説明

特異的プロスタグランジンE2受容体の特定を含む幹細胞の送達及び生着を高めるための方法

受容体EPは、造血幹細胞及び造血前駆細胞のホーミング及び生着を高めることに最も関わるPGE受容体として特定される。EP受容体を優先的に標的とする化合物で移植組織供給源及び移植組織レシピエントを処置することにより、選択性がより小さい分子(例えば、PGE及びdmPGEなど)の使用を含む治療法に付随し得る有害な副作用を最小限に抑えながら、生着の成功を増大させる効果的な方法がもたらされる。そのような治療法において使用される1つの効果的な化合物が5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩(L−902,688)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は米国仮特許出願第61/261,349号(2009年11月15日出願)及び米国仮特許出願第61/261,352号(2009年11月15日出願)の利益を主張する(これらのそれぞれがその全体において参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0002】
(政府権利の申し立て)
本発明の開発期間中における研究の一部が、補助金番号HL069669のもと、国立衛生研究所(NIH)からの政府援助によりなされた。合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
造血幹細胞及び造血前駆細胞を含む潜在的な細胞移植組織を、それらのホーミング、生存、自己再生及び増殖を高めるためにEP受容体の選択的な受容体アゴニストで処置する方法。
【背景技術】
【0004】
動員末梢血幹細胞移植及び臍帯血移植のより普及している手法を含めて、骨髄移植が、悪性及び非悪性の血液学的疾患及び遺伝的障害のための治癒的手法として日常的に使用される。これらの手法では、十分な数の幹細胞集団及び前駆細胞集団を含有する造血移植組織が健康な正常者ドナーから採取されるか、或いは、疾患が低度又は非存在であるときには患者から採取され、その後、その造血系及び恐らくは疾患組織が除去されている患者に投与されることが要求される。移植後、適切な幹細胞が、適切な骨髄微小環境ニッチに移動又はホーミングする。適切なニッチの内部に留まると、これらの細胞は増殖し、新しい幹細胞を生じさせる(これは、自己再生と呼ばれるプロセスである)。これらの細胞はまた、系統の限定された前駆細胞及び成熟細胞に分化し、それにより、レシピエントの生涯にわたる血液形成造血系を修復する。前駆細胞が、成熟細胞を産生するために前記移植組織において要求される。しかしながら、前駆細胞は幹細胞ではなく、また、自己再生することができないので、それらの関与は生存期間により限定される。成功した移植手法では、十分な細胞がドナーから集められ、かつ、レシピエントに投与されることが要求される。収集手法、並びに、ホーミング及び生着のプロセスが移植組織の細胞にはストレスとなり、この結果、移植組織における細胞の一部が失われるという事実によって、多数の細胞の必要性が、さらに大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、臍帯血移植組織は、限られた数の幹細胞しか含有しておらず、この理由のために通常の場合、成人に移植するために日常的に使用することができない。同様に、正常なドナーの10%〜25%、及び、特定の患者集団(特に、ある種の化学療法剤、例えば、フルダラビンにさらされた患者集団)の75%までが、移植処置で使用するための十分な細胞を動員することができない。一般には、移植され得る生存細胞の数が多いほど、処置が成功する可能性が大きくなる。従って、移植組織における造血幹細胞又は造血前駆細胞の数を増大させることができるか、或いは、また、骨髄へのそれらのホーミングを促進又は強化することができる新規な薬剤及び/又は方法論が求められている。本発明のいくつかの態様が、この必要性に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの態様は、造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー又はドナー細胞又はレシピエントを処置する方法であって、造血幹細胞又は造血前駆細胞上の、PGE EP受容体と優先的に相互作用する少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する工程、及び、前記化合物の治療上許容され得る用量をその必要性のある患者に投与する工程を含む方法が提供された。これらの化合物は、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)からなる群から選択することができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、化合物は5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン(L−902,688)である。いくつかの実施形態において、患者は移植組織のレシピエントであり、但し、この場合、移植組織は、EP受容体に優先的に結合するアゴニストにより処置されている造血幹細胞及び造血前駆細胞からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの細胞を含む。
【0008】
いくつかの実施形態は、造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー、ドナー細胞又はレシピエントを処置する方法であって、造血幹細胞又は造血前駆細胞上の、PGE EP受容体と優先的に相互作用する少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する工程、及び、前記化合物の治療上許容され得る用量を患者に投与する工程(ここで、患者は造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー又はレシピエントである)を含む方法を含む。これらの方法の多くにおいて、化合物は造血幹細胞又は造血前駆細胞のホーミング及び/又は生着を増大させる。
【0009】
PGE EP受容体と相互作用する化合物には、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物が含まれるが、これらに限定されない。PGE EP受容体と相互作用し、かつ、本発明のいくつかの実施形態において使用され得るさらに別の化合物が、5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノンである化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0010】
いくつかの実施形態において、レシピエントの移植組織は、EPアゴニストにより処置される造血幹細胞及び造血前駆細胞からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの細胞を含む。ヒト患者又は罹患動物のどちらも、これらの化合物により処置され得るか、或いは、インビボ又はインビトロのどちらかで最初にこれらの化合物により処置された細胞により処置され得る。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態は、ヒト患者又は罹患動物を処置する方法であって、治療有効量のPGE EPアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を提供する工程、造血幹細胞又は造血前駆細胞をドナーから採取する工程、及び、前記PGE EPアゴニストを前記ドナーから採取された造血幹細胞又は造血前駆細胞と接触させる工程を含む方法を含む。
【0012】
本発明を実施するために造血幹細胞及び造血前駆細胞と接触させることができる化合物には、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明を実施するために使用することができるさらに別の化合物が5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、これらの化合物又は他のPGE EPアゴニストにより処置される造血幹細胞及び造血前駆細胞はその後、ヒト患者又は罹患動物に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、造血幹細胞又は造血前駆細胞と接触させるPGE EPアゴニストの治療有効量が約1.0×10細胞/ml〜約1.0×10細胞/mlの前記造血幹細胞又は造血前駆細胞あたり約0.001μM〜約10μMの間での程度である。いくつかの実施形態において、ヒトレシピエント又は動物レシピエントを処置するために処置及び使用される造血幹細胞又は造血前駆細胞は、ヒトドナー又は動物ドナーから得られる骨髄、臍帯又は末梢血から採取される。いくつかの実施形態において、造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー及びレシピエントは同じヒト患者又は罹患動物である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、細胞の活性を変化させるための方法であって、少なくとも1つのPGE EP受容体を発現する造血幹細胞又は造血前駆細胞を提供する工程、前記PGE EP受容体と優先的に相互反応する少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を供給する工程、及び、前記造血幹細胞又は造血前駆細胞を前記化合物と接触させる工程を含む方法を含む。いくつかの実施形態において、造血幹細胞又は造血前駆細胞が、骨髄、臍帯又は末梢血から単離される。いくつかの実施形態において、細胞を前記化合物(1つ又は複数)と接触させることにより、前記細胞のホーミング又は前記細胞の生着能が増大する。いくつかの実施形態において、細胞と接触させる化合物には、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、上記化合物の少なくとも1つが5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、前記細胞と接触する治療効果的化合物の量が約0.001マイクロモル濃度〜10マイクロモル濃度である。いくつかの実施形態において、化合物により処置される細胞の数が1mLあたり約10細胞〜約10細胞の間での程度である。
【0015】
本発明の他の態様は、造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー、ドナー細胞又はレシピエントを処置する方法であって、ドナー、ドナー細胞又はレシピエントに治療有効量のEPアゴニストを投与する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エキソビボでのEPアゴニストによる細胞の処置がCD34細胞表面におけるCXCR4発現を特異的にアップレギュレーションすることを示すグラフである。
【図2】EP受容体を介するシグナル伝達がCXCR4発現のアップレギュレーションに関わることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
新規技術の原理の理解を促すという目的のために、その好ましい実施形態が次に参照され、また、特定の用語が、新規技術を記載するために使用される。しかしながら、新規技術の範囲の限定がそれにより何ら意図されないことが理解される。これは、新規技術が関連する技術分野における当業者には通常に生じるであろうような、新規技術の種々の変更、改変及び当該原理のさらなる適用が意図されるからである。
【0018】
別途明記される場合を除き、用語「治療有効量」は、単独で、或いは、患者又は細胞又は細胞集団の生理学的状態に対する望ましい作用を有する医薬品の他の医薬有効成分又は他の構成成分との組合せでのどちらであれ、ヒト患者又は罹患動物に対して、或いは、細胞又は細胞集団に対して投与される医薬活性な化合物の量を示す。
【0019】
ヒト患者又は罹患動物のどちらにでもインビボ投与される、PGE EP受容体に優先的に結合する様々な化合物の治療に有効な用量、治療に有益な用量又は治療に効果的な用量は、1日につき患者の体重の1Kgあたり当該化合物の約0.1mgから、1日につき患者の体重の1Kgあたり当該化合物の約100mgまでの間の範囲である。
【0020】
PGE EP受容体に優先的に結合する化合物は、EP受容体に対する親和性が、それ以外の3つのEP受容体のいずれか(すなわち、EP、EP及びEP)に対する親和性よりも大きい化合物である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態を実施するために使用することができる化合物には、下記の化合物が含まれるが、それらに限定されない:L−902,688とも呼ばれる5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン(Youngら、2004);ONO−AE1−329とも呼ばれる2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸(Suzawaら、2000);ONO−4819とも呼ばれるメチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート(Maruyamaら、2002;Ohtaら、2009);16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE(Maruyamaら、2002);PF−04475270とも呼ばれる5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート(Luuら、2009);APS−999Na(El−Nefiawyら、2005);[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド](Machwateら、2001);及び((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)(米国特許出願番号US2005/0164992A1(2005年7月28日)、Donde Y、Nguyen JH、Kedzie KM、Gil DM、Donello JE及びIm WB)。
【0022】
別途明記される場合を除き、用語「約」は、本明細書中で使用される場合、プラス10%又はマイナス10%の値の範囲を示す。例えば、「約1.0」は0.9〜1.1の間における値を含む。
【0023】
造血移植のために使用されるための骨髄細胞、臍帯血細胞、動員末梢血細胞又はどのような造血細胞移植組織も、プロスタグランジンE(PGE)、或いは、PEGのいずれかの活性なアナログ又は代謝物、或いは、PGE EP受容体に対する特異性を有するいずれかのE系列プロスタグランジンにより処置することにより、移植された造血幹細胞のホーミング、生存及び増殖が改善される。この処置は、幹細胞生着率を増大させるために使用することができ、従って、造血幹細胞移植の効率を改善するために使用することができる。
【0024】
いくつかの評価によって、末梢血幹細胞移植の成功には、レシピエント患者の体重の1キログラムあたりおよそ200万個のCD34細胞を投与することが要求される。集めることができる幹細胞の数を増大させるどのような薬剤も、薬剤又は手法のどのような組合せも、幹細胞の生存率を高め、適切な骨髄環境への幹細胞のホーミング能を高め、及び/又は、幹細胞の自己再生を高める。また、増殖率は、造血移植手法の効力に対する正の影響を有する可能性がある。これらの手法の成功は、低下した患者の罹患率及び死亡率により評価することができる。限定的な成功が示される数多くの研究が、単離された移植組織に含まれるヒト造血幹細胞の数をエキソビボ環境において増大する試みが行われている(Broxmeyer、2006;Haylock及びNilsson、2007)。近年、CXCR4アンタゴニストのAMD3100が、幹細胞の動員を高めることが示されており(Broxmeyerら、2005;Lilesら、2003)、また、臨床試験(プレリキサホル(Plerixafor);モジビル(Mozibil))では、G−CSFとの組合せで使用されるとき、動員された幹細胞の収集を高めることが示されている(DiPersioら、2007b;DiPersioら、2007a)。ケモカインの切断が、幹細胞を動員する身体の能力を高めるための方法として使用されている。これらの方法のいくつかが特許されている:例えば、米国特許第6080398号、同第6447766号B1、同第639053号B1、同第6713052号、これらのそれぞれがその全体において参照によって組み込まれる。幹細胞をより効率的に動員するそれらの能力もまた報告されている(Kingら、2001;Pelusら、2004)。表面ペプチド(CD26)の活性を阻止するための役割が、造血幹細胞のホーミングを高めるための方法として報告されている(Christophersonら、2004)。
【0025】
G−CSFとの組合せで使用されるとき、数多くの薬剤が、回収できる造血前駆細胞の数を増大させることが報告されている(Pelus及びFukuda、2007;Herbertら、2007)。しかしながら、長期間再増殖する幹細胞、すなわち、自己再生活性を有する幹細胞を動員するこれらの薬剤の能力は一様には明らかにされていない。近年の研究では、16,16−ジメチルpGE(dmpGE)へのマウス骨髄細胞のパルス暴露は造血幹細胞の生着を高めることが示されている。しかしながら、この研究は作用機能の根拠を全く示しておらず、また、PGEの影響が細胞ホーミングに対するものでないことを具体的に述べている(Northら、2007)。意外にも、PGEが造血幹細胞及び造血前駆細胞CXCR4受容体を上の増大させること、また、この増大が、骨髄ニッチへのホーミングの増大に関与し、これにより、生着におけるその後の増大がもたらされることが、Hoggattら(2009)によって明らかにされた。
【0026】
PGEが、PGEに起因すると考えられる多数の、時には相反する影響の原因となる4つの高度に保存されたGタンパク質共役受容体(GPCR)、すなわち、EP、EP、EP及びEPと相互作用すると一般に考えられている(Breyerら、2001)。EP受容体の発現レベルが種々の組織の間で異なり、EP及びEPのmRNAが最も多く存在し(Sugimoto及びNarumiya、2007a)、EPのmRNAが、ほとんどの組織において、EPよりも低いレベルで発現する(Katsuyamaら、1995)。EPは、未確認のGタンパク質を介してホスホリパーゼC(PLC)を活性化し(Tsuboiら、2002)、これにより、イノシトールリン酸に共役する細胞内Ca2+を増大させホスホキナーゼC(PKC)の活性化をもたらす(Breyerら、2001)。EP受容体連結反応は、アデニル酸シクラーゼの阻害、及び、Gαに関連する低下したcAMPをもたらす(Sugimotoら、2007)。多数のEPスプライス変化体が特定されており、C末端のスプライシングによって、それらは多数のGタンパク質に共役することができる(Nambaら、1993)。EP及びEPはともにGαSに共役し、アデニル酸シクラーゼの活性化及び増大したcAMPをもたらし、これにより、プロテインキナーゼA(PKA)のほかに、Rap1、Rac1及びHSC機能に関係する特異なイソ型であるPKCζ(PKCゼータ)を活性化する(Goichbergら、2006)。EP及びEPは一部の系では部分的に重複する役割を有し、一方、他の系では別個の役割を果たすと考えられる(Sugimoto及びNarumiya、2007)。EPではなく、EPは、アデニル酸シクラーゼに加えて、PI3K/Akt経路を活性することができる(Fujinoら、2003)。EPはより長い細胞質ゾルドメインを有し、このドメインは、よりリガンド依存的なリン酸化及びより迅速な脱感作を可能にし(Nishigakiら、1996)、これらは選択的なネガティブ・フィードバック・ループを可能にしている(Sugimoto及びNarumiya、2007)。最後に、EPは、活性化されたときに内在化され、一方、EPは内在化されない(Desaiら、2000)。結果として、EP及びEPは、受容体活性化によって生じるシグナルの継続又は減衰に基づく異なる役割を有し得る(Breyerら、2001)。PGEでの処置は多くの場合、「ベル形状」の用量応答曲線を示し、EP受容体の異なるレパートリーが、PGEの濃度に依存して活性化されることを示唆する(Hullら、2004)。
【0027】
プロスタグランジンを利用する造血移植を改善するためのほとんどの現在の方策では、天然型PGE、又は、PGEの持続性誘導体、すなわち、16,16−ジメチルプロスタグランジンE(dmPGE)のどちらかが使用されている。これらのプロスタグランジン化合物は4つすべてのEP受容体を活性化し、これにより、上記で簡単に記載される数多くの下流側のシグナル伝達事象をもたらすと考えられる。本明細書中で示されるように、造血幹細胞及び造血前駆細胞のホーミング及び生着の増強は、プロスタグランジンを用いた処置によるCXCR4受容体の上方調節に起因する。CXCR4受容体における増大に関わるEP受容体(EP受容体)に特に注目することは、生着プロセスにとっては好ましくないかもしれない受容体、及び/又は、他の知られていない起こり得る有害な結果を有する受容体を活性化することなく生着プロセスを高めるという利益を有する。
【実施例】
【0028】
E4選択的アゴニストによる処置はホーミング効率及び生着効率に影響を及ぼす
操作されていない造血移植組織、又は、精製された造血幹細胞集団(例えば、マウスにおけるSKL細胞又はヒトにおけるCD34細胞)を、1mlの培養培地(例えば、IMDM)において100万個〜1000万個の細胞あたり0.001マイクロモル濃度〜10マイクロモル濃度のアゴニストの濃度で15分間〜6時間、氷上又は室温において、EP特異的アゴニストの5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン(すなわち、L−902,688)とインキュベーションする。インキュベーション後、細胞を無菌の培地又は生理的食塩水で3回洗浄し、レシピエントに静脈内投与される。L−902,688は、Merck Frosst(Kirkland、カナダ)から譲渡されたものである(Youngら、2004)。
【0029】
次に図1を参照する。このグラフは、エキソビボでのEPアゴニストによる細胞の処置がCD34細胞表面におけるCXCR4発現を特異的にアップレギュレーションすることを示す。挿入図は、イソ型コントロール(灰色の陰影領域)と比較した、EPアゴニスト(薄い線)及びdmPGE(濃い線)にパルス暴露後のCD34細胞の表面におけるCXCR4の著しいアップレギュレーションを示す、臍帯血サンプル由来のCD34細胞のサイトメトリーヒストグラムを示す。棒グラフは、使用された種々の化合物(dmPGE、ブタプロストン(Butaprostone)、スルプロストン及びEP)の関数としてグラフ化された実験から測定されたデータを示す。
【0030】
次に図2を参照する。このグラフは、EP受容体を介するシグナル伝達がCXCR4発現のアップレギュレーションに関わることを示す。挿入図は3つの臍帯血サンプルについてのデータを示す。エキソビボでのEPアゴニストによる処置により、CD34細胞表面におけるCXCR4発現がアップレギュレーションされる。棒グラフは8個のサンプルについての統合データを示す。棒グラフのデータは、EPアゴニストによるエキソビボ処置がCXCR4を約3倍アップレギュレーションすることを明らかにする。棒グラフにおいて、この作用力を100%に正規化する。EPアンタゴニストへの暴露に先立つ、EP1受容体、EP2受容体及びEP3受容体の特異的アゴニストによる細胞の前処理は、CXCR4のアップレギュレーションに対する影響を何ら有しておらず、これに対して、EPアゴニストへの暴露に先立つ、選択的なEPアンタゴニストとのプレインキュベーションは、CXCR4のアップレギュレーションを著しく阻止した。EP選択的アゴニストによるCXCR4のアップレギュレーションが、EP1、EP2、EP3のアンタゴニストによってではなく、選択的なEPアンタゴニストによって阻止されるという事実は、アップレギュレーションがEP受容体を介して媒介されるというさらなる証拠を提供する。
【0031】
さらなる実施形態は、EPアゴニスト(例えば、約0.001マイクロモル濃度〜10マイクロモル濃度の程度で)を、幹細胞の機能を高める手段として、造血移植組織を受ける直前、及び、造血移植組織を受けた後の毎日、患者に投与することを含む。治療の効果的用量は、単独で、或いは、別の薬剤又は不活性物質との組合せで使用される、当該処置されたヒト患者又は罹患動物に対する有益な効果を有する医薬活性薬剤の量である。そのような利益には、所与の処置様式における他の工程の有効性を増大させることが含まれ得るが、これに限定されない。
【0032】
新規技術が図及び前述の説明において詳しく例示及び記載されているが、好ましい実施形態のみが示され、記載されていること、そして、新規技術の趣旨の範囲内であるすべての変更及び改変は、保護されることが望まれることが理解され、前記は、特性上、例示的であり、限定的ではないと見なされるものとする。その上、新規技術が、具体的実例、理論的議論、説明及び例示を使用して例示されたが、これらの例示及び付随する議論は、技術を限定するものとして決して解釈してはならない。本出願において参照されるすべての特許、特許出願、及び、本文に至るまでの参考文献、科学論文、刊行物などは、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0033】
参考文献
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文献の形式:要約
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Ref Type: Abstract
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー、ドナー細胞又はレシピエントを処置する方法であって、
造血幹細胞又は造血前駆細胞上のPGE EP受容体と優先的に相互作用する少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する工程、及び
前記少なくとも1つの化合物の治療上許容され得る用量を、前記造血幹細胞又は造血前駆細胞のドナー又はレシピエントである患者に投与する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記化合物が前記造血幹細胞又は造血前駆細胞のホーミング及び/又は生着を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの化合物が、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの化合物が5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、造血幹細胞及び造血前駆細胞からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの細胞を含む移植組織のレシピエントであり、前記細胞は、前記PGE EP受容体に優先的に結合する前記少なくとも1つの化合物により処置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者を処置する方法であって、
治療有効量のPGE EPアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を提供する工程、及び
造血幹細胞又は造血前駆細胞をドナーから採取する工程、及び
前記PGE EPアゴニストを造血幹細胞又は造血前駆細胞であって、前記造血幹細胞又は造血前駆細胞は前記ドナーから採取された細胞と接触させる工程
を含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの化合物が、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの化合物が5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記造血幹細胞又は造血前駆細胞を患者に投与する工程であって、前記細胞を前記治療有効量のPGE EPアゴニスト又はその薬学的に許容される塩と接触させた後、前記細胞をレシピエントに投与する工程
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記PGE EPアゴニスト又はその薬学許容塩の前記治療有効量が約1.0×10個/ml〜約1.0×10個/mlの前記造血幹細胞又は造血前駆細胞あたり約0.001μM〜約10μMの間である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記造血幹細胞又は造血前駆細胞が、骨髄、臍帯又は末梢血から採取される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ドナーがヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ドナーが動物である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記造血幹細胞又は造血前駆細胞の前記ドナー及び前記レシピエントが同じヒト患者又は罹患動物である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
細胞の活性を変化させる方法であって、
少なくとも1つのPGE EP受容体を発現する造血幹細胞又は造血前駆細胞を提供する工程、
前記PGE EP受容体と優先的に相互反応する少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を供給する工程、及び
前記造血幹細胞又は造血前駆細胞を、前記PGE EP受容体と優先的に相互反応する前記少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩と接触させる工程
を含む方法。
【請求項18】
前記造血幹細胞又は造血前駆細胞が、骨髄、臍帯又は末梢血から単離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物を前記細胞と接触させることにより、前記細胞のホーミングを増大させる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物を前記細胞と接触させることにより、前記細胞の生着能を増大させる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの化合物が、2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]スルファニルプロピルスルファニル]酢酸、メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノアート、16−(3−メトキシメチル)フェニル−ω−テトラノル−5−チアPGE、5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシラート、[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド]、及び、((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞と接触する前記化合物の量が約0.001マイクロモル濃度〜10マイクロモル濃度である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの化合物が5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン又はその薬学的に許容される塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞と接触させる前記化合物の量が約0.001マイクロモル濃度〜10マイクロモル濃度である、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511471(P2013−511471A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539058(P2012−539058)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056744
【国際公開番号】WO2011/060381
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】