説明

玩具用サーキット及び玩具用車両走行システム

【課題】リモコン操作技術の優劣に関係なく、よい成績をとることが可能な玩具用車両走行システムを提供することを目的とする。
【解決手段】玩具用車両が走行する道路に、幅方向にわたって白又は明るい灰色から、黒又は暗い灰色に連続的に或いは段階的に変化する階調で表された第1の位置情報が描かれた玩具用サーキット101と、玩具用サーキット101に設置された、第2の位置情報としての玩具用車両の走行方向の位置を知らせるための赤外線光源1〜13と、第1の位置情報の検出手段と、第2の位置情報の検出手段と、タイヤの回転数の検出手段と、第1の位置情報、第2の位置情報、及びタイヤの回転数から求めた走行距離に応じてステアリング操作及び速度制御を行う制御手段とを備えた玩具用車両とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具用サーキット及び玩具用車両走行システムに関し、より詳しくは、玩具用サーキット及びその玩具用サーキットでレーシングカーを自律走行させる玩具用車両走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リモコンを操作し、一つのサーキットに一台の車を走らせて、走行タイムを競い、遊ぶことができる玩具用車両走行システムがある。その玩具用車両走行システムにおいては、コース取りやそれに応じたスピード操作など敏捷でかなり高度なリモコン操作技術が要求される。
【0003】
また、複数のコースに分割されたサーキットにおいて、各コースに一台ずつの車を走らせたり、或いは、一つのコースに複数の車を走らせたりして、リモコンを操作し、ゴール順位を競って遊ぶことができる玩具用車両走行システムがある。この場合も、カーブに応じたスピード操作など敏捷でかなり高度なリモコン操作技術が要求される。
【0004】
このような玩具用車両走行システムは、若い人から年配の人まで幅広い層に人気がある。
【特許文献1】特開平5−163507号公報
【特許文献2】特開平6−269574号公報
【特許文献3】特開2004−181135号公報
【特許文献4】特開2001−046752号公報
【特許文献5】特開平10−33838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行タイムの長短やレースの勝敗は、主にリモコン操作者の操作技術の優劣、及び車両のセッティングにより決っていた。走行タイムやレースでよい成績を取ろうと思えば、敏捷でかなり高度なリモコン操作技術が要求されるとともに、コースに合った最適な車両のセッティングを要求される。車両のセッティング項目として、以下のようなものがある。
【0006】
(i)コースの動摩擦係数や、コースの形に応じたタイヤのコンパウンド(硬さや材質、及びインナー(タイヤの中に入れるもので実車では空気にあたる)の硬さ)。
【0007】
(ii)コースの形や燃費を考慮したギヤ比、モータ性能(回転数とトルク)。燃費に関して、レースの時間は一般に5分程度なのでバッテリの持続時間を考慮する必要がある。
【0008】
(iii)カーブの曲がり方を考慮したキャンバー角やキャスター角。直線やカーブの設置比率を考慮してキャンバー角やキャスター角を調整する必要がある。
【0009】
(iv)フロントサスペンション・スプリングの硬さや車高など。ハイサイド(車両がカーブでひっくり返ること)を起こさないように考慮する必要がある。
【0010】
(v)その他
車体の軽量化、リアサスペンション等。
【0011】
リモコンの操縦技術に関しては、一般に年配の人は若い人に比べてどうしても反応が遅くなるためハンディがあるといえる。一方、車両のセッティングに関しては、操縦技術の優劣に関係なく行うことが可能である。
【0012】
したがって、リモコンの操縦技術に関するハンディを解消すれば、だれでもより公平にカーレースを楽しむことができるようになる。
【0013】
一方で、今は操縦技術が劣っていても将来操縦技術を向上させたいと願う人もおり、それに対応できる適切な玩具用車両走行システムが要望されている。
【0014】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、リモコン操縦技術の優劣を解消することができ、それにより、だれでもより公平にカーレースを楽しむことができる、さらに操縦技術を向上させたいという要望をかなえることができる玩具用サーキット及び玩具用車両走行システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、第1の発明は、玩具用サーキットに係り、玩具用車両が走行する道路に、幅方向にわたって濃淡が順次連続的に或いは段階的に変化する階調で表された第1の位置情報が描かれていることを特徴とし、
第2の発明は、玩具用車両走行システムに係り、玩具用車両が走行する道路に、幅方向にわたって濃淡が順次連続的に或いは段階的に変化する階調で表された第1の位置情報が描かれた玩具用サーキットと、前記玩具用サーキットに設置された、第2の位置情報としての前記玩具用車両の走行方向の位置を知らせるための赤外線光源と、前記第1の位置情報の検出手段と、前記第2の位置情報の検出手段と、タイヤの回転数の検出手段と、前記第1の位置情報、前記第2の位置情報、及び前記タイヤの回転数から求めた走行距離に応じてステアリング操作及び速度制御を行う制御手段とを備えた玩具用車両とを有することを特徴とし、
第3の発明は、第2の発明の玩具用車両走行システムに係り、前記第1の位置情報の検出手段は、前記道路に赤外線を照射する赤外線光源と、前記道路で反射した前記赤外線を検出する赤外線センサとで構成されることを特徴とし、
第4の発明は、第2の発明の玩具用車両走行システムに係り、前記第2の位置情報の検出手段は、前記第2の位置情報としての玩具用車両の走行方向の位置を知らせるための赤外線光源から発する前記赤外線を検出する赤外線センサで構成されることを特徴とし、
第5の発明は、第2の発明の玩具用車両走行システムに係り、前記タイヤの回転数の検出手段は、前記タイヤを駆動するモータの軸に赤外線を照射する赤外線光源と、前記モータの軸で反射した前記赤外線を検出する赤外線センサとで構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、道路の幅方向に濃淡が順次連続的に或いは段階的に変化する階調で表示された第1の位置情報が描かれている玩具用サーキットを有し、玩具用車両には道路に赤外線を照射する赤外線光源と道路で反射した赤外線を検出する赤外線センサを備えている。
【0017】
赤外線を道路の表面に照射することにより、道路に表示された階調の絶対値を読み取ることができるため、玩具用車両の走行中に道路の幅方向の車両の位置を検知しながら車を走行させることができる。したがって、所望のコース採りを行いながら車両を走行させることができる。特に、カーブにおいて、より適切なコース採りを行うことができる。
【0018】
さらに、走行方向の位置に対応するステアリング操作及び速度制御など走行条件を、車両に搭載されたマイコンに予め記憶させておくことにより、走行中取得した第1の位置情報などに基づき、走行中に適切にコース採り及び速度制御などを行わせることができる。これにより、リモコン操縦技術の優劣に関係なく、そのようなサーキットにおいて車両を最短時間で周回させることができる。
【0019】
したがって、リモコン操縦技術の優劣を解消することができ、車両のセッティングの上手な人が良い成績をとることが可能となる。これにより、だれでもより公平にカーレースを楽しむことができる。
【0020】
また、本発明の玩具用車両走行システムにおいては、コンピュータ制御により、最適なコース採り及び車両速度で、サーキットにおいて車両を走行させることができるので、このシステムの車両の後をリモコン操作により追従して操作することにより操縦者の操縦技術の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(玩具用サーキットの説明)
図1は、本発明の実施の形態に係る玩具用サーキットの構成を示す平面図である。図2は、道路に描かれた第1の位置情報を示す道路の拡大平面図である。位置情報は、道路の幅方向にわたって白から明るい灰色を経て、さらに暗い灰色を経て黒に連続的に或いは段階的に変化する階調で示されている。
【0023】
この玩具用サーキット101は、図1に示すように、全長凡そ5m、幅凡そ50cmの玩具用サーキットである。長い直線部分1箇所と、短い直線部分2箇所と、急カーブ2箇所と、中程度のカーブ2箇所と、緩やかなカーブ1箇所とを有する。第1の位置情報は、図2に示すように、道路の幅方向にわたって内側から外側に、白から明るい灰色を経て、さらに暗い灰色を経て黒に連続的に或いは段階的に変化する階調で示されている。階調は、8ビットの場合で、例えば、道路の幅方向、内側から外側に0〜255の256階調とする。
【0024】
また、この玩具用サーキット101は、スタート位置、カーブの開始/終わりの位置などの玩具用車両の走行方向の位置(第2の位置情報)を示す赤外線光源1乃至13が設置されている。各光源はコースの上方で道路を横断するように設置されている。即ち、同図中、左上に示す光源2の部分の断面図のように、上の方から第2の位置情報を載せた赤外線が幅方向全体にわたって照射されるようになっている。図1の場合、光源1はスタート位置を示す。光源2、4、6、8、10、12はカーブの開始の少し手前の位置を示し、光源3、5、7、9、11、13はカーブの終わりの位置を示す。各赤外線光源は、スタート位置、カーブの開始の少し手前の位置、カーブの終わりの位置が区別でき、また必要なカーブ情報を識別できるように、例えば、赤外線の点滅回数などを変えている。必要なカーブ情報などは、赤外線照射をオン/オフさせることにより数バイトのシリアルデータ(例えば、カーブの半径など)として車両に送っている。
【0025】
(玩具用車両の説明)
次に、図3、図4、図5、図6、図7を参照しながら、玩具用車両、及びその玩具用車両に搭載された走行制御装置について説明する。
【0026】
図3(a)、(b)、図4(a)、(b)は玩具用車両102について示す図である。図3(a)は車両側面図、図3(b)は車両を車台14の底面側から見た斜視図、図4(a)は第1の位置情報の検出手段16の拡大側面図、図4(b)はタイヤの回転数の検出手段17の拡大側面図である。
【0027】
図5(a)は駆動モータ回路/機構及びこれと関連する機構の主要な構成を示す図であり、図5(b)は、ステアリングサーボ回路/機構及びこれと関連する機構の主要な構成を示す図である。
【0028】
図6、図7は玩具用車両に搭載された走行制御装置のブロック図であり、特に、図7において、赤外線センサの部分、ステアリングサーボモータの制御部分、及び駆動モータの制御部分を具体的に示している。
【0029】
玩具用車両102は、図3に示すように、車台14と、タイヤ15a、15bと、走行制御装置103とを備えている。
【0030】
走行制御装置103は、図6、図7に示すように、道路幅方向の位置(第1の位置情報)を検出する第1の位置情報の検出手段16と、タイヤの回転数を検出するタイヤ回転数センサ17と、スタート位置、カーブの開始/終わりの位置などの玩具用車両の走行方向の位置(第2の位置情報)を検出する第2の位置情報の検出手段18と、走行中のステアリング位置に対応する電圧を発生するステアリングサーボVRと、ステアリングサーボVRの電圧を制御してステアリングの旋回角度を変化させるステアリングサーボ回路/機構と、車の速度を変化させる駆動モータ回路/機構と、検出手段からの情報に基づき、回路/機構を統一的に一括して制御するCPUを備え、クロック周波数が例えば約20MHzのマイクロコンピュータ(マイコン)とを備えている。
【0031】
第1の位置情報の検出手段16は、図4(a)に示すように、道路面に向けて赤外線を出射する赤外線光源と、道路101面で反射した赤外線を検出し、道路に描かれた256階調に対応する信号を出力する第1の赤外線センサとで構成される。
【0032】
タイヤ回転数センサ17は、図4(b)に示すように、タイヤ15を回転させる駆動モータの軸に付けられた白と黒のマーカに赤外線を照射する赤外線光源と、白と黒のマーカからの反射信号を読み取り、白と黒のマーカに対応する信号をON−OFFパルスとして出力する第2の赤外線センサとで構成される。この場合、マイコンは入力ポートから入力されたパルス間隔を測定することでタイヤの回転数を特定する。具体的には、一定時間中に検出したパルス個数を計数する。走行距離はタイヤの接地面の全周とタイヤの回転数とその回転数で走行した時間との積で算出できる。
【0033】
第2の位置情報の検出手段18は、図3に示す位置に配置され、サーキット101のスタート位置、カーブの開始/終わりの位置にそれぞれ設置された赤外線光源から出射される赤外線を検出し、読み取り信号を出力する第3の赤外線センサで構成される。
【0034】
ステアリングサーボVRは、ステアリングの位置により電気抵抗値が変化し、それに対応する電圧を出力する。ステアリングの位置に連動する可変抵抗器と、可変抵抗器の両端子間に電圧を付与する電源で構成される。出力電圧は、マイコンのA/Dコンバータでデジタル値に変換されてマイコンのCPUに取り込まれる。
【0035】
図5(b)に示すステアリングサーボ回路/機構は、プログラムの要求によりステアリングサーボVRから出力する電圧を制御してステアリングの旋回角度を変化させる機能を有する。
【0036】
ステアリングサーボ回路/機構は、図7に示すN-ch、及びP-chのMOSFETHブリッジ回路とステアリングを回転させるサーボモータとで構成される。マイコンのPWM出力ポートから出力された所定のパルス幅のパルスにより、Hブリッジ回路によりサーボモータを駆動する。また、ディレクション出力ポートから出力される信号により、ステアリングサーボモータの回転方向は左右何れかを維持するか、或いは左右何れかに切り換えられる。
【0037】
この場合、マイコンは、プログラムが要求するステアリングの角度とステアリングサーボVRで示す現在走行中のステアリングの角度との違い(ΔΦ)により、プログラムの要求に適合するようにステアリングサーボモータの回転方向を維持するか又は切り替える信号をディレクション出力ポートから出力し、かつステアリングを所定の旋回角度で動かすべくPWMモジュールから最適なパルス幅のパルスを発生させる。具体的には、ΔΦが大きいときはパルス幅を大きくし、ΔΦが小さくなるに従い、パルス幅を小さくしていく。
【0038】
図5(a)に示す駆動モータ回路/機構は、図7に示すN-chのMOSFET駆動回路と駆動モータとで構成される。マイコンのPWM出力ポートから出力されたパルスに基づき、駆動回路により駆動モータを駆動する。例えば、MOSFETのON時間を長くすると駆動モータの回転数が増えるようにしておく。
【0039】
この場合、マイコンのCPUは、第2の赤外線センサからの速度に対応するパルス間隔に応じて、プログラムが要求する速度になるようにパルス幅を変える。マイコンは、内蔵されたPWMモジュールからCPUにより指定されたパルス幅のパルスを発生させてPWM出力ポートから出力する。
【0040】
以上をまとめると、玩具用車両の走行方向と速度は走行制御手段により次のようにして制御される。
【0041】
マイコンは、第1の赤外線センサから入力された第1の位置情報の階調に対応する読取り信号により現在走行中の道路の幅方向の位置を検知する。また、第3の赤外線センサから入力されたカーブ位置を知らせる赤外線の読取り信号により、カーブ位置を検知する。さらに、第3の赤外線センサから入力されたスタート位置を知らせる赤外線の読取り信号を基に周回数を算出し、またタイヤ回転数センサから入力されたタイヤの回転数の信号を基に車の走行距離を算出する。
【0042】
そして、上記道路の幅方向の位置情報及びカーブの位置情報、及び走行距離情報に基づき、ステアリングサーボ回路/機構を制御する信号と、駆動モータ回路/機構を制御する信号とを出力する。これにより、ステアリングの旋回角度を時々刻々に制御して車の進行方向を決めるとともに、その進行方向に向かう車の速度を時々刻々に決める。
【0043】
(玩具用車両走行システム及びその使用方法の説明)
次に、玩具用車両走行システムの構成を説明する。
【0044】
玩具用車両走行システムは、図1、2に示す玩具用サーキット101と、図3乃至図7に示す玩具用車両102とを備えている。玩具用サーキット101と玩具用車両102の詳細は、上記した通りであるので、説明を省略する。
【0045】
次に、玩具用車両走行システムに関し、その2つの使用方法について以下に説明する。
【0046】
(i)第1の使用方法
この使用方法は、マイコンに前もって走行するサーキットのコース採り及び走行条件を設定して実際にサーキットで玩具用車両を走らせてそのときの走行時間を計測し、これに基づいて、手動で走行の制御パラメータを入力してコース採り及び走行条件を振りながら、走行時間の短くなるコース採り及び走行条件に収束させていく方法である。その方法を以下に説明する。
【0047】
まず、入力データとして、マイコンのCPUに走行方向の位置データと、その位置データに対応する階調データ及び速度データとを予め与えておく。道路の中央を一定速度で玩具用車両を走らせるような場合には、全ての走行方向の位置において、階調データを127にセットし、駆動モータの回転数(速度を決める)を一定の値にセットする。
【0048】
玩具用車両が走行し始めると、マイコンは、現在走行中の玩具用車両の第2の位置情報(走行方向の道路の位置)と、第2の位置情報に対応する第1の位置情報(道路の幅方向の位置)、タイヤの回転数、及びステアリングの角度とを時々刻々検出する。そして、CPUは、検出データに基づき、予め与えられた目標値を忠実に達成するようにサーボ機構を駆使して、ステアリングの旋回角度(走行方向を決める)と、駆動モータの回転数(速度を決める)とを制御する。
【0049】
このようにして、最初の走行を行い、サーキットを一周するのに要した走行時間を計測する。また、スピードが適切でなかったため玩具用車両がカーブでスリップしなかったかどうかもチェックする。
【0050】
次に、走行コースが中央よりも内側になるように、全ての走行方向の位置において、階調データを50にセットし、駆動モータの回転数(速度を決める)を前回と同じにセットして玩具用車両を走行させ、サーキットを一周するのに要した走行時間を計測するとともに、スピードが適切でなかったため玩具用車両がカーブでスリップしなかったかどうかをチェックする。
【0051】
次に、走行コースが中央より外側になるように、全ての走行方向の位置において、階調データを200にセットし、駆動モータの回転数(速度を決める)を前回と同じにセットして玩具用車両を走行させ、サーキットを一周するのに要した走行時間を計測するとともに、スピードが適切でなかったため玩具用車両がカーブでスリップしなかったかどうかをチェックする。
【0052】
次に、上記の3種類の走行コースのそれぞれについてカーブでのコース採りを変えてみる。ここでは、図8に示すようなカーブをショートカットするような走り方について説明する。(a)は90度のカーブの場合、(b)は180度のカーブの場合である。直線部分は道路の中央部を走行するようにし、上記と同様に条件を設定する。
【0053】
(a)の場合、カーブの開始位置の少し手前の方からステアリングを少し大きくきり、クリッピングポイント(コースの最も内側に付ける場所で、図中、〇で示す。)が進行方向の少し先にずれるように、緩やかなカーブを描いてカーブ内を進むようにする。この場合、所定の関数にしたがって階調データを127から次第に減少させていく。階調データが0に近づいたらステアリング角度をそのまま保持する。すると、今度は階調データが次第に大きくなっていく。カーブの終わりに対応する位置においても階調データが127にならない場合、ステアリングの角度をそのまま維持する。階調データはさらに大きくなっていき、127に近づいていく。階調データが127に近づいたらステアリングを徐々に切っていき、階調データが127に一致したらその後は、階調データの127を維持するようにしながら走行する。
【0054】
次に、(b)の場合は、さらに、カーブの中央よりも少し手前に赤外線光源を設ける。カーブの開始に対応する位置からステアリングを少し大きくきり、カーブの内側の半径よりも回転半径が少し大きくなるように、かつクリッピングポイントが進行方向でカーブの中央よりも少し先にずれるように、緩やかなカーブを描いてカーブ内を進むようにする。この場合、所定の関数にしたがって階調データを127から次第に減少させていく。カーブの中央部よりも少し手前で赤外線を検知したら、ステアリングを少し戻し、前半よりも緩やかなカーブを描いてカーブ内を進むようにする。この場合、前半よりも緩やかなカーブを描かせるようにするのであるが、車両のカーブの中心がコースのカーブの中心とは少しずれているため、前半よりも早く階調データが減少するようにする。階調データが0に近づいたらステアリング角度をそのまま保持する。すると、今度は階調データが次第に大きくなっていく。カーブの終わりに対応する位置においても階調データが127にならない場合、ステアリングの角度をそのまま維持する。階調データはさらに大きくなっていき、127に近づいていく。階調データが127に近づいたらステアリングを徐々に切っていき、階調データが127に一致したらその後は、階調データの127を維持するようにしながら走行する。
【0055】
このようにして、走行を終えたら、走行時間を計測し、かつ走行状態を検討する。
【0056】
次に、直線での速度を速くしてみたり、カーブでのコース採りを種々変えてみたりして、走行時間のもっとも短くなるコース採り及び走行条件に収束させていく。
【0057】
このようにして見出したコース採り及び走行条件をマイコンのプログラムにセットすることにより、人が操縦するよりも確実に走行時間の短縮を図り、走行させることができる。
【0058】
(ii)第2の使用方法
この使用方法は、マイコン自身が学習して、自動的に最も走行時間の短くなるコース採り及び走行条件を見つける方法である。その方法を以下に説明する。
【0059】
この場合は、最初に、道路の中央をできるだけ遅い一定の速度で玩具用車両を走らせるような設定をしてコースを一周させて、スタート地点からどの位置にカーブがあるか等のコースの情報を収集してコースのデータベースを作る。その後、徐々に速度を速めていったり、コース上の各地点の第1の位置情報(道路の幅方向の位置)の目標値を‘アウト−イン−アウト’(カーブにおいて、コース幅方向、外側から入り、最も内側を通り、外側に抜ける)などのようにしたりして、最適なコース採り及び走行条件に近づけて行くことができる。
【0060】
上記(i)或いは(ii)のようにして、最適なコース採り及び走行条件が見つかったら、次に、車両のセッティング項目を変え、見つかった最適なコース採り及び走行条件を基にして、条件を振り、車両のセッティング項目に合ったさらに最適なコース採り及び走行条件を探す。これにより、常に最適なコース採り及び走行条件のもとで、最適な車両のセッティングを見出すことができる。
【0061】
以上のように、本発明の実施の形態に係る玩具用車両走行システムによれば、道路の幅方向に変化する階調で表示された第1の位置情報が描かれている玩具用サーキット101を有し、玩具用車両102には道路表面に赤外線を照射する赤外線光源と、道路で反射した赤外線を検出する赤外線センサを備えているので、道路に赤外線を照射することにより、道路に表示された階調の絶対値を読み取ることができるため、玩具用車両の走行中に道路の幅方向の車両の位置を検知しながら車を走行させることができる。
【0062】
したがって、所望のコース採りを行いながら車両を走行させることができる。特に、カーブにおいて、より適切なコース採りを行うことができる。
【0063】
さらに、走行方向の位置に対応するステアリング操作及び速度制御など走行条件を、車両に搭載されたマイコンに予め記憶させておくことにより、走行中取得した第1の位置情報などに基づき、走行中に適切にコース採り及び速度制御などを行わせることができる。
【0064】
これにより、リモコン操作技術の優劣に関係なく、そのようなサーキットにおいて車両を最短時間で周回させることができる。
【0065】
このように、本発明の実施形態によれば、リモコン操作技術の優劣を解消することができ、車両のセッティングの上手な人が良い成績をとることが可能となる。これにより、だれでもより公平にカーレースを楽しむことができる。
【0066】
また、本発明の玩具用車両走行システムにおいては、コンピュータ制御により、最適なコース採り及び車両速度で、サーキットにおいて車両を走行させることができるので、このシステムの車両の後をリモコン操作により追従して操作することにより操縦者の操縦技術の向上を図ることができる。特に、初心者にとっては、車両の速度を最初はゆっくり走行させ、慣れてくるにしたがって徐々に速度を上げていくことにより操縦技術の向上を実感できる。
【0067】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0068】
例えば、この実施の形態においては、第1の位置情報として、道路に幅方向に渡って表示された白から明るい灰色を経て、さらに暗い灰色を経て黒に連続的に或いは段階的に変化する階調を用いているが、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫などの原色自体、或いは原色と各色の階調をまじえたものをも用いることができる。
【0069】
また、サーキットに一台の車両を走行させる場合を説明しているが、複数台の車両を走らせる場合にも適用可能である。この場合、無線通信により予め設定したコース採りを変更することにより車両同士の衝突を回避することができる。即ち、複数台の車両を走らせる場合、速い車が遅い車を追い抜くとき速い車は一台で走行するときとは異なるライン採りで走行しなければならないので、そのときのライン採りを予めマイコンに設定しておき、速い車にそのタイミングを無線通信により知らせることで車両同士の衝突を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態である玩具用サーキットについて示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態である玩具用サーキットの道路の幅方向に表示された第1の位置情報を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態である玩具用車両の側面図、(b)は同じく車両を車台14の底面側から見た斜視図である。
【図4】(a)は本発明の実施の形態である玩具用車両に取り付けられた第1の位置情報の検出手段16の拡大側面図、(b)は同じく第2の位置情報の検出手段17の拡大側面図である。
【図5】(a)は駆動モータ回路/機構及びこれと関連する機構の主要な構成を示す図であり、(b)は、ステアリングサーボ回路/機構及びこれと関連する機構の主要な構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態である玩具用車両に搭載された走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の走行制御装置の構成要素うち、センサ及び回路/機構を少し詳しく示す図である。
【図8】(a)、(b)は玩具用サーキットのカーブの走行方法について示す平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1〜13 赤外線光源
14 車台
15a、15b タイヤ
16 第1の位置情報の検出手段
17 タイヤ回転数センサ
18 第2の位置情報の検出手段
101 玩具用サーキット
102 玩具用車両
103 走行制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具用車両が走行する道路に、幅方向にわたって濃淡が順次連続的に或いは段階的に変化する階調で表された第1の位置情報が描かれていることを特徴とする玩具用サーキット。
【請求項2】
玩具用車両が走行する道路に、幅方向にわたって濃淡が順次連続的に或いは段階的に変化する階調で表された第1の位置情報が描かれた玩具用サーキットと、
前記玩具用サーキットに設置された、第2の位置情報としての前記玩具用車両の走行方向の位置を知らせるための赤外線光源と、
前記第1の位置情報の検出手段と、前記第2の位置情報の検出手段と、タイヤの回転数の検出手段と、前記第1の位置情報、前記第2の位置情報、及び前記タイヤの回転数から求めた走行距離に応じてステアリング操作及び速度制御を行う制御手段とを備えた玩具用車両と
を有することを特徴とする玩具用車両走行システム。
【請求項3】
前記第1の位置情報の検出手段は、前記道路に赤外線を照射する赤外線光源と、前記道路で反射した前記赤外線を検出する赤外線センサとで構成されることを特徴とする請求項2記載の玩具用車両走行システム。
【請求項4】
前記第2の位置情報の検出手段は、前記第2の位置情報としての玩具用車両の走行方向の位置を知らせるための赤外線光源から発する前記赤外線を検出する赤外線センサで構成されることを特徴とする請求項2記載の玩具用車両走行システム。
【請求項5】
前記タイヤの回転数の検出手段は、前記タイヤを駆動するモータの軸に赤外線を照射する赤外線光源と、前記モータの軸で反射した前記赤外線を検出する赤外線センサとで構成されることを特徴とする請求項2記載の玩具用車両走行システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−209535(P2007−209535A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32720(P2006−32720)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506046469)
【Fターム(参考)】