説明

物品搬送用流動棚装置

【課題】流動棚装置全体の左右長を大とすることなく、通路を確保しうるようにし、倉庫等の内部スペースを有効に使用する。
【解決手段】搬送面が緩傾斜するローラコンベヤ10よりなる流動棚7cの横幅を、物品12の左右寸法よりも小とし、左右の支柱3と流動棚7cの両側端との間に形成される隙間13を、搬送面よりも下方に位置する板状部材14により閉塞することにより、前後方向を向く通路Rが形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫や物流施設等において、物品又は物品を載置したパレットを、一方の側から他方の側まで搬送する物品搬送用流動棚装置に係り、特に、搬送面を緩傾斜させたローラコンベヤよりなる流動棚上を、物品又は物品を載置したパレットを自重(重力)により下方まで搬送するようにした物品搬送用流動棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自重による物品搬送用流動棚装置は、例えば特許文献1〜3に記載されており、公知である。
【0003】
【特許文献1】特許第2864350号公報
【特許文献2】特開平8−113326号公報
【特許文献3】特開平10−53309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自重による物品搬送用流動棚装置は、動力を使用していないため、設置後においてはメンテナンスフリーが基本である。すなわち、設置時にローラコンベヤの傾き等を調整して物品が直進することを確認した後は、殆どメンテナンス等を行わないのが一般的である。
【0005】
そのため、上記特許文献1〜3に記載されている従来の物品搬送用流動棚装置においても、ローラコンベヤの近傍に、作業者が歩行可能な通路は設けられていない。このような通路が設けられていないと、メンテナンスが必要となったときに、その作業が困難となったり、物品が搬送途中で支柱に引っ掛かるなどして停止したときに、その場所まで行くのが非常に困難で危険も伴なう。
【0006】
この問題に対処するために、例えばローラコンベヤを支持している左右の支柱間の寸法を大とし、ローラコンベヤの側方に通路を設けたり、単体の流動棚装置を左右方向に離間させて設置し、その対向面間に通路を設けたりすると、通路を設けた分だけ、流動棚装置全体の左右長が大となり、倉庫等の内部スペースを有効に使用できなくなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、流動棚装置全体の左右長を大きくすることなく、通路を確保し得るようにし、倉庫等の内部スペースを有効に使用することができるようにした物品搬送用流動棚装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の物品搬送用流動棚装置は、
前後及び左右方向に所定間隔おきに立設した複数の支柱同士を連結することにより、棚フレームを形成し、該棚フレームにおける左右方向に並ぶ支柱の対向面間に、前後方向を向くとともに、搬送面が前下向きに緩傾斜するコンベヤよりなる流動棚を、互いに左右方向に隣接するように設け、各流動棚の後端に搬入された物品又は物品が載置されたパレットを、流動棚の前端まで自重により流動させて搬送するようにした物品搬送用流動棚装置において、
前記流動棚の横幅を、前記物品又はパレットの左右寸法よりも小とし、左右の支柱と流動棚の一側端との間に形成される隙間を、前記搬送面よりも下方に位置する板状部材により閉塞することにより、物品又はパレットの非流動時において前後方向を向く通路が形成されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、各段の流動棚の一側方に通路が形成されるようにしたので、コンベヤのメンテナンス作業や、物品又はパレットが搬送途中で停止した際の復旧作業等を、容易にかつ安全に行うことができる。
また、流動棚の横幅を物品又はパレットの左右寸法よりも小として、左右の支柱と流動棚の一側端との間の隙間に通路を確保するので、流動棚装置全体の左右長を大きくする必要はない。従って倉庫等の内部スペースを有効に使用することができ、物品の保管効率も向上する。
【0009】
本発明の請求項2に記載の流動棚装置は、請求項1に記載の流動棚装置であって、
流動棚を左右の支柱間の中央に配置し、左右の支柱と流動棚の両側端との間に形成される両側の隙間を、板状部材により閉塞することにより、流動棚の左右両側に通路が形成されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、流動棚の左右両側に通路が形成されることにより、流動棚を構成するコンベヤの左右幅が大きい場合のメンテナンス作業や、物品が停止した際の復旧作業等を、左右いずれかの通路を選択して容易に行うことができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の流動棚装置は、
前後及び左右方向に所定間隔おきに立設した複数の支柱同士を連結することにより、棚フレームを形成し、該棚フレームにおける左右方向に並ぶ支柱の対向面間に、前後方向を向くとともに、搬送面が前下向きに緩傾斜するコンベヤよりなる流動棚を、互いに左右方向に隣接するように設け、各流動棚の後端に搬入された物品又は物品が載置されたパレットを、流動棚の前端まで自重により流動させて搬送するようにした物品搬送用流動棚装置において、
前記流動棚におけるコンベヤを、互いに対向する左右1対ずつの短寸コンベヤよりなるものとし、左右の短寸コンベヤの対向面間に形成される中央の隙間を、前記搬送面よりも下方に位置する板状部材により閉塞することにより、物品又はパレットの非流動時において前後方向を向く通路が形成されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、上記請求項1と同様、中央の通路を利用して、コンベヤのメンテナンス作業や、物品停止時の復旧作業等を、容易かつ安全に行うことができるとともに、流動棚装置全体の左右長が大きくならないので、倉庫等の内部スペースを有効に使用することができる。
また、通路は流動棚の中央に形成されるので、流動棚の横幅が大きくても、メンテナンス作業や復旧作業等がし易くなる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の流動棚装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の流動棚装置であって、
板状部材及びそれにより形成される通路を、搬送面と平行をなすようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、前後方向のどの位置においても、通路は、緩傾斜する搬送面に沿って平行をなし、流動棚と大きく離間することがないので、メンテナンスや復旧作業等がより容易となる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の流動棚装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の流動棚装置であって、
板状部材を、前後の支柱間の間隔を同じスパンで前後方向に連結したことを特徴としている。
この特徴によれば、複数の板状部材の前後両端を前後の支柱に固定して通路を形成し得るので、通路を強固にかつ容易に形成することができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の流動棚装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の流動棚装置であって、
前後方向に並ぶ左右の支柱の対向面同士を横杆により連結し、前後複数の横杆に、流動棚と板状部材を載設したことを特徴としている。
この特徴によれば、横杆を、流動棚を構成しているコンベヤと板状部材の載設用に共用するので、部品点数が削減されるとともに、横杆に板状部材を掛け渡して固定するだけで、通路を簡単に形成することができる。
【0014】
本発明の請求項7に記載の流動棚装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の流動棚装置であって、
流動棚における前後端部の所定範囲の横幅を、物品又はパレットの左右寸法をほぼ等しくしたことを特徴としている。
この特徴によれば、流動棚の前後の端部において、物品又はパレットの下面全体が流動棚の搬送面により支持されるので、搬送抵抗が小さくなり、上端の搬入部と下端の搬出部での物品又はパレットの流動が円滑となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の物品搬送用流動棚装置(以下、流動棚装置と略称する)の第1の実施例を示す側面図,図2は、同じく正面図,図3は、同じく、流動棚装置単体の平面図、図4は、図3のIV−IV線の拡大矢視図である。
【0017】
流動棚装置1の棚フレーム2は、前後(以下、方向は図1の右方を前として説明する)及び左右方向に所定間隔おきに床面に立設された多数の支柱3と、互いに前後に隣接する支柱3の対向面同士を連結している水平杆4及び傾斜杆5と、互いに左右に隣接する支柱3の対向面同士を上下方向に一定間隔おきに連結している横杆6とからなっている。
【0018】
上下の各横杆6は、後記するローラコンベヤ8,9,10と板状部材14を支持する支持杆を兼ね、前後方向に並ぶ各段の横杆6の取付高さを、前方に向かって少しずつ低くすることにより、上面を結ぶ線が前下方に緩傾斜するように取付けられている。また、棚フレーム2における左右に対向する支柱3間の横杆6上には、前後方向を向く上下複数段の流動棚7が、左右方向に互いに等高をなして隣接するように載設されている。
【0019】
図3に示すように、各段の流動棚7は、後端部の搬入用ローラコンベヤ8と、下端部の搬出用ローラコンベヤ9と、それらのローラコンベヤ8,9間の搬送用ローラコンベヤ10とにより構成され、各ローラコンベヤ8,9,10は、その上面の搬送面Fが前下方に緩傾斜するようにして、上記各横杆6の上面に固定されている。
【0020】
搬入用ローラコンベヤ8と搬出用コンベヤ9により形成される前後の流動棚7a,7bの左右幅は、パレット11及びそれに載置される物品12の左右寸法とほぼ等しくされている。また、搬入用ローラコンベヤ8の後端部と搬出用ローラコンベヤ9の前端部の中央には、図示しないスタッカクレーンが昇降しうる空間Sが形成され、物品12を載置したパレット11の搬出入を容易としてある。
【0021】
搬入用ローラコンベヤ8と搬出用ローラコンベヤ9により形成される前後部の流動棚7a,7bを除いた中間部の流動棚7c、すなわち上記搬送用ローラコンベヤ10の横幅は、パレット11の左右寸法より所要寸法小としてあり、かつ左右の支柱3,3間の中央に搬送用ローラコンベヤ10を配設することにより、中間部の流動棚7cの両側端と左右の支柱3との間には、左右寸法の等しい隙間13,13が形成されている。
【0022】
上記左右の隙間13は、各ローラコンベヤ8,9,10の搬送面Fよりも下方においてそれと平行をなすとともに、前後の支柱3間の間隔とほぼ同じスパン(前後寸法)の鉄板からなる複数の板状部材14により閉塞されている。すなわち、前後複数の板状部材14の前後両端を、上記各ローラコンベヤ8,9,10を載設している横杆6の上面にねじ等により固着することにより、前後方向に連結されている。
【0023】
15,15は、搬送用ローラコンベヤ10の前端部の左右両側方に設けられた、垂直のガイドローラ群で、対向面間の寸法を前方に向かうにしたがって漸次小とすることにより、若干横ずれして搬送されてきた物品12を、ほぼ中央に位置決めして搬出用ローラコンベヤ9に移送するためのものである。
【0024】
上記第1の実施例のように、中間部の流動棚7cの両側に隙間13を形成し、この隙間13を板状部材14により閉塞すると、パレット11が物品12と共に流動していないとき、もしくはパレット11や物品12が上流側において支柱3に引っ掛かるなどして停止したときにおいて、左右の板状部材14により、作業者が歩行可能な通路Rが形成されるようになる。従って、左右いずれかの通路Rを利用して、搬送用ローラコンベヤ10のメンテナンス作業や、停止した物品12の復旧作業等を、容易にかつ安全に行うことができる。
【0025】
また、中間部の流動棚7cの横幅をパレット11の左右寸法よりも小として、左右の支柱3と流動棚7cの両側端との間の隙間13に通路Rを確保するので、流動棚装置1全体の左右長を大きくする必要はない。従って、倉庫等の内部スペースを有効に使用することができ、物品12の保管効率も向上する。
【0026】
さらに、中間部の流動棚7cの両側に通路Rが形成されるようにすると、流動棚7cを構成する搬送用ローラコンベヤ10の横幅が大きくても、左右の通路Rを選択して使用することにより、メンテナンス作業や復旧作業等を容易かつ安全に行うことができる。
【実施例2】
【0027】
図5は、本発明の第2の実施例を示すもので、中間部の流動棚7cの片側、例えば右側方(または左側方)にのみ隙間13を形成し、この隙間13を板状部材14により閉塞して、一側方のみに通路Rが形成されるようにしたものである。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができるとともに、搬送用ローラコンベヤ10の横幅を、上記第1の実施例よりも大としうる利点がある。
【実施例3】
【0028】
図6は、本発明の第3の実施例を示すもので、搬送用ローラコンベヤ10の前後方向に並ぶ各ローラを、互いに対向する左右1対ずつの短寸ローラ16,16よりなるものとし、それらの対向面間に形成される中央の隙間17を、上記実施例と同様、搬送面Fよりも下方に位置する板状部材14により閉塞することにより、その上面に通路Rが形成されるようにしたものである。
【0029】
この第3の実施例においても、上記実施例と同様、中央の通路Rを利用して、搬送用ローラコンベヤ10のメンテナンス作業や、停止した物品12の復旧作業等を、容易にかつ安全に行うことができる。また、通路Rは中央に形成されるので、搬送用ローラコンベヤ10の横幅が大きくても、メンテナンス作業や復旧作業がし易くなる。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0031】
例えば、上記実施例では、物品12をパレット11に載置して搬送するものとしたが、パレット11を使用しないで、物品12を直接各ローラコンベヤ8,9,10に載せて搬送するものにも適用することができる。
【0032】
また、上記実施例では、板状部材14を、緩傾斜する搬送面と平行をなすように傾斜させて設けているが、別途水平の横杆を設けるなどして、それに板状部材14を固定し、水平をなす通路が形成されるようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例では、流動棚7を構成するコンベアの一例としてローラコンベヤを適用していたが、ベルトコンベヤや他のコンベヤ等を適用してもよい。
【0034】
また、上記実施例では、通路Rを構成する板状部材14は、鉄板からなる板材にて構成されていたが、板状部材は、間隙13,17を完全に閉塞する板材だけでなく、歩行可能であれば、スリット等が形成されていてもよいし、グレーチング等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の物品搬送用流動棚装置の第1の実施例を示す側面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく、流動棚装置単体の平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う拡大矢視図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す図4と同部位の矢視図である。
【図6】同じく第3の実施例を示す図4と同部位の矢視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 物品搬送流動棚装置
2 棚フレーム
3 支柱
4 水平杆
5 傾斜杆
6 横杆
7 流動棚
7a 前部の流動棚
7b 後部の流動棚
7c 中間部の流動棚
8 搬入用ローラコンベヤ
9 搬出用ローラコンベヤ
10 搬送用ローラコンベヤ
11 パレット
12 物品
13 隙間
14 板状部材
15 ガイドローラ群
16 短寸ローラ(短寸コンベヤ)
17 隙間
F 搬送面
S 空間
R 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後及び左右方向に所定間隔おきに立設した複数の支柱同士を連結することにより、棚フレームを形成し、該棚フレームにおける左右方向に並ぶ支柱の対向面間に、前後方向を向くとともに、搬送面が前下向きに緩傾斜するコンベヤよりなる流動棚を、互いに左右方向に隣接するように設け、各流動棚の後端に搬入された物品又は物品が載置されたパレットを、流動棚の前端まで自重により流動させて搬送するようにした物品搬送用流動棚装置において、
前記流動棚の横幅を、前記物品又はパレットの左右寸法よりも小とし、左右の支柱と流動棚の一側端との間に形成される隙間を、前記搬送面よりも下方に位置する板状部材により閉塞することにより、物品又はパレットの非流動時において前後方向を向く通路が形成されるようにしたことを特徴とする物品搬送用流動棚装置。
【請求項2】
流動棚を左右の支柱間の中央に配置し、左右の支柱と流動棚の両側端との間に形成される両側の隙間を、板状部材により閉塞することにより、流動棚の左右両側に通路が形成されるようにした請求項1に記載の物品搬送用棚装置。
【請求項3】
前後及び左右方向に所定間隔おきに立設した複数の支柱同士を連結することにより、棚フレームを形成し、該棚フレームにおける左右方向に並ぶ支柱の対向面間に、前後方向を向くとともに、搬送面が前下向きに緩傾斜するコンベヤよりなる流動棚を、互いに左右方向に隣接するように設け、各流動棚の後端に搬入された物品又は物品が載置されたパレットを、流動棚の前端まで自重により流動させて搬送するようにした物品搬送用流動棚装置において、
前記流動棚におけるコンベヤを、互いに対向する左右1対ずつの短寸コンベヤよりなるものとし、左右の短寸コンベヤの対向面間に形成される中央の隙間を、前記搬送面よりも下方に位置する板状部材により閉塞することにより、物品又はパレットの非流動時において前後方向を向く通路が形成されるようにしたことを特徴とする物品搬送用流動棚装置。
【請求項4】
板状部材及びそれにより形成される通路を、搬送面と平行をなすようにした請求項1ないし3のいずれかに記載の物品搬送用流動棚装置。
【請求項5】
板状部材を、前後の支柱間の間隔を同じスパンで前後方向に連結した請求項1ないし4のいずれかに記載の物品搬送用流動棚装置。
【請求項6】
前後方向に並ぶ左右の支柱の対向面同士を横杆により連結し、前後複数の横杆に、流動棚と板状部材を載設した請求項1ないし5のいずれかに記載の物品搬送用流動棚装置。
【請求項7】
流動棚における前後端部の所定範囲の横幅を、物品又はパレットの左右寸法をほぼ等しくした請求項1ないし6のいずれかに記載の物品搬送用流動棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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