説明

燃焼装置および燃焼装置の制御方法

【課題】ラジアルスワーラを軸心方向に複数分割することにより、バーナから燃焼室へ噴射される予混合気の径方向濃度分布を容易に制御することができる燃焼装置、およびこの燃焼装置の制御方法を提供する。
【解決手段】内側に燃焼室を形成する燃焼筒(12)と、前記燃焼筒の頂部に配置されて、前記燃焼室に環状に燃料と空気との予混合気を噴射する予混合通路(42a)、および該予混合通路に燃料と空気を径方向内方に導入するラジアルスワーラ(50)を有するメインバーナ(42)とを備える燃焼装置(2)において、前記ラジアルスワーラ(50)に、分割板(56)によって軸心方向に分割された複数のスワーラ段(50b)を設け、前記分割板(56)の径方向長さ(L1)を、前記予混合通路(42a)の上流部を形成する径方向に沿った直線部の長さ(L2)よりも短く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジン,ボイラ等、高温ガスの供給を必要とする機器に使用する燃焼装置、および、この燃焼装置の、特に予混合気の径方向の燃料濃度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいては、環境保全への配慮から、燃焼により排出される排ガスの組成に関して厳しい環境基準が設けられており、窒素酸化物(以下、NOxという)などの有害物質を低減することが求められている。一方、大型の地上設備用ガスタービンエンジンや航空機用ガスタービンエンジンでは、低燃費化および高出力化の要請から、圧力比が高く設定される傾向にあり、それに伴って燃焼装置入口における高温・高圧化が進み、この燃焼装置の入口温度の高温化によって燃焼温度が高くなり易いことから、NOxをむしろ増加させる要因になることが懸念されている。
【0003】
そこで、近年では、NOx発生量を効果的に低減させる希薄予混合燃焼方式を採り入れた燃焼方式、例えば、希薄予混合燃焼方式と拡散燃焼方式とを組み合わせた複合燃焼方式が提案されている(特許文献1,2)。希薄予混合燃焼方式は、空気と燃料とを予め混合して燃料濃度を均一化した混合気として燃焼させるので、局所的に火炎温度が高温となる燃焼領域が存在せず、かつ燃料の希薄化により全体的にも火炎温度を低くできることから、NOx発生量を効果的に低減できる利点がある一方、低負荷燃焼時に吹き消えが起こりやすい。また、拡散燃焼方式は、燃料と空気とを拡散・混合しながら燃焼させることから、低負荷時にも吹き消えが起こり難く、保炎性能に優れている利点がある一方、NOx発生量の低減に課題がある。したがって、複合燃焼方式によれば、始動時および低負荷時の拡散燃焼により燃焼安定性を確保しながら、高負荷時の予混合燃焼によりNOx発生量の低減を図ることができる。
【0004】
従来の複合燃焼方式の燃焼装置では、例えば図6に示すように、燃焼装置80の燃焼筒81の頂部81aに配置された拡散燃焼バーナ(パイロットバーナ)82の外側を囲むようにして、固定旋回羽根を有するラジアルスワーラ83を備える予混合燃焼バーナ(メインバーナ)84を配置し、予混合気Pを旋回流として燃焼室に噴射する旋回型のバーナユニット85を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−28871号公報
【特許文献2】特開平8−210641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなラジアルスワーラ83を備える旋回型のメインバーナ84を使用した従来の燃焼装置80においては、保炎を強化しようとするときには、予混合気の逆流Rを強めるために、予混合気の旋回が強くなるように設定する。そのためには、ラジアルスワーラ83の固定旋回羽根のベーン角度を大きくする必要があるが、その場合、予混合気Pの通路面積を確保するために、同時に軸心方向のベーン高さを大きくする必要があり、ラジアルスワーラ83の入口高さも大きくなる。これにより、空気及び燃料が導入される入口部の軸心方向寸法も大きくなる。
【0007】
ところで、従来の燃焼装置80では、装置の小型化のために、ガスタービン圧縮機からの空気通路86を、燃焼筒81とその外方を覆うハウジングHとの間に形成して、空気Aを、燃焼筒81の下流端から上流端である頂部81aへ向かって燃焼ガスと逆方向に導入するものがある。その場合、この空気通路86を通過した空気Aは、径方向外側に開口するラジアルスワーラ83の入口から予混合通路に導入され、燃料と混合されて予混合気として圧縮空気の流れと反対の向きに燃焼筒に噴射される。
【0008】
すなわち、ラジアルスワーラ83に導入される空気Aは、ラジアルスワーラ83を介してほぼ90°流れ方向が転換されるので、その方向転換に伴う遠心力により、予混合通路の上流部における空気の軸心方向の流量分布に偏りが生じる。また、上記のようにラジアルスワーラの旋回羽根のベーン角度を大きくして保炎の安定化を図る場合には、前記入口部の軸心方向寸法が大きくなるので、流量分布の偏りがさらに大きくなる。その結果、予混合通路から燃焼室内へ噴射される予混合気の径方向の燃料濃度分布も偏ったものとなるので、径方向の燃料濃度分布を均一にする、または、燃料濃度に意図的に分布をつけるなどの制御が困難であるという課題があった。
【0009】
本発明は、ラジアルスワーラの旋回羽根のベーン角度を大きく維持して燃焼室内に強い逆流を生成することにより保炎の安定化を図りながら、ラジアルスワーラを軸心方向に複数分割して空気及び燃料が導入される入口部を複数設けることにより、バーナから燃焼室へ噴射される予混合気の径方向濃度分布を容易に制御することができる燃焼装置、および、この燃焼装置において予混合気の径方向燃料濃度分布を容易に制御する燃焼装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明に係る燃焼装置は、内側に燃焼室を形成する燃焼筒と、前記燃焼筒の頂部に配置されて、前記燃焼室に環状に燃料と空気との予混合気を噴射する予混合通路、および該予混合通路に燃料と空気を径方向内方に導入するラジアルスワーラを有するメインバーナと、前記ラジアルスワーラにその入口側から燃料を噴射する燃料噴射管とを備える燃焼装置であって、前記メインバーナは、前記燃焼筒と同心に配置された外周円筒部、および該外周円筒部の上流側端から径方向に円板状に延びる外周円板部からなるバーナ外筒と、前記外周円筒部の径方向内側に位置する内周円筒部、および該内周円筒部の上流側端部から前記外周円板部の上流側で径方向に延びる内周円板部からなるバーナ内筒とを備え、前記バーナ外筒と前記バーナ内筒との間の空間が前記予混合通路を形成しており、前記ラジアルスワーラが、前記バーナ外筒の円板部の最外周部と前記バーナ内筒の円板部の最外周部との間に設けられ、かつ分割板によって軸心方向に分割された複数のスワーラ段を有しており、前記分割板の径方向長さが、前記予混合通路の上流部を形成する径方向に沿った直線部よりも短い。
【0011】
この構成によれば、ラジアルスワーラが、分割板によって、軸心方向に複数のスワーラ段として分割されているので、ラジアルスワーラに導入される空気の流量が軸心方向に偏ることを抑制することができる。しかも、空気通路を通過してきた空気は、ラジアルスワーラに向かって方向転換する際に、ラジアルスワーラの入口部で最も大きな遠心力を受けるので、この部分での軸心方向の空気流量の偏りを抑制するだけの径方向長さがあれば足り、ラジアルスワーラの径方向長さが短い分だけ、ラジアルスワーラを出た後の予混合通路が長くなるので、予混合が促進される。
【0012】
本発明に係る燃焼装置の制御方法では、上記の燃焼装置において、前記各スワーラ段ごとに供給する燃料の流量を制御することにより、前記メインバーナから前記燃焼室内に噴射される予混合気の径方向の燃料濃度分布を制御する。
【0013】
本発明に係る燃焼装置の制御方法においては、ラジアルスワーラを軸心方向に分割したことにより、空気の軸心方向の流量分布が均一化されているので、各スワーラ段に供給する燃料の流量を制御することのみによって、燃焼室内に噴射される予混合気の径方向燃料濃度分布を容易に制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る燃焼装置および燃焼装置の制御方法によれば、ラジアルスワーラを軸心方向に複数分割して空気及び燃料が導入される入口部を複数設けることにより、ラジアルスワーラの旋回羽根のベーン角度を大きく維持して保炎の安定化を図りながらも、バーナから燃焼室へ噴射される予混合気の径方向濃度分布を容易に制御して、燃焼時のNOxを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃焼装置が適用されるガスタービンエンジンを示す概略図である。
【図2】図1の燃焼装置を示す断面図である。
【図3】図2の燃焼装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図1の燃焼装置の効果を説明するための模式図である。
【図6】従来の燃焼装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る燃焼装置が適用されるガスタービンエンジンを示す簡略構成図である。ガスタービンエンジンGTは圧縮機1、燃焼装置2およびタービン3を主構成要素として構成されており、圧縮機1から供給される圧縮空気を燃焼装置2で燃焼させ、それにより発生する高圧の燃焼ガスをタービン3に供給する。圧縮機1は回転軸5を介してタービン3に連結されて、このタービン3により駆動される。このガスタービンエンジンGTの出力により、航空機のロータまたは発電機のような負荷4を駆動する。燃焼装置2には、燃料供給装置9から送給される燃料Fが、燃料制御装置8を介して供給される。
【0017】
図2は燃焼装置2を示す断面図である。この燃焼装置2は、エンジン回転軸心の周りに環状に複数個配置されるキャン型であり、内側に燃焼室10を形成する燃焼筒12と、燃焼筒12の頂部12aに取り付けられて燃焼室10に燃料と空気の予混合気を噴射するバーナユニット14とを備えている。これら燃焼筒12およびバーナユニット14は、燃焼装置2の外筒となるほぼ円筒状のハウジングHに同心状に収容されている。ハウジングHの先端にはエンドカバー18がボルト20により固定されている。
【0018】
この燃焼装置2は逆流型であり、ハウジングHと燃焼筒12の側壁12bとの間に、圧縮機1からの圧縮空気Aを、矢印で示すようにバーナユニット14方向、つまり、燃焼室10内の燃焼ガスGの流動方向と逆方向に導く空気通路30が形成されている。
【0019】
燃焼筒12の上流側の周壁には、1つ又は複数の点火プラグ36が、ハウジングHおよび燃焼筒12を貫通してハウジングHに固定されており、バーナユニット14の後述するパイロットバーナ44から噴射された予混合気に点火して、燃焼筒12の上流部において燃焼領域Sを形成させる。また、燃焼筒12における燃焼領域Sよりも下流側には、短いパイプを貫通させて形成された複数の希釈用空気孔38が配設されている。
【0020】
図3は、図2の燃焼装置2の要部を示す断面図である。バーナユニット14は、旋回成分を含む環状の予混合気P1を噴射するメインバーナ42と、メインバーナ42の内側に配置されたパイロットバーナ44とを備えている。具体的には、バーナユニット14は、燃焼筒12の軸心Oと同心の外周円筒部46aと、この外周円筒部46aの上流側端から軸心Oに垂直な方向に円板状に延びる外周円板部46bとからなるバーナ外筒46を有し、さらに外周円筒部46aの径方向内側に位置する内周円筒部48aと、内周円筒部48aの上流側端部付近から外周円板部46bの上流側で外周円板部46bに対して平行に延びる内周円板部48bとからなるバーナ内筒48を有している。バーナ外筒46とバーナ内筒48との間の空間が、メインバーナ42の環状の第1予混合通路42aを形成し、バーナ内筒48の内方空間がパイロットバーナ44の第2予混合気通路44aを形成している。
【0021】
メインバーナ42の第1予混合通路42aの、径方向外方に向く上流部、すなわち2つの円板部46bおよび48bの各最外周部間に、ラジアルスワーラ50が取り付けられている。ラジアルスワーラ50の径方向外側は、第1予混合通路42aに空気Aおよび燃料F1を径方向内方に導入する入口部50aとして形成されており、この入口部50aのさらに径方向外側には、燃料F1を供給するための燃料通路を形成する第1燃料噴射管52が、エンドカバー18を貫通して配置されている。第1燃料噴射管52は、周方向に等間隔に複数並んで設けられている。
【0022】
ラジアルスワーラ50は、2つの円板部46bおよび48bの最外周部間に形成された嵌合部42bに嵌め込まれることにより、メインバーナ42に固定されている。IV−IV線に沿った断面図である図4に示すように、ラジアルスワーラ50は、第1予混合通路42aに導入される空気Aおよび燃料F1に旋回を与える固定旋回羽根54を有している。さらに、ラジアルスワーラ50には、環状の分割板56が設けられている。
【0023】
図3に示すように、ラジアルスワーラ50には、この分割板56によって軸心方向に分割された複数のスワーラ段50bが形成されている。本実施形態において、ラジアルスワーラ50は、4つの分割板56によって5つのスワーラ段50bに分割されている。ラジアルスワーラ50の固定旋回羽根54によって与えられる旋回により、第1予混合通路42a内で混合が進んで予混合気P1が生成され、燃焼装置2の軸心Oを中心とする旋回流として、第1予混合通路42aの下流側の開口よりなる噴射口42cから燃焼室10へ噴射される。
【0024】
分割板56は、空気通路30を通過してきた圧縮空気Aを、径方向内方に偏向させて第1予混合通路42aに導入するのに十分な程度の径方向長さを有していればよく、分割板56の径方向長さL1、つまりラジアルスワーラ50の径方向長さの好ましい範囲は、第1予混合通路42aの上流側の径方向に沿った直線部の長さL2の1/6〜2/3であり、より好ましくは1/4〜1/2である。本実施形態においては、分割板56の径方向長さL1は、第1予混合通路42aの径方向直線部長さL2の1/3に設定されている。
【0025】
第1燃料噴射管52には、複数のスワーラ段50bと同数の燃料噴射口52aが、軸心方向に並べて設けられている。各燃料噴射口52aは、各スワーラ段50bの入口側に対向するように配置されており、燃料F1は、複数の燃料噴射口52aのそれぞれを介して各スワーラ段50bに噴射される。本実施形態においては、各燃料噴射口52aの口径を同一にして、各スワーラ段50bに噴射される燃料F1の流量が均一になるように設定している。
【0026】
なお、第2予混合通路44aの上流部は、パイロットバーナ44に支持された環状の第1通路板63と、この第1通路板63にスペーサ64を介して軸方向に対向するようにボルト65で取り付けられた円板状の第2通路板66との間に形成されている。第2予混合気通路44aの上流端の径方向外側に、燃料F2を供給するための第2燃料噴射管67が、エンドカバー18を貫通して配置されている。メインバーナ42に燃料F1を供給する第1燃料噴射管52と、パイロットバーナ44に燃料F2を供給する第2燃料供給通路67とは、互いに独立した燃料供給系として設けられており、燃料流量をそれぞれ個別に制御することにより混合気の燃料濃度(空燃比)を独立に調節することが可能となっている。
【0027】
次に、上記のように構成した燃焼装置2の動作について説明する。
【0028】
図3に示すように、圧縮機1からの圧縮空気Aは、燃焼筒12の側壁12bとハウジングHとの間に形成された逆流通路である空気通路30を通過して、メインバーナ42の第1予混合通路42aの上流部に取り付けられたラジアルスワーラ50の入口部50aに導かれる。圧縮空気Aは、径方向内方に90°偏向され、さらに第1予混合通路42aの下流部に入るときに90°偏向されるので、ラジアルスワーラ50に導入されるときに、大きな遠心力を受ける。
【0029】
この場合、従来の、分割板を有しないラジアルスワーラ50であれば、図5(a)に示すように、空気Aの流量には、遠心力の影響により、軸心方向先端側(図5の左側)が多くなるように偏りが生じる。しかしながら、本実施形態に係る燃焼装置2のラジアルスワーラ50においては、図5(b)に示すように、空気Aは分割板56によって軸心方向に分割された複数のスワーラ段50bに導入される。したがって、各スワーラ段50b内においては軸心方向の流量の僅かな偏りが生じるものの、ラジアルスワーラ50全体における空気Aの軸心方向の流量の偏りは大幅に抑制される。
【0030】
さらに、図3の各スワーラ段50bに対応して設けられている第1燃料噴射管52の燃料噴射口52aが、それぞれ同一の口径を有しているので、各スワーラ段50bに噴射される燃料F1の流量もほぼ均一に制御される。
【0031】
つまり、本実施形態で使用されるラジアルスワーラ50においては、分割板56によって軸心方向に分割された各スワーラ段50b内に導入される空気Aおよび燃料F1のいずれの流量も、ほぼ均一に制御されているので、第1予混合通路42aの上流部で形成される予混合気P1の軸心方向の燃料濃度分布が均一化される。その結果、第1予混合通路42aから燃焼室10へ噴射される予混合気P1の径方向の燃料濃度分布を均一化することができる。
【0032】
また、本実施形態のように、第1燃料噴射管52の燃料噴射口52aの口径を同一とせずに、個別に設定してもよい。低NOx燃焼を実現するための、燃焼室10に噴射される予混合気P1の最適な燃料濃度分布は、燃焼室10の形状や、メインバーナ42と組み合わせて使用されるパイロットバーナ44の構造など、さまざまな要因により異なる場合がある。すなわち、燃焼室10内に噴射される予混合気P1の燃料濃度を、必ずしも均一ではなく、意図的に偏った分布となるように制御するべき場合がある。
【0033】
そのような場合でも、本発明に係る燃焼装置2によれば、ラジアルスワーラ50を軸心方向に分割したことにより、空気Aの軸心方向の流量分布が均一化されているので、各スワーラ段50bに供給する燃料F1の流量を制御することのみによって、燃焼室10内に噴射される予混合気P1の径方向燃料濃度分布を容易に制御することができる。
【0034】
各スワーラ段50bに供給する燃料の流量の制御は、例えば、上記のように、各スワーラ段50bに対応する燃料噴射口52aの口径を個別に設定することで容易に行うことができる。
【0035】
また、軸心方向に多段化したスワール50は、本実施形態のような場合に、特に大きな効果を得ることができる。つまり、燃焼装置2においては、ラジアルスワーラ50に導入される空気Aが、ラジアルスワーラ50を介して流れ方向が90°転換されることにより大きな遠心力を受けるが、ラジアルスワーラ50に分割板56を設けることにより、ラジアルスワーラ50に導入される空気Aの軸心方向の流量分布の偏りを最小限に抑えることができる。したがって、燃焼装置2をコンパクトな構成としながらも、燃焼室10内での予混合気P1の径方向燃料濃度分布を最適化して低NOx燃焼を実現することができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、一例として、ラジアルスワーラ50を、4つの分割板56によって5つのスワーラ段50bに分割した構成としたが、分割して設けるスワーラ段50bの数は5つに限らず、適宜設定してよい。
【0037】
また、上記実施形態では、ラジアルスワーラ50の固定旋回羽根54と分割板56とがほぼ同じ径方向長さを有するものとして構成したが、固定旋回羽根54と分割板56とが異なる径方向長さを有していてもよい。さらに、各スワーラ段50bの径方向長さおよび軸方向長さは、それぞれ、スワーラ段毎に異なっていてもよい。
【0038】
第1予混合気通路42aの、径方向に沿った上流部と軸心方向に沿った下流部とをつなぐ内径側の角部42dの形状は、図3に二点鎖線で示すように、楕円円弧形状としてもよい。また、上記実施形態においては、パイロットバーナ44を、予混合気P2を燃焼室10内に噴射するバーナとして説明したが、パーロットバーナ44は、燃料F2と空気Aをそれぞれ別個に燃焼室10内に噴射する拡散燃焼バーナであってもよい。また、上記実施形態においては、燃焼装置2をガスタービンエンジンGTに適用した例を説明したが、本発明に係る燃焼装置は、ガスタービンエンジンに限らず、ボイラなど高温ガスの供給を必要とする他の機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
2 燃焼装置
10 燃焼室
12 燃焼筒
12a 頂部
14 バーナユニット
30 空気通路
42 メインバーナ
42a 第1予混合通路
50 ラジアルスワーラ
50a ラジアルスワーラの入口部
50b スワーラ段
52 燃料噴射管
52a 燃料噴射口
54 固定旋回羽根
56 分割板
F1 燃料
A 空気
L1 分割版の径方向長さ
L2 第1予混合通路の径方向直線部長さ
P1 予混合気
O 燃焼筒軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に燃焼室を形成する燃焼筒と、
前記燃焼筒の頂部に配置されて、前記燃焼室に環状に燃料と空気との予混合気を噴射する予混合通路、および該予混合通路に燃料と空気を径方向内方に導入するラジアルスワーラを有するメインバーナと、
前記ラジアルスワーラにその入口側から燃料を噴射する燃料噴射管と
を備える燃焼装置であって、
前記メインバーナは、前記燃焼筒と同心に配置された外周円筒部、および該外周円筒部の上流側端から径方向に円板状に延びる外周円板部からなるバーナ外筒と、前記外周円筒部の径方向内側に位置する内周円筒部、および該内周円筒部の上流側端部から前記外周円板部の上流側で径方向に延びる内周円板部からなるバーナ内筒とを備え、前記バーナ外筒と前記バーナ内筒との間の空間が前記予混合通路を形成しており、
前記ラジアルスワーラが、前記バーナ外筒の円板部の最外周部と前記バーナ内筒の円板部の最外周部との間に設けられ、かつ分割板によって軸心方向に分割された複数のスワーラ段を有しており、
前記分割板の径方向長さが、前記予混合通路の上流部を形成する径方向に沿った直線部よりも短い
燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載された燃焼装置の制御方法であって、前記各スワーラ段ごとに供給する燃料の流量を制御することにより、前記メインバーナから前記燃焼室内に噴射される予混合気の径方向の燃料濃度分布を制御する燃焼装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57505(P2013−57505A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282587(P2012−282587)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2008−136068(P2008−136068)の分割
【原出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)