説明

燃料冷却構造

【課題】新たな搭載スペースを要することなく燃料タンク内の燃料温度の上昇を抑制し得る燃料冷却構造を提供する。
【解決手段】燃料フィルタ4をエンジンに搭載するためのブラケット14の内部に、エンジン側から燃料タンクに戻される燃料の流路15,16を穿設すると共に、該流路15,16の少なくとも一部に沿うように前記ブラケット14の表面に複数の放熱フィン17を連設し、前記ブラケット14の内部の流路15,16を経由させてエンジン側から燃料タンクへ燃料を戻すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの燃料噴射に関し、噴射圧力の高圧化を図り且つ燃料の噴射タイミング及び噴射量等の噴射条件をエンジンの運転状態に応じて最適に制御する方式としてコモンレール式の燃料噴射装置が知られている。
【0003】
図2に示す如く、コモンレール式の燃料噴射装置においては、燃料タンク1内の燃料が、サプライポンプ2のカム軸で駆動されるフィードポンプ3により吸い上げられ、燃料フィルタ4を介し異物等が濾過された後にサプライポンプ2へと送られるようになっており、該サプライポンプ2により所定圧力に昇圧された燃料がコモンレール5に供給されて蓄圧されるようになっている。
【0004】
前記燃料フィルタ4には、オーバーフローバルブ6が備えられていて、前記燃料フィルタ4における内部圧力が所定値以上となったときに、オーバーフローバルブ6が開いて燃料がオーバーフローパイプ7及びスルーフィードパイプ8を介して燃料タンク1へ戻されるようになっている。
【0005】
また、前記サプライポンプ2には、コモンレール5における燃料圧を所定圧力に維持するためのスルーフィードバルブ9が備えられ、前記サプライポンプ2における内部圧力が所定値以上となったときに、スルーフィードバルブ9が開いて燃料がスルーフィードパイプ8を介して燃料タンク1へ戻されるようになっている。
【0006】
更に、コモンレール5内の高圧の燃料は、インジェクションパイプ10を介しエンジンの各気筒毎に装備された複数のインジェクタ11に向け供給され、該インジェクタ11のノズルから前記各気筒内に噴射されるようになっており、各インジェクタ11に供給された燃料のうち、各気筒内への噴射に費やされなかった燃料は、各インジェクタ11からリーク燃料としてリーケージパイプ12に集められてスルーフィードパイプ8を介し燃料タンク1へ戻されるようになっている。
【0007】
また、コモンレール5には、プレッシャリミッタ13が取り付けられており、前記コモンレール5内の圧力が所定値以上となると、プレッシャリミッタ13が開いてオーバーフローパイプ7及びスルーフィードパイプ8を介し燃料が燃料タンク1に戻され、コモンレール5の圧力が所定圧に保たれるようになっている。
【0008】
尚、この種のコモンレール式の燃料噴射装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−307885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなコモンレール式の燃料噴射装置では、コモンレール5やインジェクタ11から燃料タンク1に戻される燃料が、その戻りの流路において高圧状態から圧力解放されることになるが、非圧縮性の燃料が高圧状態から圧力解放されることで圧力のエネルギーが熱に変換され、コモンレール5やインジェクタ11からの燃料が高温状態で燃料タンク1に戻されて該燃料タンク1内の燃料温度を上昇させてしまうという問題があった。
【0011】
特に近年における排気ガス規制の強化に伴い、燃料の噴霧性を高めて燃焼性を上げるべくコモンレール5の圧力が従来より更に高圧化してきているため、燃料タンク1内の燃料の温度上昇の問題は益々顕著になってきており、温度上昇した燃料タンク1内の燃料が酸化して固形物を生じ、この固形物がインジェクタ11の先端に詰まりを生じるといった不具合を招く虞れがあった。
【0012】
尚、エンジンと燃料タンク1との間の燃料の系路に空冷の燃料クーラを搭載したり、燃料タンク1の大容量化を図るといった対策も考えられるが、比較的小型の車両では、搭載スペースの確保が困難であるため、燃料クーラの搭載や燃料タンク1の大容量化を対策として講じることができなかった。
【0013】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、新たな搭載スペースを要することなく燃料タンク内の燃料温度の上昇を抑制し得る燃料冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、燃料フィルタをエンジンに搭載するためのブラケットの内部に、エンジン側から燃料タンクに戻される燃料の流路を穿設すると共に、該流路の少なくとも一部に沿うように前記ブラケットの表面に複数の放熱フィンを連設し、前記ブラケットの内部の流路を経由させてエンジン側から燃料タンクへ燃料を戻すように構成したことを特徴とする燃料冷却構造、に係るものである。
【0015】
而して、このようにすれば、燃料フィルタをエンジンに搭載するためのブラケットが放熱板の役割を果たし、エンジン側から戻される燃料が、ブラケットの内部の流路を流れる間に該ブラケットの表面及び放熱フィンから空気中に熱を放散されることで冷却され、従来より温度低下した状態で燃料タンクに戻される。
【0016】
また、本発明においては、ブラケットの内部の流路が、複数の燃料の戻り系統を集合させて燃料タンクへ一系統で戻し得るように形成されていることが好ましく、このようにすれば、複数の戻り系統からの燃料を一系統にまとめる集合器としての役割を前記ブラケットに担わせることも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明の燃料冷却構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、燃料フィルタをエンジンに搭載するためのブラケットを放熱板として活用し、該ブラケットの内部の流路を経由させてエンジン側から燃料タンクへ燃料を戻すことにより、エンジン側から戻される燃料をブラケットの表面及び放熱フィンからの熱の放散により冷却して従来より温度低下した状態で燃料タンクに戻すことができるので、新たな搭載スペースを要することなく燃料タンク内の燃料温度の上昇を抑制することができ、燃料タンク内の燃料が酸化して生じた固形物によるインジェクタの詰まり等の不具合を抑制することができる。
【0019】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、ブラケットの内部の流路が、複数の燃料の戻り系統を集合させて燃料タンクへ一系統で戻し得るように形成されているので、複数の戻り系統からの燃料を一系統にまとめる集合器としての役割をブラケットに担わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【図2】一般的なコモンレール式の燃料噴射装置の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、図1中に図示のないものについては図2を参照することとする。
【0023】
図1に示す如く、本形態例の燃料冷却構造においては、燃料フィルタ4をエンジンに搭載するためのブラケット14の内部に、エンジン側から燃料タンク1(図2参照)に戻される燃料の流路15,16を穿設すると共に、該流路15,16の少なくとも一部に沿うように前記ブラケット14の表面に複数の放熱フィン17を連設し、前記ブラケット14の内部の流路15,16を経由させてエンジン側から燃料タンク1へ燃料を戻すように構成した点を特徴としている。
【0024】
より具体的には、図1に正面図で示しているブラケット14において、その図1中右寄りの部位に縦方向に延びる流路15が穿設されていると共に、その下端の部位には横方向に延びる流路16が穿設されており、該流路16の中途部に前記流路15の下端が連通するようになっている。
【0025】
そして、縦方向に延びる流路15の図1中上端には、コモンレール5(図2参照)及びインジェクタ11(図2参照)から戻される燃料の導入口18が設けられており、該導入口18に対しサプライポンプ2(図2参照)及び燃料フィルタ4から燃料を合流して導き入れる配管(図示せず)が接続されるようになっている。
【0026】
しかも、縦方向に延びる流路15に沿い複数の放熱フィン17がブラケット14の表面に形成されており(図1中に鎖線で示す放熱フィン17はブラケット14の裏面に形成されているものを示している)、この複数の放熱フィン17の形成により、周囲を流れる空気との熱交換が促進されるようになっていて、コモンレール5及びインジェクタ11から戻される高温の燃料に対する冷却効果を特に高めた構造としてある。
【0027】
また、横方向に延びる流路16の図1中左端には、サプライポンプ2から戻される燃料の導入口19と、燃料フィルタ4から戻される燃料の導入口20とが設けられており、これら各導入口19,20に対しサプライポンプ2及び燃料フィルタ4から燃料を導き入れる配管(図示せず)が夫々接続されるようになっている。
【0028】
更に、横方向に延びる流路16の図1中右端には、燃料タンク1へ向けて燃料を送り出す排出口21が設けられており、該排出口21に対し燃料を燃料タンク1へ導く配管(図示せず)が接続されるようになっていて、全体として複数の燃料の戻り系統を集合させて燃料タンク1へ一系統で戻すような構造となっている。
【0029】
而して、このように燃料冷却構造を構成すれば、コモンレール5及びインジェクタ11から戻される燃料が導入口18を介し流路15の図1中上端に導入されて該流路15を下方に向かって流れると共に、サプライポンプ2及び燃料フィルタ4から戻される燃料が導入口19,20を介し流路16の図1中左端に導入されて該流路16を図1中の右側に向かって流れ、両流路15,16の燃料が最終的に合流して排出口21に到り、この間にブラケット14の表面及び放熱フィン17から空気中に熱を放散されることで冷却され、従来より温度低下した状態で前記排出口21から燃料タンク1に戻される。
【0030】
従って、上記形態例によれば、燃料フィルタ4をエンジンに搭載するためのブラケット14を放熱板として活用し、該ブラケット14の内部の流路15,16を経由させてエンジン側から燃料タンク1へ燃料を戻すことにより、エンジン側から戻される燃料をブラケット14の表面及び放熱フィン17からの熱の放散により冷却して従来より温度低下した状態で燃料タンク1に戻すことができるので、新たな搭載スペースを要することなく燃料タンク1内の燃料温度の上昇を抑制することができ、燃料タンク1内の燃料が酸化して生じた固形物によるインジェクタ11の詰まり等の不具合を抑制することができる。
【0031】
また、特に本形態例においては、ブラケット14の内部の流路15,16が、複数の燃料の戻り系統を集合させて燃料タンク1へ一系統で戻し得るように形成されているので、複数の戻り系統からの燃料を一系統にまとめる集合器としての役割をブラケット14に担わせることができる。
【0032】
尚、本発明の燃料冷却構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料タンク
4 燃料フィルタ
14 ブラケット
15 流路
16 流路
17 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料フィルタをエンジンに搭載するためのブラケットの内部に、エンジン側から燃料タンクに戻される燃料の流路を穿設すると共に、該流路の少なくとも一部に沿うように前記ブラケットの表面に複数の放熱フィンを連設し、前記ブラケットの内部の流路を経由させてエンジン側から燃料タンクへ燃料を戻すように構成したことを特徴とする燃料冷却構造。
【請求項2】
ブラケットの内部の流路が、複数の燃料の戻り系統を集合させて燃料タンクへ一系統で戻し得るように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24036(P2013−24036A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156217(P2011−156217)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)