説明

環境を光学的に走査し測定する装置

レーザスキャナ(10)として構成された、環境を光学的に走査し測定する装置であって、回転鏡(16)によって発光光線(18)を放出する発光素子(17)と、回転鏡(16)および光軸(A)を有する受光レンズ(30)を通過した後にレーザスキャナ(10)の環境内の物体(O)から反射されるかあるいはその他の形で散乱した受光光線(20)を受け取る受光素子(21)と、レーザスキャナ(10)の環境のカラー画像を撮影するカラーカメラ(23)と、多数の測定点(X)について、物体(O)までの距離を求め、この距離をカラー画像と連係させる制御評価ユニット(22)とを含む装置において、カラーカメラ(23)は、受光レンズ(30)の光軸(A)上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的な請求項1の特徴を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばドイツ特許第202006005643U1号で知られているような、レーザスキャナとして構成された装置によって、レーザスキャナの環境を光学的に走査し測定することができる。回転し、金属製ロータの磨き板として構成される回転鏡は、発光光線と受光光線の両方を偏向させる。発光素子のコリメータは、受光レンズの中央に位置する。受光レンズは、光軸上の受光レンズの後方に配置された受光素子上に受光光線を再生する。さらに情報を得るために、RGB信号を取り込むラインスキャンカメラがレーザスキャナ上に取り付けられ、それによって、走査の測定点を色情報で補完することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第202006005643U1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導入部で述べた種類の装置の代替装置を作製する目的に基づくものである。この目的は、本発明に従って、請求項1の特徴を有する方法によって実現される。従属クレームは有利な構成に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
受光レンズの光軸上の、回転鏡に対して受光レンズと同じ側にカラーカメラを配置すると、様々な視差がほぼ完全に回避されるという利点がある。これは、受光素子とカラーカメラが、同じ画角から回転鏡に対する同じ側で環境を取り込むからである。さらに、同じメカニズムを回転鏡に使用することができる。回転鏡の使用される側も同じである。回転鏡によって反射された受光光線は、受光レンズの光軸に平行に送られ、受光レンズに連続的に入射する。受光レンズは、シャドウイング効果が変化しないように受光素子の代わりをすることが好ましい。発光光線を再び送れるようにするには、発光光線に対しては反射性を示し、カラーカメラに対しては透過的である発光鏡をカラーカメラの前方に設けることが好ましい。
【0006】
受光レンズによって屈折された受光光線を受光レンズの方へ反射する後部鏡が光軸上の受光レンズの後方に設けられているため、利用可能な空間をよりうまく利用することができる。「折れ曲がり光学系」を完成するには、受光光線を後部鏡の方へ反射する中央鏡を受光レンズと後部鏡との間に設けることが好ましい。各鏡を適切な形態にすると合焦の助けとなり、しかも非折り曲がり光学系に対する焦点距離を長くすることができる。中央鏡は、近接場からの強度を遠方場と比べて低下させることによって、追加的なマスクと同様に近接場補正に使用することが可能である。受光素子を(光軸によって画定される円筒座標系において)受光レンズの光軸の半径方向に配置することによって空間がさらに節約される。
【0007】
ロータを様々な部材からハイブリッド構造、すなわち多部材構造として構成することによって、回転鏡が傾斜しているにもかかわらず平衡を維持する短い構成が可能になる。金属製ホルダと、被覆ガラスの回転鏡と、プラスチックハウジングを組み合わせるのが好ましいが、他の組み合わせも可能である。質量の大部分を占めるホルダは平衡を確保し、一方、ハウジングは、誤って接触が生じないようにする。ロータ構成部材同士を接着することによって、動的挙動を損なわずに様々な温度膨張係数同士を釣り合わせることができる。
【0008】
本発明について、図面に示された例示的な実施形態に基づいて以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】レーザスキャナの部分断面図である。
【図2】レーザスキャナの概略図である。
【図3】ロータホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
レーザスキャナ10は、レーザスキャナ10の環境を光学的に走査し測定する装置として設けられている。レーザスキャナ10は、測定ヘッド12とベース14とを有する。測定ヘッド12は、垂直軸の周りで回転することができるユニットとしてベース14上に取り付けられている。測定ヘッド12は、水平軸の周りを回転することができる回転鏡16を有する。2つの回転軸の交差点は、レーザスキャナ10の中央C10と呼ばれる。
【0011】
測定ヘッド12は、発光光線18を放出する発光素子17をさらに備える。発光光線18は、原則的には、約340nmから1600nmの範囲の波長であり、たとえば、790nm、905nm、または400nmよりも短い波長を有するレーザ光線であることが好ましいが、たとえば、より長い波長を有する他の電磁波を使用してもよい。発光光線18は、たとえば正弦波または矩形波形変調信号によって振幅変調される。発光光線18は、発光素子17によって回転鏡16上に放出され、そこで偏向し環境に放出される。物体Oによって環境内で反射されるかあるいはその他の形で散乱した受光光線20は、再び回転鏡16によって取り込まれ、偏向し、受光素子21上に送られる。発光光線18および受光光線20の方向は、各回転装置が1つのエンコーダによって位置合わせされる対応する回転装置の位置に応じた回転鏡16および測定ヘッド12の角位置によって決まる。
【0012】
制御評価ユニット22は、発光素子17および測定ヘッド12内の受光素子21とのデータ接続を有し、制御評価ユニット22の一部は、測定ヘッド12の外側に配置されてもよく、たとえば、ベース14に接続されたコンピュータであってよい。制御評価ユニット22は、多数の測定点Xについて、発光光線18および受光光線20の伝搬時間からレーザスキャナ10と物体O(の所の照明される点)との間の距離dを求める。このために、2条の光線、光線18と光線20との位相ずれが求められ評価される。
【0013】
走査は、鏡16が(高速に)回転することによって円に沿って行われる。測定ヘッド12がベース14に対して(低速)回転することによって、空間全体が円によって段階的に走査される。このような測定の測定点Xの実体を走査と呼ぶ。このような走査では、レーザスキャナ10の中心C10が局所静止基準系の原点を画定する。ベース14は、この局所静止基準系内に位置している。
【0014】
各測定点Xは、レーザスキャナ10の中心C10までの距離dだけでなく、制御評価ユニット22によって求められる輝度情報も有する。輝度値は、たとえば、測定点Xによる測定期間にわたって受光素子21の信号をバンドパスフィルタし増幅した信号を積分することによって求められるグレイトーン値である。ある種の用途では、グレイトーン値だけでなく色情報も有することが望ましい。したがって、レーザスキャナ10は、制御評価ユニット22に接続されたカラーカメラ23も備える。カラーカメラ23は、たとえばCCDカメラまたはCMOSカメラとして構成され、実際の空間における二次元画像を表す色空間における三次元信号、好ましくはRGB信号を生成する。制御評価ユニット22は、レーザスキャナ10の走査(実際の空間では三次元)をカラーカメラ23のカラー画像(実際の空間では二次元)と連係させる。このようなプロセスは「マッピング」と呼ばれる。連係は、最終結果として、走査の各測定点Xに(RGB表現で)色付けし、すなわち走査をカラー走査にするために得られたカラー画像のうちの任意の画像について画像ごとに行われる。
【0015】
以下に、測定ヘッド12について詳しく説明する。
【0016】
回転鏡16によって反射された受光光線20は、本発明ではほぼ半球形状を有する好ましくは平凸の球形受光レンズ30に入射する。受光レンズ30の光軸Aはレーザスキャナの中心C10の方に向けられている。屈折率の高い受光レンズ30の凸側は回転鏡16の方に向けられている。カラーカメラ23は、回転鏡16に対して受光レンズ30と同じ側の、受光レンズ30の光軸上に配置され、本発明では、受光レンズ30の、回転鏡16に最も近い点上に配置されている。カラーカメラ23は、受光レンズ30の(処理されていない)表面上に固定し、たとえばこの表面上に接着するか、あるいは受光レンズ30の適切なくぼみに配置することができる。
【0017】
カラーカメラ23の前方、すなわち、回転鏡16のより近くに、二色性であり、本発明では可視光を透過し、(赤色)レーザ光を反射する発光鏡32が配置されている。したがって、発光鏡32は、カラーカメラ23に対して透過的であり、すなわち回転鏡16上に鮮明な像を形成する。通常、発光鏡32は、受光レンズ30の光軸に対して傾斜しており、したがって、発光素子17は受光レンズ30の横に配置することができる。発光素子17は、レーザダイオードとコリメータとを備え、発光光線18を発光鏡32上に放出し、発光光線18はそこから回転鏡16上に投影される。回転鏡16は、カラー画像を得る場合は低速で段階的に回転し、走査を行う場合は高速に(100cps)連続的に回転する。回転鏡16のメカニズムは変化しない。
【0018】
カラーカメラ23が受光レンズ30の光軸A上に配置されているため、走査とカラー画像との視差はほとんど生じない。周知のレーザスキャナでは、発光素子17(およびその接続部)が、カラーカメラ23(およびその接続部、たとえばフレキシブルプリント基板)の代わりに配置され、カラーカメラ23(および発光鏡32)による受光レンズ30のシャドウイング効果の変化は、生じないかあるいはわずかにのみ生じる。
【0019】
一方では、遠方の測定点Xも遠い焦点距離に合わせ、他方では必要な空間を少なくするために、レーザスキャナ10は「折れ曲がり光学系」を有する。このために、光軸A上の受光レンズ30の後方に、光軸Aと同軸に向けられたマスク42が配置される。マスク42は、半径方向内側(光軸Aと呼ばれる)に、遠方の物体Oによって反射された受光光線20を妨害されないように送るための(大きな)自由領域を有し、一方、半径方向外側に、近傍の物体Oによって反射された受光光線20の強度を低下させるための(より小さな)陰影領域を有し、それによって、同等の強度が得られるようにする。
【0020】
後部鏡43は、光軸A上のマスク42の後方に配置されており、平面状であり、光軸Aに垂直である。この後部鏡43は、受光レンズ30によって屈折されて中央鏡44に入射した受光光線20を反射する。中央鏡44は、カラーカメラ23(および発光鏡32)の陰になる光軸A上のマスク42の中央に配置されている。中央鏡44は、負レンズとして働き、すなわち焦点距離を長くするとともに、近接場補正レンズとして働き、すなわち、近傍の物体Oによって反射された受光光線20の焦点をずらす非球面鏡である。また、中央鏡44上に配置されたマスク42を通過する受光光線20のそのような部分によってのみ反射が生じる。中央鏡44は、後部鏡43の後部の中央オリフィスを通過した受光光線20を反射する。
【0021】
受光素子21は、入射絞りと、フィルタを含むコリメータと、集光レンズと、検出器とを備え、後部鏡43の後部に配置されてきる。空間を節約するために、受光素子21を光軸Aに対して半径方向に配置できるように受光光線20を90°偏向させる受光鏡45が設けられることが好ましい。この折れ曲がり光学系では、焦点距離を周知のレーザスキャナに対して約2倍にすることができる。
【0022】
二次元構造としての回転鏡16は、対応する回転駆動装置によって三次元構造として旋回させることができ、かつ割り当てられたエンコーダによって角位置が測定されるロータ61の部分である。ロータ61が短い構成を有するため回転鏡16に対しても空間を節約し、ロータ61の平衡を維持するために、ロータ61は、ホルダ63と、ホルダ63の所に取り付けられた回転鏡16と、プラスチック材料で作られ、また回転鏡16を保持するハウジング65とを備えるハイブリッド構造として構成される。
【0023】
金属製ホルダ63は、45°表面と様々なくぼみとを含む円筒形の基本形状を有する。各々がロータ61の平衡を確保する働きをする材料部分、たとえば、ブレード、ショルダ、および突起は、これらのくぼみの間に残る。中央ボアには、割り当てられた回転駆動装置のモータ軸を取り付ける働きをする。回転鏡16は、ガラスで作られ、被覆され、関連する波長範囲内の光を反射するガラスで作られている。回転鏡16は、接着剤によってホルダ63の45°表面に固定されており、このために、ホルダ63に特殊取り付け面63bが設けられることが好ましい。
【0024】
プラスチック材料で作られたハウジング65は、45°よりも小さい角度に切断されており、少なくともホルダ63を囲む中空の円筒の形状を有する。ハウジング65は、回転鏡16に接着するかあるいは他の方法で固定することができる。ハウジング65は、必要に応じてゴムシールなどを介在させることによって、周囲に好ましくはフォームロッキング状に回転鏡16を把持することができる。ハウジング65は、ホルダ63に接着するかまたは他の方法で直接固定するか、あるいはロータ61を取り付けることにより、ハウジング65を好ましくは端板67によってホルダ63に連結し、たとえばホルダ63にねじ留めすることができる。使用される接着剤は、一方では、使用される部材の様々な温度膨張係数を相殺しなければならず、他方では、動的な挙動が影響を受けないようにしなければならず、たとえば、速度に応じた不平衡を回避するために接着剤の弾性が高くなり過ぎないようにしなければならない。
【0025】
ロータ61は光軸Aの周りを回転する。回転鏡16は、その1つの面(すなわち、45°表面)でホルダ63を覆っている。ハウジング65はホルダ63の半径方向外側(光軸Aに対して)を覆っている。したがって、怪我を防止するためにホルダ63の鋭い縁部が覆われている。ホルダ63は、ロータ61の平衡を確保する。ホルダ63は、金属の代わりに、慣性モーメントの大部分を担う他の重量材料で作ることができる。ハウジング65は、プラスチックの代わりに、慣性モーメントに影響をほとんど与えない他の軽量材料で作ることができる。回転鏡16は、被覆ガラスに代わる他の構成によって反射性(および透過性)を有してよい。回転鏡16、ホルダ63、およびハウジング65は、ハイブリッド構造として構成され、互いに固定された別個に形成された部品である。
【符号の説明】
【0026】
10 レーザスキャナ、12 測定ヘッド、14 ベース、16 回転鏡、17 発光素子、18 発光光線、20 受光光線、21 受光素子、22 制御評価ユニット、23 カラーカメラ、30 受光レンズ、32 発光鏡、42 マスク、43 後部鏡、44 中央鏡、45 受光鏡、61 ロータ、63 ホルダ、63b 取り付け面、65 ハウジング、67 端板、A (受光レンズの)光軸、C10 レーザスキャナの中心、d 距離、O 物体、X 測定点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナ(10)として構成された、環境を光学的に走査し測定する装置であって、回転鏡(16)によって発光光線(18)を放出する発光素子(17)と、回転鏡(16)および光軸(A)を有する受光レンズ(30)を通過した後に前記レーザスキャナ(10)の前記環境内の物体(O)から反射されるかあるいはその他の形で散乱した受光光線(20)を受け取る受光素子(21)と、前記レーザスキャナ(10)の前記環境のカラー画像を撮影するカラーカメラ(23)と、多数の測定点(X)について、前記物体(O)までの距離を求め、前記距離をカラー画像と連係させる制御評価ユニット(22)とを備える装置において、前記カラーカメラ(23)は、前記受光レンズ(30)の前記光軸(A)上に配置されることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記カラーカメラ(23)は、前記受光レンズ(30)の、前記回転鏡(16)に最も近い点に配置されることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記カラーカメラ(23)は、前記受光レンズ(30)の表面に固定されるかあるいは前記受光レンズ(30)のくぼみ内に配置されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の装置であって、前記受光レンズ(30)は、凸側が前記回転鏡(16)の方へ向けられた平凸球面レンズとして構成されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の装置であって、発光鏡(32)が前記カラーカメラ(23)と前記回転鏡(16)との間に配置され、前記発光鏡は、前記光軸(A)に対して傾斜していることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記発光鏡(32)は、前記発光光線(18)に対しては反射性を示し、前記カラーカメラ(23)に対しては透過的であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置であって、前記発光素子(17)は、前記発光光線(18)を前記発光鏡(32)上に放出することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の装置であって、前記発光素子(17)は前記受光レンズ(30)の横に配置されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の装置であって、前記回転鏡(16)は、前記受光光線(20)を取り込む場合には高速に連続的に回転し、前記カラー画像を撮影する場合には低速に段階的に回転することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の装置であって、垂直軸の周りを回転し、前記発光素子(17)、前記カラーカメラ(23)を有する前記受光レンズ(30)、前記受光素子(21)、および前記回転鏡(16)を支持する測定ヘッド(12)が設けられ、前記回転鏡(16)は、前記水平に配置された光軸(A)の周りを回転することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−508694(P2013−508694A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534589(P2012−534589)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006867
【国際公開番号】WO2011/060899
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(598064510)ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド (60)
【Fターム(参考)】