説明

生体管路内処置デバイス

【課題】簡単かつ安全に広い患部領域に治療用物質をデリバリーすることが可能な生体管路内処置デバイスを提供する。
【解決手段】先端部付近の外周面に膨縮可能なバルーンを有するインナーチューブと、該インナーチューブの外側に位置し、バルーンを覆うカバー位置と、該バルーンを露出させる露出位置とにスライド可能なアウターチューブと、バルーンを膨縮させる膨縮手段とを備え、バルーンの外面に治療用物質を搭載しアウターチューブをカバー位置に位置させた状態で生体管路内へ挿入され、該アウターチューブをカバー位置から露出位置にスライドさせ膨縮手段によりバルーンを膨張させて治療用物質を患部に投与し、該投与後に膨縮手段によりバルーンを収縮させて生体管路から引き抜かれることを特徴とした生体管路内処置デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食道などの生体管路内に挿入され患部にシートや薬剤などの治療用物質を供給する生体管路内処置デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
食道などの生体管路内における疾患の内視鏡的治療方法としてEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が知られている。特にESDは管路内壁の全周に亘るような広範囲な患部を処置することができるが、その一方で、処置領域が大きくなると患部の癒着、狭窄、閉塞などの合併症のリスクも高まるので、それを防ぐための対策が必要となる。こうした合併症の有効な防止手段として、患者の自己口腔粘膜から培養、再生した粘膜上皮細胞シートを患部に移植する技術が提案されている(例えば非特許文献1)。従来は細胞シートのような治療用物質を患部まで運搬する手段として内視鏡の鉗子が用いられていたが、鉗子では取り扱うことのできる治療用物質の形状や大きさが制限される。例えば、生体管路内壁に全周的に移植されるような大型の細胞シートを鉗子で運んで移植作業を行うことは困難であった。そのため、簡単かつ安全に広い患部領域に治療用物質を供給することのできる処置具が望まれている。
【非特許文献1】「経内視鏡的培養口腔粘膜上皮細胞シート移植による食道再建」東京女子医科大学雑誌 第76巻 第4号 p179-183、平成18年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡単かつ安全に広い患部領域に治療用物質をデリバリーすることが可能な生体管路内処置デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、生体管路内壁の患部に治療用物質を供給する生体管路内処置デバイスにおいて、先端部付近の外周面に膨縮可能なバルーンを有するインナーチューブと、該インナーチューブの外側に位置し、バルーンを覆うカバー位置と、該バルーンを露出させる露出位置とにスライド可能なアウターチューブと、バルーンを膨縮させる膨縮手段とを備え、バルーンの外面に治療用物質を搭載しアウターチューブをカバー位置に位置させた状態で生体管路内へ挿入され、該アウターチューブをカバー位置から露出位置にスライドさせ膨縮手段によりバルーンを膨張させて治療用物質を患部に投与し、該投与後に膨縮手段によりバルーンを収縮させて生体管路から引き抜かれることを特徴としている。
【0005】
インナーチューブとアウターチューブは、インナーチューブ内に挿入した内視鏡によって内側からバルーンと患部を観察可能な透明または半透明材料からなっていることが好ましい。この場合、インナーチューブには、その長手方向位置や周方向位置を示す指標が設けられ、インナーチューブ内に挿入した内視鏡によって該指標を観察して患部と治療用物質の位置合わせなどを行えるようにすると、より好ましい。
【0006】
インナーチューブとアウターチューブには、インナーチューブに対するアウターチューブのカバー位置と露出位置のそれぞれの移動端を決めるスライド規制部を設けることが好ましい。さらに、生体管路への挿入時に前記カバー位置から露出位置へのアウターチューブのスライドを規制する着脱可能なスライド防止具を備えることが好ましい。
【0007】
また、インナーチューブにおける挿入方向先端部とは反対側の末端部に着脱可能かつ内視鏡を挿通可能で、内視鏡を挿通した状態でインナーチューブ内と外気との空気流通を制限する空気漏れ防止弁を備えることが好ましい。
【0008】
治療用物質はその用途において様々な物質を選択することができるが、本発明は特に、患部に供給される治療用物質が細胞シートである場合に好適である。または治療用物質が薬剤であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明の生体管路内処置デバイスによれば、広い患部領域に対して簡単かつ安全に治療用物質を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の生体管路内処置デバイスの実施形態を図面を参照して説明する。図1は生体管路内処置デバイス10の全体構成を示すものである。生体管路内処置デバイス10は、図1及び図2の右手方向の端部を先端部として生体管路に挿入され、この先端部と反対の端部側に把持操作部20(図3、図4)が設けられている。なお、生体管路内処置デバイス10の全体構成を示す図1及び図2、図7ないし11では、把持操作部20の詳細構造の図示は省略されている。
【0011】
生体管路内処置デバイス10は、インナーチューブ11とアウターチューブ(カバーチューブ)12を備えている。インナーチューブ11は、内部に内視鏡13を挿通可能な筒状体であり、その先端部付近に膨縮可能な弾性体からなるバルーン14が設けられている。バルーン14はインナーチューブ11の外周面を囲む筒状をなし、インナーチューブ11の長手方向におけるバルーン14の前後端部は周方向の全体に亘ってインナーチューブ11の外周面側に密封状態で固定され、バルーン14の中間部分はインナーチューブ11に対して固定されていない。インナーチューブ11の側壁内には送気管15が形成されている。送気管15は、インナーチューブ11の長手方向に沿って延設され、その一端部がバルーン14に対向するインナーチューブ11の外周面上に開口され、他端部が後述する把持操作部20側に開口している。なお、本実施形態では送気管15をインナーチューブ11の肉内に形成したマルチルーメン構造となっているが、インナーチューブ11の内径側または外径側に別の細いチューブを沿わせて送気管とするマルチチューブ構造とすることも可能である。送気管15の把持部側開口にはインフレーションデバイス16が接続され、該インフレーションデバイス16によって送気管15内へ空気を注入及び吸引することができる。送気管15内へ空気が注入されると、図2に示すように、インナーチューブ11とバルーン14の間の空間に空気が流入してバルーン14が膨張する。逆に、バルーン14が膨張した状態でインフレーションデバイス16により吸引すると、インナーチューブ11とバルーン14の間の空気が吸い出されて図1のようにバルーン14が収縮する。インフレーションデバイス16は圧力計17を備えており、圧力計17を参照してバルーン14の膨縮状態を知ることができる。なお、本実施形態では注射器タイプのインフレーションデバイス16を用いているが、これとは異なるタイプ(例えば、送気吸引機能と圧力計機能とを備えた一体型)のインフレーションデバイスを用いることも可能である。
【0012】
インナーチューブ11には、バルーン14の前後にスペーサ18とスペーサ19が設けられている。各スペーサ18、19はいずれもインナーチューブ11を囲む円筒状の部材でありその外径サイズは略等しく、インナーチューブ11先端側に位置するスペーサ18の端部には、スペーサ18の他の領域より大径のフランジ状のスライド規制部18aが設けられている。アウターチューブ12の先端部付近の内径サイズはスペーサ18、19の外径サイズに対応しており、各スペーサ18、19の外周面に対してアウターチューブ12の内周面が、インナーチューブ11の長手方向へ摺動可能に支持されている。インナーチューブ11の先端方向へのアウターチューブ12の摺動移動端は、アウターチューブ12の先端部がスライド規制部18aに当接することによって決まる(図1)。アウターチューブ12がこの先端方向の移動端にあるとき、図1に示すようにアウターチューブ12がバルーン14を覆った状態になる。以下では、バルーン14を覆ったこのアウターチューブ12の位置をカバー位置と称する。バルーン14が収縮した状態ではアウターチューブ12の内周面とバルーン14の間には径方向に十分なクリアランスが確保されており、インナーチューブ11に対してアウターチューブ12をカバー位置にスライドさせたときに、アウターチューブ12とバルーン14が互いに干渉することはない。
【0013】
インナーチューブ11においてスペーサ18より前方に突出する先端部端面は、インナーチューブ11の長手方向軸に対して斜めに切断されている。このインナーチューブ11の端面は、生体管路内への挿入時にその内部を傷つけないように角のない丸みを帯びた形状に加工されている。また、図示しないが、インナーチューブ11には、長手方向位置や周方向位置を示す複数箇所のマーキング(指標)が施されており、インナーチューブ11に挿入した内視鏡13でこのマーキングを観察することができる。
【0014】
図3及び図4は把持操作部20の詳細構造を示している。把持操作部20において、インナーチューブ11の末端部には保持部21が設けられている。保持部21のうち先端部側には、大径フランジ状のスライド規制部21aが設けられ、該スライド規制部21aとは反対側の末端部に弁装着部21bが設けられている。スライド規制部21aと弁装着部21bの間には、施術者が把持しやすくするための凹凸部(グリップ部)21cが形成されている。保持部21には、インナーチューブ11内に配した前述の送気管15に接続する送気チューブ21dが設けられており、該送気チューブ21dの開口部にはコネクタ21eが設けられている。コネクタ21eに対して前述のインフレーションデバイス16が接続される。弁装着部21bに対しては、空気漏れ防止弁22が着脱可能である。空気漏れ防止弁22は、弁装着部21bに着脱される取付環部22aと、該取付環部22aの内径を塞ぐ弾性弁部22bとを有している。図5は空気漏れ防止弁22の単体形状を示しており、同図に示すように、取付環部22aの先端部には、弁装着部21b内周面の抜け止め溝21fに係脱可能な抜止フランジ22cが設けられている。また、弾性弁部22bはゴムなどの気密性及び弾性を有する材質からなり、その中央部に内視鏡13を挿通可能な貫通孔22dが形成されている。
【0015】
把持操作部20におけるアウターチューブ12の末端部には、ハンドル部25が設けられている。ハンドル部25は、スライド規制部21aと略同径の大径フランジ状のスライド規制部25aを備えている。スライド規制部21aとスライド規制部25aの間には、C字状断面のスライド防止具26(図6)を着脱可能である。図3のようにスライド防止具26を取り付けた状態では、スライド規制部25aとスライド規制部21aが離間されており、インナーチューブ11に対して引き抜き方向(図3の左手方向)へのアウターチューブ12の移動が規制される。このとき、アウターチューブ12は前述のカバー位置にあり、生体管路内処置デバイス10の先端部側においては、アウターチューブ12の先端部がスライド規制部18aに当接して、インナーチューブ11の先端側へのアウターチューブ12の移動も規制されている。ここでスライド防止具26を取り外すと、図4に示すように、スライド規制部25aがスライド規制部21aに当接するまでインナーチューブ11に対してアウターチューブ12をスライドさせることができる。スライド規制部25aとスライド規制部21aの当接位置までアウターチューブ12がスライドされると、図2に示すように、アウターチューブ12の先端部がスペーサ19の位置まで退避し、バルーン14が露出される。以下では、バルーン14を露出させるこのアウターチューブ12の位置を露出位置と称する。
【0016】
前述のように、バルーン14は膨縮可能で、透明または半透明な弾性材料からなっており、具体的な材質としてラテックス、シリコンゴムなどが好ましい。インナーチューブ11とアウターチューブ12は、後述する挿入作業時の位置決め作業やバルーン14の膨縮作業においてインナーチューブ11内に挿入した内視鏡13によって患部まで観察できるように、透明または半透明となっている。インナーチューブ11とアウターチューブ12はまた、生体管路内に挿入されるときその形状に応じて変形できる可撓性を有している。このような条件を満たす材質として、インナーチューブ11とアウターチューブ12はシリコンゴムやフッ素ゴムからなることが好ましい。インナーチューブ11先端付近のスペーサ18、19は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)などの透明樹脂で形成されることが好ましい。また、アウターチューブ12の先端部分付近は、その本体部よりも硬い透明硬性部材で形成されていることが好ましく、具体的にはスペーサ18、19と同様のPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)などの透明樹脂で形成するとよい。このようにアウターチューブ12の先端部が硬性部材からなっていると、生体管路内処置デバイス10の生体管路挿入時におけるするときの治療用物質(細胞シート)の物理的保護能力が高まる。なお、インナーチューブ11に対するアウターチューブ12の摺動性を良くするべく、インナーチューブ11とアウターチューブ12の摺接面(例えばスペーサ18、19の外周面)に摩擦抵抗を低減させるコーティングを施してもよい。
【0017】
以上の構造からなる生体管路内処置デバイス10の使用方法を説明する。まず準備段階として、スライド規制部25aがスライド規制部21aに当接する露出位置までアウターチューブ12をスライドさせてバルーン14を露出させ、露出した状態のバルーン14の外面に治療用物質27を搭載する。治療用物質27は、ESD施術後の合併症予防用の細胞シート(口腔粘膜上皮細胞を培養したシート)や、薬剤など、生体管路内処置デバイス10の使用目的によって適宜選択される。治療用物質27はインナーチューブ11に施されたマーキングを目安に搭載される。続いて、アウターチューブ12をスライド規制部18aに当接するカバー位置にスライドさせて治療用物質27を格納し、スライド規制部25aとスライド規制部21aの間にスライド防止具26を装着する(図3)。この状態では、アウターチューブ12が治療用物質27を覆って保護しており、スライド防止具26によって、保護解除方向(露出位置方向)へのアウターチューブ12の不用意なスライドが防止される。
【0018】
続いて、内視鏡13の挿入部を貫通孔22dに挿通させて空気漏れ防止弁22を取り付け、内視鏡13を生体管路内処置デバイス10に挿入したところで、抜け止め溝21fに対して抜止フランジ22cを係合させて弁装着部21bに空気漏れ防止弁22を固定する。なお、弁装着部21bに空気漏れ防止弁22を固定してから生体管路内処置デバイス10(貫通孔22d)に内視鏡13を挿入する手順としてもよいが、内視鏡13に対して先に空気漏れ防止弁22を取り付ける方が作業性がよい。図7は以上の準備が終わった状態を示している。治療用物質27は、外側を覆うアウターチューブ12によって、外部との接触による物理的破損や乾燥から保護されている。
【0019】
以上の準備が終了したら、内視鏡13が挿入された状態の生体管路内処置デバイス10を、内視鏡画像を見ながら患者の生体管路30(例えば食道)内に挿入していく。このとき、挿入する生体管路30が食道のように平常時につぶれている器官であれば、必要に応じて内視鏡13の先端部の送気口(不図示)から送気して内部を広げる。空気漏れ防止弁22は、貫通孔22dに内視鏡13を挿通させた状態で弾性弁部22bによってインナーチューブ11内と外気との空気流通を制限しており、内視鏡13先端部の送気口から送気をしたときに、インナーチューブ11内を逆流した空気が把持操作部20側に噴出するのを防ぐ。そして、図8のようにデバイスの先端部が患部31付近まで到達したら、治療用物質27(またはインナーチューブに記載された、治療用物質27の位置を示すマーキング)と患部31の両方が内視鏡画像に映るように、生体管路内処置デバイス10と内視鏡13の位置をそれぞれ調整する。詳細には、内視鏡画像を見ながら、治療用物質27と患部31の位置、方向が合致するように、生体管路内処置デバイス10の位置と向きを修正する。この際、必要に応じて内視鏡13の位置を調節し、常に治療用物質27と患部31の両方が観察できるようにする。インナーチューブ11及びアウターチューブ12は透明または半透明材料からなっているため、このように内視鏡で直接観察しながら生体管路内処置デバイス10(治療用物質27)の位置決めをすることができる。なお、投与する治療用物質27が内視鏡13で直接観察できない場合などには、インナーチューブ11内に設けた前記のマーキング(不図示)を目印に、間接的に治療用物質27と患部31との位置合せを行う。インナーチューブ11は透明または半透明であるため、これを透視してマーキングと生体管路30内(患部31)とを同時に観察することができる。
【0020】
生体管路内処置デバイス10の位置が決まったら、コネクタ21eに対して圧力計17付きのインフレーションデバイス16を装着する。そして、スライド防止具26を取り外し、インナーチューブ11末端の凹凸部21cを把持した状態で、ハンドル部25を持ってスライド規制部25aがスライド規制部21aに当て付くまでアウターチューブ12を手前側にスライドさせる。このとき、治療用物質27と患部31の位置関係がずれないように、インナーチューブ11側を動かさずにアウターチューブ12だけを移動させる。インナーチューブ11の保持部21に形成した凹凸部21cは、アウターチューブ12をスライドさせる際にインナーチューブ11を不用意に位置ずれさせない滑り止め手段として機能する。また、スライド規制部25aがスライド規制部21aに当て付くまでスライドさせるとバルーン14と治療用物質27が完全に露出した状態になるので、細かなスライド量を考慮せずに容易かつ確実に露出位置までアウターチューブ12をスライドさせることができる。アウターチューブ12を露出位置までスライドさせたら図4のようにスライド規制部25aとスライド規制部21aをテープ32で固定し、アウターチューブ12が不用意にインナーチューブ11先端側のカバー位置に戻らないようにする。
【0021】
以上の手順が終了した段階で、図9に示すように露出した治療用物質27が患部31に対向した状態になっている。続いて、インフレーションデバイス16を用いて所定の圧力になるまでバルーン14を膨張させると、図10に示すように治療用物質27が患部31に圧接される。治療用物質27が患部31側に確実に投与されるように所定時間経過した後、インフレーションデバイス16でバルーン14内の空気を吸引してバルーン14を完全に収縮させる。すると、治療用物質27はバルーン14から離れて患部31側に残る。バルーン14を膨張させる際の圧力や、膨張状態の維持時間は、用いられる治療用物質27の種類に応じて適宜調整される。例えば、生体管路30が食道で治療用物質27がESD後の合併症予防用の細胞シートである場合、細胞シートが産生した接着タンパクの作用によって移植部位に生着するまで、10〜30分ほどバルーン14を膨張させておくとよい。
【0022】
バルーン14を収縮させた後、図11のように生体管路30から生体管路内処置デバイス10を抜き取る。このとき、インナーチューブ11の先端側へのアウターチューブ12のスライドが起こらないように、保持部21とハンドル部25の両方を把持して、生体管路内処置デバイス10を内視鏡13と共に引き抜く。生体管路内処置デバイス10の引き抜き後、必要に応じて内視鏡による患部31の観察を行う。
【0023】
以上のように、本実施形態の生体管路内処置デバイス10を用いることによって、鉗子などを用いた従来の処置具に比べて、極めて簡単かつ安全に患部へ治療用物質を供給することができる。特に、治療用物質の搭載及び運搬手段として全周的に膨縮するバルーン14を用いたことによって、生体管路の全周に亘るような広い患部に対しても、一回の操作で確実に治療用物質を行き渡らせることができる。また、治療用物質27の移送時(生体管路内処置デバイス10の挿入時)には、アウターチューブ12によって治療用物質27が物理的破損や乾燥から保護されるため、従来の移送方法に比べ治療用物質27の取り扱いが容易である。さらに、インナーチューブ11やアウターチューブ12を透明または半透明にして内視鏡13によって直接観察しながら挿入時の位置決め作業などを行えるようにしたので、作業性や作業精度の点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した生体管路内処置デバイスの全体構造を示す断面図である。
【図2】図1の生体管路内処置デバイスでアウターチューブを露出位置へスライドさせバルーンを膨張させた状態を示す断面図である。
【図3】図1の生体管路内処置デバイスの把持部の詳細構造を示す断面図である。
【図4】図3の状態からスライド防止具を取り外し、バルーンの露出位置へアウターチューブをスライドさせた状態の把持部を示す断面図である。
【図5】空気漏れ防止弁単体の断面図である。
【図6】スライド防止具単体の斜視図である。
【図7】実施形態の生体管路内処置デバイスの使用準備が整った状態を示す断面図である。
【図8】生体管路内処置デバイスを生体管路内に挿入して治療用物質と患部の位置合わせをした状態を示す断面図である。
【図9】図8の状態からアウターチューブを露出位置へスライドさせて治療用物質及びバルーンを露出させた状態を示す断面図である。
【図10】図9の状態からバルーンを膨張させて治療用物質を患部に押し当てた状態を示す断面図である。
【図11】患部への治療用物質の移植が完了し、生体管路内処置デバイスを引き抜く状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 生体管路内処置デバイス
11 インナーチューブ
12 アウターチューブ
13 内視鏡
14 バルーン
15 送気管
16 インフレーションデバイス(膨縮手段)
17 圧力計
18 19 スペーサ
18a スライド規制部
20 把持操作部
21 保持部
21a スライド規制部
22 空気漏れ防止弁
25 ハンドル部
25a スライド規制部
26 スライド防止具
27 治療用物質
30 生体管路
31 患部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管路内壁の患部に治療用物質を供給する生体管路内処置デバイスにおいて、
先端部付近の外周面に膨縮可能なバルーンを有するインナーチューブと、
該インナーチューブの外側に位置し、前記バルーンを覆うカバー位置と、該バルーンを露出させる露出位置とにスライド可能なアウターチューブと、
前記バルーンを膨縮させる膨縮手段と、
を備え、
前記バルーンの外面に治療用物質を搭載し前記アウターチューブをカバー位置に位置させた状態で生体管路内へ挿入され、該アウターチューブをカバー位置から露出位置にスライドさせ前記膨縮手段によりバルーンを膨張させて治療用物質を患部に投与し、膨縮手段によりバルーンを収縮させて生体管路から引き抜かれることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の生体管路内処置デバイスにおいて、前記インナーチューブ及びアウターチューブは、インナーチューブ内に挿入した内視鏡によって内側から前記バルーンと患部を観察可能な透明または半透明材料からなっていることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項3】
請求項2記載の生体管路内処置デバイスにおいて、インナーチューブはその長手方向位置や周方向位置を示す指標を有し、インナーチューブ内に挿入した内視鏡によって該指標を観察可能であることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の生体管路内処置デバイスにおいて、インナーチューブに対するアウターチューブの前記カバー位置と露出位置のそれぞれの移動端を決めるスライド規制部を備えていることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の生体管路内処置デバイスにおいて、生体管路へのデバイスの挿入時に前記カバー位置から露出位置へのアウターチューブのスライドを規制する着脱可能なスライド防止具を備えていることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の生体管路内処置デバイスにおいて、インナーチューブの挿入方向先端部とは反対側の末端部に着脱可能かつ内視鏡を挿通可能で、内視鏡を挿通した状態でインナーチューブ内と外気との空気流通を制限する空気漏れ防止弁を備えていることを特徴とする生体管路内処置デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の生体管路内処置デバイスにおいて、前記治療用物質は細胞シートまたは薬剤であることを特徴とする生体管路内処置デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−79783(P2008−79783A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262403(P2006−262403)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(591173198)学校法人東京女子医科大学 (48)
【Fターム(参考)】