説明

燃料電池システム

【課題】高い水素利用率に起因する燃料電池の性能低下を抑えることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】原燃料ガスを改質するための改質器10と、改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池4と、原燃料ガスの供給流量を検知するための流量検知手段52と、燃料電池4の出力電流を検知するための電流検知手段56と、改質器の温度を検知するための温度検知手段54とを備えた燃料電池システム。制御手段50は、流量検知手段52の検知流量及び温度検知手段54の検知温度に基づいて改質燃料ガス中の水素の供給量を演算し、また電流検知手段56の検知電流に基づいて燃料電池4における水素消費量を演算し、更に上記水素供給量及び上記水素消費量に基づいて水素利用率を演算し、この水素利用率が所定値以上になると燃料電池4の出力電力を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料ガスを改質した改質燃料ガスを用いて発電を行い、発電後の反応燃料ガスを燃焼させて改質器を加熱するようにした燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの一例として、原燃料ガスを改質するための改質器と、改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、改質器を加熱するための燃焼手段と、燃料電池の発電出力を制御するための制御手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムでは、原燃料ガスが改質器において改質され、改質器にて改質された改質燃料ガスが燃料電池の燃料極側に供給され、酸化材供給手段(例えば、空気ブロア)からの空気(酸化材)が燃料電池の空気極側に供給される。燃料電池においては、改質器からの改質燃料ガスの酸化と空気供給手段からの酸化材の還元によって発電が行われる。燃料電池の燃料極側からの反応燃料ガスは、燃焼手段に送給されて燃焼され、この燃焼熱を利用して改質器が加熱されて改質が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−220620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような燃料電池システムにおいては、経時的変化、一時的な外部要因などによって、燃料電池の発電性能の低下、補機動力の上昇などが生じることがある。このような場合、燃料電池の定格発電運転中においては、定格発電電力を得るために、燃料電池に流れる電流(換言すると、燃料電池の出力電流)が上昇するようになる。
【0005】
このように燃料電池の出力電流が増大すると、改質燃料ガス中に含まれる水素の消費量が多くなり、これによって、燃焼手段に送給される反応燃料ガス中に含まれる燃料ガス(燃焼に用いられるガス)の量が少なくなる。このように燃料ガスの送給量が少なくなると、燃焼手段の燃焼熱量が低下し、これによって、改質器の温度低下が生じるおそれがある。改質器の温度低下が生じると、改質器での原燃料ガスの改質が進まず、水素の生成効率が低下し、改質燃料ガス中の水素の含有量が少なくなる。その結果、燃料電池の燃料極側における水素利用率が上昇し、燃料極側において一時的に水素欠乏状態が生じ、燃料電池の性能低下が急激に進行するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、改質燃料ガス中に含まれる水素の水素利用率に着目し、この水素利用率に起因する燃料電池の性能低下を抑えることができる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、原燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段からの原燃料ガスを改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池での発電後の反応燃料ガスを燃焼させて前記改質器を加熱するための燃焼手段と、前記燃料ガス供給手段から前記改質器に供給される原燃料ガスの供給流量を検知するための流量検知手段と、前記燃料電池の出力電流を検知するための電流検知手段と、前記改質器の温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料電池を制御するための制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記流量検知手段の検知流量及び前記温度検知手段の検知温度に基づいて前記改質器において改質された改質燃料ガスに含まれる水素の供給量を演算し、また前記電流検知手段の検知電流に基づいて前記燃料電池における水素消費量を演算し、更に前記燃料電池への水素供給量及び前記燃料電池での水素消費量に基づいて前記燃料電池における水素利用率を演算し、前記水素利用率が所定値以上になると前記燃料電池の出力電力を抑制することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムでは、前記制御手段は、通常モードと出力抑制モードとを設定可能である稼動モード設定手段を含んでおり、前記水素利用率が所定値以上になると、前記稼動モード設定手段は、前記通常モードから前記出力抑制モードに切り換えて前記燃料電池の出力電力を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムによれば、流量検知手段は改質器に供給される原燃料ガスの流量を検知し、温度検知手段は改質器の温度を検知し、流量検知手段の検知流量及び温度検知手段の検知温度に基づいて改質燃料ガスに含まれる水素の供給量が演算される。また、電流検知手段は燃料電池の出力電流を検知し、この電流検知手段の検知電流に基づいて燃料電池における水素消費量が演算される。そして、燃料電池への水素供給量及び燃料電池での水素消費量に基づいて燃料電池における水素利用率が演算され、演算された水素利用率が所定値以上になると、制御手段は燃料電池の出力電力を抑制して燃料電池の性能低下を抑制する。
【0010】
燃料電池における水素利用率が所定値(例えば、75〜80%程度に設定される)以上になると、燃料電池の燃料極側において一時的に水素欠乏状態が生じ、燃料電池の性能低下が急激に進行するおそれがあるが、燃料電池の出力電力を抑制することによって、燃料極側での水素消費量が減少することから水素欠乏状態になることを抑えることができ、その結果、燃料電池の急激な性能低下を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムによれば、燃料電池における水素利用率が所定値以上になると、稼動モード設定手段は出力抑制モードに切り換え、燃料電池の出力電力が低下されるので、燃料電池の燃料極側における水素の消費量が少なくなり、これによって、燃料極側において水素欠乏状態になることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従う燃料電池システムの一実施形態を示す簡略図。
【図2】図1の燃料電池システムにおける制御系を示すブロック図。
【図3】図2の制御系による制御の流れを示すフローチャート。
【図4】改質器の温度と原燃料ガスの水素発生率との関係を示す図。
【図5】燃料電池の出力電流と水素消費量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明する。図1において、図示の燃料電池システムは、原燃料ガスを改質するための燃料改質装置2と、発電を行うための燃料電池4とを備えている。図示の燃料改質装置2は、改質器10、一酸化炭素変成器12及び一酸化炭素除去器14を含んでいる。改質器10は、原燃料ガスを後述するように水蒸気改質し、一酸化炭素変成器12は、水蒸気改質された改質燃料ガスに含まれる一酸化炭素を触媒により水素と二酸化炭素に変成し、また一酸化炭素除去器14は、改質燃料ガス中の一酸化炭素と空気とを触媒により反応させて二酸化炭素を生成する。
【0014】
この燃料改質装置2は、原燃料ガス供給流路16を介して燃料ガス供給源17(例えば、ガスボンベ、埋設管など)に接続され、この原燃料ガス供給流路16に燃料ガスポンプ18及び脱硫器19が配設されている。燃料ガスポンプ18は、原燃料ガス供給流路16を流れる原燃料ガスを昇圧して下流側に送給し、脱硫器19は、原燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去する。このように構成されているので、燃料ガス供給源17、原燃料ガス供給流路16及び燃料ガスポンプ18は、原燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を構成し、この燃料ガスポンプ18の作用によって、燃料ガス供給源17からの原燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)が原燃料ガス供給流路16を通して脱硫器19に送給され、この脱硫器19にて硫黄成分が除去された後に燃料改質装置2(改質器10)に送給される。例えば、上述した実施形態では、脱硫器19を燃料改質装置2の外部に配設しているが、燃料改質装置2の内部に配設するようにしてもよい。
【0015】
燃料改質装置2においては、改質器10、一酸化炭素変成器12及び一酸化炭素除去器14がこの順で配設され、これらが燃料ガス改質流路20を介して接続されている。原燃料ガス供給流路16を通して供給された原燃料ガスは、燃料ガス改質流路20を通して流れ、この燃料ガス改質流路20を流れる間に水蒸気改質されて燃料電池4に送給される。改質器10においては、原燃料ガスが水蒸気改質され、一酸化炭素変成器12において、水蒸気改質された改質燃料ガス中の一酸化炭素が変成され、更に一酸化炭素除去器14において、変成された改質燃料ガス中の一酸化炭素が除去され、このようにして改質された改質燃料ガスが、燃料電池4に送給される。尚、燃料ガス改質流路20には一酸化炭素除去用空気送給流路21が接続され、一酸化炭素除去用空気ブロア23によって、大気中の空気が一酸化炭素除去用空気送給流路21を通して燃料ガス改質流路20に送給され、かく送給される空気(一酸化炭素除去用空気)を用いて一酸化炭素除去器14において一酸化炭素の除去が行われる。
【0016】
燃料電池4は、例えば固体分子形燃料電池から構成され、水素イオンを伝導する電解質膜25を備え、この電解質膜25の片側(図1において左側)に燃料極(図示せず)が設けられ、その他側(図1において右側)に空気極(図示せず)が設けられている。燃料電池4の燃料極側22は、改質燃料ガス送給流路26を介して燃料改質装置2(この形態では、一酸化炭素除去器14)に接続され、その空気極側24は、空気供給流路28に接続され、この空気供給流路28に空気ブロア30が配設されている。
【0017】
このように構成されているので、燃料改質装置2からの改質燃料ガスは、改質燃料ガス送給流路26を通して燃料電池4の燃料極側22に送給され、また空気ブロア30からの空気は、空気供給流路28を通して燃料電池4の空気極側24に送給され、燃料電池4の電解質膜25を通しての水素イオンの移動により、燃料極側22における酸化及び空気極側24における還元によって発電が行われる。
【0018】
燃料電池4の発電電力は、電力出力ライン27を介してインバータ29に出力される。インバータ29は、燃料電池4からの出力電力(直流電力)を所定の交流電力に変換し、インバータ29にて変換された交流電力が、例えば家庭用電力ライン31を介して電力負荷(各種の電気機器であって、電灯、テレビ、冷蔵庫など)に供給される。
【0019】
燃料電池4の燃料極側22からの反応燃料ガス(燃料極側22で消費されなかった水素ガスを含む)は、反応燃料ガス送給流路34を通して燃料改質装置2に送給され、燃料電池4の空気極側24からの排気ガスは、第1排気流路33を通して大気に排出される。
【0020】
燃料改質装置2は、改質器10に関連して設けられた燃焼手段36を含んでいる。この燃焼手段36は燃焼バーナから構成され、燃料電池4からの反応燃料ガス送給流路34が燃焼バーナに接続されている。この燃焼手段36には、燃焼用空気を供給するための燃焼空気供給流路38及び排気ガスを排出するための第2排気流路44が接続され、燃焼空気供給流路38に燃焼空気ブロア40が配設されている。また、原燃料ガス供給流路16(燃料ガスポンプ18の配設部位よりも下流側の部位)には、燃料ガス分岐流路42が設けられ、この燃料ガス分岐流路42が反応燃料ガス送給流路34に接続されている。更に、原燃料ガス供給流路16の下流側部(具体的には、脱硫器19と改質器10との間の部位)には、改質用の水を供給する水供給流路35が接続され、この水供給流路35に水ポンプ37が配設されている。尚、この実施形態では、原燃料ガスの一部を燃焼手段36に送給するための燃料ガス分岐流路42を設けているが、この燃料ガス分岐流路42を省略することもできる。
【0021】
このように構成されているので、水ポンプ37の作用によって、改質用の水が水供給流路35を通して改質器10に供給され、また原燃料ガス供給流路16を通して上述したように改質器10に原燃料ガスが供給される。更に、燃料電池4の燃料極側22からの反応燃料ガスが、反応燃料ガス送給流路34を通して燃焼手段36に送給され、この送給の際に、原燃料ガス供給流路16を通して供給される原燃料ガスの一部が、燃料ガス分岐流路42を通して、反応燃料ガス送給流路34を流れる反応燃料ガスに混合され、かく混合された混合燃料ガスが燃焼手段36に送給される。また、燃焼空気ブロア40の作用によって、大気中の空気が燃焼空気供給流路38を通して燃焼手段36に供給され、この燃焼用空気を用いて、反応燃料ガス送給流路34を通して送給される混合燃料ガスが、燃焼手段36にて燃焼され、その燃焼排気ガスが第2排気流路44を通して大気に排出される。燃焼手段36の燃焼熱は、改質器10の加熱に用いられ、改質器10において原燃料ガスの水蒸気改質が行われる。尚、この形態では、改質用の水を水供給流路35を通して原燃料ガス供給流路16の下流側部に供給しているが、このような構成に代えて、水供給流路35を改質器10に接続し、改質用の水を改質器10に直接的に供給するようにしてもよい。
【0022】
この実施形態では、燃料電池システムは、図2に示す制御系によって運転制御される。図1とともに図2を参照して更に説明すると、原燃料ガス供給流路16には、流量検知手段52が配設されている。この流量検知手段52は、例えば流量センサなどから構成され、原燃料ガス供給流路16を通して供給される原燃料ガスの流量を検知する。また、改質器10には、温度検知手段54が配設されている。温度検知手段54は、例えば温度センサから構成され、改質器10の温度を検知する。更に、燃料電池4の電力出力ライン27には、電流検知手段56が配設されている。電流検知手段56は、例えば電流検知計などから構成され、電力出力ライン27を流れる出力電流(換言すると、燃料電池4の出力電流)を検知する。
【0023】
この燃料電池システムは、システムを運転制御するための制御手段50を備え、この制御手段50は、例えばマイクロプロセッサから構成され、流量検知手段52、温度検知手段54及び電流検知手段56からの検知信号はこの制御手段50に送給され、制御手段50は、流量検知手段52の検知流量、温度検知手段54の検知温度及び電流検知手段56の検知電流に基づいて、燃料電池システム(燃料ガスポンプ18、空気ブロア30、水ポンプ37など)を後述するように作動制御する。
【0024】
この実施形態においては、制御手段50は、作動制御手段62、流入水素量演算手段64、水素消費量演算手段66、水素利用率演算手段68、稼動判定手段70、稼動モード設定手段72及びメモリ手段74を含んでいる。作動制御手段62は、燃料電池システムの各種構成要素(燃料ガスポンプ18など)を作動制御する。
【0025】
流入水素量演算手段64は、流量検知手段52の検知流量及び温度検知手段54の検知温度に基づいて燃料電池4の燃料極側22に流入する流入水素量(換言すると、改質燃料ガス中に含まれて燃料極側22に送給される水素の送給量)を演算する。改質器10の温度と原燃料ガスの水素発生率(%)とは、一般的に、例えば図4に示す関係があり、改質器10の温度が上昇すると、原燃料ガスの水素発生率が上昇し、改質器10の温度が下がると、原燃料ガスの水素発生率が低下し、改質器10の温度と原燃料ガスの水素発生率とのこのような関係を示す水素発生率マップがメモリ手段74に登録される。流入水素量演算手段64は、流量検知手段52により検知した原燃料ガスの供給流量(P)と、温度検知手段54により検知した改質器10の検知温度から水素発生率マップに基づいて求められる水素発生率(Q)とに基づいて、次の(1)式を利用して流入水素量(R)を演算する。
【0026】
流入水素量(R)=原燃料ガスの供給流量(P)×水素発生率(Q) ・・・(1)
また、水素消費量演算手段66は、電流検知手段56の検知電流に基づいて燃料電池4の燃料極側22にて消費された水素消費量を演算する。一般的に、燃料電池4の出力電流とこの燃料電池4の燃料極側22で消費される水素消費量(S)とは、例えば、図5に示す関係があり、燃料電池4での水素の消費量が多くなると、燃料電池4の出力電流が増大し、燃料電池4での水素消費量が少なくなると、燃料電池4の出力電流が減少し、燃料電池4の出力電流と燃料電池4での水素消費量とのこのような関係を示す水素消費量マップがメモリ手段74に登録される。水素消費量演算手段66は、電流検知手段56により検知した燃料電池4の出力電流から水素発生率マップに基づいて燃料電池4における水素消費量(S)を演算する。
【0027】
また、水素利用率演算手段68は、流入水素量演算手段により演算された流入水素量及び水素消費量演算手段66により演算された水素消費量に基づいて水素利用率を演算する。水素利用率とは、燃料電池4の燃料極側22に投入された水素のうちこの燃料極側22にて消費された水素の比率であり、この水素利用率(T)は、次の(2)式を利用して演算することができる。
【0028】
水素利用率(T)=〔水素消費量(S)/流入水素量(R)〕×100 (%)
・・・(2)
更に、稼動判定手段70は、燃料電池4の燃料極側22での水素の消費量が多く、その利用率が所定値(例えば、75〜80%程度の範囲における適当な値、例えば80%に設定され、この所定値もメモリ手段74に登録される)以上の水素利用率の高い稼動状態であるかを判定し、稼動モード設定手段72は、稼動判定手段70による高水素利用率の稼動状態の判定結果に基づき通常モードから出力抑制モードに切り換える。
【0029】
次に、図1及び図2とともに図3を参照して、上述した燃料電池システムの運転制御について説明する。例えば、定格運転などの通常の運転においては、燃料電池システムは、通常モードでもって運転制御される(ステップS1)。この通常モードの運転においては、燃料電池システムは上述したように運転制御され、燃料電池4の燃料極側22における水素利用率が所定値(例えば、80%)より小さくなるように運転制御される。
【0030】
このような通常モードの運転状態において、燃料電池4の燃料極側22における水素利用率が演算される。まず、温度検知手段54は改質器10の温度を検知し(ステップS2)、流量検知手段52は、原燃料ガス供給流路16を通して供給される原燃料ガスの流量を検知し(ステップS3)、電流検知手段56は、燃料電池4の出力電流を検知し(ステップS4)、これら検知信号が制御手段50に送給され、制御手段50はこれらの検知温度、検知流量及び検知電流に基づいて水素利用率を演算する。
【0031】
制御手段50の流入水素量演算手段64は、上述したように、流量検知手段52の検知流量、温度検知手段54の検知流量及びメモリ手段74の水素発生率マップに基づいて燃料電池4の燃料極側22に流入する流入水素量(換言すると、燃料極側22に供給される水素供給量)を演算し(ステップS5)、また水素消費量演算手段66は、上述したように、電流検知手段56の検知電流及びメモリ手段74の水素消費量マップに基づいて燃料電池4の燃料極側22における水素消費量を演算し(ステップS6)、水素利用率演算手段68は、流入水素量演算手段64により演算した流入水素量及び水素消費量演算手段66により演算した水素消費量に基づき、上記(2)式を用いて燃料電池4における水素利用率を演算する(ステップS7)。
【0032】
そして、稼動判定手段70は、モード切換えの基準となる所定値(例えば、80%)とこのように演算された水素利用率とを比較し、水素利用率演算手段68により演算された水素利用率が所定値より低いときには、燃料電池4での水素の利用率が高くなく、燃料電池4が安定して運転されているとして、ステップS8からステップS2に戻り、通常モードの運転が継続して行われる。
【0033】
また、この水素利用率が所定値以上であると、稼動判定手段70は、高水素利用率の稼動状態と判定し、ステップS8からステップS9に進み、稼動モード設定手段72は、燃料電池の発電出力(出力電力)を抑制する出力抑制モードに切り換え、通常モードから出力抑制モードに切り換わって出力抑制モードの運転が行われる(ステップS10)。
【0034】
水素利用率が所定値以上であるということは、燃料電池4での水素利用率が高く、燃料電池4の燃料極側22が水素欠乏状態となって性能低下が急激に進行するおそれがあり、このような性能低下を抑えるために、燃料電池4の出力電力を抑制する(具体的には、定格運転においてその出力電力を例えば2〜3%程度(出力電力でいうと、例えば10〜20W程度)下げる)ようにして運転制御する。
【0035】
この出力抑制モードの運転制御においては、燃料電池4の出力電力(発電電力)が抑制されるので、燃料電池4の燃料極側22での水素消費量が幾分少なくなり、これによって、燃料電池4の燃料極側22から燃焼手段36に送給される反応燃料ガス中に含まれる水素が増え、燃焼手段36における燃焼の際に生じる燃焼熱が増大する。このように燃焼熱が増大すると、改質器10の温度が上昇し、この温度上昇によって水蒸気改質が促進されて原燃料ガスの水素発生率が高くなり、その結果、燃料電池4での水素利用率が低下し、燃料電池システムは、出力抑制モードの運転状態において安定して稼動運転される。
【0036】
この出力抑制モードの運転では、ステップS11〜ステップS16において、上述したステップS2〜ステップS7と同様にして水素利用率の演算が行われ、ステップS16にて水素利用率演算手段68により演算された水素利用率が上記所定値以上であるときには、未だ高水素利用率の稼動状態が解消されていないとしてステップS11に戻り、出力抑制モードの運転が継続して行われる。一方、水素利用率が上記所定値よりも低いときには、高水素利用率の稼動状態が解消されたとして、稼動モード設定手段72は、出力抑制モードから通常モードに切り換え(ステップS18)、ステップS1に戻って通常モードの運転が行われる。
【0037】
以上、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、水素利用率が所定値以上になると燃料電池4の出力を抑制しているが、このような出力電力の抑制を水素利用率が所定値以上となる毎に複数回にわたって行うようにすることもできる。
【0039】
また、例えば、上述した実施形態では、燃料電池として固体分子形燃料電池を用いたシステムに適用して説明したが、このような形態のものに限定されず、燃料電池としてリン酸形燃料電池、固体酸化物形燃料電池などを用いたシステムにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
2 燃料改質装置
4 燃料電池
10 改質器
16 原燃料ガス供給流路
26 改質燃料ガス送給流路
28 空気供給流路
29 インバータ
50 制御手段
52 流量検知手段
54 温度検知手段
56 電流検知手段
64 流入水素量演算手段
66 水素消費量演算手段
68 水素利用率演算手段
70 稼動判定手段







【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段からの原燃料ガスを改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池での発電後の反応燃料ガスを燃焼させて前記改質器を加熱するための燃焼手段と、前記燃料ガス供給手段から前記改質器に供給される原燃料ガスの供給流量を検知するための流量検知手段と、前記燃料電池の出力電流を検知するための電流検知手段と、前記改質器の温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料電池を制御するための制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記流量検知手段の検知流量及び前記温度検知手段の検知温度に基づいて前記改質器において改質された改質燃料ガスに含まれる水素の供給量を演算し、また前記電流検知手段の検知電流に基づいて前記燃料電池における水素消費量を演算し、更に前記燃料電池への水素供給量及び前記燃料電池での水素消費量に基づいて前記燃料電池における水素利用率を演算し、前記水素利用率が所定値以上になると前記燃料電池の出力電力を抑制することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、通常モードと出力抑制モードとを設定可能である稼動モード設定手段を含んでおり、前記水素利用率が所定値以上になると、前記稼動モード設定手段は、前記通常モードから前記出力抑制モードに切り換えて前記燃料電池の出力電力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。

















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−212631(P2012−212631A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78602(P2011−78602)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】