説明

珍味食品用粗粉砕機

【課題】 天かすに混合する「イカ天」を、サクサクとした食感が残るように、天かす粒度よりも若干大きい所定サイズに粗粉砕することのできる粗粉砕機を提供する
【解決手段】 回転円盤16の外周部に角柱状の歯17を複数本配設するとともに、回転円盤1枚に対してスペーサ18を複数枚を介装させて回転軸19に挿通されており、さらに、ハウジング11の外側壁11aには、粗粉砕物の粒度分布として粒度4mm以上のものが80%以上となるよう、スペーサ18部分に対向して被粉砕物を再割砕するための割砕ピン29…を多数並設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の天ぷら、イカの天ぷら、いわしの天ぷら、するめの天ぷらなど、水産物を主原料として、油揚げなどの加工を施して独特の風味を生じさせ、ビールなどのおつまみとして食用に供せられる珍味食品用の粗粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
珍味食品とは、水産物を主原料とし、特殊加工により独特の風味を生かし、貯蔵性を与 え、再加工を要することなく食用に供せられる食品として知られ(例えば、非特許文献1参照)、1.燻製品類、2.塩辛類、3.あえもの類、4.漬物類、5.焙焼品類、6.煮揚物類、7.裂刻品類、8.圧伸品類及び9.その他などに分類されている。このうち、6.煮揚物類とは、小魚、海老又はイカを油で揚げた物であり、特に、のしイカの天ぷらのことは「イカ天」と称し、子供のおやつやビールなど酒類のおつまみとして好まれている。
【0003】
特許文献2には、珍味食品としての「イカ天」の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、まず、イカ又はイカの小片を成形して縦約120mm×横約200mmで約1〜2mm厚を有するイカせんべいのシート材となし、次いで伸展機にかけて柔軟性を与え、切断機により長さ約120mm×幅約7mm幅の短冊状に切断して食品素材を形成しておく。そして、該食品素材に小麦粉、水、食塩、砂糖、ベーキングパウダーなどを混合した調味衣液を塗布し、さらに、パン粉を付着して約170℃に熱した油で油揚げ加工して食感のソフトなスティク状の「イカ天」が製造されるものである。
【0004】
このような珍味食品としての「イカ天」は、子供のおやつやビールなど酒類のおつまみとしてそのままスティック状で食用に供してもよいが、一方で、天ぷらかすとしての天かす(揚玉)の商品価値を上げるために利用される。すなわち、スーパーなどでは、天かす略1重量部に対して「イカ天」の粉砕物略0.05〜0.10重量部を撹拌・混合したものをスタンドパックなどに封入して、「イカ天入り天かす」などと称して販売されている。この「イカ天入り天かす」は、揚げたことによる風味と油のコク、サクサクとした独特の食感があるため、他の料理の添え物やアクセントになる食材として利用されている(例えば、うどんの添加物や、お好み焼き又はたこ焼き等の食材として。)。
【0005】
しかしながら、上記「イカ天入り天かす」にあっては、従来は一対のローラを備えた粉砕機や圧偏機によって「イカ天」を粉砕して天かすに混合していたため、全く割れていないものや、天かすの粒度よりも細かく砕けてしまって、食べたときのサクサクとした食感が乏しくなっているものがあった。そこで、サクサクとした食感が残る程度に、天かすの粒度よりも若干大きい所定サイズにまで確実に粗粉砕することのできる粉砕装置の出現が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】全国珍味商工業共同組合連合会のホームページ(http://www.chinmi.org/chinmi.htm)
【特許文献2】特開昭59−146566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点にかんがみ、珍味食品としての「イカ天入り天かす」の製造において、天かすに混合する「イカ天」を、サクサクとした食感が残るように、天かす粒度よりも若干大きい所定サイズに粗粉砕することのできる粗粉砕機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、油揚げ加工を施した珍味食品を粗粉砕する粗粉砕機であって、被粉砕物を割砕するために外周部に複数の歯が等間隔で配設された複数の回転円盤と、該複数の回転円盤に介装される複数のスペーサとを回転軸に交互に挿通して粗粉砕ロータを形成し、該粗粉砕ロータをハウジング内に回転可能に配設するとともに、該ハウジング上部に供給ホッパーを、同下部に排出ホッパーをそれぞれ配設し、さらに、前記粗粉砕ロータを回転駆動する回転駆動系を備えた珍味食品用粗粉砕機において、前記回転円盤は、その外周部に角柱状の歯が複数本配設されるとともに、前記スペーサは、前記回転円盤1枚に対して複数枚を介装させて前記回転軸に挿通されており、 さらに、前記ハウジングの外側壁には、粗粉砕物の粒度分布として粒度4mm以上のものが80%以上となるよう、前記スペーサ部分に対向して被粉砕物を再割砕するための割砕ピンを多数並設する、という技術的手段を講じた。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記角柱状の歯を、割砕の際に細粒が生じないよう、先端部に複数の面取加工を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記回転円盤の外周部に角柱状の歯を15〜20本配設するとともに、前記回転円盤1枚に対して2〜4枚のスペーサを介装させて前記回転軸に挿通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、前記回転円盤の外周部に、角柱状の歯が複数本配設されるとともに、前記スペーサは、前記回転円盤1枚に対して複数枚を介装させて前記回転軸に挿通されており、さらに、前記ハウジングの外側壁には、粗粉砕物の粒度分布として粒度4mm以上のものが80%以上となるよう、前記スペーサ部分に対向して被粉砕物を再割砕するための割砕ピンを多数並設したので、粒度4mm以上、好ましくは粒度10mm程度の粉砕物が80%以上となり、従来の一対のローラを備えた粉砕機と比較しても細粒や粉が生じる割合が極端に少なくなった。これにより、サクサクとした食感が残る程度の若干大きい所定サイズに確実に粗粉砕することができるようになった。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、割砕の際に細粒が生じないよう、先端部に複数の面取加工を施してあり、刃物の形状に近似しているので、細粒や粉を生じる割合を減少させることが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前記回転円盤の外周部に角柱状の歯を15〜20本配設するとともに、前記回転円盤1枚に対して2〜4枚のスペーサを介装させて前記回転軸に挿通するので、被粉砕物を良好に粗粉砕することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の珍味用粗粉砕機10を利用した「イカ天入り天かす」のパッケージ製造設備を概念的に示す図である。図示例の設備では、例えば、市販の略縦40mm×横40mm、厚さが2〜5mm程度の「イカ天」を本発明の珍味用粗粉砕機10によって例えば横20mm×縦20mm程度に粗粉砕し、次いで、光学的選別機によって黒く焦げた不良天かすを取り除いた後の良品天かすと混合し、さらに、計量・袋詰めを行って「イカ天入り天かす」のパッケージを製造する設備である。
【0015】
図1において、略縦40mm×横40mm、厚さが2〜5mm程度の「イカ天」をホッパー30に供給すると、コンベア31によって図中左上方に搬送されて、本発明の珍味用粗粉砕機10に搬入される。「イカ天」は粗粉砕機10によって例えば横10mm×縦10mm程度に粗粉砕されて下方から排出され、ホッパー32及びフィーダ33を介して混合機34に搬入される。
【0016】
一方、天ぷら屋などから回収した粒径が5〜10mm程度の天かす(揚玉)は、直接ホッパー36から光学式選別機35に供給し、任意のしきい値の設定により、色相が黄色からきつね色程度の香ばしい風味をもつ良品の天かすと、色相が茶色から黒色程度の焦げ臭を有する不良品の天かすとの選別が行われる。そして、天かすの不良品は不良品排出樋37から排出して回収し、家畜などの飼料に供する一方、天かすの良品は良品排出樋38から混合機34に搬入され、前記粗粉砕された「イカ天」と混合される。
【0017】
混合物は混合機34の排出ホッパー39から排出されて、エア搬送手段40等によって次工程の計量・袋詰工程に搬送される。計量・袋詰工程では、いったん、タンク41に一次貯留され、適時、金属検知器42を経て計量袋詰機43に供給して「イカ天入り天かす」のパッケージ44が製造される。
【0018】
このような「イカ天入り天かす」のパッケージを製造する設備に利用される、本発明の珍味用粗粉砕機10の概略図を図2乃至図6に示す。図2は本発明の珍味食品用粗粉砕機の全体を示す斜視図であり、図3は図2の矢視A方向から見たときの平面図であり、図4は図3のB−B線断面図であり、図5は回転円盤及びスペーサの正面図であり、図6は図2の供給ホッパー、排出ホッパー及びハウジングを取り外した状態の粗粉砕ロータの斜視図である。
【0019】
図2乃至図6に示す珍味用粗粉砕機10は、基本的に、横設した円筒状のハウジング11と、ハウジング11上部に配設した供給ホッパー12と、同下部に配設した排出ホッパー13と、ハウジング11内に設置される粗粉砕部14と、該粗粉砕部14の回転駆動系15とにより構成される。
【0020】
粗粉砕部14は、珍味食品を割砕するために、外周部に15〜20本の複数の歯17が配設された一枚の回転円盤16(図5(a)参照)及び該回転円盤16のスペーサ18(図5(b)参照)を回転軸19に交互に挿通した粗粉砕ロータ20と、ハウジング11とにより形成される。回転円盤16及びスペーサ18の中央には、前記回転軸19と係合するためのD字状の孔16a,18aが設けられる。本発明の実施形態においては、幅5mm×奥行5mm×高さ12mmの角柱状の歯17が、直径が100〜150mm、厚さが5〜10mmの回転円盤16外周部に配設され、好ましくは18本の歯17が20°ピッチの等間隔で配設されている。また、前記角柱状の歯17の先端部には複数箇所の面取C1.0加工を施すのがよい。このように形成した回転円盤16を9枚と、スペーサ18を20枚用意し、回転軸19にスペーサ18を2枚ずつ、回転円盤16を1枚ずつ交互に嵌挿し、ワッシャ21及び固定ボルト22で固定すると、図6に示すような粗粉砕ロータ20が形成される。なお、回転円盤16,16間に介装されるスペーサ18の枚数は2枚に限定されることはなく、2〜4枚の範囲で適宜調節することが可能である。
【0021】
粗粉砕ロータ20は、円筒状のハウジング11端面に設けた軸受箱23内の軸受け24及び25に回転軸19が軸支されることによりハウジング11内で回転自在に支持されている。このとき、粗粉砕ロータ20の歯17の先端とハウジング11の内壁面11bとの間隙は、1.5〜2.5mmに設定されている(図4の符号11bと符号17との間隙)。すなわち、この範囲より広く設定されていれば、被粉砕物である「イカ天」が割砕されることなく排出ホッパー13に排出されてしまい、この範囲より狭く設定されていれば、図7のような歯17によるハウジング11内への食い込みが行われ難くなる。また、軸受箱23に隣接してモータベース26が設けられており、該モータベース26にはギアモータ27が取り付けられ、該ギアモータ27のモータ軸27aと前記回転軸1とはカップリング28を介して連結されている。これにより、粗粉砕ロータ20は、典型的には約10rpmから100rpmで回転され、より好ましくは30〜60rpmで回転される。
【0022】
粗粉砕ロータ20は横設した円筒状のハウジング11内に回転可能に配設され、該ハウジング11の外側壁11aには、スペーサ18部分に対向して被粉砕物を再度割砕するための割砕ピン29…が多数並設されている。該割砕ピン29…は、回転円盤16外周部の歯17…と齟齬するように設けられ、且つ、外側壁11aに螺合されているため、適宜、挿入する長さの調節が可能となっている。なお、この割砕ピン29…は、粗粉砕ロータ20の回転方向側の外側壁11aに設けるのが好ましく、割砕作用のほか、挟まった粉砕物を掻き出すための作用をも併せ持つ。
【0023】
以上の構成の本発明の珍味用粗粉砕機10の作用を説明する。供給ホッパー12へ略縦40mm×横40mm、厚さが2〜5mm程度の「イカ天」を供給すると、粗粉砕ロータ20の回転によりに回転円盤16外周に配設した歯17…と円筒状のハウジング11の内壁11bとの間に「イカ天」が食い込み(図7参照)、これにより、「イカ天」の断面に亀裂1が生じて、横方向に割砕される。さらに粗粉砕ロータ20が回転すると、回転円盤16外周に配設した歯17…と前記割砕ピン29…との間に「イカ天」が食い込み、これにより、「イカ天」の断面に亀裂2が生じて、縦方向に割砕される(図8参照)。すなわち、当初の略縦40mm×横40mm、厚さが2〜5mm程度の「イカ天」が4分割以上に割砕される。これは、粒径が5〜10mm程度の天かす同等か若干大きめとなり、サクサクとした食感が残るサイズに粗粉砕することができるものである。
【0024】
珍味用粗粉砕機10の供給ホッパー12及び排出ホッパー13には粉砕作業を中断することができるよう適宜シャッター12a,13aを設けることが好ましい。また、供給ホッパー12内には、原料の「イカ天」にブリッジが生じないように撹拌手段を設けてもよい。
【実施例1】
【0025】
本発明の粗砕機を使用して当初の略縦40mm×横40mm、厚さが2〜5mm程度の「イカ天」を粉砕すると、略縦10mm以上×横10mm以上の粒度に割砕された「イカ天」が86%の割合で排出ホッパー13から排出され、粒度が2〜4mmの「イカ天」が10%の割合で排出ホッパー13から排出され、粒度が2mmより小さい「イカ天」は4%の割合で排出ホッパー13から排出されることが分かった。
【実施例2】
【0026】
互いに隣接する回転円盤16間に介装するスペーサ18を2個とし、粗粉砕ロータ20の回転数と、処理能力との関係を求めた(図9参照)。図9によれば、粗粉砕ロータ20の回転数が29rpmまでは処理能力が比例的に増加したが、30rpmを超えると処理能力に大きな差は生じなかった。粉砕の際の粒度分布は、回転数11rpmのときに粒度4mm以上に粗粉砕された「イカ天」が86.4%であったのに対し、回転数29rpmのときに粒度4mm以上に粗粉砕された「イカ天」は86.3%であり、製品品質に差はみられなかった(表1参照)。以上より処理能力を最大限に発揮するには、30〜60rpmの間に設定すればよいことが分かった。
【0027】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の珍味用粗粉砕機を利用したパッケージ製造設備の概念図である。
【図2】本発明の珍味食品用粗粉砕機の全体を示す斜視図である。
【図3】図2の矢視A方向から見たときの平面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】回転円盤及びスペーサの正面図である。
【図6】図2の供給ホッパー、排出ホッパー及びハウジングを取り外した状態の粗粉砕ロータの斜視図である。
【図7】歯とハウジングとの間に被粉砕物が食い込む状態の説明図である。
【図8】歯と割砕ピンとの間に被粉砕物が食い込む状態の説明図である。
【図9】粗粉砕ロータの回転数と処理能力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 珍味用粗粉砕機
11 ハウジング
12 供給ホッパー
13 排出ホッパー
14 粗粉砕部
15 回転駆動系
16 回転円盤
17 歯
18 スペーサ
19 回転軸
20 粗粉砕ロータ
21 ワッシャ
22 固定ボルト
23 軸受箱
24 軸受け
25 軸受け
26 モータベース
27 ギアモータ
28 カップリング
29 割砕ピン
30 ホッパー
31 コンベア
32 ホッパー
33 フィーダ
34 混合機
35 光学式選別機
36 ホッパー
37 不良品排出樋
38 良品排出樋
39 排出ホッパー
40 エア搬送手段
41 タンク
42 金属検知器
43 計量袋詰機
44 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油揚げ加工を施した珍味食品を粗粉砕する粗粉砕機であって、被粉砕物を割砕するために外周部に複数の歯が等間隔で配設された複数の回転円盤と、該複数の回転円盤に介装される複数のスペーサとを回転軸に交互に挿通して粗粉砕ロータを形成し、該粗粉砕ロータをハウジング内に回転可能に配設するとともに、該ハウジング上部に供給ホッパーを、同下部に排出ホッパーをそれぞれ配設し、さらに、前記粗粉砕ロータを回転駆動する回転駆動系を備えた珍味食品用粗粉砕機において、
前記回転円盤は、その外周部に角柱状の歯を複数本配設するとともに、前記回転円盤1枚に対して前記スペーサを複数枚を介装させて前記回転軸に挿通されており、
さらに、前記ハウジングの外側壁には、粗粉砕物の粒度分布として粒度4mm以上のものが80%以上となるよう、前記スペーサ部分に対向して被粉砕物を再割砕するための割砕ピンを多数並設したことを特徴とする珍味食品用粗粉砕機。
【請求項2】
前記角柱状の歯は、割砕の際に細粒が生じないよう、先端部に複数の面取加工を施してなる請求項1記載の珍味食品用粗粉砕機。
【請求項3】
前記回転円盤は、その外周部に角柱状の歯が15〜20本配設するとともに、前記回転円盤1枚に対して前記スペーサを2〜4枚を介装させて前記回転軸に挿通してなる請求項1又は2記載の珍味食品用粗粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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