説明

生理用ナプキン

【課題】 身体の股間部に倣って変形しやすく、且つ外力により液吸収層が破れたり変形しにくい生理用ナプキンを提供する。
【解決手段】 生理用ナプキン1は、裏面シートと表面シート12および液吸収層14を有しており、肌側表面には、表面シート12と液吸収層14とを接合した接合パターン15a,15b,15c,15dが形成されている。これら接合パターンで囲まれた囲み領域16内では、液吸収層14に多数の切込み部17が形成されている。切込み部17を形成することにより液吸収層14が変形しやすくなる。しかも切込み部17を有する領域が接合パターンで囲まれているため、破れや変形が生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の形状になじむように変形しやすく、装着感が良好で、且つ装着状態を外部から識別しずらい生理用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
生理中の女性が膣口に当てて装着する生理用ナプキンは、パルプや高吸収性樹脂(SAP)を含む液吸収層と、この液吸収層の肌側表面を覆う液透過性の表面シートとを有している。
【0003】
生理用ナプキンを膣口に当てた状態でショーツを穿くと、股間部にショーツの弾性的な吊り上げ力が作用する。生理用ナプキンが膣口に密着するためには、前記吊り上げ力によって生理用ナプキンが女性の股間部の形状に倣うように変形することが望まれる。しかし、生理用ナプキンは、パルプを主体とした厚い液吸収層を有しているため、股間部の形状に応じて変形しにくく、肌側表面が膣口に密着しにくい。
【0004】
また、生理用ナプキンを股間部に装着しているときには、生理用ナプキンの後方部分が肛門付近よりもやや後方の臀部の下方に位置する。また、縦方向に長い生理用ナプキンは、経血の臀部方向への洩れを防止するために使用されるが、この生理用ナプキンを装着すると、後端部分が臀部の下方の尾てい骨付近に位置する。このように、生理用ナプキンの後端部分が臀部の下方に位置している状態でショーツを穿いたときに、液吸収層が厚いものであって、且つショーツの吊り上げ力によって臀部の溝に沿うように変形しにくいものであると、タイトなパンツなどを穿いたときに、外部から生理用ナプキンの後端部分の存在が認識されやすいという問題がある。
【0005】
生理用ナプキンの液吸収層が変形しやすく、股間部や臀部の溝に倣うように変形しやすくした従来例として以下の特許文献に記載のものがある。
【0006】
まず、特許文献1などに記載のものは、縦長の生理用ナプキンの後方部分において、液吸収層に縦方向に延びる圧縮溝が形成されている。この発明は、ショーツの吊り上げ力が前記圧縮溝の部分に作用したときに、液吸収層が前記圧縮溝の部分で変形して液吸収層が臀部の溝に倣うように変形しやすくなるというものである。
【0007】
次に、特許文献2に記載の生理用ナプキンは、液吸収層に複数のスリット状の切込線が形成されて、液吸収層が変形しやすくなっている。その結果、生理用ナプキンが体型に対応するように変形しやすくなり、またゴワゴワすることなく違和感を与えることが少ないというものである。
【0008】
また、特許文献3にも、液吸収層に多数の貫通穴が形成されて、液吸収層が柔軟性を有する生理用ナプキンが開示されている。
【特許文献1】特開平10−328233号公報
【特許文献2】実開平4−51930号公報
【特許文献3】特開2002−35036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のように、液吸収層に圧縮溝を形成した生理用ナプキンでは、圧縮溝において液吸収層の密度が高くなっているため、圧縮溝が臀部の溝に押し付けられたときに身体が違和感を受けやすい。
【0010】
また、特許文献2または特許文献3に記載の生理用ナプキンは、液吸収層の全域にスリット状の切込線または貫通穴が形成されているため、液吸収層全体の引っ張り強度が弱く、股間部に装着した状態で体を動かしたときなどに、液吸収層に切込線や貫通穴をきっかけとした亀裂などが生じやすい。
【0011】
また、それぞれの特許文献に記載されたものは、いずれも液吸収層がパルプの積層体で形成されて、液吸収層が厚いため、股間部や臀部の溝に沿うように変形できたとしても、タイトなパンツなどを着用したときに、外部から目立ちやすい。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、身体の形状に倣って変形しやすく、且つ液吸収層に亀裂などが生じにくく、またパンツなどを着用した状態で外部から目立ちにくい生理用ナプキンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液吸収層と、前記液吸収層の肌側表面を覆う液透過性の表面シートと、前記表面シートと液吸収層とが接合された接合パターンとが設けられている生理用ナプキンにおいて、
左右両側に位置して縦方向に延びる縦方向接合パターンと、前記縦方向接合パターンを連結する連結接合パターンとが形成されて、それぞれの前記縦方向接合パターンと前記連結接合パターンとで囲まれた領域の前記液吸収層に、低剛性部が形成されており、前記低剛性部は、前記液吸収層の前記縦方向接合パターンの左右両外側に位置する部分の剛性よりも低いことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の生理用ナプキンは、縦方向接合パターンの間に位置している液吸収層に低剛性部が設けられているため、縦方向接合パターンで挟まれた部分が、ショーツの吊り上げ力によって女性の股間部または臀部の溝に倣うように変形できるようになる。よって、生理用ナプキンの肌側表面が膣口に密着しやすく、またタイトなパンツなどを着用したときに、生理用ナプキンを着用している状態を外部から認識されにくくなる。
【0015】
さらに、低剛性部の左右両側に位置する縦方向接合パターンに表面シートが接合され、この表面シートで縦方向接合パターンどうしが連結されているため、外力によって、低剛性部の液吸収層が左右に伸びるなどの変形を生じにくくなる。
【0016】
例えば、前記低剛性部には、前記液吸収層に複数の切込み部が形成されているものである。
【0017】
本発明では、前記切込み部は、前記液吸収層を貫通して形成されているものであり、あるいは液吸収層の厚みの途中部分まで切込まれているものである。
【0018】
好ましくは、個々の前記切込み部は直線状に形成され、少なくとも2つの切込み部が交叉しているものである。
【0019】
個々の切込み部が少なくとも2方向へ延びていると、液吸収層が他方向へ向けて軟質に曲がるようになる。
【0020】
または、前記低剛性部は、前記液吸収層の目付けおよび密度の少なくとも一方を低下させることで形成できる。これは、例えば、前記液吸収層を部分的に引き伸ばすことで実現できる。
【0021】
さらに、本発明は、前記低剛性部と前記表面シートとの間に、前記液吸収層よりも密度の低い繊維層が介在しているものとすることができる。
【0022】
低剛性部の上に低密度の繊維層が形成されていると、低剛性部において液吸収層の曲がりやすさを損なうことなく、肌への接触が軟質になる。さらに液吸収層と前記繊維層とで液吸収容量を多く確保することも可能である。
【0023】
また、本発明では、好ましくは前記液吸収層がエアーレイドパルプで形成されている。または、前記液吸収層は、パルプ繊維を含む繊維の積層体を圧縮して形成したものである。
【0024】
エアーレイドパルプで形成された液吸収層、また繊維を圧縮した液吸収層に前記低剛性部を形成することによって、全体が柔軟になる。また、液吸収層全体を薄くでき、着用状態をパンツなどの外から認識されにくくなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、生理用ナプキンの液吸収層を、身体に倣うように変形しやすくでき、また薄くすることも可能であり、タイトなパンツなどを穿いた状態で、生理用ナプキンを装着している状態を外部から認識されにくくなる。また、液吸収層の低剛性部は、その両側に位置する縦方向接合パターンに固定された表面シートで覆われて、低剛性部が表面シートで補強された構造であるため、液吸収層が左右両側に伸びて前記低剛性部の部分で液吸収層が過剰に変形するのを防止でき、液吸収層の強度を保てるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明の第1の実施の形態の生理用ナプキンを、肌側表面を手前側に向けて示す平面図、図2は図1のII−II線で切断した断面図である。
【0027】
この生理用ナプキン1の平面形状は、右前方側縁部2aと左前方側縁部2bと、右後方側縁部3aと左後方側縁部3bを有している。右側部では、前記右前方側縁部2aと右後方側縁部3aとの間に、右折り返しフラップ部4aが突出し、左側部では、左前方側縁部2bと左後方側縁部3bとの間に、左折り返しフラップ部4bが突出している。さらに前方に前縁部5を有し、後方に後縁部6を有している。
【0028】
生理用ナプキン1を左右に二分する縦方向中心線をOyとする。図1に示す横方向基準線Oxは、左右の縦方向接合パターン15a,15bの間隔が最も狭くなる位置を横方向に通過する線であり、前記縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近が、膣口の中心部に当てる目安となる。図1に示す実施の形態では、横方向基準線Oxが右折り返しフラップ部4aおよび左折り返しフラップ部4bを前後に二分しており、生理用ナプキン1は、前記横方向基準線Oxに対して前後に対称形状である。
【0029】
図2にも示すように、生理用ナプキン1は、ショーツの内面に向く着衣側表面9と、身体に向けられる肌側表面7を有している。
【0030】
前記着衣側表面9には、液遮断性の裏面シート11が現れている。この裏面シート11は、生理用ナプキン1の平面形状と同じ形状で且つ同じ大きさである。肌側表面7には、液透過性の表面シート12が現れ、左右両側には液遮断性の側部シート13,13が配置されている。右側に位置する側部シート13の内縁部13aと、左側に位置する側部シート13の内縁部13aと挟まれた部分が液吸収領域8であり、この液吸収領域8に前記表面シート12が現れている。
【0031】
そして、主に前記液吸収領域8では、前記裏面シート11と前記表面シート12との間に液吸収層14が介在して設けられている。図1に示すように、前記液吸収層14は、縦方向に延びる右側縁部14aと左側縁部14b、前方に向く前縁部14cおよび方向に向く後縁部14dを有している。なお、前記両側部シート13,13の一部も前記液吸収層14の上に位置し、内縁部13a,13aは前記右側縁部14aおよび左側縁部14bよりもやや内側(縦方向中心円Oyに近い位置)に存在している。
【0032】
前記液吸収領域8では、前記表面シート12と液吸収層14とを一緒に加圧し溶着して接合した接合パターンが形成されている。
【0033】
接合パターンは、縦方向中心線Oyから右側に距離を開けた位置で縦方向に延びる右縦方向接合パターン15aと、縦方向中心線Oyから左側に距離を開けた位置で縦方向に延びる左縦方向接合パターン15bと、前縁部5に接近した位置で、横方向に延びる前方連結接合パターン15cと、後縁部6に接近した位置で横方向に延びる後方連結接合パターン15dを有している。そして、前述のように前記横方向基準線Oxの位置で、右縦方向接合パターン15aと左縦方向接合パターン15bとの左右方向の間隔が最も狭くなっている。
【0034】
前記各接合パターン15a,15b,15c,および15dは、互いに連結されており、生理用ナプキン1の肌側表面7では、前記各接合パターン15a,15b,15c,15dで囲まれた縦長の囲み領域16が形成されている。
【0035】
前記各接合パターン15a,15b,15c,および15dでは、表面シート12と液吸収層14とが着衣側表面9に向けて一緒に加圧され且つ加熱されており、表面シート12に含まれる熱可塑性繊維が溶融して、表面シート12と液吸収層14とが接合され固定されている。各接合パターン15a,15b,15c,および15dでは、表面シート12と液吸収層14とが高密度に圧縮された高密度圧縮部と、表面シート12と液吸収層14とが圧縮されて密度が高められているが前記高密度圧縮部よりも密度の低い中密度圧縮部とが交互に形成されている。そして、各接合パターン15a,15b,15c,および15dでは、肌側表面7から着衣側表面9に向けて窪む溝が形成されている。
【0036】
前記液吸収層14は、いわゆるエアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布と称されるものであり、パルプ繊維のみで形成され、または、パルプ繊維と、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性の合成樹脂繊維とで形成されている。前記繊維がエアーレイド法で積層された後に、加圧ローラ間で加圧されてシート状に形成され、繊維間が例えばアクリル系などのバインダーで接合されている。また前記繊維間に高吸収性樹脂(SAP)を含ませることができる。あるいは、前記バインダーを含まず、エアーレイド法で積層された積層体を加圧し且つ加熱して、前記合成樹脂繊維を溶融させて繊維間を溶着させたものであってもよい。
【0037】
前記液吸収層14は、目付けが70〜300g/mの範囲であり、パルプが30〜100質量%の範囲で含まれ、合成樹脂繊維が0〜30質量%の範囲で含まれている。液吸収層14の密度は0.05〜0.2g/cmの範囲である。またSAPを0〜20質量%の範囲で含ませることもできる。
【0038】
そして、前記囲み領域16では、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成された前記液吸収層14に、多数の切込み部17が形成されている。本明細書での「切込み部」とは、液吸収層14を構成する繊維を切断して形成したものであり、液吸収層を局部的に圧縮するエンボス加工とは異なるものである。切込み部17は、液吸収層14のいずれかの表面から少なくともその厚みの途中まで繊維を切断したものであってもよいし、液吸収層14の一方の表面から他方の表面にかけて貫通して形成されたものであってもよい。図1の実施の形態では、前記囲み領域16内の全域に前記切込み部17が形成され、囲み領域16で囲まれた液吸収層14の部分の全体が低剛性部14eとなっている。
【0039】
図1に示す実施の形態では、短い直線状(スリット状)の切込み部17が互いに交叉したもので、この交叉した切込み部17が複数組設けられ規則的に配列している。短い直線状の切込み部17はほぼ90度の角度で交叉し、それぞれの切込み部17は、縦方向中心線Oyおよび横方向基準線Oxの双方に対して45度の角度を有する向きに形成されている。また、この実施の形態では、切込み部17が、各接合パターン15a,15b,15c,15dで囲まれた囲み領域16内にのみ形成されており、前記囲み領域16よりも外側には前記切込み部17が形成されていない。
【0040】
また、前記液吸収層14の低剛性部14eの厚み寸法は、0.5〜10mmであり、好ましくは1〜7mm、さらに好ましくは1.5〜5mmである。また、液吸収層14の低剛性部14eが占める縦方向の長さ寸法の割合と、低剛性部14eが液吸収層14に占める面積の割合の少なくとも一方が、30%以上であることが好ましい。低剛性部14eの厚みが前記範囲で、且つその占める範囲が前記範囲内であると、低剛性部14eが女性の股間部の形状、さらには臀部の溝の形状に倣うように変形しやすくなる。
【0041】
また、後に述べる第1の実施の形態の変形例での低剛性部14e,54e、および第2の実施の形態およびその変形例での低剛性部14f,54fにおいても、特に記載しない限り、厚み寸法などの好ましい範囲は、前記第1の実施の形態と同じである。
【0042】
表面シート12は液透過性であり、液透過性の不織布、多数の液透過孔が形成された不織布、多数の液透過孔が形成された樹脂フィルムのいずれかの組み合わせにより形成されている。例えば、前記表面シート12は、芯部がポリエチレンテレフタレート(PET)で、鞘部がポリエチレン(PE)の芯鞘型複合合成繊維を熱風で熱溶着させたスルーエアー不織布で形成される。スルーエアー不織布の目付けは15〜35g/m程度である。
【0043】
裏面シート11は、液遮断性であり、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)で形成されており、好ましい目付けは15〜35g/m程度である。側部シート13は、不織布、樹脂フィルムなどであり、液遮断性または撥水性のものが使用される。例えば、スルーエアー不織布、スパンボンド不織布などが使用される。
【0044】
この生理用ナプキン1を着用するときには、肌側表面7における縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近が膣口に対向するように位置を決めて、着衣側表面9において裏面シート11の表面に設けられた感圧接着剤層を介してショーツのクロッチ部の内側に接着固定する。また、右折り返しフラップ部4aと左折り返しフラップ部4bを、ショーツのクロッチ部の縁部を巻き込むようにしてショーツの外面に折り返し、折り返しフラップ部4a,4bの着衣側表面に設けられた感圧接着剤層をショーツの外面に接着する。
【0045】
ショーツを穿くと、ショーツの吊り上げ力がショーツのクロッチ部に作用する。ショーツの後身頃の中央部に縦方向に延びる弾性紐などが設けられている場合には、この弾性紐の吊り上げ力により、生理用ナプキン1には縦方向中心線Oyに沿って身体に向けての押し付け力が作用する。
【0046】
生理用ナプキン1の囲み領域16は、縦方向中心線Oyに沿って縦方向に延びており、この囲み領域16内には、液吸収層14の前記低剛性部14eが存在している。そのため、この低剛性部14eが、縦方向中心線Oyに沿って持ち上がるように変形し、横方向に延びる面で切断した断面で見たときに、縦方向中心線Oyが上に突出するように逆V字形状に変形する。そのため、囲み領域16の肌側表面が膣口に密着しやすくなる。
【0047】
また、エアーレイドパルプで形成された液吸収層14は、厚み寸法が0.5〜10mm、好ましくは1〜7mm、さらに好ましくは1.5〜5mmと薄いものとなっており、さらに、生理用ナプキン1の後方部分は、ショーツの吊り上げ力を受けて、前記低剛性部14eと共に臀部の溝内に密着するように変形しやすい。その結果、生理用ナプキン1の後縁部6が臀部の下方に位置している装着状態において、タイトなパンツなど穿いたとしても、生理用ナプキン1の存在が外部から認識しずらい。
【0048】
膣口から排泄される経血は、主に囲み領域16に与えられる。この経血は、表面シート12を透過して、主に液吸収層14の低剛性部14において吸収される。また低剛性部14内において周囲に拡散しようとする経血は、各接合パターン15a,15b,15c,15dの部分で止められ、さらに囲み領域16の外部に拡散するのを防止できる。
【0049】
低剛性部14eには、多数の切込み部17が形成されている。しかし、液吸収層14そのものはバインダーなどでパルプ繊維が接合されたいわゆるエアーレイドパルプあるいはパルプ繊維と合成樹脂繊維を含むエアーレイド不織布で形成されているため、多数の切込み部17が形成されていても、左右方向への引っ張り強度が極端に低下することがない。
【0050】
さらに、低剛性部14eの肌側表面を覆う表面シート12が、左右において右縦方向接合パターン15aおよび左縦方向接合パターン15aの部分で液吸収層14に接合されており、さらに右縦方向接合パターン15aと左縦方向接合パターン15bは、前方連結接合パターン15cと後方連結接合パターン15dとで互いに連結されている。よって、右縦方向接合パターン15aと左縦方向接合パターン15bを左右方向へ離す力が作用しても、それぞれの接合パターンに接合された表面シート12によって、低剛性部17eが左右に引っ張られるのを規制することができる。
【0051】
そのため、左右方向への引っ張り力が作用しても、個々の切込み部17が左右に拡大するのを防止でき、低剛性部14eに切込み部17の部分をきっかけとして亀裂が発生したり、さらには切込み部17の拡大により、液吸収能力が低下するのを防止できるようになる。
【0052】
以下に示す第1の実施の形態の変形例さらに第2の実施の形態およびその変形例において、生理用ナプキン1と同じ構造の部分は生理用ナプキン1と同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
【0053】
図3ないし図9は、前記第1の実施の形態のさらなる変形例を示している。
図3は、変形例である生理用ナプキン21の平面図、図4は図3をIV−IV線で切断した横断面図である。
【0054】
図3と図4に示す生理用ナプキン21は、図1に示す生理用ナプキン1と平面形状が同じである。
【0055】
図3と図4に示す生理用ナプキン21は、肌側表面7に現れる右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方連結接合パターン15cおよび後方連結接合パターン15dとで囲まれた囲み領域16において、液吸収層14は、多数の切込み部17を有する低剛性部14eとなっている。
【0056】
さらに、前記囲み領域16内において、前方に前方内側連結接合パターン15eが形成され、後方に後方内側連結接合パターン15fが形成されている。前方内側連結接合パターン15eおよび後方内側連結接合パターン15fは、右縦方向接合パターン15aと左縦方向接合パターン15bとを連結している。
【0057】
前記生理用ナプキン1と同様に、前記液吸収層14は、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成されている。そして、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方内側連結接合パターン15eおよび後方内側連結接合パターン15fとで囲まれた中央領域16aでは、図4に示すように、液吸収層14の低剛性部14eと表面シート12との間に、吸収繊維層22が介在している。
【0058】
前記吸収繊維層22は、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成された前記液吸収層14よりも低密度であり、且つそれ自体が液を吸収して保持する能力を有している。例えば、前記吸収繊維層22は、パルプ繊維で形成され、またはパルプ繊維と高吸収性樹脂(SAP)とが混合されて形成されている。または前記パルプ繊維などの天然繊維と共に合成樹脂繊維が含まれていてもよい。この吸収繊維層22では、繊維どうしがバインダーで接着されておらず且つ熱溶着によっても接着されておらず、液吸収層14よりも曲げ剛性が低くなっている。この吸収繊維層22の密度は、0.02〜0.15g/cmの範囲内である。また、目付けは、例えば200〜800g/m程度である。
【0059】
前記吸収繊維層22は、ティッシュペーパなどの親水性の紙材23で包まれた状態で、液吸収層14と表面シート12との間に設けられている。
【0060】
この生理用ナプキン21では、多数の切込み部17が形成された低剛性部14eの上に、低密度の吸収繊維層22が存在しているために、切込み部17を有する低剛性部14eと吸収繊維層22との双方で液吸収容量を十分に確保できる。しかも吸収繊維層22は、低密度で軟質であるため、低剛性部14eの変形に追従して断面が逆V字形状に変形しやすくなる。
【0061】
この生理用ナプキン21では、膣口に対向する中央領域16aが、前記のように液吸収層14と吸収繊維層22とで十分な液吸収容量を発揮できる。ただし、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、後方連結接合パターン15dおよび後方内側連結接合パターン15fとで囲まれた後方領域16bは、吸収繊維層22が設けられておらず、液吸収層14の低剛性部14eのみで形成されている。そのため、後方領域16bは薄く構成され、この部分が肛門部分やその後方において臀部の溝内に入り込むように変形しやすいため、タイトなパンツなどを着用したとしても、外部から生理用ナプキン1の着用状態を目視で認識しにくくなる。
【0062】
このように、エアーレイドパルプやエアーレイド不織布などの液吸収層14に切込み部17を形成した低剛性部分は、少なくとも生理用ナプキンの後方において、両側の縦方向接合パターンおよび両縦方向接合パターンを連結する連結接合パターンによって少なくとも3方向が囲まれた領域に形成されていることが好ましい。
【0063】
図5に示す生理用ナプキン31と図6に示す生理用ナプキン41は、前記の観点から構成された変形例である。
【0064】
図5に示す生理用ナプキン31は、外形が図3に示す生理用ナプキン21と同じであり、且つ生理用ナプキン21と同様に、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方連結接合パターン15c、後方連結接合パターン15d、前方内側連結接合パターン15eおよび後方内側連結接合パターン15fを有している。
【0065】
そして、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方連結接合パターン15c、前方内側連結接合パターン15eで囲まれている前方領域16c、および右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、後方連結接合パターン15d、および後方内側連結接合パターン15fで囲まれている後方領域16bにおいて、エアーレイドパルプやエアーレイド不織布で形成された液吸収層14が、多数の切込み部17を有する低剛性部14eとなっている。
【0066】
また、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方連結接合パターン15c、後方連結接合パターン15dで囲まれた中央領域16aには、切込み部17が形成されておらず、この中央領域は、エアーレイドパルプやエアーレイド不織布などで形成された液吸収層14のみで形成され、あるいは液吸収層14と吸収繊維層22とで形成されている。
【0067】
この生理用ナプキン31は、前記前方領域16cと後方領域16bに液吸収層14の低剛性部14eが位置し、前方領域16cと後方領域16bが薄型で曲げ剛性が低くなっている。そのため、生理用ナプキン31の前方部分が股間部の形状に倣いやすく、後方部分が臀部の溝に倣いやすいため、パンツの外側から生理用ナプキン31の着用状態を視認しにくくなる。
【0068】
図6に示す生理用ナプキン41は、平面図での外形状が、図1に示す生理用ナプキン1と同じであり、且つ液吸収層14の厚みや大きさも生理用ナプキン1と同じである。
【0069】
図6に示す生理用ナプキン41では、接合パターンとして、縦方向中心線Oyから右方向へ間隔を空けた位置に形成された右縦方向接合パターン45aと、縦方向中心線Oyから左方向へ間隔を空けた位置に形成された左縦方向接合パターン45bが形成されている。前方において右縦方向接合パターン45aと左縦方向接合パターン45bとを連結する前方連結接合パターン45cが形成され、前記前方連結接合パターン45cよりも前方には、右縦方向接合パターン45aと左縦方向接合パターン45bのそれぞれから延長された前方延長接合パターン45e,45eが左右方向に間隔を空けて形成されている。
【0070】
後方においては、右縦方向接合パターン45aと左縦方向接合パターン45bとを連結する後方連結接合パターン45dが形成され、この後方連結接合パターン45dよりも後方には、右縦方向接合パターン45aと左縦方向接合パターン45bのそれぞれから延長された後方延長接合パターン45f,45fが左右方向に間隔を空けて形成されている。
【0071】
そして、前方連結接合パターン45cと、前方延長接合パターン45e,45eとで3方が囲まれた前方領域46に、エアーレイドパルプの液吸収層14に多数の切込み部17が形成された低剛性部14eが設けられている。また、後方連結接合パターン45dと、後方延長接合パターン45f,45fとで3方が囲まれた後方領域47に、液吸収層14に多数の切込み部17が形成された低剛性部14eが設けられている。
【0072】
この生理用ナプキン41も、前方領域46と後方領域47に薄い低剛性部14eが位置しているため、この部分が身体の形状に倣って変形しやすい。また、前方領域46と後方領域47は、3方が接合パターンで囲まれているため、低剛性部14eが左右に伸びにくく、切込み部17の部分が左右に開いたり、切込み部17をきっかけとして液吸収層14に亀裂が入ることなどを防止できるようになる。
【0073】
図7と図8に示す生理用ナプキン51は、縦方向の寸法が長いものであり、生理用ナプキン51の肌側表面の膣口の中心に当てる際の目安となる横方向基準線Oxから前縁部55までの長さ寸法よりも、横方向基準線Oxから後縁部56までの長さ寸法の方が長い。
【0074】
この生理用ナプキン51を装着するときには、縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近が膣口に対向するように位置が決められるが、この状態で装着したときに、後縁部56は、尾てい骨付近に位置する。この生理用ナプキン51の縦方向の寸法は、例えば200〜450mm程度である。
【0075】
生理用ナプキン51の平面形状は、前方右側縁部52aと前方左側縁部52bとを有し、それよりも後方に右折り返しフラップ部58aと左折り返しフラップ部58bを有している。さらに後方の後方右側縁部53aと後方左側縁部53bが、左右両側に膨らむようにして突出しており、この部分に後方フラップ部57,57が形成されている。
【0076】
図8に示すように、着衣側表面9には、生理用ナプキン51の全体形状と同一寸法で同一面積を有する裏面シート11が設けられ、肌側表面7には液透過性の表面シート12が現れており、裏面シート11と表面シート12との間に、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成された液吸収層54が設けられている。この液吸収層54は、右側縁部54aと左側縁部54bおよび前縁部54cと後縁部54dを有している。
【0077】
図7に示すように、肌側表面7に現れる接合パターンは、右縦方向接合パターン115a、左縦方向接合パターン115b、前方連結接合パターン115c、後方連結接合パターン115dを有しており、各接合パターン115a,115b,115c,115dが互いに連結されて、これら接合パターンで囲まれた囲み領域116が形成されている。
【0078】
また、右縦方向接合パターン115aの右外側には、縦方向に延びる右外側接合パターン117aが形成され、左縦方向接合パターン115bの左外側には、縦方向に延びる左外側接合パターン117bが形成されている。前記横方向基準線Oxにおいて、右縦方向接合パターン115aと左縦方向接合パターン115bとの間隔が最も狭くなっており、また横方向基準線Oxにおいて、右外側接合パターン117aと左外側接合パターン117bとの間隔が最も狭くなっている。
【0079】
さらに、後方フラップ部57,57の内側領域では、前記右縦方向接合パターン115aの右外側に、右後方接合パターン118aが形成され、左縦方向接合パターン15bの左外側に、左後方接合パターン118bが形成されている。そして、後方連結接合パターン115dよりも後方には、前記右後方接合パターン118aと左後方接合パターン118bを連結する外側後方連結接合パターン119が形成されている。
【0080】
そして、前記液吸収層54では、前記囲み領域116の後方領域116b、すなわち囲み領域116のうちの折り返しフラップ部58a,58bよりも後方部分に、複数の切込み部17aが形成されて、この部分の液吸収層54が低剛性部54eとなっている。個々の切込み部17aは短い直線状で互いに直交するように形成されており、直交する切込み部17aの組が複数組設けられ規則的に配列している。個々の切込み部17aは縦方向および横方向に延びている。また、図8に示すように、囲み領域116内では、液吸収層54と表面シート12との間に、図1に示す生理用ナプキン1と同様に、親水性の紙材で包まれた吸収繊維層22が設けられている。
【0081】
図8に示すように、生理用ナプキン51の肌側表面7の左右両側部には、縦方向中心線Oyから左右に間隔を開けた位置に、側部シート113,113が設けられている。この側部シート113,113は、前記裏面シート11に重ねられて接合されているとともに、その一部が液吸収層54の表面まで延びている。
【0082】
前記側部シート113,113が2つに折りたたまれて防漏壁111,111が形成されており、この防漏壁111,111の表面シート12から離れている頂部に、縦方向に弾性収縮力を発揮する弾性部材112が設けられている。前記防漏壁111は、図7に示す前方起端111aと後方起端111bとの間においてのみ、前記頂部が表面シート12から離れることができるようになっている。
【0083】
前記弾性部材112の弾性収縮力が前記前方起端111aと後方起端111bとを接近させるように作用する結果、前方起端111aと後方起端111bとの間で、生理用ナプキン51は肌側表面7が窪むように変形し、その結果、弾性部材112が設けられている頂部が、表面シート12から上方へ離れ、防漏壁111,111が生理用ナプキン51の肌側表面7から立ち上がる。
【0084】
この生理用ナプキン51は、縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近、すなわち、右縦方向接合パターン115aと左縦方向接合パターン115bとの間隔が最も狭くなる部分が、膣口に対向するようにしてショーツのクロッチ部の内側に装着され、裏面シート11の表面に設けられた感圧接着剤層によってショーツのクロッチ部の内面に接着固定される。また、右折り返しフラップ部58aと左折り返しフラップ部58bが、ショーツのクロッチ部の縁部を介してショーツの外面に折り返されて感圧接着剤層により接着固定される。
【0085】
縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近が膣口に対向した状態で、囲み領域116の後方領域116b分が、肛門付近からさらに臀部の溝に対向する。さらに後縁部56が、尾てい骨付近に対向する。
【0086】
前記囲み領域116の後方領域116bは、液吸収層54に多数の切込み部17aが形成された低剛性部54eとなっている。よって、ショーツの吊り上げ力によって、前記低剛性部54eが身体に向けて逆V字状に変形しやすくなり、この部分が肛門付近およびそれよりも後方の臀部の溝内に入り込むように変形できる。また前記低剛性部54fには、吸収繊維層22が重ねられているので、経血の吸収容量を大きくできる。
【0087】
また、囲み領域116よりも後方、すなわち後方連結接合パターン115dを越えた後方部分には、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成された薄い液吸収層54が延び、この部分には吸収繊維層22が設けられていない。この後方部分に位置する液吸収層54は、囲み部116内の前記低剛性部54eの変形に追随して同様に肌側に向けて逆V字形状に変形しやすくなるため、この後方部分が臀部の溝内に入りやすくなり、タイトなパンツを着用したような場合に、外部から生理用ナプキン51を着用していることを認識しにくくなる。
【0088】
また、図7に示す前方起端111aと後方起端111bとの間には、防漏壁111に設けられた弾性部材112の弾性収縮力が作用し、その結果、生理用ナプキン61は、肌側表面7が窪むように変形する。前記弾性部材112による弾性収縮力が作用する部分である前方起端111aと後方起端111bとで挟まれた部分およびその近傍の領域(右外側接合パターン117aおよび左外側接合パターン117bよりも左右両外側の領域)では、液吸収層54に切込み部17aが形成されていないため、弾性部材112の弾性収縮力によって前記領域において液吸収層54が撚れたり不用意に変形するのを防止しやすい。
【0089】
図9に示す生理用ナプキン61は、基本的構造が図7に示す生理用ナプキン51と同じである。
【0090】
囲み領域116の後方領域116bには、液吸収層54に切込み部17aが形成された低剛性部54eが位置している。さらに、右縦方向接合パターン115a、左縦方向接合パターン115b、および後方連結接合パターン115dの外側で、且つ右後方接合パターン118a、左後方接合パターン118bおよび向外側後方連結接合パターン119の内側に位置する第2の後方領域121にも、液吸収層54に切込み部17aが形成されている。しかし、第2の後方領域121に形成された切込み部17aの配置密度は、前記囲み領域116内の後方領域116bでの切込み部17aの配置密度よりも低い。よって、囲み領域116の後方領域116bでの液吸収層54の剛性よりも、第2の後方領域121における液吸収層54の剛性の方が高くなっている。
【0091】
さらに、右後方接合パターン118aと左後方接合パターン118b、および外側後方連結接合パターン119の外側で、且つ液吸収層54の後縁部54dよりも前方の領域である第3の後方領域122には、液吸収層54に、直線スリット状の切込み部17bが形成されている。この切込み部17bは、縦方向中心線Oyの延びる方向に対して斜めに形成されている。前記第3の後方領域122での切込み部17bの配置密度は、第2の後方領域121での前記切込み部17aの配置密度よりもさらに低くなっており、前記第3の後方領域122での液吸収層54の剛性が第2の後方領域121での液吸収層54の剛性よりも高くなっている。
【0092】
この生理用ナプキン61では、前記囲み領域116の後方領域116bのみならず、さらにその後方の第2の後方領域121と第3の後方領域122にも切込み部17aおよび切込み部17bが形成されているため、生理用ナプキン61の後方部分において、液吸収層54が、臀部の溝内に入り込むように変形しやすくなる。
【0093】
なお、前記実施の形態および変形例において、液吸収層14と液吸収層54は、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布で形成されたものに限られない。例えば、パルプ繊維を積層してティッシュペーパなどの親水性の紙材で包み、そしてエンボス加工やその他の圧縮加工によって、パルプ繊維の密度を高めたものであってもよい。このように構成した液吸収層に前記切込み部17,17a,17bを設けることで、低剛性部14e,54eを形成することができる。
【0094】
図10は本発明の第2の実施の形態の生理用ナプキン71を示す平面図、図11は図10に示す生理用ナプキン71のXI−XI線での断面図である。
【0095】
この生理用ナプキン71の基本的な構造は、図3と図4に示した生理用ナプキン1と同じである。
【0096】
この生理用ナプキン71は、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、前方連結接合パターン15c、後方連結接合パターン15d、前方内側連結接合パターン15eおよび後方内側連結接合パターン15fを有している。右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、後方連結接合パターンおよび後方内側連結接合パターン15fで囲まれた後方領域16bに、液吸収層14の目付けおよび密度を、他の部分よりも低下させた低剛性部14fが形成されている。なお、低剛性部14fは、目付けまたは密度の一方のみを低下させたものであってもよいが、前記のように目付けと密度の双方を低下させていることが好ましい。
【0097】
この低剛性部14fは次のようにして構成される。まず、液吸収層14がエアーレイドパルプやエアーレイド不織布などで形成される場合に、エアーレイドパルプなどを部分的に引き伸ばして前記低剛性部14fを形成する。あるいは、液吸収層14をパルプ繊維の積層体で形成し、このときに部分的にパルプ繊維の目付けを減少させて、その部分を低剛性部14fとし、この低剛性部14f以外の部分で、パルプの積層体をエンボス加工やその他の手段で加圧して高密度で且つ高剛性となるように形成する。
【0098】
低剛性部14fでの液吸収層14の目付けは、例えば100〜300g/mの範囲であり、密度は0.02〜0.07g/cmの範囲である。また、前記低剛性部14f以外での液吸収層14の目付けは最低でも200g/mでさらに好ましくは350g/mであり、その上限は1000g/m程度である。また、低剛性部14f以外の部分での密度は0.05〜0.2g/cmの範囲が好ましい。
【0099】
また、低剛性部14fでの目付けと、低剛性部14f以外の部分の液吸収層14の目付けとの差は、100g/m以上であることが好ましい。また、低剛性部14fでの密度と、低剛性部14f以外の部分の液吸収層14の密度との差は、0.02g/cm以上であることが好ましい。
【0100】
液吸収層14の前記低剛性部14fの横方向(横方向基準線Oxに沿う方向)への曲げ剛性値(ガーレー剛性値)は、幅25.4mm当たり100〜400mg(0.98〜3.92mN)であり、好ましくは150〜350mg(1.47〜3.43mN)である。また、低剛性部14f以外の部分での液吸収層14の横方向の曲げ剛性値(ガーレー剛性値)は、前記低剛性部14fよりも高く、ガーレー剛性値は、25.4mm幅あたり、400mg(3.92mN)を超え、500mg(4.90mN)を超えることが好ましい。
【0101】
前記ガーレー剛性値の測定試料は、低剛性部14fと同じ目付けと同じ密度となるように形成した液吸収層を、表面シート12と裏面シート11との間に挟んで、これらを生理用ナプキン71と同じ条件となるようにホットメルト型接着剤などで接合する。測定試料として、幅寸法25mmで長さ寸法38mmの前記積層体を形成する。また、低剛性部14f以外の部分と同じ目付けで同じ密度の液吸収層を表面シートと裏面シートとの間に挟んで、前記と同寸法の測定試料とする。
【0102】
前記両測定試料を、(株)安田精機製作所製の製品番号311番のガーレー式柔軟度試験機を用いて測定した値が前記ガーレー剛性値である。
【0103】
この生理用ナプキン71は、右縦方向接合パターン15a、左縦方向接合パターン15b、後方連結接合パターンおよび後方内側連結接合パターン15fで囲まれた後方領域16bに、低剛性部14fが形成されているため、ショーツの吊り上げ力が作用したときに、この部分が身体に向けて断面が逆V字状となるように変形しやすくなる。また、低剛性部14fが、接合パターンで囲まれているために、低剛性部14fが伸びるのを表面シート12が抑制するように機能する。そのため、液吸収層14が撚れたり変形するのを防止しやすい。
【0104】
ただし、左縦方向接合パターン15b、後方連結接合パターンおよび後方内側連結接合パターン15fで囲まれた後方領域16bに位置する前記表面シート12と前記裏面シート11の少なくとも一方が、横方向に伸びることができるように断面が波形状となるように加工されたものであってもよい。あるいは、前記表面シート12と前記裏面シート11の少なくとも一方が、横方向に伸縮性を有するシートで形成されているものであってもよい。
【0105】
この構造では、身体に着用したときに、前記後方領域16bが幅方向に若干延伸して、股間部や肛門付近あるいは臀部の溝に沿うように変形しやすくなる。ただし、表面シート12や裏面シート11の横方向への伸び率は、低剛性部14fが破断せず、または過剰に薄くならない範囲に制限される。
【0106】
図12に示す生理用ナプキン81は、第2の実施の形態の変形例を示す平面図である。
図12に示す生理用ナプキン81の基本的な形状および構造は、図7に示した生理用ナプキン51と同じである。またこの生理用ナプキン81の接合パターンも図7に示したものと同じである。
【0107】
そして、右縦方向接合パターン115a、左縦方向接合パターン115b、前方連結接合パターン115c、および後方連結接合パターン115dで囲まれた囲み領域116の後方領域116bにおいて、前記液吸収層54に低剛性部54fが形成されている。この低剛性部54fは、図10に示す生理用ナプキン71の低剛性部14fと同様にして形成されたものであり、その結果、図7に示す生理用ナプキン51と同等の効果を奏することができる。
【0108】
図13に示す生理用ナプキン91は、図7に示す生理用ナプキン51や図12に示す生理用ナプキン81と同様に縦方向の寸法が長く、縦方向中心線Oyと横方向基準線Oxとの交点付近を膣口に当てたときに、後縁部96が、尾てい骨付近に位置する。
【0109】
生理用ナプキン91の平面形状は、前縁部95と後縁部96と、前方右側縁部92a、前方左側縁部92b、右折り返しフラップ部94a、左折り返しフラップ部94bを有している。また、後方右側縁部93aと後方左側縁部93bは、縦方向に向けて直線的に延びており、図7および図12に示す後方フラップ部57は設けられていない。
【0110】
この生理用ナプキン91は、裏面シート11、表面シート12、側部シート13および液吸収層54を有している。
【0111】
接合パターンとしては、右縦方向接合パターン145a、左縦方向接合パターン145b、前方連結接合パターン145c、後方連結接合パターン145dを有している。前記接合パターン145a,145b,145c,145dで囲まれた囲み領域116d内では、液吸収層54の上に吸収繊維層22が設けられている。
【0112】
また、前方連結接合パターン145cの前方には、右縦方向接合パターン145aおよび左縦方向接合パターン145bからそれぞれ延長した前方延長接合パターン145e,145eが設けられており、後方連結接合パターン145dの後方には、右縦方向接合パターン145aおよび左縦方向接合パターン145bからそれぞれ延長した後方延長接合パターン145f,145fが設けられている。
【0113】
そして、前記後方連結接合パターン145dと、前記両後方延長接合パターン145f,145fとで3方が囲まれた後方領域116cにおいて、前記液吸収層54に前記低剛性部154fが形成されている。この低剛性部154fは、図10に示す低剛性部14fおよび図12に示す低剛性部54fと同様にして形成される。
【0114】
前述のように液吸収層54は、エアーレイドパルプまたはエアーレイド不織布や、圧縮されたパルプ層などのような、薄型の吸収層であり、この液吸収層54に低剛性部154fが形成されて、後方連結接合パターン145dよりも後方の後方領域116cが身体に向けて変形しやすくなっている。よって、前記各実施の形態および変形例と同等の効果を奏することができる。また、低剛性部154fは、3方が接合パターンで囲まれ、接合パターンで液吸収層54に接合された表面シート12が低剛性部154fを覆っているため、低剛性部154fが伸びたり撚れたりするのを防止できる。
【0115】
図14は、前記第1の実施の形態の生理用ナプキンにおいて、液吸収層14または54に形成される切込み部をパターン別に示すものである。
【0116】
図14(A)は、図1の実施の形態に示した切込み部17であり、短い直線状の切込み部17が互いに直交し、それぞれの切込み部17が、縦方向および横方向に対して45度の角度で形成されている。図14(E)は、図7に示した切込み部17aであり、直線状の切込み部17aが互いに直交し、それぞれの切込み部17aが縦方向および横方向に延びている。図14(F)は、図9に示したのと同じであり、前記切込み部17aと、さらに直線状で且つ縦方向に対して斜めに延びる短い直線状の切込み部17bとの組み合わせである。
【0117】
その他に、図14(B)に示すように、斜めに延び且つ互いに異なる方向に延びる直線状の切込み部17cが組み合わされたもの、図14(C)に示すように、4本の直線状の切込み部17dが互いに交叉して組み合わされたもの、図14(D)に示すように、縦方向に直線状に且つ破線状に延びる切込み部17eであってもよい。
【0118】
さらに前記切込み部は短い直線形状や、前記破線形状に限られるものではなく、断面が円形、楕円形などの小孔であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1の実施の形態の生理用ナプキンの平面図、
【図2】図1に示す生理用ナプキンをII−IIで切断した断面図、
【図3】第1の実施の形態の変形例を示す平面図、
【図4】図3に示す生理用ナプキンをIV−IV線で切断した断面図、
【図5】第1の実施の形態の変形例を示す平面図、
【図6】第1の実施の形態の変形例を示す平面図、
【図7】第1の実施の形態の変形例であって、縦方向の寸法の長い生理用ナプキンを示す平面図、
【図8】図7に示す生理用ナプキンをVIII−VIII線で切断した断面図、
【図9】第1の実施の形態の変形例であって、縦方向の寸法の長い生理用ナプキンを示す平面図、
【図10】本発明の第2の実施の形態の生理用ナプキンを示す平面図、
【図11】図10に示す生理用ナプキンをXI−XI線で切断した断面図、
【図12】第2の実施の形態の変形例であって、縦方向の寸法の長い生理用ナプキンを示す平面図、
【図13】第2の実施の形態の変形例であって、縦方向の寸法の長い生理用ナプキンを示す平面図、
【図14】(A)ないし(F)は、前記第1の実施の形態の生理用ナプキンの液吸収層に設けられた切込み部の各種パターンを実施の形態別に示す平面図、
【符号の説明】
【0120】
1、21,31,41,51,61,71,81,91 生理用ナプキン
7 肌側表面
9 着衣側表面
11 裏面シート
12 表面シート
13 側部シート
14 液吸収層
14e 低剛性部
14f 低剛性部
15a,15b 縦方向接合パターン
15c,15d,15e,15f 連結接合パターン
16 囲み領域
17,17a,17b,17c,17e 切込み部
22 吸収繊維層
45a,45b 縦方向接合パターン
45c,45d 連結接合パターン
45e 前方延長接合パターン
45f 後方延長接合パターン
54 液吸収層
54e 低剛性部
54f 低剛性部
111 防漏壁
112 弾性部材
115a,115b 縦方向接合パターン
115c,115d 連結接合パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吸収層と、前記液吸収層の肌側表面を覆う液透過性の表面シートと、前記表面シートと液吸収層とが接合された接合パターンとが設けられている生理用ナプキンにおいて、
左右両側に位置して縦方向に延びる縦方向接合パターンと、前記縦方向接合パターンを連結する連結接合パターンとが形成されて、それぞれの前記縦方向接合パターンと前記連結接合パターンとで囲まれた領域の前記液吸収層に、低剛性部が形成されており、前記低剛性部は、前記液吸収層の前記縦方向接合パターンの左右両外側に位置する部分の剛性よりも低いことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項2】
前記低剛性部には、前記液吸収層に複数の切込み部が形成されている請求項1記載の生理用ナプキン。
【請求項3】
前記切込み部は、前記液吸収層を貫通して形成されている請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項4】
個々の前記切込み部は直線状に形成され、少なくとも2つの切込み部が交叉している請求項3記載の生理用ナプキン。
【請求項5】
前記低剛性部では、前記液吸収層の目付けおよび密度の少なくとも一方が低下している請求項1記載の生理用ナプキン。
【請求項6】
前記低剛性部は、前記液吸収層を部分的に引き伸ばすことで形成されている請求項5記載の生理用ナプキン。
【請求項7】
前記低剛性部と前記表面シートとの間に、前記液吸収層よりも密度の低い繊維層が介在している請求項1ないし6のいずれかに記載の生理用ナプキン。
【請求項8】
前記液吸収層は、エアーレイドパルプである請求項1ないし7のいずれかに記載の生理用ナプキン。
【請求項9】
前記液吸収層は、パルプ繊維を含む繊維の積層体を圧縮して形成したものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生理用ナプキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−81558(P2006−81558A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266176(P2004−266176)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】