説明

物品切離し装置

【課題】振動、騒音および衝撃等の発生を抑制できる物品切離し装置を提供する。
【解決手段】物品切離し装置1は、低速搬送手段3と、中速搬送手段4と、高速搬送手段5とを備える。低速搬送手段3は物品Wを密着状態のまま搬送する。中速搬送手段4は物品Wを低速搬送手段3より速い搬送速度で搬送してその物品Wと次物品Wとの間に一次隙間を形成する。高速搬送手段5は物品Wを中速搬送手段4より速い搬送速度で搬送してその物品Wと次物品Wとの間に二次隙間を形成する。物品Wと次物品Wとの間に必要な要求隙間が二次隙間より大きい場合、低速搬送手段3および中速搬送手段4が減速する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動、騒音、衝撃等の発生を抑制しつつ、物品間に隙間を適切に形成できる物品切離し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば平行に設置された2条の無端の駆動帯と、駆動帯に設けた多数の孔に両端を回転自在に軸支された多数のローラ軸と、ローラ軸を回転自在に包絡する円筒状の多数のローラと、物品が搭載されるローラの直近の下側に移動手段を介して設けた摩擦板とで構成し、移動手段によりローラ下側に摩擦板を当接させて物品をローラの移動速度より速い速度で移送する摩擦板を持つ可変速直進フィーダ等の物品切離し装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この従来の物品切離し装置では、移動手段および摩擦板等が必要なため、装置全体の構成が複雑となりがちである。そこで、構成が簡単な物品切離し装置として、例えば物品を搬送する低速側搬送手段と、低速側搬送手段から物品を受け入れてその低速側搬送手段より速い搬送速度で搬送してその物品と次物品との間に隙間を形成する高速側搬送手段とを備えたベルトフィーダが知られている。
【特許文献1】特開平9−255136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の物品切離し装置のように、低速側搬送手段の搬送速度と高速側搬送手段の搬送速度との速度差を利用して物品間に隙間を形成する構成では、比較的大きな速度差が必要となるため、振動、騒音、衝撃等が発生し易いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、振動、騒音、衝撃等の発生を抑制しつつ、物品間に隙間を適切に形成できる物品切離し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の物品切離し装置は、物品を搬送する低速搬送手段と、この低速搬送手段から物品を受け入れ、この受け入れた物品を前記低速搬送手段より速い搬送速度で搬送し、その物品と次物品との間に一次隙間を形成する中速搬送手段と、この中速搬送手段から物品を受け入れ、この受け入れた物品を前記中速搬送手段より速い搬送速度で搬送し、その物品と次物品との間に二次隙間を形成する高速搬送手段とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の物品切離し装置は、請求項1記載の物品切離し装置において、物品と次物品との間に必要な要求隙間が二次隙間より大きい場合に、低速搬送手段の搬送速度および中速搬送手段の搬送速度を減速させて前記要求隙間と前記二次隙間とを一致させる制御手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、低速搬送手段の搬送速度と中速搬送手段の搬送速度との速度差を利用して一次隙間を形成した後、中速搬送手段の搬送速度と高速搬送手段の搬送速度との速度差を利用して二次隙間を形成する構成であるから、速度差を比較的小さくすることが可能となり、よって、振動、騒音、衝撃等の発生を抑制しつつ、物品間に隙間を適切に形成できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、低速搬送手段の搬送速度および中速搬送手段の搬送速度を減速させることによって、物品同士の衝突を防止しつつ、物品間に要求隙間を適切に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の物品切離し装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、1は物品切離し装置で、この物品切離し装置1は、略直方体状のケース等の物品Wを搬送方向Xに搬送しながら、搬送方向Xに隣合う物品W間に所望の隙間を形成するベルトフィーダ等である。
【0012】
物品切離し装置1は、搬送方向Xに隣合う物品W同士を密着させた状態で複数の物品Wを搬送するベルトコンベヤ等の搬送手段2を備えている。
【0013】
そして、搬送手段2の搬送下流には、3つの搬送手段、つまり搬送速度がそれぞれ異なる低速搬送手段3、中速搬送手段4および高速搬送手段5が一直線上に並んで配設されている。
【0014】
低速搬送手段3、中速搬送手段4および高速搬送手段5は、いずれも例えばベルトコンベヤからなり、複数のローラ(図示せず)に掛け渡され回転により上面の搬送面で物品Wを搬送する無端状の搬送ベルト3a,4a,5aと、この搬送ベルト3a,4a,5aを回転させる駆動手段であるモータ3b,4b,5bとを有している。
【0015】
低速搬送手段3は、搬送手段2から密着状態の物品Wを受け入れこの受け入れた物品Wを密着状態のまま搬送方向Xに搬送する。また、中速搬送手段4は、低速搬送手段3から物品Wを受け入れこの受け入れた物品Wを低速搬送手段3より速い搬送速度で搬送方向Xに搬送しその物品Wと後続の次物品Wとの間に一次隙間を形成する。さらに、高速搬送手段5は、中速搬送手段4から物品Wを受け入れこの受け入れた物品Wを中速搬送手段4より速い搬送速度で搬送方向Xに搬送しその物品Wと後続の次物品Wとの間に一次隙間より大きい二次隙間を形成する。
【0016】
なお、低速搬送手段3および中速搬送手段4は、いずれも、通常運転状態と、搬送速度が通常運転状態時での搬送速度より遅い低速運転状態とに選択的に切換え可能となっている。なお、低速搬送手段3の搬送速度と中速搬送手段4の搬送速度との速度差は常に一定である。
【0017】
また一方、中速搬送手段4の搬送終端近傍には、物品Wを検出する光電センサ等の光学系の物品検出手段(制御センサ)7が設けられている。また、物品検出手段7、低速搬送手段3のモータ3b、中速搬送手段4のモータ4bおよび高速搬送手段5のモータ5bには、制御手段8が電気的に接続されている。
【0018】
そして、制御手段8は、物品Wと後続の次物品Wとの間に必要な要求隙間が二次隙間より大きい場合に、インバータ制御或いはサーボ制御等の電気的な制御により低速搬送手段3および中速搬送手段4を通常運転状態から低速運転状態に切り換えることによって低速搬送手段3の搬送速度および中速搬送手段4の搬送速度を同時に減速させて要求隙間と二次隙間とを一致させる。なお、制御手段8の記憶部には、物品W間の隙間の自動算出のために、物品Wの基準長さ、切離し能力、各搬送手段の搬送速度等をパラメータ入力できる。
【0019】
次に、上記物品切離し装置1の動作等を説明する。
【0020】
図2(a)に示すように、複数の物品、例えば3つの物品W1,W2,W3は、隣合うもの同士が密着した状態のまま、搬送手段2上から低速搬送手段3上に乗り移る。
【0021】
図2(b)に示すように、先頭の物品W1の搬送方向前側の半分が中速搬送手段4上に乗る時点まで、3つの物品W1,W2,W3は密着状態を維持する。
【0022】
図2(c)に示すように、低速搬送手段3の搬送速度と中速搬送手段4の搬送速度との速度差により一次切離しが行われ、先頭の物品W1とこれに続く次物品W2との間に一次隙間が形成される(図2(d)参照)。
【0023】
次いで、図2(e)に示すように、中速搬送手段4の搬送速度と高速搬送手段5の搬送速度との速度差により二次切離しが行われ、先頭の物品W1とこれに続く次物品W2との間に二次隙間LSが形成される。
【0024】
そして、物品検出手段7による物品W2の検出時に、物品W1と次物品W2との間に必要とされる予め決められた要求隙間が物品W1と物品W2との間に形成された二次隙間LSより大きい場合には、制御手段8によるモータ3b,4bの制御により低速搬送手段3および中速搬送手段4が通常運転状態から低速運転状態に切り換えられ、その結果、低速搬送手段3の搬送速度と中速搬送手段4の搬送速度とが同時に減速し、図2(f)に示すように先頭の物品W1と次物品W2との間に要求隙間が形成される。
【0025】
すなわち、低速搬送手段3および中速搬送手段4が通常運転状態にある場合に形成される二次隙間に不足隙間を補足して要求隙間を確保する際に、制御手段8は、低速搬送手段3および中速搬送手段4を同時に低速運転状態に切り換える。この際、低速搬送手段3の搬送速度は、例えば3Hz以下でモータ3bのメカブレーキが作動してしまうため、最低周波数6Hzとする。
【0026】
そして、先頭の物品W1と次物品W2との間の隙間が要求隙間になると、制御手段8によるモータ3b,4bの制御により低速搬送手段3および中速搬送手段4が低速運転状態からもとの通常運転状態に切り換えられる。
【0027】
このように物品切離し装置1によれば、低速搬送手段3の搬送速度と中速搬送手段4の搬送速度との速度差を利用して物品W間に一次隙間を形成した後、さらに中速搬送手段4の搬送速度と高速搬送手段5の搬送速度との速度差を利用してその一次隙間を大きくして二次隙間を形成する構成であるから、速度差を比較的小さくすることが可能となり、よって、構成が簡単であるばかりでなく、切離し時における振動、騒音、衝撃等の発生を抑制しつつ、物品W間に隙間を適切に形成でき、しかも、物品Wの切離し能力を向上しつつ、物品Wを安定して搬送できる。
【0028】
また、物品W間に必要な要求隙間が二次隙間より大きい場合に制御手段8による制御により低速搬送手段3の搬送速度と中速搬送手段4の搬送速度とを同時に減速させることによって、物品W同士の衝突を確実に防止しつつ、物品W間に要求隙間を適切に確保できる。
【0029】
さらに、制御手段8による物品切離し制御は、電気的なものであり、モータ3b,4bに対して機械的なブレーキを作動させるものではないので、モータ3b,4bの寿命を延ばすことができる。
【0030】
ここで、図3は、中速搬送手段の搬送速度と時間との関係を示すグラフである。物品の搬送方向長さ=L(mm)、要求隙間=Le(mm)、高速搬送手段(高速コンベヤ)=Hh(m/m)…1速、中速搬送手段(中速コンベヤ)=Mh(m/m)またはMl(m/m)…2速、低速搬送手段(低速コンベヤ)=Lh(m/m)またはLl(m/m)…2速、とした場合、低速コンベヤ→中速コンベヤでの隙間はL/2×Mh/Lh=L1(mm)であり、中速コンベヤ→高速コンベヤでの隙間はL/2×Hh/Mh=L2(mm)である。
【0031】
一定速(隙間制御なし)で搬送された場合の隙間(二次隙間)はL1+L2=LS(mm)である。実際に必要な要求隙間Le>LSの場合には隙間制御が必要になる。Le−LSが不足隙間となり、隙間制御を行って物品間の隙間がLeになるように制御する。
【0032】
図3中の灰色部分Aの面積が不足隙間の距離になる。図3中の斜線部分Bの面積が230mm以下で制御可能となる。すなわち例えば図1中のS(制御センサと中速コンベヤの搬送終端との距離)が115mmである場合、物品長さ230mm以下で隙間制御を完了させることができれば全て制御可能となる。
【0033】
なお、低速搬送手段3、中速搬送手段4および高速搬送手段5は、ベルトコンベヤには限定されず、複数の搬送ローラを有するローラコンベヤ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態に係る物品切離し装置の概略平面図である。
【図2】同上物品切離し装置の動作説明図である。
【図3】同上物品切離し装置の中速コンベヤの搬送速度と時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1 物品切離し装置
3 低速搬送手段
4 中速搬送手段
5 高速搬送手段
8 制御手段
W 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する低速搬送手段と、
この低速搬送手段から物品を受け入れ、この受け入れた物品を前記低速搬送手段より速い搬送速度で搬送し、その物品と次物品との間に一次隙間を形成する中速搬送手段と、
この中速搬送手段から物品を受け入れ、この受け入れた物品を前記中速搬送手段より速い搬送速度で搬送し、その物品と次物品との間に二次隙間を形成する高速搬送手段と
を備えることを特徴とする物品切離し装置。
【請求項2】
物品と次物品との間に必要な要求隙間が二次隙間より大きい場合に、低速搬送手段の搬送速度および中速搬送手段の搬送速度を減速させて前記要求隙間と前記二次隙間とを一致させる制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の物品切離し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−153492(P2007−153492A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348573(P2005−348573)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000103426)オークラ輸送機株式会社 (84)
【Fターム(参考)】