説明

爆薬装填補助部材、爆薬、及びスムースブラスティング工法

【課題】本発明は、スムースブラスティング工法を作業効率良く実施するための爆薬装填補助部材、その部材を使用した爆薬、及びその爆薬を使用したスムースブラスティング工法を提供する。
【解決手段】爆薬装填補助部材10は、先端に蓋12を備えるメッシュ状パイプであり、メッシュ状パイプには、例えば、プラスチックや紙製の筒に多数の孔を複数形成したものや、紙製の網を筒状に編んだ籠のようなものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの発破掘削におけるスムースブラスティング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの発破掘削におけるスムースブラスティング工法とは、掘削する切羽面に削孔された発破孔のうち最外周の発破孔に装填する爆薬量を調整することで、発破のエネルギーを制御して地山の損傷を抑制し、余掘りを少なくするとともに掘削面を平滑に仕上げることを目的とする制御発破工法の一つである。
【0003】
このスムースブラスティング工法には、切羽面上の最外周の発破孔に、細長いスムースブラスティング専用の爆薬を増ダイとして装填して使用する孔径デカップリングという装薬方式があり、かかる装薬作業は、専用爆薬が柔らかいため、装填用の保護パイプに挿入して発破孔内に装填しており、従来よりこれに関する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、爆薬を保護するためのパイプ部と、パイプ部同士を連結する連結部とが一体化したスムースブラスティング工法用の爆薬保護パイプが開示されている。
【特許文献1】特開平11−211398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような孔径デカップリング装薬方式による最外周の発破孔への専用爆薬の装填作業は、人力によって行われていたため、作業に手間を要したり、爆薬の装填に不良が生じやすかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、スムースブラスティング工法を作業効率良く実施するための爆薬装填補助部材、その部材を使用した爆薬、及びその爆薬を使用したスムースブラスティング工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、発破孔内に装填する粒状爆薬の爆薬量を調整するのに用いられるスムースブラスティング工法用の爆薬装填補助部材であって、
複数の孔を有する筒体、又は筒状の籠体からなることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
本発明の爆薬装填補助部材によれば、内部に粒状爆薬を充填して切羽の最外周に配置する発破孔に挿入することで、発破孔に装填する爆薬の量を調整することにより、スムースブラスティング工法を実施できる。
【0009】
また、爆薬装填補助部材は、複数の孔を有する筒体、又は筒状の籠体であることから、その内部に粒状爆薬を空送充填する専用機械を使用することができる。すなわち、粒状爆薬を専用機械で空送充填しても、複数の孔又は籠の隙間から空気を外部に逃がし、内部には粒状爆薬を密な状態で充填することができる。これにより、爆薬装填の作業効率が飛躍的に向上し、切羽で作業する時間も短縮できることから施工の安全性も向上する。さらに、爆薬が爆発時には、このような複数の孔又は籠の隙間から発破のエネルギーを効率よく外部に伝播させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の孔を有する筒体は、プラスチック製又は紙製の筒に複数の孔を形成したものであることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、前記筒状の籠体は、プラスチック製又は紙製の索体を筒状に編んだものであることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第1〜3の何れかの発明において、前記爆薬装填補助部材の外径は、前記発破孔の内径よりも小さく、かつ前記爆薬装填補助部材の内径は、前記粒状爆薬の粒径よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第1〜4の何れかの発明において、前記筒体の孔、又は前記籠体の目の隙間は、前記粒状爆薬の粒径よりも小さいことを特徴とする。
本発明の爆薬装填補助部材によれば、粒状爆薬を外部に散逸させることなく内部に保持することができる。
【0014】
第6の発明は、スムースブラスティング用爆薬であって、第1〜5の何れかの発明に記載の爆薬装填補助部材に、前記粒状爆薬が充填されたことを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、スムースブラスティング工法であって、第6の発明に記載のスムースブラスティング用爆薬を増ダイとして発破孔内に設置し、前記発破孔内に設置されたスムースブラスティング用爆薬を起爆させることを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、掘削する切羽に削孔された発破孔のうち最外周に位置する発破孔に前記スムースブラスティング用爆薬を装填し、前記最外周以外の発破孔に前記粒状爆薬を直接装填することを特徴とする。
【0017】
特許文献1に開示されるような孔径デカップリング装薬方式では、最外周の発破孔には、専用爆薬を爆薬保護パイプに挿入して装填するのに対し、最外周以外の発破孔には、通常、専用爆薬とは異なる紙巻の含水爆薬を装填することから、専用爆薬と含水爆薬の二種類を使い分けなければならないために、装薬作業が煩雑になるおそれがあったが、本発明に係るスムースブラスティング工法によれば、どちらの発破孔にも粒状爆薬を装填することにより、単種類の爆薬にてスムースブラスティング工法を実施すること可能となり、爆薬の管理が簡略化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スムースブラスティング工法を作業効率良く実施するための爆薬装填補助部材、その部材を使用した爆薬、及びその爆薬を使用したスムースブラスティング工法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
本実施形態に係るスムースブラスティング工法(以下、SB工法という)は、掘削する切羽面に削孔された発破孔のうち最外周の発破孔に装填する爆薬量を調整することで、発破のエネルギーを制御して地山の損傷を抑制し、余掘りを少なくするとともに掘削面を平滑に仕上げる制御発破工法である。
【0020】
図1は、SB工法による切羽面30に削孔される発破孔のパターンの示す図である。
図1に示すように、SB工法では、先ず、トンネル中央からトンネル内周にかけて幾重もの環状パターンを描くような配置で発破孔16を削孔する。同図の発破パターンP1〜P8は、発破する際の順番を示している。これら発破孔16のうち、最外周(発破パターンP8と記載された箇所)に配置される発破孔16aは、SB工法を実施するための発破孔であるため、孔間のピッチが比較的狭く設定されている。
【0021】
図2は、装薬手順を示す最外周の発破孔16aの断面図である。
図2に示すように、最外周の発破孔16aには、親ダイの設置S10、増ダイの設置S20、ゲル状込め物の充填S30の手順で装薬が行われる。
【0022】
親ダイの設置S10では、発破孔16aの内の先端に起爆用のダイナマイトである親ダイ18を設置する。親ダイ18の長さは、例えば、発破孔16aの長さが2mであるときには、15〜20cm程度になる。なお、雷管19には起爆用電線21が発破孔16aの外から結線されている。
【0023】
こうして発破孔16a内に親ダイ18を設置した後、増ダイの設置S20で、親ダイ18以外のダイナマイトである増ダイ25を親ダイ18と隣接するように設置する。ここで増ダイ25は、爆薬装填補助部材10に粒状の爆薬20を充填したものである。
【0024】
図3は、爆薬装填補助部材10の外観斜視図である。
図3に示すように、爆薬装填補助部材10は、先端に蓋12を備えるメッシュ状パイプであり、例えば、プラスチック製や紙製の筒に複数の孔14を形成したものや、プラスチック製や紙製のロープを筒状に編んだものを用いることができる。
【0025】
爆薬装填補助部材10のパイプ長は、設置される発破孔の長さにもよるが、発破孔の長さの60%程度に設定される。例えば、発破孔の長さが2mである場合には、パイプ長は120cm程度に設定される。
【0026】
爆薬装填補助部材10のパイプ径については、その外径が、設置される発破孔16aの内径よりも小さく、かつその内径が、本実施形態に係るSB工法で用いられる粒状爆薬の粒径よりも大きく設定されている。例えば、発破孔の内径がφ45mm、使用する粒状爆薬の粒径がφ2〜3mmである場合には、パイプの内外径をφ30mm前後にする。また、この場合にパイプに形成された孔14の大きさは、パイプ内に充填される爆薬の粒径より小さく(2〜3mm以下)に設定されている。
【0027】
パイプ先端の蓋12は、パイプ基端からパイプ内部に充填される粒状爆薬を、先端から逸散しないように封鎖するものであればどのような構成でもよく、例えば、プラスチック製のキャップを用いることができる。
【0028】
図4は、爆薬装填補助部材10に粒状爆薬20を充填する方法を説明するための説明図である。
図4に示すように、増ダイ25の部材として用いられる爆薬装填補助部材10を発破孔16aに設置する前に、爆薬装填補助部材10の内部に粒状の硝安油剤爆薬(以下、ANFOという)やランデックス等を充填する。充填には、粒状爆薬を空送充填する専用の装填機械23(例えば、ANFOローダ等)を用いることができる。
【0029】
すなわち、爆薬装填補助部材10には孔14や隙間が形成されているので、内部に粒状爆薬20を空送充填すると、空気は外部に漏れるが、粒状爆薬は内部に溜まっていく。そして、このようにして粒状爆薬が充填された爆薬装填補助部材10を増ダイ25として発破孔16aに設置する(図2参照)。
【0030】
ここで、爆薬装填補助部材10の長さが上記のように120cmである場合には、発破孔16a内に設置された爆薬装填補助部材10の基端と発破孔16aの孔口17aとの間は60〜65cm程度の爆薬20が装填されない区間が形成されることになる。すなわち、通常、粒状爆薬を発破孔に装填して発破させる工法では、粒状爆薬を発破孔16a内の全区間に装填するところを、爆薬装填補助部材10を用いることにより通常よりも少ない爆薬量で装填できるようになる。
【0031】
そして、このように親ダイ18と増ダイ25とが発破孔16aに設置された後に、ゲル状込め物の充填S30を行う。
【0032】
ゲル状込め物22は、例えば、トンネル掘削時に発生する濁水を処理する際に産業廃棄物として排出される排泥スラリーに、粘度調整剤を混入したものを用いる。粘度調整剤としては、消石灰や澱粉(例えば、PVA(polyvinyl alcohol)や糊)を使用する。この粘度調整剤は、ゲル状込め物22が発破孔16aに充填されたときに、起爆までの間、発破孔16aの孔口17aから流出したり、発破孔16a内に発生する湧水や亀裂等により発破孔16aから逸出したりしないように、ゲル状込め物22の粘性を高めるために用いられる。
【0033】
ゲル状込め物22は、親ダイ18と爆薬装填補助部材10とが発破孔16aに設置された後に、発破孔16aの外部から、2種類の材料を経路途中で一つの経路に合流する1.5ショット方式の専用注入ポンプ及びホース26を用いて、発破孔16aの孔口17aまで充分に満たされるように充填される。
【0034】
このようにして、発破孔16aへ親ダイ18、増ダイ25、及びゲル状込め物22を装填するとともに、最外周以外の発破孔16に親ダイ18及び粒状爆薬20をそのまま孔内全部に装填し、図1に示した発破順序で各発破孔16を爆破させることにより、トンネルの発破掘削におけるスムースブラスティング工法が行われる。
【0035】
以上本実施形態に係る本実施形態に係る爆薬装填補助部材10によれば、先端に蓋12を備えるメッシュ状パイプからなることから、内部に粒状爆薬20を充填して切羽面30の最外周に配置する発破孔16aに挿入することで、発破孔16aに装填する爆薬20の量を調整することにより、地山の損傷を抑制して、余掘りを少なくするとともに掘削面を平滑に仕上げるスムースブラスティング工法を実施することができる。
【0036】
また、爆薬装填補助部材10は先端に蓋12を備えるメッシュ状パイプであることから、その内部に粒状爆薬20を空送充填する専用の装填機械23を使用することができる。すなわち、粒状爆薬20を空送充填しても、複数の孔又は籠の隙間から空気を外部に逃がし、内部に粒状爆薬20を密な状態で充填することができる。これにより、爆薬装填の作業効率が飛躍的に向上し、切羽で作業する時間も短縮できることから施工の安全性も向上する。さらに、爆薬が爆発時には、このような複数の孔又は籠の隙間から発破のエネルギーを効率よく外部に伝播させることができる。
【0037】
また、爆薬装填補助部材10の孔14が粒状爆薬20の粒径よりも小さいことから、粒状爆薬20を爆薬装填補助部材10の外部に散逸させることなく内部に保持することができる。
【0038】
また、上述の特許文献1に開示されるような孔径デカップリング装薬方式では、最外周の発破孔16aには、専用爆薬を爆薬保護パイプに挿入して装填するのに対し、最外周以外の発破孔16には、通常、専用爆薬とは異なる紙巻の含水爆薬を装填することから、専用爆薬と含水爆薬の二種類を使い分けなければならないために、装薬作業が煩雑になるおそれがあったが、本実施形態に係るスムースブラスティング工法によれば、同じ粒状爆薬20を使用するので、単種類の爆薬にてスムースブラスティング工法を実施すること可能となり、爆薬の管理が簡略化できる。
【0039】
また、爆破エネルギーを発破孔16a内に伝播させるための流体として粘性を高めたゲル状込め物22を用いることから、ゲル状込め物22が込め物の役割をするため、特に込め物を孔口17a付近に設置する必要もないので、作業が簡素化できるとともにコスト軽減に寄与する。
【0040】
また、ゲル状込め物22は、粘性が高い流体であるので、起爆時に液圧効果により発破のエネルギーを孔内全体により確実に伝播させることができる。
【0041】
また、ゲル状込め物22に、トンネル掘削時に発生する濁水を処理する際に産業廃棄物として排出される排泥スラリーをリサイクルして用いることにより、現場で安価に調達できるとともに、産業廃棄物の再利用による環境負荷の低減に寄与することができる。
【0042】
また、排泥スラリーと粘度調整剤との混合及び発破孔16aへの充填に1.5ショット方式を使用することにより、混合のためのタンク等の設置を省略できるので、設備の簡素化に寄与する。
【0043】
なお、本実施形態では、ゲル状込め物22として、排泥スラリーに粘度調整剤を混入したものを用いたが、これに限らず、シールドトンネルの施工時に用いられるような可塑性の裏込め材を用いてもよい。すなわち、発破孔16aに充填されてから起爆までの間に、発破孔16aの孔口17aから流出したり、発破孔16a内に発生する湧水や亀裂等により発破孔16aから逸出したりしない程度の粘性を有する流体であればどのような流体でも用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】SB工法による切羽面30に削孔される発破孔のパターンの示す図である。
【図2】装薬手順を示す最外周の発破孔16aの断面図である。
【図3】爆薬装填補助部材10の外観斜視図である。
【図4】爆薬装填補助部材10に粒状爆薬20を充填する方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10 爆薬装填補助部材
12 蓋
14 孔
16 発破孔
16a 最外周の発破孔
17a 孔口
18 親ダイ
19 雷管
20 粒状爆薬
21 起爆用電線
22 ゲル状込め物
25 増ダイ
30 切羽面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発破孔内に装填する粒状爆薬の爆薬量を調整するのに用いられるスムースブラスティング工法用の爆薬装填補助部材であって、
複数の孔を有する筒体、又は筒状の籠体からなることを特徴とする爆薬装填補助部材。
【請求項2】
前記複数の孔を有する筒体は、プラスチック製又は紙製の筒に複数の孔を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の爆薬装填補助部材。
【請求項3】
前記筒状の籠体は、プラスチック製又は紙製の索体を筒状に編んだものであることを特徴とする請求項1に記載の爆薬装填補助部材。
【請求項4】
前記爆薬装填補助部材の外径は、前記発破孔の内径よりも小さく、かつ前記爆薬装填補助部材の内径は、前記粒状爆薬の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の爆薬装填補助部材。
【請求項5】
前記筒体の孔、又は前記籠体の目の隙間は、前記粒状爆薬の粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の爆薬装填補助部材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の爆薬装填補助部材に、前記粒状爆薬が充填されたことを特徴とするスムースブラスティング用爆薬。
【請求項7】
請求項6に記載のスムースブラスティング用爆薬を増ダイとして発破孔内に設置し、前記発破孔内に設置されたスムースブラスティング用爆薬を起爆させることを特徴とするスムースブラスティング工法。
【請求項8】
掘削する切羽に削孔された発破孔のうち最外周に位置する発破孔に前記スムースブラスティング用爆薬を装填し、前記最外周以外の発破孔に前記粒状爆薬を直接装填することを特徴とする請求項7に記載のスムースブラスティング工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−168375(P2009−168375A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8421(P2008−8421)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)