説明

甘藷つる収穫機

【課題】甘藷つるを細断カッターに確実に押し込める引き上げ搬送コンベア、中継コンベアを提供する。
【解決手段】フレーム2の前方に左右のスクレーパー10があり、その後方に左右のサイドカッター5があり、当該サイドカッター5の後方に掻き上げ装置4があり、当該掻き上げ装置4の後方に引き上げ搬送コンベア3があり、さらに当該引き上げ搬送コンベア3の後方に中継コンベア7があり、上記掻き上げ装置4、引き上げ搬送コンベア3、上記中継コンベア7、細断カッター8が前後方向に一直線に配置されており、甘藷つるを掻き上げ装置4でかき集め、引き上げ搬送コンベア3の先端で掴み、根切りカッター6で根切りし、引き上げ搬送コンベア3で引き上げ、引き上げ搬送コンベア3の上端で解放された甘藷つるを上記中継コンベアで引き取って細断カッター8に押し込んで細断カッターに細断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、甘藷(さつまいも)の茎葉(以下これを「甘藷つる」という)を家畜用飼料として有効に利用するために、これを収穫するための作業機(甘藷つる収穫機)に関するものであり、甘藷つるの収穫作業を容易に、かつ能率的に行うことができるものである。
【背景技術】
【0002】
甘藷つるは地面を這って圃場一面に広がっているので、藷掘り作業に先立って、甘藷つるを刈り取る作業(つる払い作業)が行われる。以前はこのつる払い作業は人手で行われていたが、最近は、甘藷栽培農家の栽培面積が拡大されていることや、農家の人手が不足しまた高齢化している等の事情から、このつる払い作業についても自走式のつる払い機で行われるようになっている。
公知のつる払い機には、甘藷つるの根元を切断し、甘藷つるを畝からまくり上げる方式のものや、多数の回転刃(いわゆる「フレールモア」)で切り刻んで分散させる方式のものがあり(後者については、例えば特開2008−193991号公報)、これらによるときは甘藷つるは圃場に残されて肥料にされる。
【0003】
ところで、近年、家畜用の飼料が高価になっていることや、資源の有効利用が求められる等の事情から、甘藷つるを収穫し発酵させて富栄養化(いわゆるサイレージ発酵)を図り、これを家畜の飼料とすることが推進されつつある。
甘藷つるを収穫して発酵させて富栄養化させるには、甘藷つるを収集し細断しなければならないので、甘藷つるを刈り取り細断するという作業を一貫して行う甘藷つる収穫機の実現が求められる。そして、このような甘藷つる収穫機を実現して普及させるには、小型、簡便で作業能率が高く、回収率が高いものでなければならない。甘藷つる収穫作業に多くの労力とコストがかかるのでは畜産農家にとって利益が少なく、魅力に乏しいからである。
【0004】
〔甘藷つる収穫機を開発する上の基本的な問題点〕
ところで、甘藷つる収穫機の作業速度は従来のつる払い機による場合と同程度以上でなければ農家の要求に適うものではなく、また、取り残しが多いと藷掘り作業の支障になるので、取り残しが少ないものでなければならない。
また、甘藷つるは絡み合って圃場一面に広がっており、しかも柔らかくて弱く、強く引っ張られるとちぎれてしまうので、これを自走式の全自動作業機で能率良く収集することは容易でない。
【0005】
また、収集した甘藷つるは細断カッターで細断する必要があるので、甘藷つるを根切りし、掻き集めて細断カッターまで搬送しなければならない。しかし、甘藷つるは柔らかくてちぎれやすくしかも嵩張るのでコンベアによって搬送するときの搬送性が悪く、このために収集から搬送、細断までを一貫した連続作業として甘藷つる収穫機で円滑に行うことは容易でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実用性の高い甘藷つる収穫機を実現するには、以上の種々の問題を解消する必要があり、そのためには次の課題を技術的に解決することが必要である。
(1)互いに絡み合って圃場一面に広がっている甘藷つるを、畝の中央に確実に寄せ集め、これを搬送コンベアに引き込ませるように、甘藷つるを掻き寄せる装置を工夫する必要がある。
【0007】
(2)甘藷つるは長く伸びており、柔らかくて含水量が多く、つぶれやすくてちぎれやすいので、これを搬送コンベアで掴んで引き上げて細断カッターまで搬送するのは容易でない。したがって、根切りされた甘藷つるを、その根元を掴んで引き上げることで引き寄せて収集し、細断カッターまでスムーズにかつ確実に引き上げることができる引き上げ搬送コンベアを工夫する必要がある。
【0008】
(3)また、甘藷つるは柔らかくて含水量が多いので、引き上げ搬送コンベアで引き上げられた甘藷つるは腰が弱く、しかも滑りやすい。このために、引き上げ搬送コンベアから解放されたところで停滞し、細断カッターの送りローラーの手前で詰まってしまうので、これを確実に細断カッターの送りローラーに送り込めるようにするための特別の工夫が必要である。
【0009】
(4)また、収穫された甘藷つるに砂などの異物が混入していると、それによって飼料の品質が低下するので、これらが混入することを防止する必要があるが、甘藷つるを細断カッターで細断してチップ状にして後にそれから異物を分離させることは容易でない。したがって、細断する前の段階で甘藷つるから異物が除去されるようにしなければならないが、引き上げ搬送コンベアによる搬送中に異物が除去されるようにすることはほとんどできない。
以上のことから、引き上げ搬送コンベアの後方にあって、細断カッターの前にある上記中継コンベアにおいて砂等の異物(主に砂)が効果的に除去されるように、当該中継コンベアを工夫することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の甘藷つる収穫機は上記課題を全て解決し、その性能を向上させるために、多くの工夫を重ねたものである。
この甘藷つる収穫機は自走体前方の刈り取り装置で甘藷つるを根切りし、収集し、収穫機上に搬送し、裁断カッターで細断して収穫するものである。そしてその要点は、甘藷つるをサイドカッターで切断して畝毎に切り離し、これを畝の中央に掻き集め、引き上げ搬送コンベアで引き込んで斜め上方に搬送する刈り取り装置を備えていることであり、さらに、畝の中央に掻き寄せられた甘藷つるが引き上げ搬送コンベアの先端に送り込まれて捕捉され、当該引き上げ搬送コンベアに捕捉された直後に根切りされ、引き上げ搬送コンベアによって収穫機上に引き上げられ、さらに、中継コンベアによって搬送されることであり、そして、これらによる搬送は前方から後方にほぼ直線的に行われ、この搬送路の後端に配置された細断カッターにスムーズに送り込まれるように構成されていることである。
【0011】
そして解決手段は、具体的には次のように構成されている。
すなわち、車体フレーム1の前方に刈り取り装置のフレーム2が上下方向に揺動自在に支持されており、当該フレーム2にコンベアフレーム30が上下方向に揺動自在に支持されている。また、上記フレーム2の前方に左右のスクレーパー10があり、その後方に左右のサイドカッター5があり、当該サイドカッター5の後方(図面上はほぼ横)に掻き上げ装置4がある。
上記コンベアフレーム30の先端に掻き上げ装置4があり、当該掻き上げ装置4の後方に引き上げ搬送コンベア3があり、引き上げ搬送コンベア3の後方に中継コンベア7がある。
そして上記サイドカッター5、上記掻き上げ装置4、引き上げ搬送コンベア3、上記中継コンベア7が前後方向に一直線状に配置されている。なお、ここでいう「一直線状」は基本的には、途中に屈曲点がなく一直線状ないしはほぼ一直線状であることを意味し、必ずしも文字通り一直線であることを意味するものではない。
【0012】
そして、甘藷つるを掻き上げて畝の中央に掻き寄せる掻き上げ装置4、甘藷つるの根元を引き上げ搬送コンベア3の先端で掴んだ直ぐ後に切断する根切りカッター6、甘藷つるを引っ張って引き寄せながら斜め上方に搬送する引き上げ搬送コンベア3、引き上げ搬送コンベア3から解放された甘藷つるを引き取り、細断カッター8に押し込む中継コンベア7、甘藷つるをチップ状に細断する細断カッター8が順に後方に配置されている。これにより、刈り取り装置がコンパクトに纏められて小型で簡潔に構成され、甘藷つるがスムーズに搬送されて細断カッター8に確実に送り込まれる。
【0013】
スクレーパー10、サイドカッター5が掻き上げ装置4の前方(図面上はほぼ横)にあり、まず、甘藷つるがすくい上げられ、次いでサイドカッター5によって畝の両側で切断され、畝毎に切り離されるので、甘藷つるは畝の中央に容易に掻き寄せられ、引き上げ搬送コンベア3の先端に向けて案内される。
また、引き上げ搬送コンベア3の搬送ベルトコンベア31の先端近傍に円盤状の根切りカッター6が配置されていて、搬送ベルトコンベア31の先端に甘藷つるの根元が捕捉された直後に根切りされるように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
甘藷つる収穫機が畝を跨いで前進すると、スクレーパー10の先端が畝底に沿って前進し、甘藷つるをすくい上げ、サイドカッター5の高さに押し上げる。そして、甘藷つるはサイドカッター5に達したときに切断され、これによって他の畝の甘藷つるから切り離される。
【0015】
掻き上げ装置4が甘藷つるを畝の中央に向かって掻き寄せるときは、その前に、甘藷つるはサイドカッター5で切断されて畝毎に切り離されているので、各畝の甘藷つるは容易にその畝の中央に掻き寄せられる。そして、畝の中央にかき寄せられた甘藷つるは、引き上げ搬送コンベア3の前進によって、その先端に捕捉されて引き込まれる。なお、引き上げ搬送コンベア3の先端で甘藷つるの根元が捕捉されて斜め上方に引き上げられるとき、捕捉された直後に根切りカッター6で根元から切断される。したがって、甘藷つるに引っ張られて甘藷が引き抜かれることはなく、したがって、藷の引き抜きに伴って砂などの異物が甘藷つるに混入することはない。
【0016】
そして、甘藷つるはその下部を搬送ベルトコンベア31によって斜め上方に引き上げられるとき、引き寄せられつつ上方の搬送チェンコンベア32に引き込まれる。搬送チェンコンベア32に引き込まれると、その甘藷つるに搬送チェンコンベア32の角33が横から突っ込まれ、これで引っかけられて引き上げられる。
以上のように、甘藷つるY(図6参照)はその下部を搬送ベルトコンベア31で把持されて引き上げられ、上部を搬送チェンコンベア32で軽く捕捉され、角33に引っかけられて同速度で引き上げられる。したがって、甘藷つるYの上部は下部と一緒に引き上げられ、引き上げ搬送コンベア3の上端まで確実に引き上げられる。
【0017】
甘藷つるは引き上げ搬送コンベア3の上端まで搬送されて当該コンベアから解放され、そして、解放されるとそこで停滞するが、そのとき中継コンベア7に引き取られ、中継コンベア7の中継筒70の出口まで引きずられて搬送され、出口から細断カッター8に向けて押し出される。すなわち、引き上げ搬送コンベア3の上端で解放された甘藷つるは、中継コンベア7の中継搬送コンベア(具体的にはチェンコンベア72a,72b)と中継押し込みコンベア(具体的にはチェンコンベア74a,74b)によって上下から捕捉され、これらの角72T,74Tで上側及び下側から引っかけられて引っ張られ、中継筒70内で上下左右の4つの壁面によって内側に押さえられながら出口まで引きずられ、そして出口から押し出され、これによって、積極的に送りローラー81に押し込まれることになる。
【0018】
なお、細断カッター8の送りローラー81による送り速度は中継コンベア7の搬送速度よりも速く(例えば約3倍)、甘藷つるは一瞬のうちに送りローラーに引き込まれるので、甘藷つるが中継コンベア7からひっきりなしに押し出されたとしても、甘藷つるが細断カッター8の送りローラー81の直前で停滞するようなことはない。
【0019】
そして、甘藷つるは圃場一面に広がり複雑に絡み合っており、この甘藷つるは柔軟で腰がなく、水分が多くてつぶれやすく、ちぎれやすいがそれにも拘わらず、確実に畝の中央に掻き寄せられ、そして引き上げ搬送コンベアによって引き寄せられつつ引き上げられ、中継コンベアによって確実に細断カッターに送り込まれて、迅速に細断カッターで細断される。細断された甘藷つる(チップ状の甘藷つる)が回転羽根82で跳ね上げられてホッパー9に搬送(投擲搬送)される。
【0020】
また、上記のとおり、掻き上げ装置4で掻き寄せられた甘藷つるは引き上げ搬送コンベア3の先端に捕捉された直後に根切りカッター6で根元から切断されるので、甘藷が地面から引き抜かれることはなく、したがって、甘藷が引き抜かれることに伴って砂などの異物が甘藷つるに巻き込まれることはない。そして、もしも異物が甘藷つるに混じって引き上げ搬送コンベア3でその上端まで搬送されたとしても、引き上げ搬送コンベア3から解放されたときに甘藷つるから分離され、中継筒70の傾斜した底部71aに落下し、滑落して排出される。
したがって、異物が甘藷つるに混じって細断カッターまで持ち込まれることはなく、細断された甘藷つるに異物が混入することは確実に防止される。
【0021】
〔構成要素の詳細〕
以上の解決手段の各構成要素の詳細は以下のとおりである。
(1)スクレーパー
スクレーパー10はフレーム2の先端よりも前方にあり、前下がりに傾斜したすくい上げ部とその後方のアーム部を有している。作業機の前進によって当該スクレーパーが前進し、畝の両側下端において甘藷つるを下からすくい上げ、押し上げてその後方のサイドカッターへ案内して切断させる。
【0022】
(2)サイドカッター
サイドカッター5は、帯状鋸刃による縦方向カッターであって、帯状の固定刃と上下に往復動する可動刃とによるものであり、スクレーパーで押し上げられた甘藷つるを切断し、これによって甘藷つるを畝毎に切り離してその掻き寄せを容易にするものである。
【0023】
(3)掻き上げ装置
掻き上げ装置4は掻き上げベルト41A,41Bによるものであり、これらはゴムベルトである。そしてこのベルトには比較的堅くて長いひげ41aが一定間隔で備えられており、このひげ41aで畝の側面を撫でるようにして甘藷つるを掻き上げ、畝の中央に掻き寄せて、引き上げ搬送コンベア3の先端に送り込むものである。
【0024】
(4)引き上げ搬送コンベア
引き上げ搬送コンベア3は、前方から斜め上方に傾斜したコンベアフレーム30と、下側の搬送ベルトコンベア31及び上側の搬送チェンコンベア32とによるものである。そして、上側の搬送ベルトコンベア31の左右の搬送平ベルト31A,31Bは対称に配置され、バネ35(図4)等で互いに圧接されており、甘藷つるの根元(下部)を掴んで斜めに引き上げるものである。
【0025】
搬送チェンコンベア32は左右の搬送チェン32A,32Bによるものであり、左右の搬送チェン32A,32Bは角33を有しており、この角33,33の先端間に少し隙間が介在する程度に、搬送チェン32A,32Bが離間して配置されている。そして、引き上げ搬送コンベア3に引き寄せられた甘藷つるが、左右の搬送チェン32A,32Bで軽く挟まれ、その角33,33で引っかけられて引っ張られ、途中で停滞することなしにスムーズにかつ確実に搬送される。なお上記角33は、チェンコンベアの対向する面(搬送面)の突起であり、甘藷つるY(図6参照)の中に突っ込まれて、これを引っかけて引き上げる作用を奏する。
【0026】
引き上げ搬送コンベア3は途中に左右方向への屈曲点はなく、したがって、前後方向においては一直線状ないしはほぼ一直線状である。途中で左右に屈曲させると、この屈曲部での搬送抵抗が大きくなり、またこの部分で搬送速度が遅延する傾向があるので、これが原因で詰まってしまうおそれがある。
他方、その側面形状については直線状である方が構造が単純であるから望ましいが、先端から後端まで一直線状である必要は必ずしもない。下部、中部、後部において求められる傾斜角度が異なる場合があり、そのようにする方が当該コンベアの構造設計上、あるいは、その配置の都合等から得策である場合もある。例えば、前部の傾斜角度を中部よりも小さくし、後部の傾斜角度を中部よりも小さくする等である。これらの場合も上下方向への屈曲点の屈曲が緩やかであることが望ましい。
【0027】
なお、高強度高耐久性のベルトコンベアを上記搬送チェンコンベア32に代えて用いることもできる。この場合は、ベルトの搬送面に上記角33と同様の角を突設する必要があり、その角を金属で被覆するなどしてその摩耗、損傷から防護する必要がある。また、引き上げ搬送コンベア3の上側の搬送チェンコンベア32の搬送速度は下側搬送ベルトコンベア31の搬送速度とほぼ同速度であり、また、これらの水平方向速度は、作業機(甘藷つる収穫機)の前進速度のほぼ1.5〜2.0倍が適当である。引き上げ搬送コンベア3の搬送速度が速すぎると空廻りが多くなり、逆に遅すぎると甘藷つるが停滞する可能性が高いので、結果的に搬送性能が低下する。
【0028】
(5)中継コンベア
中継コンベア7は引き上げ搬送コンベア3と細断カッター8との間に介在しているもので、中継筒70と下側の中継搬送コンベア及び上側の中継押し込みコンベアによるものである。そして、中継筒70は四角形で前開きのラッパ形状をした筒状体であり、その底部71aの下側に左右一対の中継搬送コンベアがあり、また、天井部71bの上側に左右一対の中継押し込みコンベアがある。中継筒70の底部71a、天井部71bはそれぞれ上方、下方に傾斜している。
上記の中継搬送コンベア、中継押し込みコンベアには角72T,74Tが一定間隔でそれぞれ設けられており、これらの角72T、角74Tが中継筒の内側に突出している。
なお、上記の「中継搬送コンベア」、「中継押し込みコンベア」は、チェンコンベア又はベルトコンベアによるものである。耐久性の観点からチェンコンベアが好ましいので、図示の実施例ではチェンコンベアを採用している。誤解をさけるために、発明の解決手段の説明、作用の説明では、図示の実施例のチェンコンベアに付された符号72,74を付記していない。
【0029】
上記の中継搬送コンベア、中継押し込みコンベアは、甘藷つるが引き上げ搬送コンベア3の上端で解放されたとき、同時にこれを引き取り、その角72T,74Tで引っかけて搬送し、細断カッター8に押し込むものである。また、中継筒70の上下左右の壁面は傾斜しており、その入り口が拡開され、出口が狭められている。このことにより、甘藷つるが上下の中継搬送コンベア、中継押し込みコンベアで引っ張られ、上下左右の壁面で中央に押されながら搬送され、中継筒70の出口から押し出され、細断カッター8の送りローラー81へ向けて押し出される。
【0030】
(6)細断カッター
細断カッター8は送りローラー81と回転羽根82によるものであり、甘藷つるを細断し、これをホッパー9へ搬送するものである。
中継コンベア7によって送り込まれた甘藷つるを送りローラー81で迅速に引き込み、回転羽根82の切断刃で切断し、細断片を回転羽根で跳ね上げ、空気流でこれを搬送する(打撃搬送)。
この細断カッター8は要するに中継コンベア7から供給される長い甘藷つるを所定の長さに細断することができるものであるが、種々の細断カッターを用いることができる。したがって、ここでいう「細断カッター」は上記構造のものに限られない。
【0031】
(7)ホッパー
ホッパー9は細断された甘藷つるを収容する容器である。甘藷つる収容容器の形態は甘藷つるのその後の処理作業とも関係するので、箱型のものに限られることはなく、袋などの他の容器を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】は、実施例全体の側面図
【図1−1】は、実施例における押さえローラーと引き上げ搬送コンベアとの位置関係を概略的、模式的に示す正面図
【図2】は、実施例における刈り取り装置の一部平面図
【図2−1】(a)は、掻き上げ装置の平面図、(b)は側面図
【図3】は、引き上げ搬送コンベアを模式的に示す側面図
【図4】は、図3におけるA−A断面図
【図5】(a)は中継コンベアの模式的な正面図、(b)は図(a)における矢視S図、(c)は図(a)における矢視T図
【図6】は、引き上げ搬送コンベアによる甘藷つるの搬送状態を模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
次いで、図示の実施例(試作機)を説明する。なお、この説明における数値は、この実施例についての理解を助けるために示す具体例である。
図示の実施例の甘藷つる収穫機は、全長4.6m、幅1.6mの作業機であり、左右のクローラ(幅230mm、接地長さ1500mm)で自走するものであり、35馬力のディーゼルエンジンを搭載していて、路上走行における標準走行速度は時速3kmである。この実施例の足周りや作業機周り等の駆動手段は全て油圧駆動式であり、斜板型可変ポンプを駆動源として、走行モータ、搬送装置のコンベアや細断カッター等の個々の作業用モータ、刈り取り装置のフレーム2の昇降用油圧シリンダー(図示略)等で駆動される。
【0034】
掻き上げ装置4、サイドカッター5、根切りカッター6、引き上げ搬送コンベア3(搬送ベルトコンベア31及び搬送チェンコンベア32)、中継コンベア7、細断カッター8の駆動モータは非可変式のものであり、このうち、掻き上げ装置4、引き上げ搬送コンベア3、中継コンベア7については操作レバーによってこれを正転、逆転させることができ、駆動速度も加減することができる。また、走行モータは非可変式のものであり、その駆動速度は斜板型可変ポンプを制御することによって調節される。
【0035】
駆動油圧回路の油圧は210kg/cm以下に設定されている。この実施例の刈り取り作業時の標準前進速度は時速1.5kmであるが、作業状況に応じて適宜加減される。この作業時の前進速度(走行速度)の限界は、実際問題としては、掻き上げ装置4から細断カッター8までの搬送能力によって大きく左右される。
この実施例の作業能力(甘藷つるの収穫能力)は、甘藷の種類、甘藷つるの密度など種々の条件によって左右されるが、標準的な条件下では、最大稼働で1時間当たりほぼ5トン、標準稼働ではほぼ3トンである。
この実施例の甘藷つる収穫機の全体的規模の概要は以上のとおりであり、当該作業機の詳細は次のとおりである。
【0036】
刈り取り装置は先端の掻き上げ装置4、根切りカッター6、引き上げ搬送コンベア3を備えているものであり、この刈り取り装置のフレーム(以下これを単に「フレーム」という)2が、支持軸2pで上下方向に揺動自在に車体フレーム1に支持されている。そして、当該フレーム2の先端に左右の案内車輪21,21がブラケット22を介して取り付けられており、この案内車輪21,21でフレーム2の先端を支持している(図1)。上記案内車輪21は畝Wの側面下端を左右から挟んで走行し(図1−1参照)、これによって、刈り取り装置の先端が畝W(図2参照)を追跡する。上記案内車輪21は、左右それぞれ一つの車輪によるものでも特に問題はないが、この実施例では走行面の凹凸によるフレーム2の先端の上下動を低減するために前後一対の車輪によるものを用いている。この案内車輪21は直径が380mm、幅が150mmである。なお、この案内車輪21,21による案内は、例えば、甘藷収穫作業機において知られた事項であり(上記特開2008−193991号公報)、畝を追跡して走行する各種の農作業機において周知、慣用の事項である。
【0037】
引き上げ搬送コンベア3のコンベアフレーム30が支持軸3pによって上下方向に揺動自在にフレーム2に支持されており、また、コンベアフレーム30はクッションのための支持バネを介してフレーム2に支えられており、さらに、左右の押さえローラー3Rによってブラケット3bを介して畝の左右両肩部に支えられている。
また、押さえローラー3Rは、引き上げ搬送コンベア3で甘藷つるが引っ張られたときにそれにつれて甘藷が引き上げられて、地面から引き抜かれることがないように、畝Wの肩を軽く押さえる作用を奏する。この実施例における押さえローラー3Rはその直径が140mm、幅が150mmである。押さえローラー3Rによるコンベアフレーム30の支持高さは調節自在であり、これによって、掻き上げ装置4の畝面に対する高さが調節される。なお、上記支持高さの調節機構は、手動ねじ式のものである(図示は詳細は省略)。畝の高さは各圃場によって異なるので、畝の高さに応じて調節される。
【0038】
甘藷つる収穫機が前進するのに伴って畝Wの高さが変化するが、押さえローラー3Rが畝Wの肩を転動するので、掻き上げ装置4の畝面に対する高さは変わらず、したがってほぼ一定に保たれる。
さらに上記フレーム2は昇降シリンダーを備えており(図示略)、作業機を転向させる時などに、昇降レバーを操作することによってフレーム2が引き上げられる。
【0039】
〔掻き上げ装置〕
コンベアフレーム30の先端に掻き上げ装置4があり、これは前開きのハの字状に配置された左右の掻き上げベルト41A,41Bによるものである(図2−1(a))。そして、この掻き上げベルト41A,41Bは後方の駆動プーリ45と前方の従動プーリ46の間に巻きかけられており、側面視において前下がりに角度θ1で傾斜している(図2−1(b))。なお、この傾斜角度θ1はほぼ38度程度であり、これは畝を下方から上方に緩やかに撫で上げるような角度である。そして、掻き上げベルト41A,41Bの後端が少しの隙間(例えば、80mm)をおいて互いに接近していて、甘藷つるを掻き上げ掻き寄せて、引き上げ搬送コンベア3の先端に案内してその先端に引き込ませるようになっている。
【0040】
掻き上げベルト41A,41Bは幅が11mm、厚さが8mmのゴムベルトであり、互いに対向する面に長いひげ41aが一定間隔(約90mm)で突設されている。このひげ41aは比較的堅くて強く、ベルトの搬送面に対して掻き上げ方向と反対方向に傾斜しており、その長さhは80mm、その根元の厚さは14mmである。このひげ41aは、掻き上げベルト41A,41Bが矢印方向に循環する(図2−1(a)参照)ことによって若干撓みながら甘藷つるを撫でるようにして掻き上げ、畝Wの中央に掻き寄せる作用を有する。
ひげ41aの長さは、上記の作用(畝の中央に向けて甘藷つる掻き上げ掻き寄せる作用)を奏する範囲であれば長い必要はない。堅さについても同様である。
【0041】
上記掻き上げベルト41A,41Bの循環速度は、作業機の前進速度のほぼ1.5〜2.0倍程度である。これが速すぎても遅すぎても掻き上げ、掻き寄せ効果が不十分になり、極端な場合は甘藷つるをかき集めてこれを引き上げ搬送コンベア3の先端に誘導することができない。
この掻き上げベルト41A,41Bの適切な循環速度は、その傾斜角度θ1(図2−1(b))の大きさ、ひげ41aの長さ、強さ等と関係し、また畝Wの高さや幅、甘藷の種類、甘藷つるの太さや堅さ等とも関係するので、作業現場においてその駆動モータ(油圧モータ)の駆動速度をバルブ操作で調節できるようにしており、掻き上げベルト41A,41Bの速度を加減してスムーズに掻き上げられるように操作する。
なお、この実施例の掻き上げベルト41A,41Bの標準的な循環速度は秒速で0.6m程度である。
【0042】
〔引き上げ搬送コンベア〕
引き上げ搬送コンベア3の全長は約850mmであり、傾斜角度θ2は15〜38度である(図3)。引き上げ搬送コンベア3に捕捉された甘藷つるが緩やかに引き上げられる方が引き上げ搬送作業をスムーズにするのに好都合であり、傾斜角度が大きいと搬送抵抗が大きくなって搬送性能が著しく損なわれる。他方、最終的には細断カッター8まで引き上げなければならないので、傾斜角度θ2が小さいと前後方向の長さが著しく長くなる。また、甘藷つる収穫機の全長は短かい方が小型化、軽量化のために好都合である。このことからすれば、引き上げ搬送コンベア3の前後方向の長さはなるべく短かい方が好ましく、傾斜角度θ2は大きい方が好ましいことになる。以上のことを勘案して、具体的な機構設計において適当に傾斜角度θ2を選定する他はない。
【0043】
引き上げ搬送ベルト3の下方の搬送ベルトコンベア31は甘藷つるの根元を掴んで引き上げるものであって、厚さが16mm、幅31wが60mmの一対の搬送平ベルト31A,31Bによるものである(図3、図4)。そして、これらの搬送平ベルトは上側の駆動プーリ31dと下側の従動プーリ31fの間に巻き掛けられている。そして、左右の駆動プーリ31d,31dは一つの油圧モータにより歯車を介して互いに反対方向に駆動されており、左右の搬送平ベルト31A,31Bが互いに反対方向に循環し、甘藷つるの根元を挟んでこれを引き上げる。
【0044】
この搬送ベルトコンベア31の搬送速度は甘藷つる収穫機の前進速度の約1.5〜2.0倍程度であり、この実施例の傾斜角度θ2は38度であるから、搬送ベルトコンベア31の水平方向速度は作業機の前進速度の約1.2倍程度になる。
甘藷つるYは搬送ベルトコンベア31にその下部が把持されて後方に引っ張られ、斜め上方に引き上げられる(図6参照)。
【0045】
引き上げ搬送コンベア3の搬送チェンコンベア32は互いに平行な搬送チェン32A,32Bによるものであり、この搬送チェン32A,32Bは幅が14mmで、金属チェンによるものであり、互いに対向する面に一定間隔(約100mm間隔)で角33がある。そしてその駆動、被駆動チェンスプロケット32d,32fの間に掛け渡されており、左右の駆動チェンスプロケット32d,32dが一つの油圧モータによって歯車を介して反対方向に駆動される。これにより左右の搬送チェン32A,32Bが互いに反対方向に循環し、その間に甘藷つるが引き込まれ、甘藷つるに角33が引っかかってこれを引き上げる。
【0046】
上記の搬送チェンコンベア32は、搬送ベルトコンベア31よりも約130mm上方にあり、その搬送速度は搬送ベルトコンベア31とほぼ同速である。
搬送チェンコンベア32の、搬送ベルトコンベア31に対する高さは、これが小さすぎると甘藷つるが詰まる傾向があり、大きすぎると空回りする傾向があり、また、甘藷つるの量とも関係する。また、搬送チェンコンベア32の搬送ベルトコンベア31に対する速度差は、余り大きいと甘藷つるがちぎれる傾向がある。これらについては、以上のことを勘案して、適切な範囲で選択すればよい。
【0047】
上記角33は四角な台形形状の突起であり、当該角33の高さは35mmである。その形状は、角錐形状でも円錐形状でもよく、また、円柱形状でも角柱状でもよいが、この実施例における角33のように台形形状であれば、甘藷つるを巻き込んで引きちぎることがない。搬送チェンコンベア32に引き込まれた甘藷つるは上記角33に引っかけられて後方に引っ張られ、斜め上方に引き上げられる。
なお、搬送チェンコンベア32は、甘藷つるが巻き込まれてもスリップして駆動力が低下するようなことはなく、安定した駆動がなされる。これに対して、平ベルトによるコンベアを使用した場合は、スリップするなどのために安定した駆動がなされない。
【0048】
〔中継コンベア〕
引き上げ搬送コンベア3の直後に中継コンベア7があり、引き上げ搬送コンベア3で引き上げられた甘藷つるYはその後端で解放され、その直後に中継コンベア7に引き取られるように、引き上げ搬送コンベア3と中継コンベア7とが位置決めされている。
この中継コンベア7は中継筒と上方の中継搬送コンベアと下方の中継押し込みコンベアとによるものである。
【0049】
〔中継筒〕
引き上げ搬送コンベア3と細断カッター8との間にある中継コンベア7の中継筒70は、図5(a)に示す断面形状を有するものであり、その入り口、出口は四角形である。そしてその底部71aは斜め下方(前下がり)に傾斜し、天井部71bは斜め上方(前上がり)に傾斜している。また、左右の側壁部は後方から見て外方(外向き)に傾斜していて、中継筒70全体が前方に向かって開いたラッパ形状になっている。この中継筒70の入り口の横幅は230mm、高さは390mmであり、出口の横幅は230mm、高さは145mmであり、前後方向長さは540mmである。そして、底部71aの傾斜角度θ3は40〜50度が適当であり、この実施例では46度である。また、天井部71bの傾斜角度θ4は0〜10度が適当であり、この実施例では5度である。
【0050】
〔中継搬送コンベア〕
この実施例においては、中継搬送コンベアは中継搬送チェンコンベア72a,72bであり、幅14mm、厚さ12mmのチェンによるものであり、その搬送面(下面)に上記角72Tがある。当該角72Tは先端が平面の角錐形であり、その底面は20×40mmの四角形で、高さは90mmであって、中継筒70の中に約7.5mm程度突出している。これにより、中継筒内で引き上げ搬送コンベア3から解放された甘藷つるを下から引っかけて出口まで引きずり、出口で後方に押し出す。
この実施例の中継搬送チェンコンベア72a、72bは二つの平行なチェンコンベアであるから耐久性が高く、また、駆動輪に甘藷つるが巻き込まれてもスリップすることはない。
なお、中継搬送コンベアを二つの平行なベルトコンベアによって構成することもできるが、この場合は、タイミングベルトに補強ワイヤを埋設して強度、耐久性を高くし、また、角72Tがゴムであるからこれを金属カバーで被覆する等して補強する必要がある。
【0051】
〔中継押し込みコンベア〕
中継押し込みコンベアは中継押し込みチェンコンベア74a,74bであり、二つの平行なチェンコンベアであって上記天井部71bの上側にあり、幅14mm、厚さ12mmのチェンによるものである。そしてまた、上記角74Tは上記角72Tと同様のものである。当該角74Tの高さは90mmであって、中継筒70の中にほぼ7.5mm程度突出している。これにより、引き上げ搬送コンベア3の上端で解放された甘藷つるを上から引っかけて出口まで引きずり、中継筒70の出口から押し出す。
この実施例の中継押し込みチェンコンベア74a,74bは耐久性が高く、駆動輪に甘藷つるが巻き込まれてもコンベアがスリップすることはない。
なお、中継押し込みコンベアを二つのベルトコンベアによって構成することもできるが、この場合は、タイミングベルトに補強ワイヤを埋設してその強度、耐久性を高くし、また、その角74Tを金属カバーで被覆する等して補強する必要がある。
【0052】
〔中継コンベアの搬送速度〕
引き上げ搬送コンベア3の搬送速度は標準で毎秒0.7mであるのに対して、中継コンベア7による搬送速度は標準で毎秒1.0mであり、引き上げ搬送コンベア3の約1.4倍程度である。
引き上げ搬送コンベア3で引き上げられた甘藷つるはその後端で解放されるが、解放された甘藷つるは、中継筒70の入り口で中継搬送チェンコンベア72a,72bと中継押し込みチェンコンベア74a,74bの角72T,74Tによって上下から引っかけられ、出口まで引きずられて搬送される。
【0053】
引きずられて中継筒70内を移動するとき、甘藷つるは中継筒70の底部71a、天井部71b、左右両側部71c,71dで内側に押されながら出口まで進み、そして出口で外側に押し出され、細断カッター8の送りローラー81まで押し出される。中継筒が四角の筒体である場合に比して細断カッター8への送り込み効果が顕著であり、これにより、送りローラー81に確実に受け渡される。
【0054】
〔中継コンベアによる異物除去〕
中継筒70の底部71aの傾斜角度θ3は、上記のとおりほぼ46度である。このように底部71aが前下がりに傾斜しているので、引き上げ搬送コンベア3によって砂等の異物が甘藷つると一緒に引き上げられると、その上端で解放されたとき、これらの異物は中継筒70で甘藷つるから離れて底部71aの斜面に落下し、当該低部を滑り落ちる。
上記のとおりの傾斜角度θ3による異物除去作用は顕著である。この傾斜角度が大きいほど甘藷つるの搬送抵抗が大きくなる。特に異物除去効果のために傾斜角度θ3を余り大きくする必要はない。
【0055】
〔細断カッター〕
細断カッター8は、回転羽根82に切断刃がついている形式のものである。送りローラー81から回転羽根82に送られる被細断物に対して、上記回転羽根82が下方から上方に回転してこれを細断する。そして切断すると同時に細断片を跳ね上げ、回転羽根82による空気流によって搬送させる。
【0056】
甘藷つるは細断カッター8で長さほぼ30mm程度に細断され、シューター110に案内されて後方のホッパー9に投入される。
この細断カッターはカッターとしては周知のものである。
【0057】
〔ホッパー〕
ホッパー9は、容量が1.6mのほぼ逆台形状の金属容器であり、車体フレーム1の後部の支柱11の上端に支持軸12によって支持されている。
ホッパー9の容量については、ダンプする頻度、満杯時の重量がおよそ500kgであるなどを勘案して適宜選択すればよいが、作業能率の観点からは少なくとも2.0mは必要である。
ホッパー9は、これを後方に回転させることによってダンプされる。なお、このための駆動機構については、往復動型油圧シリンダーで駆動するようにすればよい。
【0058】
細断カッター8にはシューター110があり、細断カッター8から吹き上げられた甘藷つるがこのシューター110によって案内されてホッパー9に投入される。シューター110は横方向に旋回自在であり、これによりその向きが変えられる。ホッパー9をダンプするときは、シューター110を旋回させてホッパー9の外側に移動させることで、ホッパー9と干渉することが回避される。
なお、ホッパーに代えて袋を用いることもできる。この場合は、細断された甘藷つるをシューター110で収容袋に投入し、一杯になったらこれを作業機から降ろし、空の袋と入れ替えるようにする。
【0059】
この甘藷つる収穫機は製作コストが低く、収穫作業コストが低いことが優先される。このことからすれば、できるだけ機構が簡便で、耐久性が高く、また、全作業を一人で容易に行えることが肝要である。ホッパー方式であれば、この甘藷つる収穫機を走らせて最寄りの収集場所まで運搬し、その収集場所でダンプすることができる。したがって、収穫した甘藷つるを積み卸したり、積み替えたりする必要がなく、また、甘藷つる収穫作業を一人で容易に行うことができる。以上のような観点から、この実施例のホッパー方式が最も好ましい。
【0060】
〔付加的機構〕
マルチフィルムで畝が覆われているときは、車体フレーム1の後端にショベル120を設け、このショベル120の先端でマルチフィルムの側縁(砂を被せている部分)をすくって掘り起こし、これによってマルチフィルムの回収作業を容易にする必要がある。この実施例の上記ショベル120は小さな鋤のようなもので、畝の高さの違いに応じてその高さ位置を調節できるようになっている。そして、この調節は調節ねじによる無段階方式でも、調節孔による多段方式でもよい。
なお、このショベル120によってマルチフィルムの側縁を浮かしてその回収作業を容易にすることは、例えば、上記特許文献1に記載されているように、従来周知の事項である。
【0061】
〔改良の余地〕
作業機が畝Wの左右両サイドに乗り上げることがないように、自走体が操向操作され、また、掻き上げ装置4の中心が畝の中心を追跡するように、走行操作がなされなければならない。畝が直線的であるときは、比較的容易に上記のように操向操作がなされる。他方、畝がカーブしているときに自走体が畝を中心に挟んでこれを追跡するように走行させることに問題はないが、このときに掻き上げ装置4に畝Wの中心を追跡させることはできず、畝のカーブの曲率半径が小さいほど(曲率が大きいほど)この傾向が大きい。この問題を解消するには、コンベアフレーム30が自然に畝の曲がりを追跡するようにコンベアフレーム30に対するフレーム2の支持機構を工夫する必要がある。例えば、支持軸3pによる取り付け機構を、上下方向に触れるだけでなく横方向にも少し振れるようにし、バネなどで中立位置に保持させるなどである。これにより、押さえローラー3Rによってコンベアフレーム30の先端が畝Wを追跡し、したがって、掻き上げ装置4が畝Wのカーブを自然に追跡するようになる。この場合のコンベアフレーム30の支持機構については、ボールや十字軸等による自在継ぎ手で構成することができる。
【0062】
しかし、上記のようにすると、コンベアフレーム30の横方向揺動(狭い範囲の揺動であるが)により引き上げ搬送コンベア3が横方向に揺動するので、これに伴って引き上げ搬送コンベア3の後端で甘藷つるが詰まり、結局、甘藷つるの搬送が停止してしまうようになるおそれがある。
この実施例はそのコンベアフレーム30をフレーム2に対して上下方向に揺動自在に横方向の支持軸2pで連結させているので、掻き上げ装置の畝Wのカーブに対する追従性の問題がある。しかし、畝のカーブの曲率半径がほぼ100m以上であれば、カーブのところでもそれほどの問題はなく、圃場全体で見れば、確実に90%以上の回収率で甘藷つるを収穫することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:車体フレーム
2:刈り取り装置のフレーム
2p:支持軸
3:引き上げ搬送コンベア
3p:支持軸
3R:押さえローラー
4:掻き上げ装置
5:サイドカッター
6:根切りカッター
7:中継コンベア
8:細断カッター
9:ホッパー
10:スクレーパー
11:支柱
12:支持軸
21:案内車輪
30:コンベアフレーム
31:搬送ベルトコンベア
31A,31B:搬送平ベルト
32:搬送チェンコンベア
32A,32B:搬送チェン
33:角
41A,41B:掻き上げベルト
70:中継筒
71a:底部
71b:天井部
72a,72b:中継搬送チェンコンベア
74a,74b:中継押し込みチェンコンベア
72T,74T:角
81:送りローラー
82:回転羽根
110:シューター
111:旋回軸
120:ショベル
W:畝
Y:甘藷つる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2008−193991号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム1の前方に刈り取り装置のフレーム2が上下方向に揺動自在に支持されており、当該フレーム2にコンベアフレーム30が上下方向に揺動自在に支持されており、
上記フレーム2の前方に左右のスクレーパー10があり、その後方に左右のサイドカッター5があり、当該サイドカッター5の後方に掻き上げ装置4があり、
上記コンベアフレーム30の先端に上記掻き上げ装置4があり、当該掻き上げ装置4の後方に引き上げ搬送コンベア3があり、引き上げ搬送コンベア3の後方に中継コンベア7があり、
上記サイドカッター5、上記掻き上げ装置4、引き上げ搬送コンベア3、上記中継コンベア7が前後方向に一直線状に配置されており、
上記掻き上げ装置4で掻き上げられ掻き寄せられた甘藷つるの根元を引き上げ搬送コンベア3の先端で掴んだ直ぐ後にこれを切断する根切りカッター6が上記フレーム2の先端部の下方にあり、
細断カッター8が上記中継コンベア7の後方にあり、当該細断カッター8で細断された甘藷つるを収容する容器が車体フレームの後部にあることを特徴とする甘藷つる収穫機。
【請求項2】
上記スクレーパー10は前方の傾斜部と後方の支持部を有し、前方の傾斜部で畝の両側下端において甘藷つるを下からすくい上げ、甘藷つるをその後方のサイドカッター5で切断される高さに押し上げるものであることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫機。
【請求項3】
上記サイドカッター5は帯状鋸刃による縦方向カッターであって、固定刃と上下に往復動する可動刃によるものであり、スクレーパーで押し上げられた藷づるを切断して甘藷つるを畝毎に切り離すものであることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫。
【請求項4】
上記掻き上げ装置4は左右の掻き上げベルト41A,41Bによるものであり、当該掻き上げベルト41A,41Bはゴムベルトであり、ひげ41aを一定間隔で備えており、
上記ひげ41aで畝の側面を撫でるようにして甘藷つるを掻き上げ、畝の中央に掻き寄せて、引き上げ搬送コンベア3の先端に送り込むものであることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫機。
【請求項5】
上記引き上げ搬送コンベア3は、前方から斜め上方に傾斜したコンベアフレーム30と、下側の搬送ベルトコンベア31及び上側の搬送チェンコンベア32によるものであり、
下側の搬送ベルトコンベア31は左右一対の搬送平ベルト31A,31Bによるものであり、甘藷つるの根元を掴んで斜めに引き上げ、甘藷つるを後方に引っ張って引き寄せつつ斜め上方に搬送するものであり、
上記搬送チェンコンベア32は左右一対の搬送チェン32A,32Bによるものであり、左右の搬送チェン32A,32Bは角33を有しており、これらの角の先端間に少し隙間が介在する程度に両搬送チェン32A,32Bが離間していることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫機。
【請求項6】
上記中継コンベア7は引き上げ搬送コンベア3と細断カッター8との間に介在しており、中継筒70と、下側の中継搬送コンベア及び上側の中継押し込みコンベアとによるものであることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫機。
【請求項7】
上記中継コンベア7の中継筒70は四角な前開きのラッパ状筒体であり、その底部71aの下側に左右一対の中継搬送コンベアがあり、また、天井部71bの上側に左右一対の中継押し込みコンベアがあり、上記底部71a、天井部71bはそれぞれ下方、上方に傾斜しており、
さらに、上記左右の側壁部は前開き状態に傾斜しており、
上記の中継搬送コンベア、中継押し込みコンベアには角72T,74Tが一定間隔であり、上記角72Tが中継筒70の内側に突出しており、上記角74Tが中継筒70の内側に突出していることを特徴とする請求項6の甘藷つる収穫機。
【請求項8】
中継搬送コンベアがチェンコンベアであり、中継押し込みコンベアがチェンコンベアである請求項7の甘藷つる収穫機。
【請求項9】
上記細断カッター8は送りローラー81と回転羽根82によるものであり、甘藷つるを細断し、これをホッパー9へ投擲搬送するものであることを特徴とする請求項1の甘藷つる収穫機。

【図1】
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【図1−1】
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【図2】
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【図2−1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188765(P2011−188765A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56013(P2010−56013)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(591077955)鹿児島県経済農業協同組合連合会 (1)
【出願人】(000239725)文明農機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】