説明

特殊加工された印刷面を含む印刷ブランケット又はスリーブの製造方法

【課題】
【解決手段】ポリウレタン印刷面層が単一のパスにて100%固体の形態で基材に施される、特殊加工された印刷面を有する印刷ブランケットの製造方法である。ポリウレタン層の面には、インクを受け取り且つ転写するよう改良された面を提供すべく実質的に均一な寸法とされた、複数の凹部又はリザーバが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ブランケット又は印刷スリーブの製造方法、より詳細には、その内部にインクを受け入れ得るように特殊加工されたポリウレタン印刷外面を含む印刷ブランケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な商業的印刷方法の1つは、オフセットリソグラフィ法である。この印刷方法において、インクは、紙のような印刷対象物に転写される前に、印刷板からブランケット胴に取り付けたゴム張り面の印刷ブランケットにオフセットされる。典型的に、印刷ブランケットは、ブランケットカーカスと、重合系のゴム材料にて形成された印刷外面層とを備える少なくとも1つの基部プライを含む。印刷表面層は、液体印刷インクを保持し且つ転写し得るようにされている。印刷層が十分なインクの保持及び転写能力を有することを保証するため、当該技術にて、印刷面を研磨し又は印刷面を浮彫り加工することにより、印刷面のテクスチャを制御することが既知である。浮彫り加工した剥離ライナー内にて又は該剥離ライナーに対してゴム面を硬化させることにより、又は未硬化のゴム面上にてでん粉のような発塵性材料を堆積させて、でん粉を面内に押し込み、その後に、面が硬化した後、でん粉を除去することにより、浮彫り加工を実行して、インクを保持し且つ転写する改良した手段を提供することができる。例えば、その開示内容を参考として引用し本明細書に含めた、同一出願人により譲渡された米国特許明細書No.4,751,127を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現在使用されている印刷面層は、典型的に、天然又は合成のゴム材料から成っているため、かかる材料は、多数回の薄いパスで基部プライに被覆することができるように、溶剤を使用してそのゴム材料を溶解させることを必要とする。次に、硬化する前、溶剤は蒸発させなければならない。これと代替的に、天然又は合成ゴム材料は、単一のパスにて基部プライにカレンダ加工することができるが、ゲージ寸法を十分に制御する必要性があるため、非常に費用が掛かる。双方の方法において、ゴム材料は、圧力下にて硬化させなければならない。典型的に、硬化は、剥離ライナーと相互に挿置した材料を大型の胴の回りに巻き且つ、ロールの長さ及び胴への巻き付け回数に依存して、8〜12時間、加熱炉内にて加硫処理することにより、オフラインにて実行される。これと代替的に、材料は、インライン又はオフラインの何れかにて、ロータキュア(Rotacure)又はAUMAのような回転型の硬化システムに通してもよい。しかし、かかるシステムの作動速度は極めて遅い。
【0004】
従って、先行技術における方法の短所のない、インクを受け取り且つ転写する望まれるテクスチャを有する印刷面を含む印刷ブランケット又はスリーブの改良された製造方法が当該技術にて、依然、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、印刷面の材料として熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタン材料を利用するオフセット印刷ブランケット又はスリーブを提供することにより、この必要性を充たす。ポリウレタン材料を使用することは、ポリウレタンは100%固体の形態にて使用され、溶剤を不要にするから、従来から使用されている重合系ゴム材料に優る有利な効果を提供することになる。更に、ポリウレタン材料は、高価な装置を使用せずに、比較的高速度で且つインラインで単一のパスにて施し、硬化させ又は硬くすることができる。更に、ポリウレタン層を使用することは、先行技術のゴムコンパウンドに優る改良された耐磨耗性及び切断抵抗性を提供する。
【0006】
本発明の1つの特徴に従い、基材を提供するステップと、基材上にポリウレタン印刷面層を施すステップと、微粒子発塵性材料をポリウレタン層の面に施すステップと、発塵性材料を少なくとも部分的に、ポリウレタン層の面内に埋め込むステップと、ポリウレタン層を硬化し又は硬くするステップと、微粒子発塵性材料をポリウレタン層から除去するステップとを備える、特殊加工された印刷面を有する印刷ブランケットの製造方法が提供される。形成されるポリウレタン層表面には、寸法が実質的に均一である、すなわち、直径及び深さにて均一である複数の凹部又はリザーバが設けられる。凹部は、印刷面をわたって実質的に均一なパターンにて密に離間分離されている。
【0007】
本発明の1つの実施の形態において、ポリウレタン層が施される基材は、ポリウレタンがその面上に被覆されたとき、移動する支持ロールにより輸送されるウェブを備えている。かかる基材ウェブは、例えば、印刷ブランケット構造の基部層を備えている。これと代替的に、基材は、円筒形マンドレル上に支持されたスリーブを備えるようにしてもよい。マンドレルは、ポリウレタン被覆がスリーブの実質的に全表面に施されるように回転させることが好ましい。
【0008】
印刷面層として使用されるポリウレタン材料は、熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。ポリウレタンは、100%固体の被覆の形態にて施されることが好ましい。発塵性材料が圧力及び(又は)熱の付与によりポリウレタン面内に依然として埋め込むことができる限り、ポリウレタン層は、微粒子発塵性材料を施す前に、部分的に硬化させ又は硬くすることができる。ポリウレタン層は、発塵性材料が埋め込まれた後で且つ、発塵性材料を除去する前、完全に硬化させ又は硬くすることが好ましい。
【0009】
微粒子材料は、発塵性粒子を保持する発塵材ホッパの下方にて、ポリウレタン層を基材ウェブの上を通すことにより、ポリウレタン層に施されることが好ましい。発塵性粒子は、望まれる凹部を形成するよう所望の均一な寸法及び形状を有し、また、層の面に形成された凹部に有害な影響を与えることなく、化学的に又は機械的に除去することのできるでん粉、塩、砂糖、又は任意のその他の微粒子から成るものとすることができる。無機質微粒子材料を使用し、また、機械的除去を容易にし得るように、シリコーンのような剥離剤にて被覆することもできる。
【0010】
発塵性材料は、発塵性粒子をポリウレタン面からブラシで落し且つ(又は)洗い流すことにより、ポリウレタン面が完全に硬化し又は硬くなった後、除去されることが好ましい。これと代替的に、粒子は、適正な溶剤又は化学剤を使用して溶解させ且つ除去してもよい。形成されるポリウレタン面は、インクを保持し且つ転写するための改良された面を提供する複数の離間分離した凹部又はリザーバを含む。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、基材を提供するステップと、ポリウレタン印刷面を基材上に施すステップと、浮彫り加工したロールをポリウレタン層の表面に当てがうステップとを備える、特殊加工された印刷面を有する印刷ブランケットの製造方法が提供される。浮彫り加工したロールは、ポリウレタンが依然として、成形可能な間に、圧力下にて、ポリウレタン面に当てがわれることが好ましい、すなわち、浮彫り加工したロール上のパターンは、ポリウレタン層に付与すべき望まれるパターンの逆像であり、浮彫り加工したロール上の隆起領域はポリウレタン層に窪みを形成する。次に、ポリウレタンは、浮彫り加工したロールから分離するとき、少なくとも部分的に硬化し又は硬くなり、浮彫り加工した領域がポリウレタンの面上に残るようにすることが好ましい。
【0012】
浮彫り加工したロールは、実質的に均一な寸法である、すなわち、直径及び高さが均一であり且つ、実質的に均一なパターンにて密に離間分離した複数の隆起領域を備えることが好ましい。ポリウレタン面上に形成されたテクスチャ又は表面プロファイルは、インクを保持し且つ転写するための改良された面を提供する複数の離間分離した凹部又はリザーバを備えている。
【0013】
ポリウレタンは、使用されるポリウレタンの型式に依存して、多数の方法により硬化させ又は硬くすることができる。注型ウレタンが使用されるとき、硬化は、注型ウレタンが浮彫り加工したロールと接触する前に、開始し、また、浮彫り加工したロールと接触するとき迄に、注型ウレタンが圧力下にてのみ形成されることができるような速度にて進行することが好ましい。
【0014】
ポリウレタンが熱反応性注型ウレタンである場合、浮彫り加工したロールは、硬化を加速し得るように加熱し、注型ウレタンが浮彫り加工したロールから去るとき、より完全に硬化するようにする。ポリウレタンが浮彫り加工ステーションに入り且つ該浮彫り加工ステーションから出るとき、浮彫り加工したロールがポリウレタン面と接触し、硬化状態及び流動性を制御する前に且つ(又は)その後に、熱を加えることができる。
【0015】
ポリウレタンが湿気硬化性注型ウレタンから成る場合、水は、硬化を加速し得るように浮彫り加工したロールの面に導入することができる。水は、浮彫り加工したロールと接触する前に(又は)接触した後の何れかにて、導入し、ポリウレタンが浮彫り加工ステーションに入り且つ浮彫り加工ステーションから出るとき、硬化状態及び流動性を制御することができる。
【0016】
ポリウレタンが紫外線硬化性注型ポリウレタンである場合、浮彫り加工したロールは、半透明とし、また、硬化を加速し得るようロールの内部に配置された紫外光源を含む。浮彫り加工したロールと接触する前及び(又は)接触した後、紫外光線を提供して、上述したように、硬化状態及び(又は)流動性を制御することができる。
【0017】
本発明にて熱可塑性ポリウレタンが使用される場合、熱は、熱活性化した注型ウレタンに関して又は、ポリウレタンの硬さを制御する目的にて、上述したように施される。
従って、本発明の1つの特徴は、インクを受け取り且つ転写するため、改良された面を提供するよう特殊加工されたポリウレタン印刷面層を含む印刷ブランケット又はスリーブの製造方法を提供することである。本発明のその他の特徴及び有利な効果は、以下の説明、添付図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書にて説明した、特殊加工されたポリウレタン面を有する印刷ブランケット又はスリーブの製造方法は、熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタンを利用する。かかるポリウレタンを使用することは、ポリウレタンは100%固体の材料として使用することができる点にて、先行技術のゴムコンパウンドを使用することに優る有利な効果を提供することが分かった。従って、硬化する前に除去しなければならない溶剤は存在しない。更に、ポリウレタン面は、高価な装置を必要とせずに、インライン、比較的高速度で単一パスにて施し、硬化させ又は硬くすることができる。
【0019】
ポリウレタンコンパウンドが熱硬化性ウレタン(本明細書にて注型ウレタン又は2成分ウレタンとも呼ぶ)から成る場合、ウレタンは、典型的に、100%固体の材料の形態にて供給され、この固体の材料は、液体状態となるように加温し、次に、浸漬被覆、噴霧被覆、逆ロール被覆、ナイフ被覆又はスロットダイ被覆により基部プライ又は基材ウェブ又はスリーブに施される。熱硬化性ポリウレタンは、全体として、ポリエステル又はポリエーテル系のものである。ポリエステル系ポリウレタンは、その化学的抵抗性のため使用するが好ましい。採用される特定のウレタンに依存して、硬化機構は、熱、紫外線又は湿気硬化から成るものとすることができる。選択的に、熱を付与することで硬化を活性化し且つ(又は)加速するようにしてもよい。
【0020】
本発明にて使用するのに適した適正なポリウレタンの注型組成物は、その開示内容を参考として引用し本明細書に含めた、米国特許明細書No.3,211,701に記載されている。かかる組成物は、少なくとも2つの官能基と、18から600の分子量とを有するイソシアネート終端プレポリマーと、有機質鎖延長剤又は架橋結合剤(ポリアミン又は多価アルコールとすることができる)との反応生成物である。イソシアネート終端プレポリマーは、300から6000の分子量と、少なくとも2つの官能基とを有するヒドロキシル終端ポリエステル、ポリエーテル又はポリブタジエンポリオール又はそれらの混合体から、また、選択的に少なくとも2つの官能基と、18から600の分子量とを有し、有機質ジイソシアネートの余剰分を含む鎖延長剤を含むヒドロキシルから作成される。
【0021】
所望であれば、採用される注型法に依存して、ブロック化したイソシアネート又はブロック化し又は遅速作用硬化剤の何れかから誘導されることが好ましい硬化−ブロック化し且つ(又は)遅速硬化ポリウレタンを使用することができる。ポリウレタンがブロック化したイソシアネートから誘導される場合、2成分システムについて上述したもののようなプレポリマーは、鎖延長剤又は架橋結合剤をシステムに追加する前、メチルエチルケトキシム、カプロラクタム又はその他の活性な水素含有コンパウンドのようなブロック基と反応させる。混合体を基材に施し、また、熱を加えた後に始めて硬化を開始させる。熱の存在下にて、ブロック基を当初のイソシアネート基から解放し、これによりイソシアネート基が基質内にてその他の活性な水素含有物質と反応するのを許容する。適正な硬化ブロック及び(又は)遅速硬化ポリウレタンの例は、ケムチュラ(Chemtura)からのMEKO及びカイチュル(Caytur)型システムを含む。
【0022】
本発明にて使用するのに適した湿気硬化ポリウレタンは、内部に架橋結合剤を何も含まない(すなわち、水がポリマーを架橋結合し且つ、所望の物理的性質を与える)ポリエステル、ポリエーテル及びポリエステル/ポリオールのようなイソシアネートでキャップされたポリオールであるウレタンプレポリマーを含む。湿気硬化ポリウレタンの典型的なプレポリマーは、2成分注型ポリウレタンシステム用として上述したものと同一であるが、通常、湿気硬化したシステム用のプレポリマーの最終的な遊離NCOの含有率は、5%又はより少ない一方、2成分注型システムにて使用される典型的なプレポリマーは、2%から約12%の範囲にある。使用するのに好ましい湿気硬化性ポリウレタンは、バイエル(Bayer)、フュチュラ(Futura)、シカ(Sika)及びその他から商業的に入手可能である。
【0023】
典型的な紫外線又は放射線硬化性ポリウレタンシステムは、反応性官能基(二重結合のような)、架橋結合剤、粘度調整のため反応性稀釈剤、及び光増感剤又は光開始剤を含み、又は含まなくてもよいオリゴマーを含む。少なくとも2つの反応性不飽和点を含むオリゴマー又は少なくとも2つの不反応飽和点を含む反応性稀釈剤を選ぶことにより、架橋結合剤を不要にすることができる。硬化したシステムの性質の制御は、鎖分岐の程度、官能基の型式、不飽和結合の数及び型式、分子量等のような因子を含むオリゴマーバックボーンの構造、架橋結合剤の官能基及びレベル、反応性稀釈剤の性質及びレベル、増感剤又は光開始剤の種類及びレベル及び同様のもの介して実行することができる。一例としてのオリゴマーは、イソシアネート官能性プレポリマーをイソシアネート反応性の活性水素基を含む不飽和コンパウンドと反応させることにより得られた不飽和ウレタンオリゴマーである。不飽和ウレタンオリゴマーは、典型的に、少なくとも2つのイソシアネート基、すなわち、少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つのポリエーテル又はポリエステルポリオール(上述したのもと同様)と、ヒドロキシルエチル(プロピル)−(メチル)アクリレートのような単一のイソシアネート反応性の活性水素基を有する少なくとも1つの不飽和の追加−重合化可能なモノメリックコンパウンドを有する少なくとも1つの有機質イソシアネートコンパウンドの反応生成物である。何らかの重合化が生じる前、遊離基は、最初に光励起剤を介して生成しなければならない。光励起剤による遊離基の生成は、化学放射線(actinic radiation)の波長の働きによるものである。基が形成されると、ポリマーの成長の伝搬は、鎖反応を通じて急速に進行する。適正な紫外線又は放射線硬化性ポリウレタンは、サートマー(Sartomor)、ラドキュア(Radcure)のような会社及びその他から入手できる。
【0024】
ポリウレタンコンパウンドが熱硬化性ポリウレタンから成る場合、かかるポリウレタンは、典型的に、100%固体材料として供給され、この固体材料は、押し出し成形ダイ又はスロットダイ被覆により又は加熱した逆ロール被覆により基部プライ又はスリーブに対し溶解し且つ粘性な液体として施される。これと代替的に、熱可塑性ポリウレタンは、熱積層フイルムとして施してもよい。熱可塑性ポリウレタンは、冷却し且つ、被覆後、固体として再形成されるとき、その物理的性質の全てを回復するから、硬化する必要はない。本発明にて使用するのに適した熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステル又はポリエーテル系であり、ハンツマンポリウレタンズ(Huntsman Polyurethanes)、ダウ(Dow)及びバイエル(Bayer)から商業的に入手可能なものを含む。ポリエステル系ポリウレタンは、それらの化学的抵抗性のため、使用することが好ましい。
【0025】
また、ニトリルゴム、EPDM、ポリスルフィド、及びブチルゴムのような従来のゴム材料と上述した熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタンとのアロイも使用可能であることも理解すべきである。
【0026】
次に、図1Aを参照すると、本発明の方法の1つの実施の形態が示されており、この場合、被覆又は補強ロール16により支持された可動の基材ウェブ14に流動可能な被覆12の形態にてポリウレタンを施すべくスロットダイ装置10が使用される。基材ウェブ14は、1つ又はより多くの織地又は重合系補強層から成ることが好ましく、また、可圧縮層を更に含むことができる。スロットダイは、中空であり、また、ブレード18を含む。ポリウレタンが入口20からダイの内部に圧送されると、ポリウレタンは、スロット開口部22を通してウェブに分配される。ブレード18は、所定の厚さのポリウレタンを基材に施すよう配置することができる。スロットダイ装置を使用して熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタンを施すことができる。
【0027】
図1Bに示した代替的な実施の形態において、ポリウレタン被覆12を回転支持体又はマンドレル26上に設けられた印刷ブランケットスリーブ24に施すべく使用される、スロットダイ装置10が示されている。スリーブ24は、ニッケルのような金属又は繊維強化ポリマー樹脂の薄い層を備えることが好ましい。
【0028】
次に、図2A及び図2Bを参照すると、本発明の別の実施の形態が示されており、この場合、熱硬化性ポリウレタン12は、噴霧装置28を使用して可動ウェブ14又は回転スリーブ24の実質的に全表面に噴霧される。望ましい噴霧装置の一例は、その内容を参考として引用し本明細書に含めた、米国特許明細書No.5,656,677、米国特許明細書No.5,028,006、及び米国特許明細書No.6,071,619に開示されている。ポリウレタンは、タンク30から供給されることが好ましい。ポリウレタンが2成分ポリウレタンである場合、ポリウレタンは、タンク30内に配置される前に、混合させ、又は、混合装置から直接、供給することができる。ポリウレタンは、管32を通してタンク30から供給されることが好ましく、この管は、ポリウレタンをウェブ14又はスリーブ24の外面の実質的に全幅にわたって直接、噴霧し得るよう噴霧ノズル34に供給する。ポリウレタンがスリーブに噴霧される場合、マンドレルは、均一な被覆を施し得るように噴霧する間、回転させることが好ましい。
【0029】
図3A及び図3Bには、ポリウレタンが基材ウェブ又は基部スリーブにナイフ被覆される、本発明の追加の実施の形態が示されている。ナイフ被覆装置40は、ポリウレタン12がポリウレタンのローリングバンク44から計測量ずつ供給されるとき、ポリウレタンを薄く塗り且つ均一に被覆する機能を果たすブレード42を含む。ナイフ被覆装置は、ポリウレタンを図3Aに示したように、可動の基材ウェブ14に被覆すべく使用することができ、又は、図3Bに示したように、ポリウレタンを基部スリーブ24に被覆すべく使用することができる。
【0030】
本発明の1つの実施の形態において、上述した方法の1つにより基材ウェブ又は基部スリーブがポリウレタンにて被覆された後、発塵性粒子がポリウレタン面に堆積されるが、この堆積は、好ましくは、例えば、硬化前、熱硬化性ポリウレタンが使用される場合、面が依然として形成可能である間に、又は、熱可塑性ポリウレタンが使用される場合、ポリマーの温度がその軟化点以上である間に、行われるものとする。
【0031】
最適な結果を得るためには、ポリウレタン面は、発塵性粒子を分配する前、少なくとも部分的に硬化させ又は冷却させることが好ましい。熱硬化性ポリウレタン被覆が施された実施の形態において、被覆のポットライフは、発塵性粒子を分配する前、周囲温度にて部分的に硬化するようなものとすることができる。これと代替的に、ウェブ又はスリーブは、被覆装置から下流にて前硬化ステーション(図示せず)を通して発塵性粒子を分配する前、硬化を開始させ且つ(又は)適正なレベルまで加速することができる。かかる前硬化ステーションは、適正な硬化エネルギ源(例えば、紫外線、赤外線、高周波又は放射熱)を含むことになろう。
【0032】
熱可塑性ポリウレタンが施された場合、その温度がそのガラス転移温度(T)を上回る間に面を形成することができる。殆んどの場合、発塵性粒子の堆積は、最初に熱可塑性ポリウレタンを施し又は積層した直後に、行うことができる。しかし、堆積する前、発塵性粒子を受け取るのに最適な面を提供すべく被覆を加熱する必要があろう。
【0033】
図4に示したように、ポリウレタン被覆/前硬化装置から下流に配置された発塵材ホッパ50を使用して、発塵性粒子52を可動ウェブ14の部分的に硬化し又は硬くなったポリウレタン面54に堆積させる。基材がスリーブから成る場合、スリーブは、ホッパの下方に配置し且つ回転させることが好ましい。
【0034】
本発明にて使用される好ましい発塵性材料は、でん粉、塩、砂糖、及びその他の有機質微粒子を含む。無機質微粒子を使用してもよいが、それらの除去を容易にし得るようシリコーンのような剥離剤にて処理することが好ましい。使用される発塵性材料は、ポリウレタンの化学的組成に対して不活性であり、また、発塵性材料が施され、埋め込まれている間及び(又は)ポリウレタンが硬化している間、遭遇する任意の処理温度を上廻る融点を有しなければならない。発塵性材料は、また、面の化学的組成と、硬化及び埋め込み中に使用される熱との双方に対して不活性であり、発塵性材料が溶解したり、化学的に歪み、又はポリウレタン面に化学的に結合したりせず、また、硬化後、材料を容易に除去することを許容するものでなければならない。
【0035】
発塵性粒子は、形成される凹部に対して、約3μmから約65μmの平均直径及び約3μmから約65μmの平均深さを提供する寸法にて提供されることが好ましい。
発塵性粒子52がウェブ14のポリウレタン表面上に堆積された後、ウェブは、対向するローラ56、58の間を通り、これらのローラは圧力を加えて、粒子がポリウレタン面54内に押し込まれるようにする。ポリウレタンが熱硬化性ポリウレタンである場合、粒子がポリウレタン面に押し込まれた後、ポリウレタンは、適正な硬化源60(紫外線、赤外線、熱等)によって実質的に完全に硬化されることが好ましい。硬化工程は塵粒子をポリウレタン面の所要の位置に固定する。
【0036】
これと代替的に、ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである場合、粒子が面内に押し込まれた後、その面はポリウレタンのT以下まで冷却させる。
その後、完全に硬化し又は冷却したポリウレタン面12を含む、ウェブ14を、回転するブラシローラ62の下方を通過させることが好ましく、該ブラシローラは、ウェブ14の面にブラシ掛けし、発塵性粒子52を除去する。基材がスリーブである場合、ブラシローラは、該ブラシローラが回転するとき、スリーブ面と適合することが好ましい。
【0037】
幾つかの有機質発塵性材料は、ブラシ掛けだけで除去することは難しいことが分かった。塩及び砂糖のような有機質材料は、溶解し且つ、水にて容易に洗い流すことができるが、でん粉のような有機質材料は、溶解し且つ洗い流す前に、追加的な処理を必要とする。でん粉が発塵性材料として使用されるとき、粒子は、最初に水酸化ナトリウムと水との溶液により洗浄することが好ましく、この溶液はでん粉を砂糖に分解し、砂糖が溶解し且つ、ポリウレタン面から除去されるようにする。かかる溶液は、溶液がブラシを使用して施されるように、ブラシローラ62と関係したリザーバ(図示せず)内に浴の形態にて提供することができる。
【0038】
発塵性粒子を除去した後、それ以前に埋め込んだ粒子が存在していた領域内にて、ポリウレタン表面は、複数の離間分離した凹部又はインクリザーバを含む。かかる凹部は、改良されたインクの保持及び転写特徴を提供する。
【0039】
図5に示した1つの代替的な実施の形態において、印刷ブランケットには、加圧ローラ70と浮彫り加工したロール72のような特殊加工されたロールとの間にて可動ウェブ14のポリウレタン層12の面を通すことにより、特殊加工された印刷面が付与され、ポリウレタン面が浮彫り加工したロールと接触し、層の面に所望の凹部を提供するようにする。ロール72は、実質的に均一な寸法であり且つ、均一なパターンにて離間分離した複数の隆起領域(図示せず)を含む。ロール72は、ポリウレタンから容易に剥離する材料にて形成されることが好ましく、又は、該ロールは、テフロン(Teflon)のような剥離を助ける材料にて被覆してもよい。印刷ブラケットが動いてロールと接触するとき、ロール72上の隆起領域は、ポリウレタン面に複数の離間分離した凹部又はリザーバを提供する。印刷ブランケットがスリーブの形態をしているとき、スリーブは回転させ、該スリーブがロール72と接触し、また、支持するマンドレルが補強圧力を提供するようにする。
【0040】
上述したように、ポリウレタンを硬化させ又は硬くすることは、浮彫り加工したロールと接触する前に開始し、浮彫り加工したロールと接触するとき迄に、ウレタンが圧力によってのみ形成できるようにする。この実施の形態において、硬化は、使用されるポリウレタンの型式に依存して、熱、湿気又は紫外線光源を印加することにより制御することができる。
【0041】
ポリウレタンは、上述した方法により硬化し且つ浮彫り加工することが好ましい一方、ゴム表面を硬化させるため使用される先行技術の方法は、より高価な装置を採用し且つ、より多くの時間を必要とするが、ポリウレタン面を硬化させ且つ浮彫り加工し得るようにすることができることを理解すべきである。例えば、ロータキュア(Rotacure)又はAUMAにおけるドラム又はベルトは、浮彫り加工したドラム又はベルトと置換し、また、加熱する間、ポリウレタン面が浮彫り加工した面と接触するように採用してもよい。これと代替的に、標準型のドラム巻き付け及び硬化システム内にて互いに挿置される典型的な平滑な剥離ライナーに代えて浮彫り加工した剥離ライナーを使用してもよい。
【0042】
その好ましい実施の形態を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱せずに、改変例及び変形例が可能であることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】本発明の1つの実施の形態に従って印刷ブランケットの製造方法にて使用されるスロットダイ装置の斜視図である。
【図1B】本発明の別の実施の形態に従って印刷スリーブの製造方法にて使用されるスロットダイ装置の斜視図である。
【図2A】本発明の別の実施の形態に従って印刷ブランケットの製造方法にて使用される噴霧装置の斜視図である。
【図2B】本発明の別の実施の形態に従って印刷スリーブの製造方法にて使用される噴霧装置の斜視図である。
【図3A】本発明の別の実施の形態に従って印刷ブランケットの製造方法にて使用されるナイフ被覆装置の斜視図である。
【図3B】本発明の別の実施の形態に従って印刷スリーブの製造方法にて使用されるナイフ被覆装置の斜視図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態に従って塵粒子を施す方法の概略図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に従って印刷ブランケットに特殊加工された面を提供すべく使用される浮彫り加工したロールの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊加工された印刷面を有する印刷ブランケットの製造方法において、
基材を提供するステップと、
ポリウレタン層を前記基材の表面に施し、前記ポリウレタンが100%固体材料として前記基材に施されるようにするステップと、
インクを保持し且つ転写するため前記ポリウレタン層の表面に、実質的に均一な寸法とされた複数の離間分離した凹部を提供するステップと、
印刷面層を形成するため前記ポリウレタン層を硬化させ又は硬くするステップとを備える、印刷ブランケットの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記凹部は、約3μmから約65μmの直径及び深さを有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記複数の離間分離した凹部を提供するステップは、微粒子発塵性材料を前記ポリウレタン層の表面に施すステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記微粒子発塵性材料は、でん粉、塩、砂糖、及び有機質微粒子及び無機質微粒子から選ばれる、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記発塵性材料は、少なくとも部分的に、前記ポリウレタン層の面内に埋め込まれる、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法において、前記微粒子発塵性材料を前記ポリウレタン層から除去するステップを備える、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記基材は、印刷ブランケット構造の基部層を備える、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記基材は、円筒形マンドレル上に支持されたスリーブを備える、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記ポリウレタンは、熱反応性注型ウレタンと、湿気硬化性注型ポリウレタンと、紫外線硬化性注型ポリウレタンとを備える、方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法において、前記ポリウレタンは、前記微粒子発塵性材料を施す前に、部分的に硬化させる、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記凹部を提供するステップは、浮彫り加工したロールを前記ポリウレタン層の表面に当てがうステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記浮彫り加工したロールは、実質的に均一な寸法であり、且つ、実質的に均一なパターンにて離間分離した複数の隆起領域を備える、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記浮彫り加工したロールは、逆に前記ポリウレタン面に施される、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、前記浮彫り加工したロールは加熱される、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、前記浮彫り加工したロールは紫外線光源を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記ポリウレタンは、単一のパスにて施される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記ポリウレタンは、液体の形態にて施される、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記ポリウレタンは、積層フイルムの形態にて施される、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−502481(P2010−502481A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526881(P2009−526881)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/077057
【国際公開番号】WO2008/027937
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(300078202)デイ インターナショナル インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】