説明

燻蒸器

【課題】大小の外径からなる複数の筒状本体1,2で形成され、使用時には内外筒状本体を積層載置して大きな閉空間(燻蒸空間)を形成し、収納時には、内側筒状本体を外側筒状本体内に差し入れてコンパクト化する燻蒸器において、内外筒状本体の全てに把手部を設けて、組立並びに収納への移行作業を容易にする。
【解決手段】外側筒状本体1の上方外周面に把手部13を設けると共に、下方内周面に内側筒状本体2へ積層係止可能とする係止突部14を設け、内側筒状本体2を外側筒状本体1に挿入収納して前記係止突部上に載置した際に、内側筒状本体が外側筒状本体上端から上方に突出する高さを備え、前記突出外周面における外側筒状本体を内側筒状本体に係止突部に係止した際に外側筒状本体の下端縁から露出する位置に把手部23を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭で簡単に食品の燻製を製造できる燻蒸器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の燻製加工は、所定の閉空間に加工対象の食品を内置し、所定の木材チップに点火し若しくは加熱して発生させた燻煙を前記閉空間に満たして、所定の燻蒸を行なうものである。
【0003】
特に家庭での燻製製造に使用する器具とし、従前より種々構造の器具が提案されているが、その中のうち、上下筒体を備え、使用に際しては上下筒体を積層状態として形成される燻蒸室空間(閉空間)を大きくし、また収納時や前記閉空間に狭い空間を採用するために、上下筒体を内外重ね合わせてコンパクトにする器具が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1(実開平5−68282号公報)には、円錐筒状の上下筒体を備え、下方筒体の上端に載置可能な形状で、且つ庇状部の上方筒体の載置部を備えた枠状接ぎ具を別に設けておき、前記枠状接ぎ具を使用して上下筒体を積層し、また前記枠状接ぎ具を外して上方筒体を下方筒体に差し入れ、枠状接ぎ具を上方筒体の上方開口部に装着して収納状態とする器具が開示されている。
【0005】
又特許文献2(特許3729623号公報)には、外径が相違する大小の内外筒体を備え、内外筒体の一方の筒体の重合する内外周面の一方に係止突部を設け、前記係止突部を開口部の一方側に偏らせて設けて、前記係止突部を使用して内外筒体を上下積層して使用状態とし、一方の筒体を使用状態から180度上下に展開して係止突部が邪魔にならないようにして内筒体を外筒体に収納して、収納状態としている器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−68282号公報。
【特許文献2】特許3729623号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の器具のように上下筒体を円錐筒状に形成すると、重合収納が可能であるが、筒状本体の外形を正確に製出しなければならなく、その製造が煩瑣である。また枠状接ぎ具という部材が増加することで、その取り扱いも煩瑣である。
【0008】
特許文献2記載の器具は、円筒状の本体を採用しており、その製造が容易であるといえるが、内外筒体の何れかを180度逆転させて収納するので、上下2段に限定されてしまうし、内筒体側には把手部を突設することができない。
【0009】
また下方筒体の底部に燻蒸皿を組み込む構造では、燻蒸チップの追加の必要性があった場合に、上方筒体を外し、下方筒体の上方開口部から補給しなければならなく、チップの補給作業が面倒である。
【0010】
そこで本発明は、大小の外径からなる複数の筒状体で形成され、且つ上下筒体の全てに把手部を設けて各種作業を容易に実施できる新規な燻蒸器を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燻蒸器(請求項1)は、挿入収納可能な複数の筒状本体を備え、前記各筒状本体の内周面適宜位置に網載せ用の載置突部を設け、外側の筒状本体の上方外周面に把手部を設けると共に、下方内周面に内側筒状本体へ積層係止可能とする係止突部を設け、内側筒状本体を外側筒状本体に上方から挿入収納して前記係止突部上に載置した際に、内側筒状本体が外側筒状本体上端から上方に突出する高さを備えると共に、当該突出した外周面における外側筒状本体を内側筒状本体に係止突部による係止載置した際に外側筒状本体の下端縁から露出する位置に把手部を設けてなることを特徴とするものである。
【0012】
従って内側筒状本体の上に、係止突部を以って外側筒状本体を積層載置すると相応の大きさの燻蒸空間を得ることができ、内部に適宜燻煙発生部、網体で支持した燻製対象食品を内置し、蓋体などの使用によって閉空間を形成することで、容易に食品の燻蒸を実施でき、不使用時には外側筒状本体内に上方より内側筒状本体を差し入れると、内外重合状態となりコンパクトに収納でき、使用時の組上げ並びに収納状態への移行作業は、全て把手部を持って行なうことができる。
【0013】
また本発明(請求項2)は、前記の複数の筒状本体と、前記各筒状本体の外径に対応する段差部を備えた蓋体及び底皿体と、前記各筒状本体の外径に対応する網体と、適宜大きさの燻蒸皿とで構成してなることを特徴とするものである。
【0014】
而して前記のとおり内外筒状本体は、使用時に積層され内側筒状本体が下方に位置し、外側筒状本体が上方に位置して、内側筒状本体の下端縁が燻蒸皿を内置した底皿体に載置され、蓋体が外側筒状本体の上端縁に載置されることになる。更に収納時には筒状本体が内外重合状態となり、底皿体と、蓋体との対応位置(当接位置)が逆転するものであるが、段差部によって各々の状態において、底皿体と蓋体は筒状本体としっかりと組み合わされることになる。
【0015】
更に燻蒸チップの補給作業においては、下方となる内側筒状本体の把手部を握持して持ち上げると、燻蒸皿が露出するので、燻蒸チップの補給を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のとおり大小の外径からなる複数の筒状本体で形成され、全ての筒状本体の外周面に把手部を設けており、使用時及び収納時のいずれの場合にも把手部が露出することになり、使用時の積層組立作業並びに収納時の重合作業が容易に且つ迅速に行うことができ、また使用中におけるに燻蒸チップ補給作業も容易に行うことができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の分解斜視図。
【図2】同使用状態の全体斜視図。
【図3】同使用状態の断面図。
【図4】同係止突部の説明図。
【図5】同収納状態の全体斜視図。
【図6】同収納状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した燻蒸器は、大小の外径の異なる外側筒状本体1と、内側筒状本体2と、蓋体3と、底皿体4と、燻蒸皿5とで構成されている。
【0019】
外側筒状本体1は、筒状の本体部11に網載せ用の載置突部12と、把手部13と、係止突部14を設け、網体15を付属させたものである。
【0020】
載置突部12は、本体部11の内周面適宜位置に一箇所又は二箇所程度において内周側に突出するビート部で形成したもので、把手部13は本体部11の上方外周面において外周方向に突出し、把持箇所に耐熱処理(木製柄の採用など)を施して設けたものである。
【0021】
係止突部14は、後述する内側筒状本体2の内側まで突出する載置部141と、載置部141の先端より下方に垂設した係止部142で形成されるもので、下方内周面に三乃至四方に設けたものである。
【0022】
網体15は、両側辺を本体部11の内周面に一致させ、他方辺は、前記内周径より幅狭に形成して、本体部11の上部開口箇所から載置突部12への載置装着可能な大きさとしたものである。
【0023】
内側筒状本体2は、筒状の本体部21に網載せ用の載置突部22と、把手部23を設け、網体24を付属させたものである。
【0024】
載置突部22と網体24の構造は、前記の外側筒状本体1の載置突部12及び網体15と同一である。
【0025】
また特に本体部21は、内側筒状本体2を外側筒状本体1に挿入収納して前記係止突部14の載置部141上に載置した際に、本体部21が外側筒状本体1の上端から上方に突出する高さを備えるようにしたもので、把手部23は前記の突出した本体部21の外周面において、外側筒状本体1を内側筒状本体2に係止突部14による係止載置した際に外側筒状本体1の下端縁から露出する位置に設けたものである。
【0026】
蓋体3は、大径の外側筒状本体1に被せることができる大きさで、また底皿体4も大径の外側筒状本体1を載置できる大きさとし、特に外側筒状本体1及び内側筒状本体2が嵌合する内周壁を備えるように周囲部を段差形状に形成したものである。また蓋体3には持ち手31を付設してなるものである。
【0027】
燻蒸皿5は、内側筒状本体2の内部に配置できる大きさで、充分な燻蒸チップAが収納できる大きさとしたものである。
【0028】
而して前記燻蒸器は、使用時には、図2,3に例示するように、底皿体4上に内側筒状本体2を載置すると共に、燻蒸皿5に燻蒸チップAを盛り付けて点火して燻煙を発生させて内側筒状本体2内の底皿体4上に内置する。
【0029】
更に内側筒状本体2の上に、係止突部14の載置部141を以って外側筒状本体1を積層載置し、係止部142を内側筒状本体2の内周側に垂下させて横移動を阻止させて積層載置を安定させる。
【0030】
そして外側筒状本体1や内側筒状本体2の載置突部12,22に網体15,24を載置し、網体15,24に燻製対象食品Bを載置したり或いは吊下げて内置し、蓋体3で外側筒状本体1の上部開口部を塞ぐことで、所定の閉空間が形成される。
【0031】
前記状態で所定時間放置すると、対象食品Bが燻蒸され、燻製食品に加工されるものである。更に燻蒸チップの補給が必要な場合には、下方の内側筒状本体2の把手部23を以って全体を持ち上げると、燻蒸皿5が露出するので、燻蒸チップAの補給が容易にできる。
【0032】
また前記燻蒸器を収納する場合などには、図5,6に例示するとおり、底皿体4に外側筒状本体1を載置し、更に内側筒状本体2を外側筒状本体1内に上方より差し入れ、載置部141上に載置されて内外重合状態となり、内側筒状本体2の上端縁に蓋体3を載置することで全体がコンパクトとなる。
【0033】
前記の使用時の組立作業並びにコンパクト化作業において、内外筒状本体1,2は、把手部13,23を備えているので、全て把手部を持って行なうことができ、その作業が容易になされるものである。
【0034】
尚前記の実施形態は、内外二重筒状本体を採用した例を示したが、三重、四重の多重筒状本体を採用しても、相対的に内外関係にある筒状本体が所定の要件を具備することで、本提案を実現できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 外側筒状本体
11 本体部
12 載置突部
13 把手部
14 係止突部
141 載置部
142 係止部
15 網体
2 内側筒状本体
21 本体部
22 載置突部
23 把手部
24 網体
3 蓋体
31 持ち手
4 底皿体
5 燻蒸皿
A 燻蒸チップ
B 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入収納可能な複数の筒状本体を備え、前記各筒状本体の内周面適宜位置に網載せ用の載置突部を設け、外側の筒状本体の上方外周面に把手部を設けると共に、下方内周面に内側筒状本体へ積層係止可能とする係止突部を設け、内側筒状本体を外側筒状本体に上方から挿入収納して前記係止突部上に載置した際に、内側筒状本体が外側筒状本体上端から上方に突出する高さを備えると共に、当該突出した外周面における外側筒状本体を内側筒状本体に係止突部による係止載置した際に外側筒状本体の下端縁から露出する位置に把手部を設けてなることを特徴とする燻蒸器。
【請求項2】
各筒状本体の外径に対応する段差部を備えた蓋体及び底皿体と、前記各筒状本体の内径に対応する網体と、適宜大きさの燻蒸皿とを備えてなる請求項1記載の燻蒸器。
【請求項3】
筒状本体が2個で構成されてなる請求項1又は2記載の燻蒸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−29206(P2010−29206A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251762(P2009−251762)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3132256号
【原出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000111867)パール金属株式会社 (15)