説明

燃料噴射装置

【課題】第一フィルタ及び第二フィルタの交換作業に要する作業員の労力負担を従来よりも大幅に軽減し得る燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】車体側に燃料タンク1と第一フィルタとを備え、エンジン側にフィードポンプ3と第二フィルタとサプライポンプ5とコモンレール6とを搭載し、燃料タンク1の燃料を第一フィルタを介しフィードポンプ3により吸い上げ、該フィードポンプ3から第二フィルタを介しサプライポンプ5に送り込み、該サプライポンプ5により昇圧してコモンレール6に蓄圧し、該コモンレール6からインジェクタ7に燃料を導いて気筒内に噴射させるようにした燃料噴射装置に関し、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタ8,4として上流のメインフィルタ8に対し下流のメインフィルタ4の交換インターバルを相対的に長く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いる燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は一般的なコモンレール式の燃料噴射装置の一例を示すもので、ここに図示している例では、車体側に燃料タンク1とプリフィルタ2(第一フィルタ)とが備えられ、エンジン側にフィードポンプ3とメインフィルタ4(第二フィルタ)とサプライポンプ5とコモンレール6とが搭載されていて、燃料タンク1の燃料が、サプライポンプ5のカム軸で駆動されるフィードポンプ3によりプリフィルタ2を介して吸い上げられ、該フィードポンプ3からメインフィルタ4を介しサプライポンプ5に送り込まれるようになっており、更に、このサプライポンプ5により所定圧力に昇圧された燃料がコモンレール6に供給されて蓄圧され、該コモンレール6からインジェクタ7に導かれて気筒内に噴射されるようになっている。
【0003】
ここで、前記メインフィルタ4は、内部圧力が所定値以上となったときに燃料を燃料タンク1へ逃がすようになっており、また、前記サプライポンプ5も、内部圧力が所定値以上となったときに燃料を燃料タンク1へ逃がしてコモンレール6における燃料圧を所定圧力に維持するようになっている。
【0004】
更に、各インジェクタ7に供給された燃料のうち、各気筒内への噴射に費やされなかった燃料は、各インジェクタ7からリーク燃料として、図示しないリーケージパイプに集められてから燃料タンク1へ戻されるようになっており、また、コモンレール6は、蓄圧された燃料圧が所定値以上となったときに燃料を燃料タンク1に逃がしてコモンレール6における燃料圧を所定圧力に維持するようになっている。
【0005】
尚、この種の燃料噴射装置におけるフィルタの目詰まりに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−243304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまでの燃料噴射装置においては、車体側に配置される第一フィルタとして比較的目の粗いプリフィルタ2を使用して燃料中の異物を先行除去し、エンジン側に配置される第二フィルタとして比較的目の細かいメインフィルタ4を使用して仕上げ濾過するようにしており、プリフィルタ2とメインフィルタ4の交換時期が揃うように交換インターバルを略同等に設定し、プリフィルタ2とメインフィルタ4とを同じメンテナンス機会に一緒に交換する設計思想を採用していたため、プリフィルタ2とメインフィルタ4を同時に交換しなければならず、その交換作業に要する作業員の労力負担が大きかった。
【0008】
即ち、車体側に備えられているプリフィルタ2は、比較的簡単にアクセスすることができて交換が容易であるのに対し、エンジン側に搭載されているメインフィルタ4は、該メインフィルタ4の配置位置までアクセスすることさえ困難な場合が多く、例えば、中型バス等においては、エンジンルーム横のリッドを開け、そこから作業員が潜り込むようにしてメインフィルタ4にアクセスしなければならず、その交換作業には多大な手間と時間を要していた。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、第一フィルタ及び第二フィルタの交換作業に要する作業員の労力負担を従来よりも大幅に軽減し得る燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体側に燃料タンクと第一フィルタとを備え、エンジン側にフィードポンプと第二フィルタとサプライポンプとコモンレールとを搭載し、燃料タンクの燃料を第一フィルタを介しフィードポンプにより吸い上げ、該フィードポンプから第二フィルタを介しサプライポンプに送り込み、該サプライポンプにより昇圧してコモンレールに蓄圧し、該コモンレールからインジェクタに燃料を導いて気筒内に噴射させるようにした燃料噴射装置において、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタとして第一フィルタに対し第二フィルタの交換インターバルを相対的に長く設定したことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタとしたことにより、上流の第一フィルタで濾し取られる異物の量の方が、下流の第二フィルタで濾し取られる異物の量よりも相対的に多くなり、第一フィルタに対し第二フィルタの交換インターバルが相対的に長く設定される結果、エンジン側に搭載されていて交換作業を行い難い第二フィルタの交換頻度が下がり、車体側に搭載されていて交換作業を行い易い第一フィルタの交換だけで済むケースが増えるので、第一フィルタ及び第二フィルタの交換作業に要する作業員の労力負担が大幅に軽減されることになる。
【0012】
また、本発明においては、第一フィルタに対し第二フィルタの容量が相対的に小さくなるように形成することが好ましい。即ち、燃料中の異物の多くは上流の第一フィルタで先行して濾し取られることになるので、下流の第二フィルタの容量を相対的に小さくしても極端な小型化を図らない限り交換インターバルを相対的に長く保つことが可能であり、第二フィルタを小型化することで交換作業性と搭載性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の燃料噴射装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0014】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、エンジン側に搭載されていて交換作業を行い難い第二フィルタの交換頻度を下げ、車体側に搭載されていて交換作業を行い易い第一フィルタの交換だけで済むケースを増やすことができるので、第一フィルタ及び第二フィルタの交換作業に要する作業員の労力負担を従来よりも大幅に軽減することができる。
【0015】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、第二フィルタを従来よりも小型化して交換作業性と搭載性の向上を図ることができ、作業員の労力負担の更なる軽減化を図ることができると共に、エンジンのダウンサイジング化に寄与せしめることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す系統図である。
【図2】従来例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、基本的な構成については図2で説明した従来例と略同様であるが、図2の従来例におけるプリフィルタ2が第一フィルタとして備えられていた車体側の位置に、エンジン側に第二フィルタとして搭載されている目の細かいメインフィルタ4と同じ目の粗さのメインフィルタ8を配置し、該メインフィルタ8に対しエンジン側のメインフィルタ4の交換インターバルが相対的に長くなるように設定している。
【0019】
即ち、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタ8,4とすれば、上流のメインフィルタ8で濾し取られる異物の量の方が、下流のメインフィルタ4で濾し取られる異物の量よりも相対的に多くなり、上流のメインフィルタ8に対し下流のメインフィルタ4の交換インターバルが相対的に長く設定されることになる。
【0020】
また、ここに図示している例においては、車体側のメインフィルタ8の交換インターバルをエンジン側のメインフィルタ4よりも相対的に長く保ちながらも、その容量をエンジン側のメインフィルタ4よりも相対的に小さくしており、図2の既存のメインフィルタ4よりも小型化したものとしている。
【0021】
尚、ディーゼルエンジン等においては、燃料切れを起こした後や、第一フィルタ及び第二フィルタを清掃・交換した後に、燃料系にエアが入って始動困難となる場合があるので、このような場合に燃料系のエア抜き作業を行い得るようフィードポンプ3と下流のメインフィルタ4との間にプライミングポンプ(図1には図示せず)が介装されていても良い。
【0022】
而して、このように構成すれば、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタ8,4としたことにより、上流のメインフィルタ8で濾し取られる異物の量の方が、下流のメインフィルタ4で濾し取られる異物の量よりも相対的に多くなり、上流のメインフィルタ8に対し下流のメインフィルタ4の交換インターバルが相対的に長く設定される結果、エンジン側に搭載されていて交換作業を行い難いメインフィルタ4の交換頻度が下がり、車体側に搭載されていて交換作業を行い易いメインフィルタ8の交換だけで済むケースが増えるので、両メインフィルタ8,4の交換作業に要する作業員の労力負担が大幅に軽減されることになる。
【0023】
ここで、本形態例においては、上流のメインフィルタ8に対し下流のメインフィルタ4の容量が相対的に小さくなるように形成しているが、燃料中の異物の多くは上流のメインフィルタ8で先行して濾し取られることになるので、下流のメインフィルタ4の容量を相対的に小さくしても極端な小型化を図らない限り交換インターバルを相対的に長く保つことが可能であり、下流のメインフィルタ4を小型化することで交換作業性と搭載性の向上を図ることが可能となる。
【0024】
尚、第一フィルタを目の粗いプリフィルタ2(図2参照)から目の細かいメインフィルタ8に替えたことにより、該メインフィルタ8の交換頻度が多少高くなることが想定されるが、車体側の第一フィルタの交換は容易であるため作業負担増は軽微であり、交換作業が難しい第二フィルタの交換頻度が下がることによる作業負担減の方が遥かに大きなものとなる。
【0025】
以上に述べた通り、上記形態例によれば、エンジン側に搭載されていて交換作業を行い難い下流のメインフィルタ4の交換頻度を下げ、車体側に搭載されていて交換作業を行い易い上流のメインフィルタ8の交換だけで済むケースを増やすことができるので、両メインフィルタ8,4の交換作業に要する作業員の労力負担を従来よりも大幅に軽減することができる。
【0026】
また、下流のメインフィルタ4を従来よりも小型化して交換作業性と搭載性の向上を図ることができ、作業員の労力負担の更なる軽減化を図ることができると共に、エンジンのダウンサイジング化に寄与せしめることもできる。
【0027】
尚、本発明の燃料噴射装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 燃料タンク
2 プリフィルタ
3 フィードポンプ
4 メインフィルタ(第一フィルタ)
5 サプライポンプ
6 コモンレール
7 インジェクタ
8 メインフィルタ(第二フィルタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に燃料タンクと第一フィルタとを備え、エンジン側にフィードポンプと第二フィルタとサプライポンプとコモンレールとを搭載し、燃料タンクの燃料を第一フィルタを介しフィードポンプにより吸い上げ、該フィードポンプから第二フィルタを介しサプライポンプに送り込み、該サプライポンプにより昇圧してコモンレールに蓄圧し、該コモンレールからインジェクタに燃料を導いて気筒内に噴射させるようにした燃料噴射装置において、第一フィルタと第二フィルタの両方を同じ目の粗さのメインフィルタとして第一フィルタに対し第二フィルタの交換インターバルを相対的に長く設定したことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
第一フィルタに対し第二フィルタの容量が相対的に小さくなるように形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24174(P2013−24174A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161515(P2011−161515)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)