から同種を含んで選んだ少なくとも2つ以上の工程ユニット13を取り付け、取り外しができる構造とする。
図1に示す熱間鍛造装置11では、3つの工程ユニット13を設置できる構成とした。
なお、工程ユニット13が2つの場合は、前述した待機工程ユニットを選択から除外する。
【0023】
各工程ユニット13の鍛造金型に潤滑剤を噴霧するための潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)14をロアプレート12aおよび/またはアッパプレート12bに取り付ける。
また、サーボモータによって3次元位置制御が可能なトランスファー(移送機構、移送手段)15に補助的な潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)14Aを固定する。
トランスファー15は、素材をクランプして熱間鍛造装置11内へ運搬したり、素材または粗材または鍛造製品をクランプして工程ユニット13間を運搬したり、鍛造製品を熱間鍛造装置11外へ運搬する。
また、複雑な鍛造製品等を運搬する場合、各工程ユニット13に産業用汎用ロボット(移送手段)を設置し、この産業用汎用ロボットで鍛造製品等を移動させてもよい。
また、粗材や鍛造製品は、鍛造機械のノックアウト機構によって金型から排出される。
【0024】
各工程ユニット13には、上下金型を加熱することができるヒーター(金型加熱手段)(図示省略)が取り付けられている。
そして、各ヒーターは、各工程ユニット13に取り付けられた金型の温度を検出する複数のサーモカップル(金型温度検出手段)の出力、および、例えば、最終の工程ユニット13から排出(取り出)された鍛造製品の温度を検出する非接触式温度計(鍛造製品温度検出手段)の検出温度結果に基づき、金型温度制御装置(金型温度制御手段)で加熱制御される。
【0025】
なお、図1において、潤滑剤噴霧装置14,14Aは、中央の工程ユニット13に対応するもののみが図示され、左右の工程ユニット13に対応するものが図示を省略されている。
また、最後の工程ユニット13から排出される鍛造製品の温度測定をする非接触式温度計も図示を省略されている。
【0026】
図2はヒーターの概略構成を示す説明図である。
なお、図2には、左側と右側とに別々のヒーターが図示されている。
図2において、ヒーター(金型加熱手段)17は、鍛造製品の大きさによって決定されるダイス31の外周に巻かれるリングヒーター17aや、鍛造加圧される素材または粗材の近くに位置するように、ダイス31に埋設する棒状ヒーター17b等を使用する。
【0027】
図3(a)は素材または粗材または鍛造製品をトランスファーのホルダーでクランプした状態を示す説明図、図3(b)はホルダーでクランプした素材または粗材または鍛造製品を工程ユニット間へ移動させて停止した状態を示す説明図である。
図3において、トランスファー15は、素材または粗材または鍛造製品42をクランプして搬送するホルダー15aを備えている。
【0028】
素材または粗材または鍛造製品42をトランスファー15のホルダー15aでクランプし、鍛造機械が上死点であることを確認すると、各潤滑剤噴霧装置14Aから各々設定された鍛造用潤滑剤を各工程ユニット13の上下の金型に噴霧する。
【0029】
図4は上金型の側面に潤滑剤を噴霧することが可能な潤滑剤噴霧装置の一例を示す説明図である。
図4に示す潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)14Bは、鍛造製品形状がカップ状で、かつ、カップの内面を上金型(パンチ)32で成形する場合に、上金型32側面に潤滑剤を噴霧する。
【0030】
潤滑剤が金型に噴霧された後、工程ユニット間へ移動した素材または粗材または鍛造製品が、トランスファーによって次の工程ユニットの下型へ投入される。
【0031】
素材または粗材または鍛造製品が金型から取り出され、潤滑剤を噴霧し、粗材を次の工程ユニットへ投入して鍛造し、粗材または鍛造製品が金型から取り出される鍛造1サイクルの時間を10秒以内とし、10秒以内で運搬が可能であるトランスファーを使用する。
なお、移送手段として、10秒以内の1サイクルで素材または粗材または鍛造製品を工程ユニットから工程ユニットへと搬送可能な産業用汎用ロボットを配置してもよい。
【0032】
図5は熱間密閉鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
図5において、熱間密閉鍛造ユニット13Aは、パンチ51と、ダイス52と、ブッシュ53と、ノック54と、ノックピン55とが図示を省略した付属部品とともに図示を省略したホルダーに組み付けられている。
この熱間密閉鍛造ユニット13Aの下金型を構成するダイス52、ブッシュ53は、鍛造中に移動せず、固定されている。
そして、素材または粗材41は、パンチ51によって鍛造され、ノックピン55で押されるノック54によってダイス52から排出され、トランスファーによってクランプされる。
【0033】
図6(a),(b)は熱間閉塞鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
図6において、熱間閉塞鍛造工程ユニット13Bは、パンチ61と、ダイス62と、ブッシュ63と、閉塞機構64と、ノック65と、ノックピン66とが図示を省略した付属部品とともに図示を省略したホルダーに組み付けられている。
この熱間閉塞鍛造ユニット13Bの下金型を構成するダイス62、ブッシュ63は、鍛造中に移動せず、固定されている。
そして、閉塞機構64は、バネやガスや油圧により、鍛造加圧とは逆方向に力が加わっている。
すなわち、閉塞機構64は、鍛造加圧方向と逆方向の力(背圧力)を発するようにバネ機構やガス圧機構や油圧機構などを配置し、受圧板などを介して背圧力を金型または、素材または粗材41へ付勢する機構のことである。
上下金型による鍛造成形途中で、図6(a)に示すように、上下金型内に素材または粗材41が充満した後、素材または粗材41がさらに鍛造加圧され、閉塞機構64の鍛造加圧と逆方向の鍛造加圧力が閉塞機構64の鍛造加圧よりも大きくなると、素材または粗材41を介して閉塞機構64が鍛造加圧方向に移動する。
すなわち、閉塞機構64の背圧力が鍛造加圧より大きい間は、閉塞機構64は所定の位置に保持された状態で素材または粗材41が充満され、閉塞機構64の背圧力より鍛造加圧が大きくなると、鍛造加圧力により閉塞機構64全体が図6(b)では下方に押されて移動しながら素材または粗材41が充満することになる。
この熱間閉塞鍛造ユニット13Bをこの発明の温度パターン制御と併用することで、複数の成形工程中に熱間閉塞鍛造ユニット13Bを配置しても、欠肉等の成形不良の発生を抑えることができる。
鍛造機械の下死点において鍛造終了した粗材または鍛造製品41は、ノックピン66で押されるノック65によってダイス62から排出され、トランスファーによってクランプされる。
【0034】
図7は熱間穴あけ鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
図7において、熱間穴あけ鍛造工程ユニット13Cは、パンチ71と、ダイス72と、ノック73と、ノックピン74とが図示を省略した付属部品とともに図示を省略したホルダーに組み付けられ、孔あけで発生する金属片(廃材)を鍛造機械外へ排出する排出経路(排出手段)76とで構成されている。
この熱間穴あけ鍛造工程ユニット13Cで孔あけを実施することによって発生する金属片(廃材)は、排出経路76と、この排出経路76に連なるように鍛造機械に設けられた排出経路(排出手段)とによって熱間鍛造装置外へ排出される。
鍛造機械が下死点において鍛造終了した素材または粗材41は、ノックピン74で押されるノック73によってダイス72から排出され、トランスファーによってクランプされる。
【0035】
図8は熱間複動鍛造を実施する工程ユニットの概略構成図である。
図8において、熱間複動鍛造工程ユニット13Dは、パンチ81と、ダイス82と、ブッシュ83と、ノック84と、ノックピン85と、複動パンチ86と、緩衝機構87とが図示を省略した付属部品とともに図示を省略したホルダーに組み付けられている。
この熱間閉塞鍛造ユニット13Dの下金型を構成するダイス82、ブッシュ83は、鍛造中に移動せず、固定されている。
そして、パンチ81は、バネやガス圧機構や油圧機構などやそれらの組み合わせで構成される緩衝機構87を介して下金型に押さえつけられる。
そして、油圧機構やリンク機構やスライダー機構によって鍛造加圧方向と直角方向に作動する複動パンチ86により、鍛造加圧方向と垂直方向の素材または粗材41の塑性流動を制御することができる。
この熱間複動鍛造ユニット13Dをこの発明の温度パターン制御と併用することで、複数の成形工程中に熱間複動鍛造ユニット13Dを配置しても、欠肉等の成形不良の発生を抑えることができる。
鍛造機械が下死点において鍛造終了した素材または粗材41は、ノックピン85で押されるノック84によってダイス82から排出され、トランスファーによってクランプされる。
【0036】
図9(a),(b),(c)は熱間複動鍛造を実施する他の工程ユニットの概略構成図である。
図9において、熱間複動鍛造工程ユニット13Eは、パンチ91と、ダイス92と、このダイス92の上下動を案内するハウジング93と、このハウジング93内の下側に設置されたシリンダ94と、ハウジング93内のシリンダ94上に載置された受圧板95と、この受圧板95の上側に取り付けられ、または、受圧板95の上側に一体的に設けられ、ダイス92の成形空間内へ突入するピン96と、シリンダ94によって上下動を案内される油圧板97と、この油圧板97を、油圧による鍛造方向と逆方向の背圧力で支持する閉塞機構98と、受圧板95に設けられた複数の孔を貫通し、油圧板97上にダイス92を支持する複数のダイスピン99とが図示を省略した付属部品とともに図示を省略したホルダーに組み付けられている。
この熱間複動鍛造ユニット13Eを構成するハウジング93、シリンダ94、受圧板95およびピン96は、鍛造中に移動せず、固定されている。
【0037】
図9(a)に示すように、閉塞機構98が動作することにより、油圧板97およびダイスピン99を介してダイス92を鍛造開始位置(例えば、プレス下死点でのダイス位置より上方の定位置)に保持する。
そして、ダイス92内に素材または粗材41を投入すると、素材または粗材41は、ダイス92の位置によって位置決めされる。
このとき、閉塞機構98の背圧力がダイス92、ダイスピン99、素材または粗材41を支持するのに充分な場合、素材または粗材41は、ピン96から離れた上方にダイス92で支持される。
そして、鍛造機械が動作することにより、パンチ91が素材または粗材41を介してダイス92を押し、油圧板97を支持する力よりもパンチ91が押す力の方が大きくなると、図9(a)から図9(b)に示すように、ダイス92がダイスピン99を介して油圧板97を押し下げるとともに、ダイス92が受圧板95に当接するパンチ91の下死点になる状態までダイス92が下側へ移動する。
その結果、パンチ91、ダイス92、受圧板95およびピン96で形成される成形空間内に素材または粗材41が成形を進行させながら流動し、穴あき製品を安定して成形することができる。
鍛造機械が下死点において鍛造終了した素材または粗材41は、図示を省略したノックピンで押されるノックによってダイス92から排出され、トランスファーによってクランプされる。
【0038】
なお、ダイス92内に素材または粗材41を投入したとき、閉塞機構98の背圧力がダイス92、ダイスピン99、素材または粗材41を支持するのに不充分な場合、図9(c)に示すように、素材または粗材41はピン96で直接支持される。
この状態で鍛造を実施すると、ピン96に鍛造荷重がかかり、ピン96が折れる可能性があるので、図9(c)のセット状態で穴あき製品を成形することは困難であり、穴あき製品を成形するのは好ましくない。
【0039】
この熱間複動鍛造工程ユニット13Eは、閉塞機構98の油圧力の一部を利用し、ダイス92を鍛造開始前は上方で保持し(例えば、プレス下死点でのダイス位置より上方の定位置にダイス92の位置をピン等で制御する)、鍛造時に鍛造加圧方向と同じ方向にダイス92をプレス下死点でのダイス位置に移動させることにより、鍛造用素材の位置や鍛造製品の塑性流動を複雑に制御することも可能である。
また、鍛造製品の形状や用途に合わせ、例えば、油圧の大きさを変更することにより、ダイス92の下方への移動速度を変更したり、例えば、プレスのクランク角度に連動させて(すなわち、上金型の下降位置に連動させて、成形過程に連動させて)油圧の大きさを変化させることにより、ダイス92の下方への移動速度を変更したりすることにより、より複雑な素材の塑性流動を制御でき、複雑な形状の鍛造製品を成形することが可能である。
この熱間複動鍛造ユニット13Eをこの発明の温度パターン制御と併用することで、複数の成形工程中に熱間複動鍛造ユニット13Eを配置しても、欠肉等の成形不良の発生を抑えることができる。
【0040】
図10は待機を実施する工程ユニットの概略構成図である。
この待機工程ユニット13Fは、素材または粗材または鍛造製品42を鍛造せずに待機させるため、固定ダイス101の上に素材または粗材または鍛造製品42がトランスファーによって載せられ、固定ダイス101の上から素材または粗材または鍛造製品42がトランスファーによって移動させられる。
また、素材または粗材または鍛造製品42の温度低下を防ぐため、待機させる固定ダイス101にヒーター17を埋設させてもよい。
【0041】
図11(a)〜(c)は金型温度制御装置(金型温度制御手段)の概略構成、各下金型の温度調整パターンを示す説明図である。
なお、各上金型も同様の温度制御を実施してもよい。
図11(a)において、第1工程ユニット131には、金型を加熱する第1ヒーター(金型加熱手段)171と、下金型の温度を検出する第1サーモカップル(金型温度検出手段)181とが設けられている。
また、第2工程ユニット132には、金型を加熱する第2ヒーター(金型加熱手段)172と、下金型の温度を検出する第2サーモカップル(金型温度検出手段)182とが設けられている。
また、第3工程ユニット133には、金型を加熱する第3ヒーター(金型加熱手段)173と、下金型の温度を検出する第3サーモカップル(金型温度検出手段)183とが設けられている。
そして、非接触式温度計(鍛造製品温度検出手段)16は、最終の工程ユニットである第3工程ユニット133から取り出した鍛造終了後の鍛造製品43の温度を検出するものである。
【0042】
図11(b)において、金型温度制御装置(金型温度制御手段)19は、第1制御部201と、第2制御部202と、第3制御部203と、シーケンサ21とで構成されている。
そして、第1制御部201は、第1サーモカップル181で測定した第1検出温度値PV1に基づき、第1ヒーター171の温度を制御する第1温度設定値SP1を、第1ヒーター171へ出力する。
また、第2制御部202は、第2サーモカップル182で測定した第2検出温度値PV2に基づき、第2ヒーター172の温度を制御する第2温度設定値SP2を、第2ヒーター172へ出力する。
また、第3制御部203は、第3サーモカップル183で測定した第3検出温度値PV3に基づき、第3ヒーター173の温度を制御する第3温度設定値SP3を、第3ヒーター173へ出力する。
また、シーケンサ21は、非接触式温度計16で検出した鍛造製品43の鍛造製品検出温度値Tが設定値Sを上回ると、第1〜第3ヒーター171〜173で金型を加熱するのを停止させる、すなわち、第1〜第3ヒーター171〜173への通電をオフにする。
また、シーケンサ21は、第1〜第3ヒーター171〜173で各金型を加熱する、図11(c)に示す複数の加熱パターンP1〜P5を記憶しており、経時変化から加熱パターンP1〜P5を自動的に選択したり、タッチパネル等の入力部から加熱パターンP1〜P5を手動で選択することができる。
【0043】
図11(c)において、加熱パターンP1は、各工程ユニット131〜133の金型が同一温度となるように、各ヒーター171〜173の各温度設定値SP1〜SP3を同一にする。
また、加熱パターンP2では、第1工程ユニット131から第3工程ユニット133へと金型の温度が順次高くなるように、第1ヒーター171の第1温度設定値SP1から第3ヒーター173の第3温度設定値SP3へと順次高くする。
また、加熱パターンP3では、第2工程ユニット132の金型の温度を第1および第3工程ユニット131,133の金型の温度よりも高くなるように、第2ヒーター172の第2温度設定値SP2を第1および第3ヒーター171,173の各温度設定値SP1,SP3よりも高くする。
また、加熱パターンP4では、第1および第2工程ユニット131,132の金型の温度を第3工程ユニット133の金型の温度よりも高くなるように、第1および第2ヒーター171,172の各温度設定値SP1,SP2を第3ヒーター173の第3温度設定値SP3よりも高くする。
また、加熱パターンP5では、第2工程ユニット132の金型の温度を第1および第3工程ユニット131,133の金型の温度よりも低くなるように、第2ヒーター172の第2温度設定値SP2を第1および第3ヒーター171,173の各温度設定値SP1,SP3よりも低くする。
なお、図11(c)の縦軸は設定温度値SPを示し、図11(c)の横軸は各工程ユニット131〜133の位置を示している。
【0044】
以下に各加熱パターンP1〜P5の具体的な設定組合せを例示しながら説明する。
加熱パターンP1は、各温度設定値SP1〜SP3を同じに設定した。
この加熱パターンP1は、素材の加工率が第1工程から第3工程までほぼ同等である場合や、鍛造安定期(鍛造開始からある程度の時間が経過し、金型温度が一定になった場合)に設定するのに好適なパターンである。
加熱パターンP2は、SP1<SP2=1.1SP1〜1.5SP1で、SP1<SP3=1.3SP1〜2SP1で、かつ、SP2<SP3に設定した。
この加熱パターンP2は、鍛造前後の製品部表面積が第1工程から第3工程まで徐々に大きくなる場合に設定するのに好適なパターンである。
加熱パターンP3は、第1、第2工程で鍛造成形を実施し、第3工程で穴明け加工等や第2工程からの加工率が小さい仕上げ加工等を行う場合に好適である。
加熱パターンP4は、鍛造安定期前の金型表面温度が一定になる前(鍛造開始時)に好適なパターンである。
加熱パターンP5は、第1、第3工程で使用する潤滑剤と第2工程で使用する潤滑剤が異なる場合に好適なパターンの一例である。
この加熱パターンP5は、潤滑剤の種類別に金型設定温度を変更することにより、第1〜第3工程まで、鍛造加工率に応じた最適な潤滑剤を使用することができる。
【0045】
この加熱パターンP1〜P5は、少量多品種のいろいろな形状の鍛造製品や、鍛造製品の大きさ、鍛造する前の素材温度が異なったり、鍛造途中で何らかの理由によって鍛造を中断した後に鍛造を再開するときに各工程ユニット131〜133の金型温度が変化する場合を考慮して、シーケンサ21の入力部を操作することにより、予め最適と思われるものを選択したり、または、鍛造製品の成形不良状況を検出しながら成形の温度条件パターンを鍛造の途中で最適と思われるものに変更することができる。
また、シーケンサ21の入力部を操作することにより、加熱パターンを新たなものに変更したり、新たな加熱パターンを追加することもできる。
このように各工程ユニット131〜133の金型温度を調整することにより、例えば、鍛造開始から金型温度がある一定温度に安定するまでの間や、鍛造トラブルによって鍛造を中断した後に鍛造を再開して金型温度がある一定温度に定定するまでの鍛造製品温度のばらつき範囲を小さくすることができ、従来の鍛造製品よりも寸法精度のばらつきが小さく、また、鍛造製品への孔あけを実施する場合、孔あけ精度のばらつきの小さな鍛造製品を得ることが可能になる。
【0046】
この発明の、複数の成形工程の途中の各成形においての温度管理が必要であるが、この発明で用いる各工程ユニット131〜133においては、排出する鍛造製品(最終製品)43の温度を所定の範囲内に制御することが重要である。
例えば、まず、鍛造製品(最終製品)43の温度管理範囲を所定の範囲に設定し、次に、それを満たすように途中の成形品の温度管理を任意に設定することができ、これらを実現できように温度パターンを各工程ユニット131〜133に設定することが好ましい。
このように温度を管理する場合、例えば、鍛造製品温度検出手段により鍛造製品温度を検出し、所定の温度範囲から外れたと判定したとき、その結果が金型温度制御装置(金型温度制御手段)へフィードバックされ、金型温度制御装置(金型温度制御手段)に予め設定された温度パターン変化シーケンスが作動し、各金型の金型加熱手段への制御が切り替わり、その結果、鍛造製品温度を所定の範囲内に制御することができる。
または、金型温度検出手段により各金型温度を検出し、所定の温度パターンから外れたと判定したとき(例えば、経時的に熱が蓄積されるなどの要因で金型の温度が上昇した場合)、その結果が金型温度制御装置(金型温度制御手段)へフィードバックされ、金型温度制御装置(金型温度制御手段)に予め設定された温度パターン変化シーケンスが作動し、各金型の金型加熱手段への制御が切り替わり、その結果、鍛造製品温度を所定の範囲内に制御することができる。
上記のように、温度パターンを設定することで、鍛造製品は、ダレ等の鍛造欠陥が抑止され、鍛造製品の寸法安定性が確保され、機械的特性が鍛造製品の用途として十分な特性を有するものが容易に得られる。
【0047】
次に、動作について説明する。
まず、所定の温度まで加熱した素材をトランスファーで熱間鍛造装置の第1工程ユニットへの途中まで搬送し、停止させる。
そして、潤滑剤の噴霧が完了すると、第1工程ユニットへの途中で停止していた素材がトランスファーによって第1工程ユニットの下金型まで搬送され、下金型に投入されて熱間鍛造が行われる。
なお、トランスファーは、下金型に素材を投入した後、元の位置へ戻る。
次に、熱間鍛造が施され、ベッドノックアウトで押されたノックアウトピンによって排出される粗材は、金型から無理なく排出できる位置まで上下金型に接触しないようにノックで最低量がリフトアップされる。
この状態でパンチが上死点で停止(熱間鍛造装置が上死点で停止)し、リフトアップされた粗材はトランスファーによって第2工程ユニットへの中間位置まで搬送されて停止する。
上述した動作が順次第3工程ユニットまで行われた後、第3工程ユニットから取り出された鍛造製品は、トランスファーによって熱間鍛造装置外へ搬送される。
なお、第3工程ユニットから取り出された鍛造製品の温度が非接触式温度計(鍛造製品温度検出手段)によって検出され、この検出温度に基づいて各工程ユニットの金型の温度が制御される。
そして、上死点から鍛造を開始し、次の鍛造が開始されるまでの所要時間は10秒以内とする。
また、鍛造製品の搬送はトランスファーではなく産業用ロボットによる搬送でもよい。
【0048】
鍛造後に粗材または鍛造製品をトランスファーや産業用ロボットで取り出した後、各々の上下金型の鍛造成形部位に水溶性黒鉛潤滑剤あるいは油性潤滑剤を潤滑剤噴霧装置から噴霧する。
上金型の側面が鍛造製品の表面となる場合、上金型側面に潤滑剤を噴霧することができるように、図4の潤滑剤噴霧装置14Bを設置する。
このように熱間鍛造装置、トランスファー、潤滑剤噴霧装置を動作させて熱間鍛造を行わせる制御は、制御装置(制御手段)によって行われる。
【0049】
上記した鍛造は、素材切断面が鍛造加圧方向に直角となるように工程ユニットに素材投入し、鍛造成形を行う。
この素材は、鍛造加圧中に素材が座屈しない最小径にするのが望ましい。
熱間鍛造装置の中央部では、プレスの加圧能力を最も必要とする成形が好ましい。
また、鍛造製品精度を最も必要とする成形も好ましい。
鍛造製品に孔をあける場合、温度によって孔あけ基準面の寸法が変化するため、孔あけ精度を必要とする場合、孔あけ前の温度をある温度範囲に保つことが好ましい。
熱間複動鍛造工程ユニットでは、素材または粗材に鍛造加圧方向と直角となる方向から成形を行う。
素材を第1工程で熱間複動鍛造するよりも、1回以上熱間密閉鍛造あるいは熱間閉塞鍛造を実施した粗材に複動鍛造を実施する方が、メタルフローの制御をはかったり、リンク機構やスライダー機構の損傷防止をはかる上でより好ましい。
各工程ユニットで発生する鍛造加圧を全て加えた鍛造荷重が、鍛造機械の許容加圧荷重よりも小さい場合、各工程ユニット全てに素材もしくは粗材を投入してもよい。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に、図1に示した熱間鍛造装置11で製造する鍛造製品と、選定した工程ユニットの配置とを示す。
素材として、連続鋳造法の一種である昭和プロセス(SHOWA PROCESS)で製造されたAl−Si系合金(アルミニウム合金)の連続鋳造棒を円柱状に切断した切断品を使用した。
そして、素材は、鍛造前に素材加熱炉で指定した設定温度に加熱した。
また、素材は、素材と粗材との表面積比から鍛造前に水溶性黒鉛潤滑剤を素材に塗布した方が好ましいと判断した場合に限って潤滑剤を塗布した。
【0052】
表1における鍛造製品形状Aは、中心に孔のあるドーナツ状で、上面に放射状のリブ状部があり、そのリブ状部外周部に異形のフランジ状部のある形状である。
また、鍛造製品形状Bは、円柱状部分の下側中心に下側へ窄む円錐状柱が連なり、リブ状部または溝、フランジ状部および孔のない形状である。
この鍛造製品形状Bを鍛造する場合、第3工程ユニットを待機工程ユニットとしたが、待機工程ユニットを第1工程ニットとし、他の工程ユニットを順次繰り下げてもよい。
また、鍛造製品形状Cは、カップ状で、カップ下側外周に周方向へ肉盛り部が一定間隔であり、カップ内周面に周方向へリブ状部が一定間隔であるものの、フランジ状部および孔のない形状である。
また、鍛造製品形状Dは、円柱の外周に周方向へ肉盛り部が一定間隔であり、上面に開放する溝、この溝の内側に位置して上面に開放する複数のリブ状があり、上側外周にフランジ状部があるものの、孔のない形状である。
また、鍛造製品形状Eは、フランジ付カップ状で、下側外周にフランジ状部があり、底の中心に孔があるものの、リブ状部または溝のない形状である。
この鍛造製品形状Eの場合、表1に工程ユニットを4つにした場合も記載した。
【0053】
表1に示すように、同一鍛造装置内に2組以上の工程ユニットを組み込み、各工程ユニットに対応する鍛造工程が5種類の鍛造工法から選ばれる組み合わせで、1回の加熱した素材から複雑な形状の鍛造製品を安価に得ることが可能となった。
また、鍛造製品は応力腐食割れや粗大結晶粒が発生しないため、機械的特性が良好な鍛造製品を得ることができた。
また、従来、鋳造やダイキャストで発生を抑制することが困難な材料欠陥である鋳巣が鍛造製品内部にないため、構造部材、耐圧部材としての能力向上が得られた鍛造製品を製造することができた。
【0054】
鍛造製品の温度を非接触式温度計で検出し、鍛造製品の設定温度範囲から鍛造製品の温度が下側へ外れないように、各工程ユニットに配置したヒーターによって鍛造後の粗材または鍛造製品をある温度設定範囲に収めるよう、ヒーターの加熱パターンを制御する。
鍛造製品の温度設定は、ダレ等の鍛造欠陥の抑止、鍛造製品の寸法安定性、鍛造製品の機械的特性等に影響を及ぼすため、鍛造製品として十分な特性が得られる所定の温度範囲とすることが望ましい。
【0055】
図12はこの発明の他の実施例である熱間鍛造装置の概略構成を示す説明図であり、図1〜図11と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
図12において、工程ユニットストック装置(工程ユニットストック手段)23は、同種の工程ユニットを含めて各工程の工程ユニットを予め備えて置く部分である。
工程ユニット移載装置(工程ユニット移載手段と)25は、工程ユニットストック装置23から所定の工程ユニットを取り出し、その工程ユニットの取付位置へ移動して工程ユニットを鍛造機械(熱間鍛造装置11)にセットしたり、鍛造機械(熱間鍛造装置11)から工程ユニットを取り出し、工程ユニットストック装置23へ返却するものである。
制御装置(制御手段)26は、内蔵した記憶装置(記憶手段)27が記憶している組み合わせ情報に基づいて工程ユニット移載装置25を制御する工程ユニット移載制御装置(工程ユニット移載制御手段)、熱間鍛造装置11を制御する制御装置(制御手段)、トランスファーを制御する移送制御装置(移送制御手段)、潤滑剤噴霧装置を制御する潤滑剤噴霧制御装置(潤滑剤噴霧制御手段)、金型温度制御装置(金型温度制御手段)などを兼ねている。
そして、記憶装置27は、成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニット、成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニットの金型温度制御装置にセットする温度制御条件を鍛造製品に対応した組み合わせ情報の一部として予め記憶するものである。
なお、潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)、トランスファー(移送機構、移送手段)、非接触式温度計(鍛造製品温度検出手段)は、先の実施例と同じなので、図示が省略されている。
【0056】
成形予定の鍛造製品が決まると、その形状の特徴、複雑さに対応する鍛造製品の形状を得るため、必要な複数に分割した成形工程、成形順序、各成形工程における成形条件(鍛造荷重条件、金型温度条件、潤滑剤噴霧条件)が設計される。
その結果、各成形工程ではその工程での成形内容に応じて金型の種類が決まり、それに対応した工程ユニットが取り付けられる。
すなわち、成形予定の鍛造製品に対応させた工程ユニット位置に取り付ける工程ユニットが決まることになる。
一方、各成形工程ではその工程での成形内容に応じて金型の温度条件が決まり、それに対応して金型温度条件を各工程ユニットに設定することになる。
すなわち、成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニットのヒーターにセットする温度条件が予め決まることになる。
【0057】
図12の実施例について説明する。
なお、図示を省略した潤滑剤噴霧装置、トランスファー、非接触式温度計は、先の実施の動作と同じなので、必要な部分においてのみ説明する。
この実施例では、制御装置26に設けられた記憶装置27に、成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニット、成形予定の鍛造製品に対応させた各工程ユニットの金型温度制御条件を少なくとも含んだものを組み合わせ情報として鍛造製品に対応させて予め記憶させることができる。
制御装置26への組み合わせ情報は、制御装置26に設けられた入力部から直接キー操作によって入力することができ、または、制御装置26に設けられた通信手段を介して遠隔に設置された集中管理装置等から入力することができる。
記憶装置27内の組み合わせ情報は、鍛造製品をキーとして識別できるデータベースの形で記憶されている。
なお、同一形状の鍛造製品に対して組み合わせ情報を複数の変化パターンを識別して記憶することができる。
記憶装置27の組み合わせ情報は、鍛造製品の情報を制御装置26に入力することで呼び出すことができる。
そして、呼び出された組み合わせ情報は記憶装置27から制御装置26のメモリ上に移される。
ここで、組み合わせ上の内容の一部を修正し、記憶装置27内の組み合わせ情報の内容を更新することができる。
呼び出された組み合わせ情報は、制御装置26の表示画面に各工程ユニットに取り付けた金型の種類、各金型に設定されるべき温度条件の書式で表示される。
【0058】
制御装置26はメモリ上の組み合わせ情報に基づき、工程ユニット移載装置25へ各工程ユニット(金型の種類)の指示情報を転送する。
工程ユニット移載装置25は指示情報に基づき、工程ユニットストック装置23へ工程ユニット(金型)の在庫を問い合わせ、工程ユニットストック装置23は問い合わせに応答して指示の工程ユニット(金型)を工程ユニット移載装置25に渡す。
工程ユニット移載装置25は、指定の工程ユニットを受け取り、指定の工程ユニットの位置へ移動して取り付ける。
なお、工程ユニットの取付方法は、その構造に適した公知の方法を用いることができる。
【0059】
工程ユニットストック装置23は、工程ユニットが番地毎にその在庫配置、在庫状況を、内蔵した工程ユニットストック記憶装置(工程ユニットストック記憶手段)24に記憶している。
そして、番地位置からの工程ユニットの取り出しは、ロボット、移載コンベアなど公知の在庫管理システムを用いることができる。
【0060】
工程ユニット移載装置25は、ロボット、移載コンベア、クレーンなど公知の搬送システムを用いることができる。
また、工程ユニット移載装置25は、各工程ユニット毎に設けることもできるし、全体で1つとすることもできる。
【0061】
制御装置26はメモリ上の組み合わせ情報に基づき、各ヒーター171〜173を制御し、金型の加熱温度を制御する。
【0062】
鍛造製品を変更する場合、制御装置26に鍛造製品の品種を入力する。
制御装置26は、入力情報に基づき、記憶装置27から鍛造製品に対応した新たな組み合わせ情報をメモリに呼び出す。
工程ユニット移載装置25は、制御装置26から指示された新たな組み合わせ情報と先の組み合わせ情報とを比較し、不要となった工程ユニットの取り付けられた位置へ移動して取り出し、工程ユニットストック装置23に渡す。
工程ユニットストック装置23では、戻された工程ユニットを受け取り、在庫状況を確認し、空いている番地位置に収納し、工程ユニットストック記憶装置24上の在庫情報を更新する。
【0063】
さらに、制御装置26は、各工程ユニットが取り付けられたことを確認し、各工程ユニットに対応した各ヒーター171〜173を金型温度条件で制御する。
制御装置26は、鍛造製品が入力されたとき、工程ユニットストック装置23に在庫状況を問い合わせてその結果から、同一形状の鍛造製品に対して組み合わせ情報の複数の変化パターンが使用可能であると判断した場合、組み合わせ情報に含まれる優先順位データに基づいて組み合わせ情報を呼び出す。
制御装置26は、鍛造製品が入力されたとき、工程ユニットストック装置23に在庫状況を問い合わせてその回答結果から、組み合わせ情報に基づいた金型取付が実現できない場合は、その旨の警告を発する。
このように、この発明では、製品仕様をキーワードとして、使用工程ユニット組み合わせ情報、温度パターン情報、さらに、優先順位データ情報がセットになって記憶されている情報を用いることが好ましい。
【0064】
この発明を用いて成形製品を製造した例を以下に具体的に説明する。
発明した工法による実施例として、Al−Si系合金である『AHS』の連続鋳造丸棒切断品(直径80mm)を用い、外接円径約160mm、重量837gの中央部に貫通孔のある円盤状の鍛造製品である耐圧用カバーを製造した条件を下記に示す。
【0065】
第1、第2工程には熱間密閉鍛造工程ユニットを用い、第3工程には熱間穴あけ鍛造工程ユニットを用いた。
【0066】
直径80mmの連続鋳造丸棒切断品は、第1工程の熱間密閉鍛造工程ユニットに切断した面がダイス上面と平行になるように設置した。
そして、第1工程により切断品は、次工程用鍛造粗材として外接円径約160mmまでつぶされ、第2工程の熱間密閉鍛造工程用ユニットにより中央部に貫通孔のない鍛造製品となり、第3工程の熱間穴あけ鍛造工程ユニットにより中央部に貫通孔のある円盤状の鍛造製品を得た。
もちろん、直径80mmの連続鋳造丸棒切断品以外にビレット切断品や押出棒切断品を使用してもよい。
【0067】
この連続鋳造丸棒切断品には、従来公知である水溶性黒鉛潤滑剤の塗布処理を施し、また、鍛造金型に従来公知の水溶性黒鉛潤滑剤を噴霧し、パンチで加重して熱間鍛造を実施した。
鍛造はH&F社製2500tナックルプレス装置を用い、このプレス装置内に第1〜第3工程ユニットを組み込んだ。
このとき、鍛造前の素材加熱温度は、400℃〜450℃のある温度範囲である素材を使用した。
第1〜第3工程の上下金型には外周部から均等に加熱できるようにリング状のヒーターを配置し、第1〜第3工程の上下金型温度を熱電対により測定できるように設置した。
また、鍛造後の製品温度を非接触式温度測定機で測定を行った。
これら温度測定装置を用い、耐圧用カバーの鍛造後の製品仕上がり温度が目標値±10℃になるように、また、複数工程を経ても欠肉、カブリなどの成形不良が発生しないように加熱パターンを設定して、鍛造開始から鍛造終了までリング状のヒーターの温度制御を行った。
このとき、温度パターンとして鍛造開始からある一定時間経過するまでの鍛造初期期間は、図11(c)の加熱パターンP4を使用し、SP1=SP2=180℃〜200℃とし、SP3を150℃〜190℃とした。
また、鍛造安定期間には図11(c)の加熱パターンP1を使用し、SP1=SP2=SP3=100℃〜200℃とした。
このとき、上流工程から鍛造品を取り出した後、潤滑剤を一定量噴霧し、下流工程へ前工程の鍛造品を投入するまでに要する時間を『各工程ユニット間を9秒で一定』とすることで、鍛造製品の仕上がり温度を制御しやすい条件とした状態で製造を行った。
このとき、上流工程から下流工程に要する時間(前工程から次工程へ投入する時間)が各工程ユニット間で一定でなくまちまちであると、金型表面温度や素材や鍛造製品温度が安定せず、寸法精度が悪くなったり、潤滑不良等の発生による製品焼きつき等が生じる。
その結果として、素材や金型の温度が変動すると、加熱パターン制御による安定運転の実現が困難となる場合がある。
このときの鍛造加圧力は、第1工程ユニット〜第3工程ユニットの合計が、プレス機能力内の1916tであった。
【0068】
また、鍛造製品は従来製法である鋳造やダイキャストで生産された耐圧用カバーよりも機械的特性が向上し、耐圧部品として優れている。
また、従来製法である鋳造やダイキャストと内部品質を比較した場合、鋳巣等の欠陥がなく、均一微細な組織であるため、内部健全性にも優れている。
また、製品部以外にバリが発生しない鍛造製品であるため、得られた粗形材にはトリム痕がなく、材料歩留りの点から好ましいものになった。
【0069】
また、他の実施例として、Al−Si系合金である『AHS』の連続鋳造丸棒切断品(直径80mm)を用い、外接円径約200mm、重量2000gの円盤状の鍛造製品であるコンプレッサー用部品を上記と同様に製造した。
【0070】
第1工程には熱間密閉鍛造工程ユニットを用い、第2工程には熱間閉塞鍛造工程ユニットを用い、第3工程は、待機工程ユニットとした。
【0071】
直径80mmの連続鋳造丸棒切断品は、第1工程の熱間密閉鍛造工程ユニットにより、鍛造製品用粗材として外接円径約200mmまでつぶされ、次工程用鍛造粗材となり、第2工程の熱間閉塞鍛造工程ユニットにより、中央部に貫通孔のないコンプレッサー用鍛造製品(高さ130mm)を得た。
もちろん、直径80mmの連続鋳造丸棒切断品以外に、ビレット切断品や押出棒切断品を使用してもよい。
【0072】
この連続鋳造丸棒切断品には、従来公知である水溶性黒鉛潤滑剤の塗布処理を施し、また、鍛造金型に従来公知の油性潤滑剤を噴霧し、パンチで加重して熱間鍛造を実施した。
鍛造装置は、H&F社製2500tナックルプレス装置を用いた。
このとき、鍛造前の素材加熱温度は、400℃〜450℃のある温度範囲である素材を使用した。
第1、第2工程の上下金型には外周部から均等に加熱できるようにリング状のヒーターを配置し、第1、第2工程の上下金型温度を熱電対により測定できるように設置した。
また、鍛造後の製品温度を非接触式温度測定機で測定を行った。
これら温度測定装置を用い、コンプレッサー用鍛造製品の鍛造後の仕上がり温度が目標値±10℃になるように、また、複数工程を経ても欠肉、カブリなどの成形不良が発生しないように加熱パターンを設定して、鍛造開始から鍛造終了までリング状のヒーターの温度制御を行った。
このとき、上流工程から鍛造品を取り出した後、潤滑剤を一定量噴霧し、下流工程へ前工程の鍛造品を投入するまでに要する時間を『各工程ユニット間を10秒で一定』とすることで鍛造製品の仕上がり温度を制御しやすい条件により製造を行った。
このときの鍛造加圧力は、第1工程ユニットと第2工程ユニットとの合計が、2300tであった。
【0073】
また、上記により得られた鍛造製品は従来製法である鋳造やダイキャストで生産されたコンプレッサー用部品よりも機械的特性が優れている。
また、従来製法である鋳造やダイキャストと内部品質を比較した場合、鋳巣等の欠陥がなく、均一微細な組織であるため、内部健全性にも優れている。また、製品部以外にバリが発生しない鍛造製品であるため、得られた粗形材にはトリム痕がなく、材料歩留りの点から好ましいものになった。
なお、φ80の連続鋳造丸棒切断品からφ200の鍛造品を得ることができるため、例えば、φ200のビレットや押し出し棒から鍛造品を得る場合と比較しても、鍛造品寸法精度がよく、かつ、内部品質に優れた鍛造製品を得ることができた。
【0074】
なお、上記鍛造製品を製造するのに使用した油圧装置は、鍛造品にあわせて圧力を可変できる装置であり、かつ、プレス角度によって油圧の大きさを変化させることのできる装置を使用した。
【符号の説明】
【0075】
11 熱間鍛造装置(鍛造手段)
12a ロアプレート
12b アッパプレート
12c ガイドポスト
13 工程ユニット
131 第1工程ユニット
132 第2工程ユニット
133 第3工程ユニット
13A 熱間密閉鍛造工程ユニット
13B 熱間閉塞鍛造工程ユニット
13C 熱間密穴あけ工程ユニット
13D 熱間密複動造工程ユニット
13E 熱間密複動造工程ユニット
13F 待機工程ユニット
14 潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)
14A 潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)
14B 潤滑剤噴霧装置(潤滑剤噴霧手段)
15 トランスファー(移送機構、移送手段)
15a ホルダー
16 非接触式温度計(鍛造製品温度検出手段)
17 ヒーター(金型加熱手段)
171 第1ヒーター(金型加熱手段)
172 第2ヒーター(金型加熱手段)
173 第3ヒーター(金型加熱手段)
17a リングヒーター
17b 棒状ヒーター
181 第1サーモカップル(金型温度検出手段)
182 第2サーモカップル(金型温度検出手段)
183 第3サーモカップル(金型温度検出手段)
19 金型温度制御装置(金型温度制御手段)
201 第1制御部
202 第2制御部
203 第3制御部
21 シーケンサ
23 工程ユニットストック装置(工程ユニットストック手段)
24 工程ユニットストック記憶装置(工程ユニットストック記憶手段)
25 工程ユニット移載装置(工程ユニット移載手段)
26 制御装置(制御手段、工程ユニット移載制御装置:工程ユニット移載制御手段、金型温度制御装置:金型温度制御手段)
27 記憶装置(記憶手段)
31 ダイス
32 上金型(パンチ)
41 素材または粗材
42 素材または粗材または鍛造製品
43 鍛造製品
51 パンチ
52 ダイス
53 ブッシュ
54 ノック
55 ノックピン
61 パンチ
62 ダイス
63 ブッシュ
64 閉塞機構
65 ノック
66 ノックピン
71 パンチ
72 ダイス
73 ノック
74 ノックピン
76 排出経路(排出手段)
81 パンチ
82 ダイス
83 ブッシュ
84 ノック
85 ノックピン
86 複動パンチ
87 緩衝機構
91 パンチ
92 ダイス
93 ハウジング
94 シリンダ
95 受圧板
96 ピン
97 油圧板
98 閉塞機構
99 ダイスピン
101 固定ダイス
PV1 第1検出温度値
PV2 第2検出温度値
PV3 第3検出温度値
SP 温度設定値
SP1 第1温度設定値
SP2 第2温度設定値
SP3 第3温度設定値
S 設定値
T 鍛造製品検出温度値
P1 加熱パターン
P2 加熱パターン
P3 加熱パターン
P4 加熱パターン
P5 加熱パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニットを、または、熱間密閉鍛造工程ユニット、熱間閉塞鍛造工程ユニット、熱間穴あけ鍛造工程ユニット、熱間複動鍛造工程ユニットから同種を含んで選ばれた、成形予定の鍛造製品に対応させた2つ以上の工程ユニット、および、1つの待機工程ユニットを同一鍛造機械内に着脱可能に組み込んだ鍛造手段と、
各工程ユニットの金型を加熱する複数の金型加熱手段と、
各工程ユニットの金型の温度を検出する複数の金型温度検出手段と、
鍛造製品の温度を検出する鍛造製品温度検出手段と、
この鍛造製品温度検出手段および複数の金型温度検出手段の出力に基づいて複数の金型加熱手段を制御する金型温度制御手段と、
を用い、
金型温度制御手段に、成形予定の鍛造製品の温度を所定の範囲とし、この所定の範囲を満たすように各工程ユニットの各成形において温度管理がなされるようにした温度パターンを予め設定し、
鍛造製品温度検出手段により鍛造製品温度を検出し、所定の温度範囲から外れたと判定したとき、その結果を金型温度制御手段へフィードバックし、金型温度制御手段に予め設定した温度パターンに基づいて、各金型の金型加熱手段への制御を切り替え、鍛造製品温度を所定の範囲内に制御する、
ことを特徴とする熱間鍛造による鍛造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−99794(P2013−99794A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−46621(P2013−46621)
【出願日】平成25年3月8日(2013.3.8)
【分割の表示】特願2011−194793(P2011−194793)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】