説明

物体検知装置

素子の指向性にばらつきがあっても、全ての検知エリアを均一な感度で検知することができ、しかも誤動作の発生を少なくできる物体検知装置を提供する。検知線Pの投光素子(41)または受光素子(42)と、単一の前記素子(41),(42)に対して複数の検知エリア(S1)〜(S4)を形成するプリズム体(6)と、前記素子(41)または(42)とプリズム体(6)との間に配置されたレンズ体(5)とを備え、レンズ体(5)とプリズム体(6)との間で検知線(P1)をプリズム体(6)の稜線Lに沿って平行な方向に向けるように設定され、前記プリズム体(6)は、前記稜線Lで区画される複数のプリズム片(60)を有し、この各プリズム片(60)が前記複数の検知エリア(S1)〜(S4)のそれぞれを形成するプリズム小片(61)〜(64)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、自動ドアセンサや防犯用センサなどとして用いられる物体検知装置に関するものである。
【背景技術】
従来のこの種の物体検知装置は、1つの投光素子または1つの受光素子で複数の検知エリアを監視する検知ユニットを内蔵している(特許文献1参照)。図7に投光側の検知ユニットを代表として示す。図7において、投光素子81の前方に出射用のレンズ体82が配置されている。このレンズ体82は、複数の検知エリアS1〜S4を形成するレンズ面82a〜82dを有しており、両外側のレンズ面82a,82dと内側のレンズ面82b,82cとの境界線上に段差83が生じ、これが意図しない光学面となって、正常な検知エリア以外のエリアS10に向かう、不正常な光路10が形成され、この不正常な光路10によりボケエリアが生じて誤動作の原因となる。
また、前記投光素子81には、これに封入された発光ダイオード85(受光素子の場合はフォトトランジスタ)の中心ずれなどが原因で、個体ごとに指向性にばらつきがある。組立時の素子81とレンズ体82との位置ずれによる指向性のばらつきもある。例えば、発光ダイオード85が素子81の中心に対し右側にずれて封入されていて、右方向の指向性が強い場合は、レンズ体82の右側に位置するレンズ面82c,82dからの検知線が強くなって、この方向での検知エリアS3,S4の感度が高くなる。一方、レンズ体82の左側に位置するレンズ面82a,82bからの検知線は弱くなって、この方向での検知エリアS1,S2の感度が低くなる。このため、製品検査時に、目標感度と異なる値となったとき、レンズ体82の光学的な原因によるものか、素子81自体または組立位置のばらつきの影響によるものかの判断が付きにくい。
【発明の開示】
そこで、本発明は、素子の指向性にばらつきがあったり、組立誤差があっても、全てのエリアを均一な感度で検知することができる誤動作の少ない物体検知装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の物体検知装置は、検知線の投光素子または受光素子と、単一の前記素子に対して複数の検知エリアを形成するプリズム体と、前記素子とプリズム体との間に配置されたレンズ体とを備え、レンズ体とプリズム体との間で検知線をプリズム体の稜線に沿って平行な方向に向けるように設定され、前記プリズム体は、前記稜線で区画される複数のプリズム片を有し、各プリズム片が前記複数の検知エリアのそれぞれを形成するプリズム小片を有している。
検知線は、レンズ体とプリズム体との間で、このプリズム体の稜線に沿って平行な方向に出入射され、プリズム体の稜線間に形成されるプリズム片の各プリズム小片を通過するとき複数方向に屈折されて出入射されることにより、複数の検知エリアを形成する。ここで、前記投光素子または受光素子の指向性にバラツキがあるとき、例えば右方向に強い指向性のある投光素子の場合は、プリズム体の右側のプリズム片からは強い検知線が、左側のプリズム片からは弱い検知線が出力される。しかし、これら各プリズム片には屈折角度の異なる複数のプリズム小片が設けられ、これらプリズム小片からの検知線はそれぞれ各検知エリアに向かって出射される。つまり、右側のプリズム小片から出射される強い検知線と、左側のプリズム小片から出入射される弱い検知線とが合成されて、合成された検知線が1つの検知エリアに対して出射される。このため、各エリアでの検知感度が均一化される。
また、例えば右方向に強い指向性のある受光素子の場合は、プリズム体の右側のプリズム片から入力される検知線に対する感度が高くなり、左側のプリズム片から入力される検知線に対する感度が低くなる。しかし、これら各プリズム片には屈折角度の異なる複数のプリズム小片が設けられ、検知エリア内で反射した検知線が、すべてのプリズム小片を通って受光素子に入射される。つまり、右側のプリズム小片を通って受光素子の右側から入射する感度の高い検知線と、左側のプリズム小片を通って受光素子の左側から入射する感度の低い検知線とが合成される。このため、各エリアからの検知線に対する受光素子の検知感度が均一化される。
また、以上のようなプリズム体を用いることにより、従来のように、検知線を各検知エリアに向けて屈折させて出入射させるためにレンズ体に複数のレンズ面を形成する必要がなくなり、レンズ体の全面を段差のない形状にできる。したがって、各レンズ面の境界面でボケエリアが形成されることがなく、このボケエリアを原因とする誤動作の発生がなくなる。
前記プリズム体は、前記レンズ体と反対側の正面とレンズ体側の背面との一方が単一の平坦面で形成され、他方がプリズム片を1単位として、プリズム小片ごとに前記単一の平坦面に対して異なる角度をなす複数の平面で形成されていることが好ましい。この構造によれば、プリズム体の一方の面は平坦面であるから、プリズム体の製造が容易である。
また、前記プリズム体は、その正面が前記単一の平坦面であることが好ましい。このようにすれば、プリズム体のプリズム片における外方を向く正面にごみ等が付きにくい。
さらに、前記プリズム体は、前記素子を収納するケースに着脱自在に装着されて、ケースの前面の一部を形成していることが好ましい。このようにすれば、内カバーを共通にして検知エリアの異なる各種のプリズム体と交換することができる。
以上のように、本発明の物体検知装置によれば、素子の指向性にばらつきがあったり、組立誤差があっても、全ての検知エリアを均一な感度で検知することができ、しかも誤動作の発生を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしなあら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は同等部分を示す。
図1は、本発明の物体検知装置の全体構造を示す正面図である。
図2は、同物体検知装置における化粧カバーを取り外して示すケースの平面図である。
図3は、同物体検知装置における素子、レンズ体およびプリズム体の配置を示す斜視図である。
図4は、同物体検知装置における素子とレンズ体およびプリズム体の配置を示す平面図である。
図5A,5Bは、同物体検知装置の投光側のプリズム体による作用を説明する平面図である。
図6A,6Bは、同物体検知装置の受光側のプリズム体による作用を説明する平面図である。
図7は、従来の物体検知装置の概略を示す平面図である。
図8は、図7の物体検知装置の作用を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る物体検知装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の物体検知装置の全体構造を示す正面図である。この物体検知装置は、細長い樹脂製のケース1と、これの上部および外周部を覆う樹脂製の化粧カバー2とを備え、この化粧カバー2がケース1に着脱可能に取り付けられている。
図2は、化粧カバー2を取り外して示すケース1の平面図である。このケース1は、光学部品3および電子部品4が取り付けられるベース11と、これを上方から覆ってベース11に固定される樹脂製の内カバー12とを有している。前記電子部品4には、一対の投,受光素子41,42と、これに電気的に接続される電気回路43とが含まれている。また、前記光学部品3として、前記投,受光素子41,42に対向して設けられるレンズ体5と、これの前方に対向して配置されて複数の検知エリアを形成するプリズム体6とを用いている。前記投、受光素子41,42とレンズ体5は一組となって、能動型の検知ユニット7を構成しており、この検知ユニット7の2つをベース11の左右に並べて配置して、図1の化粧カバー2の前壁に形成した開口窓25から外部に臨ませている。投光素子41は例えば、近赤外線を検知線として発生する発光ダイオードを樹脂モールドしたものであり、受光素子42は例えば、投光素子41からの近赤外線が人体のような物体に当たって反射した反射線を受光して電気信号に変換するフォトダイオードを樹脂モールドしたものである。
図2において、13は前記ケース1に化粧カバー2を着脱可能に装着するための係止爪、14は物体検知装置を外部の支持部材に固定するためにベース11に設けた固定部である。
前記プリズム体6は、前記内カバー12と同一の色に着色された不透明な1枚の平板により形成されて、各検知ユニット7に1枚、合計2枚が前記各組のレンズ体5の前方に、内カバー12の前面壁部の一部を形成するように、着脱自在に取り付けられている。
図3は前記投光素子41とレンズ体5およびプリズム体6の全体を示す斜視図、図4はその平面図である。受光素子42とレンズ体5およびプリズム体6の全体も、これと同一である。図3のように、前記プリズム体6は、前記レンズ体5と反対側でケース1の外部に露出する正面側が平坦面6aとされ、レンズ体5と対向する背面側に、上下方向Vに延びる複数の稜線Lが形成されており、これら稜線Lにより複数のプリズム片60に区画されている。前記プリズム体6の背面側を平坦面としてもよく、要するに、正面と背面の一方を平坦面とすることで、両面を凹凸のあるレンズ面とする場合と比較して、プリズム体6の製造が容易になる。また、ケース1の外部に露出する正面側を単一の平坦面6aとすることにより、プリズム体6のプリズム片60にごみ等が付きにくくなる。
レンズ体5は、図4に示すように、投光素子41から出射された検知線P1を、平行光にしてプリズム体6へ出射する。前記各プリズム片60は、複数の検知エリア、例えば図5に示すように、4つの検知エリアS1〜S4のそれぞれを形成する第1〜第4プリズム小片61〜64を有している。これらプリズム小片61〜64には、プリズム体6の単一の平坦面6aに対して異なる角度をなす複数の平面61a〜64aが形成されている。
図5A,5Bは、図4に示すプリズム体6のA部分とB部分をそれぞれ拡大して示している。同図からわかるように、検知線P1は、プリズム体6の稜線Lに沿って平行に入射し、そのプリズム片60に形成した第1〜第4プリズム小片61〜64の平面61a〜64aを通過して屈折し、各検知エリアS1〜S4に向かって投射される。受光側では、検知エリアS1〜S4内の物体に当たって反射した反射線が、図2のプリズム体6からレンズ体5を経て受光素子42へと入力され、受光素子42に接続された電気回路43からの出力により物体が検知される。
ここで、図4の投光素子41自体の指向性にばらつきがあったり、投光素子41とレンズ体5との組立て誤差によって、例えば右側に強い指向性のある場合は、図5Bのように、プリズム体6の右側部分から出力される検知線が強くなり、一方、左側部分から出力される検知線は図5Aのように弱くなる。
しかし、前記プリズム体6には複数のプリズム片60が形成され、これらプリズム片60には、複数の検知エリアS1〜S4のそれぞれを形成する第1〜第4プリズム小片61〜64が形成されていて、各プリズム小片61〜64を通る検知線P11〜P14は、それぞれの検知エリアS1〜S4に向けて出射され、合成されて図4に示す各検知エリアS1〜S4を形成する。このように、図5Aの弱い検知線P11〜P14と図5Bの強い検知線P11〜P14とが合成される結果、図4の各検知エリアS1〜S4にはプリズム体6で合成された均一強度の検知線が出力されて、各検知エリアS1〜S4における検知感度が均一化される。
さらに、以上のようなプリズム体6を用いることにより、従来のように、検知線を各検知エリアに向けて屈折させて出射させるためにレンズ体に複数のレンズ面を形成する必要がない。その結果、図4のように、滑らかな出射面を持つレンズ体5を用いることができるので、各レンズ面の境界面でボケエリアが形成されることがなく、このボケエリアを原因とする誤動作の発生をなくすことができる。また、プリズム体6が内カバー12に着脱自在に取り付けられているから、内カバー12を共通にして検知エリアの異なる各種のプリズム体6と交換することができる。
図2の受光素子42に対向する受光側のプリズム体6も同一の構造になっており、上述した投光側と同一の効果が得られる。すなわち、図6に示すように、検知エリアS1〜S4内の物体に当たって反射した反射線が検知線P21〜P24として第1〜第4プリズム小片61〜64を通り、平行光P1となって図2のレンズ体5に入り、レンズ体5で集光されて受光素子42で受光される。例えば、図6の第1の検知エリアS1から検知線P21が発生した場合、この検知線P21が各プリズム片60の第1プリズム小片61を通って平行光P2となり、図2のレンズ体5を経て、合成されて受光素子42で受光される。このように、受光素子42には、図6のすべてのプリズム片60を通って、左右両側から検知線21が入力される。他の検知エリアS2〜S4で検知線P22〜P24が発生した場合も同様である。したがって、受光素子42に左右の指向性があっても、検知線P21〜24の受光感度は平均化されるので、各検知エリアS1〜S4における検知感度が均一化される。また、段差のない滑らかな出射面を持つレンズ体5を用いることができるので、各レンズ面の境界面でボケエリアが形成されることがなく、このボケエリアを原因とする誤動作の発生をなくすことができる。
以上の実施形態では、図2に示す投、受光素子41,42を用いた能動型の検知ユニットを示したが、本発明では、能動型のものに限らず、人体のような物体が発する遠赤外線を検知する受動型のものを採用することもでき、その場合は受光素子のみが用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知線の投光素子または受光素子と、
単一の前記素子に対して複数の検知エリアを形成するプリズム体と、
前記素子とプリズム体との間に配置されたレンズ体とを備え、
レンズ体とプリズム体との間で検知線をプリズム体の稜線に沿って平行な方向に向けるように設定され、
前記プリズム体は、前記稜線で区画される複数のプリズム片を有し、
各プリズム片が前記複数の検知エリアのそれぞれを形成するプリズム小片を有している物体検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記プリズム体は、前記レンズ体と反対側の正面とレンズ体側の背面との一方が単一の平坦面で形成され、他方がプリズム片を1単位として、プリズム小片ごとに前記単一の平坦面に対して異なる角度をなす複数の平面で形成されている物体検知装置。
【請求項3】
請求項2において、前記プリズム体の正面が前記単一の平坦面である物体検知装置。
【請求項4】
請求項1において、前記プリズム体は、前記素子を収納するケースに着脱自在に装着されて、ケースの前面の一部を形成している物体検知装置。

【国際公開番号】WO2004/068175
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504687(P2005−504687)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000626
【国際出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】