説明

燃料電池セパレータの製造方法

【課題】導電性、軽量性、機械的強度、及び耐衝撃性などに優れた燃料電池用セパレータの歩留まりを向上させた生産効率の高い製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末、繊維径0.5〜500nm、繊維長1000μm以下であり、かつ中心軸が空洞構造からなる微細炭素繊維を含む燃料電池セパレータ用材料を所要温度に加温して軟化溶融した状態にて金型を用いて加圧成型する成型工程と、該成型工程で成型された成型体を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性、軽量性、及び機械的強度などに優れた燃料電池用セパレータの生産効率の高い製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、エネルギー問題の観点から燃料電池が、水素と酸素を使用して水の電気分解の逆反応で発電し、水以外の排出物がなくクリーンな発電装置として注目されている。なかでも、固体高分子型燃料電池は、低温で作動するため、自動車や民生用として最も有望である。この燃料電池は、高分子固体電解質膜、ガス拡散電極、触媒、及びセパレータから構成された単セルを、例えば、自動車用では400〜800セルという極めて多数積層することによって高出力の発電が達成できる。
【0003】
この単セルを仕切るために用いられるセパレータは、通常、燃料ガスと酸化剤ガスが供給される溝があり、これら2種のガスを完全に分離できる高い気体不透過性が要求され、また、内部抵抗を小さくするために高い導電性が要求される。さらに、近年、燃料電池を自動車などの移動体に搭載する必要から、その軽量性や、大きい機械的強度、衝突時に備えた耐衝撃性などを備えたセパレ−タを生産効率よく大量に製造方法が求められている。
【0004】
燃料電池用セパレータは、通常、黒鉛などの炭素粉末とフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂とを使用し、その製造方法として、冷間プレス工程による製造方法や熱間プレス工程による製造方法が知られている。
【0005】
冷間プレス工程による製造方法は、まず、黒鉛粉末に熱硬化性樹脂を被覆した材料を、加圧装置にセットした常温の金型に充填し、100MPa以上の高圧でプレス(冷間プレス)して、セパレータとしての所定形状に成型し、得られた成型体を加熱して樹脂を硬化させる方法である。
【0006】
一方、熱間プレス工程による製造法は、炭素粉末と熱硬化性樹脂を混合して、加圧装置にセットした金型に投入し、金型を加熱しながらプレス(熱間プレス)して、プレスとほぼ同時に樹脂を硬化させて製造する方法である(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭59−26907号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の冷間プレス工程及び熱間プレスによるいずれの製造方法には下記するような問題点がある。
【0008】
即ち、前者の冷間プレス工程による製造方法は、常温の金型を用い、100MPa以上の高圧でもって加圧することにより、熱硬化樹脂軟化溶融させて成形するという、プレス圧力に依存するメカニズムであるため、熱硬化性樹脂の軟化が不十分となったり、一様な軟化状態とならず、緻密化が不完全となる場合が多い。そのため、不良品の発生頻度が高くなり、歩留まりが低い、といった問題点を有している。
【0009】
また、熱間プレス工程による製造方法は、熱硬化性樹脂の熱硬化温度領域によるプレスであるために、キャビティ内の熱硬化性樹脂は、すぐさま軟化溶解が始まり、その直後に硬化反応に転じる。しかし、この一連の現象は、熱の伝わり方にムラがあり、キャビティ内の熱硬化性樹脂のすべて同時に生じるのが困難である。このため、黒鉛粒子間に熱硬化性樹脂が十分に行き渡る前に硬化するなどにより、緻密化が不完全となる場合がある。
【0010】
このようにして、熱間プレス工程による製造方法は、不良品とまではいかなくても、緻密化が製品毎に多少異なるために、燃料電池の性能を決定づける一要因である燃料電池用セパレータのガス透過性や電気抵抗不良率にバラツキが生じ、個体差がでてしまう、といった問題点も有している。
【0011】
かくして、本発明の目的は、導電性、軽量性、機械的強度、及び耐衝撃性などに優れ、性能差のない安定した燃料電池用セパレータを、歩留まり良く、生産効率高く製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、上記課題を解決するためのもので、以下の要旨を有するものである。
(1)熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末、繊維径0.5〜500nm、繊維長1000μm以下、アスペクト比3〜1000を有し、かつ中心軸が空洞構造からなる微細炭素繊維を含む燃料電池セパレータ用材料を40〜80℃に加温して軟化溶融した状態にて金型を用いて加圧成型する成型工程と、該成型工程で成型された成型体を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
(2)前記成型工程の処理前に、加温装置で前記金型と前記燃料電池セパレータ用材料とを前記所要温度に加温する第1の加温処理工程と、前記金型にヒータを備え、該ヒータによって燃料電池セパレータ用材料を前記所要温度に加温する第2の加温処理工程と、の何れか又は双方の加温処理工程を含む上記(1)に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
(3)微細炭素繊維が、非酸化性雰囲気にて2300〜3500℃で黒鉛化処理されている上記(1)又は(2)に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
(4)微細炭素繊維が、その100重量部あたり、1〜40重量部の熱硬化性樹脂がその表面に被覆された熱硬化性樹脂被覆微細炭素繊維である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
(5)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂及び/又はフラン樹脂である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
(6)前記成型工程での加圧が、15〜100MPaで行う、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末、及び特定の物性を有する微細炭素繊維を含む燃料電池セパレータ用材料を所要温度に加温し、熱硬化性樹脂が軟化溶融した状態で短時間でセパレータの所要の形状に加圧成型するので、成型工程において樹脂硬化反応が起こらず、さらに、硬化工程において成型体を硬化させることで、製品毎に性能のバラツキのない均質の燃料電池セパレータを製造することができる。
【0014】
特に、従来の熱間プレスの一段成型に比べて、電気抵抗不良率や水素透過不良率が減少し、また、製品の歩留まりが極めて向上する。
【0015】
また、本発明で、成型工程の処理前に、加温処理工程を設けて、成形工程における金型と燃料電池セパレータ用材料とを軟化溶融させておくことで、成型工程に要する時間を大幅に短縮でき、生産効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で使用される燃料電池セパレータ用材料である、熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末、及び特定の物性を有する微細炭素繊維を含む組成物について説明する。
【0017】
本発明で熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはこれらの混合系などの熱硬化性樹脂で黒鉛粉末を被覆したものである。黒鉛粉末としては、平均粒径が好ましくは0.1〜150μm、特に好ましくは1〜100μmであり、粉末の形状は、球状でも鱗状であってもよい。また、その結晶子の面間隔(d002)が好ましくは3.354〜3.380Åである。
【0018】
黒鉛粉末の熱硬化性樹脂による被覆方法としては、一般的に用いられる溶液被覆、スプレー被覆、反応被覆、溶融被覆などのいずれを用いても良い。熱硬化性樹脂の黒鉛粉末への被覆量は、黒鉛粉末100重量部に対して熱硬化性樹脂が好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは、5〜25重量部であるのが好適である。
【0019】
本発明で使用される微細炭素繊維としては、繊維径0.5〜500nm以下、繊維長1000μm以下で、好ましくはアスペクト比3〜1000を有する、好ましくは炭素六角網面からなる円筒が同心円状に配置された多層構造を有し、その中心軸が空洞構造の微細炭素繊維が使用される。かかる微細炭素繊維は、従来のPAN、ピッチ、セルロース、レーヨンなどの繊維を熱処理することによって得られる、繊維径が5〜15μmの従来のカーボンファイバーとは大きく異なるものである。本発明で使用される微細炭素繊維は、従来のカーボンファイバーと比べて繊維径や繊維長さが異なるだけでなく、構造的に大きく異なっている。この結果、導電性、熱伝導性、摺動性などの物性の点で極めて優れるものである。
【0020】
上記微細炭素繊維は、その繊維径が0.5nmより小さい場合には、得られる複合材料の強度が不十分になり、500nmより大きいと、機械的強度、熱伝導性などが低下する。また、繊維長が1000μmより大きい場合には、微細炭素繊維が均一に分散し難くなるため、材料の組成が不均一になり、得られるセパレータの機械的強度が低下する。本発明で使用される微細炭素繊維は、繊維径が10〜200nm、繊維長が3〜300μm、好ましくはアスペクト比が3〜500を有するものが特に好ましい。なお、本発明において微細炭素繊維の繊維径や繊維長は、電子顕微鏡により測定することができる。
【0021】
本発明で使用される好ましい微細炭素繊維は、カーボンナノチューブである。このカーボンナノチューブは、グラファイトウイスカー、フィラメンタスカーボン、炭素フィブリルなどとも呼ばれているもので、チューブを形成するグラファイト膜が一層である単層カーボンナノチューブと、多層である多層カーボンナノチューブとがあり、本発明ではそのいずれも使用できる。しかし、多層カーボンナノチューブの方が、大きい機械的強度が得られるとともに経済面でも有利であり好ましい。
【0022】
カーボンナノチューブは、例えば、「カーボンナノチュ−ブの基礎」(コロナ社発行、23〜57頁、1998年発行)に記載されるようにアーク放電法、レーザ蒸発法及び熱分解法などにより製造される。カーボンナノチューブは、繊維径が好ましくは0.5〜500nm、繊維長が好ましくは1〜500μm、好ましくはアスペクト比が3〜500のものである。
【0023】
本発明において特に好ましい微細炭素繊維は、上記カーボンナノチューブのうちで繊維径と繊維長が比較的大きい気相法炭素繊維である。このような気相法炭素繊維は、VGCF(Vapor Grown Carbon Fiber)とも呼ばれ、特開2003−176327号公報に記載されるように、炭化水素などのガスを有機遷移金属系触媒の存在下において水素ガスとともに気相熱分解することによって製造される。この気相法炭素繊維(VGCF)は、繊維径が好ましくは50〜300nm、繊維長が好ましくは3〜300μm、好ましくはアスペクト比が3〜500のものである。そして、このVGCFは、製造しやすさや取り扱い性の点で優れている。
【0024】
本発明で使用される微細炭素繊維は、2300℃以上、好ましくは2500〜3500℃の温度で非酸化性雰囲気にて熱処理することが好ましく、これにより、その表面が黒鉛化され、機械的強度、化学的安定性が大きく向上し、得られる複合材料の軽量化に貢献する。非酸化性雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、窒素ガスが好ましく使用される。
【0025】
本発明で使用される微細炭素繊維は、そのままでもよいが、フェノール樹脂などの上記した熱硬化性樹脂を表面に被覆した微細炭素繊維の使用が好ましい。かかる熱硬化性樹脂を被覆した微細炭素繊維を使用した場合には、分散状態が均一になり、特性の優れた炭素繊維金属複合材料が得られる。熱硬化性樹脂の微細炭素繊維の表面への被覆量が、上記微細炭素繊維100重量部あたり、好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは5〜25重量部が好適である。この熱硬化性樹脂を被覆した微細炭素繊維は、例えば熱硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類とを、触媒の存在下で、微細炭素繊維と混合させつつ反応させることにより製造される。
【0026】
本発明の燃料電池セパレータ用材料における微細炭素繊維は、黒鉛粉末100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、特に好ましくは0.5〜50重量部使用される。微細炭素繊維の使用量が0.1重量部より小さい場合には、導電性向上効果がなく、逆に100重量部を超える場合にはコストが高くなり好ましくない。
【0027】
上記の熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末と特定の物性を有する微細炭素繊維とは、リボンブレンダー、Vブレンダー、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般的に用いられている混合機を使用し、均一に混合することにより、燃料電池セパレータ用材料が得られる。この燃料電池セパレータ用材料を用い、図1に概略が示されるようにして本発明の燃料電池セパレータが製造される。
【0028】
(1)第1の加温処理工程
複数個の上下一対の金型1と、その金型1の下型内(キャビティ内)に所定量の燃料電池セパレータ用材料aを投入する。そして、この複数個の金型1を工業用オーブンまたはコンベアなどの搬送手段を有した炉等の加温装置2にセットし、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは50〜80℃程度の温度に加温して予熱する(図1(a)参照)。
【0029】
なお、燃料電池セパレータ用材料aは必ずしも金型1に投入し、金型1と一緒に加温する必要性はなく、金型1と燃料電池セパレータ用材料a(所望の容器に入れて)とを分別し、それぞれを加温しても良い。
【0030】
キャビティ内の燃料電池セパレータ用材料aは、加温が進むにつれて軟化溶融し始め、黒鉛粉末及び微細炭素繊維間に熱硬化性樹脂が十分に行き渡るようになる。
【0031】
なお、この第1の加温処理工程に替えて、金型1にヒータを内装させ(図示せず)、該ヒータによって金型1を加温して、上記した熱硬化性樹脂を軟化溶融可能な温度に加温してもよい(第2の加温処理工程)。
【0032】
(2)成型工程
第1の加温処理工程が終了したら、金型1をプレス装置3にセットして、好ましくは、15〜100MPa、特に好ましくは20〜80MPaの圧力にて成型する(図1(b)参照)。熱硬化性樹脂は、概ね100MPa以上の高圧でもって加圧すると、キャビティ内の燃料電池セパレータ用材料a自体が軟化溶融する温度に発熱してしまう虞れがあるため、圧力の上限は100MPa以下が望ましい。一方、セパレータの機械的強度や電気的な性質を満足するために、圧力の下限は、概ね15MPaが好ましい。
【0033】
(3)硬化工程
加圧成型が終了したら、プレス装置3から金型1を取り外し、その状態のまま、熱硬化性樹脂が硬化を開始する、好ましくは80℃〜250℃、特に好ましくは100〜230℃に予熱された専用炉4(または上記の加温装置2を共用しても良い)に順次搬入し、熱硬化させる(図1(c)参照)。5分〜15時間の所定時間経過後、熱硬化が完了した形成された燃料電池セパレータAを、金型1から脱型して一連の処理が終了する(図1(d)参照)。
【0034】
硬化処理は、金型1ごとに処理しているが、加圧成型が終了した成型体を金型1から脱型し、その成型体を専用路4または上記の加温装置2に搬入し、熱硬化させても良い。なお、金型1から脱型した硬化処理前の成型体は、極端な外力を与えれば変形するものの、すでに保形性を有しているために、脱型しても型くずれすることはない。
【0035】
特に、上記第2の加温処理工程を採用した場合、金型1をプレス装置3に取り付けたままにして、加圧成型が終了した成型体を金型1から脱型する方法が生産性が向上することから好適である。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の燃料電池セパレータの製造方法についてその実施例を挙げて、更に具体的に説明する。なお、例1〜3は本発明の実施例であり、例4〜5は比較例である。
【0037】
例1〜5
各実施例においては、燃料電池セパレータ用材料として、以下のものを使用した。
黒鉛粉末:平均粒子径が17μmの球状または鱗状の黒鉛粉末100重量部に対し20重量部のフェノール樹脂(熱硬化開始温度は80℃)を溶液被覆法により被覆したもの。微細炭素繊維:繊維径が150nm、繊維長が15μm、アスペクト比が30の気相法炭素繊維をアルゴンガス雰囲気中、温度2800℃で30分間、加熱処理して黒鉛化した微細炭素繊維100重量部に対し、15重量部のフェノール樹脂(熱硬化開始温度は80℃)を溶液被覆法により被覆したもの。
【0038】
上記各成分を表1に示される重量割合にてリボンブレンダーを用いて30分攪拌混合し、セパレータ材料を得た。
【0039】
上記セパレータ材料を使用して、第1の加温処理工程、成型工程、硬化工程を経て燃料電池セパレータAを製造したが、このとき、成型温度(金型1と燃料電池セパレータ用材料aの温度)と、成型圧力(プレス圧)とを表1に示されるように適宜に替えた。また、熱硬化性樹脂の硬化は、150℃に1時間保持して実施した。このようにしてサンプルとしての燃料電池用セパレータを製造した。それぞれサンプル数200において、電気抵抗値不良率(電気抵抗20mΩcm以上のもののパーセント)と、水素透過値不良率(水素透過値10−11mol/msPa以上のもののパーセント)を求めた。結果を表1に示した。
【0040】
なお、実施例における電気抵抗値の計測方法は、燃料電池用セパレータを、長さ200mm、断面が1mm四方の供試体に加工し、該供試体を用いて4端子法にて測定を行った。また、水素透過値の計測方法は、JIS
K7126のA法(差圧法)に準じて行い、試料調湿:23℃、50%相対湿度で48Hr以上、測定温度:23℃、使用ガス種:水素ガス、の条件下で行った。
【0041】
例1
例1は、球状の黒鉛粉末を用い、成型温度を65℃にし、成型圧力を50MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は0.3%、水素透過不良率は0.5%であり、製造された燃料電池用セパレータは、不良品の発生率が極めて低いことが確認された。
【0042】
例2
例2は、球状の黒鉛粉末を用い、成型温度を70℃にし、成型圧力を30MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は0.5%、水素透過不良率は0.5%であり、製造された燃料電池用セパレータは、不良品の発生率が極めて低いことが確認された。
【0043】
例3
例3は、鱗状の黒鉛粉末を用い、成型温度を65℃にし、成型圧力を50MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は0.5%、水素透過不良率は0.5%であり、製造された燃料電池用セパレータは、不良品の発生率が極めて低いことが確認された。
【0044】
例4
球状の黒鉛粉末を用い、成型温度を25℃にし、成型圧力を20MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は8%、水素透過不良率は11%であり、製造された燃料電池用セパレータは、不良品の発生率が極めて高いことが確認された。
【0045】
例5
従来の熱間プレス工程による製法であり、球状の黒鉛粉末を用い、成型温度を、150℃にし、成型圧力を20MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は0.5%、水素透過不良率は6%であり、製造された燃料電池用セパレータは、水素透過不良率が1割を越え、不良品の発生率が極めて高いことが確認された。
【0046】
例6
球状の黒鉛粉末を用い、成型温度を65℃にし、成型圧力を5MPaとした。その結果、電気抵抗不良率は15%、水素透過不良率は13%であり、製造された燃料電池用セパレータは、電気抵抗不良率、水素透過不良率とも1割を越え、不良品の発生率が極めて高いことが確認された。
【0047】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】: 本発明の一実施形態にかかる燃料電池用セパレータの製造方法の概略を示す製造工程図である。
【符号の説明】
【0049】
a 燃料電池セパレータ用材料 A 燃料電池セパレータ
1 金型 2 加温装置
3 プレス装置 4 専用路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂が被覆された黒鉛粉末、繊維径0.5〜500nm、繊維長1000μm以下であり、かつ中心軸が空洞構造からなる微細炭素繊維を含む燃料電池セパレータ用材料を40〜80℃に加温して軟化溶融した状態にて金型を用いて加圧成型する成型工程と、該成型工程で成型された成型体を硬化させる硬化工程とを含むことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記成型工程の処理前に、加温装置で前記金型と前記燃料電池セパレータ用材料とを前記所要温度に加温する第1の加温処理工程と、前記金型にヒータを備え、該ヒータによって燃料電池セパレータ用材料を前記所要温度に加温する第2の加温処理工程と、の何れか又は双方の加温処理工程を含む請求項1に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
【請求項3】
微細炭素繊維が、非酸化性雰囲気にて2300〜3500℃で黒鉛化処理されている請求項1又は2に記載の燃料電池セパレータの製造方法。
【請求項4】
微細炭素繊維が、その100重量部あたり、1〜40重量部の熱硬化性樹脂がその表面に被覆された熱硬化性樹脂被覆微細炭素繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂及び/又はフラン樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記成型工程での加圧が、15〜100MPaで行う、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池セパレータの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−73470(P2006−73470A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258606(P2004−258606)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【出願人】(504333248)株式会社 FJコンポジット (3)
【Fターム(参考)】